説明

活性炭に基づく高性能吸着剤

【課題】本願発明は、高いミクロ細孔性、特に合計細孔量に関する高いミクロ細孔画分及び高いミクロ細孔量を有すると同時に、良好な機械的安定性、特に消耗及び破裂に対する高い安定性を有する吸着剤を提供する。
【解決手段】本願発明の高性能吸着剤は、特に球状形状の活性炭の個々の粒状の形において、少なくとも0.7cm3/gのグルビッチ合計細孔量であって、この合計細孔量の少なくとも70%が、20オングストローム以下の孔径を有するミクロ細孔によって形成されるもの;30オングストローム以下の中心傾向細孔径の寸法;及び少なくとも1500m2/gのBET表面積のパラメータによって特徴づけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吸収技術に関する。特に、本願発明は、高ミクロ細孔の活性炭に基づく高性能吸着剤に関し、且つ、ガス、特に空気を純化又は浄化するために、特にガス又は空気流から有毒物、有害物及び臭気を吸着するための、又は、特に防護衣類の製造における吸収フィルタ材料における使用のための活性炭に基づく高性能吸着剤の使用、ガス、特に水素のための吸収蓄積媒体としての活性炭に基づく高性能吸着剤の使用、薬剤又は薬剤成分としての医学における応用、より正確には薬学領域における応用のための活性炭に基づく高性能吸着剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は、実際に特定されない吸収特性を有するので、最も広い範囲で使用される吸着剤である。環境に関する法律上の制限及び責任感の増加は、活性炭の要求の上昇を導く。
【0003】
一般的に、活性炭は、炭化(いぶすこと、熱分解、焼失等と同義語的に参照される)及びそれに続く炭化された化合物、好ましくは経済的に合理的な生産に導くような加工物の活性化によって得られるものである。
これは、炭化工程における揮発成分の分離及び活性化工程における焼失による重量損失が、認められる。さらなる詳細については、例えば非特許文献1に見られる活性炭の製造に関連する。
【0004】
製造される活性炭の構造(細かい又は粗い多孔性の、硬い又は脆い等)は、開始材料に依存する。通常の開始材料は、ココナッツ殻、木屑、ピート、瀝青炭、ピッチだけでなく、特に例えば織物活性炭織布の製造に使用されるような樹脂等である。
【0005】
活性炭は、例えば微粉末炭素、裂炭炭素、顆粒状炭素、成形炭素、1970年代後半からの球形状の活性炭(「球状炭素」)等のいろいろな形状で使用される。球形状の活性炭は、所定の応用に使用可能とし、また欠くことのできないものにする微粉末炭素、裂炭炭素、顆粒状炭素等の他の形状の活性炭よりも多くの利点を有している。それは、自由に浮遊し、摩耗抵抗があり、より正確に埃の立たないものであり、且つ硬いものである。球状炭素は、その球状形状によるだけでなく、その高い摩耗抵抗により、特別な応用に大きな需要がある。
【0006】
球状炭素は、今日複数の段階によって、大変コストの高い不便な加工方法によって製造されている。最も知られている加工方法は、瀝青炭タールピッチから小球を製造し、且つ石油化学工業の適当な球状残留物を製造し、それらを溶解不能とするために酸化し、且つそれから燻し且つ活性化することからなる。例えば、球状炭素は、瀝青から加工される複数段階の加工方法において製造される。これらの複数段階の加工方法は、大変コストのかかるものであり、この球状炭素の高いコストは、その特性の美点によって、球状炭素が好まれるべきである幾多の応用を阻害する。
【0007】
特許文献1は、ジイソシアナート製品蒸留残留物、炭化加工補助及び必要に応じた1つ以上の添加剤からなる混合物が、自由浮遊小球に加工され、それに続くこの方法において得られる小球が炭化され、活性化される活性炭の製造方法を開示する。
【0008】
新しい又は使用済みのスルホン酸基からなるイオン交換体の燻し及びそれに続く活性化によって、又はスルホン酸が存在するイオン交換体前駆体を燻し、そして活性化することによって球状炭素を製造し、スルホン酸基及びスルホン酸が架橋機能を有することはさらなる従来技術である。そのような加工方法は、特許文献2〜5に記載されている。
【0009】
しかしながら、いくつかの特別な応用があり、そこには、それが、活性炭の幾何学構造又はより精密であるべき決定的に重要である活性炭の外部形状であるだけでなく、一方でその多孔性、特の合計細孔量及び吸着能力、及び、他方でいわゆる合計細孔量に関するミクロ、メゾ−及びマクロ細孔の画分である細孔の分散でもある。
