説明

活性物質の送達のための急速に溶解するフィルム

急速に溶解するフィルムは、湿った身体表面、例えば粘膜組織に対する活性物質の投与のために提供される。本発明は、活性物質の身体表面への投与のためのフィルムであって、以下:(a)親水性ポリマーを含むフィルム形成バインダー;(b)急速に溶解するポリマー材料;および(c)有効量の活性物質を含み、該フィルム形成バインダーおよび該急速に溶解する材料が、湿った身体表面に対するフィルムの適用後の10分以内に該フィルムの溶解を容易するのに効果的であるフィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的に、急速に溶解するフィルムに関する。より具体的には、本発明は、活性物質が局所、経皮膚または経粘膜で投与される活性物質投与システムとして有用なフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
口腔等の湿った環境に活性物質を投与するために設計された多くのシステムが存在する。そのようなシステムは、特に、患者集団が子供たち、年配者、または飲み込みに困難を有することのある他の患者である場合に、飲み込まなければならない錠剤、カプセルおよび他の投薬形に比較して特に望ましい。
【0003】
Kimらの特許文献1に記載されているように、フィルム形成剤が経皮または経真皮適用の医薬投与処方物の製造に用いられているが、これらは、有効成分の徐放性を達成するのに十分に長く物質をその場に保持するために、必然的に接着組成物をともなう。
【0004】
Zhangらの特許文献2は、経口用の経粘膜パッチ、糖錠またはトローチ、ロリポップまたはチューインガムとして処方することのできるシステムを記載する。しかし、これらのシステムは口内で比較的長い寿命を有しえ、必ずしも望ましく実用的ではないであろう。
【0005】
生侵食性のあるフィルムが、Tapolskyらの特許文献3に記載されている。これらのフィルムは接着層と非接着支持体層を有し、粘膜表面に付着させることが意図される。Biegajskiらの特許文献4は、粘膜で覆われた表面の体腔での使用に適する水溶性で感圧性の粘膜接着剤を記載する。
【0006】
さらに最近、急速に溶解するフィルムが開発された。これらは、Zerbeらの特許文献5および特許文献6に記載された口粘膜に付着させることが意図される瞬時湿潤性粘膜接着フィルムを含む。Leungらの特許文献7は、抗菌剤および他の活性物質を投与するために、フィルム形成ポリマー、好ましくはプルランから作られた急速に溶解する経口で消費可能なフィルムを記載する。これらのフィルムは乾燥時には粘着性がないが、粘膜組織に適用されると粘着性となる。しかし、フィルムを適切に適用する困難性は患者の応諾を低下させるので、粘膜付着は必ずしも望まれてはいないだろう。
【0007】
一方、特許文献8は、プルランを含まない食用可能なフィルムを記載し、プルランは高価で容易に利用できないことを示している。
【0008】
医薬品や化粧品等、多くの用途に有用なポリマー組成物の接着性を適合させるために1つの方法が最近開発された。その方法は、接着性の基礎となる分子機構の新しい洞察に基づく。例えば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3を参照されたい。上記参考文献で議論されているように、感圧接着は2つの明らかな適合性のない種類の分子構造の結合から生じるものであり、強い凝集相互作用エネルギーと高められた「自由体積」との間に繊細なバランスが存在する。
【0009】
すなわち、PSA(感圧接着剤)ポリマー組成物の分子構造中の高められた自由体積は、巨視的なレベルで示された高い粘着性とPSA材料の液体様の流動性に関連し、これは次に接着結合の急速な形成を可能とする。「凝集相互作用エネルギー」または「凝集エネルギー」はPSA組成物の凝集靭性を定め、接着結合破壊の過程で分離エネルギーの消失を提供する。これらの発見に基づいて、新規な親水性接着剤を得るための一般的な方法が開発され、Feldsteinらの特許文献9に記載されている。一実施形態において、該方法は、非接着、親水性で、高分子量のポリマーを、該ポリマーを水素結合により架橋することができる比較的に低分子量の可塑剤を物理的に混合することを伴う。
【特許文献1】米国特許第6,750,921号明細書
【特許文献2】米国特許第6,264,891号明細書
【特許文献3】米国特許第5,800,832号明細書
【特許文献4】米国特許第5,700,478号明細書
【特許文献5】米国特許第5,948,430号明細書
【特許文献6】米国特許第6,709,671号明細書
【特許文献7】米国特許第6,596,298号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2002/0131990号明細書
【特許文献9】米国特許第6,576,712号明細書
【非特許文献1】Feldsteinら、「Polym.Mater.Sci.Eng」、1999年、第81巻、p.465−466
【非特許文献2】Feldsteinら、「General approach to the molecular design of hydrophilic pressure−sensitive adhesives」、Proceed.25th Annual Meeting Adhesion Soc. and 2nd World Congress on Adhesion and Relative Phenomena」(Oral presentaions)、2002年2月、Orland、FL、第1巻、p.292−294
【非特許文献3】Chalykhら、「J. Adhesion」、2002年、第78巻第8号、p.667−694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
技術の発達にもかかわらず、顕著な医薬充填能力を有し、操作の容易性を提供し、口または他の湿った体の位置で急速に溶解し、医薬を即座に放出し、多様な活性物質の除放的な調節された放出を提供することのできる急速に溶解するフィルムの必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、上記の望ましい基準に合致する急速に溶解するフィルムを提供することにより当分野における上記の必要性に取り組むものである。一実施形態において、次に、本発明は、
活性物質の身体表面への適用のためのフィルムにおいて、
(a)親水性ポリマーを含むフィルム形成バインダー;
(b)急速に溶けるポリマー材料;および
(c)有効量の活性物質からなり、
フィルム形成バインダーおよび急速に溶ける材料が、湿った身体表面に対するフィルムの適用後の約10分以内にフィルムの溶解を容易するのに効果的であることを特徴とするフィルムを提供する。
【0012】
フィルムは好ましくは保存中と適用前には非粘着性であるので、活性物質の投与領域、例えば、舌の下に置かれるどのようなパッケージからも容易に取り出されるだろう。成分の比率は、フィルムが粘膜接着性でないように、すなわち、フィルムが粘膜表面に付着できないように一般的に選択される。急速な溶解作用は、フィルムが置かれる身体表面に対する接着を防止するのにも役立つだろう。
【0013】
フィルムは、湿った環境下で急速に溶解するので、身体表面に対するフィルムの適用後に活性物質の急速な放出を容易にする。「急速に溶解する」とは、典型的には適用後の約10分以内に、一般的には少なくとも5秒間、好ましくは少なくとも30秒間かけて溶解することを意味する。好適な実施形態において、活性物質のフィルムとの密接な結合のために、活性物質も急速に投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明を詳細に説明する前に、他に示されない限り、特定の材料や製造方法は変更してよいので、本発明はそれらに限定されないことを理解されたい。ここで用いられる用語は特定の実施形態のみを説明する目的のためであって、限定を意図するものではないことも理解されたい。本明細書および添付の請求の範囲に用いられるように、単数形(「a」、「an」、および「the」)は文脈が明らかに他を示さない限り複数も含むことに注意されたい。例えば、親水性ポリマー(「a hydrophilic polymer」)との言及は単一の親水性ポリマーのみならず、2つ以上の異なる親水性ポリマーの組合せまたは混合物も含み、「急速に溶解する材料」(「a rapidly dissolving material」)との言及は2つ以上の異なる急速に溶解する材料の組合せまたは混合物ならびに単一の急速に溶解する物質等を含む。
【0015】
本発明を説明し、請求する際に、下記用語を以下に示す定義にしたがって用いることにする。
【0016】
