活線下ケーブル絶縁測定装置および方法
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電力ケーブルの活線下絶縁抵抗測定装置及び方法に関し、詳しくは測定対象ケーブルの防食尸絶縁不良抵抗の存在箇所の如何にかかわらず正確な絶縁尸絶縁抵抗を測定できる装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、活線下で高圧電力ケーブルの絶縁尸絶縁抵抗を、交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加することによって測定する技術が知られている。この種の技術として、直流信号電源装置を設置した箇所の第1の接地点の接地抵抗に直流信号電流を通じることによる電圧降下に起因する絶縁尸絶縁抵抗測定誤差を是正する改良された方式が本出願人によって提案された。この方式は、前記第1の接地点の電圧降下により生じる地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点に絶縁抵抗測定回路の接地を接続したうえで通常の活線下絶縁抵抗測定を実施するもので、この方法を図6により説明する。
【0003】図6において、高圧母線1にはGTR、GPT等の高圧系統接地用機器2を介して直流信号電源装置Sから直流信号電圧が印加される。この直流信号電源装置Sは直流信号電源3、直流信号電圧開閉器4、低抵抗(非接地高圧系統の場合は蓄電器)5からなる。直流信号電源装置Sの接地側端は該装置を設置した場所にある第1の接地点e1に接続される。しかし、第1の接地点e1の現実の接続点は接地抵抗6に至る前のe0になる。前記高圧系統全体の対大地絶縁不良抵抗7の値をRBとし、直流信号電圧が高圧母線に印加された場合のみ直流信号電流IBが大地eに流れる。そして、直流信号電流IBは接地抵抗6を通って直流信号電源装置に還流し、第1の接地点e1と現実の接続点e0との間に電圧降下EGを生じる。
【0004】一方、高圧母線1に接続された測定対象ケーブル8の遮蔽には絶縁尸絶縁不良抵抗9と局部電池10が存在し、その値をそれぞれRI、EIとする。また遮蔽と大地eまたは接続点e0との間には防食尸絶縁不良抵抗11と局部電池12が存在し、その値をそれぞれRS、ESとする。測定対象ケーブル8の遮蔽の電位は絶縁抵抗測定回路Mに導かれる。また、測定対象ケーブル8の遮蔽端と接続点e0の間には大地間短絡用の開閉器13が接続されている。この開閉器13は絶縁抵抗測定時には開放される替わりにフィルタ回路が入り、遮蔽の交流低インピィーダンス接地と交流分電圧の減衰を行う。フィルタ回路は交流分を除くためのコンデンサ14、16とチョークコイル15から構成されて絶縁抵抗測定回路Mの一部をなし、さらに、絶縁抵抗測定回路Mはフィルタ回路の出力に接続されるRMの値を有する入力抵抗17と、該入力抵抗の両端に生じる電圧を測定する、内部抵抗が実用的に無限大の直流電圧計18を備えている。絶縁抵抗測定回路Mの接地側端は、第1の接地点e1において直流信号電流IBの通過により発生する電界の影響を受けない程度にe1から離隔した第2の接地点e2に接続されている。
【0005】次に、図6の装置を使用してケーブルの絶縁抵抗を測定する通常の活線下絶縁抵抗測定方法として最も簡単な漏洩電流法について図7に示す等価回路図を参照して説明する。まず、図7の(A)に示すように、直流信号電圧Eを印加しない状態で、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧E0を直流電圧計18によって測定する。この雑音電圧E0は雑音電流iM0とRMとの積であり、RMは既知であるから、雑音電流i1を測定したことに等しい。次に、開閉器4を閉じて直流信号電圧Eを印加した時の直流電圧計18の読みE1を得る。図7の(B)に示すように、これは雑音電流iM1を測定したことに等しい。iM1−iM0=(E1−E0)/RMを計算することにより局部電池EI,ESの影響を消去することができ、ケーブル絶縁尸絶縁抵抗RIは数1により計算される。
【0006】
【数1】
【0007】数1において用いられるRS’は、RS’=RIRS/(RI+RS)で示される。即ち、RS’はケーブル絶縁尸絶縁抵抗RIと防食尸絶縁抵抗RSとの並列抵抗であり、この値は別途実測により活線下で求められる(詳細は省略)が、活線下では防食尸絶縁抵抗RSだけを切離して実測することはできず、RIがRSに並列に入った値RS’しか求められないのでRS’を使用する。
【0008】図7の(B)においては第1の接地点e1における電圧降下EGはEに対して逆極性で挿入されており、直流信号電圧EをE−EGに減少させたことと同じ働きをしている。この時、e0の電位は大地よりEGだけ低下したこととなる。しかし、EGの値は判らなくてもEに比べて格段に小さい値であるとして数2に示すEGを無視した式を用いて計算しても実用上ほとんど誤差がない測定ができるとしている。
【0009】
【数2】
【0010】
【発明が解決しょうとする課題】上述の測定においては、防食尸絶縁不良抵抗RSが大地eに落ちている場合は上述のように処理できるものの、もしも第1の接地点e1で発生する電圧降下EGの影響を受ける領域にRSが存在する場合、即ち図6に点線で例示するようにRSがe0に落ちている場合には問題が生じる。この場合にはRIの真値より高い値が測定値として得られ、特に防食尸絶縁不良抵抗Rsが低いほど見かけのRIが高く示されることになり、絶縁不良のケーブルを良好と誤判断することになり不都合となる。ケーブルに防食尸絶縁不良が発生する割合は経験上10〜30%であり、さらに大地eとの間に発生せずに接続点e0との間に発生する確率もまた同程度と推測されるから、前記問題が発生するケーブルの割合は1〜10%ほどとなり無視することはできない。
【0011】図7の(C)は上述の問題の発生原因を説明する等価回路を示している。同図に示すように直流電圧印加時に発生する電圧降下EGは入力抵抗値RMと直列に挿入されることになる。この場合、直流電圧計18で読む電圧E2はケーブル遮蔽端と大地間の電圧を測定しているものの、その値は防食尸絶縁不良抵抗RSの存在するe0と遮蔽端間の電圧よりEGだけ小さい。このため、本来の値より測定電圧 E2が小さいだけ見かけの上RIを真値より高く算出する。本回路で正確にRIを求めるためには数3に示すように分母に補正項RMEGを加える必要がある。しかし、通常はEGの値は判らないままに数2を用いて計算するのでプラスの誤差を発生する。
【0012】
【数3】
【0013】表1は、図7の(C)に示す回路における見かけのRIの測定値をシミュレーション計算した結果である。前提条件としては、E=50V、RB=5KΩ、IB=10mA、e1の接地抵抗=0.5Ω、EG=5mV、RM=5KΩ(e2に落ちている)、RI=1000MΩ、RS=10MΩ以下(e0に落ちている)として計算している。
【0014】
【表1】
【0015】ここで図8の(A)に示すように、絶縁抵抗測定回路の接地側端e2をe0に移すと、防食尸絶縁不良抵抗RSがe0に落ちている場合は誤差のほとんど無い測定ができる。しかし、RSがeに落ちている場合はマイナスの誤差を発生するのでなお不都合となる。そこで、図6に示すように絶縁抵抗測定回路Mの接地側端を第1の接地点e1(またはe0)から第2の接地点(e2)に移す工夫がされたのである。図8の(B)はRSがeに落ち、かつRMがe0に落ちている場合の等価回路を示している。図8の(B)によって正確にRIを算出するには数4を使用する。
【0016】
【数4】
【0017】表2は、EGの値が判らないままに数2を使用して表1と同じ前提条件のもとに計算した図8の(B)の場合の見かけのRIの測定値を示している。但し、RMはe0に落ち、RSはeに落ちている。
