説明

流体プロセス制御システムを監視する方法

【課題】多機能または多用途の非常停止バルブコントローラを、さまざまな種類および構成の非常停止装置および関連の補助設備のテストを可能にするために、さまざまに異なる非常停止の構成において使用する。
【解決手段】非常停止バルブとともに使用するためのデジタル・バルブ・コントローラが、2つの圧力センサを備えており、空気式のバルブアクチュエータおよびソレノイドバルブ装置へと接続されるように構成されており、バルブアクチュエータのオンラインでのテストおよびソレノイドバルブのオンラインでのテストを助ける。ソレノイドバルブのテストを実行するために、バルブコントローラは、ソレノイドバルブがきわめて短い時間期間にわたって駆動されるときに、ソレノイドバルブの別個のポートの圧力を測定する。バルブコントローラは、ソレノイド装置が完全に機能または動作できるか否かを、測定された圧力信号の間の差の微分にもとづいて、判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、一般に、プロセス制御環境において使用される非常停止システムに関し、さらに詳しくは、プロセス制御環境において使用される非常停止装置および補助設備のテストおよび診断に使用するための多用途のコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願]
本出願は、2006年1月20日付の米国特許仮出願第60/760,665号(代理人事件番号06005/561731P)にもとづき、この米国特許仮出願の優先権を主張し、この米国特許仮出願の開示は、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとされる。さらに本出願は、2002年4月5日付の「System to Manually Initiate an Emergency Shutdown Test and Collect Diagnostic Data in a Process Control Environment」という名称の米国特許出願第10/117,007号(代理人事件番号06005/37207B)の一部継続出願であり、この米国特許出願第10/117,007号は、2001年4月5日付の「System for Checking Status of Emergency Shutdown Valve」という名称の米国特許仮出願第60/281,852号(代理人事件番号06005/37207)にもとづき、この米国特許仮出願の優先権を主張しており、これらのそれぞれの開示が、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとされる。
【0003】
[背景技術]
安全機器システムは、典型的に、通常は全開または全閉の状態にあって、非常の状況の場合にロジックソルバー、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)、または何らかの形式の非常停止コントローラによって制御されて状態を変化させる非常停止バルブを取り入れている。これらのバルブが正しく機能できることを保証するために、プロセス制御システムの運転員は、典型的には、非常停止バルブを、これらのバルブを部分的または完全に開放または閉鎖するストロークテストを実行することによって、定期的にテストする。これらのテストは、典型的には、プロセスが動作しているとき、または動作できるときに実行されるため、テストを確実に実行したうえで可能な限り速やかにバルブを通常の状態に戻すことが重要である。この文脈において、用語「通常の状態」は、非常が存在せず、かつ非常停止バルブがテストされていないとき、すなわちプロセスが通常どおりに運転されているときの非常停止バルブの位置または状態を指す。
【0004】
多くの場合、非常停止テストは、予め定められた間隔で、遠方に位置するコントローラによって実行される。例えば、非常停止テストは、煩わしいテストの手順および人的資源に関する問題ゆえに、1年に数回だけしか実行されないかもしれない。また、非常停止テストの最中に、実際の緊急事態が生じた場合、テスト対象の非常停止バルブまたは他の非常停止装置を使用することができない。また、限られた定期的なテストは、非常停止テストシステムの機能を確認するための効果的なやり方ではない。結果として、テストをより自動的であってユーザに優しく、かつ信頼できるものとするために、いくつかの場合において、デジタル・バルブ・コントローラが、バルブのテストの作業を助けるようにプログラムされている。
【0005】
さらに、典型的には、非常停止システムが、非常停止装置のテストの最中に緊急事態が発生するという可能性は低いが考えられないわけではない状況においても、非常停止コントローラによる指令を受けたときに非常停止装置(例えば、非常停止バルブ)を安全な状態へと駆動できることが重要である。この文脈において、用語「安全な状態」は、プロセスプラントまたはプロセスプラントの一部分を「安全」にする非常停止装置の位置を指す。典型的には、この安全位置は、プロセスプラントの何らかの部分を停止または中断させる停止装置の位置に関連付けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最終的な非常停止装置(非常停止バルブそのものなど)をテストする多数のシステムが存在しているが、多くの場合、非常停止装置には補助設備が組み合わせられており、補助設備も、任意の特定のプラント位置において非常停止能力が完全に機能できることを保証するためにテストされなければならない。例えば、いくつかの空気バルブの構成においては、非常停止コントローラからの信号に応答してバルブアクチュエータの動作を冗長的に制御するために、ソレノイドバルブが非常停止バルブの空気バルブアクチュエータと非常停止コントローラとの間に接続されている。非常停止バルブが機能できるにもかかわらず、ソレノイド装置が不良となり、非常停止バルブを動作させる冗長の方法として適切に動作できない可能性がある。場合によっては、適切に動作しないソレノイド装置が、非常停止コントローラが非常停止バルブのバルブコントローラへと停止信号を送信する場合に非常停止バルブの適切な動作を妨げる可能性すら存在する。
【0007】
さまざまな非常停止装置およびその補助設備のそれぞれについてテストを実行するために、専用の設備を開発して、プラント内の各非常停止位置に用意することが可能であるが、さまざまな種類の非常停止装置および関連の補助設備をテストするため、またはプラントの他の機能を実行するために、多数のさまざまな状況において使用することができる汎用的または包括的な設備セットを用意することが、より望ましい。例えば、そのような多用途の設備が、さまざまな種類の非常停止バルブおよびソレノイドバルブの構成を制御およびテストできる一方で、この制御およびテストと同時、またはこの制御およびテストに代えて、閉ループ分散プロセス制御システムの一部としても動作できることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非常停止バルブコントローラなどの多機能または多用途の非常停止装置コントローラを、さまざまな種類および構成の非常停止装置および関連の補助設備の制御およびテストを可能にするために、さまざまに異なる非常停止の構成において使用することができる一方で、閉ループプロセス制御の構成などの他のプラント構成においても使用することができる。一例においては、非常停止バルブとともに使用するためのデジタル・バルブ・コントローラが、2つの圧力センサを備えており、空気式のバルブアクチュエータおよびソレノイドバルブ装置へと接続されるように構成されており、バルブアクチュエータのオンラインでのテストおよびソレノイドバルブのオンラインでのテストを助ける。
