説明

流体ディスペンサ装置

流体ディスペンサ装置であって、本体(10)と、貯蔵容器(20)と、貯蔵容器(20)に取り付けられたポンプまたは弁であるディスペンサ部材(30)と、前記本体(10)に固定された側面駆動システム(40)と、を有し、貯蔵容器(20)に取り付け、または固定されたリング(50)を更に有し、前記リング(50)は、前記側面駆動システム(40)の可動要素(45)と係合するように作られた、1以上の径方向の突起部(55)を有し、1以上の前記突起部(55)は斜角を付けられており、傾斜した径方向端面(56)を備えること、を特徴とする流体ディスペンサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ディスペンサ装置に関し、特に医薬用の鼻スプレー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体ディスペンサ装置は従来技術において公知である。それらは通常、流体を格納した貯蔵容器を有し、当該貯蔵容器にはディスペンサ部材(例:ポンプ、弁)が組み付けられている。ディスペンサ部材は一般的に、ディスペンサヘッドによって駆動されることで、前記貯蔵容器に格納された流体を選択的に投与する。ディスペンサヘッドは、噴霧される流体を通す投与開口部を有する(鼻スプレー装置の場合、流体はユーザの鼻の中に噴霧される)。この種の装置の多くは、ユーザが手動で駆動する。貯蔵容器とディスペンサヘッドとをお互いに対して軸方向に移動させると、それによってディスペンサ部材が駆動される。
【0003】
しかし、この種の装置には問題点が見られる。具体的には、装置の種類が鼻スプレーである場合、装置の駆動のためにユーザが加える軸方向の力により、ディスペンサヘッドがユーザの鼻孔内部で動いてしまう危険が生じるが、ディスペンサヘッドが動くことで、駆動時にユーザが負傷したり、流体の投与が不完全または不適正なものとなったりする危険がある。この問題の解消のために提案されたのが、側面駆動装置である。当該側面駆動装置は通常、回動可能な形で本体に取り付けられたレバーを有し、当該レバーの内側部分は、ディスペンサヘッドおよび貯蔵容器のうち一方と協働し、前記協働する方の要素を他方に対して移動させることで、ディスペンサ部材を駆動するように作られている。
【0004】
しかし、こうした装置は通常、非常に複雑で多数の構成要素を有する。そのため、製造および組立のコストが比較的高くなる。それに加えて、側面駆動システムの径方向の動きをディスペンサ部材の軸方向移動に変換して駆動を実行するための、側面駆動システムとディスペンサ部材との間の仲介構造は、しばしば複雑であり、故障の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第01/003851号
【特許文献2】国際公開第03/095007号
【特許文献3】国際公開第02/020168号
【特許文献4】国際公開第2005/075105号
【特許文献5】欧州特許第1 170 061号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題が発生しない流体ディスペンサ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、安全かつ信頼できる形で毎回駆動されることを保証でき、ユーザを負傷させる危険がない、という流体ディスペンサ装置(具体的には鼻スプレー装置)を提供することを目的とする。
【0007】
そして特に、本発明は、製造および組立が簡単かつ安価である流体ディスペンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のために本発明が提供するのは、流体ディスペンサ装置であって、本体と、貯蔵容器と、貯蔵容器に取り付けられたポンプまたは弁であるディスペンサ部材と、 前記本体に固定された側面駆動システムと、を有し、貯蔵容器に取り付け、または固定されたリングを更に有し、前記リングは、前記側面駆動システムの可動要素と係合するように作られた、1以上の径方向の突起部を有し、1以上の前記突起部は斜角を付けられており、傾斜した径方向端面を備える、という流体ディスペンサ装置である。
【発明の効果】
【0009】
また、前記リングは径方向の前記突起部を2つ有し、当該2つの突起部は同軸上にあって、前記リングの両側に1つずつ対称に延びていること、とするのが効果的である。
また、1以上の前記突起部の断面は、丸みを付けた形、特に円形であること、とするのが効果的である。
また、前記側面駆動システムの前記可動要素は、リングの径方向の突起部の各々のための貫通孔を有し、前記貫通孔には径方向の前記突起部が挿入されること、とするのが効果的である。
【0010】
また、前記貫通孔の内側の輪郭は、丸みを付けられた形状であると共に、細長い形状であること、とするのが効果的である。
また、ディスペンサ部材はポンプであり、ポンプ本体内で摺動するピストンを有し、前記リングが有する軸方向スリーブの第1の軸方向端部は、ピストンの休止位置を定めるフェルールを形成しており、当該軸方向スリーブの第2の軸方向端部は、摺動時のピストンを案内するように作られた管状案内部分に形成されていること、とするのが効果的である。
【0011】
また、前記ポンプには押下部材が組み付けられ、前記押下部材の一部は、前記第2の軸方向端部の内側に組み付けられること、とするのが効果的である。
また、軸方向スリーブである前記管状案内部分は、前記ピストンの軸方向の端部の位置まで延びていること、とするのが効果的である。
また、第2の軸方向端部には、前記押下部材の組み付けを容易にするために、斜角が付けられていること、とするのが効果的である。
【0012】