「疎水性」および「親水性」ポリマーの定義は100%相対湿度においてポリマーにより吸収される水蒸気の量に基づく。この分類に従うと、疎水性ポリマーは、100%の相対湿度(「rh」)でわずかに1重量%までの水を吸収する一方で、適度に親水性のあるポリマーは1〜10重量%の水を吸収し、親水性ポリマーは10重量%を超える水を吸収することができ、吸湿性ポリマーは20重量%を超える水を吸収する。「水膨潤性」ポリマーは、水性媒体に浸したときに、それ自体の少なくとも25重量%を超える量の水、好ましくはそれ自体の重量の少なくとも50重量%を吸収するものである。
【0017】
「非共有」結合との用語は、水素結合、静電気(イオン)結合、またはファンデルワールスおよび疎水性相互作用等の他の弱い相互作用を含む。
【0018】
「ポリマー」または「ポリマー材料」との用語は直鎖または分鎖のポリマー構造を含み、架橋ポリマーならびにコポリマー(共有結合していてもいなくてもよい)も包含するので、ブロックコポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー等を含む。ここで「オリゴマー」と呼ばれる化合物は約1000Da未満、好ましくは約800Da未満の分子量を有するポリマーである。
【0019】
「活性物質」、「薬理学的に有効な物質」および「医薬」は、望まれる薬理学的、生理学的効果を誘導する化学物質または化合物を言うためにここでは相互に交換可能に用いられ、治療効果的、予防効果的または化粧医薬効果的のある物質を含む。これらの用語は、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物質、包接複合体、類似体等の、しかしこれらに限定されないここで具体的に挙げられた活性物質の薬学的に許容され、薬理学的に活性のある誘導体および類似体も包含する。「活性物質」、「薬理学的に活性のある物質」および「医薬品」との用語が用いられる場合、活性物質自体ならびに薬学的に許容され、薬理学的に活性のある塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝物質、包接複合体、類似体等がともに含まれることを理解されたい。
【0020】
活性物質の「有効量」という用語は、望まれる効果を提供するのに活性物質の非毒性であるが十分な量を意味する。医薬品または薬理学的に活性のある物質の「有効量」または「治療有効量」との用語は望まれる治療効果を提供するのに該医薬品または該物質の非毒性であるが十分な量を意味するものとする。「効果的な」量は、個人の年齢や一般的な状態、特定の単一または複数の活性物質等により個々の対象間で異なる。よって、正確な「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかし、個々のケースにおいて、適当な「効果的な」量は日常的な実験を用いて当業者により決定されるだろう。さらに、本発明の組成物に配合される活性物質の正確な「効果的な」量は、その濃度が治療効果のある範囲にある活性物質の量を投与するように処方物の容易な適用を可能とするのに十分な範囲にある限り重大ではない。
【0021】
ここで用いられる「治療する」または「治療」との用語は、症候の程度および/または頻度の低減、症候および/または基礎をなす原因の除去、症候および/またはそれらの基礎をなす原因の発生の防止、および損傷の改善または治療をいう。
【0022】
「粘膜」表面や「身体表面」等の「表面」との用語は、皮膚、爪および粘膜組織(例えば、舌下、頬、膣、直腸、尿道)等の身体表面、ならびに口腔内または口腔周囲の表面(例えば、歯、唇、歯肉、粘膜)、ならびに多様な皮膚の傷の表面を含むものとする。
【0023】
「経粘膜」医薬品投与は、医薬品が粘膜組織を通って個人の血流に入ることにより全身効果を提供するように個人の粘膜表面(例えば、舌下、頬および他の口組織;膣、直腸、目、胃腸および尿道組織)に投与することを意味する。「経粘膜」との用語は局所効果を包含することも意図するので、例えば、多様な粘膜疾患の治療等で粘膜に物質を局所投与して局所効果を提供することを含む。
【0024】
「粘着性」と「粘着性の」との用語は定性的なものである。しかし、ここで用いられる「実質的に非粘着性の」、「僅かに粘着性の」および「粘着性の」との用語は、下記のようにPKIまたはTRBT粘着性測定法で得られた値を用いて定量化してよい。「実質的に非粘着性の」とは約25g−cm/秒未満の粘着値を有する組成物を意味し、「僅かに粘着性の」とは約25g−cm/秒〜100g−cm/秒の範囲の粘着値を有する組成物を意味し、「粘着性の」とは少なくとも100g−cm/秒の粘着値を有する組成物を意味する。
【0025】
「可塑剤」との用語は、この用語の慣用的な意味で用いられて、ポリマーまたはポリマー配合物と混和性があり、そのガラス転移温度および弾性率を下げる比較的低分子量の化合物をいう。
【0026】
「局所的に」との用語は、適用部位に近接する領域内か、またはさらに具体的には適用部位と同じ組織に隣接する領域内の作用をいう。局所的に適用された本発明の組成物は、組成物の拡散性により決定される適用部位のある距離内にとどまるだろう。
【0027】
「全身的に」との用語は、適用部位から末梢領域(循環系により運ばれる全身までの領域)内の作用をいう。
【0028】
本発明の急速に溶解するフィルム組成物は、フィルムを溶解するのに十分な水分を提供することのできる体の環境における使用が意図され、多様な疾患、病気または他の悪い生理学的状態の治療用の医薬組成物として利用性を見出すであろう。フィルムは、そこに含まれる活性物質の速い溶解と作用を提供する。例示するものであって限定するものではないが、適当な水分のある体の環境として、粘膜組織を有する環境、例えば、口腔、膣、尿道、目、胃腸管および直腸が挙げられる。外部から湿気が与えられる皮膚や外皮にも適用可能である。フィルムは水性環境で容易に溶解するので、医薬品投与は身体表面を通過する経粘膜投与により達成することができる。局所的な投与がもっとも代表的であるが、本発明は、急速に溶解するフィルムを口に置き、フィルムが溶解し、医薬品(その一部は飲み込まれるだろう)が放出された後に起こる全身投与も意図する。
【0029】
フィルムはフィルム形成バインダー、有効量の活性物質および急速に溶解するポリマー材料を含む。フィルム形成バインダーは親水性ポリマーを含み、活性物質と非共有結合していても、していなくてもよい。フィルム形成バインダーは、親水性ポリマーと、この親水性ポリマーに水素結合可能な補足的なオリゴマーとの配合物であってもよい。
【0030】
フィルムは好ましくは適用中に非粘着性であるために、包装材料から容易に取り出され、示された領域、例えば、舌下内におかれる。一実施形態において、フィルムが粘膜粘着性でないように、すなわち、それが粘膜表面に貼りつかないように成分の比率を選択する。さらに、急速に溶解する作用は接着が起こることを妨げるようにも働くだろう。
【0031】
フィルム形成バインダーおよび急速に溶解する物質は、湿った身体表面に対するフィルムの適用後にフィルムが溶解して約10分以内で活性物質の放出を容易にするように組み合わせるのが有効である。フィルムは湿った環境下に急速に溶解し、薬理学的活性の即時の開始が望ましい兆候のために多様な活性物質を投与するために有用である。「急速に」との用語はフィルム適用後の約10分以内、好ましくは適用後の約5秒間〜10分間内、最適には適用後に約30秒間〜10分間内にフィルムが溶解することを意味するものとする。フィルムは有効成分をフィルムの溶解時間枠内で放出するように設計される。一実施形態において、フィルムは、口腔等の湿った環境内に置かれた後、約30秒間〜10分間内に医薬品を放出し始める。他の実施形態において、フィルムは投与後の約30秒以内に医薬品を放出する。
【0032】
フィルム形成バインダーは親水性ポリマーまたは親水性ポリマーと可塑剤(例えば、該親水性ポリマーに非共有結合でき、任意に該親水性ポリマーとイオン結合または共有結合も同様にできる補足的なオリゴマー)との配合物からなる。親水性ポリマーは一般的に比較的に高分子量のポリマーであり、可塑剤は通常は実質的に低分子量のオリゴマーである。補足的なオリゴマーは必要とされないが、その包含はフィルム性質の正確な適合を容易にするだろう。補足的なオリゴマーが存在する場合、補足的なオリゴマーに対する親水性ポリマーの重量比は約10:1〜1:10の範囲、好ましくは約1.5:1〜約3:1の範囲にあり、最適には約2:1である。
【0033】
適当な親水性ポリマーとして、N−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルモノマーのエステル、ビニルアミドモノマーおよびヒドロキシビニルモノマーから選択される1種類以上のモノマーに由来する繰返し単位が挙げられる。そのようなポリマーとして、例えば、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、置換または非置換のアクリル酸とメタクリル酸のポリマー(例えば、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアミン、それらのコポリマーおよび他の種類の親水性モノマー(例えば、酢酸ビニル)とのコポリマー、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
