説明

活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物及び被覆物

【課題】艶消しするための粒子を実質的に用いず、塗料の安定性に優れ、外観、基材との密着性及び耐高温高湿性に優れる硬化膜を形成できる、透明な活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物並びに基材表面に活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜が積層された被覆物を提供する。
【解決手段】溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.00(J/cm1/2のビニル系単量体(a−1)を含む単量体成分を重合して得られる溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.20(J/cm1/2である重合体(A)5〜90質量%及び分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(B)10〜95質量%を含む樹脂成分を含有する、透明な活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物及び基材の表面に活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材組成物の硬化膜が積層された被覆物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物及び被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾品、家電製品、自動車外装板等の分野においては、デザインや意匠性の向上の点から艶消し塗装品が多く利用されている。
【0003】
艶消し塗装品は光の散乱及び乱反射を利用しているが、艶消し塗装品を得る方法の1つとしてシリカ、アルミナ、プラスチックビーズ等の粒子を塗料中に添加する方法が挙げられる。
【0004】
この方法では艶消しの意匠性を発現する粒子等を塗料成分中に分散させているが、使用する粒子の比重が塗料成分と異なるため塗料成分中で浮遊したり沈降したりすることから、塗料を使用する前に再攪拌し、相分離を解消する必要がある。更に、生産性に優れる活性エネルギー線硬化型塗料にこの手法を用いた場合には、配合する粒子によって紫外線が遮蔽され、硬化性が低下することがある。
【0005】
上記問題を解決するために、粒子を含まずに硬化反応により相分離を誘発する液体状の有機化合物又は液体状の有機化合物と水との混合物を混合した活性光線硬化性艶消し組成物を用い、活性光線照射による塗膜の硬化に伴う相分離を利用して艶消し効果を発現させる方法が提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−163907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では活性光線硬化性艶消し組成物の硬化物と相溶性の悪い液体状の有機化合物を混合し、更には水を混合する為、粒子等を分散した場合よりも作業性に優れるものの、液が濁ったり、基材の表面との濡れ性が悪くなったりする問題が生じ、更には活性光線硬化性艶消し組成物の長期の液安定性を得ることが難しい場合がある。また、特許文献1の技術では組成によっては艶消し効果が発現しない場合もある。
【0008】
本発明の目的は、艶消しするための粒子を実質的に用いず、安定性に優れる透明な活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物、並びに活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜が積層された外観及び艶消し効果の優れた被覆物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.00(J/cm1/2のビニル系単量体(a−1)を含む単量体成分を重合して得られる溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.20(J/cm1/2である重合体(A)5〜90質量%及び分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(B)10〜95質量%を含む樹脂成分を含有する、透明な活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物(以下、「本組成物」という)を第1の発明とする。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、基材の表面に本組成物の硬化膜が積層された被覆物(以下、「本被覆物」という)を第2の発明とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、液安定性に優れ、透明な本組成物を使用して艶消し状の硬化膜を基材の表面に形成できることから艶消し用トップコート材として使用することが可能であり、化粧品容器、携帯電話、携帯音楽再生機等の優れたデザインが求められる各種樹脂成型品への適用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ビニル系単量体(a−1)
本発明で使用されるビニル系単量体(a−1)は後述する単量体成分を構成する成分の1つである。
【0013】
ビニル系単量体(a−1)の溶解性パラメーター(δ)(以下、単にδとも言う。)は18.50〜20.00(J/cm1/2であり、18.80〜19.30(J/cm1/2が好ましい。ビニル系単量体(a−1)の溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.00(J/cm1/2で、後述する硬化膜の艶消し効果が良好となる。尚、本発明における溶解性パラメーター(δ)は、R.F.Fedors著、「ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym.Eng.Sci.)」、(1974)、14(2)、p.147及びp.472に記載されている方法により下式(1)を用いて算出した値である。
δ=Σ(mδ)・・・(1)
式(1)中、mは重合体を構成する単量体のモル分率を表し、δは重合体を構成する単量体の溶解性パラメーターを表す。尚、単量体の溶解性パラメーター(δ)は、下式(2)より算出できる。
δ={Σ(n)/Σ(n)}1/2・・・(2)
式(2)中、nは単量体を構成する原子団jの個数を表し、Eは原子団jの凝集エネルギー(J/モル)を表し、Vは原子団jのモル体積(cm/モル)を表す。尚、E及びVは上記非特許文献中に記載されている値である。
