説明

流体処理用エレメントおよびその製造方法

【課題】 吸着剤等の重量が大きい場合であっても被覆材が剥がれにくいエアーフィルターエレメントを提供すること。
【解決手段】 フレームのセル2C中に吸着剤4が収容されてなるエアーフィルターエレメントを製造する方法であり、フレームの開放端部上に、予め感熱型接着剤が塗布処理された通気性のシート体3を置き、シート体3をセル2Cの側面にも接触部位3Xをもって接触可能なように、熱盤を用い、押圧Pによりセル2C内に押し込み、シート体3をセル2Cの側面にも接着させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体処理用エレメントおよびその製造方法に係り、特に、複数のセルの配列構造からなるフレーム中の各セルに吸着剤等の内包物が収容されて構成され、たとえば空気清浄機用エアーフィルターに適用可能な、流体処理用エレメントおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハニカムコア等の多数のセルにより構成されるフレームを用い、セル中に吸着剤等を封入し、ネットをフレーム両面に取り付けて構成されるエアフィルターエレメントについては、従来複数の技術的提案がなされている。たとえば、ネットをフレームの端面に取り付けるに際して、端面に液体接着剤を塗布することによりネットを取り付けることは、液体接着剤の取扱いが煩雑であり、かかる状況に対しては、予め固形接着剤がドット状に添着されたネットを用いる技術が既に提案され、用いられている。
【0003】
固形接着剤が添着されたネットを用いる技術としては、たとえば後掲特許文献1開示のものがあるが、これは、通気性シート材(不織布)とハニカムコアとの接合強度を高めるために、不織布表面にホットメルト型接着剤を高密度にかつ均一に塗布する構成としたものである。ただし、通気性を高めるために、不織布にはニードルパンチ加工が施される構成である。
【0004】
また、セル内への吸着剤等の充填・収容に関していえば、通常は粒状あるいは粉状の形態をとる吸着剤を単純にセル内に充填するだけでは、吸着剤は重力にしたがって偏って位置することとなり、吸着効率が低くなってしまう。かかる問題に対しては、吸着剤を予め一定形状化する技術が提案されている。
【0005】
かかる技術に関するもののうち、後掲特許文献2に開示されている技術は、活性炭の充填密度を高くすることにより圧損失の低い長期間使用可能なフィルターユニットの提供を課題として、複数個の活性炭粒子を、粒子間に空隙が保持された状態でバインダーで点接着して活性炭粒子集合体として成形し、これをハニカムコアのセル内部に充填するという構成を提案したものである。
【0006】
【特許文献1】特開平10−137529号公報「空気清浄化用フィルター」
【特許文献2】特開平08−294611号公報「脱臭フィルターエレメント」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1開示の技術は、不織布等にドット状ホットメルト接着剤を高い密度で分布させることに伴う通気性低下の対策として、敢えてニードルパンチ加工工程を加え、これにより通気孔を形成するというものであり、下記のような欠点がある。
<1>接着箇所はほとんど1次元的領域といえるハニカムコアの端面のみであるのに、不織布等上全体において接着剤を高密度に塗布しなくてはならず、不経済、非効率的である。
<2>また、結局接着箇所はハニカムコアの端面のみであるから、得られる接合強度には限界があり、収容する吸着剤等の重量が大きい場合はこれに耐えられず、不織布等が剥がれてしまう。
【0008】
<3>ニードルパンチ加工装置を準備して該工程を新たに加えなくてはならず、製造工程が複雑かつコストのかかるものとなる。
<4>本来、不織布等には一定の通気特性を期待して用いているところ、それを活かすことができない上、塞いだ箇所に再度孔を穿つ処理は、製造工程として不経済、非効率的である。
<5>しかもニードルパンチ加工によって、所望の通気特性を得なくてはならず、場合によっては加工条件設定も煩雑となる。
【0009】
また特許文献2開示の技術には、下記のような欠点がある。
<1>吸着剤造粒のために液体接着剤を吹き付けるものであるため、結局、吸着剤の表面が接着剤の膜により被覆されてしまい、有効表面積が減少し、エアーフィルターとしての性能低下は避けられない。
