説明

津波対応型階段

【課題】本発明は津波や洪水などの発生時に流出する漂流物が階段に引掛かりにくくし、階段へ引掛かる漂流物による負荷が軽減され、避難用建造物の倒壊や流出させることが防止可能であると共に階段の破壊も防止可能な津波対応型階段を提供することを目的とする。
【解決手段】踏板1を浮力体で形成すると共に各踏板1の両端を側桁2で固定し、階段ユニットAの先端を建造物B側から突出する支持軸4で軸支した構造にする。また各踏板1間に隙間を設けて複数配置するのが良く、更に側桁2の先端側が、建造物B側に固定した踊場3から突出する水平な支持軸4で軸支され、該支持軸4が片持ばりと成されたものとするのが良い。又、階段ユニットAを複数用意し、それらを支持軸4で軸支させたものとしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は津波や洪水などの発生時に、避難場所として利用出来る建造物に取付けた階段が、水位の上昇に伴って水の流れに沿った方向に対応して回転され、漂流物が引掛かりにくくし、階段へ引掛かる漂流物による負荷が軽減される津波対応型階段に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に津波や洪水などが発生した際は、自治体等の定めた高台の学校や公民館等の公共施設へ避難するのが一般的であるが、津波の進行速度は極めて早いため、避難する高台まで離れている住民は、避難が間に合わず、逃げ遅れて津波に飲み込まれてしまう恐れがあった。このため、高い位置に避難場所を設けた津波避難タワー、または高架式津波避難所など多くの提案がされている。しかしながら、これらの避難場所へ行くための階段は固定式であるため、津波や洪水などの発生時には、流水の力によって流された漂流物が階段に引掛かり、避難した建造物に大きな負荷が加わってその建造物を破損や破壊又は倒壊或いは流出する恐れがあった。又、漂流物によって階段が破壊され、津波が引いた後、避難場所から降りられなくなる恐れもあった。
【0003】
尚、避難用建造物以外の一般の建造物に於いて、階段が動くものとしては、地震発生時に、建物の変形に対して階段を円滑に追従させることが出来る構造のものが特開2008−223422で提案されている。この階段は、一方の端部に第1の踊場、他方の端部に第2の踊場を備えた階段ユニットを建物の躯体に取付けた構造に於いて、第1の踊場を、滑り支承を介して躯体に対し相対移動自在に取付ける一方、第2の踊場に於ける階段の幅方向に平行な直線上に、躯体に対し移動不能な固定部を設けると共に、該固定具の両側に躯体に対し所定範囲の移動を許容する半固定部を設け、階段ユニットを、躯体に対し固定部を中心に回転可能な状態で支持させたものである。これは地震発生時に階段が、特開2008−223422に於ける図9に示すように端部が水平方向へ移動するものであり、本発明の如く下端側が持ち上げられて回転する構造のものではなく、且つ、目的も違うものである。
【0004】
又、階段が動く代表的なものとしては、格納式階段がある。例えば、特開平5−340052号がある。この構造は、プレハブ建築物の階上の踊場の延長部分とその上屋とを箱型に形成した収納ボックスと、踊場の階段側の端部を軸として延長方向の斜め下方に向って取付けられた階下に至る階段とを有し、該階段が運搬時に踊場の延長方向に回転されて収納ボックスの底部が平坦に形成されたものである。これはプレハブ建築物に対するものであると共に運搬時に階段を回転させて収納し、取扱いを容易にするためのものであるから、本発明と目的が違い、且つ、本願のように、増水に伴って階段の下端側が持ち上げられて回転する片持ばりの構造とは異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−223422号公報
【特許文献2】特開平5−340052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は津波や洪水などの発生時に流出する漂流物が階段に引掛かりにくくし、階段へ引掛かる漂流物による負荷が軽減され、避難用建造物の倒壊や流出させることが防止可能であると共に階段の破壊も防止可能な津波対応型階段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、少なくとも複数の踏板が設けられた階段ユニットに於いて、踏板を浮力体で形成すると共に各踏板の両端を側桁で固定し、階段ユニットの先端を建造物側から突出する支持軸で軸支する津波対応型階段と成す。