説明

洗髪用ブラシ

【課題】マッサージ用突起の摩耗の程度が触覚又は視覚で容易に判る洗髪用ブラシを提供する。
【解決手段】基台2の底板6から複数の可撓性を有するマッサージ用突起10を垂設してなり、各マッサージ用突起10は、上記底板6と連続して下方へ延びる硬質の芯部12と、この芯部12の外周面から先端面に亘って覆う被覆体14とからなり、かつ上記被覆体14の上端部から延出した固定板8を基台2の底板6の下面に取り付ける。上記被覆体14及び固定板8を、上記芯部12より柔軟な弾性材料で形成するとともに、さらに上記被覆体14の下端側の被覆端部16の一部を厚くして、複数の下方へ突出する摩擦用凸部18に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗髪用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のブラシとして、先端部をやや大径に形成したマッサージ用突起を基台の裏面から多数突設したものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−79425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブラシは、マッサージ用突起が単一の材料(エラストマーなど)で形成されているために、洗髪時の感触が一様であり、使用者の好みに合わないときには買い替えるしかなかった。また長期間使用していると、損耗したり、水垢や石鹸カスによる汚れが溜り、不衛生になるが、使用者の使用の頻度や使い方により損耗・汚れ方の違いがあり、交換時期がわかりにくい。
【0005】
本発明の第1の目的は、マッサージ用突起の摩耗の程度が触覚又は視覚で容易に判る洗髪用ブラシを提供することであり、本発明の第2の目的は、頭髪を擦る方向により触感の異なる洗髪用ブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段は、
基台2の底板6から複数の可撓性を有するマッサージ用突起10を垂設してなり、
各マッサージ用突起10は、上記底板6と連続して下方へ延びる硬質の芯部12と、この芯部12の外周面から先端面に亘って覆う被覆体14とからなり、
かつ上記被覆体14の上端部から延出した固定板8を基台2の底板6の下面に取り付け、
上記被覆体14及び固定板8を、上記芯部12より柔軟な弾性材料で形成するとともに、さらに上記被覆体14の下端側の被覆端部16の一部を厚くして、複数の下方へ突出する摩擦用凸部18に形成した。
【0007】
本手段は、洗髪用ブラシにおいて、マッサージ用突起10を、芯部12の表面を摩擦用凸部18付きの被覆体14で覆い、かつ芯部12を硬材質で、被覆体14を軟材質で形成することを提案している。これにより頭髪や皮膚に接するときの感触が変わり、ブラシを交換する時期が判る。
【0008】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
各マッサージ用突起10は、同一の水平な第1方向Xに対して撓み易く、これと直交する水平な第2方向Yに撓みにくく形成している。
【0009】
本手段は、図1に示すように第1方向Xに撓み易く、これと直交する第2方向Yに撓みにくいように形成することを提案している。これにより、使用者がソフトな感触を好むときには第1方向へ、強い感触を好むときには第2方向へブラッシングすればよい。方向により撓み方が異なるように形成する方法としては、芯部12の上下方向の全部又は一部を、第2方向に比べて第1方向Xに肉薄とした形状とすればよい。これについては後述する。単に芯部12を第1方向Xに肉薄とすると、その方向に屈曲変形したときに損傷して元の状態に復元しなくなる可能性があるので、弾性を有する被覆体14で芯部12を覆っている。
【0010】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記芯部12は、上記第2方向Yに長い横断面を有する帯板状に形成し、被覆端部16の長手方向に沿って上記複数の摩擦用凸部18を配列している。
上記被覆体14はエラストマーで形成し、かつ第1方向Xの被覆体14の厚さが上記芯部12の先端から基端に向かうに従って増大するように形成した。
【0011】