【0010】
ガス又はより正確には空気流から、例えば有毒物、有害物及び臭気の吸収のための、特に空気のようなガスを純化又は浄化するための、又は医学、より正確には薬学における応用のための、ガス、特に水素の吸収蓄積において、(例えばNBC防護衣料のための)吸収フィルタ材料等の製造において、活性炭の特に高いミクロ細孔、例えば最初に上述した応用に関して高い合計細孔量と結合した特に高いミクロ細孔を要求する幾多の応用が存在する。
【0011】
事実、従来技術からこの目的のために知られる活性炭は、所定のミクロ細孔を有するが、ミクロ細孔のレベルは、常に十分ではない。
【0012】
さらに、細孔を上昇させることは、機構的安定性、より正確には摩耗抵抗における歓迎されない場合によって受容できない減少を伴うことが観察されている。そしてまた、絶対ミクロ細孔量によって説明される合計細孔量の画分は、ミクロ細孔及び全ての応用に関して最適な能力を確保するために十分ではない。
【特許文献1】WO 98/07655 A1
【特許文献2】DE 43 28 219 A1
【特許文献3】DE 43 04 026 A1
【特許文献4】DE 196 00 237 A1
【特許文献5】DE 196 25 069 A1
【非特許文献1】H.v.キーンル及びE.ベーデル、「活性炭及びその製造への応用」エンケ出版社、シュタットガルト、1980年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本願発明の目的は、活性炭に基づいて、特に上述した応用分野において適切であり、上述した従来技術の不利益点を少なくとも実質的に避け、又は少なくとも抑制する高性能の吸着剤を提供することにある。さらに、本願発明によって提供される吸着剤は、高いミクロ細孔性、特に合計細孔量に関する高いミクロ細孔画分及び高いミクロ細孔量を有すると同時に、良好な機械的安定性、特に消耗及び破裂に対する高い安定性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した問題点を解決するための方法によって、本願発明の第1の態様によって、本願発明は、請求項1による特に球状形状の活性炭の個々の粒状物の形における活性炭に基づく高性能吸着剤を目的とする。さらに、本願発明の高性能吸着剤の特に利益的な具体例は、対応する従属請求項の主題を形成する。
【0015】
本願発明の第2の態様によれば、本願発明はさらに、本願発明に係る高性能吸着剤の使用を提供すると同時に、それはさらに対応する使用請求項において定義される。
【0016】
したがって、本願発明は、本願発明の第1の態様にしたがって、特に球状形状の活性炭の個々の粒状の形において、下記するパラメータによって特徴づけられる活性炭に基づく高性能吸着剤を提供する:
少なくとも0.7cm3/gのグルビッチ合計細孔量であって、この合計細孔量の少なくとも70%が、20オングストローム以下の孔径を有するミクロ細孔によって形成されるもの;
30オングストローム以下の中心傾向細孔径の寸法;及び
少なくとも1500m2/gのBET表面積。
【0017】
本願発明の高性能吸着剤又はより正確には活性炭は、大きな多孔性及び同時にいい気なBET表面積に関して顕著である。下記に示されるように、本願発明の高性能吸着剤の機械的強度、特に摩耗抵抗及び破裂又はより正確には圧縮強さは、−従来技術の比較的高い細孔性活性炭と比べて−極端に高い細孔性を有しているので、本願発明の高性能吸着剤又はより正確には活性炭は、大きな機械的負荷に晒される応用に関して適している。
【0018】
上記又は下記に示される全てのパラメータに関して、示された制限、特に上限及び下限が含まれることが示されている。言い換えると述べられた全ての値は、それぞれの制限を含むものとして理解されるべきである。さらに、それぞれの場合において又は応用に関連して、それは、場合によっては、本願発明の範囲を離れることなしに、述べられた制限から少し離れることも必要である。
【0019】
上記又は下記に示されるパラメータデータは、当業者においてなじみのある標準化され又は明確に指摘された測定方法を使用することによって決定される。多孔性の特徴づけに関するパラメータデータは、それぞれ測定される活性炭の窒素等温線から導かれる。
【0020】
合計細孔量のグルビッチ測定は、この分野における当業者には公知の測定/決定法である。合計細孔量のグルビッチ測定に関するさらなる詳細については、例えば、L.グルビッチ(1915)、J.物理化学協会、ロシア、47、805及びS.ローウェル他「多孔性固体及び粉末の特徴づけ:表面積細孔サイズ及び密度」、クルワーアカデミック出版社、工業技術記事シリーズ、111頁等参照。
