説明

活性炭吸着塔の運転管理方法および活性炭吸着塔管理システム

【課題】 有機塩素化合物濃度に基づいて、より適切な活性炭吸着塔の運転管理を行うことが可能な活性炭吸着塔の運転管理方法および活性炭吸着塔管理システムを提供する。
【解決手段】 運転管理装置4は、有機塩素化合物測定装置3から有機塩素化合物濃度が入力されると、入力された有機塩素化合物濃度からダイオキシン類濃度を推定する。推定したダイオキシン類濃度と、予め定めるしきい値とを比較し、ダイオキシン類濃度がしきい値以上かどうかを判断する。ダイオキシン類濃度がしきい値以上であれば、排ガス中に吸着除去すべき濃度のダイオキシン類が含有されているので、流路切替装置5に対して主ライン6に切り替えるように制御信号を出力する。ダイオキシン類濃度がしきい値未満であれば、排ガスからダイオキシン類を除去する必要がないので、流路切替装置5に対してバイパスライン7に切り替えるように制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ごみ焼却炉から排出される排ガス中の有害物質を除去するための活性炭吸着塔の運転管理方法および活性炭吸着塔管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のごみ焼却設備においては、ごみ焼却炉から排出される排ガス中の有害物質、特にダイオキシン類を出口付近で最終的に除去するために活性炭吸着塔(以下ではACRと略称する。)が設置される。ACRは、ダイオキシン類など有害有機化合物の除去においては、優れた吸着特性を示すが、吸着特性を維持するために活性炭の交換作業を行う必要があり、また、充填する活性炭が高価であるため、ACRの設置はごみ焼却設備のランニングコストを高めている。活性炭の交換時期を適切に把握するためには、吸着塔出口排ガス中のダイオキシン類濃度の連続的監視が必要であるが、排ガス中のダイオキシン類濃度が非常に低濃度であるため、有効な監視を行うことが困難である。
【0003】
手分析による排ガス中のダイオキシン類の分析は、ガス採取から、抽出、ろ過、濃縮などの前処理を経てガスクロマトグラフィー質量分析により分析を行う。この手法では、分析結果が得られるまでに2週間以上かかるため監視に適応させることは難しい。
【0004】
手分析のようにダイオキシン類を直接分析するのではなく、代替指標を分析する手法も考案されている。
【0005】
ごみ焼却設備の燃焼性の指標として一酸化炭素(CO)を用いる場合が多いが、ダイオキシン類が低濃度の領域ではCOとの相関性は認められない。
【0006】
特許文献1には、代替指標として全有機塩素化合物を用いる測定方法が開示されている。
【0007】
ACRの運転管理方法としては、特許文献2に開示されており、代替指標としてポリクロロベンゼン、ポリクロロフェノールを用いている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−9895号公報
【特許文献2】特開2001−96136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来では、代替指標としてポリクロロベンゼン、ポリクロロフェノールを用いているが、分析工程が複雑であり、実施には困難を伴う。代替指標として有機塩素化合物を用いることが考えられるが、ACRの運転管理方法は、確立されていない。
【0010】
ACRの運転管理方法自体も検討が不十分であり、より適切な管理方法が求められている。
【0011】
本発明の目的は、有機塩素化合物濃度に基づいて、より適切な活性炭吸着塔の運転管理を行うことが可能な活性炭吸着塔の運転管理方法および活性炭吸着塔管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定するステップと、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、一方、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替えるステップとを含むことを特徴とする活性炭吸着塔の運転管理方法である。
【0013】
また本発明は、前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、活性炭吸着塔導入後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持するステップとを含むことを特徴とする活性炭吸着塔の運転管理方法である。
【0015】
また本発明は、排ガス中の有害物質を吸着除去するための活性炭吸着塔と、
活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する有機塩素化合物測定装置と、
排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインか、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替える流路切替装置と、
測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定して、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、一方、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替えるように、前記流路切替装置を制御する運転管理装置とを含むことを特徴とする活性炭吸着塔管理システムである。
【0016】
また本発明は、前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する出口側有機塩素化合物測定装置と、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定して、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する吸着塔運転管理装置とをさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また本発明は、排ガス中の有害物質を吸着除去するための活性炭吸着塔と、