本手段は、図1に示すように芯部12を第2方向Yに長い形状に形成している。これにより第2方向Yへの撓みにくい(第1方向Xへの撓み易い)構造としており、被覆端部16の長手方向に複数の摩擦用凸部18を無理なく配列することができる。また摩擦用凸部18の摩耗により、マッサージ用突起10の形態が、図5(a)に示す未使用状態のものから図7に示すものへ大きく変わるので、利用者が摩耗に気付き易い。
【0012】
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ
上記被覆体14はエラストマーで形成し、かつ第1方向Xの被覆体14の厚さが上記芯部12の先端から基端に向かうに従って増大するように形成している。
【0013】
本手段では、第3の手段の実用的な態様を提案している。すなわち、被覆体14の素材として比較的廉価な弾性材としてエラストマーを採用するとともに、図4(a)に示す如く第1方向Xの被覆体14の厚さが上記芯部12の先端から基端に向かうに従って増大させて十分な弾性力が得られるようにしている。
【0014】
第5の手段は、第3の手段又は第4の手段を有し、かつ
上記被覆体14を半透明の材料で、上記芯部12を、被覆体と色違いの有色材料でそれぞれ形成するとともに、上記摩擦用凸部18付きの被覆端部16を第2方向Yからみて波状に形成し、未使用の状態に比べて上記被覆端部が摩擦により摩耗した状態の方が、下方から見て被覆端部16を透かして芯部12の色が明瞭に見えるように構成した。
【0015】
本手段は、被覆体14を半透明の材料で、芯部12を有色材料で形成し、図10(b)に示すように摩擦用凸部18が摩耗したときに被覆体14の色が下方から透けて見えるようにすることを提案している。これによりブラシの交換時期が容易に判る。
【発明の効果】
【0016】
第1の手段に係る発明によれば、マッサージ用突起10の芯部12を硬材質で、被覆体14を軟材質で形成したから、感触により摩耗の程度が判り、ブラシの交換時期がわかる。
第2の手段に係る発明によれば、マッサージ用突起10の芯部12を水平な第1方向Xに撓み易く、これと直交する第2方向Yに撓み難く形成したから方向により触感が異なるブラシが得られ、また芯部12を覆う被覆体14の下端から延出した固定板8を、弾性を有する被覆体14で覆ったから、芯部12を撓み易い方向に倒したとしても、被覆体14の弾性力により元の位置に確実に復帰する。
第3の手段に係る発明によれば、被覆端部16の長手方向に沿って複数の摩擦用凸部18を配列したから、摩擦用凸部18の摩耗が形状の変化から一見して判る。
第4の手段に係る発明によれば、被覆体14をエラストマーで形成するとともに、第2方向Yの被覆体14の厚さをマッサージ用突起10の先端から基端に亘って増加するように設けたから、十分な弾性力が得られる。
第5の手段に係る発明によれば、摩擦用凸部18の摩耗により芯部12の色が透けて見えるようにしたから、交換時が判る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る洗髪用ブラシの底面図である。
【図2】図1のブラシを第2方向Yから見た側面図である。
【図3】図1のブラシを第1方向Xから見た側面図である。
【図4】図1のブラシのマッサージ用突起の拡大断面図であり、図4(a)は第2方向Yから見た縦断面図であり、図4(b)は図4(a)のA−A方向に見た横断面図である。
【図5】図4のマッサージ用突起の拡大断面図であり、図5(a)は図4(a)のB−B方向から見た縦断面図、図5(b)は、その底面図である。
【図6】図4のマッサージ用突起の作用説明図であり、図6(a)は第1方向Xに移動したときのマッサージ用突起の撓みの様子を、図6(b)は第2方向Yに移動したときのマッサージ用突起の撓みの様子を表している。
【図7】図4のマッサージ用突起が摩耗した状態を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る洗髪用ブラシの第1方向Xから見た側面図である。
【図9】図8のブラシの要部の拡大図であり、図9(a)はその第1方向Xからみた側面図、図9(b)はその底面図である。
【図10】図9の要部の摩耗後の状態を示す図であり、図10(a)はその第1方向Xから見た側面図、図10(b)はその底面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1から図7は、本発明の第1の実施形態に係る洗髪用ブラシを示している。この洗髪用ブラシは、基台2と、マッサージ用突起10とを具備している。
