説明

活性エネルギー線硬化型組成物、および硬化物

【課題】
本発明は、優れた耐熱性、耐油性、柔軟性を維持しつつ、紫外線硬化後の表面硬化阻害が改善された活性エネルギー線硬化型組成物、および硬化物を提供することを目的とする。
【解決手段】
活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1個未満有するビニル系重合体(A)、活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1.5個以上有するビニル系重合体(B)、活性エネルギー線重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)、ポリエーテル構造を有する化合物を含有する活性エネルギー硬化型組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1個未満有するビニル系重合体(A)、活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1.5個以上有するビニル系重合体(B)、活性エネルギー線重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)、ポリエーテル構造を有する化合物を含有する活性エネルギー硬化型組成物、および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品は小型軽量化および高性能化が進み、各種電気・電子部品、半導体、自動車、産業機械等に使用される実装回路板は高密度搭載がなされ、また、高温・高湿等の過酷な環境下での使用が多くなってきており、回路基板を急激な温度変化、湿分、水、塵等から保護するため、その表面をポッティング材により保護することが一般に行われている。ポッティング材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が知られている。
【0003】
シリコーン樹脂は硬化するまでの時間がかかり生産性に問題があり、回路基板上のハンダフラックスにより硬化阻害を生じやすいという問題があり、また、硬化物から染み出した低分子シリコーン化合物が周囲を汚染して接点障害を生じるといった課題がある。
【0004】
アクリル樹脂は扱い易く、電気的・物理的特性に優れているが耐溶剤性に乏しく、また、従来のアクリル樹脂は高弾性率であり、回路基板に大きな負荷を与えるため、環境温度の変化による皮膜の膨張や収縮により、はんだの剥離やリード線の断線や変形を生じるといった課題がある。
【0005】
ウレタン樹脂は良好な誘電性を有し、耐湿性、耐薬品性に優れているが、低弾性率の柔らかい硬化物が得られにくく、また耐熱性に劣るため高温の条件化で長時間放置されると軟化劣化してしまうという課題がある。
【0006】
エポキシは耐湿性、耐摩耗性および耐薬品性に優れているがポットライフが短かく、その上硬化に長時間必要といった課題があり、更に、エポキシ樹脂は高温の条件下で長時間放置されると、酸化劣化により硬化物が硬くなり実装回路板に応力がかかるとクラック、剥離が発生し、信頼性が低下する恐れがある。
一方、近年、ポッティング材は生産性の向上という点から硬化時間の短縮が求められており、紫外線硬化反応を導入する検討が試みられている。
【0007】
上記のような問題を解決するために、耐熱性、耐油性、制振性に優れた制振材用硬化性組成物が開発されている(特許文献1)。しかしながら、アクリロイル基の紫外線ラジカル重合反応により、低弾性の柔らかい硬化物を得る場合、表面硬化阻害が課題であり(非特許文献1)、さらに高温での柔軟性保持に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/069600号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】UV硬化における硬化不良・阻害要因とその対策((株)情報技術協会 2003年12月11日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、優れた耐熱性、耐油性、柔軟性を維持しつつ、紫外線硬化後の表面硬化阻害が改善された活性エネルギー線硬化型組成物、および硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とイオウ系またはリン系酸化防止剤の組合せ、およびポリエーテル構造を有する化合物を含有する活性エネルギー硬化型組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)、活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)、活性エネルギー線重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物である。
【0013】
活性エネルギー線架橋性基が一般式(1)
−OC(O)C(R10)=CH (1)
(式中、R10は水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0014】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものである活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0015】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものである活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、リビングラジカル重合法により製造されたものである活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0016】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、原子移動ラジカル重合法により製造されたものである活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0017】
ビニル系重合体(A)および(B)の活性エネルギー線架橋性基が分子鎖末端にある活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0018】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)と活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量%における(A)成分の含有量が20〜99重量%である活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0019】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)および、活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量部に対し、活性エネルギー線重合開始剤(C)0.01〜5重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)0.1〜5重量部、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)0.1〜5重量部、を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0020】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分に加え、ポリエーテル構造を有する化合物(F)を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0021】
ポリエーテル構造を有する化合物(F)が、ポリエチレンオキサイド構造を有する化合物である活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0022】
ポリエーテル構造を有する化合物(F)が、(メタ)アクリロイル基を有する活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
【0023】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)および、活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量部に対し、ポリエーテル構造を有する化合物(F)1〜30重量部を含有する活性エネルギー線硬化型組成物であることが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化型組成物より得られた硬化物に関する。
活性エネルギー線硬化型組成物より得られた硬化物の針入度が20以上である硬化物に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によれば、優れた耐熱性、耐油性、柔軟性を維持しつつ、紫外線硬化後の表面硬化阻害が改善された活性エネルギー線硬化型組成物、および硬化物をを与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)、活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)、活性エネルギー線重合開始剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)、場合によってポリエーテル構造を有する化合物(F)を含有する。以下に、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に含まれる成分について説明する。
【0026】
<ビニル系重合体(A)および(B)について>
<主鎖>
本発明のビニル系重合体(A)および(B)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー、;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー; 無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フエニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー; アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ビニル系重合体(A)および(B)は、生成物の物性等から、主鎖が(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して得られる(メタ)アクリル系重合体が好ましい。より好ましくは、主鎖がアクリル系モノマーを主として重合して得られるアクリル系重合体であり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーを主として重合して得られるアクリル酸エステル系重合体である。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち30モル%以上、好ましくは50モル%以上が、上記モノマーであることを意味する。一般建築用等の用途においては配合物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴いその良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性を要求される用途にはその比率は40重量%(以下、単に%ということもある)以下にするのが好ましく、更には30重量%以下にするのがより好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は40%以下にするのが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50/20〜30/30〜20)の共重合体が挙げられる。
