説明

活性水素含有基を持つ樹脂を利用したトナー及びその製造方法

活性水素含有基を持つ樹脂を利用したトナー及びその製造方法が開示される。開示された活性水素含有基を持つ樹脂を利用したトナーは、結着樹脂(A)、THFに対する不溶分が99重量%ないし100重量%の架橋樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含み、架橋樹脂がトナー粒子内に複数の島状に配されたことを特徴とする。したがって、開示されたトナーは、ホットオフセットを防止できる。また、開示されたトナーは、電子写真用画像形成装置に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー及びその製造方法に係り、さらに詳細には、ホットオフセットを防止できる、活性水素含有基を持つ樹脂を利用したトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、印刷市場で高速印刷に適したトナー、特に、画像の質向上とホットオフセットを防止できるトナーへの要求が高まりつつある。ここで、ホットオフセットとは、トナーが定着器を通過しつつ加熱される時、印刷用紙への定着に必要な程度を外れて過度に溶融され、定着器を通過した後で、溶融されたトナーの一部が定着器に残留する現象をいう。
【0003】
したがって、トナーにおいて、ホットオフセットに対する抵抗性が要求されている。
【0004】
特許文献1は、ホットオフセットの発生を防止するためのものであって、結着樹脂が不飽和部位による架橋構造を持つ結晶性ポリエステルを主成分として含み、トナー粒子の形状が球形であるトナー、及びその製造方法を開示している。しかし、かかる構成を持つトナーは、十分に広い定着範囲を確保し難いという問題点がある。
【0005】
一方、耐ホットオフセット性を向上させるための方案として粉砕法を使用する場合には、効果的な樹脂の使用が困難であり、高分子量または架橋構造を持つ重合体を使用しても十分な性能を得難い。また、粉砕するためにトナー粒子の形状制御が難しく、特にトナー粒子の球形化が困難であり、高画質を目的とするトナー粒子の小粒径化にも制約を受けるようになる。
【0006】
特許文献2は、粉砕法が持つ前記問題点を解決するためのものであって、ポリエステル樹脂の水中懸濁液を作製し、前記水中懸濁液に分散安定剤を添加した後、分散安定剤の存在下で電解質の水溶液を滴加することで、ポリエステル樹脂の微粒子を合体形態で析出させるトナーの製造方法を開示している。かかる製造方法において、前記ポリエステル樹脂は、全アルコール成分に対してプロピレングリコールを60mol%以上使用した架橋型ポリエステル樹脂と、直鎖型ポリエステル樹脂との混合物である。しかし、かかる方法により製造されたトナーも十分に広い定着範囲を確保し難いという問題点を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−117268号公報
【特許文献2】特開2006−038915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ホットオフセットを防止できるトナー及びその製造方法を提供する。
本発明はまた、前記トナーを使用した電子写真用画像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような課題を解決するために、本発明は、結着樹脂(A)と、THFに対する不溶分が99重量%ないし100重量%の架橋樹脂と、着色剤と、少なくとも一つの添加剤と、を含み、前記架橋樹脂が複数の島状に配されたトナーを提供する。
【0010】
また前記のような課題を解決するために、本発明は、(a)結着樹脂(A)、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を有機溶剤に混合してトナー混合液を作製する工程と、(b)前記トナー混合液を分散媒内に添加してトナー微細懸濁液を形成する工程と、(c)前記トナー微細懸濁液から有機溶剤を除去してトナー組成物を形成する工程と、(d)前記トナー組成物を架橋樹脂の微粒懸濁液と混合した後、これらを凝集及び融着させることによって、架橋樹脂が複数の島状に配されたトナー複合体を形成する工程と、を含むトナーの製造方法を提供する。
【0011】
また前記のような課題を解決するために、本発明は、前記具現例のうちいずれか一つの具現例によるトナーを使用した電子写真用画像形成装置を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の望ましい具現例について詳細に説明する。
【0013】
本具現例によるトナーは、結着樹脂(A)、THF(テトラヒドロフラン)に対する不溶分が99重量%ないし100重量%の架橋樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を含み、前記架橋樹脂がトナー粒子内に複数の島状に配されている。また、前記架橋樹脂は、活性水素含有基を持つ樹脂(B)と架橋剤との架橋反応により形成される。
【0014】
まず、結着樹脂(A)について説明する。
【0015】
結着樹脂(A)はポリエステル樹脂を含むが、ポリエステル樹脂は、着色剤の分散性及び低温定着性などの観点で特に望ましい。前記ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分とを必要に応じて減圧雰囲気下または触媒の存在下で加熱して、重縮合反応させることにより製造できる。多価アルコール成分には、具体的に、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロール、及びポリオキシプロピレンなどがある。多価カルボン酸成分には、具体的に、ポリエステル樹脂の製造に通常的に使われる芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルを含む。かかる芳香族多価酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及び/またはこれらカーボン酸のアルキルエステルがあり、この時、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル基などが使われうる。前記芳香族多価酸及び/またはそのアルキルエステルは、単独または2種以上が配合された形態で使われうる。