【0019】
基台2は、本体4と底板6と固定板8とで構成されている。上記本体4は、頂板4aから周壁4bを垂下してなる。上記底板6は、その外周部から起立する嵌合筒7を、上記周壁4bの下部内面に篏合させている。上記固定板8は、底板6のほぼ全体を覆って取り付けられている。上記本体4には図示しないハンドルを付設してもよい。
【0020】
マッサージ用突起10は、縦長棒状の芯部12と被覆体14とで形成している。図示のマッサージ用突起10は、図5(b)に示すように下側から見て楕円状に形成しているが、その形状は適宜変更することができる。
【0021】
上記芯部12は、底板6の複数個所から固定板8を貫通して垂下している。底板6と芯部12とは硬質材料で一体に形成するとよい。好適な素材は、合成樹脂、例えばポリプロピレンである。
【0022】
上記芯部12は、第1方向Xに撓み易くかつこれと直交する第2方向Yに撓みにくいように形成する。本実施形態では、芯部12を第2方向Yに長い断面形状を有する帯板に形成しているが、この構造は適宜変更することができる。例えば芯部12の上部(基部)のみを薄板状としたような態様も本願の芯部12の構成に含まれる。全ての芯部12が同じ第1方向Xに撓み易く、かつ同じ第2方向Yに撓みにくいように形成することで、第1方向Xへブラッシングしたときの肌への感触はソフトとなり、第2方向Yにブラッシングしたときの肌への感触は強くなる。
【0023】
図示例では、上記芯部12は、図4(a)に示すように第2方向Yから見て上下方向に一定の厚さでかつ図5(a)に示すように第1方向Xから見て下端側小巾のテーパ状の帯板に形成している。しかしその構造は適宜変更することができる。
【0024】
上記被覆体14は、芯部12の外周面から先端面に至る表面全体を覆っている。この被覆体14と上記の固定板8とは一体に連続成形されており、柔軟な弾性材料、好ましくはエラストマーで形成する。
【0025】
図示の被覆体14は、第1方向Xから見ると図5(a)に示すように芯部12に沿って一定の巾厚であるが、第2方向Yから見ると図4(a)に示すように先端部(下端部)から基端部(上端部)に向かって徐々に巾厚が増加するように形成している。基端部側を巾厚にしかつ上記固定板8と連続形成することで、第1方向Xにマッサージ用突起10が撓むときに十分な弾性復元力を発揮することができる。
【0026】
上記被覆体14は、芯部12の先端面を覆う被覆端部16を有し、その被覆端部16の一部を肉厚に設けて、下方へ突出する摩擦用凸部18を形成している。
【0027】
この摩擦用凸部18は、ブラシ毛の先端と同様に皮膚に接してマッサージ効果を生ずる役割を有する。故に摩擦用凸部18は、頭皮Sを傷付けることのないように頭皮への当接により変形可能に設ける。
【0028】
好適な図示例では、被覆端部16の長手方向(第2方向Y)の一部を複数箇所に亘って摩擦用凸部18に形成し、摩擦用凸部18付きの被覆端部16が図5(a)に示す略波状となるように形成している。一本のマッサージ用突起10で複数本のブラシ毛に相当するマッサージ効果が得られるからである。もっとも各被覆端部16が一つの摩擦用凸部18を有する構造も本発明の範囲から除外しない。
【0029】
なお、本願の洗髪用ブラシのうち、本体4を除く部分(芯部12付きの底板6及び被覆体14付きの固定板8)は、インサート成形または2色成形により一体的に形成することが望ましい。
【0030】
上記構成によれば、図6(a)に示す如く、洗髪用ブラシを黒矢印で示す方向(第1方向X)にブラッシングすると、芯部12を含むマッサージ用突起10は大きく撓む。換言すれば、ブラシを動かす方向と反対側に逃げるようにマッサージ用突起10が変形するので、頭皮Sには同図に白矢印で示すように小さな摩擦力Fが作用する。頭皮Sからマッサージ用突起10を離すと、マッサージ用突起10は、被覆体14の弾性復元力により元の垂直状態に復帰する。
【0031】
また図6(b)に示す如く、洗髪用ブラシを黒矢印で示す方向(第2方向Y)にブラッシングすると、芯部12は殆ど撓まず、摩擦用凸部18が僅かに撓むに留まる。換言すれば、ブラシを動かす力に各マッサージ用突起10が抵抗するので、頭皮Sには同図に白矢印で示すように大きな摩擦力Fが作用する。従ってブラッシングの方向を変えることで洗髪用ブラシの強さを使い分けることができる。
