説明

活性エネルギー線硬化型接着剤組成物

【課題】優れた耐熱性、耐湿性、および耐光性を有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、芳香族環を有しない、特定の構造を有するポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a3)との反応により得られる、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、置換または非置換の環状飽和炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(B)、ならびに置換または非置換の、酸素原子を含む飽和へテロ環基を有する(メタ)アクリル酸エステル(C)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。より詳しくは、本発明は、優れた耐熱性、耐湿性、および耐光性を有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物に関する。本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、特に、ディスプレイ装置の光学フィルムなどの貼り合わせに好適に用いられうる。
【背景技術】
【0002】
紫外線や可視光線などの活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化時間が秒単位と短く、一液性であるため操作が簡便であり、溶剤を必要としないために環境汚染や硬化収縮を低減することができ、熱硬化の場合と比較してエネルギー効率が高い、といった長所を有することから、電気、エレクトロニクス、自動車、家具、精密機械などの幅広い分野において、透明プラスチックなどの接着剤として用いられている。
【0003】
特に、近年、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electroluminescent Display)などが市場に大きく広がり注目されているが、これらディスプレイ装置の光学フィルムなどの貼り合わせにも活性エネルギー硬化型接着剤が用いられている。例えば、特許文献1には、ポリエステルポリオールまたはポリカーボネートポリオール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートと、環状構造を有する特定の単官能(メタ)アクリル酸エステルを必須成分とする、活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が提案されている。そして、該接着剤組成物によると、高温および高湿条件下においても優れた接着力を維持することができ、経時的な着色を少なくすることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/118078号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤組成物を以ってしても、高温、高湿、光照射を伴う厳しい環境下では、接着性能の劣化または着色を所望のレベルまで十分に防ぐことはできず、さらなる改良が求められていた。
【0006】
そこで本発明は、優れた耐熱性、耐湿性、および耐光性を有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定のウレタン(メタ)アクリレート、および特定の(メタ)アクリル酸エステル2種を組み合わせることによって、優れた耐熱性、耐湿性、および耐光性を兼ね備える活性エネルギー線硬化型接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(B)と、(メタ)アクリル酸エステル(C)と、を含む。そして、ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、末端水酸基を有し芳香族環を有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および水添ポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を骨格として有するポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a3)との反応により得られる。また、(メタ)アクリル酸エステル(B)は、下記化学式(1)で表され、(メタ)アクリル酸エステル(C)は、下記式(2)で表される。
【0009】
【化1】

【0010】
上記化学式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の環状飽和炭化水素基を表す。
【0011】
【化2】

【0012】
上記化学式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の、酸素原子を含む飽和へテロ環基を表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた耐熱性、耐湿性、および耐光性を有する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい形態を説明する。
【0015】
本発明の一形態は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、(メタ)アクリル酸エステル(B)と、(メタ)アクリル酸エステル(C)と、を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」とも称する)に関する。
【0016】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、末端水酸基を有し芳香族環を有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および水添ポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を骨格として有するポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a3)との反応により得られる。
【0017】
前記(メタ)アクリル酸エステル(B)は、下記化学式(1)で表される。
【0018】
【化3】

【0019】
上記化学式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の環状飽和炭化水素基を表す。
【0020】
前記(メタ)アクリル酸エステル(C)は、下記化学式(2)で表される。
【0021】
【化4】

【0022】
上記化学式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の、酸素原子を含む飽和へテロ環基を表す。
【0023】
以下、本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
【0024】
<接着剤組成物>
本形態の接着剤組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリル酸エステル(B)、および(メタ)アクリル酸エステル(C)を必須に含み、必要によりその他の添加剤を含みうる。
【0025】
[ウレタン(メタ)アクリレート(A)]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、本形態の接着剤組成物において、主に接着性に寄与する。本形態に係るウレタン(メタ)アクリレート(A)は、末端水酸基を有し芳香族環を有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および水添ポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を骨格として有するポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)と、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a3)との反応により得られる。
【0026】
本発明の一実施形態に係る二官能性のウレタン(メタ)アクリレート(A)の基本構造を下記化学式(3)に示す。
【0027】
【化5】