【0014】
ビニル系単量体(a−1)としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート(δ:18.87(J/cm1/2)、2−エチルヘキシルメタクリレート(δ:18.50(J/cm1/2)、n−ブチルアクリレート(δ:19.99(J/cm1/2)、n−ブチルメタクリレート(δ:19.33(J/cm1/2)、i−ブチルアクリレート(δ:19.58(J/cm1/2)、i−ブチルメタクリレート(δ:18.96(J/cm1/2)、t−ブチルアクリレート(δ:19.15(J/cm1/2)、t−ブチルメタクリレート(δ:18.57(J/cm1/2)、イソボルニルアクリレート(δ:19.23(J/cm1/2)及びイソボルニルメタクリレート(δ:18.87(J/cm1/2)が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
ビニル系単量体(a−1)としては、後述する重合体(A)のガラス転移温度(Tg)の点で、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、イソボルニルメタクリレートがより好ましい。
【0015】
尚、本発明において、「(メタ)アクリ」は「アクリ」及び「メタクリ」から選ばれる少なくとも1種を示す。
【0016】
単量体成分
本発明において、単量体成分はビニル系単量体(a−1)を含有する。
【0017】
また、単量体成分は、必要に応じてビニル系単量体(a−1)と共重合可能なビニル系単量体(a−2)を含有することができる。
ビニル系単量体(a−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキシドの付加反応物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとプロピレンオキシドの付加反応物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの付加反応物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと有機ラクトン類の付加反応物;スチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;(メタ)アクリロニトリル等の重合性不飽和ニトリル;マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等の不飽和カルボン酸エステル;及び酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
ビニル系単量体(a−2)としては、ビニル系単量体(a−1)との共重合性の点で、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
単量体成分中のビニル系単量体(a−1)の含有量としては、後述する本組成物の硬化膜の艶消し効果の点で、10〜100モル%が好ましく、16〜100モル%がより好ましく、20〜100モル%が更に好ましい。
【0019】
本発明においては、単量体成分に、必要に応じて公知の重合開始剤や連鎖移動剤、更には乳化剤又は分散剤を添加することができる。
【0020】
重合体(A)
本発明において、重合体(A)は単量体成分を重合して得られるものである。
重合体(A)の溶解性パラメーター(δ)は18.50〜20.20(J/cm1/2、好ましくは18.70〜20.10(J/cm1/2、より好ましくは18.80〜20.00(J/cm1/2である。重合体(A)の溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.20(J/cm1/2で、後述する硬化膜の艶消し効果が良好となる。重合体(A)の溶解性パラメーター(δ)は単量体成分の種類などにより調節することができる。また、重合体(A)が共重合体の場合には、重合体(A)の溶解性パラメーター(δ)は単量体成分の種類とモル分率により調節することができる。
重合体(A)は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法により得ることができる。
【0021】
(メタ)アクリレート(B)
本発明で使用される(メタ)アクリレート(B)は分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0022】
(メタ)アクリレート(B)としては、例えば、分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「成分(b−1)」という)、分子内に1つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「成分(b−2)」という)及び分子内に2つの(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(以下、「成分(b−3)」という)が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
【0023】
成分(b−1)としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステルポリ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステルペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
成分(b−1)としては、組成物の硬化性に優れ、硬化膜が高弾性であるので、6官能(メタ)アクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが特に好ましい。
【0024】
成分(b−2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
成分(b−2)としては、組成物の硬化性に優れ、硬化膜と基材との密着性が高いので、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましく、テトラヒドロフルフリルアクリレートがより好ましい。
【0025】