【0016】
前記結着樹脂(A)の含有量は、トナー組成物全体100重量部に対して50〜98重量部である。前記含有量が50重量部未満ならば、前記結着樹脂(A)がトナー組成物を結合させるに足りなくて望ましくなく、98重量部を超過すれば、前記結着樹脂(A)以外のトナー組成物含有量が少なくて、トナーとしての機能を発揮し難くて望ましくない。ここで、トナー組成物全体とは、前記結着樹脂(A)及び架橋樹脂以外に後述する着色剤、添加剤、及び外添剤などをいずれも含む概念である。前記結着樹脂(A)は、数平均分子量が1,000〜4,000であり、PDI(多分散性指数)は2〜15であり、THFに対する不溶分は1重量%以下である。数平均分子量が1,000未満ならば、溶融粘度が非常に低くて定着温度領域が狭くなって望ましくなく、4,000を超過すれば、粒子形成時に大きい粒子が形成されて、粒子の分布が広くなって望ましくない。また、PDIが2未満ならば、定着領域が狭くなって望ましくなく、15を超過すれば、THFに対する不溶分が1重量%以下の樹脂を得難くて望ましくない。THFに対する不溶分が1重量%を超過すれば、微細懸濁粒子の製造が困難で望ましくない。また、結着樹脂(A)は、後述する活性水素含有基を持つ樹脂(B)それ自体でもあり、前記樹脂(B)を含む樹脂でもありうる。
【0017】
次いで、活性水素含有基を持つ樹脂(B)について説明する。
【0018】
活性水素含有基は、後述するイソシアネート化合物またはエポキシ化合物などと容易に結合できる、水酸基(OH)、メルカプト基(SH)、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を含む。これらのうち、水酸基及び/またはカルボキシル基を持つ樹脂が前記架橋剤との反応に有利である。前記樹脂(B)は、例えば、活性水素含有基を持つポリエステル樹脂でありうる。
【0019】
前記樹脂(B)と架橋反応する架橋剤としては、イソシアネート化合物やエポキシ化合物などが使われるが、イソシアネート化合物がさらに望ましい。
【0020】
前記イソシアネート化合物には、任意の公知の芳香族、脂肪族及び/または脂環族イソシアネート化合物;3官能性イソシアネート化合物;ポリオール及びジイソシアネート化合物のイソシアネート官能性付加物が使われうる。一般的に有用なジイソシアネート化合物には、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4−ビフェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ビス−シクロヘキシルジイソシアネート、テトラメチレンキシレンジイソシアネート、エチルエチレンジイソシアネート、2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート、1−メチルトリメチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ビス−(4−イソシアネートシクロヘキシル)−メタン、及び4,4−ジイソシアネートジフェニルエーテルなどがある。使われうる典型的な3官能性イソシアネート化合物には、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3,5−ベンゼントリイソシアネート、及び2,4,6−トルエントリイソシアネートなどがある。登録商標名“Desmodur N−3390”で市販中のヘキサメチレンジイソシアネートの三量体及び、イソホロンジイソシアネートの三量体などのジイソシアネートの三量体がまた使われうる。前記架橋剤のうち2官能性のものなどは、トリオールなどの3官能性付加物と共に使われうる。また、前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、及び/またはカプロラクタムなどでブロック共重合させたものが使われてもよく、前記ポリイソシアネートが2種以上併用して使われてもよい。
【0021】
前記エポキシ化合物には、2ないし5個のエポキシ官能基を持つジフェニロールプロパン型エポキシ樹脂、ジフェニロールメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジアミン型エポキシ樹脂、ジアシド型エポキシ樹脂、及びジオール型エポキシ樹脂などが使われうる。
【0022】
前記架橋剤の含有量は、前記活性水素含有基1molに対して0.004ないし0.15molであり、望ましくは0.008ないし0.075molである。前記含有量が0.004mol未満の場合には、架橋密度が低くて耐熱保管性が不十分で耐ホットオフセット性が劣化するため、定着温度範囲が狭くなって望ましくなく、0.15molを超過する場合には、架橋による高分子量成分が多くなって低温定着性が劣化するので望ましくない。
【0023】
前記樹脂(B)と前記架橋剤との架橋反応により架橋樹脂が形成され、前記架橋樹脂は、後述するトナーの製造方法により、結着樹脂(A)、着色剤、及び添加剤を含むトナー組成物内に複数の島状に配される。トナーに含まれる架橋樹脂の含有量は、一般的に結着樹脂(A)の100重量部に対して10ないし20重量部である。前記架橋樹脂の含有量が10重量部未満の場合には、分子量が小さくなって定着温度範囲が狭くなるので望ましくなく、20重量部を超過する場合には、樹脂が過度に硬くなって低温定着性に得とならないので望ましくない。また、前記架橋樹脂は、THFに対する不溶分が99重量%ないし100重量%の範囲でなければならない。THFに対する不溶分が99重量%未満の場合には、架橋密度が低くて耐ホットオフセット性が不十分で望ましくない。