【0009】
ソレノイド装置のテストを実行するために、バルブコントローラは、ソレノイドバルブがきわめて短い時間期間にわたって駆動されるときに、ソレノイドバルブの別個のポートの圧力を測定することができる。バルブコントローラは、ソレノイド装置が完全に機能または動作できるか否かを、測定された圧力信号の間の差の微分にもとづいて、すなわち測定されたセンサ信号の間の差の経時変化の速度にもとづいて、判断することができる。この場合、デジタル・バルブ・コントローラまたはデジタル・バルブ・コントローラへと接続された非常停止テストシステムが、前記割り出した微分の絶対値が所定のしきい値よりも大きい場合に、ソレノイドが容認できる動作の状態にあると判断することができ、前記割り出した微分の絶対値が同一または別の所定のしきい値よりも小さい場合に、ソレノイドバルブに問題が存在すると判断することができる。
【0010】
1つの場合には、このデジタル・バルブ・コントローラを、バルブアクチュエータ(例えば、ばね/ダイアフラム式のバルブアクチュエータであってよい)へと供給される圧力の測定値にもとづいてバルブを制御するために、圧力トランスデューサとして使用することができる。この場合、デジタル・バルブ・コントローラは、両方の圧力センサを、一方はバルブの制御を実行するために、他方はソレノイドのテストを実行するために、使用することができる。あるいは、デジタル・バルブ・コントローラは、一方の圧力センサを圧力にもとづく制御を行うために使用でき、すなわちバルブのサーボ制御ループにおいて使用することができ、他方の圧力センサを、ソレノイドバルブのテストにではなく、プロセスプラント内の他の何らかの圧力信号を測定するために使用することができる。
【0011】
この他の圧力信号は、必ずしも非常停止装置またはその関連設備の制御またはテストに関係している必要はない。他の場合には、デジタル・バルブ・コントローラが、一方の圧力センサを、バルブのテストに使用される力の大きさを制御または制限するために使用することができる。そのように構成されたとき、デジタル・バルブ・コントローラは、テストの際にバルブの位置を過剰に変化させることによってプロセスに不注意の影響が及ぶことを最小限にすることができる。
【0012】
他の場合には、デジタル・バルブ・コントローラを、ポジショナとして使用することができ、位置センサによってデジタル・バルブ・コントローラへともたらされる位置の測定にもとづいてバルブの動きを制御することができる。この場合、デジタル・バルブ・コントローラは、一方の圧力センサを、非常停止装置に組み合わせられたソレノイドまたは他の設備のテストを実行するために使用することができ、第2の圧力センサを、非常停止装置のサーボ制御ループにおいては必要とされず、あるいは非常停止装置のテストに必要とされないさらなる圧力信号を検出するために使用することができる。この場合、例えば、デジタル・バルブ・コントローラの第2の圧力センサを、プロセス変数信号を非常停止コントローラまたはプロセスの通常の制御に係わるプロセスコントローラへともたらすために、プロセスプラント内の他の位置(非常停止バルブから出力される流体配管、など)へと接続することができる。
【0013】
またさらには、同じデジタル・バルブ・コントローラを、非常停止装置の構成の外部において使用することができ、圧力制御(すなわち、圧力トランスデューサとして)または位置制御(すなわち、ポジショナとして)を使用してバルブを制御することができる。前者の場合には、一方のセンサを、制御の目的で、すなわち圧力フィードバックとして、バルブの空気ループの圧力を測定するために使用することができ、他方のセンサを、バルブに関係せず、あるいはバルブの制御またはテストに必要でない圧力を測定するために使用することができる。後者の場合には、両方のセンサを、バルブに関係せず、あるいはバルブの制御またはテストに必要でない圧力を測定するために使用することができる。
【0014】
非常停止装置コントローラは、プロセッサ、プロセッサへと接続されたメモリ、およびプロセッサへと接続され、例えば非常停止コントローラ、ユーザ、などからテスト開始信号を受信するように構成された通信入力を備えることができる。1つ以上の第1のテストルーチンが、メモリに保存され、それぞれ或る種の非常停止テストを例えば非常停止コントローラからの適切なテスト開始信号の受信に応答して実行すべく、プロセッサにおいて実行されるように構成されている。これらのテストルーチンは、例えば、バルブについての部分ストロークまたは全ストローク・テスト・ルーチン、ソレノイドバルブについてのテストルーチン、などであってよい。1つ以上の第2のルーチンが、メモリに保存され、例えばソレノイドバルブの非常停止テストの際に、1つ以上のセンサ出力を後の取り出しのためにメモリに保存し、さらに/または非常停止装置に組み合わせられた1つ以上の装置(ソレノイドバルブなど)の動作の機能を判断すべく処理するために、プロセッサにおいて実行されるように構成されている。
【0015】
上述のように、非常停止装置コントローラは、通信ユニットを備えることができ、通信ユニットが、プロセッサへと接続され、HARTプロトコル、FOUNDATION(登録商標)Fieldbus通信プロトコル、あるいは他の任意の所望の独自または汎用の通信プロトコルなど、オープンな通信プロトコルを使用して、通信ネットワークまたは通信線を介して診断装置または他のコントローラと通信する。通信ユニットは、いくつかの構成において、収集した1つ以上のセンサ信号を、通信ネットワークまたは通信線を介してプロセス制御システム内のさらなる装置へと送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
多数の産業において、バルブおよび他の機械的な装置が、非常の状況が生じた場合にさまざまなプロセスを迅速に安全な状態にするために、プロセス制御システムにおいて使用されている。これらのバルブおよび関連の電気的/機械的装置を、それらが適切に機能する状態にあることを保証するために、定期的にテストすることが重要である。例えば、非常停止バルブの動作を確認するために、バルブの機械的な動きを、プロセスに過度の影響を及ぼすことなく、確実かつ安全なやり方で確認する必要がある。さらに、バルブが、付随のソレノイドなどといった付帯設備を有している場合には、この付帯設備を、プロセスが動作している状態で安全かつ確実なやり方で、しかしながらプロセスを過度に乱すことのないやり方で、テストできることが望まれる。