【0018】
【表2】
【0019】図9、は表1と表2のデータをグラフにして明確にしたもので、表1は曲線■に、表2は曲線■に対応している。
【0020】前述のように、直流信号電圧印加時に第1の接地点e1に発生する電圧降下EGに基づくケーブル絶縁抵抗測定誤差を避けるために、絶縁抵抗測定回路の接地を第2の接地点に接続するという本出願人による改良された技術を駆使してもなお誤差の発生は避けられなかった。この原因は、防食尸絶縁不良抵抗RSが第1の接地点e1に発生する電圧降下EGの影響を受ける領域で発生しているためであることが判明した。しかし、防食尸絶縁不良がどこで発生しているかを活線下で調査することは不可能では無いが困難である。さらに、例えその発生位置が判ったとしてもEGの影響を受けているか否かは判明しない。
【0021】本発明の目的は、防食尸絶縁不良抵抗の発生領域の如何にかかわらず正確に絶縁尸絶縁抵抗測定を行うことができる活線下ケーブル絶縁測定装置および方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置は、第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求める演算手段と、を備えて構成されている。
【0023】また、本発明の活線下ケーブル絶縁測定方法は、交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第1の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第2の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第3の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第4の測定段階と、を含み、前記第1、第2、第3及び第4の測定段階から得られた各標準偏差を比較し、前記第1または第2の接地点のうち標準偏差の少ないほうの接地点への接続を正規の絶縁抵抗測定法として採用することを特徴としている。
【0024】また、本発明の第2の活線下ケーブル絶縁測定装置は、第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えて構成されている。
【0025】また、本発明の第2の活線下ケーブル絶縁測定方法は、直流信号電源装置を動作せずに接地点切替手段を第1の接地点に接続し、絶縁抵抗測定回路により第1の雑音電圧を測定する第1の測定段階と、前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第1の直流信号電圧を測定する第2の測定段階と、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路により第2の雑音電圧を測定する第3の測定段階と、前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の直流信号電圧を測定する第4の測定段階と、前記測定された第1の直流信号電圧と第1の雑音電圧との差および第2の直流信号電圧と第2の雑音電圧との差を比較し、第1または第2の接地点のうち該差が小さい方の接地点に前記接地点切替手段を設定し、改めて前記直流電源装置から直流信号電圧を交流高圧母線に印加することにより絶縁抵抗を測定する段階と、を備えている。
【0026】
【作用】本発明は、交流高圧母線に重畳印加される直流信号電圧により電力ケーブルの絶縁抵抗を活線下で測定するため、測定対象ケーブルの遮蔽端に接続した絶縁測定回路の接地側を、直流信号電源装置が設置されている場所の接地と、これより離隔して別に設けられた接地とに切替え接続して計2回の測定を行い、得られた測定値を比較して測定対象ケーブル毎に採用する絶縁抵抗値を決定する。この絶縁抵抗値の比較決定の装置及び方法として、測定値を構成した原サンプリング値の分散を求め、標準偏差の少ない方の接地方式により得られた絶縁抵抗値を採用する。また別の比較決定の装置および方法として、高圧系を経由せずに大地に直流信号電流を流し、その前後における測定値の差の小さいほうの接地方式により改めて正規に測定し、この結果得られた絶縁抵抗値を採用する。
【0027】
【実施例】図1は本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置の一実施例を示し、図6と同一の構成は同一符号で示して説明を省略する。図1において、直流信号電源装置Sには開閉器4に代えて切替開閉器21が接続されている。この切替開閉器21は直流信号電源3の出力をGPT、GTR等の高圧系統接地用機器2を通じて高圧母線1に送り出す場合のa接点と、模擬系統絶縁抵抗20を通じて模擬直流信号電流IB’を大地e3に送り出す場合のb接点と、開放位置のc接点を有している。模擬系統絶縁抵抗20の接地端は第2の接地点e2に落とすと結果の判断に迷うことになるので、第1の接地点e1および第2の接地点e2から離隔し、それぞれの電界の影響を受けない第3の接地点e3に落とすものとする。
【0028】絶縁抵抗測定回路Mの接地側端は接地切替開閉器19に接続されている。この接地切替開閉器19は、接続点e0に導く接点aと、第2の接地点e2に導く接点bを有している。この開閉器19は安全のためにオーバラップ機構付きが好ましい。なお、ケーブルの遮蔽端と大地間の短絡用開閉器13はその接地側を図1では接続点e0に常時接続しているものの、絶縁抵抗測定回路Mの接地端側に接続しても良い。
【0029】次に、原測定値の分散比較により絶縁測定値を決定する方法について説明する。この方法に使用される測定装置は、図1の模擬系統絶縁抵抗20および第3の接地点e3は不要である。しかし、測定値から標準偏差を求める必要上、絶縁抵抗測定回路Mには図示されていない計算機が接続されて該絶縁抵抗測定方法は自動化されており、以下に示す動作を実行する。まず、測定対象ケーブル8を選び、接地点切替開閉器19を接点a側にに接続して絶縁抵抗測定回路Mの接地を接続点e0に接続して開閉器13を開放する。なお、最初に接続点切替開閉器19を接点aに接続するか、または接点bに接続して開始するかは任意である。上述の状態において、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧を直流電圧計18で測定する。この時、絶縁抵抗測定回路は相当な内部静電容量を有するから必ずある程度の時間を待って電圧を読み取る必要がある。この測定に使用される直流電圧計18はデジタルマルチメータで、一定のサンプリング周期で所定の点数、例えば20秒間に50点の測定を行いそのデータをメモリに記憶する。そして測定データの平均値E01をCPU(中央処理装置)で計算して記憶し、さらに図2の(A)または(B)の説明用等価回路に示すように、測定データ群の分散と標準偏差(標準偏差=分散の平方根)を計算する。計算結果は代表として扱いやすい標準偏差だけでよいのでその値をσ01としてメモリに記憶する。
【0030】次に、今までc接点の位置にあって開放されていた切替開閉器21をa接点側に投入して直流信号電圧Eを低抵抗5および接地用機器2を介して高圧母線1に印加する。再び、所要の時間を待ってから直流電圧計18により入力抵抗17の両端に発生する電圧のサンプリング測定を行い、図3の(A)または(B)の説明用等価回路に示すように、その平均値E11の他に標準偏差σ11をCPUで計算して記憶する。次いで、切替開閉器21をc接点に切替えて直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じて遮蔽端を大地に短絡する。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明のままで、図2の(A)または(B)に示すσ01の測定と、図3R>3の(A)または(B)に示すσ11の測定を終了する。なお、図2の(A)および図3の(A)は防食尸絶縁不良抵抗が第1の接地点に発生する電圧降下EGの影響を受ける領域で発生している場合を、図2の(B)および図3の(B)は防食尸絶縁不良抵抗が大地eとの間で発生している場合を示している。