【0024】
一方、着色剤は着色顔料そのままで使われうるが、着色顔料が樹脂内に分散された着色顔料マスターバッチ形態として使われることが望ましい。このようにマスターバッチ形態として使用することによって、着色剤の表面露出を抑制してトナー粒子の帯電性能を向上させることができる。
【0025】
着色顔料マスターバッチに使われる樹脂としては、前述した結着樹脂(A)及び/または活性水素含有基を持つ樹脂(B)が使われてもよく、この他に他の任意の公知の樹脂が使われてもよい。着色顔料マスターバッチとは、着色顔料が均一に分散された樹脂組成物をいい、これは、高温高圧下で着色顔料及び樹脂を混練するか、樹脂を溶剤に溶解し、前記形成された溶液に着色顔料を添加した後、高いせん断力を加えて着色顔料を分散させる方法により製造される。着色顔料マスターバッチを使用してトナー微細懸濁液の製造時に顔料の露出を抑制することによって、均一なトナー微細懸濁液を製造できるようになる。本具現例で利用する着色顔料マスターバッチにおいて、着色顔料の含有量は、着色顔料マスターバッチ全体の100重量部に対して10〜60重量部であり、望ましくは20〜40重量部である。前記含有量が10重量部未満ならば、製造されたトナーの顔料含有量が少なくて所望の色再現ができなくて望ましくなく、60重量部を超過すれば、マスターバッチ内の顔料分散にバラツキが出る可能性が高くて望ましくない。
【0026】
前記着色顔料は、商業的によく使われる顔料であるブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料及びこれらの混合物のうち適宜に選択されて使われうる。
【0027】
これらの顔料の種類は、下記のように挙げることができる。すなわち、ブラック顔料は、酸化チタンまたはカーボンブラックなどが使われうる。シアン顔料は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキン化合物、または塩基染料レーク化合物などが使われる。具体的にC.I.顔料ブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、または66などが使われうる。マゼンタ顔料は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーク化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、またはペリレン化合物が使われる。具体的にC.I.顔料レッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、または254などが使われうる。イエロー顔料は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体、またはアリルイミド化合物が使われる。具体的にC.I.顔料イエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、または168などが使われうる。
【0028】
前記着色剤の含有量は、トナーを着色して現像により可視画像を形成するのに十分な程度ならばよいが、例えば、前記結着樹脂(A)100重量部を基準として3ないし15重量部であることが望ましい。前記含有量が3重量部未満ならば、着色効果が不十分で望ましくなく、15重量部を超過すれば、トナーの電気抵抗が低くなるため、十分な摩擦帯電量が得られずに汚染を発生させるので望ましくない。
【0029】
一方、添加剤は、帯電制御剤、離型剤、またはこれらの混合物などを含む。
帯電制御剤としては、負帯電性帯電制御剤及び正帯電性帯電制御剤がいずれも使われ、負帯電性帯電制御剤としては、クロム含有アゾ錯体またはモノアゾ金属錯体などの有機金属錯体またはキレート化合物;クロム、鉄、亜鉛などの金属含有サリチル酸化合物;及び芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との有機金属錯体が使われ、公知のものならば特別に制限されない。また、正帯電性帯電制御剤としては、ニグロシンと脂肪酸金属塩などで改質されたその生成物;トリブチルベンジルアンモニウム1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホネート及びテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩を含むオニウム塩などが、単独または2種以上が混合されて使われうる。かかる帯電制御剤は、静電気力によりトナーを安定的かつ速い速度で帯電させ、前記トナーを現像ローラ上に安定して支持させる。
【0030】
トナーに含まれる帯電制御剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部の範囲以内である。前記帯電制御剤の含有量が0.1重量部未満の場合には、トナーの帯電速度が遅く帯電量が多くなくて、帯電制御剤としての機能を発現するのに足りなくて望ましくなく、10重量部を超過する場合には、過度に帯電量が多くなって画像に歪曲が発生するという問題点があって望ましくない。
【0031】
離型剤は、トナー画像の定着性を向上させるものであって、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレンなどのポリアルキレンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、パラフィンワックスなどが前記離型剤として使われうる。トナーに含まれる離型剤の含有量は、一般的にトナー組成物全体の100重量部に対して0.1重量部ないし30重量部の範囲以内である。前記離型剤の含有量が0.1重量部未満の場合には、オイルを使用せずにトナー粒子を定着させるオイルレス定着を実現し難くて望ましくなく、30重量部を超過する場合には、保管時にトナーのかたまり現象を引き起こして望ましくない。