【0017】
図1は、プロセスプラントに接続された非常停止バルブ12の動作をテストするために使用することができる典型的な非常停止システム10を示している。図1の実施の形態においては非常停止バルブのシステムが示されているが、当業者であれば、非常停止システム10が、他の種類の制御装置や他の種類のバルブ装置など、他の種類の非常停止装置を含んでもよく、あるいは非常停止システム10を、他の種類の非常停止装置を制御するために使用できることを、理解できるであろう。
【0018】
図1に示されているように、非常停止バルブ12を、非常停止バルブ12の入口12aへと流体を供給する部位および非常停止バルブ12の出口12bから流体を受け取る部位を有するパイプライン13など、プロセスプラントの流体配管に配置することができる。バルブアクチュエータ14によって駆動される非常停止バルブ12を、通常は2つの位置のうちの一方に位置させることができ、すなわち流体が入口12aと出口12bとの間を自由に流れることができる全開位置、または入口12aと出口12bとの間の流体の流れを阻止する全閉位置に位置させることができる。非常停止バルブ12が本当の非常停止の状況において適切に機能することを保証するために、非常停止バルブ12を、バルブアクチュエータ14によって非常停止バルブ12を途中まで開放または閉鎖することによって、定期的にテストすることができ、これが部分ストロークテストと称される。当然ながら、バルブ12が動作できることをテストするために、他の種類のテストを実行することが可能である。
【0019】
図1の典型的なシステムにおいては、非常停止システム10が、空気制御のアクチュエータとして示されているバルブアクチュエータ14を備えており、さらにデジタル・バルブ・コントローラ(DVC)16およびソレノイドバルブ18を、バルブアクチュエータ14の動作を制御すべく空気圧に関してバルブアクチュエータ14へと接続して備えている。さらに、DVC16およびソレノイドバルブ18は、通信線および/または動力線22および24を介して非常停止コントローラ20へと連絡可能に接続されている。一実施の形態において、DVC16は、Fisher Controls International LLCの販売するDVC6000というバルブコントローラであってよい。図1の実施の形態においては、ソレノイドバルブ18が、線22にて非常停止コントローラ20から送られる24ボルトのDC電力信号によって駆動されるソレノイドSを有する一方で、DVC16が、4〜20ミリアンペアの通信線24(例えば、伝統的な4〜20maの制御線、HARTプロトコル線、などであってよい)を介して非常停止コントローラ20と通信する。当然ながら、所望であれば、DVC16を、他の任意の所望の独自または汎用の通信ネットワーク(FOUNDATION(登録商標)Fieldbusネットワーク、Profibus通信ネットワーク、あるいは他の任意の公知の通信ネットワークまたはこれから開発される通信ネットワーク、など)を介して、非常停止コントローラ20へと通信可能に接続することができる。同様に、ソレノイドバルブ18のソレノイドSも、任意の所望または適切な通信線または電力線にてもたらされる他の任意の所望の通信または電力信号を使用して、非常停止コントローラ20へと接続され、非常停止コントローラ20から制御信号を受け取ることができる。
【0020】
図1のバルブアクチュエータ14は、ばねによって付勢されたダイアフラム(図示されていない)の片側(本明細書において、上側と称される)において空気信号を受け取って、バルブ12のバルブステム28の運動を生じさせるように構成されたばね/ダイアフラム式のアクチュエータとして示されている。しかしながら、所望であれば、バルブアクチュエータ14は、片側または両側のピストン式のアクチュエータであってよく、あるいは他の任意の種類の公知の空気式のバルブアクチュエータであってよい。アクチュエータ14を制御するために、DVC16が、空気供給圧力信号を供給配管30から受け取り、空気配管34、ソレノイドバルブ18のバルブ部分、および空気配管36を介してバルブアクチュエータ14の上側へと空気信号を供給する。理解されるとおり、DVC16が、アクチュエータ14の上側へと供給される圧力を制御することによって、バルブアクチュエータ14の動きを制御し、バルブステム28の動きを制御する。当然ながら、DVC16は、非常停止コントローラ20が通信線24を介してDVC16へと送信する制御信号に応答して、バルブアクチュエータ14のダイアフラムの動きを生じさせることができる。
【0021】
DVC16は、部分ストロークテストまたは全ストロークテストなど、バルブ12をテストするための1つ以上のストロークテストを保存するメモリを備えることができ、非常停止コントローラ20によって送信され、DVC16そのものにおいてユーザまたは作業者によって入力され、あるいは他の任意の所望のやり方でDVC16へともたらされる1つ以上のテスト信号に応答して、これらのテストを始めることができる。当然ながら、DVC16を、バルブ12およびバルブアクチュエータ14に対して、これらの装置の動作を保証すべく任意の公知または所望のテストを実行するために使用することができる。
【0022】
図1に示したシステムなど、空気動作のバルブアクチュエータを使用する安全機器付きのシステムにおいては、空気ソレノイドバルブ18が、非常の要請が生じたときにすべての空気をアクチュエータ14から排気して、バルブ/アクチュエータの組み合わせを非常の位置、すなわち安全状態に強制的に位置させるように保証する冗長手段として使用されることが多い。通常の非常でない状況においては、バルブ12を通常または非常でない位置へと押し付けるべくバルブアクチュエータ14に圧力が加えられ、ソレノイドバルブ18が、アクチュエータ14の空気圧を維持し、この圧力を空気配管34を介してDVC16によって調節できるように位置している。とくには、図1の実施の形態において、非常停止バルブ12の通常の動作(すなわち、通常の非安全または非停止の状態)の際には、図1に示されるとおりソレノイドバルブ18のポートAがポートBにつながり、DVC16によって配管36の圧力を制御し、バルブアクチュエータ14の該当の入力の圧力を制御することができる。しかしながら、非常停止の動作の際には、ソレノイドバルブ18が、(通常は、線22からの24ボルトのDC電力信号がなくなることによって)ソレノイドバルブ18のポートAをポートCへと接続するように動作すると同時に、配管34を配管36から切り離す。ポートCが大気へと通気されることを理解すべきである。この動作が生じるとき、配管36を介してバルブアクチュエータ14へと供給される圧力が大気へと逃がされ、バルブアクチュエータ14の内部のばねで付勢されたダイアフラムおよび関連のリンクが、バルブステム28およびバルブの栓を通常の位置から非常の位置へと移動させる。
【0023】
