説明

活性成分の注射可能な持続放出処方剤、およびその調製方法

ヒトまたは動物の身体内に注射し得る油中水(W/O)型のエマルジョン形態で脂肪相(O)および水相(W)を含み、前記水相(W)は少なくとも一つの医薬的または獣医学的な水溶性の活性成分を含んでなる、ヒトまたは動物の身体に対して治療方法を実施するための組成物であって:前記脂肪相(O)は、ソルビトールもしくはマンニトールの脂肪酸エステル、またはソルビタンもしくはマンニタンの脂肪酸エステル、(ポリ)アルコキシ化脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の(ポリ)アルコキシ化ポリグリセロールエステルから選択される全体のHLB値が3〜8の間である1以上の表面活性剤を含んでなり、また前記組成物は、速度30rmpまたは60rpmで回転するNo.2スピンドルを備えたブルックフィールドLVT粘度計を使用して、直径約7cmの250cmのビーカー中において25℃で測定した10 2000mPas、好ましくは200mPas未満の粘度を有することを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、医薬的もしくは獣医学的な活性成分のヒトもしくは動物の身体内での経時的な持続的放出を促進するための、前記活性成分の新規な処方剤に関する。
【0002】
医薬の持続放出は、活性成分の治療効果を経時的に持続させて、その副作用を低減し、患者において毒性閾値を一時的に越えることに付随するリスクを最小化するための方法である。医薬の経口的、局所的または注射可能な持続放出のための多くの処方が、文献中に記載されてきた。これらの処方剤の中で、固形の注射可能な形態および液体の注射可能な形態は区別される。
【0003】
固形の注射可能な形態は、平均直径0.01μm〜100μmのマイクロビーズもしくはナノビーズの等張水溶液中における懸濁液である。このような懸濁液は沈殿する傾向があり、従って保存に際して比較的不安定で、医薬の均一性が常に保証されるわけではないので、患者に対して正確な投与量の活性成分の投与を保証することに関する問題を提示することがある。これら懸濁液のマイクロビーズまたはナノビーズは、一般的には、2005/048115Aの番号で公開された米国特許出願に記載の乳酸および/またはグリコール酸共重合体のような生分解性ポリマーからなっている。これらのマイクロビーズもしくはナノビーズの使用における主な欠点には、それを調製するための、人の健康に有害な揮発性有機溶媒の使用が含まれ、また最終処方剤中での毒性モノマーの残留が含まれる。他の著者等は、注射可能な活性成分のベクターとして、WO94/26252で公開された国際特許出願に記載されているような、室温で固体の脂肪酸のマイクロビーズを記載している。この場合の欠点は、当該懸濁液は、これを流体および注射可能なままにするためにマイクロビーズ(従って活性成分)を僅かだけ充填できるに過ぎないという事実にある。更に、冷却保存の際に、結晶形態の脂肪物質における変化が観察されており、これは活性成分の不十分な放出プロファイルを導くこともまた記載されている。最後に、このようなマイクロビーズは、親油性の活性成分と共に使用できるに過ぎない。
【0004】
注射可能な投与のためには、安定で均一な流動性液体の注射可能な形態が好ましい。特に有用な一つの形態は、表面活性剤で安定化された、水相および液状脂質相の混合物であるエマルジョンである。脂質相が水相中に分散されるときには、O/Wと書かれる「水中油」型のエマルジョンが得られる。このようなエマルジョンは、非経口摂食のために長期間使用されてきており、また親油性活性成分の注射のためにも、ヒトの身体におけるその持続放出を保証するために提案されてきた。しかし、このようなエマルジョンは植物油または中鎖トリグリセリドのような脂肪相を使用し、これは溶媒能力が低く、注意深く選択された小量の医薬を溶解することを可能にするに過ぎない。
【0005】
大部分の活性成分は水溶性なので、W/Oと書かれる「油中水」型のエマルジョンを使用することが試みられてきており、この場合は、人体の生物学的液体から医薬を単離して、その漸進的な経時的放出を可能にするための障壁または膜として働く脂質相の中に水相が分散される。しかし、「油中水」型のエマルジョンは屡々粘度が高すぎて、シリンジで注射するのが困難である;それらを注射するときは、それらは連続相の粘度および油性に起因して、注射部位において局部的反応を生じる;最後に、それらは経時的な安定性に乏しい。
【0006】
WO・02/067899で公開された国際特許出願は、ワクチンのための油中水(W/O)形態の組成物であって、好ましくは100mPas未満の粘度を有し、その乳化剤が、例えばArcacelTMP135[ポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)型のポリエステル乳化剤]である組成物を開示している。
【0007】
