説明

活物質の製造方法、電極及びリチウムイオン二次電池

【課題】 ドーピング効率に優れ、不可逆容量が十分に低減された活物質の製造方法を提供すること。
【解決手段】 エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒と、リチウム塩と、金属リチウムと、活物質とを含む混合物中で、上記活物質と上記金属リチウムとを電気的に接触させることにより、上記活物質にリチウムをドープするドーピング工程を有する、リチウムがドープされた活物質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質の製造方法、電極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源として有力な候補ともなっている。そして、近年の携帯電子機器の小型化、高機能化に伴い、これらの電源となるリチウムイオン二次電池への更なる高容量化が期待されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の容量は主に電極の活物質に依存する。負極活物質には、一般に黒鉛が利用されているが、上記の要求に対応するためにはより高容量な負極活物質を用いることが必要である。そのため、黒鉛の理論容量(372mAh/g)に比べてはるかに大きな理論容量(4210mAh/g)をもつ金属シリコン(Si)が注目されている。
【0004】
一方、金属シリコンよりもサイクル特性が優れる酸化シリコン(SiO)の使用も検討されている。しかし、酸化シリコンは金属シリコンに比べ不可逆容量が大きい。充放電に寄与するリチウムの量は正極中のリチウム量で一義的に決定されるため、負極における不可逆容量の増加は電池全体の容量低下に繋がる。
【0005】
この不可逆容量を低減するため、充放電を開始する前にあらかじめ金属リチウムを負極に接触させ、リチウムを負極にドープする技術(Liプレドープ)が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。特許文献1には、リチウムを含む膜を負極に形成することでリチウムを負極にドープする方法が開示されている。また、特許文献2には、リチウム粒子を負極活物質層中に含有させることでリチウムを負極にドープする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−98151号公報
【特許文献2】特開2010−160986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された方法では、ドーピング効率に劣り、不可逆容量の低減が十分ではないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ドーピング効率に優れ、不可逆容量が十分に低減された活物質の製造方法、電極及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒と、リチウム塩と、金属リチウムと、活物質とを含む混合物中で、上記活物質と上記金属リチウムとを電気的に接触させることにより、上記活物質にリチウムをドープするドーピング工程を有する、リチウムがドープされた活物質の製造方法を提供する。
【0010】
かかる製造方法によれば、溶媒及びリチウム塩からなる電解液の存在下で活物質と金属リチウムとを電気的に接触させることにより、活物質と金属リチウムとの間で電池反応を生じさせることができ、活物質にリチウムを効率良くドープすることができる。これにより、不可逆容量が十分に低減された活物質を得ることができる。なお、混合物中にリチウム塩が存在しない場合には電池反応が生じ難く、活物質にリチウムを効率良くドープすることができない。
【0011】
本発明の製造方法において、上記リチウム塩はLiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCBO、(CSONLi、及び、(FSONLiからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらのリチウム塩を用いることにより、ドーピング工程における活物質へのリチウムのドーピング効率をより向上させることができ、不可逆容量がより十分に低減された活物質を得ることができる。
【0012】
本発明の製造方法における上記ドーピング工程において、上記混合物に超音波振動を加えることにより、上記電極活物質と上記金属リチウムとを電気的に接触させることが好ましい。超音波振動を加えることで、活物質と金属リチウムとを効率良く接触させることができる。そのため、ドーピング工程における活物質へのリチウムのドーピング効率をより向上させることができ、不可逆容量がより十分に低減された活物質を得ることができる。
【0013】
本発明の製造方法において、上記金属リチウムは、LiCOにより被覆されたリチウム金属粉末であることが好ましい。このリチウム金属粉末は、LiCOにより被覆されていることで変質が抑制され、取り扱い性に優れる。LiCOにより被覆されたリチウム金属粉末は、露点マイナス40℃程度のドライルームで取り扱うことが可能であるため、活物質の製造を容易に行なうことができる。
【0014】
また、本発明の製造方法において、上記金属リチウムはリチウム金属箔であってもよい。
【0015】
本発明はまた、集電体と、該集電体上に設けられた、上記本発明の製造方法により製造されたリチウムがドープされた活物質を含む活物質層と、を備える電極を提供する。かかる電極は、リチウムがドープされた活物質を含む活物質層を備えることにより、不可逆容量が十分に低減されたものとなる。
【0016】
本発明はさらに、上記本発明の電極を備えるリチウムイオン二次電池を提供する。かかるリチウムイオン二次電池は、上記本発明の電極を備えることにより、不可逆容量が十分に低減されたものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ドーピング効率に優れ、不可逆容量が十分に低減された活物質の製造方法、電極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