【0032】
また、前記添加剤は外添剤をさらに含むことができる。外添剤は、トナーの流動性を向上させるか、または帯電特性を調節するためのものであって、大粒径シリカ、小粒径シリカ、及びポリマービーズを含む。
【0033】
以下、本具現例によるトナーの製造方法について詳細に説明する。
【0034】
まず、極性溶媒、界面活性剤、及び選択的に増粘剤などを混合した後、攪拌及び加熱して、前記混合液に含まれた固形分を十分に溶解させることによって、分散媒を製造する。前記固形分が完全に溶解されたことを確認した後、前記分散媒に有機溶剤を添加して乳白色の液体組成物を製造する。次いで、前記液体組成物に活性水素含有基を持つ樹脂と架橋剤とを添加及び混合して微細懸濁液を形成する。
【0035】
次いで、前記微細懸濁液を攪拌及び加熱しつつ、望ましくは、部分減圧状態で有機溶剤を除去する。結果として、架橋樹脂の微粒懸濁液を得る。
【0036】
次いで、結着樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を有機溶剤に混合してトナー混合液を形成する。一方、前記結着樹脂が酸基を持つ場合には、前記結着樹脂の酸基を塩基により中和させる。
【0037】
次いで、前記形成されたトナー混合液を極性溶媒、界面活性剤、及び選択的に増粘剤などで構成された分散媒内に添加し、かつ攪拌してトナー微細懸濁液を形成する。
【0038】
次いで、前記トナー微細懸濁液を攪拌及び加熱しつつ、望ましくは、部分減圧状態で有機溶剤を除去する。結果として、トナー組成物を得る。
【0039】
次いで、前記架橋樹脂の微粒懸濁液とトナー組成物とを混合して凝集剤を添加した後、温度及びpHなどを調節することによってこれらを凝集させる。結果として、トナー複合体を得る。前記トナー複合体は硬度が低く、その形状が非常に不規則である。
【0040】
次いで、前記トナー複合体を融着させて所望の粒径のトナー複合体を得る。かかる融着により前記トナー複合体の硬度が強化され、その形状が規則的になる。また、融着の程度によって、固まっているトナー複合体の形状が、歪んでいる球形から完全な球形まで多様に変化する。特に、かかる融着により、架橋樹脂が複数の島状に不連続的に配されたトナー複合体が得られる。すなわち、融着により結着樹脂(A)は一つに集まるが、架橋樹脂は相対的に量が少なくてTHFのような有機溶剤に不溶性であるため、結着樹脂(A)と融合されずにトナー複合体内に島状に入り込むようになる。
【0041】
最後に、前記融着されたトナー複合体を冷却させた後、洗浄及び乾燥してトナー粒子を得る。
【0042】
前記製造方法で使われる有機溶剤は揮発性であり、極性溶媒より低い沸点を持って極性溶媒と混合されないものであって、例えば、メチルアセテートやエチルアセテートなどのエステル系;アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン系;ジクロロメタンやトリクロロエタンなどの炭化水素系;及びベンゼンなどの芳香族炭化水素系などから選択された1種以上でありうる。
【0043】
極性溶媒は、水、グリセロール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールなどから選択された1種以上であり、水が望ましい。
【0044】
増粘剤は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、キトサン、及びアルギン酸ナトリウムなどから選択された1種以上であり、ポリビニルアルコールが望ましい。
【0045】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のうち選択された1種以上が使われうる。
【0046】
非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノリルフェニルエーテル、エトキシレート、リン酸ノリルフェノール系、トリトン、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなどがあり、陰イオン性界面活性剤としては、硫酸ドデシルナトリウム、硫酸ドデシルベンゼンナトリウム、硫酸ドデシルナフタレンナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル硫酸塩、スルホン酸塩などがあって、陽イオン性界面活性剤は塩化アルキルベンゼンジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルアンモニウムなどがあり、両性界面活性剤としては、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン系両性界面活性剤、レシチン、タウリン、ココアミドプロピルベタイン、ココアンホ二酢酸ナトリウムなどがある。前述した界面活性剤は、単独または2種以上が一定割合で混合されて使われうる。
【0047】
前記結着樹脂が酸基を持つ場合、酸基の中和に利用する塩基、すなわち、中和剤は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;アルカリ金属の酢酸塩;アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミンなどのアルカノールアミン類などでありうる。このうち、アルカリ金属の水酸化物が望ましい。
【0048】
前記中和剤は、酸基を持つ結着樹脂のうち、酸基の1g当量に対して0.1〜3.0g当量が使われ、0.5〜2.0g当量であることが望ましい。