WO・96/40057の番号で公開された国際特許出願は、油中水型の低粘度逆エマルジョン形態の医薬であって、その脂肪相はフッ化炭化水素系のオイルを含んでなり、且つその水相が少なくとも一つの活性成分を含んでなる医薬を開示している。
【0008】
これは、本発明が、上記で概説した欠点を持たない活性成分の油中水エマルジョンを開発することを目的とした理由である。
【発明の開示】
【0009】
第一の側面に従えば、本発明の主題は、ヒトまたは動物の身体内に注射し得る油中水(W/O)型のエマルジョン形態で脂肪相(O)および水相(W)を含み、前記水相(W)は少なくとも一つの医薬的または獣医学的な水溶性の活性成分を含んでなる、ヒトまたは動物の身体に対して治療方法を実施するための組成物であって:前記脂肪相(O)は、ソルビトールもしくはマンニトールの脂肪酸エステル、またはソルビタンもしくはマンニタンの脂肪酸エステル、(ポリ)アルコキシ化脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の(ポリ)アルコキシ化ポリグリセロールエステルから選択される全体のHLB値が3〜8の間である1以上の表面活性剤を含んでなり、また前記組成物は、速度30rmpまたは60rpmで回転するNo.2スピンドルを備えたブルックフィールドLVT粘度計を使用して、直径約7cmの250cmのビーカー中において25℃で測定した200mPas以下の粘度を有することを特徴とする組成物である。
【0010】
本発明の目的において、脂肪酸エステル族の表面活性剤のHLB値は、式:HLB=20(1−I/I)によって計算され、ここでのIは前記表面活性剤の鹸化数であり、Iは酸数である。これら二つの数、即ち、鹸化数および酸数は、ヨーロッパ薬局方に記載された方法によって決定される。もう一つの化学族の一部を形成する表面活性剤のHLB値は、一般式:HLB=5E/Mによって計算され、ここでのEは表面活性剤の親水性部分の分子量を表し、Mは前記表面活性剤の合計分子量を表す。表面活性剤の混合物の場合、全体のHLB値は各表面活性剤のHLB値の加重合計(weight sum)である。
【0011】
4℃で液体でなければならない本発明の主題である該組成物の連続的な脂肪相は、一般には、鉱物起源、植物起源もしくは動物起源の油、前記油のアルキルエステル、脂肪酸のアルキルエステル、または脂肪アルコールのアルキルエーテル、脂肪酸とポリオールとのエステル、および脂肪アルコールとポリオールとのエーテルから選択される1以上の化合物を含んでいる。
【0012】
鉱物起源の油の例には、石油起源の油、例えばMarcolTM52、MarcolTM82またはDrakeolTM6VRのような白色ミネラル油が含まれる。植物起源の油の例には、落花生油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、小麦麦芽油、ブドウ種油(grapeseed oil)、向日葵油、ひまし油、亜麻仁油、大豆油、トウモロコシ油、ココナツ油、椰子油、胡桃油、シバミ油および菜種油、或いはオリーブスクワランもしくはスクワレンが含まれる。動物起源の油の例には、鯨蝋油、獣脂油、鮫肝臓から抽出されたスクワランもしくはスクワレン、および魚油が含まれる。
【0013】
油のアルキルエステルの例には、前記油のメチルエステル、エチルエステル、直鎖もしくは分岐鎖のプロピルエステル、および直鎖もしくは分岐鎖のブチルエステルが含まれる。
【0014】
上記で述べたエステルを調製するために適した脂肪酸には、特に、12〜22の炭素原子を含むもの、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リシノール酸、またはイソステアリン酸が含まれ、また有利には、20℃において液体である脂肪酸が含まれる。
【0015】
脂肪酸エステルまたは脂肪アルコールエステルの例には、脂肪酸のアルキルエステル、例えばオレイン酸エチル、オレイン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、またはパルミチン酸オクチル;脂肪酸およびポリオールのエステルまたは脂肪アルコールおよびポリオールのエーテル、例えば脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸とポリグリセロールとのエステル、またはプロピレングリコールの脂肪酸エステル、特に、脂肪酸とヘキソール、例えばソルビトールもしくはマンニトールとのエステル、および脂肪酸とヘキソール無水物、例えばソルビタンもしくはマンニタンとのエステルが含まれる。
【0016】
本発明の関連において、脂肪相は、上記で述べた化合物の一つだけ、または上記で述べた化合物の幾つかの混合物を含んでいる。
【0017】
本発明の第一の特別の側面に従えば、医薬組成物の連続的な脂肪相(O)は、白色ミネラル油、流動液体パラフィン、スクワラン、スクワレン、およびオレイン酸エチル、またはこれら油の混合物から選択される。
