説明

流体タービン

【課題】
効率良く出力を高め、再利用することができ経済的な小型の流体タービンを提供する。
【解決手段】
高温または高圧の流体を供給する供給部3と流体を噴出する排出部4が設けられたケーシング5と、前記ケーシング内に、ローター7の円周表面に回転自在に軸支された複数の椀形状のフィンを所定間隔で備え、その複数のフィンの左右にドーナツ形状のフィン側板14を設けたローターを設け、流体タービンであって、供給部から、碗形状のフィン6と、隣接する碗形状のフィンと、フィン側板14により密閉された区分空間9に高圧の流体2を供給してフィンを押してローター7を回転させ、隣り合うフィン同士と、供給部と排出部との間のフィン側板14により区分空間9を形成して流体の圧力を維持し、さらに回転すると、密閉された高圧の流体を排出部4から噴出し、その噴出エネルギーで、ローターの回転力を高めるようにしたことを特徴とする流体タービン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の高出力な流体タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体タービンの一例である蒸気タービンについて説明する(特許文献1)。
従来の蒸気タービンは、水蒸気の流路を形成するケーシングと、その水蒸気の運動をタービン軸の回転軸を中心に回転する回転運動に変換する動翼とを備えていた。また、ケーシングと動翼とは、その水蒸気のうちの一部の水蒸気が回転軸に直交する方向に漏洩する隙間を形成していた。このとき、蒸気タービンは、ケーシングの隙間に接する壁面に着脱可能に支持されるライナを更に備えている。このような流体タービンは、ライナの形状を変更することにより、軸系の振動が低減するように、隙間に流れる水蒸気の流量・速度を調
整することができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−105087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の流体タービンでは、ライナの形状を変更することにより、軸系の振動が低減するように、隙間に流れる水蒸気の流量・速度を調整することができるが、積極的に、効率良く出力を高めることができないという問題点や小型化設計が困難という問題点もあった。さらに排出した蒸気(流体)に関する利用方法についてなんら開示されておらず、経済的にも問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑み、効率良く出力を高め、ケーシング内の液体を自動的に除去することで、腐食を防止し耐久性を高めることができ、さらに高温流体を回収することで、再利用することができ経済的な小型の流体タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
高温または高圧の流体を供給する供給部3と流体を噴出する排出部4が設けられたケーシング5と、前記ケーシング内に、ローター7の円周表面に回転自在に軸支された複数の椀形状のフィンを所定間隔で備え、その複数のフィンの左右にドーナツ形状のフィン側板14を設けたローターを設け、流体タービンであって、供給部から、碗形状のフィン6と、隣接する碗形状のフィンと、フィン側板14により密閉された区分空間9に高圧の流体2を供給してフィンを押してローター7を回転させ、隣り合うフィン同士と、供給部と排出部との間のフィン側板14により略密閉状態の区分空間9を形成して流体の圧力を維持し、さらに回転すると、密閉された高圧の流体を排出部4から噴出し、その噴出エネルギーで、ローターの回転力を高めるようにしたことを特徴とする流体タービンである。
本発明の流体タービンは、流体を供給する供給部と流体を噴出する排出部が設けられたケーシングと、前記ケーシング内に回転自在に軸支されると共に複数のフィンが所定間隔設けられたローターとを備えた流体タービンにおいて、前記供給部と前記排出部が、隣り合うフィン同士の間隔であるフィン1区分からその倍のフィン2区分までに相当する間隔で、ケーシングに配されたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ケーシングに設けられた供給部と排出部の間隔が、フィン1区分以上、フィン2区分以下の近距離に配されているため、供給部より流入した高温状態または高圧状態の流体がケーシング内において圧力損失を最小限に抑えたままとなってすぐさま排出部より流体が膨張しながら噴出されることになる。つまり、本発明の流体タービンは、供給部より流入した流体がフィンを押圧する流入エネルギーと、供給部と排出部を近距離にすることで高圧状態の流体を排出部より噴出させることにより得られる噴出エネルギーとによりフィンを押圧する力によりローターを回転させることができ、効率良く出力を高めることができる。なお、供給部と排出部の間隔が、フィン1区分未満であれば、流入した流体がケーシング内において圧力が増すことがないので噴出エネルギーを得ることができず、またフィン2区分を超えればケーシング内の流体の熱エネルギーが低下して圧力が減少し効率良く噴出エネルギーを得ることができない。
【0008】
また、本発明の流体タービンは、少なくとも前記供給部と前記排出部との間のケーシング内部において、隣り合うフィン同士と、フィンの左右に設けたドーナツ形状のフィン側板14と、当該ケーシング内壁とにより略密閉状態の独立した区分空間が形成されることを特徴とする。
さらに、隣接する碗形状のフィンの左右にフィン側板14を設け、隣り合うフィン同士と、左右のフィン側板により、より略密閉状態の区分空間9を形成し流体の圧力を維持されたことを特徴とする流体タービンである。
【0009】