【0049】
トナー複合体の凝集剤として使われうるものには、1価以上の無機金属塩がある。
【0050】
一般的に価数(ionic charge number)が高いほど凝集力が増大するため、分散液の凝集速度や製造方法の安定性を考慮して適宜な凝集剤を選択せねばならない。1価以上の無機金属塩には、具体的に塩化カリウム、酢酸カリウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、燐酸ナトリウム、燐酸2水素ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化コバルト、塩化ストロンチウム、塩化セシウム、塩化ニッケル、塩化ルビジウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、安息香酸ナトリウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛などがある。
【0051】
本具現例による製造方法により製造されたトナーは、電子写真方式の画像形成装置に使われうる。ここで、電子写真方式の画像形成装置とは、レーザープリンタ、コピー機、またはファクシミリなどを意味する。
【0052】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
製造例
(活性水素含有基を持つポリエステル樹脂の合成)
製造例1:ポリエステル樹脂1の合成
攪拌器、温度計、及びコンデンサーが設けられた体積3リットルの反応器を、熱伝逹媒体であるオイル槽内に設けた。このように設けられた反応器内に、いろいろな単量体、すなわち、ジメチルテレフタレート50g、ジメチルイソフタレート47g、1,2−プロピレングリコール80g、及びトリメリット酸3gを投入した。次いで、触媒として酸化ジブチルスズを0.09g(すなわち、単量体の全体重量に対して500ppmの比率)を投入した。次いで、150rpmの速度で反応器内の混合物を攪拌しつつ反応温度を150℃まで高めた。次いで、約6時間反応を進めた後、反応温度を再び220℃まで高めた。次いで、副反応物の除去のために反応器を0.1torrに減圧し、前記圧力で15時間維持させた後、反応を完了した。結果として、ポリエステル樹脂1を得た。
【0054】
反応完了後、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を利用してポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は62℃であった。また、流動試験器CFT−500(島津製作所製)を利用してポリエステル樹脂1の軟化温度(Ts)を測定した結果、前記温度は156℃であった。ポリスチレン基準試料を使用して、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によりポリエステル樹脂1の数平均分子量とPDI(多分散性指数)とを測定し、その結果、数平均分子量は4,000でああり、PDIは3.5であった。滴定により測定した結果、活性水素含有基の含有量は0.4mmol KOH/gであった。
【0055】
製造例2:ポリエステル樹脂2の合成
副生成物の除去工程を10時間行ったことを除いては、製造例1と同じ方法でポリエステル樹脂2を製造した。反応完了後、示差走査熱量計(DSC)を利用してポリエステル樹脂2のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、前記温度は58℃であった。また、流動試験器CFT−500を利用してポリエステル樹脂2の軟化温度(Ts)を測定した結果、前記温度は138℃であった。ポリスチレン基準試料を使用して、GPCによりポリエステル樹脂2の数平均分子量とPDIとを測定し、その結果、数平均分子量は2,100であり、PDIは3.4であった。滴定により測定した結果、活性水素含有基は0.2mmol
KOH/gであった。
【0056】
着色顔料マスターバッチの製造)
製造例3:ブラック顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂とカーボンブラック顔料(ドイツ・デグサ製、NIPEX 150)とを、重量基準で8:2の割合で混合した。次いで、前記ポリエステル樹脂100重量部に対してエチルアセテート50重量部を添加し、その混合物を約60℃に加熱した後、ニーダーで60分間混合した。次いで、前記混合物を真空装置が連結された二軸押出器を利用して50rpmの速度で混合しつつ、真空装置を利用して溶媒であるエチルアセテートを除去することによって、ブラック顔料マスターバッチを得た。
【0057】
(架橋樹脂の製造)
製造例4
コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器を装着した1L反応器に、蒸溜水400g、ポリビニルアルコール20g(P−24TM、DC Chemical Co.,韓国・ソウル所在)、中性界面活性剤14g(tween 20TM、Aldrich Chemical Company、米国・ウィスコンシン州のミルウォーキー所在)、及び陰イオン界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウム4g(Aldrich Chemical Company)を入れて、70℃の温度で500rpmの攪拌速度で加熱して固形分を十分に溶解させた。前記固形分が完全に溶解されたことを確認した後、メチルエチルケトン100g(Aldrich Chemical Company)を混合することによって、乳白色の液体組成物を得た。前記液体組成物に、前記製造例2で合成したポリエステル樹脂2 120g、イソシアネート架橋剤(トルエンジイソシアネート、Aldrich Chemical Company)6g(ポリエステル樹脂2に含まれた活性水素含有基1mol当り0.07molに該当)を添加した後、1000rpmで攪拌しつつ、還流状態で75℃温度で5時間混合して微細懸濁液を形成した。次いで、攪拌速度を300rpmに減速し、反応器の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶剤であるメチルエチルケトンを反応器から除去した後、コンデンサーを通じてこれを収集した。4時間経過後、収集されたメチルエチルケトンの量を確認して、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した。次いで、反応器内の温度を25℃に冷却して架橋樹脂の微粒懸濁液を得た。架橋樹脂微粒子の体積平均粒径は300nmであり、THFに対する不溶分は99重量%であった。