ここで有用なポリ(N−ビニルラクタム)は、好ましくはN−ビニルラクタムモノマー単位の非架橋のホモポリマーまたはコポリマーであり、ここでN−ビニルラクタムモノマー単位はポリ(N−ビニルラクタム)コポリマーの全モノマー単位の大多数を表す。本発明に関連して用いられる好ましいポリ(N−ビニルラクタム)はN−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−バレロラクタムおよびN−ビニル−2−カプロラクタム等の1種類以上のN−ビニルラクタムモノマーの重合により調製される。N−ビニルラクタムモノマー単位とともに有用な非N−ビニルラクタムコモノマーの限定するものではない例として、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩および酢酸ビニルが挙げられる。ポリ(N−アルキルアクリルアミド)として、例えば、ポリ(メタクリルアミド)およびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)が挙げられる。
【0035】
カルボキシビニルモノマーのポリマーは、典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸および無水物、1,2−ジカルボン酸、例えばマレイン酸またはフマル酸、無水マレイン酸またはそれらの混合物から形成され、このクラスにある好ましい親水性ポリマーはポリアクリル酸とポリメタクリル酸が挙げられ、ポリアクリル酸が最も好ましい。
【0036】
ここで好ましい親水性ポリマーは、ポリ(N−ビニルラクタム)、特にポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルカプロラクタム(PVCap);ポリ(N−ビニルアセトアミド)、特にポリアセトアミド自体;カルボキシビニルモノマーのポリマー、特にポリアクリル酸およびポリメタクリル酸;およびそれらのコポリマーおよび配合物である。PVPおよびPVCapが特に好ましい。
【0037】
親水性ポリマーの分子量は重要ではないが、親水性ポリマーの数平均分子量は通常は約100,000〜2,000,000の範囲、さらに一般的には約500,000〜1,500,000の範囲にある。
【0038】
親水性ポリマーは、該ポリマーを可塑化するために効果的な化合物と組み合わせてもよい。例示のためであって限定されるものではない適当な可塑剤として、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジルおよびリン酸トリフェニル等のリン酸アルキルおよびアリール;クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチルおよびクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチルおよびクエン酸トリヘキシル等のクエン酸アルキルおよびクエン酸エステル;グリセロール酸アルキル;グリコール酸アルキル;アジピン酸ジオクチル(DOA;アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)ともいう)、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)およびアジピン酸ジヘキシル等のアジピン酸ジアルキル;フタル酸ジアルキル、フタル酸ジシクロアルキル、フタル酸ジアリールおよび混合フタル酸アルキル−アリール、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−イソプロピル、フタル酸ジアミルおよびフタル酸ジカプリルにより代表されるフタル酸エステル;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチルおよびセバシン酸ジノニル等のセバシン酸ジアルキル;コハク酸ジエチルおよびコハク酸ジブチル等のコハク酸ジアルキル;酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジブチル等の酒石酸ジアルキル;グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート(トリアセチン)、グリセリンモノラクテートジアセテート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジブチレートおよびトリエチレングリコールジプロピオネート等のグリコールエステルおよびグリセロールエステル;例えば、糖の部分脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテルおよびポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル等の親水性界面活性剤、好ましくは親水性非イオン性界面活性剤、ならびにエチルセロソルブ等の非イオン性界面活性剤;エチルからオクチルまでの低級アルコール;ソルビトール;酒石酸ジブチル等の酒石酸エステル;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
本発明に関連して用いられる好ましい可塑剤は、ここで先に引用したFeldsteinらの米国特許第6,576,712号に記載されたフィルム形成バインダーに「補足的な」二官能性オリゴマーである。好ましくは、補足的なオリゴマーはヒドロキシル基、アミノ基またはカルボキシ基を末端とする。典型的にはオリゴマーは、約−100℃〜約−30℃の範囲のガラス転移温度Tおよび約20℃未満の融解温度Tを有する。オリゴマーは無定形であってもよい。フィルム形成バインダーのT値と補足的オリゴマーのT値との差は好ましくは約50℃を超え、さらに好ましくは約100℃を超え、最も好ましくは約150℃〜約300℃の範囲にある。一般的に、オリゴマーは約45〜約800、好ましくは約45〜約600の範囲にある分子量を有するだろう。適当なオリゴマーの例として、低分子量ポリアルコール(例えば、グリセロール)、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のオリゴアルキレングリコール、エーテルアルコール(例えば、グリコールエーテル)、ポリアルキレングリコールのカルボキシ末端およびアミノ末端誘導体等のブタンジオールからオクタンジオールまでのアルカンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。任意にカルボキシ末端とされたポリアルキレングリコールがここでは好ましく、約300〜600の範囲の分子量を有するポリエチレングリコールが最適な補足的オリゴマーである。
【0040】
本発明のフィルムは、2つ以上の可塑剤(例えば、クエン酸トリエチルとクエン酸トリブチル、クエン酸トリエチルとポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール400とフタル酸ジオクチル、等)を組み合わせて含んでもよい。
【0041】
さらに、フィルムは少なくとも1つの急速に溶解するポリマー材料を含む。例示的な材料として、水溶性の糖、半合成ポリマーと合成ポリマーおよび市販の崩壊剤が挙げられる。
【0042】
適当な急速に溶解する糖は、薬学的に許容される単糖類、二糖類、多糖類および糖アルコールである。例示的な単糖類として、アラビノース、エリトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコースおよびグルコース一水和物、D−マンノース、リボース、リブロース、ソルボース、スレオースおよびキシロースが挙げられる。例示的な二糖類としては、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルツロース、スクロースおよびトレハロースが挙げられる。例示的な多糖類として、アミロペクチン、アミロース、キチン、デキストラン、グルクロナン、レバン、マンナン、マルトデキストリンおよびペクチンが挙げられる。例示的な糖アルコールとして、エリスリトール、水素化イソマルツロース、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトールおよびキリシトールが挙げられる。
【0043】
マルトデキストリン類は特に興味があり、典型的には一、二、三またはそれ以上の長さの多糖(50%以上の長鎖多糖)を含む糖類の配合物である。多糖類の鎖の長さは水溶性(すなわち、長鎖分子は可溶性が低い)とフィルム形成能力(長鎖分子はフィルムをより効果的に形成する)との両方に影響を与える。よって、マルトデキストリン類は、本発明のフィルムに使用される急速に溶解する材料としてそれらの効用を最適化する多糖比率により選択することができる。