<2>吸着剤粒子に液体接着剤を吹き付けて集合体に形成する造粒工程を設けなくてはならず、煩雑である。
<3>また、ハニカムコアと不織布等との接着箇所はコア端面のみであるため、収容する吸着剤等の重量が大きい場合はこれに耐えられず、不織布等が剥がれてしまう。
【0010】
そこで本発明の課題は、上記従来技術の状況に鑑み、複数のセルの配列構造からなるフレーム中の各セルに吸着剤等の内包物が収容されて構成される、エアーフィルターエレメントを含む流体処理用エレメントにおいて、内包する吸着剤等の重量が大きい場合であっても不織布等の被覆材が剥がれにくく、吸着剤の吸着効率など収容する内包物の機能を低下させず、ひいてはエレメント全体としての性能をいかんなく発揮できるものを、工程上の煩雑さを極力排した形で製造可能な、流体処理用エレメントおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は上記課題について鋭意検討した結果、フレームと被覆材の接着方法として接着箇所の拡大に着目することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0012】
(1) 複数のセルの配列により構成されるフレーム、その両開放端部に取り付けられた被処理流体透過性のシート体、および該セル内に入れられた被処理流体処理用の内包物とからなり、該シート体は、該フレームの端面に接着されかつ該セルの側面に接着部位を有していることを特徴とする、流体処理用エレメント。
(2) 前記シート体は、接着剤の点添着など予め接着剤による処理が施されているものであることを特徴とする、(1)に記載の流体処理用エレメント。
(3) 前記シート体には、織布など伸縮に対して異方性の少ないネットが用いられていることを特徴とする、(1)または(2)に記載の流体処理用エレメント。
(4) 前記内包物自体には接着剤の塗布処理や担持処理がなされておらず、該内包物の少なくとも一部または一部位は前記シート体に添着されていることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の流体処理用エレメント。
【0013】
(5) 前記内包物は吸着剤であり、エアフィルターとして機能することを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の流体処理用エレメント。
(6) 複数のセルの配列により構成されるフレームの該セル中に被処理流体処理用の内包物が収容されてなる流体処理用エレメントを製造する方法であって、該方法は、該フレームの開放端部上に、予め接着剤が処理された被処理流体透過性のシート体を置き、該シート体を該セルの側面にも接触可能なように該セル内に押し込むことによって、該シート体を該セルの側面にも接着させることを特徴とする、流体処理用エレメントの製造方法。
(7) 複数のセルの配列により構成されるフレームの該セル中に被処理流体処理用の内包物が収容されてなる流体処理用エレメントを製造する方法であって、該方法は、該フレームの開放端部上に、予め接着剤が処理された被処理流体透過性のシート体を置き、その上に弾性または柔軟性を備えた押し込み材を置き、その上から押圧手段によって該押し込み材を押圧することによって、該シート体を該セルの側面にも接着させることを特徴とする、流体処理用エレメントの製造方法。
(8) 前記押し込み材は耐熱性を備えており、前記押圧手段は熱圧手段であることを特徴とする、(7)に記載の流体処理用エレメントの製造方法。
【0014】
本願にいう「被処理流体透過性」とは、本発明エレメントに係るシート体(以下、「被覆材」ともいう。)が、処理対象とする空気あるいは水といった流体を通す性質をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体処理用エレメントおよびその製造方法は上述のように構成されるため、これによれば、上述構成のようなエアーフィルターエレメントを含む流体処理用エレメントにおいて、内包する吸着剤等の重量が大きい場合であっても被覆材はフレームに強力に接着されているため、剥がれにくい。したがって耐久性、取扱い性に優れ、信頼性の高い製品化が可能な上、内包する吸着剤等の材質・収容量の選択の幅も広い。
【0016】