【0028】
本発明のビニル系重合体(A)および(B)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、なお好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0029】
本発明におけるビニル系重合体(A)および(B)の数平均分子量は特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した場合、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。
【0030】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)と活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量%における(A)成分の含有量は、20〜99重量%であることが好ましく、40〜95重量%であることがより好ましい。(A)成分の含有量が20重量%以下だと柔軟な硬化物が得られなくなる。一方、(A)成分の含有量が99重量%以上だと硬化しない。
【0031】
<主鎖の合成法>
本発明における、ビニル系重合体(A)、ビニル系重合体(B)の合成法は、制御ラジカル重合であることが好ましく、限定はされないが、リビングラジカル重合が好ましく、原子移動ラジカル重合がより好ましい。以下にこれらについて説明する。
【0032】
制御ラジカル重合
ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
【0033】
「一般的なラジカル重合法」は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能基が導入されない重合体の割合が大きくなるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0034】
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合をおこなうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0035】
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対してかなり大量の特定の官能基を有する連鎖移動剤が必要であり、処理も含めて経済面で問題がある。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0036】
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0037】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0038】
なお、リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0039】
「リビングラジカル重合法」は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されるようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されるようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
【0040】
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
【0041】
本発明において、これらのリビングラジカル重合のうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、原子移動ラジカル重合法が好ましい。
【0042】
以下にリビングラジカル重合について詳細に説明していくが、その前に、後に説明する(メタ)アクリル系重合体の製造に用いることができる制御ラジカル重合のうちの一つ、連鎖移動剤を用いた重合について説明する。連鎖移動剤(テロマー)を用いたラジカル重合としては、特に限定されないが、本発明に適した末端構造を有したビニル系重合体を得る方法としては、次の2つの方法が例示される。
【0043】
特開平4−132706号公報に示されているようなハロゲン化炭化水素を連鎖移動剤として用いてハロゲン末端の重合体を得る方法と、特開昭61−271306号公報、特許2594402号公報、特開昭54−47782号公報に示されているような水酸基含有メルカプタンあるいは水酸基含有ポリスルフィド等を連鎖移動剤として用いて水酸基末端の重合体を得る方法である。
【0044】
以下に、リビングラジカル重合について説明する。
【0045】
そのうち、まず、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる方法について説明する。この重合では一般に安定なニトロキシフリーラジカル(=N−O・)をラジカルキャッピング剤として用いる。このような化合物類としては、限定はされないが、2,2,6,6−置換−1−ピペリジニルオキシラジカルや2,2,5,5−置換−1−ピロリジニルオキシラジカル等、環状ヒドロキシアミンからのニトロキシフリーラジカルが好ましい。置換基としてはメチル基やエチル基等の炭素数4以下のアルキル基が適当である。具体的なニトロキシフリーラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0046】
上記ラジカルキャッピング剤はラジカル発生剤と併用される。ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤との反応生成物が重合開始剤となって付加重合性モノマーの重合が進行すると考えられる。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル開始剤0.1〜10モルが適当である。
【0047】
ラジカル発生剤としては、種々の化合物を使用することができるが、重合温度条件下で、ラジカルを発生しうるパーオキシドが好ましい。このパーオキシドとしては、限定はされないが、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート類、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類等がある。特にベンゾイルパーオキシドが好ましい。さらに、パーオキシドの代わりにアゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル発生性アゾ化合物等のラジカル発生剤も使用しうる。
【0048】
Macromolecules 1995,28,P.2993で報告されているように、ラジカルキャッピング剤とラジカル発生剤を併用する代わりに、下図のようなアルコキシアミン化合物を開始剤として用いても構わない。
【0049】
【化1】

【0050】
アルコキシアミン化合物を開始剤として用いる場合、それが上図で示されているような水酸基等の官能基を有するものを用いると、末端に官能基を有する重合体が得られる。これを本発明の方法に利用すると、末端に官能基を有する重合体が得られる。
【0051】
上記のニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる重合で用いられるモノマー、溶媒、重合温度等の重合条件は、限定されないが、次に説明する原子移動ラジカル重合について用いるものと同様で構わない。
原子移動ラジカル重合
次に、本発明のリビングラジカル重合としてより好ましい原子移動ラジカル重合法について説明する。
【0052】
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH、C−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C(H)(X)−CO、R−C(CH)(X)−CO、R−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
−C−SO
(式中、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0053】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基以外の官能基を有する有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に官能基を、他方の主鎖末端に原子移動ラジカル重合の生長末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体が製造される。このような官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。
【0054】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(2)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(R)=CH (2)
(式中、Rは水素、またはメチル基、R、Rは水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、または他端において相互に連結したもの、Rは、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、Rは直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
置換基R、Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。RとRは他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0055】
一般式(2)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
【0056】
【化2】

【0057】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH、HCC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH、CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
【0058】
【化3】

【0059】
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH、o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0060】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R−C(R)(X)−R−R (3)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ、Rは、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
【0061】
は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、RとしてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。Rが直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、RとしてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0062】
