説明

活性酸素消去剤及びこれを含有する組成物

【課題】優れた活性酸素消去作用を有し、且つ生体内への摂取効率のよい活性酸素消去剤及びこれを含有する組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】カメリア・シネンシス(ツバキ科の茶に属するアフリカ東部ケニア地方原産の植物)を調製(例えば葉又は茎を揉捻、発酵させる)又は抽出したものを活性酸素消去剤とし、また、これを常法に従って配合して組成物(飲料用茶葉、飲料等の食品、浴用剤、洗浄組成物等)とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ツバキ科の茶に属するアフリカ東部ケニア地方原産の植物であるカメリア・シネンシスの調製物又は抽出物からなる活性酸素消去剤及びこれを含有する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】生体の病気や老化の原因の一つとして、近年「活性酸素」の作用が注目されている。活性酸素は、酸素ラジカルとも言われるもので、空気中に含まれる通常の酸素よりはるかに高い反応性を有するため、細胞を形成する蛋白質、脂質、核酸等の物質と容易に反応してそれらを酸化し、生体細胞や臓器等の組織に損傷を与えたり、過酸化脂質等の有害な物質を蓄積させたりする作用があり、それが病気や老化の原因をつくるのではないかと考えられている。
【0003】活性酸素が関与する疾患としては、動脈硬化、腫瘍(癌)、脳血管障害(脳卒中)、虚血性心疾患(心筋梗塞)、老人性痴呆、白内障、火傷、各種炎症、血流障害、ストレス性潰瘍、アトピー性皮膚炎、皮膚等の老化、パラコート中毒、パーキンソン病等が挙げられる。たとえば、動脈硬化や心臓病の原因として身体に悪影響を及ぼすものの中に、活性炭素により酸化されたコレステロール(リポ蛋白)があると考えられている。また、アルツハイマー型痴呆の場合に脳の神経細胞にある種の蛋白質が沈着することがわかっているが、この沈着にも活性酸素が関わっていると考えられている。
【0004】これに対し、生体内における活性水素に対する防御として、血液中のβ−カロチン、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、尿酸等が、活性酸素を消去する働きをすることが知られている。しかし、これらの活性酵素消去作用は弱く、また食物からの摂取にも限界がある。
【0005】一方、生体内の酵素の一つであるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)が活性酸素を分解する作用を有し、特に老化を抑制する効果が高いことが知られている。しかし、このような酵素は単独での入手が困難であり、また効率よく摂取する方法もない。
【0006】SODを食品から取り入れる手段の一つとして、ルイボスティーの名で知られるようになったアスパラサス・リネアリスの葉又は茎を発酵茶に加工したものが飲料用として市販されるようになった。しかし、食品添加物、合成洗剤、化学肥料等によって、より多くの活性酸素が体内に取り込まれ易い現代の環境を考慮すれば、更に積極的に活性酸素消去効果の高い物質を摂取したいという要望が高まってきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れた活性酸素消去作用を有し、且つ生体内への摂取効率のよい活性酸素消去剤及びこれを含有する組成物を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の地域で育つ茶の一種であるカメリア・シネンシスの葉等の調製物が、優れた活性酸素消去作用を有することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】すなわち、本発明は、カメリア・シネンシスの調製物又は抽出物を活性酸素消去剤とし、それを種々の組成物に含有させることを特徴とするものである。ここで、前記カメリア・シネンシスの調製物は、好ましくはカメリア・シネンシスの葉又は茎を揉捻する揉捻工程と、前記揉捻工程で得られる揉捻物を発酵させる発酵工程とを含む工程により得られるものであり、前記カメリア・シネンシスの抽出物は、好ましくはカメリア・シネンシスの葉又は茎を水で抽出して得られるものである。
【0010】また、前記組成物は、好ましくはカメリア・シネンシスの調製物を含む飲料用茶葉であり、前記飲料用茶葉は、例えば前記カメリア・シネンシスの調製物とアスパラサス・リネアリスの調製物とを1:4〜3:1(重量比)の割合で混合してなる混合茶葉であってもよい。更に、前記組成物は、カメリア・シネンシスの抽出物を含む飲料、浴用剤、洗浄性組成物、化粧料、食品添加剤等であってもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態を説明する。本発明の活性酸素消去剤は、カメリア・シネンシスの調製物からなる。カメリア・シネンシスは、ツバキ科の茶( Thea sinensis )に属する植物のうち、アフリカ東部のケニア原産の品種であって無農薬栽培により得られるハーブ茶の一種であり、アイボリティーとも呼ばれている。カメリア・シネンシスは、活性酸素消去作用を有する成分を含んでおり、その葉又は茎を揉捻等の処理により調製して、また、抽出処理により前記成分を含む抽出物を取り出して、本発明の活性酸素消去剤として用いることができる。カメリア・シネンシスは、原産地から輸出されており、日本国内でも容易に入手することができる。