【0028】
上記化学式(3)によると、直鎖状の骨格Rを有するポリオール(a1)由来のセグメント(S1)と、該セグメント(S1)の両側に存在するイソシアネート化合物(a2)由来のセグメント(S2)の一端とがウレタン結合を介して結合している。そして、セグメント(S2)の他の一端と、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a3)由来のセグメント(S3)とがウレタン結合を介して結合している。
【0029】
ポリオール(a1)は、主に、接着剤組成物の柔軟性に寄与する。ポリオール(a1)は、イソシアネート化合物(a2)とウレタン結合を形成するための末端水酸基を有する。上述の化学式(3)のような二官能性のウレタン(メタ)アクリレートとする場合には、ポリオール(a1)は骨格の両末端にそれぞれ1つずつ水酸基を有する。また、本形態においては、ポリオール(a1)は芳香族環を有しないことを必須とする。これは、芳香族環を有すると、耐光性が悪化してしまうという虞があるからである。
【0030】
さらに、ポリオール(a1)として、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および水添ポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を有することを必須とする。このうち、柔軟性を向上させる観点から、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。なお、これらのポリオールは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
芳香族環を有しないポリエーテルポリオールとしては、特に制限はないが、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0032】
芳香族環を有しないポリエステルポリオールは、特に制限はないが、例えば、芳香族環を有しない多価カルボン酸と多価アルコールをエステル化反応させて得られうるものが使用できる。
【0033】
上記ポリエステルポリオールの原料となりうる芳香族環を有しない多価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、テトラヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、およびイタコン酸などが挙げられる。これらは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
また、上記ポリエステルポリオールの原料となりうる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジメチロールプロピオン酸、およびジメチロールブタン酸、ならびにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
芳香族環を有しないポリカーボネートポリオールは、特に制限はないが、例えば、芳香族環を有しない低分子量ジオールと芳香族環を有しない炭酸ジアルキルエステルとの反応により得られうるもの、およびカプロラクトンと芳香族環を含有しない低分子量ジオールのポリカーボネートポリオールとの共重合体などが使用できる。
【0036】
上記ポリカーボネートポリオールの原料となりうる芳香族環を有しない低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
また、上記ポリカーボネートポリオールの原料となりうる芳香族環を有しない炭酸ジアルキルエステルとしては、例えば、エチレンカーボネート、炭酸ジブチルエステルなどが挙げられる。これらは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
水添ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、1,4−結合を主に有する末端水酸基化ポリブタジエンジオール樹脂、1,2−結合を主に有する末端水酸基化ポリブタジエンジオール樹脂、またはこれらの混合物を水素添加したものなどが使用されうる。
【0039】
上記ポリオール(a)の数平均分子量は、1000〜10000であることが好ましく、1500〜3000であることがより好ましい。数平均分子量がこのような範囲にあると、接着性に優れた接着剤組成物とすることできる。なお、本発明において、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)(ポリスチレン換算)により測定した値を採用するものとする。
【0040】
イソシアネート化合物(a2)は、主に、接着剤組成物の接着強度に寄与する。上述の化学式(3)のような二官能性のウレタン(メタ)アクリレートとする場合には、イソシアネート化合物(a2)はイソシアネート基を2つ有する。
【0041】
イソシアネート化合物(a2)としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、水添ポリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネートなどの公知のものが挙げられる。これらのうち、耐光性の観点から、芳香族環を有しない、水添ポリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、または、イソホロンジイソシアネートを含むことが好ましい。これらのイソシアネート化合物(a2)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
(メタ)アクリレート(a3)は、主に接着剤組成物の接着強度に寄与する。(メタ)アクリレート(a3)は、上述の化学式(3)のように、セグメント(S2)とウレタン結合を形成するために、水酸基を少なくとも1つ有する。
【0043】
このような(メタ)アクリレート(a3)としては、特に制限はなく、公知の化合物を制限なく用いることができる。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a3)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
本形態の接着剤組成物におけるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量は、接着剤組成物の全質量に対して、5〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、25〜40質量%であることがさらに好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量がこのような範囲であると、接着力に優れた接着剤組成物とすることができる。
【0045】
本形態に係るウレタン(メタ)アクリレート(A)は、従来公知の方法を適宜採用して製造することができる。一般的な製造方法としては、ポリオール(a1)およびイソシアネート化合物(a2)を70〜80℃で加熱しながら4〜6時間攪拌する。その後、さらに(メタ)アクリレート(a3)を添加して70〜80℃で加熱しながら4〜6時間攪拌することによって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を合成することができる。
【0046】
この際、ポリオール(a1)、イソシアネート化合物(a2)、(メタ)アクリレート(a3)の仕込み量は、これらの総質量を100質量%とした場合、それぞれ、62.0〜96.9質量%、2.5〜25.2質量%、0.4〜11.7質量%であることが好ましい。各成分の割合がこのような範囲であると、接着力に優れた接着剤組成物とすることができる。
【0047】
また、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の数平均分子量は、2000〜50000であることが好ましく、3000〜15000であることがより好ましい。数平均分子量がこのような範囲であると、接着力に優れた接着剤組成物とすることができる。
【0048】
[(メタ)アクリル酸エステル(B)]
(メタ)アクリル酸エステル(B)は、本形態の接着剤組成物において、主に強度を付与する役割を有する。本形態に係る(メタ)アクリル酸エステル(B)は、下記化学式(1)の構造を有する。
【0049】
【化6】