一般式(3)の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、CH=C(CH)CHX、CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH、CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH(CH、CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH、CH=CHCHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CH(CHC(H)(X)−COR、CH=CHCHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C、CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0063】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
【0064】
生長末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0065】
【化4】

【0066】
【化5】

【0067】
等が挙げられる。
【0068】
この重合において用いられる(メタ)アクリル系モノマーとしては特に制約はなく、既に例示したものをすべて好適に用いることができる。
【0069】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子が添加される。好ましい配位子は、含窒素化合物であり、より好ましい配位子は、キレート型含窒素化合物であり、さらに好ましい配位子は、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンである。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
【0070】
重合は無溶剤または各種の溶剤中で行なうことができる。溶剤の種類としては、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられ、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
また、限定はされないが、重合は0℃〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは50〜150℃である。
【0072】
本発明の原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態、例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II’)に対し、過酸化物等の一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules 1999,32,2872参照)。
【0073】
<官能基>
活性エネルギー線架橋性基
活性エネルギー線架橋性基としては、重合性が良い点からメタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましく、さらに好ましくはアクリロイル基である。また市販の活性エネルギー線重合開始剤の種類が豊富であり硬化性を調整しやすい点で、メタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましい。さらに市販の共重合可能なアクリルモノマーおよびアクリルオリゴマーの種類が豊富であり硬化性および硬化物性を調整しやすい点で、メタアクリロイル基、およびアクリロイル基が好ましい。
【0074】
活性エネルギー線架橋性基の数
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)は、組成物の硬化性、および硬化物の物性の点から0.6個以上1個未満有することが好ましく、0.8個以上1個未満有することがより好ましい。0.6個未満の場合、未硬化成分がブリードするために、耐熱性が低下する。一方、1個以上の場合、硬化物が高弾性の傾向になる。
【0075】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)は、組成物の硬化性、および硬化物の物性の点から、1.5個以上3.5個未満有することが好ましく、1.8個以上2.5個未満有することが好ましい。1.5個未満の場合、硬化性が低下したり、耐熱性が低下する。一方、3.5個以上の場合、硬化物が著しく高弾性の傾向になる。
【0076】
架橋性官能基の位置
本発明の硬化性組成物を硬化させてなる硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性官能基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性官能基を分子鎖末端に有するものである。
【0077】
上記架橋性官能基を分子末端に少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報等に開示されている。しかしながらこれらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、架橋性官能基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、粘度が高くなるという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、粘度の低い(メタ)アクリル系重合体であって、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系重合体を得るためには、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。
【0078】
ビニル系重合体(A)および(B)が有する活性エネルギー線架橋性基としては、特に限定するわけではないが重合性の炭素−炭素二重結合が挙げられる。
【0079】
本発明における重合性の炭素−炭素二重結合は、限定はされないが、一般式(7)で表されるものであることが好ましい。
C=C(R11)− (7)
(式中、R11は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基である)
一般式(7)において、R11は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH−CH、−CH(CH)−(CH−CH、−CH(CHCH)−(CH−CH、−CH(CHCH、−C(CH−(CH−CH、−C(CH)(CHCH)−(CH−CH、−C、−C(CH)、−C(CH、−(CH−C、−(CH−C(CH)、−(CH−C(CH
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
これらの内では、水素原子が好ましい。
【0080】
さらに、限定はされないが、ビニル系重合体(A)および(B)の重合性の炭素−炭素二重結合が、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0081】
重合性の炭素−炭素二重結合と重合体の主鎖の結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。
【0082】
活性エネルギー線架橋性基の導入法
以下に、ビニル系重合体(A)および(B)への活性エネルギー線架橋性基の導入法について説明するが、これに限定されるものではない。
【0083】
末端官能基変換により重合性の炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、限定はされないが、以下のような方法が挙げられる。
【0084】
(1)(メタ)アクリル系重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法。具体例としては、一般式(27)で表される構造を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(28)で示される化合物との反応による方法。
−CR2930X (27)
(式中、R29、R30は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
+−OC(O)C(R13)=CH (28)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Mはアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
【0085】
(2)水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(29)で示される化合物との反応による方法。
XC(O)C(R13)=CH (29)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
【0086】
(3)水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(30)で示される化合物との反応による方法。
HO−R31−OC(O)C(R13)=CH (30)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R31は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
以下にこれらの各方法について詳細に説明する。
【0087】
上記(1)の方法について説明する。
一般式(27)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(28)で示される化合物との反応による方法。
−CR2930X (27)
(式中、R29、R30は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、又は、ヨウ素を表す。)
+−OC(O)C(R13)=CH (28)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Mはアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
【0088】
一般式(27)で表される末端構造を有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0089】
一般式(28)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表す)、−C、−CHOH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CHである。Mはオキシアニオンの対カチオンであり、Mの種類としてはアルカリ金属イオン、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および4級アンモニウムイオンが挙げられる。4級アンモニウムイオンとしてはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンおよびジメチルピペリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。一般式(28)のオキシアニオンの使用量は、一般式(27)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、更に好ましくは1.0〜1.2当量である。この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、等が用いられる。反応を行う温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行う。
【0090】
上記(2)の方法について説明する。
水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体と、一般式(29)で示される化合物との反応による方法。