また各踏板間に隙間を設けて配置するのが良く、更に、側桁の先端側が、建造物側に固定した踊場から突出する水平な支持軸で軸支され、該支持軸が片持ばりと成されたものとするのが好ましい。尚、本発明で言う「踏板を浮力体で形成」とは、階段が浸水した時に、踏板に浮力を生じるように形成したものを指すものとする。例えば、水よりも軽い発泡樹脂や合成樹脂で形成、或いは内部に中空部を設けて形成するもの及び木製で形成するものを指す。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のように少なくとも複数の踏板(1)が設けられた階段ユニット(A)に於いて、踏板(1)を浮力体で形成すると共に各踏板(1)の両端を側桁(2)で固定し、階段ユニット(A)の先端を建造物(B)側から突出する支持軸(4)で軸支することにより、津波や洪水などの発生時に、流水の力と共に踏板(1)に働く浮力によって、階段ユニット(A)が支持軸(4)を中心に回転され、水平方向へ持ち上げられ、且つ、階段ユニット(A)の外側が支えるべき支柱を省く構造、つまり片持ばりとなるため、増水時に生じる漂流物の引掛かりを最小限に減らし、避難用建造物に加わる負荷を軽減させ、避難用建造物の倒壊や流出させることが防止可能なものとなるのである。又、漂流物による階段の破壊が防止可能となる。
【0009】
請求項2のように各踏板(1)間に隙間が設けられて配置することにより、津波が引いて行く時、階段ユニット(A)が津波の力で元の位置に押し下げられず、浮上状態が確保されるものとなる。
【0010】
請求項3に示すように側桁(2)の先端側が、建造物(B)側に固定した踊場(3)から突出する水平な支持軸(4)で軸支され、該支持軸(4)が片持ばりと成されることにより、階段ユニット(A)の取付けが容易になると共に津波や洪水時に漂流物が引掛かりにくくなり、且つ、瓦礫等の衝突を最小限に減らすことが可能となる。
【0011】
請求項4に示すように複数の階段ユニット(A)を用意し、各階段ユニット(A)を支持軸(4)で軸支させることにより、避難用建造物の高さが高いものに対して、津波や洪水時に漂流物が引掛かりにくくなり、且つ、瓦礫等の衝突を最小限に減らし、避難用建造物に加わる負荷を軽減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の要部構成を示す説明図である。
【図2】本実施形態の踏板を示す一部切欠いた斜視図である。
【図3】本実施形態の支持軸が取付けられる状態を示す説明図である。
【図4】本実施形態の階段ユニットが複数個配置される状態を示す説明図である。
【図5】建物を跨いで設けられた避難デッキに本発明品が取付けられる状態を示す説明図である。
【図6】図5の側面を示す説明図である。
【図7】本発明品が支柱1本の避難デッキに取付けられる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。(A)は少なくとも後述する複数の踏板(1)が設けられた階段ユニットである。(B)は階段ユニット(A)の先端を回動可能に軸支する建造物であり、該建造物(B)としては、避難場所として利用出来る建造物であれば良く、例えば、避難デッキ,津波避難タワー,3階以上の建物の周囲に図5、図6に示すようにして避難場所が設けられたもの,高架式津波避難所などである。
【0014】
(1)は浮力体で形成すると共に隙間を設けて配置した複数の踏板であり、該踏板(1)としては、水よりも軽い発泡樹脂や合成樹脂或いは木で形成すると良いが、内部に中空部を設け、外部を合成樹脂や軽金属で形成したものとしても良い。更に踏板(1)としては、図2に示すように踏板(1)の外周を硬質樹脂などで成形した外枠(11)と、その外枠(11)の内部に形成する重量の軽い発泡体(12)などとから成したものとしても良い。(2)は踏板(1)の両端を固定する金属製又は木製の側桁であり、該側桁(2)の先端部は、後述する踊場(3)の上面と面一になるようにくの字状に折曲している。又、その先端には後述する支持軸(4)を挿入する穴(21)が穿設されている。尚、前記側桁(2)の先端部は必ずしも踊場(3)の上面と面一でなくても良い。
【0015】