本発明によれば、ローターの回転位置によっては、供給部と排出部との間において略密閉状の区分空間を形成することで、ケーシング内の流体をより高圧に維持することができ、効率良く噴出エネルギーを得ることができる。
【0010】
また、本発明の流体タービンは、前記排出部は、フィン6を最大限押す方向に開口され、そこから噴出される噴射エネルギーでフィン6を押する形状とし、図2と図3の場合は、P矢印で、右下斜め方向に開口するようにケーシングの先端51から1区間内に配され、これによりフィン6を最大限のエネルギーで押すように右下斜め方向に高温又は高圧の流体が噴出され、その噴出エネルギーで、フィンを押し、ローター7の回転力を高める。
【0011】
本発明によれば、排出部を右下斜め方向に設けることで、ドレインの効果を奏することができ、使用によりケーシング内に溜まった液体を自重により自動的に排出することができる。このようにケーシング内の液体を除去することで、腐食を防止し耐久性を高めることができる。
【0012】
また、本発明の流体タービンは、ケーシングの外部に前記排出部より噴出された流体を回収する回収部11を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、回収部に回収された高温状態の流体を、例えば、温水として利用したり、熱交換部へ供給に利用したり等再利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流入エネルギーと噴出エネルギーにより、ローターを回転するため、効率良く出力を高めることができる小型化の流体タービンを提供することができる。また、ケーシング内の液体を自動的に除去することで、腐食を防止し耐久性を高めることができる。さらに高温流体を回収することで、再利用することができ経済的な流体タービンを提供することができる。なお、噴入・開放が装置下部において瞬時に行われる事により、ケーシング内の圧力上昇を低減し流体抵抗による回転エネルギーロスを抑える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の流体タービンを示す概念図である。
【図2】本実施形態の流体タービンを示す図であって、ローターの回転動作を示す 概念図である。
【図3】本実施形態の流体タービンを示す図であって、流体の噴出状態を示す概念図 である。
【図4】本実施形態の流体タービンを示す側面図である。
【図5】本実施形態の流体タービンを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の流体タービンについて図面に基づいて詳細な説明をする。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の流体タービン1は、高温または高圧の流体を供給する供給部3と流体を噴出する排出部4が設けられたケーシング5と、前記ケーシング内に、ローター7の円周表面に回転自在に軸支された複数の椀形状のフィンが所定間隔、碗形状の開放側がケーシングになるように設けられ、その複数のフィンの左右にドーナツ形状のフィン側板14を備えたローターを設けた流体タービンである。供給部から、椀形状のフィンとそれに隣接する椀形状のフィンと、ケーシングにより形成される区分空間に高圧の流体2を供給し、それによりローター7が回転し、隣り合うフィン同士と、左右のフィン側板と、14供給部と排出部との間のケーシングの内壁とにより略密閉状態の独立した区分空間9を形成して流体の圧力を維持し、さらに回転すると、密閉された高圧の流体を排出口から噴出し、その噴出エネルギーで、回転力を高める。流体2は、高温高圧状態の蒸気が好ましい。
【0018】
ケーシング5は、所定の厚み部8をもった円形状を有しており、ケーシング5内部にロ
ーター7を押圧して回転することが可能な区分空間9が形成されている。また、ケーシング5には外部から区分空間に流体2を流入させることができる供給部3およびケーシング5内部の流体2を外部に噴出することができる排出部4が設けられている。供給部3は、楕円状の穴で、排出部4から1−3フィン区間内に備えている。排出部4は、楕円状の穴で、ケーシングの先端51の付近に設けている。流体2は供給口12から供給部3に入力し、排出部4から排出される液体は排出口13に導かれて外部に排出される。
【0019】
ローター7は、外周に沿って放射状に形成された複数のフィン6を支持すると共に、フィン6において受けた圧力によって回転するようにローター軸10に軸支されている。フィン6は碗形状に形成されており、複数個のフィン6はローター7に連結されている。そして、フィン6が碗形状に形成されることで流入される流体2を内包することができる曲面を有するため好ましい。供給部3からの流体液体は、フィン6の碗形状の隣接するフィンの椀形状の間と、左右のフィン側板と、ケーシングにより密閉された区分空間に閉じ込めことができる。ローター軸10には、図示しない発電機に接続されている。これによって、ローター軸10の回転力を電力に変換することができる。
【0020】
そして、供給部3と排出部4は、隣り合うフィン6同士の間隔であるフィン1区分からその倍のフィン2区分までに相当する間隔で、ケーシング5に配されている。
【0021】
供給部3から流入された流体2は、複数のフィン6の内、隣接するフィン6間と、左右のフィン側板14と、ケーシング5(厚み部8を含む)により形成された区分空間9に蓄積される。このときフィン6は当てられた流体2の勢いによってローター7は図1に示す矢印A方向に回転させられる。流体2を継続的に流入させることによって、ローター7は矢印A方向に回転し続け、回転によって供給部3からの流体2が蓄積され続けることとなる。
【0022】
