説明

洗顔紙及びその製造方法

【課題】1枚の紙のみで顔の汚れを除去し、同時に顔をマッサージすることができ、しかも、これらの行為を場所を問わずに手軽に行なうことを可能にする洗顔紙及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】天然繊維を原料として抄造した和紙であって、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.50〜0.75g/cm、好ましくは0.57〜0.70g/cm範囲内であり、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下、好ましくは1.5秒以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗顔紙及びその製造方法、より詳細には、水や洗顔料を用いることなく、1枚の紙のみを用いて紙で顔を洗う感覚にて顔表面の汚れを除去して清浄化することができる洗顔紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肌表面は意外なほど汚れており、浮き出た皮脂やファンデーションは空気に触れると酸化し、更にチリや細菌や大気汚染物質等が付着して、肌の美しさと健康を損ねる原因となる。顔表面の余分な皮脂、酸化物質等の汚れを除去するためには、石けんや洗顔料等を用いて洗顔するのが一般である。しかし、石けんや洗顔料等を用いて洗顔するには洗面台が必要となるので、この方法には場所的制約が伴い、出先や屋外で手軽に行ない得るものでないことは言うまでもない。
【0003】
また、洗顔の代わりに、あぶら取り紙(和紙)やティッシュペーパー(洋紙)等を用いることもあり、それによってある程度の皮脂等を取り除くことができるが、これも洗顔に代わり得るものではない。即ち、あぶら取り紙の場合は、繊維が薄く叩かれて潰れているため、皮脂を吸着することはできるが、酸化汚れを絡め取ることができない。それだけでなく、逆に、油分を過剰に吸着することで、肌本来の潤いを奪って肌を乾燥させてしまうおそれがある。また、ティッシュペーパーの場合は、細くて短い繊維が規則的に並んだ繊維構造のために強度がなく、簡単に避けたり破れたりするため、やはり肌に当てて酸化汚れを絡め取る用途に使用するのには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−115537号公報
【特許文献2】特開平10−167928号公報
【特許文献3】特許第3823661号公報
【特許文献4】特許第3597381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記背景の下になされたものであって、1枚の紙のみで顔の汚れを除去し、同時に顔をマッサージすることができ、しかも、これらの行為を場所を問わずに手軽に行なうことを可能にする洗顔紙及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、天然繊維を原料として抄造した和紙であって、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.55〜0.75g/cmの範囲内であり、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下であることを特徴とする洗顔紙である。
【0007】
好ましい実施形態においては、前記JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度は0.57〜0.70g/cmの範囲内であり、且つ、前記JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)は1.5秒以下である。
【0008】
また、好ましい実施形態においては、前記天然繊維はマニラ麻等の葉柄繊維であり、サイズは約140mm×300mmであり、厚さは約0.05mmである。
【0009】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、天然繊維を原料として抄造した和紙であって、その抄造は、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.55〜0.75g/cmの範囲内となり、且つ、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下となるように行うことを特徴とする洗顔紙の製造方法である。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度を0.57〜0.70g/cmの範囲内とし、且つ、前記JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)は1.5秒以下とする。
【0011】
また、好ましい実施形態においては、前記天然繊維はマニラ麻等の葉柄繊維とし、また、サイズを約140mm×300mmとし、厚さを約0.05mmとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る洗顔紙は、密度が0.55〜0.75g/cmの範囲内であり、透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下の和紙であって、十分な空気層を有するために肌触りがよく、また、立体凹凸構造の繊維構造を有するために、顔に当ててマッサージをすることにより、肌の汚れを該繊維構造によって無理なく絡み取ることができ、場所を問わずに短時間で水洗顔に代わる洗顔を行い得る効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に詳細に説明する。本発明に係る洗顔紙は、肌表面の酸化したファンデーションや皮脂、付着した汚れ、大気汚染物質等の汚れを、肌をマッサージしつつその立体的繊維構造によって絡め取ることを企図している。そのため、本洗顔紙は、肌触りがよく且つ十分に汚れ除去機能を果たすものである必要がある。
【0014】
本発明者は、これらの条件を満たし得る紙材について鋭意試験研究を重ねた結果、そのような紙を得るためには、紙の種類の選定と共に、紙の密度及び透気度に着目することが有効であるとの知見を得て、本発明を完成させるに至ったものである。即ち、本発明に係る洗顔紙としては、肌にやさしい素材である天然繊維、即ち、マニラ麻等の葉柄繊維を原料として抄造した和紙を用いることとした。
【0015】
和紙は、細長い植物繊維がランダム且つ立体的に絡み合うように漉き込まれて生成されるものであり、その密度は一般に0.3〜0.9g/cmの範囲内であり、地合(繊維の形成状態)は、多孔質で通気性に富むものである。本発明に係る洗顔紙となる和紙は、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が、0.55〜0.75g/cmの範囲内のものとされ、好ましくは、0.57〜0.70g/cmの範囲内のものとされる。
【0016】
ここにおいて上記密度が0.55g/cm以下であると、嵩高不足となって、肌の汚れを絡め取るための繊維の立体凹凸構造が十分に生成されず、強度上も不十分なものとなる。また、それが0.75g/cm以上であると、空隙が不足して繊維と繊維との間に十分な空気層を確保することができなくなり、ふんわりとした肌触り感が得られず、クッション作用によるマッサージ効果が期待できなくなる。
【0017】
また、本発明において用いる和紙は、密度が上記範囲内であると共に、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法(ガーレー試験法)に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下、好ましくは、1.5秒以下の要件を満たすものである。このJISによるガーレー試験は、100mlの空気が紙の単位面積が通過するのに必要な秒数を計測するものであり、数値が小さいほど空気の通りがよいことになる。
【0018】
ここにおいて透気抵抗度を2.0秒以下、好ましくは1.5秒以下としたのは、それが2.0秒を超える場合には通気性に欠けるものとなり、繊維と繊維との間に十分な空気層が確保できないために、ふんわりとした肌触り感が得られず、クッション作用によるマッサージ効果が得られないと考えられるからである。
【0019】
このように本発明に係る洗顔紙においては、肌の汚れを絡め取るための繊維の立体凹凸構造を生成すること、適度な通気性を持たせて繊維と繊維との間に十分な空気層を確保すること、並びに、紙の強度を維持することが必須の要件となり、これらの要件を確実に満たすようにするために、密度と透気度の2つの条件を設定しているのである。
【0020】
本発明に係る洗顔紙は、その使いやすさからして、好適には、約140mm×300mm(製品予定サイズは140mm×297mm)の大判サイズとされ、また、厚さは約0.05mm(製品予定厚さは0.05mm)とされる。このサイズは顔全体を覆うのに適した大きさであり、また、この厚さは、手の圧力を分散・均一化させながら、繊細な手の動きを肌に伝えるのに好適な厚さと考えられる。
【0021】
本発明に係る洗顔紙は、ハンドバッグ、カバン等に入れて携帯し、場所を問わず、顔の汚れ除去のために手軽に使用することができるものである。本洗顔紙を用いて汚れ除去のための洗顔をするに際しては、洗顔紙を伸ばして顔全体に当て、紙の上から手のひらで、通常の洗顔の要領で顔をさするようにする。また、顔のマッサージをするときには、洗顔紙を上記同様に顔全体に当て、手のひらで、マッサージする個所をさすり、抑え、あるいは、押す等の操作をする。これらの操作は、それぞれ洗顔紙1枚を用いて、1〜2分間行えば足りる。
【0022】
下記表1は、福井県工業技術センターにおいて行われた、本発明に係る洗顔紙の試供品の資質試験の試験結果を示すもので、表中の紙密度0.68g/cmは、JIS−P8118に基づく5回の試験結果の平均値であり、また、透気抵抗度1.4s以下は、JIS−P8117に基づく表裏各5回の試験結果の平均値)である。
[表1]