活性炭吸着塔導入後の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する出口側有機塩素化合物測定装置と、
測定された有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定して、推定したダイオキシン類濃度と、予め定めるしきい値とを比較し、
ダイオキシン類濃度がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、ダイオキシン類濃度がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する吸着塔運転管理装置とを含むことを特徴とする活性炭吸着塔管理システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、まず、活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定する。排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、排ガスが導入されるラインの切り替えを行う。
【0019】
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替える。
【0020】
これにより、排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて、活性炭吸着塔の運転管理を行うことができる。特に、活性炭吸着塔をバイパスさせることも可能であるため、活性炭の使用寿命を長くすることができる。また、有機塩素化合物濃度は、ダイオキシン類濃度の代替指標のみならず、環境ホルモンなどの未規制の有害物質をも含む総合的な代替指標であるので、より適切な運転管理を行うことが可能となる。
【0021】
また本発明によれば、前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定する。活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、活性炭吸着塔およびバイパスラインの運転条件を変更する。
【0022】
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する。
【0023】
これにより、活性炭吸着塔で有害物質が吸着除去された排ガス、または含まれる有害物質が少なかったために活性炭吸着塔をバイパスした排ガスに対して、大気への放出前に再度、有機塩素化合物濃度を測定することで、活性炭吸着塔あるいはバイパスラインの不具合を検出し、その対策を施すことが可能となる。
【0024】
また本発明によれば、活性炭吸着塔導入後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定する。活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、活性炭吸着塔の運転条件を変更する。
【0025】
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する。
【0026】
これにより、活性炭吸着塔で有害物質が吸着除去された排ガスに対して、大気への放出前に有機塩素化合物濃度を測定することで、活性炭吸着塔の不具合を検出し、その対策を施すことが可能となる。
【0027】
また本発明によれば、有機塩素化合物測定装置が、活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、運転管理装置が、測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定する。運転管理装置は、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、排ガスが導入されるラインの切り替えを行う。
【0028】
運転管理装置は、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替えるように流路切替装置を制御する。
【0029】
これにより、排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて、活性炭吸着塔の運転管理を行うことができる。特に、活性炭吸着塔をバイパスさせることも可能であるため、活性炭の使用寿命を長くすることができる。また、有機塩素化合物濃度は、ダイオキシン類濃度の代替指標のみならず、環境ホルモンなどの未規制の有害物質をも含む総合的な代替指標であるので、より適切な運転管理を行うことが可能となる。
【0030】
また本発明によれば、出口側有機塩素化合物測定装置が、前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、吸着塔運転管理装置が、測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定する。吸着塔運転管理装置は、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、活性炭吸着塔およびバイパスラインの運転条件を変更する。
【0031】
吸着塔運転管理装置は、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔およびバイパスラインの運転条件を変更し、一方活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する。
【0032】