【0021】
特定の表面積を決定するBET法は、原則として当業者には知られているので、これについてのさらなる詳細は必要ないと思われる。全てのBET表面積データは、測定のASTMD6556−04法に基づく。本願発明は、0.05〜0.1の部分圧範囲p/p0において測定される複数点BET(MP−BET)法を使用する。
【0022】
BET表面積の測定に関する又はより正確にはBET法に関するさらなる詳細に関しては、上述したASTM6556−04基準及びロンプケミエレクシコン、第10版、ゲオルグ論文出版、シュタットガルト/ニューヨーク、表題「BET法」及びそれに含まれる引例、及びヴィンナッカー−クヒラー(第3版)、第7巻、第93頁以下の頁、及びZ.アナル、化学238、第187頁〜第193頁(1968)を参照のこと。
【0023】
中心傾向細孔径の測定の決定は、それぞれ窒素等温線に基づいて行われる。
【0024】
本願発明の高性能吸着剤のグルビッチ合計細孔量は、少なくとも0.7cm3/g、特には少なくとも0.8cm3/g、好ましくは少なくとも0.9cm3/g、より好ましくは少なくとも1.0cm3/gであり、且つ最大1.5cm3/gまで、特には1.6cm3/gまで、好ましくは1.8cm3/gまでであることが好ましい。
【0025】
本願発明の一般的な例において、高性能吸着剤のグルビッチ合計細孔量は、0.7〜1.8cm3/gの範囲内、特には0.8〜1.6cm3/gの範囲内、好ましくは0.9〜1.5cm3/gの範囲内であることが望ましい。
【0026】
大変大きなグルビッチ合計細孔量を有することが、本願発明の高性能吸着剤の特別な特徴の1つであるので、ミクロ細孔によって導かれる高い比率を有する大きな吸着容量が提供される。
【0027】
本願発明の一般的な例において、高性能吸着剤のグルビッチ合計細孔量の少なくとも70%、特には少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、最も好ましくは少なくとも90%が、20オングストローム以下の細孔径を有するミクロ細孔によって形成されていることが望ましい。
【0028】
本願発明の一般的な例において、高性能吸着剤のグルビッチ合計細孔量の70%〜95%、特には75%〜90%、より好ましくは75%〜85%が、20オングストローム以下の細孔径を有するミクロ細孔によって形成されていることが望ましい。
【0029】
本願発明の目的のために、ミクロ細孔は、20オングストロームまでを含めた細孔径を有する細孔であり、メゾ細孔は、20オングストローム〜50オングストロームまでの細孔径を有する細孔であり、マクロ細孔は、50オングストロームより大きい細孔径を有する細孔である。
【0030】
それらの高い多孔性により、本願発明の高性能吸着剤のマクロ細孔量は、20オングストローム以下の細孔径を有するミクロ細孔によって形成され、且つ0.5〜1.4cm3/gの範囲内、特に0.6〜1.2cm3/gの範囲内、好ましくは0.7〜1.1cm3/gの範囲内である本願発明の高性能吸着剤の炭素ブラック法細孔量において相対的に高い。
【0031】
炭素ブラック法による測定は、当業者にはよく知られているので、これに関してさらなる詳細は必要ないと思われる。さらに、細孔表面積及び細孔量を測定する炭素ブラック法のさらなる詳細においては、例えば、R.W.マギー「窒素吸着による炭素ブラックの外部表面積の評価」、1994年10月アメリカ化学協会のゴム部の会合で発表された:「量子クロム機器、AUTOSORB-1、AS1 WinVersion 1.50、操作マニュアル、OM,05061、量子クロム機器2004年、フロリダ、アメリカ合衆国、第71頁以降。
【0032】
本願発明の高性能吸着剤の高いミクロ多孔性によれば、中心傾向細孔径の測定は、30オングストローム以下、特には26オングストローム以下、好ましくは25オングストローム以下、より好ましくは24オングストローム以下であり、相対的に低いものである。一般的に、本願発明の高性能吸着剤の中央傾向細孔径の寸法は、15〜30オングストロームの範囲内、特には16〜26オングストロームの範囲内、好ましくは17〜25オングストロームの範囲内、より好ましくは18〜24オングストロームの範囲内であることが望ましい。
【0033】