【0044】
ここにおける急速に溶解する材料として適する市販ポリマーとして、約1,000〜300,000の範囲内の分子量を有するセルロース誘導体が挙げられる。例示的なセルロース誘導体として、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0045】
他の急速に溶解するポリマーとして、Kollicoat−IR(登録商標)(BASF AG、ドイツ)およびEudragit RD100(登録商標)(Rohm Pharma、ドイツ)として市販されているポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ならびにアクリレートおよびメタクリレートコポリマーおよびターポリマーのEudragit(登録商標)ファミリー中のpH感受性のある急速溶解ポリマーが挙げられる。
【0046】
本発明の単一のフィルムは、約300mg/cmまでの活性物質の医薬品充填物を収容できるが、通常は約100μg/cm〜200mg/cmの有効成分を含むだろう。好ましい実施形態において、フィルムは、約10mg/cm〜200mg/cmの範囲で医薬品充填物を収容できる。最適には、医薬品充填物は約1mg/cm〜100mg/cmの範囲内にある。
【0047】
一実施形態において、有効成分は急速に溶解するフィルム中で易溶解性である。しかし、溶解性の少ない医薬品に関しては、界面活性剤を加えて医薬品の溶解特性を向上させることができる。不溶性または高分子量物質等のために別の実施形態では、物質を、分離した粒子、例えば、フィルム全体にわたって分散させた調節放出粒子中に含ませることができる。
【0048】
本フィルムに配合し、(例えば、医薬品の全身投与に適する経皮膚、経口または他の投与形を用いて)全身に投与される適当な活性物質として、強壮剤;鎮痛剤;麻酔剤;抗関節炎剤;抗喘息剤等の呼吸作用剤;抗腫瘍剤等の抗がん剤;抗コリン作動薬;抗痙攣剤;抗うつ剤;抗糖尿病剤;抗下痢剤;駆虫剤;抗ヒスタミン剤;抗高脂肪血症剤;降圧剤;抗生物質および抗ウイルス剤等の抗感染剤;抗炎症剤;抗偏頭痛調製物;抗吐き気剤;抗パーキンソン症候群剤;抗かゆみ剤;抗精神病剤;抗発熱剤;抗発作剤;抗結核剤;抗潰瘍剤;抗ウイルス剤;抗不安剤;食欲抑制剤;注意欠損疾患(ADD)および注意欠損機能亢進疾患(ADHD)医薬品;カルシウムチャンネルブロッカー、抗狭心剤、中枢神経系(CNS)剤、ベータ−ブロッカーおよび抗不整脈剤等の心臓血管病調製物;中枢神経系刺激剤;充血緩和剤等の咳および風邪調製物;利尿剤;遺伝的物質;薬用植物治療薬;ホルモノリティック薬;睡眠薬;低血糖剤;免疫抑制剤;ロイコトリエン阻害剤;有糸分裂阻害剤;筋肉緩和剤;麻酔性アンタゴニスト;ニコチン;ビタミン、必須アミノ酸および脂肪酸等の栄養物質;抗緑内障剤等の眼科剤;副交感神経遮断剤;ペプチド医薬品;精神刺激剤;鎮痛剤;プロゲストゲン、エストロゲン、コルチコステロイド、アンドロゲンおよび同化作用剤等のステロイド類;喫煙休止剤;交感神経刺激剤;精神安定剤;および冠状動脈、末梢血管および大脳血管の血管拡張剤が挙げられるが、これらに限定されない。本接着組成物が有用な特定の活性物質としては、アナバシン、カプサイシン、イソソルビドジニトレート、アミノスチグミン、ニトログリセリン、ベラパミル、プロプラノロール、シアボリン、ホリドン、クロニジン、シチシン、フェナゼパム、ニフェジピン、フルアシジンおよびサルブタモールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
局所の薬物投与のために、適当な活性物質として、例えば下記のものが挙げられる:
静菌および殺菌剤:適当な静菌および殺菌剤として、例えば、ヨウ素、ヨードポビドン複合体(すなわち、「ポビジン」とも称され、Purdue Frederickからの商品名Betadine(登録商標)として利用可能なPVPとヨウ素の複合体)、ヨウ素塩、クロロアミン、クロロヘキシジンおよび次亜塩素酸ナトリウム;銀および銀を含有する化合物、例えば、スルファジアジン、銀タンパク質アセチルタンネート、硝酸銀、酢酸銀、乳酸銀、硫酸銀および塩化銀;トリ−n−ブチル錫ベンゾエート等の有機錫化合物;亜鉛および亜鉛塩;過酸化水素および過マンガン酸カリウム等の抗酸化剤;ホウ酸フェニル水銀またはメルブロミン等のアリール水銀化合物;チオメルサール等のアルキル水銀化合物;チモール、o−フェニルフェノール、2−ベンジル−4−クロロフェノール、ヘキサクロロフェンおよびヘキシルレゾルシノール等のフェノール;および8−ヒドロキシキノリン、クロロキナルドール、クリオキノール、エタクリジン、ヘキセチジン、クロロヘキセジンおよびアンバゾン等の有機窒素化合物が挙げられる。
【0050】
抗生物質:適当な抗生物質としては、リンコマイシンファミリーの抗生物質(当初Streptomyces lincolnensisから回収された抗生物質のクラスをいう)、テトラサイクリンファミリーの抗生物質(当初Streptomyces aureofaciensから回収された抗生物質のクラスをいう)、およびイオウ系抗生物質(すなわちスルホンアミド)が挙げられるが、これらに限定されない。リンコマイシンファミリーの例示的な抗生物質として、リンコマイシン自体(6,8−ジデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)−カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−スレオ−α−D−ガラクトオクトピラノシド)、クリンダマイシン、リンコマイシンの7−デオキシ、7−クロロ誘導体(すなわち、7−クロロ−6,7,8−トリデオキシ−6−[[(1−メチル−4−プロピル−2−ピロリジニル)カルボニル]アミノ]−1−チオ−L−スレオ−α−D−ガラクト−オクトピラノシド)、例えば米国特許第3,475,407号、同第3,509,127号、同第3,544,551号、および同第3,513,155号に記載の関連化合物、およびそれらの薬学的に許容される塩およびエステルが挙げられる。テトラサイクリンファミリーの例示的な抗生物質として、テトラサイクリン自体、4−(ジメチルアミノ)−1,4,4α,5,5α,6,11,12α−オクタヒドロ−3,6,12,12α−ペンタヒドロキシ−6−メチル−1,11−ジオキソ−2−ナフタセンカルボキサミド)、クロロテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、メタサイクリンおよびドキシサイクリンおよびそれらの薬学的に許容される塩およびエステル、特に、塩酸塩等の酸付加塩が挙げられる。例示的なイオウ系抗生物質として、スルホンアミド、スルファセタミド、スルファベンズアミド、スルファジアジン、スルファドキシン、スルファメラジン、スルファメタジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、およびそれらの薬理学的に許容される塩およびエステル、例えばスルファセタミドナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
痛み緩和剤:適当な痛み緩和剤は、アセトアミドユーゲノール、アルファドロンアセテート、アルファキサロン、アムカイン、アモラノン、アミロカイン、ベノキシネート、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブレタミン、ブタカイン、ブタベン、ブタニリカイン、ブタリタール、ブトキシカイン、カルチカイン、2−クロロプロカイン、シンコカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペラドン、ジクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、エチルアミノベンゾエート、エチルクロリド、エチドカイン、エトキサドロール、β−ユーカイン、ユープロシン、フェナルコミン、ホモカイン、ヘキソバルビタール、ヘキシルカイン、ヒドロキシジオン、ヒドロキシプロカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブチルp−アミノベンゾエート、ケンタミン、ロイシノカインメシレート、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、メトヘキシタール、メチルクロリド、ミダゾラン、ミルテカイン、ナエパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタザイン、パレトキシカイン、フェナカイン、フェンシクリジン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパニジド、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポフォール、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン、リソカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、チアルバルビタール、チミラール、チオブタバルビタール、チオペンタル、トリカイン、トリメカイン、ゾラミンおよびそれらの組合せ等の、しかし、これらに限定されない局所麻酔剤が挙げられる。テトラカイン、リドカインおよびプリロカインをここでの痛み緩和剤という。