また、前記リングは、前記ディスペンサ部材を前記貯蔵容器に固定するための固定用リングであること、とするのが効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態のリングを示す概略斜視図である。
【図2】図1と同様の図であり、本発明のリングの別の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の効果的な実施の形態による流体ディスペンサ装置を、図1、2に示すリングを組み込んだ構成で、休止状態において示す概略図である。
【図4】本発明の効果的な実施の形態による流体ディスペンサ装置を、図1、2に示すリングを組み込んだ構成で、駆動状態において示す概略図である。
【図5】本発明の別の実施の形態を示す概略的な部分断面図である。
【図6】図5と同様の図であり、更に別の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する上記の特徴および効果、そして他の特徴および効果については、添付図面を参照しながら、非限定的な例として示す本発明のいくつかの実施の形態について述べる以下の詳細な説明を読むことで、より明らかになるであろう。
本発明の第1の様態として、流体ディスペンサ装置は本体10を有し、これは特に図3、4に示してある。効果的な構成として、本体10は投与開口部5を有している。本体の内部には、投与対象の流体を格納した貯蔵容器20が配置されている。ディスペンサ部材30(図3、4には図示せず)は、公知の方法で(具体的には固定用リングを用いて)、前記貯蔵容器に組み付けられている。貯蔵容器20とディスペンサ部材30とによって形成されたユニットは、駆動時には本体10の内部で軸方向に移動が可能であり、その移動によって1ドーズ(所定量)の流体が投与開口部5を通して投与される。こうした形での駆動を実行するために、本体10は側面駆動システム40を有する。当該側面駆動システム40は、本体に固定されており、具体的にはレバー42と可動要素45とから成る。レバー42は本体10に回動可能な形で取り付けられており、可動要素45は前記レバー42の内側に回動可能な形で取り付けられていると共に、貯蔵容器20およびディスペンサ部材30によって形成されたユニットに接続されている。本発明では、側面駆動システムの可動要素45は、貯蔵器20に取り付けまたは固定されたリング50と係合する。前記リング50は、前記可動要素45と係合するように作られた径方向の突起部55を少なくとも1つ有する。
【0015】
図1、2は、本発明の上記リングの2つの異なる実施の形態を示す。リング50については、ディスペンサ部材30を貯蔵容器20に固定する部材とするのが好ましい。ただし、本リングについては、ディスペンサ部材を貯蔵容器に固定する働きをする固定用要素にかぶせる形で装着するリング、とすることも考えられる。好ましい構成として、リング50は、2つの径方向の突起部55を同軸上に有し、これら突起部55は前記リング50の両側に1つずつ対称的に延びている。効果的な構成として、突起55の断面は丸みを有する(具体的には円形となっている)。こうした形が特に望ましいのは、前記突起55を囲む位置に可動要素45を組み付ける時である。前記可動要素45は、径方向の突起部55の各々を通すための貫通孔46を有し、組み付けにあたっては、特に図3、4に示すように、前記貫通孔46に前記径方向の突起部55が挿入された状態となる。好ましい構成として、前記貫通孔46の内側の輪郭または形状は、丸みが付けられていると共に、具体的には細長くなっている。こうした貫通孔と丸い外形の突起部55とが係合することで、可動要素45が突起部55を中心に回動するにあたっての摩擦は最小限となり、それによって、装置駆動を妨げる抵抗力に対する影響も最小限にすることができる。貫通孔の寸法については、図3、4に示すように、突起部55の寸法より大きくすればよい。
【0016】
ただし、変形例として、突起部55の寸法とほぼ同じ寸法を有した貫通孔を考えることも可能である。本発明では、突起部55には斜角が付けられており、傾斜した径方向端面56を備える。具体的には、前記径方向端面56は、投与開口部5に向かって傾斜している。こうした構成で実装すれば、側面駆動システムの組立作業、特に、貫通孔46に突起部55を挿入するための組立作業が簡単になる。可動要素45は、前記貫通孔46の部分を上から嵌める際に、突起部55の傾斜した径方向端面56によって外向きに変形させられる。その後、前記可動要素が前記突起部55の下側に入ってスナップ留めが実現される。こうした構成で実装すれば、将来のシステム使用時に可動要素45が突起部55から外れてしまう危険はない。
【0017】
図5、6に示すように、ディスペンサ部材30がポンプであり、内部でピストン31が摺動するポンプ本体32を有する場合、効果的な構成として、前記リング50には、図5、6に示すように、前記ピストン31の休止位置を定めるフェルール(ferrule)が形成されている。そうして、好ましい構成として、リング50は軸方向スリーブ500を有し、当該軸方向スリーブ500の第1の軸方向端部510(詳しく言えば、図5、6に示す直立状態における軸方向下側の端部510)が前記フェルールを形成している。効果的な構成として、もう一方の軸方向端部520は、摺動中のピストン31を案内するように作られた管状案内部分530に形成されている。こうした管状案内部分530は、図5、6と同様に、図1にも示してある。
【0018】
押下部材(図示せず)を、図5、6に示すポンプ30に組み付けることも可能であろう。その場合は、押下部材の一部が前記第2の軸方向端部520の内側に組み付けられる構成とすればよい。そうして、第2の軸方向端部520には、前記押下部材の組み付けを容易にするために斜角を付けるのが好ましい。
図5、6に示す直立状態において、軸方向のスリーブ530は、図5、6に示すように、ほぼピストン31の軸方向の上側端部まで延びている。これにより、ポンプ/貯蔵容器の下位組立品を側面駆動システム40に組み入れる作業がより容易になる。