上述したように、本願発明の高性能吸着剤の1つの特別な特徴は、少なくとも1500m2/g、特には1525m2/g、好ましくは1550m2/g、より好ましくは1575m2/gの相対的に大きなBET表面積である。
【0034】
本願発明の高性能吸着剤のBET表面積は、1500〜2750m2/gの範囲内、特には1525〜2500m2/gの範囲内、好ましくは1550〜2400m2/gの範囲内、より好ましくは1575〜2350m2/gの範囲内であることが望ましい。
【0035】
同様に、異なる部分の圧力p/p0での本願発明の高性能吸着剤の重量及び容積に基づく量Vads(N2)は大変大きい。
【0036】
0.25の部分圧p/p0で測定された本願発明の高性能吸着剤の重量に基づく吸着N2量Vads(wt)は、少なくとも400cm3/g、特に少なくとも420cm3/gであり、特に400〜800cm3/gの範囲内、好ましくは410〜750cm3/gの範囲内、より好ましくは420〜700cm3/gの範囲内である。
【0037】
0.25の部分圧p/p0で測定された本願発明の高性能吸着剤の容積に基づく吸着N2量Vads(vol)は、少なくとも200cm3/cm3、特に少なくとも220cm3/cm3、特には200〜300cm3/cm3の範囲内、好ましくは210〜275cm3/cm3の範囲内、より好ましくは225〜260cm3/cm3の範囲内である。
【0038】
0.998の部分圧p/p0で測定された本願発明の高性能吸着剤の重量に基づく吸着N2量Vads(wt)は、少なくとも450cm3/g、特には460cm3/g、特に450〜900cm3/gの範囲内、好ましくは460〜875cm3/gの範囲内、より好ましくは470〜850cm3/gの範囲内である。
【0039】
0.998の部分圧p/p0で測定された本願発明の高性能吸着剤の容積に基づく吸着N2量Vads(vol)は、少なくとも250cm3/cm3、特に少なくとも260cm3/cm3、特には250〜400cm3/cm3の範囲内、好ましくは260〜350cm3/cm3の範囲内、より好ましくは265〜320cm3/cm3の範囲内である。
【0040】
本願発明の高性能吸着剤のさらに特別な特徴は、大きなミクロ細孔表面積であり、言い換えれば20オングストローム以下の細孔径を有する細孔によって形成される大きな表面積である。20オングストローム以下の細孔径を有する細孔から形成される本願発明の高性能吸着剤の炭素ブラック法ミクロ細孔表面積は、少なくとも1400m2/g、特には1450m2/g、好ましくは1500m2/gであり、1400〜2500m2/gの範囲内、特に1450〜2400m2/gの範囲内、好ましくは1500〜2300m2/gの範囲内である。
【0041】
さらに、本願発明の高性能吸着剤は、極端に高いブタン吸着性を有すると同時に、吸着されるべき広い種類の材料に関してすばらしい吸着特性を有するそれらの特色を特徴づける極端に高いヨウ素価を有する。
【0042】
本願発明の高性能吸着剤のASTM D5742-95-00ブタン吸着性は、少なくとも25%、特に少なくとも30%及び好ましくは40%である。本願発明の高性能吸着剤は、25%〜80%の範囲内、特に30%〜70%の範囲内、好ましくは35%〜65%の範囲内のASTM D5742-95-00ブタン吸着性を有する。
【0043】
本願発明の高性能吸着剤のASTM D4607-94/99のヨウ素価は、少なくとも1350mg/g、特に少なくとも1450mg/g、より好ましくは1500mg/gである。本願発明の高性能吸着剤は、1350〜2100mg/gの範囲内、特には1450〜2050mg/gの範囲内、好ましくは1500〜2000mg/gの範囲内のASTM D4607-94/99のヨウ素価を有することが望ましい。
【0044】
特別なミクロ多孔性におけるそれらの高い多孔性に代えて、本願発明の高性能吸着剤は、高い圧縮又は破裂強度(重量負荷に対する抵抗)及び極端に高い摩耗抵抗を有する。
【0045】
活性炭粒当たり、特に活性炭小球当たりの圧縮又は破裂強度(重量負荷に対する抵抗)は、少なくとも10ニュートン、特には少なくとも15ニュートン、好ましくは少なくとも20ニュートンである。さらに、活性炭粒当たり、特に活性炭小球当たりの圧縮又は破裂強度(重量負荷に対する抵抗)は、10〜50ニュートンの範囲内、特には12〜45ニュートンの範囲内、好ましくは15〜40ニュートンの範囲内である。
【0046】