(活物質の製造方法)
本実施形態の活物質の製造方法は、リチウムがドープされた活物質(以下、場合により「リチウムドープ活物質」という)を製造するための方法であって、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒と、リチウム塩と、金属リチウムと、活物質とを含む混合物中で、上記活物質と上記金属リチウムとを電気的に接触させることにより、上記活物質にリチウムをドープするドーピング工程を有する方法である。
【0021】
上記混合物中、上記溶媒及び上記リチウム塩からなる溶液は、リチウムイオン二次電池における電解液に相当するものである。溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる群より選択される少なくとも一種である。このような溶媒を用いることにより、ドーピング工程において活物質と金属リチウムとの間での電池反応を容易に生じさせることができる。また、上記溶媒の中でも、電池反応をより促進させる観点から、ECとDECとの混合溶媒を用いることが好ましい。
【0022】
リチウム塩としては特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解質として用いられるリチウム塩を用いることができる。例えば、リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiTaF、LiAlCl、Li10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCFSO、(CFSONLi、(CSONLi、LiCSO、LiCFCO、(CFCONLi、LiCSO、LiC17SO、(CSO)(CFSO)NLi、(FSO)(CFSO)NLi、((CFCHOSONLi、(CFSOCLi、(3,5−(CFBLi、LiCF、LiCBO、(FSONLi等の有機酸陰イオン塩等を用いることができる。これらの中でも、ドーピング工程における活物質へのリチウムのドーピング効率をより向上させることができることから、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCBO、(CSONLi、及び、(FSONLiが好ましく、LiBF、LiCBO、(CSONLi、及び、(FSONLiがより好ましく、LiBFが最も好ましい。LiBFは他のリチウム塩に比べて吸湿性が低いため、金属リチウムを失活させることがなく好適である。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
電解液におけるリチウム塩の濃度は、活物質へのリチウムのドープを効率良く行う観点から、0.5〜2.0Mであることが好ましく、0.8〜1.5Mであることがより好ましい。また、混合物において、電解液の含有量は、活物質100質量部に対して30〜70質量部であることが好ましく、40〜60質量部であることがより好ましい。
【0024】
金属リチウムとしては特に限定されず、粉末状、箔状等の金属リチウムを用いることができるが、変質を抑制する観点から、安定化処理されたリチウム金属粉末を用いることが好ましい。リチウム金属粉末を安定化処理することで、露点マイナス40℃程度のドライルームにおいてもリチウム金属粉末の変質が進行しなくなる。ここで、安定化処理されたリチウム金属粉末としては、リチウム金属粉末の表面を、環境安定性に優れた物質、例えば、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、SBR(スチレンブタジエンゴム)等の有機ゴム、EVA(エチレンビニルアルコール共重合樹脂)等の有機樹脂、LiCOなどの金属炭酸塩等の無機化合物等でコーティングしたものが挙げられる。このような安定化処理されたリチウム金属粉末としては、市販品としてアルドリッチ社製のリチウムパウダー等が挙げられる。
【0025】
金属リチウムとしてリチウム金属粉末を用いる場合、そのメジアン径(D50)は、塗布後の電極表面での均一分散性の観点から、30〜50μmであることが好ましく、35〜45μmであることがより好ましい。
【0026】
金属リチウムとしてLiCOにより被覆されたリチウム金属粉末を用いる場合、LiCOの含有量は、金属リチウムの変質を十分に抑制する観点から、LiCOにより被覆されたリチウム金属粉末全量を基準として2〜5質量%であることが好ましく、2〜3質量%であることがより好ましい。
【0027】
金属リチウムは、電極の不可逆容量分を補うために利用されるものであるので、その添加量は電極の不可逆容量を補うだけの量以下であることが望ましい。金属リチウムの最適な添加量は、活物質の量や材質によって変化し、添加量に応じて不可逆容量が減少するが、多すぎると活物質表面にリチウムが析出してしまい、逆にリチウムイオン二次電池の容量が減少する。従って、最適な金属リチウムの添加量は別途に電極の初期効率を求めてから定めることが好ましく、また、電池設計における電極の厚み(使用量)に応じて定めることが好ましい。このように、金属リチウムの好ましい添加量は一概には言えないが、通常、混合物中の含有量を、活物質100質量部に対して5〜10質量部とすることが好ましく、5〜7質量部とすることがより好ましく、6〜7質量部とすることが特に好ましい。また、ドーピング工程により活物質にドープするリチウムのドープ量としては、満充電時に活物質に吸蔵し得るリチウム量の0.10〜0.50倍程度であることが好ましく、0.15〜0.22倍程度であることがより好ましく、0.20倍程度であることが特に好ましい。
【0028】
