説明

洗面化粧台

【課題】重厚感があり、耐水性、加工性に優れた収納キャビネットを有し、使用時に飛散した水によって腐食することのない、使い勝手のいい洗面化粧台を提供することである。
【解決手段】洗面ボウル部1を備えた洗面台2と、洗面台2の上部に隣接して設けられる収納キャビネット3と、を備えた洗面化粧台であって、収納キャビネット3はセメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなるものとした。また、成形品は、材料内部に空隙を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、洗面化粧台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗面ボウル部を備えた洗面台と、前記洗面台の上部に隣接して設けられる収納キャビネットと、を備えた洗面化粧台が知られている(特許文献1)。この洗面化粧台は洗面ボウル部の側辺部に木製部材により形成された収納キャビネットを備えていて、洗面ボウル部の上部に鏡を備えている。木材は加工性に優れているが、洗面台使用時における水の飛散等による腐食が起こりやすく、また、木材を用いて作られた収納キャビネットは重厚感に乏しい。
【0003】
また、合成樹脂を用いて成形された洗面化粧台用ミラーキャビネットが知られている(特許文献2)。合成樹脂は一般的に熱硬化性樹脂として不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン、PMMA樹脂等が使用されている。熱硬化性樹脂は、水に対する耐久性は強いが、長期間の使用によって変色する。熱可塑性樹脂は、同様に水に対する耐久性は強く、また長期間の使用によって変色することが少ない。これら二つの樹脂は、炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム等の無機フィラーを添加し、比重を増加させ重厚感を得ることがあったが、樹脂が主成分となる為に、外観的に十分な重厚感が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−481号公報
【特許文献2】特開2001−161465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みて発明されたもので、その課題は、重厚感があり、耐水性、加工性に優れた収納キャビネットを有し、使用時に飛散した水によって腐食することが起こり難い洗面化粧台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明では、洗面ボウル部を備えた洗面台と、前記洗面台の上部に隣接して設けられる収納キャビネットと、を備えた洗面化粧台であって、前記収納キャビネットはセメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなることを特徴としている。
【0007】
また、本願請求項2記載の発明では、上記請求項1記載の洗面化粧台において、前記成形品は材料内部に空隙を有することを特徴としている。
【0008】
また、本願請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の洗面化粧台において、前記空隙は表面に疎水化処理がされていることを特徴としている。
【0009】
また、本願請求項4記載の発明では、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の洗面化粧台において、水と樹脂モノマーとがW/O型の逆エマルジョン組成物を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1記載の発明の洗面化粧台においては、収納キャビネットはセメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなる。これより、収納キャビネットは外観的に重厚感を持つ。また、セメント組成物は異形成形が可能であり、収納キャビネットの複雑な形状も一体で成形でき、外観に複雑な凹凸をつけ意匠性を向上させることができる。また、洗面台使用時に飛散した水が付着しても、カビの発生が軽減される。
【0011】
また、本願請求項2記載の発明の洗面化粧台においては、上記本願請求項1記載の発明の効果に加え、特に、前記成形品は材料内部に空隙を有しているので、収納キャビネットの重量が減少し、運搬を容易にすることができる。
【0012】
また、本願請求項3記載の発明の洗面化粧台においては、上記本願請求項2記載の発明の効果に加え、特に、前記空隙は表面に疎水化処理がされているので、水滴が空隙に入っても腐食しにくくなる。
【0013】
また、本願請求項4記載の発明の洗面化粧台においては、上記本願請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、特に、水と樹脂モノマーとがW/O型の逆エマルジョン組成物を含むことにより、空隙の表面が樹脂ポリマーに覆われ、疎水化されているので洗面台使用時に飛散した水が吸水されにくく、セメント結晶物と複合されるので、成形品はさらに疎水性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明の一実施形態を示す洗面化粧台の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本願発明の一実施形態に係る洗面化粧台を示す。
【0016】