成分(b−3)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッドビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ポリプロポキシレーテッド水添ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールSのカプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;フタル酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、テレフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸等の多塩基酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸又はその誘導体との反応で得られるポリエステルジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールF、ビスフェノールS、水添ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ水添ビスフェノールA等のビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応で得られるビスフェノール型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート;アルカンジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、スピログリコール化合物等のアルコールの水酸基に有機ジイソシアネート化合物を付加し、残ったイソシアネート基に分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート;並びに有機モノイソシアネート化合物に、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及び1個のヒドロキシ基を有するヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
成分(b−3)としては、硬化膜が柔軟性、強靭性および基材との密着性に優れているので、ウレタンジ(メタ)アクリレートが好ましく、ウレタンジアクリレートがより好ましい。
【0026】
(メタ)アクリレート(B)中の成分(b−1)の含有量としては、後述する本組成物の硬化膜の耐高温高湿性、耐水性、耐アルコール性等の耐久性の点で、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。また、成分(b−1)の含有量としては、本組成物の硬化膜の基材との密着性の点で、70質量%以下が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリレート(B)中の成分(b−2)の含有量としては、本組成物の硬化膜の基材との密着性の点で、10質量%以上が好ましい。また、成分(b−2)の含有量としては、本組成物の硬化膜の耐高温高湿性、耐水性、耐アルコール性等の耐久性の点で、20質量%以下が好ましい。
【0028】
(メタ)アクリレート(B)中の成分(b−3)の含有量としては、本組成物の硬化膜の基材との密着性の点で、20質量%以上が好ましい。また、成分(b−3)の含有量としては、本組成物の硬化膜の耐高温高湿性、耐水性、耐アルコール性等の耐久性の点で、60質量%以下が好ましい。
【0029】
樹脂成分
本発明において、樹脂成分は重合体(A)5〜90質量%及び(メタ)アクリレート(B)10〜95質量%を含む。
【0030】
樹脂成分中の重合体(A)の含有量が5質量%以上、好ましくは15質量%以上で本組成物の硬化膜の艶消し効果が良好となる。また、樹脂成分中の重合体(A)の含有量が90質量%以下、好ましくは55質量%以下で本組成物の硬化膜の耐高温高湿性、耐水性、耐アルコール性等の耐久性が良好となる。
【0031】
樹脂成分中の(メタ)アクリレート(B)の含有量が10質量%以上、好ましくは45質量%以上で本組成物の硬化膜の耐高温高湿性、耐水性、耐アルコール性等の耐久性が良好となる。また、樹脂成分中の(メタ)アクリレート(B)の含有量が95質量%以下、好ましくは85質量%以下で本組成物の硬化膜の艶消し効果が良好となる。
【0032】
本発明においては、必要に応じて樹脂成分中に(メタ)アクリレート(B)以外のビニル単量体を含有することができる。
【0033】
本組成物
本発明の本組成物は上記の樹脂成分を含有する透明な液状物であり、活性エネルギー線硬化性を有する。
【0034】
本組成物には光重合開始剤を含有することができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−エチルアントラキノン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイドが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
光重合開始剤の配合量としては、本組成物の硬化性の点で、樹脂成分100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、4〜20質量部がより好ましい。
【0035】
また、本組成物には、必要に応じて4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の光増感剤を添加することができる。
【0036】
本組成物には、必要に応じて本組成物の硬化膜と後述する基材との密着性を向上させるためにシランカップリング剤を配合することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクロリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン及びこれらの加水分解物が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を併せて使用できる。
これらの中で、本組成物の液安定性及び透明性並びに本組成物の硬化膜と基材との密着性の点で、γ−(メタ)アクロリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びこれらの加水分解物が好ましい。
シランカップリング剤の配合量としては、本組成物の硬化膜と基材との密着性の点で、樹脂成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0037】
本組成物には、必要に応じて本組成物の粘度を望ましいレベルに調整するために有機溶剤を使用することができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル化合物;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;及びペンタン、ヘキサン、石油ナフサ等の脂肪族化合物が挙げられる。
有機溶剤の配合量としては、樹脂成分100質量部に対して10〜500質量部が好ましい。
【0038】