【0058】
ここで、THFに対する不溶分(wt%)とは、架橋樹脂試料の全体質量のうち、THFに溶解されない質量を重量%で表す数値であり、この試験は、ポリエステルの架橋密度の測定のためのものである。具体的には、架橋樹脂10gを0.001g単位まで計量して、THF 100mlに入れて2時間攪拌しつつ溶解させた後、22時間放置した。次いで、前記溶液をステンレススチール材質の200メッシュフィルターでフィルタリングして、残留樹脂の量を評価した。
【0059】
製造例5
前記製造例2で合成したポリエステル樹脂2 120gと、イソシアネート架橋剤(トルエンジイソシアネート、Aldrich Chemical Company製)0.25g(ポリエステル樹脂2に含まれた活性水素含有基1mol当り0.003molに該当)とを使用したことを除いては、製造例4と同じ方法で架橋樹脂の微粒懸濁液を得た。
【0060】
製造例6
前記製造例2で合成したポリエステル樹脂2 120gと、イソシアネート架橋剤(トルエンジイソシアネート;Aldrich Chemical Company製)30g(ポリエステル樹脂2に含まれた活性水素含有基1mol当り0.35molに該当)とを使用したことを除いては、製造例4と同じ方法で架橋樹脂の微粒懸濁液を得た。
【0061】
(トナー粒子の製造)
実施例1
コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器を装着した体積1リットルの反応器に、製造例1で合成したポリエステル樹脂1 60g、製造例3で合成したブラック顔料マスターバッチ40g、帯電制御剤1g(N−23、HB Dinglong社製)、パラフィンワックス4g、及び有機溶剤としてメチルエチルケトン150gを投入してトナー混合液を形成した。前記トナー混合液を600rpmの速度で攪拌しつつ、1N NaOH水溶液25mlを添加した後、還流状態で80℃の温度で5時間混合した。前記トナー混合液が十分な流動性を持つことを確認した後、500rpmの速度で2時間さらに攪拌した。
【0062】
次いで、コンデンサー、温度計及びインペラ型攪拌器が装着された体積3リットルのさらに他の反応器に、蒸溜水600g、中性界面活性剤5g(tween 20、Aldrich社製)、陰イオン界面活性剤である硫酸ドデシルナトリウム1g(Aldrich社製)を投入し、その混合物を85℃で600rpmの速度で1時間攪拌した。結果として、分散媒を得た。
【0063】
前記分散媒に前記のトナー混合液を投入し、同一温度、すなわち、85℃で1時間1000rpmの速度で攪拌することによって、トナー微細懸濁液を形成した。
【0064】
次いで、反応器内の温度を90℃に加熱しつつ、100mmHgの部分減圧状態で有機溶剤であるメチルエチルケトンを除去した。結果として、トナー組成物を得た。コールターマルチサイザー(Beckman Coulter社製)でメチルエチルケトンを除去されたトナー組成物のサイズを測定した結果、体積平均粒径が400nmであった。
【0065】
次いで、前記トナー組成物を含む前記反応器の反応物を、製造例4で製造された架橋樹脂の微粒懸濁液が入っている反応器に添加した。
【0066】
次いで、塩化マグネシウム10gを蒸溜水50gに溶かして、徐々に反応器内に投入した後、30分間80℃まで昇温させて、架橋樹脂微粒子とトナー組成物との混合物を凝集させた。結果として、トナー複合体を得た。5時間経過後、コールターマルチサイザー(Beckman Coulter社製)でトナー複合体のサイズを測定した結果、体積平均粒径が6.7μmであった。
【0067】
次いで、反応器に蒸溜水500gを投入して80℃で8時間融着を進めた後、前記反応器を冷却させた。
【0068】
次いで、通常のろ過装置を使用して、融着されたトナー複合体を分離し、1N塩酸水溶液で洗浄した後、蒸溜水で5回再洗浄して界面活性剤などをいずれも除去した。洗浄が完了したトナー複合体を、流動層乾燥器で40℃の温度で5時間乾燥することによってトナー粒子を得た。
【0069】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.8μmであり、80%スパン値は0.65であった。また、電子走査顕微鏡(SEM;JEOL社製)を使用して、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対してImage J softwareで分析した結果、形状係数の平均は0.91であった。
【0070】
実施例2
製造例5で製造した架橋樹脂を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0071】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は7.0μmであり、80%スパン値は0.64であった。また電子走査顕微鏡(SEM;JEOL社)を使用して、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対してImage J softwareで分析した結果、形状係数の平均は0.90であった。