【0052】
フィルムを医薬品投与システムとして用いて投与してよい他の局所適用剤として、ウンデシレン酸、トルナフテート、ミコナゾール、グリセオフルビン、ケトコナゾール、シクロピロクス、クロトリマゾールおよびクロロキシレノール等の抗カビ剤;サリチル酸、乳酸および尿素等の角質溶解剤;カンタリジン等のベシカント;有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、レチノイド(例えば、レチン酸、アダパレンおよびタザロテン)、スルホンアミド(例えば、スルファセタミドナトリウム)、レゾルシノール、コルチコステロイド(例えば、トリアンシノロン)、アルファ−ヒドロキシ酸(例えば、乳酸およびグリコール酸)、アルファ−ケト酸(例えば、グリオキシル酸)等の抗ざそう剤、およびざそうの治療のために具体的に示された抗細菌剤、例えば、アゼライン酸、クリンダマイシン、エリスロマイシン、メクロサイクリン、ミノサイクリン、ナジフロキサシン、セファレキシン、ドキシシクリンおよびオフロキサシン等;ハイドロキノン、麹酸、グリコール酸および他のアルファ−ヒドロキシ酸、アルトカルピンおよびある種の有機過酸化物等の皮膚を明るくし、漂白する物質;サリチル酸、イミキモド、ジニトロクロロベンゼン、ジブチルスクアル酸、ポドフィリン、ポドフィロトキシン、カンタリジン、トリクロロ酢酸、ブレオマイシン、シドフォビル、アデフォビルおよびそれらの類似体等、いぼを治療するための物質;およびコルチコステロイドおよび非ステロイド抗炎症薬(NSAID)等の抗炎症剤(NSAIDとして、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ベノキサプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、ブチブフェン、フェンブフェンおよびチアプロフェン酸が挙げられる)が挙げられる。
【0053】
傷の手当のために、適当な活性物質は傷の治療に有用なものであるが、静菌および殺菌化合物、抗生物質、痛み鎮痛剤、血管拡張剤、組織治療増強剤、アミノ酸、タンパク質、タンパク質分解酵素、サイトカインおよびポリペプチド成長因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
フィルムは、歯およびその周囲および粘膜組織を伴う局所的な生理学的状態ならびに医薬品の全身投与を必要とする状態を治療するために有用な薬学的に活性のある物質も含みうる。活性物質は、組成物から放出されて、望まれない生理学的状態を治療することのできるどのような物質であってもよい。
【0055】
膣組織を経る経膜投与用の処置利用として、女性の避妊または局所抗生物質の投与を含む。直腸組織治療を伴う状態として痔疾があり、直腸組織を経る経膜投与により治療することのできる状態として、痛みの管理および座薬抗嘔吐が挙げられる。
【0056】
本フィルムを用いる経膜医薬品投与を伴う他の適用は、即座の救済が必要とされる状態の治療を含む。そのような使用として、エピネフリン等のアルファアドレナリン作動薬によるアナフィナキラシーショックの治療;抗ヒスタミン剤によるアレルギーの治療;降圧剤による高血圧の治療;スマトリプタン、ゾマトリプタン、5HTブロッカー等による偏頭痛の治療;デキシトロメトルファン等の鎮咳剤および咳抑制剤による咳の軽減の提供;アルファアドレナリン作動薬による男性勃起不全の治療;抗嘔吐剤による吐き気の治療;プロプラノロール等のベータブロッカーによる急性の不安の処置;麻酔剤による局所麻酔の提供;フェンタニル等の鎮痛剤による痛みの処置;およびニコチン、カフェインおよびアヘン剤等の物質に対する常用癖の治療が挙げられる。
【0057】
本フィルムによる口腔処置治療で処理することのできる歯または周囲組織を伴う望まれない生理学的状態として、口臭;歯肉炎;歯周または口腔感染;歯周病変;歯のう食または虫歯;プラーク産生微生物の根絶;歯肉炎;および他の歯周病が挙げられ、抗細菌および抗微生物物質、息のリフレッシュナー等の投与を伴うことができる。さらに、本発明は食道および周囲組織の病気の治療、例えば、胃腸炎および反射食道炎の治療にも有用でありうる。
【0058】
本フィルムを用いて投与してよい適当な歯の過敏性を減じる物質として、硝酸カリウムおよび塩化ストロンチウムが挙げられる。適当なフッ化物を含有する抗虫歯剤として、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムおよびフッ化アンモニウムが挙げられる。本フィルムを用いて投与することのできる例示的な抗歯石/抗結石剤として、ピロホスフェート、ポリホスフェート、ポリホスホネート(例えば、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホネート、1−アザシクロヘプタン−1,1−ジホスホネートおよび直鎖アルキルジホスホネート)およびそれらの塩;直鎖カルボン酸;およびクエン酸亜鉛ナトリウム;およびそれらの混合物が挙げられる。好ましいピロホスフェート塩は、ジ−アルキル金属ピロホスフェート塩、テトラ−アルカリ金属ピロホスフェート塩;およびピロリン酸二水素二ナトリウム(Na)、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、およびピロリン酸四カリウム(K)の水和または非水和形である。ピロリン酸塩はKirk & Othmer, Encyclopedia of Clinical Technology、Third Edition、Volume17,Wiley−Interscience Publishers(1982)に詳細に説明されている。Zofchakの米国特許第6,315,991号に記載のベタイン、酸化アミンおよび四級化物等の歯石を溶解する物質を包含させてよい。
【0059】
プラーク、結石または歯のう食の形成を阻害するように働く酵素剤も本フィルムを用いて投与することができる。適当な酵素として、例えば、歯の表面に吸収されて、薄膜またはプラークの最初の層を形成する唾液タンパク質を壊すプロテアーゼ;細菌細胞壁および膜の構造成分を形成するタンパク質および脂質を溶解することにより細菌を壊すリパーゼ;歯に対する細菌付着のマトリックスを形成する細菌骨格構造物を壊すデキストラナーゼ、グルカノヒドロラーゼ、エンドグリコシダーゼおよびムシナーゼ;およびカルシウムに結合する炭水化物−タンパク質複合体を壊すことにより結石の発達を妨げるアミラーゼが挙げられる。好ましい酵素として、例えば、市販のプロテアーゼ、デキストラナーゼ、グルカノヒドロラーゼ、エンドグリコシダーゼ、アミラーゼ、ムタナーゼ、リパーゼ、ムシナーゼおよびそれらの適合性のある混合物が挙げられる。
【0060】
歯および周囲組織への局所投与のために適当な栄養補充物として、ビタミン(例えば、ビタミンCおよびD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸およびビオフラボノイド);および無機物(例えば、カルシウム、リン、フッ化物、亜鉛、マンガンおよびカリウム);およびそれらの混合物が挙げられる。本発明に有用なビタミンと無機物は、Drug Facts and Comparisons(loose leaf drug information service), Wolters Kluer Company、St.Louis、Mo、1997年、pp3−17に開示されている。
【0061】