【0050】
上記化学式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の環状飽和炭化水素基を表す。
【0051】
上記環状飽和炭化水素基としては、特に制限はないが、炭素原子数5〜10の単環式飽和炭化水素基および多環式飽和炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。単環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、およびシクロオクチル基などが挙げられる。また、多環式飽和炭化水素基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、ジシクロペンタニル基、およびトリシクロペンタニル基などが挙げられる。
【0052】
また、環状飽和炭化水素基に存在しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
上記置換基の一部をより具体的な例を挙げて以下に示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1,2−ジメチル−プロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、1−イソプロピルプロポキシ基などが挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基などが挙げられる。ハロゲン化アルコキシ基としては、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ブロモエトキシ基、クロロプロポキシ基、ブロモプロポキシ基などが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられる。
【0054】
本形態の接着剤組成物における(メタ)アクリル酸エステル(B)の含有量は、接着剤組成物の全質量に対して、5〜90質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(B)の含有量が90%以下であると、接着剤組成物が硬くなりすぎず、優れた接着力を確保することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル(B)の含有量が5%以上であると、耐熱性、耐湿熱性に優れた接着剤組成物とすることができる。
【0055】
[(メタ)アクリル酸エステル(C)]
(メタ)アクリル酸エステル(C)は、本形態の接着剤組成物において、主に粘着性を付与する役割を有する。本形態に係る(メタ)アクリル酸エステル(C)は、下記化学式(2)の構造を有する。
【0056】
【化7】