ドーピング工程においてリチウムをドープする活物質は、リチウムイオン二次電池に一般的に用いられる負極活物質、正極活物質である。負極活物質は、リチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されないが、リチウムと合金化する材料が好ましい。リチウムと合金化する材料としては、リチウムと合金化する元素の単体、これらの元素を含む酸化物および炭化物等が挙げられる。リチウムと合金化する材料を用いることにより、炭素系材料に比べて高いエネルギー密度を有する高容量の電池を得ることが可能となる。
【0029】
上記のリチウムと合金化する元素としては、以下に制限されることはないが、具体的には、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等が挙げられる。これらの中でも、容量およびエネルギー密度に優れた電池を構成できる観点から、負極活物質は、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、およびZnからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、SiまたはSnの元素を含むことがより好ましく、Siを含むことが特に好ましい。上記のリチウムと合金化する元素を含む酸化物としては、一酸化ケイ素(SiO)、二酸化スズ(SnO)、二酸化ケイ素(SiO)などを用いることができる。また、上記のリチウムと合金化する元素を含む炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)などを用いることができる。これらは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、充放電サイクルの寿命やコスト面で有利な炭素材料も負極活物質として好適に使用可能である。該炭素材料としては、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。また、炭素材料は、リチウムと合金化する元素を含む材料に比べて、リチウムのプレドープ時に急激な発熱反応を起こし難く、発熱量も低い。そのため、電池作製後の初充電時に負極活物質層内のバインダー等が熱融解する恐れがない点で優れている。この他、リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物、およびその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。場合によっては、2種以上の負極活物質を併用してもよい。
【0031】
正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な酸化物、硫化物又は有機高分子化合物が挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上が用いられる。具体的には、例えばTiS、MoS、NbS、ZrS、VS、V、MoO、Mg(Vなどのリチウムを含有しない金属硫化物及び金属酸化物、並びに、リチウムを含有するリチウム複合酸化物が挙げられる。また、NbSeなどの複合金属も挙げられる。中でも、エネルギー密度を高くするためには、Li(Met)を主体とするリチウム複合酸化物が好ましい。ここで、Metは金属を示し、具体的には、コバルト、ニッケル、鉄、及びマンガンのうち少なくとも1種が好ましい。xは、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、層構造をもつLiCoO、LiNiO、LiFeO、LiNiCo1−y(但し、0.05≦x≦1.10、0≦y≦1)、スピネル構造のLiMn及び斜方晶のLiMnOが挙げられる。更に高電圧対応型として置換スピネルマンガン化合物Li(Met)Mn1−y(但し、0≦y≦1)も使用されており、この場合のMetはチタン、クロム、鉄、コバルト、銅及び亜鉛等が挙げられる。
【0032】
更に、正極活物質としては有機高分子化合物も使用することができる。有機高分子化合物として具体的には、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリスルフィド化合物等の導電性ポリマーなどが挙げられる。
【0033】
本実施形態において、ドーピング工程によりリチウムをドープする活物質としては、負極活物質を用いることが好ましく、リチウムと合金化する材料を用いることがより好ましく、酸化シリコン(SiO)を用いることが特に好ましい。これらの負極活物質を用いることで、ドーピング工程でリチウムをプレドープすることによる効果を有効に得ることができる。すなわち、予め負極活物質にリチウムをプレドープしておくことで、電池作製後の充電時にリチウムが負極活物質に不可逆的に吸蔵されることを防止することができ、充放電に寄与するリチウム量の減少を抑制して不可逆容量を低減することが可能となる。また、活物質層を形成する前の活物質の段階でリチウムのプレドープを行うことで、全ての活物質に対して均一且つ十分にリチウムをドープすることができ、活物質層を形成した後にリチウムのプレドープを行った場合と比較して、ドーピング効率を大幅に向上させることができる。
【0034】
また、ドーピング工程により正極活物質にリチウムをドープしてもよい。この場合、正極活物質のリチウム欠損を補うことができる。
【0035】
混合物中にはさらに、導電助剤として、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維などの炭素材料や、銅、ステンレス、ニッケルなどの金属粉末又は金属繊維或いはこれらの2種以上の合金の粉末や繊維等を添加してもよい。導電助剤を混合物中に添加した場合、金属リチウムと活物質との間の電気的接触を導電助剤を介しても生じさせることが可能となるため、活物質へのリチウムのドープがより生じ易くなり、ドーピング効率を向上させることができる。混合物中に導電助剤を添加する場合の添加量は、ドーピング効率を十分に向上させる観点から、金属リチウム100質量部に対して、0.1〜70質量部とすることが好ましく、0.2〜10質量部とすることがより好ましい。