本組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、プラスチックビーズ等の粒子を樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以下の範囲で配合することができる。
【0039】
本組成物には、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、潤滑剤、防錆剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、防雲剤、分散剤、増粘剤、タレ止め剤、乾燥剤、付着促進剤、皮膜改質剤、スリップ剤、擦り傷防止剤、可塑剤、低収縮剤、防菌剤、防カビ剤、防汚剤、難燃剤、硬化促進剤、劣化防止剤、光重合促進剤、塩素化PP等のPP付着付与剤、チキソ剤、染料、顔料、殺菌剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0040】
本発明においては、本組成物を後述する基材の表面に塗付して本組成物の塗膜を基材の表面に形成した後に本組成物の塗膜を硬化することにより、本組成物の硬化膜を基材の表面に積層した被覆物を得ることができる。
【0041】
基材
本発明で使用される基材としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボーネート樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂等のプラスチック、アルミニウム、ステンレス、鉄等の金属及びガラスが挙げられる。
【0042】
本組成物の塗膜
本組成物の塗膜は本組成物を基材の表面に塗付して得られる。
本組成物の基材の表面への塗付方法としては、例えば、刷毛塗り法、ローラー塗り法、ムートン塗り法、モップ塗り法、ロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法、フローコート法、ディピング法、静電塗装法及びスクリーン印刷法が挙げられる。
これらの中で、塗付作業性の点でスプレーコート法が好ましい。
本発明において、本組成物中に有機溶剤を配合する場合には、本組成物を硬化させる前に本組成物の塗膜中の有機溶剤を揮発させる。
本組成物の塗膜から有機溶剤を揮発させる方法としては、例えば、IRヒーターや温風等で60℃で数分間加温する方法、及び室温で20分間程度放置する方法が挙げられる。
【0043】
本組成物の硬化膜
本組成物の硬化膜は基材の表面に形成された本組成物の塗膜を活性エネルギー線の照射により硬化して得られる。
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線及び電子線が挙げられる。
活性エネルギー線源として、例えば高圧水銀灯を用いた場合には、照射される紫外線エネルギー量としては500〜1,500mJ/cm2が好ましい。
本組成物の硬化膜の膜厚としては1〜100μmが好ましい。
【0044】
被覆物
本発明の被覆物は基材の表面に本組成物の硬化膜が積層された積層体である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。尚、以下において「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。また、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の透明性及び液安定性、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜の外観、基材との密着性、耐高温高湿性及び艶消し効果並びに判定の評価は以下の方法で行った。
【0046】
(1)透明性
よく混ぜた活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物80mlを100ml比重管に移し、白色蛍光灯の下で透かして、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の透明性を目視により以下の基準で評価した。
「○」:濁りや白濁は見られない。
「×」:濁りや白濁が見られる。
【0047】
(2)液安定性
よく混ぜた活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物80mlを100ml比重管に移し、−10℃で60日間静置した後に白色蛍光灯の下で透かして、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の液安定性を目視により以下の基準で評価した。
「○」:濁りや白濁は見られない。
「×」:濁りや白濁が見られる。
【0048】
(3)外観
活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜の外観を目視にて以下の基準で評価した。
「○」:レベリング性及び平滑性は良好であり、ハジキ、ブツ、タマリ及びヨリも見られない。
「×」:ハジキ、ブツ、タマリ又はヨリが見られる。
【0049】
(4)密着性
活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜と基材との密着性をJIS K 5400 8.5に従い、以下の基準で評価した。
「○」:分類0〜1である。
「△」:分類2である。
「×」:分類3〜5である。
【0050】
(5)耐高温高湿性
基材の表面に活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜が積層された被覆物のサンプルを80℃及び80%RHの条件の恒温恒湿環境下に24時間静置した後の活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜と基材との密着性をJIS K 5400 8.5に従い、以下の基準で評価した。
「○」:分類0〜1である。
「△」:分類2である。
「×」:分類3〜5である。
【0051】
(6)艶消し効果
活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜の艶消し効果として艶消しのレベルを目視にて以下の基準で評価した。
「◎」:艶消しレベル。
「○」:3分艶レベル。
「△」:5分艶レベル。
「×」:全艶レベル。
【0052】
(7)判定
前記の(1)〜(6)の評価結果に基づいて、以下の基準で総合判定を行った。
「○」:全ての評価結果が○以上である。
「△」:全ての評価結果が△以上である。
「×」:評価結果の中で×がある。
【0053】
[製造例1]分散剤1の製造