【0031】開閉器13を閉じた状態で高圧系統全体の直流充電電圧の放電に要する時間を待って、接地点切替開閉器19を接点b側に切替えて絶縁抵抗測定回路Mの接地を第2の接地点e2に接続してから開閉器13を開放する。上述した操作を繰り返すことにより雑音電圧E02、その時の標準偏差σ02、そして直流信号電圧印加時の測定電圧E12、その時の標準偏差σ12を求める。測定の終了後は直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。このようにして図2の(A)または(B)に示すσ02の測定と図3の(A)または(B)に示すσ12の測定が終了する。
【0032】上述のように測定対象ケーブル毎に絶縁抵抗測定回路Mの接地側端を直流信号電源装置Sが接続されている第1の接地点e1およびこれより離隔した第2の接地点e2とに切替えて2回の測定を行い、その結果として2通りの電圧測定値、即ちE01、E11及びE02、E12と、2通りの標準偏差値、即ちσ01とσ11およびσ02とσ12が得られる。ここで、標準偏差値σ01とσ02同志、σ11とσ12同志、またはσ01とσ11の平均値とσ02とσ12の平均値同志を比較し、小さい値が得られた方の絶縁抵抗測定回路Mの接地方式から得られた電圧測定値によって計算された絶縁抵抗値RIを真値として採用する。
【0033】上記標準偏差値の比較は、3通りが得られ、その結果は同一の絶縁抵抗測定回路接地方式を示す筈であるが、比較結果が異なる場合は直流信号電圧印加時の標準偏差に重み付けして判断される。その理由はσ11とσ12の比較の場合は雑音電圧として2種類含まれるからである。この雑音電圧の1つは直流信号電圧印時にのみ発生するEGであり、他の1つは図2及び図3上に(EG)として表したものである。この(EG)は直流信号電圧の印加の有無とは無関係に常時第1の接地点e1と大地eまたはe2との間に発生しているもので、図ではe1とe0の間ではなくてその外にあるように示されているが、実際にはe1とe0の間の抵抗6を起源としていると考えられる。即ち、(EG)は直流信号電源3とは別の雑音直流電源があって、常時抵抗6に雑音電流を流している結果発生するもので、安定に発生している限りその絶対値の大小は測定誤差の構成要因にならないが、変動している場合は問題となり、時としてはその変動幅はEG以上になる。このため、第1の接地点e1に働く電圧降下として実質的にEG+(EG)が働く。この(EG)の影響は、防食尸絶縁不良抵抗RSがe0に落ちている時は入力抵抗RMをe0に落とせば受けることはなく(図2の(A)および図3の(A)の場合)、またRSが大地eに落ちているときはRMを第2の接地点e2に落とせば少なく押さえられる(図2の(B)および図3の(B)の場合)。前者の場合はσ01<σ02またはσ11<σ12であり、後者の場合はσ01>σ02またはσ11>σ12である。
【0034】上述の方法に従って測定された実験例を表3に示す。この実験では同一の6KV変電所で入力抵抗値RM=100KΩにおいて測定されている。この変電所においてはEGが5mV程度であるのに対し、(EG)が100〜200mVと極めて大きく常時変動しているのが特徴である。表3において、F(フィーダ)1およびF3はともに防食尸絶縁抵抗がかなり高いので雑音電圧の影響は受け難いケーブルであるが、それでもRMをe2に落として測定した方がσが小さく、測定結果は第2の接地点に接続した方式が採用される。模擬絶縁抵抗を備えたF19ではRMの接地場所の違いは歴然としており、この接地方式を誤ると1000MΩのRIを∞または185MΩと判断することになる。
【0035】
【表3】
【0036】次に、図1に示す装置を使用して絶縁抵抗値を決定する別の方法について説明する。この方法では、模擬系統絶縁抵抗20、第3の接地点e3を使用する代わりに、絶縁抵抗測定方法は前述のように自動化する必要はない。この方法は、正規に直流信号電圧を印加して本測定を行う前に防食尸絶縁不良抵抗RSの発生位置を判断するための測定を2回行って絶縁抵抗測定回路の接地方式を決定し、決定された接地方式のもとで正規に直流信号電圧を印加してさらに1回測定し、得られた絶縁抵抗値RIを真値として採用するものである。この方法を図1および図4と5を参照して以下に説明する。
【0037】まず、測定対象ケーブル8を選び、接地点切替開閉器19を接点a側にに接続して絶縁抵抗測定回路Mの接地を接続点e0に接続して開閉器13を開放する。なお、最初に接続点切替開閉器19を接点aに接続するか、または接点bに接続して開始するかは任意である。上述の状態において、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧E01を直流電圧計18で測定する。この時、絶縁抵抗測定回路は相当な内部静電容量を有するから必ずある程度の時間を待って電圧を読み取る必要がある。次に、今までc接点に接続されて開放状態にあった切替開閉器21をb接点側へ投入して直流信号電圧Eを模擬系統絶縁抵抗20に印加する。模擬系統絶縁抵抗の値をRB’としてEをRB’で割った値を最大とする電流IB’が第3の接地点e3と第1の接地点e1を通じて接続点e0に還流し、e1とe0との間に電圧降下EG′を発生する。ここで入力抵抗17の両端の電圧が変化するので、所要の時間を待って直流電圧計18でその電圧を読み、その値をE11として記録する。次に、直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明の状態で図4の(A)または図4の(B)に示す E01の測定と図5の(A)または図5の(B)に示すE11の測定を終了する。
【0038】次に、接地点切替開閉器21をb接点側に切替え、絶縁抵抗測定回路の接地側を第2の接地点e2に接続して開閉器13を開く。上述の操作を行って、雑音電圧E02、直流信号電圧印加時の測定電圧E12を求める。次に、直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明の状態で図4の(A)または図4の(B)に示すE02の測定と図5の(A)または図5の(B)に示すE12の測定を終了する。
【0039】ここで、(E11−E01)および(E12−E02)を求める。この差電圧の小さい方の絶縁抵抗測定回路接地方式が好ましいものであるから、この接地方式に限定、即ち接地点切替開閉器19の接点をaかbのいずれかに決定する。次に、決定された接地方式で改めて雑音電圧、および切替開閉器21をa接点側に投入して直流信号電圧Eを正規に高圧母線1に印加した時の測定電圧を得て絶縁抵抗値RIを得る。このため、合計で3回の直流電圧印加と電圧測定操作が必要になる。上記差電圧が等しい場合は、防食尸絶縁不良抵抗Rsの発生点がeとe0の中間位置に存在していることになり、絶縁抵抗測定回路の接地方式はいずれでも差し支えない。