【0032】
また洗髪用ブラシを長期間使用すると、被覆端部16は摩擦用凸部18が摩耗して図7のように平坦になり、略波状である図5の未使用形態から変化する。通常のブラシ毛が摩耗する場合と比較して形状の変化が大きいので、まず利用者が視覚により摩耗に気付き易い。また摩擦用凸部18が図7のように摩耗すると頭皮Sに対する感触が変化する。同図の状態からさらに被覆端部16が摩耗すると、硬材質の芯部12が露出するので、さらに感触が変化する。これにより利用者が触覚により摩耗に気付くことができる。故に利用者が視覚又は触覚によりブラシの交換時期を認識できる。
【0033】
以下本発明の他の形態について説明する。これらの説明において第1実施形態と同じ構造については解説を省略する。
【0034】
図8から図10は、本発明の第2実施形態に係る洗髪用ブラシを示している。
【0035】
本実施形態は、被覆体14を、半透明(好ましくは不透明に近い半透明)の材料で形成し、また芯部12を、被覆体14とは色違いの有色材料で形成したものである。
【0036】
摩擦用凸部18を除く被覆端部16の厚さdは、図10(a)のように摩擦用凸部18が完全に摩耗した状態で下方から芯部12の色を視認可能な程度に設定する。
【0037】
また摩擦用凸部18を含む被覆端部16の厚さdは、その摩擦用凸部18を含む被覆端部16を透過して芯部12を見たときに、芯部12の色を視認できない程度、或いは摩擦用凸部18が摩耗した場合と比べて芯部12の色を視認しにくい程度に設定する。
【0038】
上記構成によれば、図10(a)のように摩擦用凸部18が摩耗したときに、図10(b)に示すようにマッサージ用突起10の底面側に芯部12が透けて見えるので、マッサージ用ブラシの交換時期が判る。
【符号の説明】
【0039】
2…基台 4…本体 4a…頂板 4b…周壁 6…底板 7…嵌合筒 8…固定板
10…マッサージ用突起 12…芯部 14…被覆体 16…被覆端部 18…摩擦用凸部
S…頭皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(2)の底板(6)から複数の可撓性を有するマッサージ用突起(10)を垂設してなり、
各マッサージ用突起(10)は、上記底板(6)と連続して下方へ延びる硬質の芯部(12)と、この芯部(12)の外周面から先端面に亘って覆う被覆体(14)とからなり、
かつ上記被覆体(14)の上端部から延出した固定板(8)を基台(2)の底板(6)の下面に取り付け、
上記被覆体(14)及び固定板(8)を、上記芯部(12)より柔軟な弾性材料で形成するとともに、さらに上記被覆体(14)の下端側の被覆端部(16)の一部を厚くして、複数の下方へ突出する摩擦用凸部(18)に形成したことを特徴とする、洗髪用ブラシ。
【請求項2】
各マッサージ用突起(10)は、同一の水平な第1方向(X)に対して撓み易く、これと直交する水平な第2方向(Y)に撓みにくく形成したことを特徴とする、請求項1記載の洗髪用ブラシ。
【請求項3】
上記芯部(12)は、上記第2方向(Y)に長い横断面を有する帯板状に形成し、被覆端部(16)の長手方向に沿って上記複数の摩擦用凸部(18)を配列したことを特徴とする、請求項2記載の洗髪用ブラシ。
【請求項4】
上記被覆体(14)はエラストマーで形成し、かつ第1方向(X)の被覆体(14)の厚さが上記芯部(12)の先端から基端に向かうに従って増大するように形成したことを特徴とする、請求項3記載の洗髪用ブラシ。
【請求項5】
上記被覆体(14)を半透明の材料で、上記芯部(12)を、被覆体と色違いの有色材料でそれぞれ形成するとともに、上記摩擦用凸部(18)付きの被覆端部(16)を第2方向(Y)からみて波状に形成し、未使用の状態に比べて上記被覆端部が摩擦により摩耗した状態の方が、下方から見て被覆端部(16)を透かして芯部(12)の色が明瞭に見えるように構成したことを特徴とする、請求項3又は請求項4記載の洗髪用ブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−48781(P2013−48781A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189001(P2011−189001)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】