このように、通常の動作においては、ソレノイドポートAおよびBの間を空気または他の気体が自由に通過できるようにソレノイドバルブ18を動作させるべく、ソレノイドバルブ18の入力に電力が加えられて維持され、したがってDVC16が、アクチュエータ14と空気をやり取りして、バルブアクチュエータ14の上側の内圧を制御することができる。非常停止が生じたとき、ソレノイドバルブ18のソレノイドSから電力が除かれ、正常なソレノイドバルブ18は、反対の位置へと移動することができる。この動作によって、ポートBが閉じられ、ポートAがポートCへと接続され、バルブアクチュエータ14の内部の空気を大気へと逃がすことができる。この動作は、ソレノイドバルブ18が動かなくてもバルブ12がバルブアクチュエータ14によって非常の位置へと動かされることになるDVC16による配管34の圧力の除去(例えば、この圧力を大気へと逃がすことによる)に関し、連動して生じても、冗長の動作として生じてもよい。
【0024】
上述のように、実際の非常の場合にソレノイドバルブ18が想定のとおりに動作して、DVC16がバルブアクチュエータ14から実際に切り離され、気体/空気のすべてまたは大部分がバルブアクチュエータ14の上側から逃げ出してバルブ12が非常の着座位置へと移動できることを保証するために、プラントの通常の動作の最中にソレノイドバルブ18を定期的にテストすることが望ましい。
【0025】
このテストの手順を助けるために、DVC16に、2つの圧力センサ40および42が、ソレノイドバルブ18を通過する空気または他の気体の流れを監視するように配置されて設けられる。詳しくは、圧力センサ40が、ソレノイドバルブのポートB(すなわち、配管34)に供給されるバルブコントローラの出力圧力を監視する一方で、センサ42が、ソレノイドバルブのポートAにおけるバルブアクチュエータの圧力へと流通可能に接続され、これを監視する。図1に示されているように、センサ42は、配管45を介してソレノイドバルブ18のポートAへと流通可能に接続されている。さらに、DVC16に、センサ40および42によって行われた測定結果を収集、保存、および処理し、測定された圧力信号にもとづいて、ソレノイドバルブ18が正しく動作できるかどうかを判断(さらに詳しくは、後述)できるテストルーチンを備えることができる。
【0026】
概して、ソレノイドバルブ18のテストの際に、非常停止コントローラ20が、短い時間期間にわたってソレノイドバルブ18のソレノイドSから電力を取り除くことで、正常なソレノイドバルブを動かすことができる。このとき、センサ40によって測定されるコントローラの出力圧力が、名目上一定のままである(DVC16が配管34の圧力を大気へと通気しないため)一方で、センサ42によって測定されるポートAの圧力は、バルブアクチュエータ14の排気につれて速やかに低下する。概して、ソレノイドバルブ18が機械的に正常であることを、ソレノイドバルブ18が或る1つの位置から別の位置へと移るときの移動の速度および程度を推測することによって、評価することができる。この推測は、センサ40および42によって測定される圧力の間の差の絶対値を、時間の関数として連続的に監視または測定することによって行うことができる。
【0027】
より詳しくは、ソレノイドバルブ18が途中までしか動作しない場合、ポートA、B、および/またはCが完全に開放または閉鎖されることはない。そのような減弱したソレノイドの移動は、バルブアクチュエータ14の排気の速度を低下させ、結果としてポートAの圧力の変化の速度が、正常または通常どおりに動作するソレノイドバルブ18において生じるポートAの圧力の変化の速度よりも遅くなる。さらに、ソレノイドバルブの構成によっては、このような不完全な作動によって、ポートBが大気へと不完全に開く可能性があり、センサ40によって測定されるポートBの圧力も(同じにとどまらずに)低下する可能性がある。これらの現象のどちらも、ポートAおよびBの間の圧力差の変化の速度を低下させる。同様に、ソレノイドバルブ18が、物理的な状態の劣化によって引き起こされる摩擦ゆえによりゆっくりと作動する場合、ソレノイドバルブ18のポートA、B、および/またはCもよりゆっくりと開閉され、やはりポートAおよびBの間の圧力差の時間変化の速度に影響が及ぶ。
【0028】
結果として、ソレノイドバルブ18のテストの際(すなわち、ソレノイドバルブ18のソレノイドSから電力が取り除かれるとき)に、DVC16が、センサ40および42によって実行される圧力の測定値を収集および保存することができる。テストの最中または後で、DVC16は、これらの測定値を処理して、ソレノイドバルブ18の動作の状態を判断することができる。とくには、DVC16は、ソレノイドバルブ18が正常であるか否かを判断するために、一般に下記の式(1)によって定められるとおりの離散時間ドメイン・デジタル・アルゴリズムを実行することができる。
【0029】
DP = abs((S1−S2)dt) (1)
式中、DPは、差圧の時間に関する微分であり、S1は、圧力センサ40の測定値であり、S2は、圧力センサ42の測定値である。
しかしながら、同じ基本的計算または式の別の実現も可能であり、代替として使用可能であることを、理解できるであろう。
【0030】
上記式(1)を、ソレノイドバルブ18の2つのポートAおよびBの間の差圧の時間微分の絶対値を計算するために、ソレノイドバルブのテストの最中に定期的に実行でき、あるいはソレノイドバルブのテストに関連した別個の時点において実行することができる。この式の出力は、ソレノイドバルブ18のポートAのポートBに対する圧力低下の変化の速度を反映している。理解されるとおり、値DPは、圧力差がより迅速に変化する場合、すなわちソレノイドバルブが線22からの電力の除去に応答してより素早く動作する場合に、より大きくなる。量DPを、予想のしきい値MinDPと比較することによって、この圧力の推移が、正常なソレノイドの状態を構成するのに十分であるか否かが規定される。換言すると、適切に動作しており、障害または他の拘束性の摩擦が存在していないソレノイドバルブは、新しい位置へと素早く「切り替わ」り、より大きなDPの値をもたらす急峻で素早い圧力変化を生み出す。詰まりが存在し、動きが遅く、あるいは完全には作動しないソレノイドバルブは、より遅い丸みを帯びた圧力波形またはより小さな圧力差をもたらし、時間に関する微分(DP)の振幅がより小さくなる。MinDP未満のDP値をもたらすソレノイドバルブは、実際の非常の際に必要となったとき、想定どおりの動作に失敗する危険があると判断することができ、したがって不良であり、あるいは修理または交換の必要があると判断することができる。
【0031】