【0072】
実施例3
製造例6で製造した架橋樹脂を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0073】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.8μmであり、80%スパン値は0.64であった。また電子走査顕微鏡(SEM;JEOL社)を使用して、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対してImage J softwareで分析した結果、形状係数の平均は0.90であった。
【0074】
比較例1
得られたトナー組成物を製造例4で製造した架橋樹脂の微粒懸濁液に混合する過程を省略したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。すなわち、比較例1では架橋樹脂の微粒懸濁液を使用していない。
【0075】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.5μmであり、80%スパン値は0.65であった。また電子走査顕微鏡(SEM;JEOL社)を使用して、ランダムなトナー粒子サンプル100個に対してImage J softwareで分析した結果、形状係数の平均は0.85であった。
【0076】
前記実施例及び比較例で、体積平均粒径はコールターマルチサイザー(Coulter Multisizer3)で測定した。前記コールターマルチサイザーにおいて、アパーチャ(開口)は100μmを利用し、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社製)50〜100mlに界面活性剤を適正量添加し、これに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で5分間分散処理することによってサンプルを製造した。
【0077】
また、80%スパン値は粒子のサイズ分布を規定する指数であって、体積を基準で10%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して小さな粒子から体積を累積する場合、総体積の10%に該当する粒径をd10、50%に該当する粒径をd50、90%に該当する粒径をd90と定義し、下記の数式1によりその値を求めた。
[数式1]
80%スパン値=(d90−d10)/d50
ここで、スパン値が小さいほど狭い粒子分布を表し、大きいほど広い粒子分布を表す。
【0078】
また形状係数は、ランダムなトナー粒子サンプル100個をSEMイメージ(×1,500)で測定した後、Image J softwareで分析して下記の数式2により求めた。
[数式2]
形状係数(shape factor)=4π(面積/(周囲長)
【0079】
前記式で面積(area)は、投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は、投影されたトナーの周囲の長さを意味する。この値は0〜1値を持つことができ、1に近いほど球形を意味する。
【0080】
一方、樹脂の評価方法は下記の通りである。
【0081】
ガラス転移温度(Tg、℃)は、示差走査熱量計(Netzsch社製)を使用して、試料を10℃/分の加熱速度で20℃から200℃まで昇温させた後、20℃/分の冷却速度で10℃まで急冷させた試料を10℃/分の加熱速度で昇温させて測定した。得られた吸熱曲線付近のベースラインとの各接線の中央値をTgとした。
【0082】
軟化温度(Ts、℃)は、流動試験器CFT−500(島津製作所製)を使用して測定し、荷重10Kgf及び加熱速度6℃/分の条件下で、直径1.0mm×長さ10mmのノズルを通じて、1.5g試料の半分が流れ出る温度を軟化温度(Ts)とした。
【0083】
活性水素含有基の含有量は、酸基含有量と水酸基含有量とを合せた値であって、次のように求める。
【0084】
まず、酸基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gをジクロロメタン100mlに溶解させた後で冷却させて、0.1N
KOHメチルアルコール溶液で電位差滴定装置(Metrohm 736 GP Titrino、Metrohm社製)を利用して滴定し、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S(ml)と、滴定に使用した樹脂の重さW(g)とを測定して下記の数式3により求める。
[数式3]
酸基含有量(mmol KOH/g)=S/(W×10)
【0085】
次いで、水酸基含有量(mmol KOH/g)は、樹脂0.5〜2gに無水酢酸1〜2g、ピリジン3〜4gを混合して90〜100℃で1時間加熱した後、冷却する。これに水1〜2mlを投入して、反応しない無水酢酸を分解させる。ここに、ジクロロメタン100mlを入れて溶解させた後、0.1N KOHメチルアルコール溶液で酸価測定と同じ方法で滴定し、滴定に使われた0.1N KOHメチルアルコール溶液の使用量S’(ml)と、滴定に使用した樹脂の重さW’(g)とを測定する。また、樹脂だけない状態でブランク(blank)実験を施して滴定に使われた0.1N KOH使用量B(ml)を測定し、下記の数式4により水酸基含有量を求める。
[数式4]
水酸基含有量(mmol KOH/g)=(B−S’)/(W’×10)+酸基含有量
【0086】
以下、前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子を下記の方法で評価した。
【0087】
(定着温度範囲:ホットオフセットに対する抵抗性)