【0057】
上記化学式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の、酸素原子を含む飽和へテロ環基を表す。
【0058】
上記酸素原子を含む飽和へテロ環基としては、特に制限はないが、例えば、テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラニル基、エポキシ基、グリシジル基、α−ラクトン基、β−ラクトン基、γ−ラクトン基、δ−ラクトン基、ε−カプロラクトン基、ジオキソラン基、およびジオキサン基などが挙げられる。
【0059】
また、上記酸素原子を含む飽和へテロ環基に存在しうる置換基としては、上述の環状飽和炭化水素基に存在しうる置換基と同様のものを制限なく用いることができるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
本形態の接着剤組成物における(メタ)アクリル酸エステル(C)の含有量は、接着剤組成物の全質量に対して、5〜80質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(C)の含有量が80%以下であると、接着剤組成物が柔らかくなりすぎず、さらに耐熱性、耐湿熱性を維持することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル(C)の含有量が5%以上であると、接着力に優れた接着剤組成物とすることができる。
【0061】
本形態の接着剤組成物の製造方法は、特に制限はなく、上述のウレタン(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリル酸エステル(B)、および(メタ)アクリル酸エステル(C)、ならびに必要によりその他の添加剤を、所定量混合することによって得られる。添加剤としては、例えば、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、重合禁止剤、帯電防止剤、充填剤などが用いられうる。
【0062】
<接着方法>
本発明の他の形態は、上述の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を用いた接着方法に関する。すなわち、本形態の接着方法は、第1の基材と、第2の基材とを、上記活性エネルギー線硬化型接着剤組成物および光重合開始剤の混合物を介して基材を貼り合わせる工程と、その後該混合物に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む。
【0063】
本形態に用いる光重合開始剤は、特に制限はなく、従来公知の化合物を適宜採用することができる。一例を挙げると、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリドなどのベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリドなどのチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフォンオキサイド類などが挙げられる。これらの光重合開始剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
光重合開始剤の添加量は、接着剤組成物の全質量に対して、0.5〜10質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。なお、接着剤組成物と光重合開始剤とを混合する方法も特に制限はない。
【0065】
次に、第1の基材と第2の基材とを接着剤組成物および光重合開始剤を含む混合物を介して貼り合わせる。基材としては、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレン、ポリエーテルニトリル、およびポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスチレン樹脂などのプラスチックフィルムまたはプラスチックシート、ガラス板、銅板、アルミ板、鉄板、ならびに紙などが挙げられる。貼り合わせる基材同士は、同種の材料であっても、異種の材料であっても構わないが、基材の少なくとも一部は、接着剤組成物の硬化に必要な活性エネルギー線を透過できる材料である必要がある。
【0066】
これらの基材に上記混合物を塗布する方法も特に制限はなく、従来公知の方法、例えば、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレー法などを用いることができる。
【0067】
その後、該混合物に活性エネルギー線を照射する。活性エネルギー線としては、例えば紫外線および可視光線などが挙げられる。これらの活性エネルギー線の照射には、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、また無電極ランプなどが用いられうる。照射される光量は、基材の種類または接着剤組成物の塗布量によって適宜調整されうるが、通常500〜1000mJ/cm程度である。
【0068】
本形態の接着剤組成物は、接着能力に優れ、また、高温、高湿、または光照射条件下に曝されても、優れた接着能力が維持されるとともに、着色しにくいものである。よって、本形態の接着剤組成物、または接着方法は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、および有機ELディスプレイなどの、ディスプレイ装置の光学フィルムの貼り合わせに特に好適に用いられうる。
【実施例】
【0069】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0070】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成>
[製造例1]
攪拌器、温度計、還流冷却器、および窒素導入管を装備したフラスコに、ポリエーテルポリオール(サンニックスジオールPP−2000、数平均分子量2000、三洋化成工業株式会社製)400質量部を仕込んだ。次に、窒素ガスを吹き込みながら、系内を60℃まで昇温し、均一に溶解した後、トリレンジイソシアネート54質量部を加え、さらに100℃まで昇温し、6時間保温した。そして、90℃に降温し、窒素ガスの吹き込みを中止した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5質量部を加え、7時間保温した。反応液中にイソシアネート基が消失したことをIR測定により確認した後反応を終了し、数平均分子量が11000であるウレタンアクリレート(TA37−228A)を得た。
【0071】
[製造例2]