実施、すなわち実際のテストの際には、非常停止コントローラ20などといった外部のシステムが、ソレノイドバルブのテストを始めるようにDVC16へと指示することができ、センサ40および42からのセンサ測定値を収集し、センサ40および42のうちの1つ以上の入力について圧力パルスを待つことによってテストが開始される。この圧力パルスの受領が、上記式(1)の周期的な評価を開始させることができる。テスト信号をDVC16へと送信した後に、非常停止コントローラ20は、短い瞬間にわたって線22上のソレノイドの動力を中断することができる。動力の中断の実際の時間は、システムの動態に応じて決められるが、典型的には、数十ミリ秒または数百ミリ秒程度であってよい。この時間は、通常の動作圧力のもとで正常なソレノイドが完全に動くために十分に長くなければならないが、制御対象のプロセスに有意な外乱を持ち込むことがないよう、バルブ12に有意な実際の動きを引き起こすためには不十分な長さでなければならない。とくには、センサ40および42ならびにこれらのセンサをソレノイドバルブ18のポートAおよびBへと接続する空気配管が、これらのポートの圧力の低下または変化を割り出すように構成されるが、ソレノイドバルブ18は、バルブアクチュエータ14がきわめて大きく動いたり、あるいはバルブ12を有意な量にて実際に動かしたりできるほどには十分に長くは動かされない。すなわち、ソレノイドバルブ18の動力を、ソレノイドバルブ、バルブアクチュエータ、およびバルブステムの構成の動作に付随する不感時間未満、または不感時間程度の時間にわたって中断することができ、バルブ12が実際に動き始める前に、ソレノイドバルブ18に再び動力を供給して、通常の非常でない状況または状態へと復帰させることができる。当然ながら、この動作は、ソレノイドバルブ18がバルブ12よりもはるかに素早く(例えば、数桁高速に)動作することを仮定しているが、典型的な実情もそのとおりである。
【0032】
いずれにせよ、ソレノイドバルブ18への動力が回復された後に、例えば通信ネットワーク24を介して非常停止コントローラ20によって、信号DPが想定の基準MinDPを超えるために十分に大きかったか否かを判断するために、DVC16に対して照会を行うことができる。信号DPが想定の基準MinDPを超えるために十分に大きかった場合、ソレノイドバルブ18は正常であると見なされる。当然ながら、上述の式(1)の計算を、ソレノイドバルブがソレノイドSの動力の中断に応答して或る位置から別の位置へと移動している最中に行うことができ、ソレノイドバルブ18が非常の位置にある(すなわち、ポートAがポートCへと接続されている)ときに行うことができ、さらには/あるいはソレノイドバルブ18がソレノイドSへの動力の再供給に応答して或る位置から別の位置へと移動している最中に行うことができる。
【0033】
概して、値MinDPは、ソレノイドの種類、関係する圧力、およびシステムの動態にもとづいてユーザによって調節可能または選択可能であってよく、例えば実験テストによるなど、任意の所望のやり方で決定することができる。またさらには、本明細書において提示される説明は、常時動力の供給を受けているソレノイドおよび常時加圧されているアクチュエータの文脈において提示されている。しかしながら、本明細書において説明される技法は、ソレノイドに常時は動力が供給されておらず、非常の要請の状況においてのみ動力が加えられるシステム、および/またはアクチュエータに通常は圧力が加えられておらず、非常の際にのみ圧力が加えられるシステム、あるいはこれらの任意の組み合わせにも、適用可能である。またさらには、圧力の計算を、テストの最中にDVC16によって実行されるものとして説明したが、圧力の計算を、ソレノイドバルブ18が動かされた後で、すなわちテストの後で、収集された(すなわち、保存された)圧力信号にもとづいて行うことも可能であり、さらには/あるいは非常停止コントローラ20など、任意の他の装置によって実行することも可能である。この場合、DVCは、センサ40および42からの圧力信号を、リアルタイムまたは保存された圧力信号として、非常停止コントローラ20へと供給する。またさらには、式(1)の微分の計算を実行する任意の手段を、例えば周期的なデジタルサンプリングおよびデジタル計算、機械的な装置、あるいはアナログ電子回路を使用して、実行することができる。
【0034】
次に、図2を参照すると、DVC16のブロック図が、DVC16に関する内部部品の一部を示すべく描かれている。とくには、DVC16は、図1に示した圧力センサ40および42に加えて、プロセッサ50、メモリ52、1つ以上のアナログ‐デジタル(A/D)変換器54、1つ以上のデジタル‐アナログ(D/A)変換器56、および電流‐圧力変換器58を備えている。メモリ52が、バルブ12およびバルブアクチュエータ14をテストするためのテスト60ならびにソレノイドバルブ18および他の関連の装置をテストするためのテスト62を含むインストラクションまたはスクリプトを保存するために使用される。また、メモリ52は収集されたセンサ信号および診断データも保存する。A/D変換器54は、センサ40および42からの信号などのアナログセンサ入力を、プロセッサ50が直接処理でき、さらには/あるいはメモリ52に保存することができるデジタル信号に変換する。DVC16によって取得および保存することができるセンサ入力の他の例として、バルブステムの移動または位置の信号(または、バルブの栓の移動または位置の信号)、出力配管の圧力信号、ループ電流信号、などが挙げられる。
【0035】
D/A変換器56は、プロセッサ50からの複数のデジタル出力を、場合により圧力または空気スイッチ64を制御すべく電流‐圧力変換器58によって使用することができるアナログ信号へと変換することができる。空気スイッチ64は、(図1の)圧力供給配管30を図1の配管34などといった1つ以上の出力配管へと接続する。当然ながら、空気スイッチ64がさらに、あるいは場合によって、加圧気体を大気へと排出するために、配管34を大気配管65へと接続してもよい。代案として、電流‐圧力変換器58が、圧力の切り替えおよび制御の機能を実行するために、デジタル信号を直接的にプロセッサ50から受信してもよく、あるいは通信ユニット70からの4〜20maの電流信号など、アナログの電流信号を受信してもよい。
【0036】
通信ユニット70は、図1の通信ネットワーク24へのインターフェイスとして機能する。通信ユニット70は、任意の所望の通信プロトコルに組み合わせられた任意の所望の種類の通信スタックまたはソフトウェア/ハードウェアの組み合わせであってよく、あるいは任意の所望の通信プロトコルに組み合わせられた任意の所望の種類の通信スタックまたはソフトウェア/ハードウェアの組み合わせを含むことができる。公知のとおり、通信ユニット70は、プロセッサ50によって受信された信号を非常停止コントローラ20または通信ネットワーク24へと接続された他の任意の装置(バルブ12に関連しないプロセスの1つ以上の部位の制御を担当するプロセスコントローラ、ユーザインターフェイス、または他の任意の装置、など)へと通信できるようにすべく機能する。とくには、プロセッサ50が、センサ40および42からの圧力信号を受信および処理でき、これらの信号の1つ以上を、通信ユニット70および通信ネットワーク24を介して他の装置へと送信されるデジタルデータとして提供することができる。このやり方で、センサ40および42の1つ以上を、プロセスプラントにおいて図1の非常停止システム10の制御および/またはテストに必要でない測定行為を実行するために使用することができる。この特徴は、DVC16を、非常停止装置の構成部品の制御および/またはテストのためにセンサ40および42の両方は必要でないプロセスまたは非常停止装置において、より多用途かつ有用にする。
【0037】