XC(O)C(R13)=CH (29)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。Xは塩素、臭素、または水酸基を表す。)
【0091】
一般式(29)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表す)、−C、−CHOH、−CN等が挙げられ、好ましくは−H、−CHである。
【0092】
水酸基を、好ましくは末端に、有する(メタ)アクリル系重合体は、上述した有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、水酸基を持つ化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。これらの方法により水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は限定されないが、以下のような方法が例示される。
【0093】
(a)リビングラジカル重合により(メタ)アクリル系重合体を合成する際に、下記一般式(31)等で表される一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を第2のモノマーとして反応させる方法。
C=C(R32)−R33−R34−OH (31)
(式中、R32は炭素数1〜20の有機基で水素またはメチル基が好ましく、互いに同一であっても異なっていてもよい。R33は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−もしくはp−フェニレン基を表す。R34は直接結合、または1個以上のエーテル結合を有していてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。R33がエステル基のものは(メタ)アクリレート系化合物、R33がフェニレン基のものはスチレン系の化合物である。)
【0094】
なお、一分子中に重合性のアルケニル基および水酸基を併せ持つ化合物を反応させる時期に制限はないが、特にゴム的な性質を期待する場合には重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして反応させるのが好ましい。
【0095】
(b)リビングラジカル重合により(メタ)アクリル系重合体を合成する際に、重合反応の終期あるいは所定のモノマーの反応終了後に、第2のモノマーとして、一分子中に重合性の低いアルケニル基および水酸基を有する化合物を反応させる方法。
【0096】
このような化合物としては特に限定されないが、一般式(32)に示される化合物等が挙げられる。
C=C(R32)−R35−OH (32)
(式中、R32は上述したものと同様である。R35は1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜20の2価の有機基を表す。)
【0097】
上記一般式(32)に示される化合物としては特に限定されないが、入手が容易であるということから、10−ウンデセノール、5−ヘキセノール、アリルアルコールのようなアルケニルアルコールが好ましい。
【0098】
(c)特開平4−132706号公報などに開示されるような方法で、原子移動ラジカル重合により得られる一般式(27)で表されるような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個に有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを、加水分解あるいは水酸基含有化合物と反応させることにより、末端に水酸基を導入する方法。
【0099】
(d)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(27)で表されるような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、一般式(33)に挙げられるような水酸基を有する安定化カルバニオンを反応させてハロゲンを置換する方法。
(R36)(R37)−R35−OH (33)
(式中、R35は上述したものと同様である。R36およびR37はともにカルバニオンCを安定化する電子吸引基、または一方が上記電子吸引基で他方が水素または炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を表す。R36およびR37の電子吸引基としては、−COR(エステル基)、−C(O)R(ケト基)、−CON(R)(アミド基)、−COSR(チオエステル基)、−CN(ニトリル基)、−NO(ニトロ基)等が挙げられる。置換基Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基である。R36およびR37としては、−COR、−C(O)Rおよび−CNが特に好ましい。)
(e)原子移動ラジカル重合により得られる一般式(27)で表される炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、例えば亜鉛のような金属単体あるいは有機金属化合物を作用させてエノレートアニオンを調製し、しかる後にアルデヒド類、又はケトン類を反応させる方法。
【0100】
(f)重合体末端のハロゲン、好ましくは一般式(27)で表されるハロゲンを少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体に、下記一般式(34)等で表される水酸基含有オキシアニオン又は下記一般式(35)等で表される水酸基含有カルボキシレートアニオンを反応させて、上記ハロゲンを水酸基含有置換基に置換する方法。
HO−R35−O (34)
(式中、R35およびMは上述したものと同様である。)
HO−R35−C(O)O (35)
(式中、R35およびMは上述したものと同様である。)
【0101】
本発明では(a)〜(b)のような水酸基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合、制御がより容易である点から(b)の方法がさらに好ましい。
【0102】
また(c)〜(f)のような炭素−ハロゲン結合を少なくとも1個有する(メタ)アクリル系重合体のハロゲンを変換することにより水酸基を導入する場合は、制御がより容易である点から(f)の方法がさらに好ましい。
【0103】
上記(3)の方法について説明する。
水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体に、ジイソシアネート化合物を反応させ、残存イソシアネート基と一般式(36)で示される化合物との反応による方法。
HO−R31−OC(O)C(R13)=CH (36)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の有機基を表す。R31は炭素数2〜20の2価の有機基を表す。)
【0104】
一般式(36)で表される化合物としては特に限定されないが、R13の具体例としては、例えば、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表す)、−C、−CHOH、−CN、等が挙げられ、好ましくは−H、−CHである。具体的な化合物としては、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0105】
末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の通りである。
【0106】
ジイソシアネート化合物は、特に限定されないが、従来公知のものをいずれも使用することができ、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;等を挙げることができる。これらは、単独で使用しうるほか、2種以上を併用することもできる。またブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0107】
よりすぐれた耐候性を生かすためには、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香環を有しないジイソシアネート化合物を用いるのが好ましい。
【0108】
<活性エネルギー線重合開始剤(C)>
活性エネルギー線重合開始剤として光ラジカル開始剤、あるいは、光アニオン開始剤を使用することが好ましい。使用する開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として使用してもよいが、混合物として使用する場合には、各種開始剤の使用量は、後述のそれぞれの範囲内にあることが好ましい。
【0109】
本発明に用いられる活性エネルギー線重合開始剤としては特に制限はないが、光ラジカル開始剤と光アニオン開始剤が好ましく、特に光ラジカル開始剤が好ましい。例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサントール、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−メチルアセトフェノン、3−ペンチルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−メトキシアセトフェン、3−ブロモアセトフェノン、4−アリルアセトフェノン、p−ジアセチルベンゼン、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、3−クロロキサントーン、3,9−ジクロロキサントーン、3−クロロ−8−ノニルキサントーン、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2−クロロチオキサントーン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、ヒドロキシル基およびフェニルケトン構造を有する化合物、ベンゾフェノン構造を有する化合物、ならびに、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物が好ましく、具体的には、3−メトキシベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−クロロ−4’−ベンジルベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが好ましく、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドが特に好ましい。これらの開始剤は単独でも、他の化合物と組み合わせても良い。具体的には、ジエタノールメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミンとの組み合わせ、さらにこれにジフェニルヨードニウムクロリドなどのヨードニウム塩と組み合わせたもの、メチレンブルーなどの色素及びアミンと組み合わせたものが挙げられる。
【0110】
なお、前記活性エネルギー線重合開始剤を使用する場合、必要により、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、パラターシャリーブチルカテコールなどのごとき重合禁止剤類を添加することもできる。
【0111】
また、近赤外活性エネルギー線重合開始剤として、近赤外光吸収性陽イオン染料を使用しても構わない。近赤外光吸収性陽イオン染料としては、650〜1500nmの領域の光エネルギーで励起する、たとえば特開平3−111402号、特開平5−194619号公報等に開示されている近赤外光吸収性陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体などを用いるのが好ましく、ホウ素系増感剤を併用することがさらに好ましい。
【0112】