トナー粒子100g、シリカ(TG 810G、キャボット社製)2g、及びシリカ(RX50、デグサ社製)0.5gを混合して製造したトナー組成物を使用して、三星CLP−510プリンタで30mmx40mmのソリッド(Solid)像の未定着画像を集めた。次いで、定着温度を任意に変更できるように改造された定着試験器で、定着ローラの温度を変化させつつ前記未定着画像の定着性を評価した。
【0088】
前記の評価結果を下記の表1に表した。
【表1】

【0089】
表1を参照すれば、定着温度範囲は、実施例1の場合には130〜210℃、比較例1の場合には140〜180℃であり、実施例1の場合に低温及び高温定着温度範囲がさらに広いことが分かる。しかし、架橋剤を活性水素含有基1mol当り0.004mol未満で使用した実施例2の場合には、比較例1の場合に比べて低温定着温度範囲が狭くなって高温定着温度範囲は広くなることが分かる。同様に、架橋剤を活性水素含有基1mol当り0.15molより多く使用した実施例3の場合にも、比較例1の場合に比べて低温定着温度範囲が狭くなって高温定着温度範囲は広くなるということが分かる。したがって、架橋剤を適正量使用する場合には、架橋剤を全く使用しない場合に比べて、高温定着温度範囲が広くなって耐ホットオフセット性が向上するだけではなく、低温定着温度範囲も広くなり、架橋剤の使用量が適正範囲を外れる場合には、架橋剤を全く使用しない場合に比べて低温定着性は悪くなるが、高温定着性は向上するようになる。
【0090】
以上で本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂(A)と、
THFに対する不溶分が99重量%ないし100重量%である架橋樹脂と、
着色剤と、
少なくとも一つの添加剤と、を含み、
前記架橋樹脂が複数の島状に配されたトナー。
【請求項2】
前記架橋樹脂は、活性水素含有基を持つ樹脂(B)と架橋剤との架橋反応により形成された請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記活性水素含有基を持つ樹脂(B)は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を持つポリエステル樹脂である請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記架橋剤は、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項2に記載のトナー。
【請求項5】
前記架橋剤の含有量は、前記活性水素含有基1molに対して0.004ないし0.15molである請求項2に記載のトナー。
【請求項6】
前記架橋樹脂の含有量は、前記結着樹脂(A)100重量部に対して10重量部ないし200重量部である請求項1に記載のトナー。
【請求項7】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチ形態である請求項1に記載のトナー。
【請求項8】
(a)結着樹脂(A)、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を有機溶剤に混合してトナー混合液を作製する工程と、
(b)前記トナー混合液を分散媒内に添加してトナー微細懸濁液を形成する工程と、
(c)前記トナー微細懸濁液から有機溶剤を除去してトナー組成物を形成する工程と、
(d)前記トナー組成物を架橋樹脂の微粒懸濁液と混合した後、これらを凝集及び融着させることによって、架橋樹脂が複数の島状に配されたトナー複合体を形成する工程と、を含むトナーの製造方法。
【請求項9】
前記架橋樹脂の微粒懸濁液は、活性水素含有基を持つ樹脂(B)、架橋剤、及び有機溶剤を分散媒内に混合して微細懸濁液を形成した後、加熱して有機溶剤を除去することによって形成された請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項10】
前記活性水素含有基を持つ樹脂(B)は、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、及び硫酸基からなる群から選択された少なくとも一つの基を含むポリエステル樹脂である請求項9に記載のトナーの製造方法。
【請求項11】
前記架橋剤は、イソシアネート化合物またはエポキシ化合物である請求項9に記載のトナーの製造方法。
【請求項12】
前記架橋剤の含有量は、前記活性水素含有基1molに対して、0.004ないし0.15molである請求項9または11に記載のトナーの製造方法。
【請求項13】
前記架橋樹脂の含有量は、前記結着樹脂(A)100重量部に対して、10重量部ないし200重量部である請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項14】
前記架橋樹脂は、THFに対する不溶分が99重量%ないし100重量%である請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項15】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチ形態で使われる請求項8に記載のトナーの製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし請求項7のうちいずれか1項に記載のトナーを使用した電子写真用画像形成装置。

【公表番号】特表2011−501231(P2011−501231A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530930(P2010−530930)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006252
【国際公開番号】WO2009/054676
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】