図2に示されているように、さらにDVC16は、クロック72および補助入力インターフェイス74を備えることができ、補助入力インターフェイス74を、補助インターフェイス74を介してDVC16へと直接接続される電気スイッチまたは他の装置からの入力など、補助入力を監視および受信すべくプロセッサ50によって使用することができる。さらに、所望であれば、DVC16は、ハウジング76を備えることができ、ハウジング76は、火花がプラント内の爆発性の気体へと達することがないようにするために使用され、非常停止システム10が爆発を引き起こす可能性を少なくする防爆ハウジングであってよい。
【0038】
DVC16を、図1のバルブ12、バルブアクチュエータ14、およびソレノイドバルブ18についてのストロークテストおよび完全性テストを保存および実行するものとして説明したが、DVC16が、センサ40および42によって収集されるデータに加え、あるいはセンサ40および42によって収集されるデータに代えて、DVC16によって収集される他の診断データにもとづき、あるいはDVC16によって収集される他の診断データを使用する他の任意の種類のテストまたは任意の追加のテストも保存および実行できることを、理解できるであろう。例えば非常停止テストの際に収集されるセンサまたは診断データを、図2には示されていない他の種類のセンサによって収集することができ、さらには/あるいは補助インターフェイス74または通信ユニット70を介してDVC16と通信できる携帯型のコンピュータ装置を使用して取り出すことができる。考えられる多数のテストが、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとされる米国特許出願公開第2002−0145515 A1号に記載されている。以上に加え、あるいは以上に代えて、DVC16は、必要に応じて収集したデータを、他の装置による処理のために、例えば非常停止コントローラ20を介して主制御室へと送り返すことができる。
【0039】
図3は、図1および2のDVC16をわずかに異なるやり方で使用する非常停止システム100の別の構成を示している。この構成および後述される図4の構成は、あくまで本明細書において説明されるDVC16が大きな変更を必要とすることなくさまざまなプロセスプラントの構成において使用できるように十分に多用途である多数のやり方のいくつかの例を示すために用意されているにすぎない。図3の非常停止システム100は、図1のシステム10に類似しており、類似する構成要素が同じ参照番号を有している。しかしながら、図3のシステム100においては、DVC16が、上述したソレノイドバルブのテストを実行するようには設定されておらず、代わりに、センサ40の出力を使用して、例えばDVC16における非常停止信号の受信に応答してバルブアクチュエータ14を任意の所望の様相で動作させるべくバルブアクチュエータ14の閉ループ圧力制御を実行し、あるいは部分ストロークテストなどのバルブアクチュエータ14のテストを実行するように構成されている。この場合に、DVC16は、センサ40をバルブアクチュエータ14のための圧力トランスデューサとして動作するように使用して、バルブ12の任意の種類の制御をもたらすことができる。
【0040】
一方で、図3に示されているように、DVC16の第2のセンサ42を、バルブ12、バルブアクチュエータ14、またはソレノイドバルブ18の制御および/またはテストには必要でないプロセス変数の測定を得るように、プロセス内の任意の所望の流体配管へと接続することが可能である。図3においては、センサ42が、バルブ12の出口12bへと接続されるものとして示されているが、代わりに、他の任意のプロセス制御装置または設備に組み合わせられた他の任意の流体配管または圧力取り出し口へと接続することが可能である。この他のプロセス設備も、必須ではないが、非常停止装置100に関連付けることが可能である。さらに、プロセス変数であるセンサ42の出力を、DVC16によって保存して、通信ネットワーク24を介して非常停止コントローラ20へと送信し、主通信コントローラまたは補助インターフェイス74(図2)を介して携帯型の装置へと送信し、あるいは通信ネットワーク24または補助インターフェイス74を介して非常停止システム100に関係しない分散コントローラまたはユーザインターフェイスへと送信するなど、他の装置へと送信できることを、理解できるであろう。このように、センサ42からのセンサデータの収集および使用は、DVC16が位置している非常停止装置またはシステムにおける使用に限定されない。この特徴は、DVC16によって、分散プロセス制御システムまたはプロセスプラントに組み合わせられた保守システムへと、補助の圧力の入力を提供できるようになるため、非常停止システムの一部として使用されるときのDVC16をより多用途にする。
【0041】
あるいは、非常停止装置100を、図3に示したように構成することができ、DVC16がバルブ12の位置の制御を実行すべく動作し、すなわちDVC16がポジショナとして動作する。しかしながら、この場合、センサ40を、図3に示したとおり、位置制御のサーボループに問題が生じた場合(このループに組み合わせられた位置センサの故障の場合、など)に後備の制御方法としての圧力制御を実行するように、接続することができる。この後備の制御方法は、2005年8月2日付の「System and Method for Transfer of Feedback Control for a Process Control Device」という名称の米国特許出願第11/195,281号にさらに詳しく記載されており、この米国特許出願の開示は、ここでの言及によって本明細書に取り入れられたものとする。しかしながら、この場合、依然としてさらなるセンサ42を、バルブ12およびバルブアクチュエータ14の構成の外部の圧力信号を測定するために使用することができる。参照符号40によって指し示されるセンサを、図3において圧力制御を実行するものとして説明したが、別の実施の形態は、後備の制御方法としての圧力制御を実行する参照符号40によって指し示されるセンサまたは参照符号42によって指し示されるセンサを含むことができる。さらに、代案として、参照符号40によって指し示されるセンサを、バルブ12およびバルブアクチュエータ14の構成の外部の圧力を測定するための圧力センサとして使用してもよい。このように、いずれのセンサも、所望の用途に必要なとおりに上述の機能のいずれかを実行できることを、理解すべきである。
【0042】