【0036】
混合物を調製する際の各材料の投入順序は特に限定されないが、初めに電解液を調製した後、その電解液中に他の材料を投入することが好ましい。電解液中に投入する他の材料の投入順序は特に限定されない。
【0037】
ドーピング工程では、上述した各材料を含む混合物中で、活物質と金属リチウムとを電気的に接触(短絡)させることで、活物質にリチウムをドープする。活物質と金属リチウムとを電気的に接触させるための処理方法としては、マグネチックスターラーやハイブリッドミキサー(株式会社キーエンス社製)、二軸混練機等の撹拌機を用いて混合物を撹拌又は混練する方法、混合物に超音波振動を加える方法等が挙げられる。これらの処理方法により活物質と金属リチウムとを直接又は導電助剤を介して衝突させることで、活物質にリチウムイオンを効率的にドープすることができる。上記の混合物の処理時間は、使用する活物質により異なる。これらの処理方法は、1種の方法を単独で用いてもよいし、2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
ドーピング工程は、金属リチウムとしてLiCOで被覆されたリチウム金属粉末を用いる場合、その変質を抑制する観点から、露点マイナス40℃以下のドライルームで行うことが好ましい。また、ドーピング工程は、金属リチウムとしてLiCOで被覆されたリチウム金属粉末以外のものを用いる場合、その変質を抑制する観点から、露点マイナス60℃以下のドライルームで行うことが好ましい。
【0039】
以上のドーピング工程を経ることにより、リチウムがドープされたリチウムドープ活物質を得ることができる。
【0040】
(リチウムイオン二次電池)
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池100は、正極10と、正極10に対向する負極20と、正極10及び負極20の間に介在し、正極10の主面及び負極20の主面にそれぞれに接触するセパレータ18と、を備えたリチウムイオン二次電池である。
【0041】
リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60,62を備えている。
【0042】
積層体30は、一対の正極10、負極20が、セパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14の主面及び負極活物質層24の主面が、セパレータ18の主面にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
【0043】
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24ということがある。
【0044】
まず、電極10、20について具体的に説明する。
【0045】
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0046】
正極活物質層14は、正極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。正極活物質としては、先に例示したリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な酸化物、硫化物又は有機高分子化合物、或いは、これらに対してドーピング工程によりリチウムをドープしたリチウムドープ活物質を用いることができる。
【0047】
バインダーは、活物質同士を結合すると共に、活物質と集電体12とを結合している。バインダーは、上述の結合が可能なものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0048】
また、上記の他に、バインダーとして、例えば、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFPTFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴムを用いてもよい。
【0049】
更に、上記の他に、バインダーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、セルロース、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等を用いてもよい。また、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、その水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子を用いてもよい。更に、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン(炭素数2〜12)共重合体等を用いてもよい。
【0050】
また、バインダーとして電子伝導性の導電性高分子やイオン伝導性の導電性高分子を用いてもよい。電子伝導性の導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン等が挙げられる。この場合は、バインダーが導電助剤粒子の機能も発揮するので導電助剤を添加しなくてもよい。
【0051】
イオン伝導性の導電性高分子としては、例えば、リチウムイオン等のイオンの伝導性を有するものを使用することができ、例えば、高分子化合物(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物、ポリエーテル化合物の架橋体高分子、ポリエピクロルヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリル等)のモノマーと、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCl、LiBr、Li(CFSON、LiN(CSO等のリチウム塩又はリチウムを主体とするアルカリ金属塩と、を複合化させたもの等が挙げられる。複合化に使用する重合開始剤としては、例えば、上記のモノマーに適合する光重合開始剤または熱重合開始剤が挙げられる。