【0040】前記模擬系統絶縁抵抗の値RB’は5KΩ〜50KΩ程度の値を選び、IB’として10〜100mA程度が確保されるように設定する。場合によっては第3の接地点e3の接地抵抗そのものがRB’となることがある。結果的には、数十mVの電圧降下EG’が得られれば上述の接地方式の決定に十分な感度が得られる。なお、図4および図5では第1の接地点e1と大地eまたは第2の接地点e2の間に発生している、直流信号電圧Eの印加の有無とは無関係な雑音電圧(EG)は無視されて示されていない。これはその値が一定であれば(E11−E01)および(E12−E02)の計算でその影響は消去されるからである。EG’が加わることによる影響はRSがe0に落ちている時はRMをe0に落とせば入らず、RSがeに落ちている場合はRMをe2に落とせば入り方が少ない。図4の(A)および図5の(A)が前者の場合を示し(E11−E01)<(E12−E02)であり、図4の(B)および図5の(B)は後者の場合を示し(E11−E01)>(E12−E02)である。
【0041】上述の方法によって測定した実験例を表4に示す。この実験例では大地に流した電流は約25mAである。表4に示されるように、防食尸絶縁抵抗RSの接地場所と絶縁抵抗測定回路の接地場所が一致している場合は、直流信号電流通電の前後におけるケーブル遮蔽端電圧測定値の差は極小であり、一致してない場合とはっきり弁別できる。参考までに同時に測定した標準偏差も同様な傾向を示していることが判る。
【0042】
【表4】
【0043】上述の方法は第3の接地点と、少なくとも3回の測定を要する等の欠点があるが、自動測定機構は必要でないし、原理的には先に述べた標準偏差による方法よりも防食尸絶縁不良抵抗の存在箇所を判定するにはすぐれている。故に、既述の二つの比較決定方法を敢えて行ってもしも相反する結果が得られたなら、後述の方法で得られた結果に従えば良い。普通は自動測定方式採用なら前者の方法を手動測定方式採用なら後者の方法を採用する。
【0044】
【効果】本発明は、防食尸絶縁不良の存在箇所と、絶縁抵抗測定回路の接地点との位置関係により、真の絶縁抵抗値より高い値或いは低い値を得て誤判断のもとにケーブルの処置を決定するような事がなくなり、電力ケーブルの活線下劣化監視技術の信頼性向上および多重接地系統のように大地に大きい直流信号電流を流さざるを得ない高圧系統に連なるケーブルの監視に資するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置の一実施例を示す測定回路図である。
【図2】本発明の絶縁抵抗値の測定を、標準偏差を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を高圧母線に印加してない場合の図である。
【図3】本発明の絶縁抵抗値の測定を、標準偏差を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を高圧母線に印加した場合の図である。
【図4】本発明の絶縁抵抗値の測定を、第3の接地点を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を印加してない場合の図である。
【図5】本発明の絶縁抵抗値の測定を、第3の接地点を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を第3の接地点に対して印加した場合の図である。
【図6】従来の活線下ケーブル絶縁電圧測定装置を示す図である。
【図7】図6の装置を使用して絶縁抵抗測定を行う従来の漏洩電流法を説明する等価回路図である。
【図8】図6の装置を使用することにより測定誤差の発生を説明する等価回路図である。
【図9】表1と表2をグラフ化した図である。
【符号の説明】
1 高圧母線
8 測定対象ケーブル
9 絶縁尸絶縁不良抵抗
11 防食尸絶縁不良抵抗
19 接地点切替開閉器
20 模擬系統絶縁抵抗
21 切替開閉器
S 直流信号電源装置
M 絶縁抵抗測定回路
e1 第1の接地点
e2 第2の接地点
e3 第3の接地点
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電力ケーブルの活線下絶縁抵抗測定装置及び方法に関し、詳しくは測定対象ケーブルの防食尸絶縁不良抵抗の存在箇所の如何にかかわらず正確な絶縁尸絶縁抵抗を測定できる装置及び方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、活線下で高圧電力ケーブルの絶縁尸絶縁抵抗を、交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加することによって測定する技術が知られている。この種の技術として、直流信号電源装置を設置した箇所の第1の接地点の接地抵抗に直流信号電流を通じることによる電圧降下に起因する絶縁尸絶縁抵抗測定誤差を是正する改良された方式が本出願人によって提案された。この方式は、前記第1の接地点の電圧降下により生じる地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点に絶縁抵抗測定回路の接地を接続したうえで通常の活線下絶縁抵抗測定を実施するもので、この方法を図6により説明する。
【0003】図6において、高圧母線1にはGTR、GPT等の高圧系統接地用機器2を介して直流信号電源装置Sから直流信号電圧が印加される。この直流信号電源装置Sは直流信号電源3、直流信号電圧開閉器4、低抵抗(非接地高圧系統の場合は蓄電器)5からなる。直流信号電源装置Sの接地側端は該装置を設置した場所にある第1の接地点e1に接続される。しかし、第1の接地点e1の現実の接続点は接地抵抗6に至る前のe0になる。前記高圧系統全体の対大地絶縁不良抵抗7の値をRBとし、直流信号電圧が高圧母線に印加された場合のみ直流信号電流IBが大地eに流れる。そして、直流信号電流IBは接地抵抗6を通って直流信号電源装置に還流し、第1の接地点e1と現実の接続点e0との間に電圧降下EGを生じる。
【0004】一方、高圧母線1に接続された測定対象ケーブル8の遮蔽には絶縁尸絶縁不良抵抗9と局部電池10が存在し、その値をそれぞれRI、EIとする。また遮蔽と大地eまたは接続点e0との間には防食尸絶縁不良抵抗11と局部電池12が存在し、その値をそれぞれRS、ESとする。測定対象ケーブル8の遮蔽の電位は絶縁抵抗測定回路Mに導かれる。また、測定対象ケーブル8の遮蔽端と接続点e0の間には大地間短絡用の開閉器13が接続されている。この開閉器13は絶縁抵抗測定時には開放される替わりにフィルタ回路が入り、遮蔽の交流低インピィーダンス接地と交流分電圧の減衰を行う。フィルタ回路は交流分を除くためのコンデンサ14、16とチョークコイル15から構成されて絶縁抵抗測定回路Mの一部をなし、さらに、絶縁抵抗測定回路Mはフィルタ回路の出力に接続されるRMの値を有する入力抵抗17と、該入力抵抗の両端に生じる電圧を測定する、内部抵抗が実用的に無限大の直流電圧計18を備えている。絶縁抵抗測定回路Mの接地側端は、第1の接地点e1において直流信号電流IBの通過により発生する電界の影響を受けない程度にe1から離隔した第2の接地点e2に接続されている。
【0005】次に、図6の装置を使用してケーブルの絶縁抵抗を測定する通常の活線下絶縁抵抗測定方法として最も簡単な漏洩電流法について図7に示す等価回路図を参照して説明する。まず、図7の(A)に示すように、直流信号電圧Eを印加しない状態で、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧E0を直流電圧計18によって測定する。この雑音電圧E0は雑音電流iM0とRMとの積であり、RMは既知であるから、雑音電流i1を測定したことに等しい。次に、開閉器4を閉じて直流信号電圧Eを印加した時の直流電圧計18の読みE1を得る。図7の(B)に示すように、これは雑音電流iM1を測定したことに等しい。iM1−iM0=(E1−E0)/RMを計算することにより局部電池EI,ESの影響を消去することができ、ケーブル絶縁尸絶縁抵抗RIは数1により計算される。
【0006】
【数1】