活性エネルギー線重合開始剤の添加量は系をわずかに光官能化するだけでよいので、特に制限はないが、ビニル系重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましく、0.05〜2重量部がより好ましい。活性エネルギー線重合開始剤の添加量が0.01重量部以下の場合、十分な硬化性が得られない。一方、5重量部以上の場合、活性エネルギー線が深部まで透過できなくなり厚膜硬化性が悪くなったり、硬化物の耐熱性が低下する。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を硬化させる方法は特に限定されないが、その活性エネルギー線重合開始剤の性質に応じて、高圧水銀灯、低圧水銀灯、電子線照射装置、ハロゲンランプ、発光ダイオード、半導体レーザー等による光及び電子線の照射が挙げられる。
【0113】
<ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)>
本発明のヒンダードフェノール系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、耐熱性の点から、分子内にヒンダードフェノール構造あるいは片ヒンダードフェノール構造を有するフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0114】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(またはジあるいはトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0115】
商品名で言えば、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上いずれも大内新興化学工業製)、MARK AO−30、MARK AO−40、MARK AO−50、MARK AO−60、MARK AO−616、MARK AO−635、MARK AO−658、MARK AO−80、MARK AO−15、MARK AO−18、MARK 328、MARK AO−37(以上いずれもアデカアーガス化学製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上いずれも日本チバガイギー製)、SumilizerGM、SumilizerGA−80(以上いずれも住友化学製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0116】
これらのヒンダードフェノール系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。耐熱性がより向上する点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の分子量が600以上である、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス−[N−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンがより好ましい。なお当該分子量は、GC−MS又はLC−MSを用いて測定することができる。
【0117】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、ビニル系重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。0.1重量部未満では耐熱性の改善効果が少なく、5重量部を超えても効果に大差がなく経済的に不利である。
【0118】
<イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)>
まず本発明のイオウ系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、チオール構造が硬化性に影響を与えることから、チオール構造を有さず、チオエーテル構造を分子内に有する化合物が好ましい。
【0119】
例えば、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ジラウリル−チオジプロピオネート、ビス{2−メチル−4−[3−n−アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ]−5−tert−ブチルフェニル}スルフィド、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−チオジプロピオネート、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジブチルメチレン−ビス−チオグルコレート、ジステアリル−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0120】
商品名で言えば、ノクラック300、ノクラック400(以上いずれも大内新興化学工業製)アデカスタブAO−23、AO−412S、AO−503A、(以上いずれもアデカ製)、IRGANOX−PS800FL、IRGANOX−PS802FL、IRGANOX−1035、IRGANOX−1520L(以上いずれもチバスペシャルティケミカルズ製)、スミライザーTPL−R、スミライザーTPS、スミライザーTPM、スミライザーWX−R、スミライザーTP−D(以上いずれも住友化学工業製)、ブルカノール88(バイエル製)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
これらのイオウ系酸化防止剤は、ビニル系重合体(A)および(B)との相溶性の点から、イオウ原子に結合した置換基中の炭化水素基がC12以下であること好ましく、具体的には、ノクラック300、ノクラック400、アデカスタブAO−23、デカスタブAO−412S、IRGANOX−PS800FL、IRGANOX−1035、IRGANOX−1520L、スミライザーTPL−R、スミライザーWX−R、スミライザーTP−Dが好ましい。
【0121】
イオウ系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
イオウ系酸化防止剤の配合量としては特に制限はないが、ビニル系重合体(A)および(B)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合は、耐熱性の改善効果が十分でないことがあり、5重量部を越えると硬化性に影響を与える場合がある。
【0122】
次にリン系酸化防止剤は、特に制限はなく、任意のものが使用できるが、活性水素を含むリン酸およびリン酸エステルは組成物の貯蔵安定性、硬化物の耐熱性に影響を与えることから、リン酸およびリン酸エステルを分子内に含まない、アルキルホスファイト、アリールホスファイト、アルキルアリールホスファイト化合物などが好ましい。
【0123】
例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(イソデシル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(イソオクチル)ホスファイト、ジフェニル,モノ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールージホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールーテトラホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチルー4−ジートリデシルホスファイトー5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4'−ブチリデンビス(3−メチルー6−t−ブチルージートリデシルホスファイト)、2,2’―メチレンビス(4,6−ジーt−ブチルフェノール)オクチルホスファイト、4,4'−イソプロピリデンージフェノールアルキル(C12〜C15)ホスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジーt−ブチルフェニルホスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェニルホスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリル,ペンタエリスリトール,ジホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1’−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステルホスファイト等が挙げられる。
【0124】
商品名で言えば、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ3010、アデカスタブ2112、アデカスタブ522A、アデカスタブ260、アデカスタブHP−10、アデカスタブ1500、アデカスタブPEP−24−G、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−4C、アデカスタPEP−8(以上いずれもアデカ製)、JPM−308、JPM−313、JPM−333E、JPP−100、JPP−613M、JPP−31(以上いずれも城北化学)、CHELEX−M、(堺化学)、IRGAFOS38(チバ・ジャパン)等が例示できるがこれらに限定されるものではない。
【0125】
これらのリン系酸化防止剤は、加水分解性に対して安定であり耐熱性が良い点で、リン原子の置換基の少なくても2つ以上がアリールオキシ基であることが好ましい。具体的には、アデカスタブ1178、アデカスタブ329K、アデカスタブ135A、アデカスタブC、アデカスタブTPP、アデカスタブ2112、アデカスタブHP−10、JPM−313、JPP−100、CHELEX−M、IRGAFOS38が好ましい。
リン系酸化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。
【0126】
リン系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤を併用しても構わない。
リン系酸化防止剤の配合量としては特に制限はないが、ビニル系重合体(A)および(B)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜2重量部である。配合量が0.1重量部未満の場合には、耐熱性の改善効果が充分でないことがあり、5重量部を越えると硬化性に影響を与える場合がある。
【0127】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とイオウ系またはリン系酸化防止剤(E)の使用比は特に制限はないが、より効果的に耐熱性を向上させるという点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤/イオウ系またはリン系酸化防止剤の比が0.1〜10の範囲にあることが好ましく、0.3〜3であることが特に好ましい。
【0128】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とイオウ系またはリン系酸化防止剤(E)との好ましい組合せとしては、特に制限はないが、例えば、IRGANOX1010とスミライザーTPL−Rの組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ2112の組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ329Kの組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ1178の組合せ、IRGANOX1010とアデカスタブ135Aの組合せが挙げられる。
【0129】
この組合せであれば、150℃での耐熱試験においても長時間の柔軟性やゴム弾性を保持し、耐熱着色が少ない点においても優れる。
【0130】
<ポリエーテル構造を有する化合物(F)>