これにより、活性炭吸着塔で有害物質が吸着除去された排ガス、または含まれる有害物質が少なかったために活性炭吸着塔をバイパスした排ガスに対して、大気への放出前に再度、有機塩素化合物濃度を測定することで、活性炭吸着塔あるいはバイパスラインの不具合を検出し、その対策を施すことが可能となる。
【0033】
また本発明によれば、出口側有機塩素化合物測定装置が、活性炭吸着塔導入後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定し、吸着塔運転管理装置が、測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定する。吸着塔運転管理装置は、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、比較結果に応じて、活性炭吸着塔の運転条件を変更する。
【0034】
吸着塔運転管理装置は、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する。
【0035】
これにより、活性炭吸着塔で有害物質が吸着除去された排ガスに対して、大気への放出前に有機塩素化合物濃度を測定することで、活性炭吸着塔の不具合を検出し、その対策を施すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。本実施形態は、ごみ焼却炉から排出される排ガスの有害物質を活性炭吸着塔で吸着除去する際に用いられるシステムである。
【0037】
ごみを焼却するためのごみ焼却炉から排出された排ガスは、ボイラに導入されて、排ガスが保有する熱量が蒸気(スチーム)を発生させることにより回収される。ボイラからの排ガスは減温塔等の減温装置に導入されて冷却される。減温装置からの排ガスは、電気集塵機、バグフィルター等の集塵機に導入されて排ガス中のダストが分離および除去される。
【0038】
これらの排ガス処理装置から排出された排ガスは、活性炭吸着塔2に導入されて排ガス中のダイオキシン類が吸着除去される。活性炭吸着塔2は、粒状活性炭または粒状活性コークスが充填された固定床型または移動床型の吸着装置である。活性炭吸着塔2から排出される排ガスは、処理済み排ガスとして大気へと放出される。
【0039】
排ガス処理装置から排出された排ガスは、活性炭吸着塔2に導入される前に有機塩素化合物(AOCl)測定装置3に導入される。有機塩素化合物測定装置3は、導入された排ガス中の有機塩素化合物濃度を測定する。濃度測定結果は、運転管理装置4に出力され、運転管理装置4は流路切替装置5の切替動作を制御する。流路切替装置5は、排ガス処理装置から排出された排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔2に導入するための配管である主ライン6と、活性炭吸着塔2をバイパスさせるための配管であるバイパスライン7とのいずれかに切り替える。いずれのラインに切り替えるかは、運転管理装置4から入力される制御信号によって決定される。
【0040】
運転管理装置4によるライン切替制御について説明する。図2は、運転管理装置4の管理処理を示すフローチャートである。
【0041】
有機塩素化合物測定装置3は、既存の測定装置が利用可能であり、予め定める条件を満たしたときに排ガスの有機塩素化合物濃度を測定し、測定結果を運転管理装置4に出力する。予め定める条件とは、たとえば、ガス採取時間、前回の測定からの経過時間、システムオペレータからの測定指示があった場合などである。
【0042】
運転管理装置4は、有機塩素化合物測定装置3から有機塩素化合物濃度が入力されると(ステップA1)、有機塩素化合物濃度とダイオキシン類濃度との相関関係に基づき、有機塩素化合物測定装置3から入力された有機塩素化合物濃度からダイオキシン類濃度を推定する(ステップA2)。図3は、有機塩素化合物(AOCl)濃度とダイオキシン類(DXN)濃度との相関関係を示す両対数グラフである。縦軸は、ダイオキシン類濃度(ng−TEQ/m)を示し、横軸は、有機塩素化合物濃度(μg−Cl/m)を示す。TEQは、測定されたダイオキシン類の濃度が、最も毒性が強い2,3,7,8−TCDD(四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン)の毒性に換算したものであることを示している。相関関係は、たとえば最小二乗法などにより決定した近似式により示され、有機塩素化合物濃度が決まると、それに応じたダイオキシン類濃度が決まる。
たとえば、図3のグラフから決定される近似式は、有機塩素化合物濃度をxとし、ダイオキシン類濃度をyとしたときに、y=0.0028x1.74で与えられる。
【0043】
このようにして決定したダイオキシン類濃度と、予め定めるしきい値とを比較し(ステップA3)、ダイオキシン類濃度がしきい値以上かどうかを判断する(ステップA4)。ダイオキシン類濃度がしきい値以上であれば、排ガス中に吸着除去すべき濃度のダイオキシン類が含有されているので、流路切替装置5に対して主ライン6に切り替えるように制御信号を出力する(ステップA5)。一方、ダイオキシン類濃度がしきい値未満であれば、排ガスからダイオキシン類を除去する必要がないので、流路切替装置5に対してバイパスライン7に切り替えるように制御信号を出力する(ステップA6)。
【0044】
切り替えを判断するためのしきい値としては、たとえば、排ガスの排出基準値の1/10である0.01ng−TEQ/mとする。
【0045】
流路切替装置5は、運転管理装置4から出力された制御信号が主ライン6に切り替える指示であれば、排ガス処理装置から排出された排ガスが導入されるラインを、主ライン6に切り替え、制御信号がバイパスライン7に切り替える指示であれば、バイパスライン7に切り替える。なお、流路切替装置5は、制御信号を受けた時点で、排ガス処理装置から排出された排ガスが導入されるラインが、主ライン6であるかバイパスライン7であるかを認識しているので、制御信号を受けた時点のラインと、制御信号により切り替え指示されたラインとが同じであれば切り替え動作は行わず、制御信号を受けた時点のラインと、制御信号により切り替え指示されたラインとが異なる場合は、指示されたラインに切り替える。