【0019】
図5において留意すべき点は、固定用リング50に径方向の突起部55が見られないことである。本発明の別の様態では、固定用リング50として、ポンプ30を貯蔵容器20に固定する働きをすると共に、ピストン用の管状案内部分を有するが、駆動システムから独立しており、側面駆動システムを伴わない、というリングを用いることも考えられる。こうした構成では、ユーザによるポンプ駆動が軸方向に行われなかった結果として「傾き」が生じる危険を回避することができる。そのため、傾きが生じた場合に起こりうる、ポンプが詰まる危険、漏れが生じる危険、所定量が完全には投与されない危険が抑制される。
【0020】
当然のことながら、図5に示すリング50は、側面駆動システムと共に使用する場合には、上述した2つの側面突起部55を有する構成とするのが効果的である。
図6は、更に別の実施の形態を示す。本実施の形態では、管状案内部分が、ポンプを貯蔵容器に固定する働きをするリングではなく、フェルール(ピストン31の休止位置を定める要素)に形成されている。本実施の形態でもやはり、こうしたフェルールは当然、前記駆動システムが軸方向駆動システムか側面駆動システムかに関わらず、駆動システムから独立して用いることが可能である。
【0021】
以上、本発明について、様々な異なる実施の形態を挙げて説明したが、言うまでもなく、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を逸脱しない形で、これら実施の形態に修正を加えることが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ディスペンサ装置であって、
本体(10)と、
貯蔵容器(20)と、
貯蔵容器(20)に取り付けられたポンプまたは弁であるディスペンサ部材(30)と、
前記本体(10)に固定された側面駆動システム(40)と、を有し、
貯蔵容器(20)に取り付け、または固定されたリング(50)を更に有し、
前記リング(50)は、前記側面駆動システム(40)の可動要素(45)と係合するように作られた、1以上の径方向の突起部(55)を有し、
1以上の前記突起部(55)は斜角を付けられており、傾斜した径方向端面(56)を備えること、
を特徴とする流体ディスペンサ装置。
【請求項2】
前記リング(50)は径方向の前記突起部(55)を2つ有し、当該2つの突起部(55)は同軸上にあって、前記リング(50)の両側に1つずつ対称に延びていること、
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項3】
1以上の前記突起部(55)の断面は、丸みを付けた形、特に円形であること、
を特徴とする請求項1または2に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項4】
前記側面駆動システム(40)の前記可動要素(45)は、リング(50)の径方向の突起部(55)の各々のための貫通孔(46)を有し、
前記貫通孔(46)には径方向の前記突起部(55)が挿入されること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項5】
前記貫通孔(46)の内側の輪郭は、丸みを付けられた形状であると共に、細長い形状であること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項6】
ディスペンサ部材(30)はポンプであり、ポンプ本体(32)内で摺動するピストン(31)を有し、
前記リング(50)が有する軸方向スリーブ(500)の第1の軸方向端部(510)は、ピストン(31)の休止位置を定めるフェルールを形成しており、当該軸方向スリーブ(500)の第2の軸方向端部(520)は、摺動時のピストン(31)を案内するように作られた管状案内部分(530)に形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項7】
前記ポンプ(30)には押下部材が組み付けられ、前記押下部材の一部は、前記第2の軸方向端部(520)の内側に組み付けられること、
を特徴とする請求項6に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項8】
軸方向スリーブである前記管状案内部分(530)は、前記ピストン(31)の軸方向の端部の位置まで延びていること、
を特徴とする請求項7に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項9】
第2の軸方向端部(520)には、前記押下部材の組み付けを容易にするために、斜角が付けられていること、
を特徴とする請求項7または8に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項10】
前記リング(50)は、前記ディスペンサ部材(30)を前記貯蔵容器(20)に固定するための固定用リングであること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の流体ディスペンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−524761(P2011−524761A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514095(P2011−514095)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051134
【国際公開番号】WO2009/153512
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】