フィルムは歯または周囲組織の外見の望ましい変化を達成するか、またはさわやかな息等、社会的に望ましい特徴を使用者に付与する化粧用活性物質を含むこともできる。例えば、化粧用活性物質は息のフレシュナーまたは歯を白くするか漂白する物質であってよい。例示的な歯の白色化物質として、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化カーバミド等の過酸化物、ならびに有機化酸化物、例えばt−ブチルペルオキシドおよび2,2ビス(t−ブチルフェロキシ)プロパン等のジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよびアセチルペルオキシド等のジアシルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエートおよびt−ブチルペル−2−エチルヘキノエート等のペルエステル、ジセチルペルオキシジカルボネートおよびジシクロヘキシルペルオキシジカルボネート等のペルジカルボネート、シクロヘキサノンペルオキシドおよびメチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド、およびクメンヒドロペルオキシドおよびtert−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド;亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウムおよび亜塩素酸カリウム等の亜塩素酸金属;次亜塩素酸塩および二酸化塩素;ペルボレート;ペルカルボレート;ペルオキシ酸;およびそれらの組合せが挙げられる。さらなる白色化剤をフィルムに含めてもよい。例えば、洗浄剤等の界面活性剤を存在させてもよく、上記の白色化剤とともに働いて歯にさらに明るい外観を提供するだろう。歯を脱塩せずに白色化を最適化するために、カルシウムおよび/またはフッ化物塩をフィルムに含ませることができる。
【0062】
一部の活性物質の局所または経皮投与のため、および傷の手当において、物質の皮膚への浸透速度を高めるために浸透増強剤を組成物に配合することが必要か望ましいであろう。適当な増強剤として、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシド(C10MSO)等のスルホキシド;ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)として市販されている)およびジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;ラウリン酸ナトリウム、硫酸ラウリルナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンズアルコニウム、ポロキサマー(231、182、184)、Tween(20、40、60、80)およびレシチン(米国特許第4,783,450号);1−置換アザシクロヘプタン−2−オン、特に、1−n−ドデシルシクロアザ−シクロヘプタン−2−オン(商品名Azone(登録商標)、Nelson Research & Development Company、Irvine、Calif;米国特許第3,989,816号、同第4,316,893号、同第4,405,616号および同第4,557,934号を参照);エタノール、プロパノール、オクタノール、デカノール、ベンジルアルコール等のアルコール;ラウリン酸、オレイン酸および吉草酸等の脂肪酸;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、プロピオン酸メチルおよびオレイン酸エチル等の脂肪酸エステル;プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML;例えば、米国特許第4,568,343号を参照)等のポリオールおよびそれらのエステル;尿素、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン等のアミドおよび他の窒素含有化合物;テルペン;アルカノン;および有機酸、特にサリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸およびコハク酸が挙げられる。2種類以上の増強剤の混合物を用いてもよい。
【0063】
典型的には、活性物質を除外したフィルム組成物は、約0〜50重量%の急速に溶解する材料、好ましくは約0〜40重量%および最も好ましくは約10〜40重量%;約1〜99重量%の親水性ポリマー、好ましくは約30〜70重量%、および最も好ましくは約40〜60重量%;および約0〜40重量%の補足的なオリゴマー、好ましくは約10〜40重量%、さらに好ましくは約18〜30重量%を含むことができる。補足的なオリゴマーが存在しない実施形態に関しては、活性物質を除外したフィルム組成物は、約0〜50重量%の急速に溶解する材料、好ましくは約0〜40重量%および最も好ましくは約10〜40重量%;約30〜70重量%の親水性ポリマー、好ましくは約40〜60重量%を含むことができる。
【0064】
得られたフィルムの厚さは、ほとんどの目的のために、少なくとも1mmである。典型的には、フィルムの厚さは、フィルムに対して積層してよいリリースライナーや他の基板を含まない場合で、約100mm〜約200mmの範囲である。当業者により理解されるように、多様な成分の濃度を変えることにより、フィルム溶解時間および活性物質放出プロフィールを望むように変更してもよい。
【0065】
フィルムは望ましい形状(例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、異形等)に切断することができる。一般的に、フィルムは約1cm〜約6cmの範囲内の表面積を持つが、それよりも大きいまたは小さいサイズを用いて、特定の有用性または医薬品充填の必要性の便宜をはかることができる。
【0066】
本発明の組成物は一般的に溶融押出し可能でもあるために、単純なホットメルト配合および押出し法を、水を加えて、または加えずに用いて調製してよい。組成物の成分を計り取り、次に、例えば、BrabenderまたはBaker Perkins Blender(ただし、高温、例えば約100〜170℃、さらに典型的には90〜140℃では通常は必ずしも必要ではない)を用いて、混合する。溶媒または水は必要であれば加えてよい。得られた組成物を一軸または二軸押出し機を用いて押出すか、またはペレット化することができる。もしくは、組成物の成分を一度で溶融し、次に押出し前に混合できる。
【0067】
好ましくは、本発明のフィルムは非粘着性であり、粘膜接着性がない。そのような実質的に非粘着性の組成物の好ましい調製方法は溶液流延である。溶液流延は、フィルム組成物の成分(急速に溶解する材料、フィルム形成バインダー、活性物質、および含ませる他の成分)を適当な溶媒中で混合することを伴う。成分が水溶性である場合、水性溶媒が用いられる。しかし、他の揮発性溶媒、例えば、酢酸エチルまたは低級アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)または低級アルカノール/水混合物を、典型的には約35%(w/v)〜約60%(w/v)の範囲の濃度で用いることもできる。そのような溶媒は、水不溶性材料(すなわち、20℃で5重量%未満の水溶性を有する物質)を用いて製造する場合に特に有用である。溶液の調製後に、混合物を上記のようにリリースライナー等の基板上に流延する。混合と流延の両方が好ましくは周囲温度で実施される。フィルムを被覆した基板を次に加熱して溶媒を除去する。水性溶媒に関しては約70℃〜約120℃の範囲内、非水性溶媒に関しては約50℃〜約100℃の範囲内の温度で、約1〜4時間の範囲の時間、最適には約2時間、蒸発が起こる。
【0068】
一実施形態において、クエン酸や重炭酸ナトリウム等の材料は組成物に含まれ、それら材料の組合せは、乾燥時にフィルムが泡立ち、多孔性となるように流延溶液中で発泡性効果を提供する。
【0069】
フィルムが溶解して活性物質を放出する速度は、フィルムが適用される身体表面の微小環境、フィルムの厚さ、フィルムの組成物、温度、活性物質および添加剤の大きさおよび化学的な性質等の幾つかの因子の関数である。本発明において、フィルムは典型的には体の湿った表面の適用の10分以内に溶解する。好ましくは、溶解速度は30秒間〜10分間の範囲にある。
【0070】
本発明のフィルムは、処方中にフィルムの他の成分と組み合わせるか、またはその後に配合してよい1つ以上の慣用の添加剤を含んでもよい。任意の添加物として、限定するものではないが、増量剤、pH調節剤、粘着付与剤、粘着防止剤、崩壊剤、抗菌剤、抗酸化剤、防腐剤、着色剤、風味剤およびそれらの組合せが挙げられる。
【0071】
吸着増量剤は、フィルムが皮膚上または他の身体表面上に存在する場合、水和度を調節するために有利に配合されるだろう。そのような増量剤として、微結晶セルロース、タルク、ラクトース、カオリン、マンニトール、コロイドシリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、疎水性デンプン、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、織紙または不織紙および綿材料を挙げることができる。他の適当な増量剤は不活性、すなわち実質的に非吸着性であり、例えば、ポリエチレン類、ポリプロピレン類、ポリウレタンポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステル類およびポリエステルコポリマー、ナイロンおよびレーヨンが挙げられる。好ましい増量剤はコロイドシリカ、例えば、Cab−O−Sil(登録商標)(Cabot Company、Boston、MA)である。