【0012】本発明の調製物は、カメリア・シネンシスの葉、茎、根等の任意の部位から活性酸素消去作用を有する成分を取り出しやすい状態に処理したものであり、例えばこれら任意の部位を細かく切り刻んだり、すりつぶしたりしたものであってもよい。このうち、本発明の調製物として好ましいのは、カメリア・シネンシスの葉又は茎を粉砕して揉捻する揉捻工程と、前記揉捻工程で得られる揉捻物を発酵させる発酵工程とを含む工程により得られるものである。すなわち、カメリア・シネンシスの葉または茎、好ましくは葉を採取して数時間〜数日天日干し等により水分を蒸発させたものを、細胞を破壊して酸化酵素を働かせるために、圧を加えながら揉む(揉捻工程)。次いで、この揉まれた葉を発酵床の上で高湿度の下、20〜30℃に保持して発酵させる(発酵工程)。
【0013】この揉捻工程と発酵工程の条件は、茶葉の目的に応じて適宜選ぶことができ、例えば紅茶の製法のように十分発酵させるために、揉捻工程と発酵工程を比較的長時間行うこともできる。あるいはウーロン茶の製法のように、軽く揉捻して部分的に発酵させるだけに止めることもできる。この発酵した葉を、その後70〜80℃程度に加熱したかまどに入れて発酵を止め、天日等で乾燥させることにより、前記調製物が得られる。
【0014】カメリア・シネンシスの抽出物は、上述したカメリア・シネンシスの調製物を水に浸漬させることにより抽出することができる。水の温度は特に限定はなく、例えば10〜100℃の範囲で抽出可能である。抽出時間は温度によっても異なるが、例えば30〜40℃程度の風呂で浴用剤として用いる場合などには10分〜1時間程度、より好ましくは15分〜30分程度で十分抽出される。また、沸騰した水(100℃)中であれば、好ましくは0.5〜10分、より好ましくは0.5〜5分程度沸騰させれば十分抽出される。
【0015】その後、抽出液から抽出残渣を除いて、そのままジュース等の飲料として用いるか、又は公知の方法で濃縮、噴霧乾燥、若しくは凍結乾燥等の処理を行ってもよい。
【0016】本発明の活性酸素消去剤を含む組成物は、上記活性酸素消去剤を常法に従って配合したものであり、例えば、食品、浴用剤、洗浄性組成物等が挙げられる。本発明の活性酸素消去剤を食品に配合する場合は、種々の食品へ、その食品が通常用いられている任意成分と共に配合することができる。例えば、前記カメリア・シネンシスの調製物を飲料用茶葉としてそのまま用いることができる。また、前記カメリア・シネンシスの抽出物をそのままジュースやドリンク剤等の飲料として用いることができる。更に、前記抽出物の濃縮品、噴霧乾燥等によって粉末状にした粉末茶、凍結乾燥したインスタント茶等として利用することができる。
【0017】また、ケーキ、ビスケット、キャンディー、等のお菓子類、パンなどの主食や健康食品、ダイエット食品、化粧料等に配合することもできる。また、本発明の活性酸素消去剤を、それらに添加するための食品添加剤、改質剤等に含めて使用することもできる。
【0018】本発明の活性酸素消去剤は、細胞や組織の劣化の原因となる余剰活性酸素を消し、老化を防ぐ作用があるSODを含むと考えられるため、それを含む食品を摂取することにより、効率よくSODを体内に取り込むことが可能となり、その結果、便秘症、アレルギー等の防止や、美肌・ダイエット等の美容に顕著な効果を発揮する。
【0019】尚、飲料用茶葉として用いる場合は、ルイボスティーの名で知られるようになったアスパラサス・リネアリス(豆科に属する針葉樹であって、南アフリカセダルバーグ地方原産の植物)の葉又は茎を加工した発酵茶葉を配合して混合茶葉とするのが好ましい。その配合比は、本発明の調製物:アスパラサス・リネアリス=1:4〜3:1(重量比)、好ましくは1:3〜1:1(重量比)である。本発明のカメリア・シネンシスの調製物は、味に渋みがあるが、このような配合をすることにより、意外なことに、両者各々単独の場合に比べて、格段にまろやかな味わいを有しミネラルバランスにも優れた飲料が得られる。これは、本発明のカメリア・シネンシスとアスパラサス・リネアリスが共にアフリカ産であって植物同士相性が良いことにもよるのではないかと考えられる。
【0020】本発明の活性酸素消去剤を浴用剤に配合する場合は、前記カメリア・シネンシスの調製物を直接浴槽に付けて活性酸素消去作用を有する成分が抽出される用にする方法や、前記カメリア・シネンシスの抽出物の液状又は濃縮乾固等により固体としたものを配合してもよい。これにより、アレルギーや美肌に効果がある。
【0021】本発明の活性酸素消去剤を洗浄性組成物に配合する場合は、例えば台所用洗剤、洗濯洗剤、シャンプー、リンス、石鹸等に、前記カメリア・シネンシスの調製物を直接、若しくは前記カメリア・シネンシスの抽出物の液状又は濃縮乾固等により固体としたものを配合することができる。本発明の活性酸素消去剤には油を分解するなどの洗浄作用があり、油汚れを落とす力がある。
【0022】本発明の活性酸素消去剤及びこれを含有する組成物は、その有効成分であるカメリア・シネンシスの調製物又は抽出物の優れた活性酸素消去作用により、上述したように、活性酸素が関与しているとされる炎症、老人性痴呆、真菌高速等の虚血性疾患、アレルギー性疾患、肝臓障害、リューマチなど様々な疾病や皮膚などの生体老化の予防、改善に対して有効に働くものである。
【0023】
【実施例】以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0024】<実施例1>カメリア・シネンシスの葉部を採取して粉砕し、天日干しして水分を除去したものを、揉捻し、次いで発酵させ、最後に乾燥させて得られる本発明のカメリア・シネンシスの調製物(茶葉)について、種々の分析試験項目に関して分析した。結果を表1に示す。また、アスパラサス・リネアリスの葉部を同様にして揉捻、発酵工程を経て茶葉とし、各分析試験項目に関して分析した。結果を表2に示す。また、主な項目について両者を比較した結果を表す棒グラフを、図1に示す。
【0025】
【表1】