上述したように、本願発明の高性能吸着剤の摩耗硬度は、CEFIC(化学工業連合ヨーロッパ評議会、1986年11月、ブリュッセル、B−1050,Bte 71,ルイーズ通り250、活性炭のテスト法、1.6項、「機械的硬度」、第18/19頁)の方法によって測定されるときに、摩耗抵抗が常に100%であるように、極端に高いものである。同様に、ASTM D3802によって測定する場合、本願発明の高性能吸着剤の摩耗抵抗は、常に100%を記録する。
【0047】
それ故に、譲受会社は、より意味のある値を得るために、CEFIC法のような改良されたテスト法を発展させた。測定の改良された方法は、試料又はより正確にはほぼ実際のサービス状態下において摩耗又は消耗に対する高性能吸着剤の抵抗のより良い模擬試験を提供する。この目的のために、試料は、タングステンカーバイド球と共に装填された水平方向に揺れてすりつぶすカップにおいて所定の時間の間、標準化された条件に晒される。この目的のために採用された手順は下記するものである。200gの試料を、循環空気乾燥室(型:Hanau, Kendro GmbH製造のHeraeus UT 6060)において、120±2℃の温度で、1時間乾燥し、そして、室温まで被乾燥物をデジケータにおいて冷却する。50gの乾燥された試料は、分析用ふるい(メッシュサイズ:0.315mm、径:200mm、高さ15mmの分析用ふるい)を介して10分間1.2mmの揺れ幅で、分析用ふるい(型:Retsch GmbH, Hanau 製のAS 200コントロール)に備えられたふるい器によって排除され且つふるい落とされ、その標準よりも小さい粒は、放棄される。5ミリリットルの標準粒が、DIN ISO 384(容量:10ミリリットル、高さ90mm)に対する10ミリリットルのメスシリンダに充填され、その重量が分析用天秤(型:Sartorius AG製、ギョティンゲン、計測範囲120g、精度レベル:E2,読出可能:0.1mgのBP121S)を使用して、(容量15ミリリットル、径35mm、高さ30mm)の磨りガラス蓋を有する重量計測ガラスによって、0.1mgまで正確に測定される。重量測定された試料は、20mmの径のタングステンカーバイド磨りつぶし球と共に、スクリュー動作囲設(容量:25ミリリットル、径30mm、長さ65mmのステンレス鋼の構造器具)を有する25ml磨りつぶしカップ内に配置され、揺動ミル(型:Haan, Retsch GmbH製MM301で、磨りつぶしカップを有する揺動ミル)によって摩耗テストが実行される:前記磨りつぶしカップは、揺動ミルにおいて10Hzの周波数で1分間水平方向に揺動され、その結果前記磨りつぶし球が試料に衝突し、摩耗が生じるものである。それに続いて、前記試料は、上述した分析用ふるいを介して5分間1.2mmの揺動幅でふるい装置によってふるい落とされ、標準よりも小さい粒は、再び排気され、0.315mmよりも大きい基準粒は、蓋付きの計量グラスにおいて0.1mgまで正確に再計量される。摩耗硬度は、下記する数式によって%で質量画分として計算される。摩耗硬度[%]=(100×再計量重量[g]/原重量[g]。
【0048】
上述したCEFIC標準を改良することにより譲受会社によって改良されたこの測定方法によれば、本願発明の高性能吸着剤の摩耗抵抗は、少なくとも95%、特に少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%である。
【0049】
本願発明の高性能吸着剤は、ASTM D2862-97/04で決定された中心傾向粒子径の寸法が、0.01〜1.0mmの範囲、特に0.1〜0.8mmの範囲、好ましくは0.2〜0.7mmの範囲、より好ましくは0.4〜0.55mmの範囲である粒状、特に球状の活性炭に基づくことが望ましい。
【0050】
ASTM D2866-94/04で決定された本願発明の高性能吸着剤の灰含有量は、1%以下、特には0.8%以下、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.5%以下であることが望ましい。
【0051】
本願発明の高性能吸着剤のASTM D2867-04/04の水分含有量は、1%以下、特には0.5%以下、好ましくは0.2%以下であることが望ましい。
【0052】
本願発明の高性能吸着剤は、ASTM B527-93/00で決定された250〜750g/リットルの範囲内、特には300〜700g/リットルの範囲内、好ましくは300〜650g/リットルの範囲内、より好ましくは350〜600g/リットルの範囲内の嵩密度を有することが望ましい。