同様に、図4は、非常停止装置の一部ではないバルブ12およびバルブアクチュエータ14の組み合わせを制御するため、閉ループバルブ制御の構成110において使用される図1および2のDVC16を示している。閉ループバルブ制御の構成110は、図1のシステム10と同一または同様の構成要素を含んでおり、類似の構成要素は同じ参照番号を有している。しかしながら、図4の構成110においては、DVC16が、プロセスコントローラ200へと接続されるものとして示されており、この場合には非常停止装置またはシステムに関係しないプロセスバルブであってよいバルブ12の標準的なサーボ制御をもたらすために使用される。この構成において、DVC16のセンサ40を、バルブアクチュエータ14の圧力制御を実行するために、バルブアクチュエータ14の入力へと接続することができる(例えば、空気配管34へと接続することができる)。ここで、DVC16はバルブ12を制御するための従来の圧力トランデューサとして動作する。しかしながら、図4に示されているとおり、圧力センサ42は、バルブ12の制御には必要でない外部の圧力測定を得るために、バルブおよびバルブアクチュエータの構成の外部へと接続されている。このように、先に説明した構成と同様のやり方で、DVC16は、プロセスコントローラ200が、センサ42をプロセスプラント内に配置されたさらなる圧力送信機として利用することを可能にする。
【0043】
あるいは、バルブ制御の構成110を、図4に示すとおりに構成でき、DVC16が、バルブ12の位置の制御を実行するように動作し、すなわちDVC16が、プロセス制御の枠組みにおいてポジショナとして動作する。しかしながら、この場合、依然としてセンサ40を、図4に示したとおり、位置制御ループに問題が生じた場合(位置センサの故障の場合、など)に後備の制御方法としての圧力制御を実行するように接続することができる。この後備の制御方法は、上述のとおり米国特許出願第11/195,281号にさらに詳しく記載されている。
【0044】
またさらには、図4には示されていないが、DVC16がバルブ12の位置の制御を実行するために使用される場合、すなわちDVC16がプロセス制御の枠組みにおいてポジショナとして動作する場合に、センサ40および42の両者を、バルブ12またはバルブアクチュエータ14の制御またはテストに関係しない圧力信号など、プロセスプラントに関連または存在する任意の所望の圧力信号を測定するための外部または補助の圧力送信機として使用することができる。当然ながら、センサ40および42の出力を、DVC16に保存することができ、さらに/または例えばプロセスコントローラ200、ユーザインターフェイス装置(図示せず)、などといった他の装置へと通信ネットワーク24を介して送信することができる。
【0045】
上述の説明から、DVC16を多数のさまざまなプロセスプラントの構成および筋書きにおいて、さまざまな用途のためにさまざまな圧力測定をもたらすために使用することができ、さらにDVC16を、これらの圧力測定を実行する場合に、非常停止装置の一部または分散プロセス制御装置の一部として使用できることを、理解できるであろう。DVC16を、2つの圧力センサ40および42を含むものとして説明および図示したが、DVC16が、2つの圧力センサの使用には限定されず、代わりに、プロセスプラント内で他の圧力測定を実行するために、さらなる圧力センサをDVC16に設けてもよいことを理解できるであろう。
【0046】
本発明を、特定の例を参照して説明したが、それらはあくまでも説明を目的とするものであって、本発明を限定しようとするものではなく、本明細書に開示された実施の形態について、本発明の技術的思想および技術的範囲から離れることなく変更、追加、および/または削除を行うことが可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】空気式の非常停止バルブ、バルブアクチュエータ、デジタル・バルブ・コントローラ、およびソレノイドバルブを非常停止の動作およびテストを実行するように構成して備えている典型的な非常停止システムのいくつかの構成部品の概略図である。
【図2】図1の非常停止システムに組み合わせられたデジタル・バルブ・コントローラのブロック図である。
【図3】典型的な非常停止システムの概略図であり、図1および2のデジタル・バルブ・コントローラを、非常停止システムにおいて動作するとともに、非常停止システムによって使用されることがなく、あるいは非常停止システムに関係しない圧力信号を収集するようにも構成して備えている。
【図4】典型的なバルブの構成の概略図であり、図1および2のデジタル・バルブ・コントローラを、プロセスプラントの分散制御システムにおいてバルブの制御を実行すべく動作するとともに、バルブの閉ループ制御に使用されない1つ以上の補助的な圧力信号を収集するようにも構成して備えている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の位置と停止位置との間を移動することができる制御バルブ、
前記第1の位置と前記停止位置との間の前記制御バルブの動作を制御するためのバルブコントローラ、
前記制御バルブの移動を生じさせるべく、前記バルブコントローラへと接続された流体制御配管、
前記流体制御配管に接続され、前記制御バルブを前記第1の位置から前記停止位置に向かって作動させるべく動作することができる補助部品、
前記バルブコントローラへと連絡可能に接続され、前記補助部品の動作の際に前記流体制御配管上の第1の位置における第1の圧力を検出すべく動作することができる第1の圧力センサ、
前記バルブコントローラへと連絡可能に接続され、前記補助部品の動作の際に前記流体制御配管上の前記第1の位置とは異なる第2の位置における第2の圧力を検出すべく動作することができる第2の圧力センサ、および
前記第1の圧力および前記第2の圧力にもとづいて前記補助部品の動作の状態を判断すべく、前記バルブコントローラによって実行されるロジック
を備える流体プロセス制御システム。
【請求項2】
前記第1の圧力が、前記支持部品の入口圧力であり、前記第2の圧力が、前記支持部品の出口圧力である請求項1に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項3】
前記バルブコントローラが、前記支持部品の動作の際に前記入口圧力と前記出口圧力との間の圧力差および該圧力差の変化の速度を割り出すべく前記ロジックを実行するプロセッサをさらに備えている請求項2に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項4】
前記バルブコントローラが、しきい値速度を保存するメモリをさらに備えており、前記プロセッサが、前記変化の速度を前記しきい値速度と比較して、前記補助部品の動作の状態を判断する請求項3に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記圧力差の時間微分を計算することによって前記圧力差の変化の速度を割り出す請求項3に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項6】
前記第1の圧力センサが、前記補助部品の動作中の複数のインスタンスに対応する複数の入口圧力を検出し、前記第2の圧力センサが、前記複数のインスタンスに対応する複数の出口圧力を検出する請求項2に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項7】
前記バルブコントローラが、前記複数の入口圧力と対応する前記複数の出口圧力との間の差にもとづいて複数の圧力差を割り出して、該複数の圧力差の変化の速度を割り出すべく前記ロジックを実行するプロセッサをさらに備えている請求項6に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項8】