ポリエーテル構造を有する化合物(F)は、重合性の炭素−炭素二重結合の紫外線ラジカル重合で見られる酸素による表面硬化阻害の改善のために添加する。ポリエーテル構造を有する化合物(F)は、特に限定されないが、ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー、ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル構造を有する可塑剤等が挙げられる。
【0131】
ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、下記一般式(37)および(38)で示される化合物が挙げられる。
CH=C(R)C(O)O−(R−O)n−R (37)
一般式(37)で示される化合物の、nは1〜20の整数であり、Rの具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−(CH)mCH(mは2〜19の整数を表す)であり、Rの具体例としては、−CHCH−、−CH(CH)CH−であり、Rの具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−(CH)mCH(mは2〜19の整数を表す)、−CHCH(CHCH)CHCHCHCH、−Cである。
CH=C(R)C(O)O−(R−O)n−C(O)C(R)=CH (38)
【0132】
一般式(38)で示される化合物の、nは2〜20の整数であり、Rの具体例としては、−H、−CH、−CHCH、−(CH)mCH(mは2〜19の整数を表す)であり、Rの具体例としては、−CHCH−、−CH(CH)CH−である。
【0133】
ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド変性フタル酸のジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド変性水添フタル酸のジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性フタル酸のジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性水添フタル酸のジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキサイド変性イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等の、イソシアヌル酸等の酸またはビスフェノールA等のアルコールをエチレンオキシドやプロピレンオキシドで変性したアルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類、主鎖がポリエーテルで末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオールの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0134】
ポリエーテル構造を有する可塑剤としては、ポリエチレンオキサイド変性セバシン酸、ポリエチレンオキサイド変性フタル酸、ポリエチレンオキサイド変性トリメリット酸、ポリプロピレンオキサイド変性セバシン酸、ポリプロピレンオキサイド変性フタル酸、ポリプロピレンオキサイド変性トリメリット酸、ウンデシレン酸変性ポリエチレンオキサイド、ウンデシレン酸変性ポリプロピレンオキサイド等の、片末端に水酸基を有するポリエーテルとジカルボン酸化合物のエステル類、片末端にカルボン酸を有する化合物と両末端に水酸基を有するポリエーテルのエステル類が挙げられる。
【0135】
上記ポリエーテル構造のアルキレンオキサイド単位の繰り返し単位は平均して1〜20が好ましく、3〜15がより好ましい。1以下の場合、揮発し易くなるために耐熱試験での重量減少が大きくなる。一方、20以上の場合、耐熱試験で硬化物が硬くなりやすい。
ポリエーテル構造を有する化合物(F)が、重合性の炭素−炭素二重結合を含む化合物である場合、ブリードし難く耐熱性が良いという点で、ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー、ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。
【0136】
さらにポリエーテル構造を有する化合物(F)としては、低粘度化の効果があるという点で、ポリエーテル構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。
さらにポリエーテル構造を有する化合物(F)のアルキレンオキサイド単位としては、耐熱性が良いという点で、エチレンオキサイド単位が好ましい。
さらにポリエーテル構造を有する化合物(F)の官能基数としては、柔軟な硬化物が得られやすいという点で、1官能が好ましい。
【0137】
これらの好ましいポリエーテル構造を有する化合物(F)としては、例えば、
CH=CHC(O)O−(CHCH−O)n−CH
CH=CHC(O)O−(CHCH−O)n−CHCH
nは1〜20の整数が挙げられる。
【0138】
ポリエーテル構造を有する化合物(F)の添加量としては、特に限定されないが、ビニル系重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましく、10〜20重量部であることがより好ましい。1重量部以下の場合、表面硬化阻害の改善が見られない。一方、30重量部以上の場合、硬化物の耐熱性が低下する。
【0139】
<その他の添加剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物には、組成物またはその硬化物の諸物性の調整を目的として、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。このような添加物の例としては、例えば、接着性付与剤、可塑剤、充填材、微小中空粒子、物性調整剤、シラノール含有化合物、光安定剤、離型剤、難燃剤、ラジカル重合禁止剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤などがあげられる。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0140】
このような添加物の具体例は、例えば、WO2007−069600、特公平4−69659号、特公平7−108928号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号の各明細書などに記載されている。
【0141】
<重合性のモノマーおよび/またはオリゴマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物には、その目的に応じて、重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーや各種添加剤を併用しても構わない。重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、ラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマー、あるいはアニオン重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーが好ましい。ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基等のアクリル官能性基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル基を持つものが好ましい。アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、等が挙げられる。なかでも、アクリル官能性基を持つものが好ましい。
【0142】
上記のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマーなどが挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルや下式の化合物などを挙げることができる。
【0143】
【化6】

【0144】
【化7】

【0145】
【化8】

【0146】
【化9】

【0147】
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン等が、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が、共役ジエン系モノマーとしてはブタジエン、イソプレン等が、ビニルケトン系モノマーとしてはメチルビニルケトン等が挙げられる。
【0148】
多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0149】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂等のエポキシアクリレート系樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂、ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレン等)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂、上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂等が挙げられる。
【0150】
これらのモノマーおよびオリゴマーは、用いられる開始剤及び硬化条件により選択される。
【0151】
また、これらのモノマーおよびオリゴマーは、単独で使用しても良いし、併用しても構わない。
【0152】
また、アクリル官能性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーの数平均分子量は、2000以下であることが好ましく、1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0153】
重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーの配合量としては、特に制限はないが、ビニル系重合体(A)および(B)成分の合計100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましい。5重量部未満では物性改良の効果が得られない。一方、200重量部以上では耐熱性が低下する場合がある。
【0154】
<光硬化性物質>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物には、必要に応じて、本発明のポリエーテル構造を有する化合物(F)以外の光硬化性物質を添加しても良い。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間に、分子構造が化学変化をおこし、硬化などの物性的変化を生ずるものである。この光硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。この光硬化性物質は、光をあてることにより硬化し得る物質であるが、代表的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近)に1日間、室温で静置することにより硬化させることができる物質である。この種の化合物には、有機単量体、オリゴマー、樹脂あるいはそれらを含む組成物など多くのものが知られており、その種類は特に限定されないが、例えば、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類あるいはアジド化樹脂等が挙げられる。
【0155】
不飽和アクリル系化合物は、下記一般式(47)で表される不飽和基を有する単量体、オリゴマーあるいはこれらの混合物である。
CH=CHR62CO(O)− (47)
式中、R62は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基を示す。