【0072】
pH調節剤として有用な化合物として、グリセロール緩衝液、クエン酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液およびクエン酸−リン酸塩緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。緩衝液システムは、例えば、本発明のフィルムのpHが、水分吸着の際に、個人の身体表面のpHに一致することを確実にするために有用である。
【0073】
特定の適用がフィルムを身体表面に付着することを必要とする場合、フィルムを接着性とするために粘着付与剤を含めることもできる。例示的な粘着付与材料として、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン−イソプレンコポリマー、ポリスチレン−ブタジエンコポリマーおよびネオプレン(ポリクロロプレン)等の粘着ゴムが挙げられる。ここでの適当な粘着付与剤の他の例は、感圧性接着剤、例えば、ロジン、ロジンエステル、ポリテルペンおよび水素化芳香性樹脂とともに慣用的に用いられる粘着付与剤である。接着性を低減または排除しなければならない実施形態では、慣用の粘着防止剤を用いてもよい。適当な粘着防止剤として、架橋ポリ(ビニルピロリドン)、シリカゲル、ベントナイト等が挙げられる。
【0074】
ここでの好ましい増粘剤は天然化合物またはそれらの誘導体であり、例えば、コラーゲン;ガラクトマンナン;デンプン;デンプン誘導体および加水分解物;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;コロイドケイ酸;およびラクトース、サッカロース、フラクトースおよびグルコース等の糖が挙げられる。ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等の合成増粘剤を用いてもよい。
【0075】
抗菌剤を加えてもよい。抗菌剤は、病原菌を壊し、それらの病原作用を妨げ、および/またはそれらの成長を阻害することにより機能する。抗菌剤の望ましい性質として、(1)細菌、ウイルスおよび真菌を不活性化する能力、(2)適用の数分内で効果があり、最初の適用後に長く効果のある能力、(3)費用、(4)組成物の他の成分との適合性、(5)周囲温度での安定性、および(6)毒性の欠如が挙げられるが、これらに限定されない。抗酸化剤は抗菌剤の代わり、またはそれに加えて本発明の組成物に配合してよい。抗酸化剤は酸化を阻害するために、酸化による調製物の品質低下を防止する物質である。例えば、限定するものではない適当な抗酸化剤として、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、アスコルビン酸ナトリウム、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒドおよびメタ重亜硫酸ナトリウムおよび当業者に知られている他のものが挙げられる。他の適当な抗酸化剤として、例えば、ビタミンC、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンEおよびその誘導体、没食子酸プロピル、亜硫酸誘導体および当業者に公知の他のものが挙げられる。
【0076】
本フィルムに配合できる他の防腐剤として、例えば、p−クロロ−m−クレゾール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、クロロブタノール、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、塩化ベンゾアルコニウム、塩化セチルピリジニウム、クロロヘキシジンジアセテートまたはグルコネート、エタノールおよびプロピレングリコールが挙げられる。
【0077】
実際問題として、フィルムはその製品をそのパッケージから取り出し、リリースライナー(含まれている場合)を除去し、フィルムを湿った環境、例えば、舌の上または下にそれが侵食するまで置くことにより簡単に用いることができる。ここに記載のフィルムは、それらの意図する使用、望まれる医薬品充填の量、侵食の長さ、医薬品投与の長さ等に基づきながら多様なサイズで提供される。望むなら、半透明のフィルムを提供することができ、他人には目立たないか気づかれずに配置される。
【0078】
本発明の実施は他に示されなければ、当業者の技量内のポリマー化学、接着剤処方および医薬品投与の慣用の技術を用いるだろう。そのような技術は文献に十分に説明されている。
【0079】
本発明はその好ましい具体的な実施形態と関連させて説明してきたが、上記の説明、ならびに下記の実施例は本発明の範囲を例示するものであって限定するものではないことを理解されたい。他の特徴、利点および改良は本発明に関する当業者にとって明らかであろう。
【0080】
下記の略号と商品名が実施例で用いられる:
HPC: ヒドロキシプロピルセルロース;分子量95,000
PEG400: ポリエチレングリコール400
PEG540: ポリエチレングリコール540
PG: プロピレングリコール
PVK K90: Kollidon(登録商標)90Fポリビニルピロリドン(BASF)
PVP VA64: Kollidon(登録商標)VA64ポリビニルピロリドン(BASF)。
【実施例】
【0081】
(急速に溶解するフィルムの調製)
表1に示される成分を含むフィルム組成物は、溶液流延により調製した。
【0082】
【表1】

フィルムの多様な特性が評価され、それらの結果を表2に示す。口の中の「崩壊時間」とはフィルムがその物理的な統合性を失ったときに見られた時間の長さをいう。「溶解時間」とは完全な溶解の時間の長さをいう。
【0083】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質の身体表面への投与のためのフィルムであって、以下:
(a)親水性ポリマーを含むフィルム形成バインダー;
(b)急速に溶解するポリマー材料;および
(c)有効量の活性物質、
を含み、
該フィルム形成バインダーおよび該急速に溶解する材料が、湿った身体表面に対する該フィルムの適用後の10分以内に該フィルムの溶解を容易するのに効果的である、フィルム。
【請求項2】
前記親水性ポリマーが、N−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルモノマーのエステル、ビニルアミドモノマー、ヒドロキシビニルモノマーおよびこれらの組合せから選択されるモノマーに由来する繰返し単位を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、置換および非置換のアクリル酸ポリマーおよび置換および非置換のメタクリル酸ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ならびにこれらのコポリマーおよびこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
前記親水性ポリマーが、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)ならびにこれらのコポリマーおよびこれらの混合物から選択される、請求項3に記載のフィルム。
【請求項5】
前記親水性ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)である、請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
前記親水性ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)ホモポリマーである、請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
前記ポリ(N−ビニルラクタム)が、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタムおよびこれらの混合物から選択される、請求項6に記載のフィルム。
【請求項8】
前記ポリ(N−ビニルラクタム)がポリビニルピロリドンである、請求項7に記載のフィルム。
【請求項9】
前記ポリ(N−ビニルラクタム)がポリビニルカプロラクタムである、請求項7に記載のフィルム。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが約100,000〜2,000,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項3に記載のフィルム。
【請求項11】
前記親水性ポリマーが約500,000〜1,500,000の範囲の数平均分子量を有する、請求項10に記載のフィルム。
【請求項12】