【0007】数1において用いられるRS’は、RS’=RIRS/(RI+RS)で示される。即ち、RS’はケーブル絶縁尸絶縁抵抗RIと防食尸絶縁抵抗RSとの並列抵抗であり、この値は別途実測により活線下で求められる(詳細は省略)が、活線下では防食尸絶縁抵抗RSだけを切離して実測することはできず、RIがRSに並列に入った値RS’しか求められないのでRS’を使用する。
【0008】図7の(B)においては第1の接地点e1における電圧降下EGはEに対して逆極性で挿入されており、直流信号電圧EをE−EGに減少させたことと同じ働きをしている。この時、e0の電位は大地よりEGだけ低下したこととなる。しかし、EGの値は判らなくてもEに比べて格段に小さい値であるとして数2に示すEGを無視した式を用いて計算しても実用上ほとんど誤差がない測定ができるとしている。
【0009】
【数2】
【0010】
【発明が解決しょうとする課題】上述の測定においては、防食尸絶縁不良抵抗RSが大地eに落ちている場合は上述のように処理できるものの、もしも第1の接地点e1で発生する電圧降下EGの影響を受ける領域にRSが存在する場合、即ち図6に点線で例示するようにRSがe0に落ちている場合には問題が生じる。この場合にはRIの真値より高い値が測定値として得られ、特に防食尸絶縁不良抵抗Rsが低いほど見かけのRIが高く示されることになり、絶縁不良のケーブルを良好と誤判断することになり不都合となる。ケーブルに防食尸絶縁不良が発生する割合は経験上10〜30%であり、さらに大地eとの間に発生せずに接続点e0との間に発生する確率もまた同程度と推測されるから、前記問題が発生するケーブルの割合は1〜10%ほどとなり無視することはできない。
【0011】図7の(C)は上述の問題の発生原因を説明する等価回路を示している。同図に示すように直流電圧印加時に発生する電圧降下EGは入力抵抗値RMと直列に挿入されることになる。この場合、直流電圧計18で読む電圧E2はケーブル遮蔽端と大地間の電圧を測定しているものの、その値は防食尸絶縁不良抵抗RSの存在するe0と遮蔽端間の電圧よりEGだけ小さい。このため、本来の値より測定電圧 E2が小さいだけ見かけの上RIを真値より高く算出する。本回路で正確にRIを求めるためには数3に示すように分母に補正項RMEGを加える必要がある。しかし、通常はEGの値は判らないままに数2を用いて計算するのでプラスの誤差を発生する。
【0012】
【数3】
【0013】表1は、図7の(C)に示す回路における見かけのRIの測定値をシミュレーション計算した結果である。前提条件としては、E=50V、RB=5KΩ、IB=10mA、e1の接地抵抗=0.5Ω、EG=5mV、RM=5KΩ(e2に落ちている)、RI=1000MΩ、RS=10MΩ以下(e0に落ちている)として計算している。
【0014】
【表1】
【0015】ここで図8の(A)に示すように、絶縁抵抗測定回路の接地側端e2をe0に移すと、防食尸絶縁不良抵抗RSがe0に落ちている場合は誤差のほとんど無い測定ができる。しかし、RSがeに落ちている場合はマイナスの誤差を発生するのでなお不都合となる。そこで、図6に示すように絶縁抵抗測定回路Mの接地側端を第1の接地点e1(またはe0)から第2の接地点(e2)に移す工夫がされたのである。図8の(B)はRSがeに落ち、かつRMがe0に落ちている場合の等価回路を示している。図8の(B)によって正確にRIを算出するには数4を使用する。
【0016】
【数4】
【0017】表2は、EGの値が判らないままに数2を使用して表1と同じ前提条件のもとに計算した図8の(B)の場合の見かけのRIの測定値を示している。但し、RMはe0に落ち、RSはeに落ちている。
【0018】
【表2】
【0019】図9、は表1と表2のデータをグラフにして明確にしたもので、表1は曲線
【0020】前述のように、直流信号電圧印加時に第1の接地点e1に発生する電圧降下EGに基づくケーブル絶縁抵抗測定誤差を避けるために、絶縁抵抗測定回路の接地を第2の接地点に接続するという本出願人による改良された技術を駆使してもなお誤差の発生は避けられなかった。この原因は、防食尸絶縁不良抵抗RSが第1の接地点e1に発生する電圧降下EGの影響を受ける領域で発生しているためであることが判明した。しかし、防食尸絶縁不良がどこで発生しているかを活線下で調査することは不可能では無いが困難である。さらに、例えその発生位置が判ったとしてもEGの影響を受けているか否かは判明しない。
【0021】本発明の目的は、防食尸絶縁不良抵抗の発生領域の如何にかかわらず正確に絶縁尸絶縁抵抗測定を行うことができる活線下ケーブル絶縁測定装置および方法を提供することである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置は、第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求める演算手段と、を備えて構成されている。
【0023】また、本発明の活線下ケーブル絶縁測定方法は、交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第1の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第2の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第3の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第4の測定段階と、を含み、前記第1、第2、第3及び第4の測定段階から得られた各標準偏差を比較し、前記第1または第2の接地点のうち標準偏差の少ないほうの接地点への接続を正規の絶縁抵抗測定法として採用することを特徴としている。
【0024】また、本発明の第2の活線下ケーブル絶縁測定装置は、第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えて構成されている。
【0025】また、本発明の第2の活線下ケーブル絶縁測定方法は、直流信号電源装置を動作せずに接地点切替手段を第1の接地点に接続し、絶縁抵抗測定回路により第1の雑音電圧を測定する第1の測定段階と、前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第1の直流信号電圧を測定する第2の測定段階と、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路により第2の雑音電圧を測定する第3の測定段階と、前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の直流信号電圧を測定する第4の測定段階と、前記測定された第1の直流信号電圧と第1の雑音電圧との差および第2の直流信号電圧と第2の雑音電圧との差を比較し、第1または第2の接地点のうち該差が小さい方の接地点に前記接地点切替手段を設定し、改めて前記直流電源装置から直流信号電圧を交流高圧母線に印加することにより絶縁抵抗を測定する段階と、を備えている。
【0026】
【作用】本発明は、交流高圧母線に重畳印加される直流信号電圧により電力ケーブルの絶縁抵抗を活線下で測定するため、測定対象ケーブルの遮蔽端に接続した絶縁測定回路の接地側を、直流信号電源装置が設置されている場所の接地と、これより離隔して別に設けられた接地とに切替え接続して計2回の測定を行い、得られた測定値を比較して測定対象ケーブル毎に採用する絶縁抵抗値を決定する。この絶縁抵抗値の比較決定の装置及び方法として、測定値を構成した原サンプリング値の分散を求め、標準偏差の少ない方の接地方式により得られた絶縁抵抗値を採用する。また別の比較決定の装置および方法として、高圧系を経由せずに大地に直流信号電流を流し、その前後における測定値の差の小さいほうの接地方式により改めて正規に測定し、この結果得られた絶縁抵抗値を採用する。