【0053】
本願発明の高性能吸着剤の炭素ブラック法外部細孔量は、0.05〜0.5cm3/gの範囲内、特に0.1〜0.45cm3/gの範囲内であることが望ましい。さらに、前記炭素ブラック法外部細孔量は、合計細孔量の35%以下、好ましくは30%以下であり、特に合計細孔量の10%〜35%の範囲内、好ましくは14%〜30%の範囲内であることが望ましい。
【0054】
本願発明の高性能吸着剤の炭素ブラック法外部細孔表面積は、50〜300m2/g、特に60〜250m2/gの範囲内、好ましくは70〜200m2/gの範囲内であることが望ましい。さらに、本願発明の高性能吸着剤の炭素ブラック法外部細孔表面積は、合計細孔表面積の15%以下、好ましくは10%以下であり、特には合計細孔表面積の4〜15%、好ましくは4〜12%の範囲内であることが望ましい。
【0055】
本願発明の高性能吸着剤は、粒状形状、好ましくは球状形状のゲル状スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、特にスルホン化ジビニルベンゼン架橋ポリスチレンの炭化及び活性化によって得ることができる。本願発明の高性能吸着剤を製造するための開始材料として使用されるスルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのジビニルベンゼン含有量は、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに基づいて、1重量%〜15重量%の範囲内、好ましくは2重量%〜10重量%の範囲内であることが望ましい。開始コポリマーは、ミクロ細孔構造を形成するために、ゲル型から選択される必要がある。
【0056】
非スルホン化開始材料が使用される場合、スルホン化は、スルホン酸及び/若しくは発煙硫酸によって、当業者に公知である方法を使用して、そのままで実行される。これは、当業者に対して本質的に類似する。
【0057】
特に利益的であることがわかる開始材料は、ゲル状の対応するイオン交換樹脂又はスルホン化される対応するイオン交換樹脂の前駆体である。
【0058】
炭化(同義語的に、焼失又はいぶしとして知られる)は、炭素質開始ポリマーを炭素に変換する。言い換えると、炭素質開始材料は、炭素化又は炭化される。上述したスルホン酸基を具備するスチレン及びジビニルベンゼンに基づくゲル状有機ポリマー粒、特にポリマー小球の炭化は、炭化の間、スルホン酸基の分離を生じ、これによって遊離基を生じ、熱分解残存物(=炭素)が存在しない架橋を生じる。前記炭化は、不活性環境下(例えば、窒素)において、又は少量の酸素を含む環境で、実行される。それは、同様に、もしそれが、比較的高い温度(例えば500℃〜650℃の範囲内)で実行され、少量の酸素と結合され、炭化されたポリマー骨格構造の酸化が達成され、それに続く活性化がそれによって容易になるならば、炭化の不活性環境に関して利点がある。また、前記炭化は、100℃〜950℃、特には150℃〜900℃、好ましくは300℃〜850℃で実行される。炭化の合計時間は、約30分〜6時間の範囲内である。
【0059】
炭化に続いて、炭化された中間製品は、最終的に粒形状、特に球形状の活性炭に基づく本願発明の高性能吸着剤を生じる活性化が施される。活性化の基本原理は、適当な条件下において選択的に且つ特別に、炭化の間に生じた炭素の一部を解体することである。これは、多数の細孔、亀裂及ひびを生じさせ、単位質量当たりの表面積は、かなり上昇する。このように、活性化は、炭素の特別な焼失を含んでいる。炭素は、活性化の過程で解体されるので、この操作は、最適な条件下において、
多孔性における、内部表面積における且つ細孔量における増加と均等である物質の損失と関連して起こる。それゆえに、活性化は、選択的な又はより正確には管理された酸化状態において実行される。活性化は、700℃〜1300℃の温度、特に800℃〜1200℃の温度、好ましくは900℃〜1100℃の温度で実行される。
【0060】
本願発明の高性能吸着剤を以下に製造するかという特別な特色と同様に上述した開始材料の選択は、活性化工程の特別な管理に、特に選択された活性化環境と結合される活性化工程の長さに基因する。本発明者は、極端に長い時間、特に12時間〜30時間、好ましくは19時間〜23時間、窒素含有環境における少量の水蒸気、特に約0.1容量%〜5容量%、特に0.5容量%〜4容量%の水蒸気を具備するより弱い酸化環境下において活性化工程を制御すること、さらに選択された開始材料から始めることが、結果として上述した他の特性を有する高い多孔性及び高い安定性の本願発明の高性能吸着剤を生じることを見出した。