前記フィルム形成バインダーが前記親水性ポリマーを可塑化し得る可塑剤をさらに含む、請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
前記可塑剤が、フタル酸ジアルキル、フタル酸ジシクロアルキル、フタル酸ジアリール、混合フタル酸アルキル−アリール、リン酸アルキル、リン酸アリール、クエン酸アルキル、クエン酸エステル、アジピン酸アルキル、酒石酸ジアルキル、セバシン酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、グリコール酸アルキル、グリセロール酸アルキル、グリコールエステル、グリセロールエステルおよびこれらの混合物から選択される、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記可塑剤が、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−イソプロピル、フタル酸ジアミル、フタル酸ジカプリル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)、アジピン酸ジヘキシル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジノニル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリンモノラクテートジアセテート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールジプロピオネートおよびこれらの混合物から選択される、請求項13に記載のフィルム。
【請求項15】
前記可塑剤が、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチルおよびクエン酸トリブチルから選択される、請求項14に記載のフィルム。
【請求項16】
前記可塑剤が各末端に官能基を有する二官能性の直鎖オリゴマーであり、該末端官能基のそれぞれが前記親水性ポリマーに非共有結合し得る、請求項12に記載のフィルム。
【請求項17】
前記二官能性の直鎖オリゴマーが、約45〜約800g/モルの範囲の分子量を有する、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記二官能性の直鎖オリゴマーが、約45〜約600g/モルの範囲の分子量を有する、請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
前記末端官能基がヒドロキシル基、カルボキシ基およびアミノ基から選択される、請求項18に記載のフィルム。
【請求項20】
前記末端官能基がヒドロキシル基およびカルボキシ基から選択される、請求項19に記載のフィルム。
【請求項21】
前記末端官能基がヒドロキシル基である、請求項20に記載のフィルム。
【請求項22】
前記親水性ポリマーの前記可塑剤に対する重量比が約1:10〜約10:1の範囲内である、請求項21に記載のフィルム。
【請求項23】
前記親水性ポリマーの前記可塑剤に対する重量比が約1.5:1〜約3:1である、請求項22に記載のフィルム。
【請求項24】
前記親水性ポリマーの補足的オリゴマーに対する重量比が約2:1である請求項23に記載のフィルム。
【請求項25】
前記フィルム形成バインダーが、前記親水性ポリマーを可塑化し得る可塑剤をさらに含む、請求項4に記載のフィルム。
【請求項26】
前記可塑剤が各末端に官能基を有する二官能性の直鎖オリゴマーであり、該末端官能基のそれぞれが前記親水性ポリマーに非共有結合し得る、請求項25に記載のフィルム。
【請求項27】
前記二官能性の直鎖オリゴマーが、約45〜約800g/モルの範囲の分子量を有する、請求項26に記載のフィルム。
【請求項28】
前記二官能性の直鎖オリゴマーが、約45〜約600g/モルの範囲の分子量を有する、請求項27に記載のフィルム。
【請求項29】
前記末端官能基がヒドロキシル基、カルボキシ基およびアミノ基から選択される、請求項28に記載のフィルム。
【請求項30】
前記末端官能基がヒドロキシル基およびカルボキシ基から選択される、請求項29に記載のフィルム。
【請求項31】
前記末端官能基がヒドロキシル基である、請求項30に記載のフィルム。
【請求項32】
前記親水性ポリマーの前記可塑剤に対する重量比が約1:10〜約10:1の範囲内である、請求項25に記載のフィルム。
【請求項33】
前記親水性ポリマーの前記可塑剤に対する重量比が約1.5:1〜約3:1である、請求項32に記載のフィルム。
【請求項34】
前記親水性ポリマーの補足的オリゴマーに対する重量比が約2:1である、請求項33に記載のフィルム。
【請求項35】
前記急速に溶解するポリマー材料が、オリゴ糖、多糖、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸、寒天およびベントナイトから選択される、請求項1に記載のフィルム。
【請求項36】
前記急速に溶解するポリマー材料が、オリゴ糖および多糖から選択される、請求項35に記載のフィルム。
【請求項37】
前記急速に溶解するポリマー材料が、約1,000〜300,000の範囲内の分子量を有するセルロース誘導体から選択される、請求項36に記載のフィルム。
【請求項38】
前記急速に溶解するポリマー材料がマルトデキストリンである、請求項37に記載のフィルム。
【請求項39】
前記活性物質が薬理学的に活性な物質であり、前記有効量が治療有効量である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項40】
前記活性物質が局所活性物質である、請求項39に記載のフィルム。
【請求項41】
前記活性物質が全身活性物質である、請求項39に記載のフィルム。
【請求項42】
前記治療有効量が最大300mg/cmである、請求項39に記載のフィルム。
【請求項43】
前記治療有効量が約100μg/cm〜200mg/cmの範囲内である、請求項42に記載のフィルム。
【請求項44】
前記治療有効量が約1mg/cm〜100mg/cmの範囲内である、請求項43に記載のフィルム。
【請求項45】
前記活性物質が前記親水性ポリマーに非共有結合する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項46】
前記活性物質が前記親水性ポリマーに対して水素結合により結合する、請求項45に記載のフィルム。
【請求項47】
前記活性物質が前記フィルム全体にわたって分散させた別個の粒子中に含まれる、請求項1に記載のフィルム。
【請求項48】
湿った身体表面に対する前記フィルムの適用後の約5〜30秒以内に溶解する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項49】
湿った身体表面に対する前記フィルムの適用後約30秒未満で溶解する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項50】
少なくとも1mmの厚さを有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項51】
約100mm〜200mmの範囲の厚さを有する、請求項50に記載のフィルム。
【請求項52】
さらに、増量剤、柔軟剤、粘着防止剤、抗酸化剤、抗菌剤、防腐剤、pH調節剤および着色剤から選択される少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項53】
前記少なくとも1つの添加剤が柔軟剤を含む、請求項1に記載のフィルム。
【請求項54】
前記柔軟剤が親水性界面活性剤である、請求項53に記載のフィルム。
【請求項55】
請求項1のフィルムを患者の湿った身体表面に置き、該フィルムを溶解させる工程を包含する、活性物質の患者への投与のための方法。
【請求項56】
前記患者の湿った身体表面が粘膜組織である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記湿った身体表面が皮膚である、請求項56に記載の方法。

【公表番号】特表2007−519745(P2007−519745A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551521(P2006−551521)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/002873
【国際公開番号】WO2005/074894
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(503360296)コリウム インターナショナル, インコーポレイテッド (10)
【出願人】(503013358)エイ.ブイ.トップチーブ インスティテュート オブ ペトロケミカル シンセシス (9)
【Fターム(参考)】