【0027】
【実施例】図1は本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置の一実施例を示し、図6と同一の構成は同一符号で示して説明を省略する。図1において、直流信号電源装置Sには開閉器4に代えて切替開閉器21が接続されている。この切替開閉器21は直流信号電源3の出力をGPT、GTR等の高圧系統接地用機器2を通じて高圧母線1に送り出す場合のa接点と、模擬系統絶縁抵抗20を通じて模擬直流信号電流IB’を大地e3に送り出す場合のb接点と、開放位置のc接点を有している。模擬系統絶縁抵抗20の接地端は第2の接地点e2に落とすと結果の判断に迷うことになるので、第1の接地点e1および第2の接地点e2から離隔し、それぞれの電界の影響を受けない第3の接地点e3に落とすものとする。
【0028】絶縁抵抗測定回路Mの接地側端は接地切替開閉器19に接続されている。この接地切替開閉器19は、接続点e0に導く接点aと、第2の接地点e2に導く接点bを有している。この開閉器19は安全のためにオーバラップ機構付きが好ましい。なお、ケーブルの遮蔽端と大地間の短絡用開閉器13はその接地側を図1では接続点e0に常時接続しているものの、絶縁抵抗測定回路Mの接地端側に接続しても良い。
【0029】次に、原測定値の分散比較により絶縁測定値を決定する方法について説明する。この方法に使用される測定装置は、図1の模擬系統絶縁抵抗20および第3の接地点e3は不要である。しかし、測定値から標準偏差を求める必要上、絶縁抵抗測定回路Mには図示されていない計算機が接続されて該絶縁抵抗測定方法は自動化されており、以下に示す動作を実行する。まず、測定対象ケーブル8を選び、接地点切替開閉器19を接点a側にに接続して絶縁抵抗測定回路Mの接地を接続点e0に接続して開閉器13を開放する。なお、最初に接続点切替開閉器19を接点aに接続するか、または接点bに接続して開始するかは任意である。上述の状態において、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧を直流電圧計18で測定する。この時、絶縁抵抗測定回路は相当な内部静電容量を有するから必ずある程度の時間を待って電圧を読み取る必要がある。この測定に使用される直流電圧計18はデジタルマルチメータで、一定のサンプリング周期で所定の点数、例えば20秒間に50点の測定を行いそのデータをメモリに記憶する。そして測定データの平均値E01をCPU(中央処理装置)で計算して記憶し、さらに図2の(A)または(B)の説明用等価回路に示すように、測定データ群の分散と標準偏差(標準偏差=分散の平方根)を計算する。計算結果は代表として扱いやすい標準偏差だけでよいのでその値をσ01としてメモリに記憶する。
【0030】次に、今までc接点の位置にあって開放されていた切替開閉器21をa接点側に投入して直流信号電圧Eを低抵抗5および接地用機器2を介して高圧母線1に印加する。再び、所要の時間を待ってから直流電圧計18により入力抵抗17の両端に発生する電圧のサンプリング測定を行い、図3の(A)または(B)の説明用等価回路に示すように、その平均値E11の他に標準偏差σ11をCPUで計算して記憶する。次いで、切替開閉器21をc接点に切替えて直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じて遮蔽端を大地に短絡する。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明のままで、図2の(A)または(B)に示すσ01の測定と、図3R>3の(A)または(B)に示すσ11の測定を終了する。なお、図2の(A)および図3の(A)は防食尸絶縁不良抵抗が第1の接地点に発生する電圧降下EGの影響を受ける領域で発生している場合を、図2の(B)および図3の(B)は防食尸絶縁不良抵抗が大地eとの間で発生している場合を示している。
【0031】開閉器13を閉じた状態で高圧系統全体の直流充電電圧の放電に要する時間を待って、接地点切替開閉器19を接点b側に切替えて絶縁抵抗測定回路Mの接地を第2の接地点e2に接続してから開閉器13を開放する。上述した操作を繰り返すことにより雑音電圧E02、その時の標準偏差σ02、そして直流信号電圧印加時の測定電圧E12、その時の標準偏差σ12を求める。測定の終了後は直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。このようにして図2の(A)または(B)に示すσ02の測定と図3の(A)または(B)に示すσ12の測定が終了する。
【0032】上述のように測定対象ケーブル毎に絶縁抵抗測定回路Mの接地側端を直流信号電源装置Sが接続されている第1の接地点e1およびこれより離隔した第2の接地点e2とに切替えて2回の測定を行い、その結果として2通りの電圧測定値、即ちE01、E11及びE02、E12と、2通りの標準偏差値、即ちσ01とσ11およびσ02とσ12が得られる。ここで、標準偏差値σ01とσ02同志、σ11とσ12同志、またはσ01とσ11の平均値とσ02とσ12の平均値同志を比較し、小さい値が得られた方の絶縁抵抗測定回路Mの接地方式から得られた電圧測定値によって計算された絶縁抵抗値RIを真値として採用する。
【0033】上記標準偏差値の比較は、3通りが得られ、その結果は同一の絶縁抵抗測定回路接地方式を示す筈であるが、比較結果が異なる場合は直流信号電圧印加時の標準偏差に重み付けして判断される。その理由はσ11とσ12の比較の場合は雑音電圧として2種類含まれるからである。この雑音電圧の1つは直流信号電圧印時にのみ発生するEGであり、他の1つは図2及び図3上に(EG)として表したものである。この(EG)は直流信号電圧の印加の有無とは無関係に常時第1の接地点e1と大地eまたはe2との間に発生しているもので、図ではe1とe0の間ではなくてその外にあるように示されているが、実際にはe1とe0の間の抵抗6を起源としていると考えられる。即ち、(EG)は直流信号電源3とは別の雑音直流電源があって、常時抵抗6に雑音電流を流している結果発生するもので、安定に発生している限りその絶対値の大小は測定誤差の構成要因にならないが、変動している場合は問題となり、時としてはその変動幅はEG以上になる。このため、第1の接地点e1に働く電圧降下として実質的にEG+(EG)が働く。この(EG)の影響は、防食尸絶縁不良抵抗RSがe0に落ちている時は入力抵抗RMをe0に落とせば受けることはなく(図2の(A)および図3の(A)の場合)、またRSが大地eに落ちているときはRMを第2の接地点e2に落とせば少なく押さえられる(図2の(B)および図3の(B)の場合)。前者の場合はσ01<σ02またはσ11<σ12であり、後者の場合はσ01>σ02またはσ11>σ12である。
【0034】上述の方法に従って測定された実験例を表3に示す。この実験では同一の6KV変電所で入力抵抗値RM=100KΩにおいて測定されている。この変電所においてはEGが5mV程度であるのに対し、(EG)が100〜200mVと極めて大きく常時変動しているのが特徴である。表3において、F(フィーダ)1およびF3はともに防食尸絶縁抵抗がかなり高いので雑音電圧の影響は受け難いケーブルであるが、それでもRMをe2に落として測定した方がσが小さく、測定結果は第2の接地点に接続した方式が採用される。模擬絶縁抵抗を備えたF19ではRMの接地場所の違いは歴然としており、この接地方式を誤ると1000MΩのRIを∞または185MΩと判断することになる。
【0035】
【表3】