(3)は踊場であり、該踊場(3)は両端部が建造物(B)に支持された状態のもの(図4参照)、或いは図7に示すような建造物(B)から突出させた状態のものとしても良い。(4)は建造物(B)側に固定した踊場(3)から突出或いは建造物(B)側から直接突出する水平な支持軸であり、該支持軸(4)は鉄パイプを用い、この支持軸(4)を側桁(2)の穴(21)に挿入すると共にその先端には、図3に示すように、めくら蓋(41)が取付けられている。又、支持軸(4)の他端側には、図3(a)の如く取付盤(42)を固着させ、建造物(B)の鉄筋コンクリート製の柱側に埋設したアンカーボルト(43)で取付盤(42)を固着させることにより、支持軸(4)は片持ばり状態で階段ユニット(A)を支持する。尚、前記取付盤(42)として、円盤状のベースプレートと、該ベースプレートの表面に放射状に固着したリブプレートから成すものを用いると良い。(5)は両側の側桁(2)の上部に取付けた手すりである。尚、前記階段ユニット(A)には、図6に示すような中間踊場を有した長いものを用いても良い。
【0016】
次に本発明品の取付方法について説明する。先ず始めに津波の高さに応じた階段ユニット(A)の個数について説明する。先ず始めに、津波の想定高さが10m以下の場合は、階段ユニット(A)が1個で、津波の高さに応じた避難デッキ(B)に対し、図7に示すように階段ユニット(A)の先端を支持軸(4)で回転可能に取付ける。この時、階段ユニット(A)を取付けた踊場(3)より上方は、一般の階段と同様に固定式とすれば良い。次に津波の想定高さが10m以上の場合は、階段ユニット(A)が複数個で、波の高さに応じた避難デッキ(B)に対し、各階段ユニット(A)の先端を支持軸(4)で回転可能に取付ける。例えば、図4に示すように最下段及びその上の踊場(3)に対して、階段ユニット(A)を回転可能に取付ける。尚、前記避難デッキ(B)に取付ける階段部を全て回転可能に設けたものとしても良い。
【0017】
更に図5、図6に示すように建物を跨いで設けられた避難デッキ(B)に本発明の階段を取付ける場合には、津波の高さに応じた避難デッキ(B)に対して階段を設ける。この時、階段ユニット(A)の先端を支持軸(4)で回転可能に取付ける。
【0018】
次に本発明の作用について説明する。先ず始めに津波警報が発令された時は、階段を上がって避難場所へ行く。その後、津波が押し寄せて来ると、建造物(B)と階段ユニット(A)が浸水する。そして、階段ユニット(A)がある程度浸水すると、階段ユニット(A)には流水の力が加わると共に各踏板(1)には浮力が発生するため、階段ユニット(A)は持ち上げられて津波の水面近くまで浮上するのである。この時、階段ユニット(A)は支持軸(4)を中心にして回転するのである。その後、階段ユニット(A)は津波の水面高さの増加に伴って、図1,図4,図6,図7に示す2点鎖線の位置前後まで回転する。このため、従来の固定された階段の如き漂流物が引掛かることが極めて減り、漂流物及びその漂流物に加わる流水の力によって建造物に大きな負荷となって加わることが殆どなくなり、その建造物が倒壊や流出する恐れが激減されるものとなるのである。又、階段ユニット(A)自体も破壊されにくいものとなる。
【0019】
又、津波が引いて行く際は、津波の破壊力によって破壊された建造物や他の漂流物が、流水と一緒に海へ戻されて行く。この時も上記同様に本発明の階段には漂流物が引掛かりにくくなり、階段ユニット(A)自体が破壊されにくいものとなる。この時、各踏板(1)間に隙間を設けておけば、階段ユニット(A)は確実に浮上状態が確保されるものとなる。
【符号の説明】
【0020】
A 階段ユニット
B 建造物
1 踏板
2 側桁
3 踊場
4 支持軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも複数の踏板(1)が設けられた階段ユニット(A)に於いて、前記踏板(1)を浮力体で形成すると共に各踏板(1)の両端を側桁(2)で固定し、前記階段ユニット(A)の先端を建造物(B)側から突出する支持軸(4)で軸支したことを特徴とする津波対応型階段。
【請求項2】
前記各踏板(1)間に隙間が設けられた請求項1記載の津波対応型階段。
【請求項3】
前記側桁(2)の先端側が、建造物(B)側に固定した踊場(3)から突出する水平な支持軸(4)で軸支され、該支持軸(4)が片持ばりと成された請求項1記載の津波対応型階段。
【請求項4】
前記階段ユニット(A)が複数用意され、各階段ユニット(A)が前記支持軸(4)で軸支された請求項1記載の津波対応型階段。


【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−23828(P2013−23828A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156693(P2011−156693)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(311005747)構建設計株式会社 (3)
【Fターム(参考)】