【0052】
導電助剤も、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、黒鉛、カーボンブラック等の炭素系材料や、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0053】
正極活物質層14中のバインダーの含有量は特に限定されないが、活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましく、2〜4質量%であることがより好ましい。活物質とバインダーの含有量を上記範囲とすることにより、得られた電極活物質層14において、バインダーの量が少なすぎて強固な活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないバインダーの量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
【0054】
正極活物質層14中の導電助剤の含有量も特に限定されないが、添加する場合には通常、活物質、導電助剤及びバインダーの質量の和を基準にして、1〜10質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。
【0055】
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス又はそれらの合金の金属薄板(金属箔)を用いることができる。
【0056】
負極活物質層24は、負極活物質、バインダー、及び、必要に応じた量の導電助剤から主に構成されるものである。負極活物質としては、先に例示したリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な、リチウムと合金化する材料又は炭素材料、或いは、これらに対してドーピング工程によりリチウムをドープしたリチウムドープ活物質を用いることができる。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、負極活物質及び正極活物質の少なくとも一方にリチウムドープ活物質を用いたものであり、好ましくは、少なくとも負極活物質にリチウムドープ活物質を用いたものである。
【0057】
バインダー及び導電助剤には、上述した正極10に用いる材料と同様の材料を用いることができる。また、バインダー及び導電助剤の含有量も、負極活物質の体積変化の大きさや箔との密着性を加味しなければならない場合を除いて上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。
【0058】
電極10、20は、通常用いられる方法により作製できる。例えば、活物質、バインダー、溶媒、及び、導電助剤を含む塗料を集電体上に塗布し、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去することにより製造することができる。
【0059】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0060】
塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0061】
集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する方法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
【0062】
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
【0063】
以上の工程を経て、電極10、20を作製することができる。
【0064】
次に、リチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
【0065】
セパレータは、電解液に対して安定であり、保液性に優れていれば特に制限はないが、一般的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの多孔質シート、又は不織布が挙げられる。
【0066】
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、ドーピング工程において使用するリチウム塩として先に例示したものを使用することができる。
【0067】
また、有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の非プロトン性高誘電率溶媒や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、メチルアセテート等の酢酸エステル類あるいはプロピオン酸エステル類等の非プロトン性低粘度溶媒が挙げられる。これらの非プロトン性高誘電率溶媒と非プロトン性低粘度溶媒を適当な混合比で併用することが望ましい。更には、イミダゾリウム、アンモニウム、及びピリジニウム型のカチオンを用いたイオン性液体を使用することができる。対アニオンは特に限定されるものではないが、BF、PF、(CFSO等が挙げられる。イオン性液体は前述の有機溶媒と混合して使用することが可能である。
【0068】
電解液のリチウム塩の濃度は、電気伝導性の点から、0.5〜2.0Mが好ましい。なお、この電解質の温度25℃における導電率は0.01S/m以上であることが好ましく、電解質塩の種類あるいはその濃度により調整される。
【0069】
電解質を固体電解質やゲル電解質とする場合には、シリコーンゲル、シリコーンポリエーテルゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリ(ビニリデンフルオライド)等を高分子材料として含有することが可能である。なお、これらは予め重合していてもよく、注液後重合してもよい。これらは単独もしくは混合物として使用可能である。