【0036】次に、図1に示す装置を使用して絶縁抵抗値を決定する別の方法について説明する。この方法では、模擬系統絶縁抵抗20、第3の接地点e3を使用する代わりに、絶縁抵抗測定方法は前述のように自動化する必要はない。この方法は、正規に直流信号電圧を印加して本測定を行う前に防食尸絶縁不良抵抗RSの発生位置を判断するための測定を2回行って絶縁抵抗測定回路の接地方式を決定し、決定された接地方式のもとで正規に直流信号電圧を印加してさらに1回測定し、得られた絶縁抵抗値RIを真値として採用するものである。この方法を図1および図4と5を参照して以下に説明する。
【0037】まず、測定対象ケーブル8を選び、接地点切替開閉器19を接点a側にに接続して絶縁抵抗測定回路Mの接地を接続点e0に接続して開閉器13を開放する。なお、最初に接続点切替開閉器19を接点aに接続するか、または接点bに接続して開始するかは任意である。上述の状態において、入力抵抗17の両端に発生する雑音電圧E01を直流電圧計18で測定する。この時、絶縁抵抗測定回路は相当な内部静電容量を有するから必ずある程度の時間を待って電圧を読み取る必要がある。次に、今までc接点に接続されて開放状態にあった切替開閉器21をb接点側へ投入して直流信号電圧Eを模擬系統絶縁抵抗20に印加する。模擬系統絶縁抵抗の値をRB’としてEをRB’で割った値を最大とする電流IB’が第3の接地点e3と第1の接地点e1を通じて接続点e0に還流し、e1とe0との間に電圧降下EG′を発生する。ここで入力抵抗17の両端の電圧が変化するので、所要の時間を待って直流電圧計18でその電圧を読み、その値をE11として記録する。次に、直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明の状態で図4の(A)または図4の(B)に示す E01の測定と図5の(A)または図5の(B)に示すE11の測定を終了する。
【0038】次に、接地点切替開閉器21をb接点側に切替え、絶縁抵抗測定回路の接地側を第2の接地点e2に接続して開閉器13を開く。上述の操作を行って、雑音電圧E02、直流信号電圧印加時の測定電圧E12を求める。次に、直流信号電圧Eの印加を停止し、開閉器13を閉じる。この測定により防食尸絶縁不良抵抗の存在位置は不明の状態で図4の(A)または図4の(B)に示すE02の測定と図5の(A)または図5の(B)に示すE12の測定を終了する。
【0039】ここで、(E11−E01)および(E12−E02)を求める。この差電圧の小さい方の絶縁抵抗測定回路接地方式が好ましいものであるから、この接地方式に限定、即ち接地点切替開閉器19の接点をaかbのいずれかに決定する。次に、決定された接地方式で改めて雑音電圧、および切替開閉器21をa接点側に投入して直流信号電圧Eを正規に高圧母線1に印加した時の測定電圧を得て絶縁抵抗値RIを得る。このため、合計で3回の直流電圧印加と電圧測定操作が必要になる。上記差電圧が等しい場合は、防食尸絶縁不良抵抗Rsの発生点がeとe0の中間位置に存在していることになり、絶縁抵抗測定回路の接地方式はいずれでも差し支えない。
【0040】前記模擬系統絶縁抵抗の値RB’は5KΩ〜50KΩ程度の値を選び、IB’として10〜100mA程度が確保されるように設定する。場合によっては第3の接地点e3の接地抵抗そのものがRB’となることがある。結果的には、数十mVの電圧降下EG’が得られれば上述の接地方式の決定に十分な感度が得られる。なお、図4および図5では第1の接地点e1と大地eまたは第2の接地点e2の間に発生している、直流信号電圧Eの印加の有無とは無関係な雑音電圧(EG)は無視されて示されていない。これはその値が一定であれば(E11−E01)および(E12−E02)の計算でその影響は消去されるからである。EG’が加わることによる影響はRSがe0に落ちている時はRMをe0に落とせば入らず、RSがeに落ちている場合はRMをe2に落とせば入り方が少ない。図4の(A)および図5の(A)が前者の場合を示し(E11−E01)<(E12−E02)であり、図4の(B)および図5の(B)は後者の場合を示し(E11−E01)>(E12−E02)である。
【0041】上述の方法によって測定した実験例を表4に示す。この実験例では大地に流した電流は約25mAである。表4に示されるように、防食尸絶縁抵抗RSの接地場所と絶縁抵抗測定回路の接地場所が一致している場合は、直流信号電流通電の前後におけるケーブル遮蔽端電圧測定値の差は極小であり、一致してない場合とはっきり弁別できる。参考までに同時に測定した標準偏差も同様な傾向を示していることが判る。
【0042】
【表4】
【0043】上述の方法は第3の接地点と、少なくとも3回の測定を要する等の欠点があるが、自動測定機構は必要でないし、原理的には先に述べた標準偏差による方法よりも防食尸絶縁不良抵抗の存在箇所を判定するにはすぐれている。故に、既述の二つの比較決定方法を敢えて行ってもしも相反する結果が得られたなら、後述の方法で得られた結果に従えば良い。普通は自動測定方式採用なら前者の方法を手動測定方式採用なら後者の方法を採用する。
【0044】
【効果】本発明は、防食尸絶縁不良の存在箇所と、絶縁抵抗測定回路の接地点との位置関係により、真の絶縁抵抗値より高い値或いは低い値を得て誤判断のもとにケーブルの処置を決定するような事がなくなり、電力ケーブルの活線下劣化監視技術の信頼性向上および多重接地系統のように大地に大きい直流信号電流を流さざるを得ない高圧系統に連なるケーブルの監視に資するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の活線下ケーブル絶縁測定装置の一実施例を示す測定回路図である。
【図2】本発明の絶縁抵抗値の測定を、標準偏差を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を高圧母線に印加してない場合の図である。
【図3】本発明の絶縁抵抗値の測定を、標準偏差を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を高圧母線に印加した場合の図である。
【図4】本発明の絶縁抵抗値の測定を、第3の接地点を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を印加してない場合の図である。
【図5】本発明の絶縁抵抗値の測定を、第3の接地点を利用して求める方式について説明するための等価回路図であって、直流信号電圧を第3の接地点に対して印加した場合の図である。
【図6】従来の活線下ケーブル絶縁電圧測定装置を示す図である。
【図7】図6の装置を使用して絶縁抵抗測定を行う従来の漏洩電流法を説明する等価回路図である。
【図8】図6の装置を使用することにより測定誤差の発生を説明する等価回路図である。
【図9】表1と表2をグラフ化した図である。
【符号の説明】
1 高圧母線
8 測定対象ケーブル
9 絶縁尸絶縁不良抵抗
11 防食尸絶縁不良抵抗
19 接地点切替開閉器
20 模擬系統絶縁抵抗
21 切替開閉器
S 直流信号電源装置
M 絶縁抵抗測定回路
e1 第1の接地点
e2 第2の接地点
e3 第3の接地点
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求める演算手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置。