【0156】
不飽和アクリル系化合物としては、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコール等の低分子量アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系重合体であり、主鎖中に水酸基を有するポリオール等の(メタ)アクリル酸エステル類;ビスフェノールA型やノボラック型等のエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレート等を反応させることにより得られる分子鎖中にウレタン結合および(メタ)アクリル基を有するウレタンアクリレート系オリゴマー等が挙げられる。
【0157】
ポリケイ皮酸ビニル類とは、シンナモイル基を感光基とする感光性樹脂であり、ポリビニルアルコールをケイ皮酸でエステル化したものの他、多くのポリケイ皮酸ビニル系誘導体が挙げられる。
【0158】
アジド化樹脂は、アジド基を感光基とする感光性樹脂として知られており、通常はアジド化合物を感光剤として加えたゴム感光液のほか「感光性樹脂」(昭和47年3月17日出版、印刷学会出版部発行、93頁〜、106頁から、117頁〜)に詳細な例示があり、これらを単独又は混合し、必要に応じて増感剤を加えて使用することができる。
【0159】
上記の光硬化性物質の中では、取り扱い易いという理由で不飽和アクリル系化合物が好ましい。
【0160】
光硬化性物質は、ビニル系重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。なお、ケトン類、ニトロ化合物などの増感剤やアミン類等の促進剤を添加すると、効果が高められる場合がある。
【0161】
<空気酸化硬化性物質>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物には、必要に応じて空気酸化硬化性物質を添加しても良い。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化できる不飽和基を有する化合物である。この空気酸化硬化性物質を添加することにより、硬化性組成物を硬化させた際の硬化物表面の粘着性(残留タックともいう)を低減できる。本発明における空気酸化硬化性物質は、空気と接触させることにより硬化し得る物質であり、より具体的には、空気中の酸素と反応して硬化する性質を有するものである。代表的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中で室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
【0162】
空気酸化硬化性物質としては、例えば、桐油、アマニ油等の乾性油;これら乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;乾性油により変性されたアクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂;1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、C5〜C8ジエンの重合体や共重合体、更には該重合体や共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが具体例として挙げられる。これらのうちでは桐油、ジエン系重合体のうちの液状物(液状ジエン系重合体)やその変性物が特に好ましい。
【0163】
上記液状ジエン系重合体の具体例としては、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等のジエン系化合物を重合又は共重合させて得られる液状重合体や、これらジエン系化合物と共重合性を有するアクリロニトリル、スチレンなどの単量体とをジエン系化合物が主体となるように共重合させて得られるNBR,SBR等の重合体や更にはそれらの各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これら液状ジエン系化合物のうちでは液状ポリブタジエンが好ましい。
【0164】
空気酸化硬化性物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また空気酸化硬化性物質と同時に酸化硬化反応を促進する触媒や金属ドライヤーを併用すると効果を高められる場合がある。これらの触媒や金属ドライヤーとしては、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸ジルコニウム等の金属塩やアミン化合物等が例示される。
【0165】
空気酸化硬化性物質は、ビニル系重合体(A)および(B)の合計100重量部に対して0.01〜20重量部添加するのが好ましい。0.01重量部未満では効果が小さく、また20重量部を越えると物性への悪影響が出ることがある。
【0166】
<活性エネルギー線硬化型組成物の調整>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の調整法としては、特に限定されないが、すべての配合成分を1成分型として調製しても良いし、組成物の貯蔵安定性等を考慮して配合成分を分けて配合しておき、使用前に混合する2成分型として調整しても良い。
【0167】
1成分型の場合は、施工の際に混合・混練する手間が不要となり、同時にその際に生じる計量ミス(混合比の間違い)もなくなるため、硬化不良等のミスを防ぐことができる。
【0168】
2成分型の場合は、各配合成分を任意に二液に分割して、該配合成分を使用前に混合する2成分型として調整することもできる。A液とB液への分割方法は、硬化性組成物の混合比、貯蔵安定性、混合方法、ポットライフ等を考慮し、種々の組合せが可能である。
【0169】
また、必要に応じて、A液、B液以外に第三成分を用意して三液型硬化性組成物とすること可能であり、それ以上の分割も必要に応じて調整することが可能である。
【0170】
本発明の組成物の混合法としては、特に限定はなく、例えば上記した成分を配合し、必要であれば遮光して、ハンドミキサーやスタティックミキサーで混合したり、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダーなどを用いて、常温又は加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が挙げられる。
【0171】
<硬化物>
本発明の活性エネルギー線により硬化して得られる硬化物は柔軟なゴム状硬化物、または柔軟なゲル状硬化物である。柔軟性の目安としては、JIS K 2220の4分の1コーン、荷重9.5g、23℃10秒間で測定した針入度が、20以上が好ましく、より好ましくは40以上である。針入度20以下では硬化物が硬いために衝撃吸収性が低下する。
【0172】
<用途>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物の用途としては、限定はされないが、プリント回線基板のポッティング材、太陽電池裏面封止剤、コンフォーマルコーティング材、シール材、接着剤などの電気・電子部品材料に好適に用いられる他に、工業用のシーリング剤、永久レジスト用途やソルダーレジスト用途、ドライフィルムレジスト用途、電着レジスト用途等のレジスト用途、電線・ケーブル用絶縁被覆材などの電気絶縁材料、粘着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、反応性ホットメルト接着剤、塗料、粉体塗料、コーティング材、発泡体、缶蓋等のシール材、放熱シート、フィルム、ガスケット、マリンデッキコーキング、注型材料、各種成形材料、人工大理石、および、網入りガラスや合わせガラス端面(切断部)の防錆・防水用封止材、自動車や船舶、家電等に使用される防振・制振・防音・免震材料、自動車部品、電機部品、各種機械部品などにおいて使用される液状シール剤、防水剤等の様々な用途に利用可能である。
【0173】
更に、自動車分野ではボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。シャーシ部品として、防振、防音用のエンジンおよびサスペンジョンゴム、特にエンジンマウントラバーに使用することができる。エンジン部品としては、冷却用、燃料供給用、排気制御用などのホース類、エンジンカバーやオイルパン用のガスケット、エンジンオイル用シール材などに使用することができる。また、排ガス清浄装置部品、ブレーキ部品にも使用できる。
【0174】
家電分野では、パッキン、Oリング、ベルトなどに使用できる。具体的には、照明器具用の飾り類、防水パッキン類、防振ゴム類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、酒かん器用のホース類、防水パッキン、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、接続ホース、ベルト、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、加圧チューブ、送風チューブ、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、送油管、ダイアフラム弁、送気管など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、ターンテーブルシート、ベルト、プーリー等が挙げられる。
【0175】
建築分野では、構造用ガスケット(ジッパーガスケット)、空気膜構造屋根材、防水材、定形シーリング材、防振材、防音材、セッティングブロック、摺動材等に使用できる。スポ―ツ分野では、スポーツ床として全天候型舗装材、体育館床等、スポーツシューズとして靴底材、中底材等、球技用ボールとしてゴルフボール等に使用できる。防振ゴム分野では、自動車用防振ゴム、鉄道車両用防振ゴム、航空機用防振ゴム、防舷材等に使用できる。海洋・土木分野では、構造用材料として、ゴム伸縮継手、支承、止水板、防水シート、ラバーダム、弾性舗装、防振パット、防護体等、工事副材料としてゴム型枠、ゴムパッカー、ゴムスカート、スポンジマット、モルタルホース、モルタルストレーナ等、工事補助材料としてゴムシート類、エアホース等、安全対策商品としてゴムブイ、消波材等、環境保全商品としてオイルフェンス、シルトフェンス、防汚材、マリンホース、ドレッジングホース、オイルスキマー等に使用できる。その他、板ゴム、マット、フォーム板等にも使用できる。
【0176】
また防振・制振・防音・免震材料が特に求められる用途として、ステッピングモーター、磁気ディスク、ハードディスク、食器洗浄機、乾燥機、洗濯機、ファンヒーター、ミシン、自動販売機、スピーカフレーム、BSアンテナ、VTRカバー用制振材等の電気・電子機器用途;ルーフ、フロア、シャッタ、カーテンレール、床、配管ダクト、デッキプレート、カーテンウォール、階段、ドア、免振アイソレーター、構造材用制振材等の建築用途;エンジンルーム、計測ルーム用制振材等の船舶用途;エンジン(オイルパン、フロントカバー、ロッカーカバー)、車体(ダッシュ、フロア、ドア、ルーフ、パネル、ホイルハウス)、タランスミッション、パーキングブレーキカバー、シートバック用制振材等の自動車用途;TVカメラ、複写機、電算機、プリンタ、レジスタ、キャビネット用制振材等のカメラ・事務機器用途;シュータ、エレベータ、エスカレータ、コンベア、トラクタ、ブルドーザ、発電機、コンプレッサ、コンテナ、ホッパ、防音ボックス、草刈り機のモータカバー用制振材等の産業機械関係用途;鉄道車両ルーフ、側板、ドア、アンダーフロア、各種補機カバー、橋梁用制振材等の鉄道用途;半導体用途の精密除振装置用制振材がある。
【実施例】
【0177】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0178】
また、下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804およびK-802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