【0070】
更に、本実施形態の電解液中には、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、サイクル寿命向上を目的としたビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート等や、過充電防止を目的としたビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン等や、脱酸や脱水を目的とした各種カーボネート化合物、各種カルボン酸無水物、各種含窒素及び含硫黄化合物が挙げられる。
【0071】
ケース50は、その内部に積層体30及び電解液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
【0072】
リード60,62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
【0073】
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
【0074】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、リチウムイオン二次電池は図1に示した形状のものに限定されず、コイン形状に打ち抜いた電極とセパレータとを積層したコインタイプや、電極シートとセパレータとをスパイラル状に巻回したシリンダータイプ等であってもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
(リチウムドープ活物質の作製)
まず、アルドリッチ製リチウム粉末を、露点40〜50℃に保たれたドライルーム中に1時間放置し、リチウム粉末表面にはLiCO層が生成していることを確認した。以上によりLiCOの皮膜を有するリチウム粉末(粒径:50〜150μm)(以下、「安定化リチウムパウダー」と言う)を得た。この安定化リチウムパウダーを用い、リチウムドープ活物質の作製を、露点マイナス50℃〜マイナス40℃のドライルーム中において、以下の手順で行った。電解液として、1MのLiPF溶液(溶媒:EC/DEC=3/7(体積比))を調製した。この電解液50質量部中に、負極活物質(SiO)100質量部と、上記安定化リチウムパウダー7質量部とを加え、混合物を得た。得られた混合物をマグネチックスターラーで室温にて24時間攪拌することで、負極活物質と上記安定化リチウムパウダーとを電気的に接触させ、負極活物質にリチウムをドープした(ドーピング工程)。その後、得られた活物質をDECで洗浄し、真空乾燥してリチウムドープ活物質を得た。
【0077】
(負極の作製)
上記の方法で作製したリチウムドープ活物質83質量部、アセチレンブラック2質量部、ポリアミドイミド15質量部、及びN−メチルピロリドン82質量部を混合し、活物質層形成用のスラリーを調製した。このスラリーを、厚さ14μmの銅箔の一面に、リチウムドープ活物質の塗布量が2.0mg/cmとなるように塗布し、100℃で乾燥することで活物質層を形成した。その後、ローラープレスにより負極を加圧成形し、真空中、350℃で3時間熱処理することで、活物質層の厚さが22μmである負極を得た。
【0078】
(評価用リチウムイオン二次電池の作製)
上記で作製した負極と、銅箔にリチウム金属箔を貼り付けた対極とを、それらの間にポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを挟んでアルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに、電解液として1MのLiPF溶液(溶媒:EC/DEC=3/7(体積比))を注入した後、真空シールし、評価用のリチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
[実施例2〜7]
電解液中のリチウム塩を、それぞれ下記表1に示すものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7のリチウムドープ活物質を得た。なお、電解液のリチウム塩の濃度は全て1Mとした。また、得られたリチウムドープ活物質を用いて、実施例1と同様にして実施例2〜7の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。表1中、LiBOBはリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiCBO)を示し、LiBETIはリチウムビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド((CSONLi)を示し、LiFSIはリチウムビスフルオロスルフォニルイミド((FSONLi)を示す。
【0080】
[実施例8]
ドーピング工程において、混合物中にさらにアセチレンブラック10質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のリチウムドープ活物質を得た。また、得られたリチウムドープ活物質を用いて、実施例1と同様にして実施例8の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
[実施例9〜12]
ドーピング工程において、混合物をマグネチックスターラーで室温にて24時間攪拌した後、混合物に対して超音波振動(40kHz)を1時間加えたこと以外はそれぞれ実施例1〜4と同様にして、実施例9〜12のリチウムドープ活物質を得た。また、得られたリチウムドープ活物質を用いて、実施例1と同様にして実施例9〜12の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0082】
[実施例13]