冷却器、温度計、滴下ロート及び攪拌機を備えた四つ口のフラスコに、脱イオン水900部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート12部を入れて撹拌すると共にフラスコ内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。
次いでフラスコ内に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、更にフラスコ内を60℃に昇温した。
更に、滴下ポンプを使用してメチルメタクリレート18部を0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。
得られた反応溶液を60℃で6時間保持した後に室温に冷却して、固形分10%の透明な分散剤1の水溶液を得た。
【0054】
[製造例2]連鎖移動剤2の製造
撹拌装置を備えたフラスコ中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物1.00g、ジフェニルグリオキシム1.93g及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体10mlを加え、更に6時間攪拌した。
得られた混合物をろ過し、固形分をジエチルエーテルで洗浄した後に15時間真空乾燥して、赤褐色固体である2.12gの連鎖移動剤2を得た。
【0055】
[製造例3]重合体(A−1)の製造
冷却器、温度計、滴下ロート及び攪拌機を備えた四つ口のフラスコに、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤1の水溶液0.25部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。
次いでフラスコ内に、イソボルニルメタクリレート(δ:18.87(J/cm1/2)100部、チオグリコール酸−2−エチルヘキシル(連鎖移動剤1)5部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8部を加え、水性懸濁液とした。
この後、フラスコ内を窒素置換し、70℃に昇温して約1時間重合し、更に重合率を上げるためにフラスコ内を93℃に昇温して1時間保持した。
次いで、得られた反応液を40℃に冷却して、重合体(A−1)の水性懸濁液を得た。
この水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水した後、40℃で16時間乾燥して、重合体(A−1)のビーズを得た。
重合体(A−1)の重量平均分子量(Mw)は4,700であり、溶解性パラメーター(δ)は18.87(J/cm1/2であった。
重合体(A−1)のビーズを固形分が40%となるようにキシレン中に溶解させて重合体(A−1)溶液を得た。
尚、本発明においては、重合体のMwは以下の方法により得られる値をいう。
【0056】
<Mwの測定方法>
重合体をテトラヒドロフラン(THF)に0.4%になるように溶解した溶液100μlを使用して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)「HLC−8120」(商品名、東ソー(株)製)を用いて40℃で測定した。
カラムはTSKgel G5000HXL*GMHXL−L(商品名、東ソー(株)製)を使用した。
また、重合体のMwは、TSK標準ポリスチレンF288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(商品名、東ソー(株)製)及びスチレンを使用して作成した検量線を用いて、標準ポリスチレン換算にて算出した。
【0057】
[製造例4〜7]重合体(A−2)〜(A−4)及び重合体(A’−1)の製造
単量体成分として表1に示す化合物の種類及び添加量に変更した。それ以外は製造例3と同様にして重合体(A−2)〜(A−4)及び重合体(A’−1)のビーズを得た。重合体(A−2)〜(A−4)及び重合体(A’−1)のMw及び溶解性パラメーター(δ)を表1に示す。
重合体(A−2)〜(A−4)及び重合体(A’−1)のビーズを固形分が40%となるようにキシレン中に溶解させて重合体(A−2)溶液〜(A−4)溶液及び重合体(A’−1)溶液を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
表1中の略号は以下の化合物を示す。
IBXMA:イソボルニルメタクリレート(δ:18.87(J/cm1/2
MMA:メチルメタクリレート(δ:20.32(J/cm1/2
連鎖移動剤1:チオグリコール酸−2−エチルヘキシル
連鎖移動剤2:製造例2で製造した連鎖移動剤
【0060】
[実施例1〜4及び比較例1]
表2に示す活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の各成分をステンレス容器に計量し、全体が均一になるまで約30分間攪拌して活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物を調製した。
次いで、縦9cm、横5cm及び厚さ3mmの長方形のABS樹脂製のテストピースの表面に、硬化後の膜厚が10μmとなるように活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物をスプレー塗装し、テストピースの表面に活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の塗膜を形成した。
活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の塗膜を有するテストピースを60℃の温風乾燥器中に5分間保持して、塗膜中の有機溶剤を揮発させた後、空気中で高圧水銀灯を用いて、波長340〜380nmの積算光量が(株)オーク製作所製紫外線光量計(商品名:ORC−UV−351)にて測定した場合に1,000mJ/cm2のエネルギーとなる紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜を得た。評価結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2中の略号は以下の化合物を示す。
b−1−1:5官能アクリレート及び6官能アクリレートの混合物(日本化薬(株)製、商品名:カヤラッド DPHA)
b−1−2:3官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:TMP−3A−3)
b−1−3:3官能ウレタンアクリレート(根上工業(株)製、商品名:アートレジン UN−2300)
b−2:単官能アクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:ビスコート THFA)