製造例1と同様の装置に、ポリエーテルポリオール(サンニックスジオールPP−2000、数平均分子量2000、三洋化成工業株式会社製)400質量部を仕込んだ。次に、窒素ガスを吹き込みながら、系内を60℃まで昇温し、均一に溶解した後、トリレンジイソシアネート59質量部を加え、さらに100℃まで昇温し、6時間保温した。そして、90℃に降温し、窒素ガスの吹き込みを中止した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート16質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5質量部を加え、7時間保温した。反応液中にイソシアネート基が消失したことをIR測定により確認した後反応を終了し、数平均分子量が5000であるウレタンアクリレート(TA37−228B)を得た。
【0072】
[製造例3]
製造例1と同様の装置に、ポリエステルポリオール(テスラック2462(メチルペンタンジオールおよびアジピン酸からなるポリエステルポリオール)、数平均分子量2000、日立化成ポリマー株式会社製)400質量部を仕込んだ。次に、窒素ガスを吹き込みながら、系内を60℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート54質量部を加え、さらに100℃まで昇温し、4時間保温した。そして、90℃に降温し、窒素ガスの吹き込みを中止した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5質量部を加え、8時間保温した。反応液中にイソシアネート基が消失したことをIR測定により確認した後反応を終了し、数平均分子量が11000であるウレタンアクリレート(TA37−228C)を得た。
【0073】
[製造例4]
製造例1と同様の装置に、ポリエステルポリオール(テスラック2477(エチレングリコール、ヘキサンジオール、アジピン酸、およびイソフタル酸からなるポリエステルポリオール)、数平均分子量2000、日立化成ポリマー株式会社製)400質量部を仕込んだ。次に、窒素ガスを吹き込みながら、系内を60℃まで昇温し、均一に溶解した後、イソホロンジイソシアネート54質量部を加え、さらに100℃まで昇温し、4時間保温した。そして、90℃に降温し、窒素ガスの吹き込みを中止した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.5質量部を加え、8時間保温した。反応液中にイソシアネート基が消失したことをIR測定により確認した後反応を終了し、数平均分子量が11000であるウレタンアクリレート(TA37−228D)を得た。
【0074】
<接着剤組成物の調製>
[実施例1]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを35質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、イソボルニルアクリレート(IBXA)(共栄社化学株式会社製)を45質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(ビスコート#150、大阪有機化学工業株式会社株式会社製)を20質量部;
光重合開始剤(D)として、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニルケトン(イルガキュア184(IC184)、チバ・ジャパン株式会社製)を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(1)を調製した。
【0075】
[実施例2]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを35質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、ジシクロペンタニルアクリレート(FA−513AS、日立化成工業株式会社製)を40質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを25質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(2)を調製した。
【0076】
[実施例3]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを35質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを35質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(3)を調製した。
【0077】
[実施例4]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(4)を調製した。
【0078】
[実施例5]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Bを35質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを25質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(5)を調製した。
【0079】
[実施例6]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Cを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを45質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを25質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な接着剤組成物(6)を調製した。
【0080】
[比較例1]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを70質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(1)を調製した。
【0081】
[比較例2]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを70質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(2)を調製した。
【0082】
[比較例3]
芳香族環を有するTA37−228Dを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(3)を調製した。
【0083】
[比較例4]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
オルト−フェニルフェノール エチレンオキシド(EO)変性アクリレート(FA−302A、日立化成工業株式会社製)を30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(4)を調製した。
【0084】
[比較例5]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
フェノキシエチルアクリレート(FA−310A、日立化成工業株式会社製)を30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(5)を調製した。