【0179】
下記実施例中、「重合体1分子当たりに導入された(メタ)アクリロイル基数」は、1H−NMR分析及びGPCにより求められた数平均分子量より算出した。
(ただし、1H−NMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。)
【0180】
片末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P1]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、α−ブロモ酪酸エチルを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(α−ブロモ酪酸エチル)比を40にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0181】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P1]を得た。
重合体[P1]の数平均分子量は6,500、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は0.9であった。
【0182】
両末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P2]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(ジエチル−2,5−ジブロモアジペート)比を80にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0183】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P2]を得た。
重合体[P2]の数平均分子量は12,000、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は1.8であった。
【0184】
片末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P3]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、α−ブロモ酪酸エチルを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(α−ブロモ酪酸エチル)比を80にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0185】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P3]を得た。
重合体[P3]の数平均分子量は12,000、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は0.9であった。
【0186】
両末端にアクリロイル基を有するポリ(アクリル酸n−ブチル)[P4]の合成例
臭化第一銅を触媒、ペンタメチルジエチレントリアミンを配位子、ジエチル−2,5−ジブロモアジペートを開始剤、アクリル酸n−ブチルをモノマーとし、(アクリル酸n−ブチル)/(ジエチル−2,5−ジブロモアジペート)比を160にして重合し、末端臭素基ポリアクリル酸n−ブチルを得た。
【0187】
この重合体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウムを加え、窒素雰囲気下、70℃で加熱攪拌した。この混合液中のN,N−ジメチルアセトアミドを減圧留去したのち、残渣に酢酸ブチルを加えて、不溶分を濾過により除去した。濾液の酢酸ブチルを減圧留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸n−ブチル)、重合体[P4]を得た。
重合体[P4]の数平均分子量は23,000、分子量分布は1.2、平均末端アクリロイル基数は1.8であった。
【0188】
<物性評価方法>
実施例及び比較例で作製された硬化物の各物性測定は、以下の方法、条件に従って実施した。
【0189】
(タック)
硬化物表面に指を押し当ててゆっくり剥し、指に樹脂付着が見られずタックがない(◎)、指に樹脂付着が見られず少しタックがある(○)、指に樹脂付着がありタックがある(×)とした。
(針入度)
JIS K 2220の4分の1コーン、荷重9.5g、23℃10秒間で測定した。
【0190】
<実施例1〜6、比較例1〜3>
表1に示した配合成分を十分に溶解・混合した。配合液をステンレス製容器(直径60mm、高さ15mm)に流し込んで、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、型式LH6、照射条件:照度500mW/cm、光量2000mJ/cm)に3回通して、15mm厚の硬化物を得た。得られた硬化物のタックと、150℃1000時間保管前後の針入度を測定した。結果を表1に示す。なお、配合量の単位は「重量部」を示す。
【0191】
【表1】

【0192】
表1に示す様に、実施例1〜6はタックが改善され、150℃1000時間後の針入度が40以上で十分に柔軟性を維持した。比較例1は酸化防止剤を含有しておらず、150℃1000時間後の針入度が2まで硬くなった。比較例2はヒンダードフェノール系酸化防止剤の単独使用であり、150℃1000時間後の針入度が35であり柔軟性維持が不十分だった。比較例3はアミン系酸化防止剤の単独使用であり、150℃1000時間後の針入度が56で十分に柔軟性維持したものの、タックが著しかった。つまり実施例1〜6は比較例1〜3に対して、タックと耐熱性の両方を改善したことが分かる。
【0193】
<実施例7〜9、比較例4、5>
表2に示した配合成分を十分に溶解・混合した。配合液をステンレス製容器(直径60mm、高さ15mm)に流し込んで、UV照射装置(フュージョンUVシステムズジャパン(株)製、型式LH6、照射条件:照度1300mW/cm、光量2000mJ/cm)に3回通して、15mm厚の硬化物を得た。得られた硬化物のタックと、150℃1000時間保管前後の針入度を測定した。結果を表2に示す。なお、配合量の単位は「重量部」を示す。
【0194】
【表2】

【0195】
表2に示す様に、実施例7〜9はタックが改善され、150℃1000時間後の針入度が40以上で十分に柔軟性を維持した。比較例4は150℃1000時間後の針入度が70で十分に柔軟性維持したが、タックが著しかった。つまり実施例7〜9は比較例4に対して、タックと耐熱性の両方を改善したことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、遮光下であれば貯蔵安定性が良く、活性エネルギー線を照射すれば数mm以上の厚膜であっても速硬化できる。さらに1液タイプが可能であり生産性に非常に優れる。得られる硬化物は、硬化後の表面硬化阻害が改善され、優れた耐熱性、耐油性、柔軟性を維持する。本発明の活性エネルギー線硬化型組成物および硬化物は、例えば、高い耐熱性が要求される自動車分野の電気・電子部品のポッティング用途等に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)、
活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)、
活性エネルギー線重合開始剤(C)、
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、
イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)
を含有する活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項2】
活性エネルギー線架橋性基が一般式(1)
−OC(O)C(R10)=CH (1)
(式中、R10は水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わす)で表される請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものである請求項1または2のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、アクリル酸エステル系モノマーを主として重合して製造されるものであることを特徴とする請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、リビングラジカル重合法により製造されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
ビニル系重合体(A)および(B)の主鎖が、原子移動ラジカル重合法により製造されたものである請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項7】
ビニル系重合体(A)および(B)の活性エネルギー線架橋性基が分子鎖末端にある請求項1〜6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項8】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)と活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量%における(A)成分の含有量が20〜99重量%である請求項1〜7のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項9】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)および、活性エネルギー線架橋性基を平均して1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量部に対し、活性エネルギー線重合開始剤(C)0.01〜5重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)0.1〜5重量部、イオウ系またはリン系酸化防止剤(E)0.1〜5重量部、を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項10】
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分に加え、ポリエーテル構造を有する化合物(F)を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項11】
ポリエーテル構造を有する化合物(F)が、ポリエチレンオキサイド構造を有する化合物である請求項10に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項12】
ポリエーテル構造を有する化合物(F)が、(メタ)アクリロイル基を有する請求項10または11に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項13】
活性エネルギー線架橋性基を平均して1個未満有するビニル系重合体(A)および、活性エネルギー線架橋性基を平均して少なくとも1.5個以上有するビニル系重合体(B)の合計100重量部に対し、ポリエーテル構造を有する化合物(F)1〜30重量部を含有する請求項10〜12のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物より得られた硬化物。
【請求項15】
針入度が20以上である請求項14の硬化物。

【公開番号】特開2011−256239(P2011−256239A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130081(P2010−130081)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】