b−3−1:ウレタンジアクリレートの20%酢酸n−ブチル溶液(三菱レイヨン(株)製、商品名:ダイヤビーム UK−6053)
b−3−2:ジアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名:ニューフロンティア BPE−4)
光重合開始剤:イルガキュア184(商品名、日本チバガイギー(株)製)
IPA:イソプロピルアルコール
【0063】
[実施例5〜8]
縦9cm、横5cm及び厚さ3mmの長方形のABS樹脂板の表面に下記のアンダーコート材を硬化後の厚さ15〜20μmとなるようにスプレー塗装により塗付した。
表面にアンダーコート材が塗付されたABS樹脂板を60℃の温風乾燥器中に5分間保持して有機溶剤を揮発させた。
次いで、有機溶剤を揮発させたABS樹脂板のアンダーコート材の塗付面に、空気中で高圧水銀灯を用いて、波長340〜380nmの積算光量が(株)オーク製作所製紫外線光量計(商品名:ORC−UV−351)にて測定した場合に1,000mJ/cm2のエネルギーとなる紫外線を照射し、アンダーコート層を形成した。
形成されたアンダーコート層の表面に、日本真空技術(株)製の真空蒸着装置(商品名:EBX−6D)による真空蒸着法で膜厚が約100nmのアルミニウム膜が蒸着されたテストピースを得た。
上記テストピースを使用し、表2に示す活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の各成分を使用する以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜を得た。評価結果を表2に示す。
【0064】
[アンダーコート材の調整]
2Lの4つ口フラスコ内にトルエン500gを仕込み、内温が80℃になるように加温した。
次いで、フラスコ内を80℃に保ち、攪拌しながら、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド150g(30%)、メチルメタクリレート200g(40%)、スチレン150g(30%)及びアゾビスイソブチルニトリル1gの混合物を等速滴下によりフラスコ内に2時間で滴下した。
この後、1時間毎にアゾビスイソブチルニトリル0.2gを合計4回追加投入しながら6時間攪拌し、Mwが1.8×10の共重合体を50%含むトルエン溶液を得た。
このトルエン溶液100部、カヤラッドDPHA(商品名、日本化薬(株)製)30部、EO変性水素化ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名:ニューフロンティアHBPE―4)10部、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(日立化成工業(株)製、商品名:ファンクリルFA−512A)5部、ベンゾフェノン5部、酢酸ブチル80部及びイソブタノール100部を均一混合してアンダーコート材を得た。
【0065】
[比較例2〜5]
表2に示す活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の各成分をステンレス容器に計量し、全体が均一になるまで約30分間攪拌して活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物を調製した。
次いで、縦9cm、横5cm及び厚さ3mmの長方形のABS樹脂製のテストピースの表面に、硬化後の膜厚が10μmとなるように活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物をバーコーターNo.14にて塗装し、テストピースの表面に活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の塗膜を形成した。
上記で得られた塗膜を使用する以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜を得た。評価結果を表2に示す。
【0066】
表2の結果から明らかなように、実施例1〜8では活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物は透明性及び液安定性に優れ、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜も外観、基材との密着性、耐高温高湿性及び艶消し硬化に優れていた。
【0067】
一方、比較例1〜5では、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物中に重合体(A)を含有していないために硬化膜による艶消し効果が不十分であった。
また、比較例2〜5では、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の液安定性が不十分であった。
更に、比較例3〜5では、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の透明性が不十分であった。
【0068】
また、比較例4及び5では、活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜にハジキが認められ、外観が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.00(J/cm1/2のビニル系単量体(a−1)を含む単量体成分を重合して得られる溶解性パラメーター(δ)が18.50〜20.20(J/cm1/2である重合体(A)5〜90質量%及び分子内に1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(B)10〜95質量%を含む樹脂成分を含有する、透明な活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物。
【請求項2】
単量体成分中のビニル系単量体(a−1)の含有量が10〜100モル%である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物。
【請求項3】
ビニル系単量体(a−1)がイソボルニル(メタ)アクリレートである請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物。
【請求項4】
基材の表面に請求項1〜3のいずれかの活性エネルギー線硬化性艶消し被覆材液状組成物の硬化膜が積層された被覆物。

【公開番号】特開2012−116993(P2012−116993A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269666(P2010−269666)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】