【0061】
それは、第1に、極端に長い活性化時間が、物質の顕著な損失下において、有害な、過度の焼失を生じないこと、第2に、極端に高い摩耗抵抗及び機械的圧縮強度が、高いミクロ多孔性と結合する高い多孔性を生じさせることである。上述したようなゲル状開始材料から加工工程が始まる場合、そのように長い活性化時間が、不利益な結果を生じないこと、そのような長い活性化時間が、優れたミクロ多孔性又は選択的に発生するミクロ細孔量を生じることは予見できないことである。
【0062】
前記ミクロ多孔性は、活性化時間、特に12時間〜30時間の範囲で、好ましくは19時間〜23時間の範囲内で変化させることによって特定の値に調整することが可能である。このように、本願発明の高性能吸着剤は、要求に応じて自由に調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
図1及び図2に示されるグラフは、異なる長さの活性化時間を使用して製造される本願発明の2つの異なる高性能吸着剤のN吸着等温線を示す。本願発明の2つの高性能吸着剤の物理的−化学的特性は、下記する表1に要約される。比較として、クレハから市販されている適当なミクロ多孔性活性炭が、それに関する物理的-化学的特性についてそこに挙げられている。
【0064】
表1で報告されるデータは、高いBET表面積及び高い機械的耐久性(圧縮又は破裂強度及び摩耗抵抗)での高いミクロ細孔量画分を有する高い合計細孔と卓越した吸着性能との結合が、この結合において本願発明の高性能吸着剤においてのみ見出されることにおいて、従来技術のミクロ多孔性活性炭を超える本願発明の高性能吸着剤の卓越を示している。このように、本願発明は、市販されている適当な製品を超える粒状、特に球状の活性炭に基づく高いミクロ多孔性の高性能吸着剤を製造することができるものである。
【0065】
表1に引用された本願発明の高性能吸着材の「活性炭I」及び「活性炭II」は、それぞれ下記のように製造される。約4%のジビニルベンゼン含有物を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づくゲル状の市販された適当なイオン交換体前駆体が、スルホン酸/発煙硫酸混合物を使用して、100℃〜150℃の温度で、通常の方法において約50%の水画分が排除され、スルホン化されるように、最初に予備乾燥される。これは、窒素下において4時間950℃までの温度での炭化工程に進み、その後窒素環境に少量の水蒸気(約1容量%〜3容量%)を付加することによって活性化の初期工程に進む。水蒸気の付加は、この方法において水蒸気画分を調整するために維持される。活性化工程は、19時間(活性炭I)及び32時間(活性炭II)行われる。常温まで冷却された後、表1に示される製品が得られる。
【0066】
さらに、本願発明は、さらに−本願発明の第2の態様によれば−本願発明による高性能吸着剤の本願発明の使用を提供する。
【0067】
本願発明の高性能吸着剤は、例えばガス、より正確には空気流から、有害物、有毒物及び臭気物を吸着するために特に利用可能である。さらに、本願発明の高性能吸着剤は、ガスの浄化及び純化、特の空気の浄化に利用可能である。
【0068】
さらにまた、本願発明の高性能吸着剤は、吸着フィルタ材料において、吸着フィルタ材料の製造において使用される。そのような吸着フィルタ材料は、特に軍事用、民間用(例えば、NBC防護)に関して、例えば、防護服、防護手袋、防護下着、防護靴下等の防護衣服の製造において、利用可能である。
【0069】
さらに、本願発明の高性能吸着剤は、医学又は薬学の領域において、特に薬剤又は薬剤成分として使用可能である。
【0070】
本願発明の高性能吸着剤は、ガス、特に水素のための吸着蓄積媒体として使用することもできる。
【0071】
卓越した吸着特性を有し、高いミクロ多孔性と卓越した機械的安定性が結合した高い多孔性により、本願発明の高性能吸着剤は、すばらしいミクロ多孔性を有する従来技術の吸着剤よりも明らかに優れている。
【0072】
本願発明のさらなる具体例、改良品及び変更品は、本願発明の範囲を離れることなく明細書を読み込むことにおいて、当業者には容易に認識可能であり、実現可能である。
【0073】
表1:小球状活性炭に基づく2つの本願発明による高性能吸着剤と、クレハから市販されている小球状の適当なミクロ細孔活性炭との物理的−化学的比較