【0018】
該脂肪相は、その重量100%当り、約1重量%〜15重量%、好ましくは3重量%〜10重量%の表面活性剤を含んでいる。
【0019】
本発明の主題は、特に、前記表面活性剤または表面活性剤の混合物が5以上かつ8未満の全体のHLB値を有する、先に定義した組成物である。
【0020】
使用される表面活性剤は、一般には修飾された脂肪物質から選択される。本発明に関連して使用される修飾された脂肪物質は、鉱物起源、植物起源または動物起源のものであってよい。鉱物起源の修飾された脂肪物質には、石油起源の油が含まれる。植物起源の修飾された脂肪物質には、修飾された植物油、例えば修飾された落花生油、オリーブ油、ゴマ油、大豆油、小麦麦芽油、ブドウ種油、向日葵油、ひまし油、亜麻仁油、大豆油、トウモロコシ油、ココナツ油、椰子油、胡桃油、シバミ油および菜種油が含まれる。動物起源の修飾された脂肪物質には、例えば、修飾されたスクワラン、修飾されたスクワレン、修飾された鯨蝋油、修飾された獣脂油が含まれる。「修飾された脂肪物質」の用語は、特に、脂肪物質のカルボキシ誘導体、サルフェート誘導体、ホスフェート誘導体、またはアルコキシ誘導体を意味し、特に、油の(ポリ)アルコキシ化誘導体または油のアルキルエステルの(ポリ)アルコキシ化誘導体、並びに、特に油の(ポリ)エトキシ化および/または(ポリ)プロポキシ化誘導体、或いは、前記油のメチルエステル、エチルエステル、直鎖もしくは分岐鎖のプロピルまたは直鎖もしくは分岐鎖のブチルエステルの(ポリ)エトキシ化および/または(ポリ)プロポキシ化誘導体を意味する。
【0021】
本発明の主題は、更に詳細には、先に定義した組成物であって、前記修飾された脂肪物質が1〜10の平均エトキシ化度(1〜10のEO数とも言う)を備えた油のエトキシ化誘導体から選択される、先に定義した組成物である。「修飾された脂肪物質」の用語はまた、脂肪酸とポリオールとのエステル、または脂肪アルコールとポリオールとのエーテル、特に、脂肪酸とヘキソール、例えばソルビトールもしくはマンニトールとのエステル、または脂肪酸とヘキソール無水物、例えばソルビタンもしくはマンニタンとのエステル、脂肪酸とポリオールとのエステルの(ポリ)アルコキシ化誘導体 、または脂肪アルコールとポリオールとのエステルの(ポリ)アルコキシ化誘導体、例えば(ポリ)アルコキシ化脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸とポリグリセロールとの(ポリ)アルコキシ化エステル、特に、脂肪酸とヘキソール、例えばソルビトールもしくはマンニトールとの(ポリ)アルコキシ化エステル、または脂肪酸とヘキソール無水物、例えばソルビタンもしくはマンニタンとの(ポリ)アルコキシ化エステルであって、1〜40の平均エトキシ化度(1〜40のEO数とも言う)、好ましくは5〜20の平均エトキシ化度を有するものを言う。
【0022】
本発明の関連において、「脂肪酸とポリオールとのエステル」の用語は、ポリオールの脂肪酸モノエステル、またはポリオールの脂肪酸ポリエステル、例えばポリオールの脂肪酸ジエステルもしくはポリオールの脂肪酸トリエステルを意味する。前記エステルの(ポリ)アルコキシ化誘導体についても、同様に同じことが言える。
【0023】
本発明の関連において、「脂肪アルコールとポリオールとのエーテル」の用語は、脂肪アルコールとポリオールとのモノエーテル、または脂肪アルコールとポリオールとのポリエーテル、例えば、脂肪アルコールとポリオールとのジエステル、または脂肪アルコールとポリオールとのトリエーテルを意味する。前記エーテルの(ポリ)アルコキシ化誘導体についても、同様に同じことが言える。
【0024】
本発明の主題は、特に、前記修飾された脂肪物質が、脂肪酸とポリオールのエステルの(ポリ)エトキシ化誘導体、または脂肪アルコールとポリオールのエステルの(ポリ)エトキシ化誘導体、特に、脂肪酸とグリセロールまたはヘキソール、例えばソルビトールまたはマンニトールとの(ポリ)エトキシ化エステル、または脂肪酸とヘキソール無水物、たとえばソルビタンもしくはマンニタンとの(ポリ)エトキシ化エステルであって、5〜10の平均エトキシ化度(5〜10のEO数とも言う)を有するものを言う。
【0025】
上記の修飾された脂肪物質を調製するのに適した脂肪酸には、平均12〜22の炭素原子を含むもの、例えば16〜18の炭素原子を含むもの、例えばオレイン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、またはイソステアリン酸、有利には20℃において液体である脂肪酸が含まれる。上記で定義した組成物は、特に、オレイン酸から誘導された上記の1以上の修飾された脂肪物質を含んでいる。
【0026】