【請求項2】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求めて記憶する演算手段とを備えた活線下ケーブル絶縁抵抗測定装置を使用して前記測定対象ケーブルの絶縁抵抗を測定する方法であって、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第1の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第2の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第3の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第4の測定段階と、を含み前記第1、第2、第3及び第4の測定段階から得られた各標準偏差を比較し、前記第1または第2の接地点のうち標準偏差の少ないほうの接地点への接続を正規の絶縁抵抗測定として採用することを特徴とする活線下ケーブル絶縁測定方法。
【請求項3】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置。
【請求項4】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置を使用して前記測定対象ケーブルの絶縁抵抗を測定する方法であって、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路により第1の雑音電圧を測定する第1の測定段階と、前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第1の直流信号電圧を測定する第2の測定段階と、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続した状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の雑音電圧を測定する第3の測定段階と、前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の直流信号電圧を測定する第4の測定段階と、前記測定された第1の直流信号電圧と第1の雑音電圧との差および第2の直流信号電圧と第2の雑音電圧との差を比較し、第1または第2の接地点のうち該差が小さい方の接地点に前記接地点切替手段を設定し、改めて前記直流電源装置から直流信号電圧を交流高圧母線に印加することにより絶縁抵抗を測定する段階と、を含む活線下ケーブル絶縁測定方法。
【請求項1】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求める演算手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置。
【請求項2】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記絶縁抵抗測定回路から得られるサンプリング測定値の分散を求め、標準偏差を求めて記憶する演算手段とを備えた活線下ケーブル絶縁抵抗測定装置を使用して前記測定対象ケーブルの絶縁抵抗を測定する方法であって、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第1の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第2の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第3の測定段階と、前記交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加しかつ前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路から測定サンプリング値を得て、前記演算手段により該サンプリング値の分散および標準偏差を演算して記憶する第4の測定段階と、を含み前記第1、第2、第3及び第4の測定段階から得られた各標準偏差を比較し、前記第1または第2の接地点のうち標準偏差の少ないほうの接地点への接続を正規の絶縁抵抗測定として採用することを特徴とする活線下ケーブル絶縁測定方法。
【請求項3】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置。
【請求項4】 第1の接地点を有して交流高圧母線に直流信号電圧を重畳印加する直流信号電源装置と、一端が測定対象ケーブルの遮蔽に接続されて該ケーブルの絶縁抵抗を測定するための絶縁抵抗測定回路と、前記絶縁抵抗測定回路の他端の接続を、前記第1の接地点と該第1の接地点の電圧降下による地中電界の影響を受けない程度に離隔した第2の接地点とのいずれかに選択する接地点切替手段と、前記第1および第2の接地点からの電界の影響を受けない第3の接地点へ前記直流信号電源装置から直流電流を送り出す電流供給手段と、を備えてなる活線下ケーブル絶縁測定装置を使用して前記測定対象ケーブルの絶縁抵抗を測定する方法であって、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、前記絶縁抵抗測定回路により第1の雑音電圧を測定する第1の測定段階と、前記接地点切替手段を第1の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第1の直流信号電圧を測定する第2の測定段階と、前記直流信号電源装置を動作せずに前記接地点切替手段を第2の接地点に接続した状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の雑音電圧を測定する第3の測定段階と、前記接地点切替手段を第2の接地点に接続し、かつ前記直流電源装置から第3の接地点に直流電流を供給する状態において、前記絶縁抵抗測定回路により第2の直流信号電圧を測定する第4の測定段階と、前記測定された第1の直流信号電圧と第1の雑音電圧との差および第2の直流信号電圧と第2の雑音電圧との差を比較し、第1または第2の接地点のうち該差が小さい方の接地点に前記接地点切替手段を設定し、改めて前記直流電源装置から直流信号電圧を交流高圧母線に印加することにより絶縁抵抗を測定する段階と、を含む活線下ケーブル絶縁測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図9】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図5】
【図7】
【図9】
【図8】
【特許番号】第2760905号
【登録日】平成10年(1998)3月20日
【発行日】平成10年(1998)6月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−38770
【出願日】平成3年(1991)3月5日
【公開番号】特開平4−276566
【公開日】平成4年(1992)10月1日
【審査請求日】平成7年(1995)7月10日
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【参考文献】
【文献】特開 平4−204165(JP,A)
【文献】特開 平4−184269(JP,A)
【文献】特開 昭62−36567(JP,A)
【登録日】平成10年(1998)3月20日
【発行日】平成10年(1998)6月4日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)3月5日
【公開番号】特開平4−276566
【公開日】平成4年(1992)10月1日
【審査請求日】平成7年(1995)7月10日
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【参考文献】
【文献】特開 平4−204165(JP,A)
【文献】特開 平4−184269(JP,A)
【文献】特開 昭62−36567(JP,A)
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