【0074】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本願発明の実施例に係る活性炭Iの窒素吸着等温線を示した特性線図である。
【図2】本願発明の実施例に係る活性炭IIの窒素吸着等温線を示した特性線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に球形状の活性炭の個々の粒状物の形の活性炭に基づく高性能吸着剤において、該高性能吸着剤が:
少なくとも0.7cm3/gのグルビッチ合計細孔量であって、この合計細孔量の少なくとも70%が、20オングストローム以下の孔径を有するミクロ細孔によって形成されるもの;
30オングストローム以下の中心傾向細孔径の寸法;及び
少なくとも1500m2/gのBET表面積;
というパラメータを具備することを特徴とする高性能吸着剤。
【請求項2】
前記グルビッチ合計細孔量が、0.7〜1.8cm3/gの範囲内、特に0.8〜1.6cm3/gの範囲内、好ましくは0.9〜1.5cm3/gの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項3】
前記グルビッチ合計細孔量の少なくとも75%、特には少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%が、20オングストローム以下の孔径を有するミクロ細孔によって形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項4】
前記グルビッチ合計細孔量の70%〜95%、特に75%〜90%、好ましくは75%〜85%が、20オングストローム以下の細孔径を有するミクロ細孔によって形成されることを特徴とする活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項5】
20オングストローム以下の孔径を有するミクロ細孔によって形成される高性能吸着剤の炭素ブラック法ミクロ細孔量は、0.5〜1.4cm3/gの範囲内、特には0.6〜1.2cm3/gの範囲内、好ましくは0.7〜1.1cm3/gの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項6】
中心傾向細孔径は、26オングストローム以下であり、特には、25オングストローム以下であり、好ましくは24オングストローム以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項7】
少なくとも0.7cm3/gのグルビッチ合計細孔量であって、その合計細孔量の少なくとも70%が、20オングストローム以下の細孔径を有するミクロ細孔によって形成されているもの;
30オングストローム以下の中心傾向細孔径の寸法;
少なくとも1500m2/gのBET表面積;
少なくとも25%のブタン吸着量;
少なくとも1350mg/gのヨウ素価;
少なくとも10ニートンの活性炭粒子当たりの圧縮強さ又は破裂強さ及び/若しくは少なくとも95%の耐摩耗性;
というパラメータを具備することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤。
【請求項8】
ガス、特に空気を純化又は浄化するために、特にガス又は空気流から有毒物、有害物及び臭気を吸着するための、又は、特に防護衣類の製造における吸収フィルタ材料における使用のための請求項1〜7のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤の使用。
【請求項9】
ガス、特に水素のための吸収蓄積媒体としての請求項1〜8のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤の使用。
【請求項10】
特に薬剤又は薬剤成分としての医学又は薬学領域における請求項1〜9のいずれか1つに記載の活性炭に基づく高性能吸着剤の使用。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−93661(P2008−93661A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263617(P2007−263617)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(505065467)ブリュッヒャー ゲーエムベーハー (27)
【Fターム(参考)】