【0023】
上記試供品を用いてのモニターテストを実施した。テストは、本試供品を用いて上記方法により60秒顔洗顔し、洗顔前後における水分、油分及び弾力の変化の観点と、視認できた差異の観点からの肌質変化の比較観察により行った。なお、肌質計測機器として、トリプルセンスTR−3を使用した。
[表2]

【0024】
モニター1は54歳の女性のデータであって、弾力の変化はほとんどなかったが、水分は増加し、逆に油分は減少していた。また、特に肌の透明感、アイリフト、頬肉の高さ、口角リフトの点において、顕著な向上効果が視認された。モニター2は67歳の女性のデータであって、水分及び油分の変化はほとんどなかったが、弾力の点で大きな向上が見られた。また、肌表面のpH値が6.0から6.3に変化しており、特に頬肉リフト効果が顕著であることが視認された。
【0025】
モニター3は46歳の女性のデータであって、弾力は少し向上し、水分の増加と油分の減少は顕著であった。また、特に小顔化及びほうれい線改善効果が視認された。肌表面のpH値変化はなかった。モニター4は30歳の男性のデータであって、弾力の変化はほとんどなかったが、水分が大きく増加し、油分の減少は顕著であった。また、肌表面のpH値が6.4から6.7に変化しており、特に肌の透明感、肌のくすみ改善及びアイリフトの点において、顕著な向上効果が視認された。
【0026】
このテスト結果から明らかなように、本発明に係る洗顔紙を用いての顔洗顔により、男女、年令を問わず、それぞれ何らかの肌の改善効果が見られた。かかる効果を発揮する本洗顔紙は、ハンドバッグ、カバン等に入れて携帯し、場所を問わずに手軽に使用することができる。
【0027】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維を原料として抄造した和紙であって、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.55〜0.75g/cmの範囲内であり、且つ、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下であることを特徴とする洗顔紙。
【請求項2】
前記JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.57〜0.70g/cmの範囲内であり、且つ、前記JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が1.5秒以下である、請求項1に記載の洗顔紙。
【請求項3】
前記天然繊維は、マニラ麻の葉柄繊維である、請求項1又は2に記載の洗顔紙。
【請求項4】
サイズが約140mm×300mmであり、厚さが約0.05mmである、請求項1乃至3のいずれかに記載の洗顔紙。
【請求項5】
天然繊維を原料として抄造した和紙であって、その抄造は、JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.55〜0.75g/cmの範囲内となり、且つ、JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が2.0秒以下となるように行うことを特徴とする洗顔紙の製造方法。
【請求項6】
前記JIS−P8118の紙及び板紙・厚さ及び密度の試験方法に基づく密度が0.57〜0.70g/cmの範囲内となり、且つ、前記JIS−P8117の紙及び板紙・透気度試験方法・ガーレー試験方法に基づく透気抵抗度(ガーレー)が1.5秒以下となるように抄造する、請求項5に記載の洗顔紙の製造方法。
【請求項7】
前記天然繊維を、マニラ麻の葉柄繊維とする、請求項5又は6に記載の洗顔紙の製造方法。
【請求項8】
サイズを約140mm×300mmとし、厚さを約0.05mmとする、請求項5乃至7のいずれかに記載の洗顔紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−180522(P2010−180522A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2267(P2010−2267)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508042489)株式会社イシダ美容研究所 (1)
【Fターム(参考)】