前記バルブコントローラが、しきい値速度を保存するメモリをさらに備えており、前記プロセッサが、前記変化の速度を前記しきい値速度と比較して、前記補助部品の動作の状態を判断する請求項7に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項9】
前記補助部品が、前記バルブコントローラを作動させるべく前記流体制御配管を選択的に空にするためのソレノイドバルブを含んでいる請求項1に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項10】
前記流体制御配管が、空気制御配管である請求項1に記載の流体プロセス制御システム。
【請求項11】
第1の位置と停止位置との間を移動することができる制御バルブ、前記制御バルブの作動を制御するためのバルブコントローラ、前記制御バルブを動かすために前記バルブコントローラへと接続された流体制御配管、および前記制御バルブを動かすために前記流体制御配管に接続された補助部品を有するバルブ制御ループを監視する方法であって、
前記補助部品を駆動させる工程、
前記補助部品の駆動時に、前記流体制御配管上の2つの別個の位置の間の圧力差を割り出す工程、および
前記圧力差にもとづいて前記補助部品の動作特性を判断する工程
を含む方法。
【請求項12】
圧力差を割り出す工程が、
前記流体制御配管上の第1の位置の第1の圧力を検出する工程、
前記流体制御配管上の前記第1の位置とは別個の第2の位置の第2の圧力を検出する工程、および
前記第1の圧力と前記第2の圧力との間の差を計算する工程
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記補助部品の動作特性を判断する工程が、
前記圧力差の変化の速度を割り出して、該変化の速度をしきい値速度と比較する工程を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧力差の変化の速度を割り出す工程が、
前記圧力差の時間微分を計算する工程を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
圧力差を割り出す工程が、
前記補助部品の駆動中の複数のインスタンスに対応する複数の第1の圧力を、前記流体制御配管上の第1の位置において検出する工程、
前記複数のインスタンスに対応する複数の第2の圧力を、前記流体制御配管上の第2の位置において検出する工程、
前記複数の第1の圧力と前記複数の第2の圧力との間の差にもとづいて、複数の圧力差を割り出す工程、および
前記複数の圧力差の変化の速度を割り出す工程
を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記補助部品の動作特性を判断する工程が、前記複数の圧力差の変化の速度を、しきい値速度と比較する工程を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記変化の速度が、最大の変化速度である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記流体制御配管上の2つの別個の位置の間の圧力差を割り出す工程が、前記補助部品の入口における入口圧力および前記補助部品の出口における出口圧力を検出する工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記補助部品を駆動させる工程が、前記制御バルブの動きを実質的に生じさせない時間期間だけ前記補助部品を駆動させることを含む請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記補助部品を駆動させる工程が、前記制御バルブの不感時間以下の時間期間だけ前記補助部品を駆動させる工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記補助部品を駆動させる工程が、前記流体制御配管から流体を逃がす工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項22】
流体プロセス制御システムを監視する方法であって、
該流体プロセス制御システムは、該流体プロセス制御システム内の経路を通過する物質の流れを制御するための制御ループを有しており、
該制御ループは、前記経路に配置されて開放位置と閉鎖位置との間を動くことができる制御バルブ、前記制御バルブの動きを制御するためのバルブコントローラ、および前記バルブコントローラを前記制御バルブへと接続している流体制御配管を備えており、
当該方法が、
前記バルブコントローラに搭載された第1の圧力センサで、前記制御ループ内の位置の第1の圧力を検出する工程、
前記バルブコントローラに搭載された第2の圧力センサで、前記流体プロセス制御システム内かつ前記制御ループの外部の位置の第2の圧力を検出する工程、および
前記第1の圧力にもとづいて、前記制御ループの特性を判断する工程
を含む方法。
【請求項23】
前記制御ループ内の位置の第1の圧力を検出する工程が、バルブコントローラの出口圧力を検出する工程を含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記制御ループの特性を判断する工程が、前記制御バルブの動作位置を割り出す工程を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の圧力にもとづいて前記制御バルブの動作位置を調節する工程をさらに含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の圧力にもとづいて前記制御バルブの動作位置を調節する工程をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
第2の圧力を検出する工程が、前記制御バルブの入口に位置する圧力を検出する工程を含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第2の圧力を検出する工程が、前記制御バルブの出口に位置する圧力を検出する工程を含む請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33495(P2013−33495A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−222760(P2012−222760)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2008−551266(P2008−551266)の分割
【原出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(591055436)フィッシャー コントロールズ インターナショナル リミテッド ライアビリティー カンパニー (183)
【Fターム(参考)】