本実施形態によれば、ケーシング5に設けられた供給部3と排出部4の間隔が、フィンの1区分以上フィン2区分以下の近距離に配されているため、供給部3より流入した高温状態または高圧状態の流体2がケーシング5内の区分空間9において噴入時の圧力損失を最小限に留める事が出来、ローター7の回転により、すぐさま排出部4より流体2が膨張しながら噴出されることになる。つまり、本実施形態の流体タービン1は、供給部3より流入した流体2がフィン6を押圧する流入エネルギー(矢印A方向)と、供給部3と排出部4を近距離にすることで区分空間9内の高圧状態の流体2を排出部4より噴出させることにより得られる力でフィン6を押圧する噴出エネルギー(図2に示す矢印B方向)と、によりローター7を回転させることができ、効率良く出力を高めることができる(図3に示す矢印C方向)。なお、供給部3と排出部4の間隔が、フィンの1区分未満であれば、流入した流体2がケーシング5内において圧力が増すことがないので噴出エネルギーを得ることができず、またフィンの2区分を超えればケーシング5内の流体の熱エネルギーが低下して圧力が減少し効率良く噴出エネルギーを得ることができない。
【0023】
また、本実施形態の流体タービン1は、少なくとも供給部3と排出部4との間の5内部において、隣り合うフィン6同士と、左右のフィン側板14と、ケーシング5の内壁(厚み部8を含む)とにより略密閉状態の独立した区分空間9が形成される。これにより、ローター7の回転位置によっては(図3参照)、供給部3と排出部4との間において略密閉状の区分空間9を形成することで、ケーシング5内の流体2をより高圧に維持することができ、効率良く噴出エネルギーを得ることができる。
【0024】
また、排出部4は、図に示すように、フィン6を最大限押すように右下斜め方向(P矢印)に開口するようにケーシング5に配されている。これにより、排出部4を右下斜め方向に設けることで、ドレインの効果を奏することができ、使用によりケーシング5内に溜まった液状化された流体(液体)が自重により自動的に排出することができるようになる。このようにケーシング5内の液体を除去することで、腐食を防止し耐久性を高めることができる。
【0025】
また、図示しないが、ケーシングの外部に前記排出部より排出された流体を回収する回収部を備えると好ましい。これにより、回収部に回収された高温状態の流体を、例えば、温水として利用したり、熱交換部へ供給に利用したり等再利用することができる。
【0026】
本実施形態によれば、流入エネルギーと噴出エネルギーにより、ローター7を回転する
ため、効率良く出力を高めることができる小型化の流体タービン1を提供することができる。また、ケーシング5内の液体を自動的に除去することで、腐食を防止し耐久性を高めることができる。さらに高温流体2を回収することで、再利用することができ経済的な流体タービン1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、小型の高出力な流体タービンに関し、特に工場の余剰蒸気等を利用して発電することができるものである。またバイオボイラーとの組み合わせによる発電利用が好ましい。
【符号の説明】
【0028】
1 流体タービン
2 流体
3 供給部
4 排出部
5 ケーシング
51 ケーシングの先端
6 フィン
7 ローター
8 厚み部
9 区分空間
10 ローター軸
11 回収部
12 供給口
13 排出口
14 フィン側板
A矢印 流入エネルギーによりフィンを押す方向
B矢印 噴出エネルギーによりフィンを押す方向
C矢印 流入エネルギーと噴出エネルギーによりフィンを押す方向
P矢印 噴出エネルギーの噴出方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温または高圧の流体を供給する供給部3と流体を噴出する排出部4が設けられたケーシング5と、前記ケーシング内に、ローター7の円周表面に回転自在に軸支された複数の椀形状のフィンを所定間隔で備えた、その複数のフィンの左右にドーナツ形状のフィン側板14を設けたローターを設け、流体タービンであって、供給部から、碗形状のフィン6と、隣接する碗形状のフィンと、フィン側板14により密閉された区分空間9に高圧の流体2を供給してフィンを押してローター7を回転させ、隣り合うフィン同士と、供給部と排出部との間のフィン側板14と、ケーシング5とにより略密閉状態の区分空間9を形成して流体の圧力を維持し、さらに回転すると、密閉された高圧の流体を排出部4から噴出し、その噴出エネルギーで、ローターの回転力を高めるようにしたことを特徴とする流体タービン。
【請求項2】
ケーシング5に設けられた供給部3と排出部4の間隔が、フィン1区分以上、フィン2区分以下の近距離に配することにより、供給部より流入した高温状態または高圧状態の流体2がケーシング内において圧力損失を最小限に抑えた状態で排出部より流体が膨張しながら噴出し、この噴出エネルギーで、ローターの回転力を高めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の流体タービン。
【請求項3】
排出部4は、フィン6を最大限押す方向に開口され、そこから噴出される噴射エネルギーでフィン6を押し、ローター7の回転力を高めるようにしたことを特徴とする請求項1又請求項2に記載の流体タービン。
【請求項4】
ケーシング5の外部に排出部より排出された流体を回収する回収部11を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の流体タービン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−241819(P2011−241819A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93815(P2011−93815)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(310006693)