【0046】
バイパスライン7を使用している間は、活性炭吸着塔内温度の低下による水の凝縮を防ぐために、約130℃〜150℃に保温することが好ましい。
図4は、本発明の第2実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。
【0047】
第1実施形態では、活性炭吸着塔2へ導入される前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定したが、第2実施形態では、これに加えて、活性炭吸着塔2で有害物質が吸着除去された処理済み排ガスの有機塩素化合物濃度を測定し、この測定結果に基づいて活性炭吸着塔2を制御する。図1に示した活性炭吸着塔管理システム1と同様に動作する装置については、同じ参照番号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
出口側有機塩素化合物測定装置8は、活性炭吸着塔2で有害物質が吸着除去された処理済み排ガスの有機塩素化合物濃度か、またはバイパスライン7を通って活性炭吸着塔2をバイパスした排ガスの有機塩素化合物濃度を測定する。濃度測定結果は、吸着塔運転管理装置9に出力され、吸着塔運転管理装置9は、活性炭吸着塔2の動作を制御する。
【0049】
吸着塔運転管理装置9による活性炭吸着塔制御について説明する。図5は、吸着塔運転管理装置9の管理処理を示すフローチャートである。
【0050】
出口側有機塩素化合物測定装置8は、既存の測定装置を利用可能であり、予め定める条件を満たしたときに排ガスの有機塩素化合物濃度を測定し、測定結果を吸着塔運転管理装置9に出力する。予め定める条件とは、たとえば、ガス採取時間、前回の測定からの経過時間、システムオペレータからの測定指示があった場合などである。
【0051】
吸着塔運転管理装置9は、出口側有機塩素化合物測定装置8から有機塩素化合物濃度が入力されると(ステップB1)、有機塩素化合物濃度とダイオキシン類濃度との相関関係に基づき、有機塩素化合物測定装置3から入力された有機塩素化合物濃度からダイオキシン類濃度を推定する(ステップB2)。ダイオキシン類濃度の推定は、前述した運転管理装置4の濃度推定と同様に行われる。
【0052】
このようにして決定したダイオキシン類濃度と、予め定めるしきい値とを比較し(ステップB3)、ダイオキシン類濃度がしきい値以上かどうかを判断する(ステップB4)。ダイオキシン類濃度がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔2の運転条件を変更し(ステップB5)、一方、ダイオキシン類濃度がしきい値未満であれば、運転条件を変更せず現状の運転条件を維持する。
【0053】
運転条件変更を判断するためのしきい値としては、たとえば、排ガスの排出基準値の1/10である0.01ng−TEQ/mとする。
【0054】
活性炭吸着塔2の運転条件変更について詳細に説明する。
出口側有機塩素化合物測定装置8での測定対象が、活性炭吸着塔2で有害物質が吸着除去された処理済み排ガスの場合、すなわち流路切替装置5が主ライン6に切り替えている場合、活性炭吸着塔2における吸着除去能力が低下していると考えられる。
【0055】
活性炭吸着塔2が固定床式吸着塔であれば、充填している活性炭の交換が必要であることをオペレータに報知する。
【0056】
活性炭吸着塔2が移動床式吸着塔であれば、活性炭吸着塔出口側排ガス中のダイオキシン類濃度がしきい値以下と推定できる有機塩素化合物濃度となるように、活性炭の移動速度を調整する。
【0057】
出口側有機塩素化合物測定装置8での測定対象が、バイパスライン7を通って活性炭吸着塔2をバイパスした排ガスの場合、すなわち流路切替装置5がバイパスライン7に切り替えている場合、バイパスライン7内でダイオキシン類の再合成が生じるなど、バイパスライン7にダイオキシン類濃度が増加した原因があると想定されるので、バイパスライン7の調査、清掃などを行うようオペレータに報知する。
【0058】
流路切替装置5が、主ライン6とバイパスライン7のいずれのラインに切り替えているかは、運転管理装置4が、ライン切り替えの制御信号を流路切替装置5だけでなく、吸着塔運転管理装置9へも出力し、吸着塔運転管理装置9が、制御信号を受信可能な構成とすればよい。
【0059】
なお、運転管理装置4と、吸着塔運転管理装置9とは、同一の装置であってもよい。この場合、活性炭吸着塔2の運転条件変更にあたって、ライン切り替えの制御信号を流路切替装置5にのみ出力すればよい。また、バイパスライン7にダイオキシン類濃度が増加した原因があると想定される場合、バイパスライン7の調査、清掃などを行うようオペレータに報知するとともに、バイパスライン7の調査、清掃などが完了するまでは、バイパスライン7に切り替えず、主ライン6のみを使用するように流路切替装置5を制御することも可能である。
図6は、本発明の第3実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。
【0060】
第3実施形態では、活性炭吸着塔2で有害物質が吸着除去された処理済み排ガスの有機塩素化合物濃度を測定し、この測定結果に基づいて活性炭吸着塔2を制御する。図1および図2に示した活性炭吸着塔管理システム1と同様に動作する装置については、同じ参照番号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
吸着塔運転管理装置9による活性炭吸着塔制御について説明する。吸着塔運転管理装置9の管理処理を示すフローチャートは、図5に示した第2実施形態のフローチャートと同様であり、動作内容が異なるステップB5について説明する。
【0062】
処理済み排ガスに含まれるダイオキシン類濃度がしきい値以上である場合は、活性炭吸着塔2における吸着除去能力が低下していると考えられる。