【0026】
【表2】


【0027】この結果から、本発明のカメリア・シネンシスの調製物の活性酸素消去作用は、従来から優れた活性酸素消去作用を有するとして知られているアスパラサス・リネアリスの調製物と比べても数百倍の強さを示す。また、ミネラルバランスにおいても優れている。
【0028】<実施例2>実施例1と同様にして調製したカメリア・シネンシスの茶葉2gに対して沸騰水1リットルの割合で抽出し、カメリア・シネンシスの抽出液を得た。これをパネラー8人が20日〜40日程度のみ続けた後の結果を、表3に示す。
【0029】
【表3】


【0030】<実施例3>実施例1と同様にして調製したカメリア・シネンシスの茶葉2gを袋に入れて、これを前記実施例2と同じパネラー8人が入浴剤として風呂に入れて使用した。結果を、表4に示す。
【0031】
【表4】


【0032】
【発明の効果】本発明の活性酸素消去剤は、従来のものより格段に優れた活性酸素消去作用を有し、且つ生体内への摂取効率がよいため、これを摂取し続けることにより、活性酸素が関与して引き起こされると思われる種々の疾病や便秘症、アレルギー等の予防、治療に効果がある。また、老化防止や美肌・ダイエット等に対しても優れた効果を発揮する。よって、これを飲料等の健康食品や浴用剤に有効に利用することができる。更に、脂肪を分解する能力があることから、洗浄剤等にも利用することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における棒グラフを示す図である。
【符号の説明】
(1)・・・活性酸素消去作用の比較結果
(2)・・・タンパク質の比較結果
(3)・・・カルシウムの比較結果
(4)・・・鉄分の比較結果
(A)・・・本発明のカメリア・シネンシスの調製物
(B)・・・アスパラサス・リネアリスの調製物

【特許請求の範囲】
【請求項1】カメリア・シネンシスの調製物又は抽出物からなる、活性酸素消去剤。
【請求項2】カメリア・シネンシスの調製物が、カメリア・シネンシスの葉又は茎を揉捻する揉捻工程と、前記揉捻工程で得られる揉捻物を発酵させる発酵工程とを含む工程により得られるものである、請求項1記載の活性酸素消去剤。
【請求項3】カメリア・シネンシスの抽出物が、カメリア・シネンシスの葉又は茎を水で抽出して得られるものである、請求項1記載の活性酸素消去剤。
【請求項4】請求項1記載の活性酵素消去剤を含有する組成物。
【請求項5】前記組成物が、カメリア・シネンシスの調製物を含む飲料用茶葉である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】前記飲料用茶葉が、前記カメリア・シネンシスの調製物と、アスパラサス・リネアリスの調製物とを、1:4〜3:1(重量比)の割合で混合してなる混合茶葉である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】前記組成物が、カメリア・シネンシスの抽出物を含む飲料である、請求項4記載の組成物。
【請求項8】前記組成物がカメリア・シネンシスの調製物又は抽出物を含む浴用剤である、請求項4記載の組成物。
【請求項9】前記組成物がカメリア・シネンシスの調製物又は抽出物を含む洗浄性組成物である、請求項4記載の組成物。
【請求項10】前記組成物がカメリア・シネンシスの調製物又は抽出物を含む化粧料である、請求項4記載の組成物。
【請求項11】請求項1記載の活性酸素消去剤を含有する食品用添加剤。
【請求項12】請求項1記載の活性酸素消去剤を含有する改質剤。

【図1】
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