この洗面化粧台は、洗面ボウル部1を備えた洗面台2と、洗面台2の上部に隣接して設けられる収納キャビネット3と、を備えている。収納キャビネット3は、セメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなるものである。この成形品は、材料内部に空隙を有し、この空隙は、表面に疎水化処理がされている。セメント組成物は、水と樹脂モノマーとがW/O型の逆エマルジョン組成物を含んでいる。
【0017】
セメント組成物は、少なくともセメント、水、W/O型の逆エマルジョン組成物を原料とする。なお、逆エマルジョンは、油性物質(樹脂モノマー)と水とを撹拌混合することによって形成され、W/O型の逆エマルジョン組成物とは、樹脂モノマー、水、重合開始剤等を混合して得ることができる。成形品内部の空隙は、樹脂ポリマー形成時に離水することで水が抜けた部分により形成される。また、材料の撹拌時において混入した空気によっても空隙が形成され、この空隙の表面は、樹脂ポリマーによって覆われる。さらに樹脂ポリマーとセメント結晶物とが複合されて、成形品は疎水性を得る。
【0018】
以下、この実施形態の洗面化粧台をより具体的詳細に説明する。図1に示すように、洗面ボウル部1は平面視において楕円形状であるが、矩形状であっても構わない。洗面台2は洗面ボウル部1を有し、洗面ボウル部1の後方に蛇口4を有し、洗面台2の下部には収納部5を備え、洗面台2の後端から上方へ突出した突出部6は洗面台2と一体となって備えられている。洗面台2の平面視形状においては矩形状であるが、楕円形状であっても構わない。洗面台2と突出部6は一体で、側面視はL字型となっている。突出部6の上端には前面が開口した収納キャビネット3を備えている。収納キャビネット3は、横方向に3つの収納空間を有し、各収納空間には一体に収納棚7を備え、最低2つ以上の空間を有する。収納キャビネット3と収納棚7とは、セメント組成物を用いて形成されている。なお、収納棚7は別途取り付けてもよい。また収納物を埃等から遮るために前面に扉8を備えてもよい。収納キャビネット3の前面に備えた扉8は表面に鏡9を備えてもよい。収納キャビネット3において、横方向に有する3つの収納空間は、収納棚7を設け、全て扉8を設けずに前方に開放してもよい。また、収納棚7を設け、両端2つの空間を前方に開放し、真ん中の空間にのみに扉8を設置し、その扉8の表面には鏡9を設置してもよい。また、収納棚7を設け、3つの収納空間のうち、1つを前方に開放し、残り2つには扉8を設置し、その扉8の表面には鏡9を設置してもよい。また、収納棚7を設け、全ての空間に扉8を設置し、真ん中の扉の表面にのみ鏡9を設置してもよい。また、全ての空間に扉8を設置し、全ての扉8の表面に鏡9を設置してもよい。扉8はセメント組成物を用いて形成される。扉8は収納キャビネット3とヒンジで固定されていて、開閉可能となっている。収納キャビネット3内は、化粧品や歯ブラシ等をしまう空間を有する。
【0019】
収納キャビネット3は上端に照明器具を有し、下端に手元照明を有してもよい。そして、蛇口4は洗面台2の上面に設置されるに限らず、収納キャビネット3の下端に設置されてもよい。また、蛇口4はシャワー形状となっていて、延長可能なホースによって接続され、伸ばして使用することも可能とする。収納部5は両開きの扉を有していても、引き出し収納部を有していてもよい。
【0020】
洗面ボウル部1と突出部6とを備えた洗面台2はセメント組成物等を含む材料で一体に形成されているので、防水性に優れている。収納部5はセメント組成物や合成樹脂等を用いて形成されている。鏡9の表面はくもり止めの効果を有する素材を用いて形成されている。
【0021】
収納キャビネット3の成形に用いるセメント組成物中のセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強セメント、高炉セメント等を用いることができ、また一種単独で用いたり、二種以上を併用したりすることができる。また、セメント組成物中には上記成分以外にも、骨材や、各種添加剤を含有させることができる。例えば骨材として限定はなく、珪石粉、珪砂、シリカ、フライアッシュ等を用いることができる。繊維分としては、パルプ、PP繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、炭素繊維等が挙げられ、これらを単独で、あるいは二種以上を混合して使用することができる。この繊維分は硬化体の補強繊維として機能し、強度、靭性、衝撃性を向上させるために添加する。また、顔料やセメント材料の端材粉砕品などを添加することもできる。
【0022】
また、セメント組成物には、W/O型の逆エマルジョン組成物を含むと好ましい。逆エマルジョンは、油性物質と水とを撹拌混合することによって形成されるものであり、この逆エマルジョンの油性物質としては、アクリル、スチレン等の重合性二重結合を有する樹脂モノマーが用いると、セメントの水和反応と重合性二重結合を有する樹脂モノマーの重合反応とが同時に起こり、ポリマーを形成し、優れた物理的、機械的性質を有するセメント成形品が得られる。
【0023】
本実施形態における成形品は、例えばポルトランドセメント40重量%、珪石粉20重量%、フライアッシュ10重量%、ビニロン繊維5重量%、W/O型エマルジョン組成物25重量%(水を含む)の重量比のセメント組成物を押出プレス成形により作り、養生硬化させて得られる。
【0024】