【0063】
活性炭吸着塔2が固定床式吸着塔であれば、充填している活性炭の交換を行うようオペレータに報知する。
【0064】
活性炭吸着塔2が移動床式吸着塔であれば、活性炭吸着塔出口側排ガス中のダイオキシン類濃度がしきい値以下と推定できる有機塩素化合物濃度となるように、活性炭の移動速度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。
【図2】運転管理装置4の管理処理を示すフローチャートである。
【図3】有機塩素化合物(AOCl)濃度とダイオキシン類(DXN)濃度との相関関係を示す両対数グラフである。
【図4】本発明の第2実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。
【図5】吸着塔運転管理装置9の管理処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態である活性炭吸着塔管理システム1を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 活性炭吸着塔管理システム
2 活性炭吸着塔
3 有機塩素化合物(AOCl)測定装置
4 運転管理装置
5 流路切替装置
6 主ライン
7 バイパスライン
8 出口側有機塩素化合物測定装置
9 吸着塔運転管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定するステップと、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、一方、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替えるステップとを含むことを特徴とする活性炭吸着塔の運転管理方法。
【請求項2】
前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載の活性炭吸着塔の運転管理方法。
【請求項3】
活性炭吸着塔導入後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定するステップと、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較するステップと、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持するステップとを含むことを特徴とする活性炭吸着塔の運転管理方法。
【請求項4】
排ガス中の有害物質を吸着除去するための活性炭吸着塔と、
活性炭吸着塔導入前の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する有機塩素化合物測定装置と、
排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインか、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替える流路切替装置と、
測定された排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいて排ガスに含まれるダイオキシン類濃度を推定して、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、
排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔に導入するための主ラインに切り替え、一方、排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、排ガスが導入されるラインを、活性炭吸着塔をバイパスするためのバイパスラインに切り替えるように、前記流路切替装置を制御する運転管理装置とを含むことを特徴とする活性炭吸着塔管理システム。
【請求項5】
前記主ラインまたは前記バイパスライン通過後の排ガスである活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する出口側有機塩素化合物測定装置と、
測定された活性炭吸着塔出口側排ガスの有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定して、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値と、予め定めるしきい値とを比較し、
活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、活性炭吸着塔出口側排ガスに含まれるダイオキシン類濃度の推定値がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する吸着塔運転管理装置とをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の活性炭吸着塔管理システム。
【請求項6】
排ガス中の有害物質を吸着除去するための活性炭吸着塔と、
活性炭吸着塔導入後の排ガスに含まれる有機塩素化合物濃度を測定する出口側有機塩素化合物測定装置と、
測定された有機塩素化合物濃度に基づいてダイオキシン類濃度を推定して、推定したダイオキシン類濃度と、予め定めるしきい値とを比較し、
ダイオキシン類濃度がしきい値以上であれば、活性炭吸着塔の運転条件を変更し、一方、ダイオキシン類濃度がしきい値未満であれば、活性炭吸着塔の運転条件を維持する吸着塔運転管理装置とを含むことを特徴とする活性炭吸着塔管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−221092(P2008−221092A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60925(P2007−60925)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】