ドーピング工程において、混合物中の安定化リチウムパウダーに代えて、リチウム金属箔(縦5mm、横5mm、厚さ0.1mm)7質量部を加えたこと以外は実施例1と同様にして、実施例13のリチウムドープ活物質を得た。また、得られたリチウムドープ活物質を用いて、実施例1と同様にして実施例13の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0083】
[比較例1]
電解液に代えて、リチウム塩を含まない溶媒(EC/DEC=3/7(体積比))を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムドープ活物質を得た。また、得られたリチウムドープ活物質を用いて、実施例1と同様にして比較例1の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
[比較例2]
リチウムドープ活物質に代えて、リチウムドープを行っていない上記負極活物質(SiO)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の負極及び評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0085】
[比較例3]
実施例1で用いたものと同じアルドリッチ製リチウム粉末にSBRのトルエン溶液を加え、リチウム金属粉末分散液を調製した。この分散液を、比較例2と同様の方法で作製した電極の活物質層上に塗布し、室温で真空乾燥を行った後プレス機により電極を加圧成形した。この電極を用いて実施例1と同様にして比較例3の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
[比較例4]
実施例1で用いたものと同じ上記アルドリッチ製リチウム粉末をトルエンに分散させたリチウム金属粉末分散液を調製した。この分散液を、実施例1で用いたものと同じ銅箔上に塗布し、室温で真空乾燥を行った。この銅箔のリチウム金属粉末を塗布した面に、リチウムドープを行っていない上記負極活物質(SiO)を用いた以外は実施例1と同様にして調製した活物質層形成用のスラリーを、負極活物質の塗布量が2.0mg/cmとなるように塗布し、100℃で乾燥することで活物質層を形成した。その後、ローラープレスにより負極を加圧成形し、真空中、350℃で3時間熱処理することで、活物質層の厚さが22μmである負極を得た。この負極を用いて実施例1と同様にして比較例4の評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0087】
<初期充放電効率の測定>
実施例及び比較例で作製した評価用リチウムイオン二次電池について、二次電池充放電試験装置(北斗電工株式会社製)を用い、電圧範囲を0.005Vから2.5Vまでとし、1C=1600mAh/gとしたときの0.05Cでの電流値で充放電を行った。これにより、初期充電容量、初期放電容量及び初期効率を求めた。なお、初期効率(%)は、初期充電容量に対する初期放電容量の割合(100×初期放電容量/初期充電容量)である。この初期効率が高いほど、不可逆容量が低減されており、優れたドーピング効率が得られていることを意味する。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の活物質の製造方法により、不可逆容量が十分に低減されたリチウムドープ活物質を製造することができる。また、上記製造方法で得られたリチウムドープ活物質を用いることで、不可逆容量が十分に低減された電極及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0090】
10…正極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、20…負極、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート及びジメチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも一種の溶媒と、リチウム塩と、金属リチウムと、活物質とを含む混合物中で、前記活物質と前記金属リチウムとを電気的に接触させることにより、前記活物質にリチウムをドープするドーピング工程を有する、リチウムがドープされた活物質の製造方法。
【請求項2】
前記リチウム塩がLiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、LiCBO、(CSONLi、及び、(FSONLiからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1記載の活物質の製造方法。
【請求項3】
前記ドーピング工程において、前記混合物に超音波振動を加えることにより、前記電極活物質と前記金属リチウムとを電気的に接触させる、請求項1又は2記載の活物質の製造方法。
【請求項4】
前記金属リチウムが、LiCOにより被覆されたリチウム金属粉末である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の活物質の製造方法。
【請求項5】
前記金属リチウムがリチウム金属箔である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の活物質の製造方法。
【請求項6】
集電体と、該集電体上に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたリチウムがドープされた活物質を含む活物質層と、を備える電極。
【請求項7】
請求項6に記載の電極を備えるリチウムイオン二次電池。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−209195(P2012−209195A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75427(P2011−75427)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】