【0085】
[比較例6]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(B)として、IBXAを40質量部;
2−ヒドロキシエチルアクリレート(AHEC)(ライトエステルHOA、共栄社化学株式会社製)を30質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(6)を調製した。
【0086】
[比較例7]
ウレタン(メタ)アクリレート(A)として、TA37−228Aを30質量部;
(メタ)アクリル酸エステル(C)として、THFAを30質量部;
2−アクリロイロキシエチル−フタル酸(MPL)(HOA−MPL、共栄社化学株式会社製)を40質量部;
光重合開始剤(D)として、IC184を3質量部;
を60℃で十分に加熱攪拌して、均一な比較用接着剤組成物(7)を調製した。
【0087】
なお、上記実施例および比較例で調製した接着剤組成物の組成を下記表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
<試験片の作製>
上記実施例および比較例で得られた接着剤組成物および比較用接着剤組成物を、膜厚130μmのポリカーボネート(PC)フィルム上に、接着剤組成物の膜厚が15μmとなるように均等に塗布し、この上にPCフィルムを貼り合わせた。その後、得られた積層体にUV照射装置(ECS−401GX、アイグラフィックス株式会社製)を用いてUVを照射(ランプ:160W/cm メタルハライドランプ(M04−L41)、ランプ出力:2kW、コンベアスピード:5m/min、ランプ高さ:180mm、積算光量:500mJ/cm)し、接着剤組成物を硬化させて試験片を作製した。
【0090】
<耐熱試験>
上記で作製した試験片を85℃の恒温試験機に入れ、1000時間放置したものを耐熱試験後の試験片とした。
【0091】
<耐湿熱試験>
上記で作製した試験片を65℃、95%RH(相対湿度)の恒温恒湿試験機に入れ、100時間放置したものを耐湿熱試験後の試験片とした。
【0092】
<耐光試験>
上記で作製した試験片を紫外線オートフェードメーター(U48AU、スガ試験機株式会社製)を用いて37℃、40%RH(相対湿度)で288時間放置したものを耐光性試験後の試験片とした。
【0093】
<接着力の測定>
上記で作製した試験片を1cm幅に切断し、180°ピール試験(速度:10mm/min)を行い、接着力を測定した。結果を下記表2に示す。
【0094】
<光学特性の測定>
上記で作成した上記耐熱試験、耐湿熱試験、または耐光試験の前後の試験片について、知覚的にほぼ均等な歩度を持つ色空間の明度指数L、色座標a、bによる色差ΔEを、分公式色彩計(SE−2000、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。結果を下記表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
表2の結果より、実施例1〜6は、初期の接着力に優れ、かつ各耐久試験後であっても接着能力の劣化が小さいことが示された。また、実施例1〜6は、各耐久試験後の光学特性の悪化(着色)も抑えられることが示された。
【0097】
一方、(メタ)アクリル酸エステル(B)または(メタ)アクリル酸エステル(C)のどちらか一方のみを用いた比較例1、2は、接着力が著しく低かった。つまり、実施例1、3〜6ならびに比較例1、2の結果から、(メタ)アクリル酸エステル(B)および(メタ)アクリル酸エステル(C)は単独では接着力が低いが、組み合わせることによって、顕著な接着力が発現することが示された。また、(メタ)アクリル酸エステル(B)または(メタ)アクリル酸エステル(C)に代えて、他のアクリル酸エステルを用いた4〜7は、接着力が著しく低かった。また、本形態のウレタン(メタ)アクリレート(A)を用いずに、芳香族環を有するポリエステルポリオールを骨格とした比較例3は、各耐久試験後に光学特性の悪化が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
下記化学式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(B)と、
下記化学式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル(C)と、を含む活性エネルギー線硬化型接着剤組成物;
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、末端水酸基を有し芳香族環を有しない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、および水添ポリブタジエンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を骨格として有するポリオール(a1)と、イソシアネート化合物(a2)と、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a3)との反応により得られるものである;
【化1】

上記化学式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の環状飽和炭化水素基を表す;
【化2】

上記化学式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、置換または非置換の、酸素原子を含む飽和へテロ環基を表す。
【請求項2】
接着剤組成物の全質量に対して、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有量が5〜60質量%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル(B)の含有量が5〜90
質量%であり、前記(メタ)アクリル酸エステル(C)の含有量が5〜80質量%である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の骨格が、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記Rが、イソボルニル基またはジシクロペンタニル基であり、前記Rが、テトラヒドロフルフリル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
第1の基材と、第2の基材とを、請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤組成物および光重合開始剤の混合物を介して貼り合わせる工程と、
その後、前記混合物に活性エネルギー線を照射する工程と、を含む接着方法。

【公開番号】特開2011−190421(P2011−190421A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60215(P2010−60215)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】