本発明のもう一つの側面に従えば、脂肪相中に存在する前記表面活性剤または表面活性剤の混合物は、実質的に、マンニタンエステル、ソルビタンエステル、(ポリ)アルコキシ化マンニタンエステル、および(ポリ)アルコキシ化ソルビタンエステルから選択される1以上のエステルからなっている。特に、脂肪相中に存在する表面活性剤は、オレイン酸マンニタンおよび(ポリ)エトキシ化マンニタンの混合物、オレイン酸ソルビタンおよびオレイン酸(ポリ)エトキシ化ソルビタンの混合物、オレイン酸ソルビタンおよび(ポリ)エトキシ化マンニタンの混合物、またはオレイン酸マンニタンおよび(ポリ)エトキシ化ソルビタンの混合物からなり、前記混合物は3以上かつ8未満の全体のHLB値を有している。
【0027】
本発明のもう一つの特別な側面に従えば、脂肪相中に存在する表面活性剤または表面活性剤の混合物は、レシチン、例えば大豆レシチン、卵レシチン、水素化レシチン、リン脂質およびスフィンゴ脂質から選択される1以上の化合物から実質的になっている。
【0028】
上記で定義した組成物は、その重量100%当り、一般には50重量%の水相を含んでおり、該水相は、注射すべき親水性の活性成分を補充した水または生体利用可能な水性溶媒、例えばリン酸緩衝液で緩衝された水からなっている。
【0029】
好ましくは、先に定義した組成物は、治癒的治療方法に使用される。このような注射製剤のために適した親水性の活性成分には、例えば、水溶性の抗癌活性成分、ホルモン、抗生物質、抗ウイルス剤、鎮痛活性剤、血管拡張剤、抗糖尿病活性剤、麻酔薬、鎮静剤、造影剤、免疫調節剤、抗血友病因子、神経遮断剤、栄養学低活性剤、ステロイド、血栓溶解剤、および生物医薬活性剤、例えば組換えタンパク質が含まれる。
【0030】
もう一つの側面に従えば、本発明の主題は、先に定義した組成物を調製するための方法であって:
・親水性成分を、水または薬理学的に許容可能な水性溶媒中に溶解させる工程(a)と;
・工程(a)で調製された水相を、表面活性剤または表面活性剤の混合物を含有する脂肪相と混合する工程(b)
を含んでなることを特徴とする方法である。
【0031】
最後の側面に従えば、本発明の主題は、ヒトまたは動物の身体における活性成分の持続放出のための方法であって、前記活性成分が、先に定義した油中水エマルジョンの形態で注射によって投与されることを特徴とする方法である。
【実施例】
【0032】
以下の例は、本発明を例示するものであるが、本発明を限定するものではない
実施例1 - カフェインW/Oエマルジョンの調製
カフェインを、生理学的水の中に所望の濃度、特に1mg/mL、より一般的には0.1〜10mg/mLで予め溶解し、必要な量の油および必要な表面活性剤を均一な混合物が得られるまで撹拌する。
【0033】
記載する全ての例において、脂肪相(油プラス表面活性剤)とカフェイン水溶液の比率は、70重量%の脂肪相および30重量%の水相に維持する。エマルジョンを調製するために、水相を油相の中に投入し、該混合物を、SilversonTM・L4R型の実験室用回転固定子スターラーを使用して3分間撹拌する。親水性活性成分としてのカフェイン、および以下の表に示す成分を用いて、W/Oエマルジョンの6つのサンプルを調製した。
【0034】
使用した表面活性剤の混合物は、以下の表に示したそれらの物理化学的明細によって特徴付けられる。
【表1】

【0035】
得られたカフェインエマルジョンは以下の特性を有している。
【表2】

【0036】
実施例2 - 活性成分の持続放出能力に関するエマルジョンのインビトロ評価
評価すべきエマルジョンのサンプルは、ErwekaTM・DT600溶解機の容器に収容された「受け」水相上に堆積させる;全体を混合し、そこから受け相の中に放出された活性剤を検定するために、この相のサンプルを規則的に採取する(t=0、24時間、48時間、72時間、96時間)。得られた結果を、放出されたカフェインのパーセンテージで下記の表に示す:
【表3】

【0037】
実施例3 - 活性成分の持続放出能力に関する、本発明に従うエマルジョンのインビボ評価
カフェインの薬物動態学を、エマルジョンNo.1およびNo.2の皮下注射、生理学的カフェイン溶液の皮下注射(SC溶液)および生理学的カフェイン溶液の静脈注射(IV溶液)によって、4匹の動物からなる4群で評価した。これらの4群について、注射されたカフェインの投与量は40mg/kgラットである。
【0038】
血液中のカフェイン濃度(μg/mLの血液)を周期的に決定し、以下の結果が得られる。
【表4】

【0039】
これらの結果は、以下の薬物動態学的データを与える。
【表5】

【0040】
AUC:曲線下の面積、即ち、X軸上に時間(時で)を取り、Y軸上に血液中の濃度をμg/mLで取ることによりプロットした曲線下の面積の測定
この結果は、同じ方法で注射された水溶液と比較したときに、カフェインは血液中に徐々に通過する一方、曲線下の面積は、静脈注射に対応するものと同等に維持されることを示している。
【0041】