したがって、この実施形態の洗面化粧台においては、収納キャビネット3はセメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなるものであり、木材や合成樹脂で作られた収納キャビネットよりも外観的に重厚感を持つ。この成形品は使用時に目線の高さに設置されるので、重厚感を持たせることが可能となる。また、セメント組成物は異形成形が可能であり、収納キャビネット3の複雑な形状を一体で成形でき、外観に複雑な凹凸をつけ意匠性を向上させることができる。なお、収納キャビネット3の製造方法としては、押出プレス成形により一体的に製造するものに限定するものではなく、セメント組成物を用いて成形した収納キャビネット部材を予め準備し、それを後から組み立てて、成形品を作っても構わない。
【0025】
また、この実施形態の洗面化粧台においては、成形品は材料内部に空隙を有しているので、収納キャビネット3の重量が減少し、運搬を容易にするができる。
【0026】
また、この実施形態の洗面化粧台においては、空隙は表面に疎水化処理がされているので、洗面台使用時に飛散した水が吸水されたときに、カビの発生が軽減される。
【0027】
また、この実施形態の洗面化粧台においては、水と樹脂モノマーとがW/O型の逆エマルジョン組成物を含むことにより、空隙の表面が樹脂ポリマーに覆われ、疎水化されているので洗面台使用時に飛散した水が吸水されにくく、セメント結晶物と複合されるので、成形品はさらに疎水性を得ることができる。すなわち、洗面ボウル部1の近くに収納キャビネット3を設置するので、使用時に水が飛散しやすく、その飛散した水によって腐食が起こる可能性があるが、疎水性を持つ成形品であることで、特に腐食が起こりにくい。
【0028】
なお、上記実施形態では収納キャビネット3は洗面台2の前方に設置されているが、側方に設置されても構わない。また、収納キャビネット3はセメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成しているものであれば良く、収納棚7や一部の背面板などは、ガラスや木材等を使用することも可能である。
【実施例】
【0029】
(実施例1、比較例1、2)
・実施例1:収納キャビネットを、普通ポルトランドセメント40重量%、珪石粉20重量%、フライアッシュ10重量%、ビニロン繊維5重量%、W/O型エマルジョン化された材料25重量%(水を含む)の重量比のセメント組成物を用いて成形
・比較例1:実施例1と同様の形状の収納キャビネットを、熱硬化樹脂であるアクリルを用いて成形
・比較例2:実施例1と同様の形状の収納キャビネットを、木材を用いて作成
実施例1、比較例1、比較例2のそれぞれについて、重厚感、透水性、加工性を次の基準により評価した。
【0030】
重厚感は、成形品の触感、打音によって評価した。このときの評価記号は以下の通りとした。◎:石や陶器のような重厚感あり、○:やや重厚感に欠けるが問題ない重厚感、×:プラスチックと同様に重厚感に欠ける。
【0031】
透水性は、成形品に24時間筒を立て、透水における水の浸透度合いで評価した。このときの評価記号は以下の通りとした。◎:全く透水しない、○:やや透水するが、実使用上問題なし、×:透水性大。
【0032】
加工性は、成形品を電動切断ノコギリで切断する際の材料欠け、作業性で評価した。この時の「評価記号は以下の通りとした。◎;問題なし、○:やや材料の欠けはあるが作業性に問題なし、×:材料欠け大、または作業性が悪い(湿式などの専用工具が必要レベル)。
【0033】
これら成形品の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、セメント組成物を用いて成形した収納キャビネットの重厚感は、一般的に使用されているアクリルや木材を用いて作られた収納キャビネットに比べて重厚感が優れる。またW/O型の逆エマルジョン組成物を用いて生成した収納キャビネットの透水性は、アクリルを用いて成形した収納キャビネットに比べると劣るが、木材を用いて作成した収納キャビネットに比べると優れており、水を使用するときに水飛散により透水が抑えられる。さらに セメント組成物を用いて成形した収納キャビネットの加工性は、木材を用いて作成した収納キャビネットのような比重の低い材料に比べると劣るが、十分良い加工性を維持することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 洗面ボウル部
2 洗面台
3 収納キャビネット
4 蛇口
5 収納部
6 突出部
7 収納棚
8 扉
9 鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗面ボウル部を備えた洗面台と、前記洗面台の上部に隣接して設けられる収納キャビネットと、を備えた洗面化粧台であって、
前記収納キャビネットは、セメントを主成分とするセメント組成物の成形品を主体として構成してなることを特徴とする洗面化粧台。
【請求項2】
前記成形品は、材料内部に空隙を有することを特徴とする請求項1に記載の洗面化粧台。
【請求項3】
前記空隙は、表面に疎水化処理がされていることを特徴とする請求項2に記載の洗面化粧台。
【請求項4】
前記セメント組成物は、水と樹脂モノマーとがW/O型の逆エマルジョン組成物を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗面化粧台。

【図1】
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【公開番号】特開2011−83503(P2011−83503A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239964(P2009−239964)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】