エマルジョン形態中のカフェインの吸収相は3倍遅く、最大血漿濃度に達する時間は1時間遅れる。本発明のエマルジョンを用いて得られる最大血漿濃度は、カフェイン溶液を用いて得られるよりも20%〜35%低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の身体内に注射し得る油中水(W/O)型のエマルジョン形態で脂肪相(O)および水相(W)を含み、前記水相(W)は少なくとも一つの医薬的または獣医学的な水溶性の活性成分を含んでなる、ヒトまたは動物の身体に対して治療方法を実施するための組成物であって:前記脂肪相(O)は、ソルビトールもしくはマンニトールの脂肪酸エステル、またはソルビタンもしくはマンニタンの脂肪酸エステル、(ポリ)アルコキシ化脂肪酸トリグリセリド、脂肪酸の(ポリ)アルコキシ化ポリグリセロールエステルから選択される全体のHLB値が3〜8の間である1以上の表面活性剤を含んでなり、また前記組成物は、速度30rmpまたは60rpmで回転するNo.2スピンドルを備えたブルックフィールドLVT粘度計を使用して、直径約7cmの250cmのビーカー中において25℃で測定した200mPas以下の粘度を有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記脂肪相(O)は、白色鉱油、液体流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、オレイン酸エチル、およびこれら油の混合物から選択される組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記脂肪相(O)は、その重量100%当たり1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%の表面活性剤を含んでなる組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の組成物であって、前記表面活性剤は、脂肪酸とポリオールとのエステル、特に脂肪酸とグリセロール、ソルビトールもしくはマンニトールとの(ポリ)アルコキシ化エステル、または脂肪酸とソルビタンもしくはマンニタンとの(ポリ)アルコキシ化エステルから選択され、平均エトキシ化度が1〜40、好ましくは5〜10である組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物であって、前記表面活性剤は、オレイン酸マンニタンとオレイン酸ポリエトキシ化マンニタンの混合物、オレイン酸ソルビタンとオレイン酸(ポリ)エトキシ化ソルビタンの混合物、オレイン酸ソルビタンとオレイン酸ポリエトキシ化マンニタンの混合物、またはオレイン酸マンニタンとオレイン酸(ポリ)エトキシ化ソルビタンとの混合物から選択され、前記混合物は3以上8未満の全体のHLB値を有する組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の組成物であって、前記方面活性剤はレシチン、例えば大豆レシチンもしくは卵レシチン、水素化レシチン、リン脂質およびスフィンゴ脂質から選択される組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の組成物であって、その重量100%当たり、少なくとも30重量%の水相を含んでなる組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の組成物であって、前記水溶性活性成分が抗癌活性成分、ホルモン、免疫調節剤、抗血友病因子、神経遮断剤、栄養学的活性剤、ステロイド、血栓溶解剤、医薬活性剤、例えば組換えタンパク質から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の組成物を調製するための方法であって:
前記親水性成分を、水または医薬的に許容可能な水性溶媒中に溶解させる工程(a)と;
工程(a)で調整した前記水相を、表面活性剤もしくは表面活性剤の混合物を含有する脂肪相と混合する工程(b)
の連続的工程を含んでなることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−542782(P2009−542782A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518930(P2009−518930)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051584
【国際公開番号】WO2008/007001
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(398057293)ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック (27)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
【Fターム(参考)】