また本発明に係る流体処理用エレメントは接着可能面積が広いため、上記特許文献1開示技術のように塗布する接着剤の分布を高密度とする必要がなく、したがって通気性、被処理流体透過性に影響を及ぼすことがない。もちろん、ニードルパンチ加工工程なども不要である。
【0017】
さらに本発明に係る流体処理用エレメントは、上記特許文献2開示技術とは異なり、接着剤が塗布された被覆材に吸着剤等の内包物が各粒毎に添着するため、内包物がセル2C内で偏りにくくなり、つまり内包物分布の偏りが少なくなり、内包物の被処理流体に対する作用の減少が防止、低減される。また、各粒間には適度な空隙が維持され、表面積減少は最小限に留めることができる。したがって、吸着剤の吸着効率など収容する内包物の機能を低下させず、ひいてはエレメント全体としての性能をいかんなく発揮することができる。
【0018】
そして本発明に係る流体処理用エレメントは、上記各特許文献開示技術とは異なり、これを、工程上の煩雑さを極力排した形で製造可能である。また、液体接着剤不使用であり、それによっても工程は簡易化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。なお本発明に係る流体処理用エレメントは、その構成により、空気清浄機等による空気処理だけではなく、水処理技術をも含み広く流体処理用として適用することができるものであるが、以下の説明では、特にエアーフィルターエレメントとしての適用例を主として説明する。
図1は、本発明の流体処理用エレメントの基本構成を示す分解斜視説明図である。また、
図2は、本発明の流体処理用エレメント要部の基本構成を示す断面視説明図である。これらに図示するように本エレメント1は、複数のセル2Cの配列により構成されるフレーム2と、その両開放端部に取り付けられた被処理流体透過性のシート体3、3と、セル2C内に入れられた被処理流体処理用の内包物4とを備えてなり、シート体3は、フレーム2の端面に接着されるとともにセル2Cの側面にも接着部位3Xを有していることを、主たる構成とする。
【0020】
各図において、フレーム2はハニカムコアの例を示しているが、本発明のフレームとしてはこの他、断面がロール状、井桁状、コルゲート状(段ボール断面を積層した形状)などであってもよく、要するに内部に内包物を収容可能なセルが多数配列してなる構造であれば、本発明のフレームに該当する。材質としては、安価・軽量かつ取り扱いやすさの点から紙を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明流体処理用エレメント1はこのように構成されるため、フレーム2の一方面側からシート体3を通し内部に流入する被処理流体は、セル2C内に収容された被処理流体処理用の内包物4と接触し、ここで内包物4が有する所定の機能に基づいて被処理流体が処理され、処理後の流体は反対側のシート体3を通って本エレメント1外に排出される。
【0022】
図2に示すように、本流体処理用エレメント1におけるシート体3のフレーム2への接着固定状態は、単にフレーム2の端面における1次元的な接着がなされているのみならず、セル2Cの側面においても2次元的な接着、すなわち接着部位3Xによる接着がなされているものである。したがって、フレーム2とシート体3とがより強固に接着されている状態が形成されている。これにより、フレーム2からのシート体3の剥がれや脱落が有効に防止され、耐久性、取扱い性に優れ、信頼性の高い製品化が可能である。また、内包物4として内包する吸着剤等の材質・収容量の選択の幅も広い。もちろん、シート体3への接着剤の分布を高密度とする必要がなく、シート体3本来の被処理流体透過性が維持され、穿孔工程などは不要である。
【0023】
また、本発明流体処理用エレメント1は、そのシート体3を、特に、予め接着剤による処理、殊に固体接着剤の点添着など、固体接着剤をシート体3に担持する処理が施されているものとすることが、本発明の利点を存分に活かす上でも、また製造工程の簡易化、効率化の上でも好ましい。
【0024】
シート体3に予め処理を施す接着剤として、感熱型(ホットメルト型)あるいは感圧型のものを用いる場合、図1に示すように、フレーム2の両端部からそれぞれ所定の押圧手段によりシート体3、3を押圧することによって(押圧P)、フレーム2に接着することができる。
【0025】
本発明のシート体3は、上述のようにフレーム2の表裏両面を被覆して、フレーム2内に収容する吸着剤等の内包物4を封入し、かつその被処理物体透過性をもってフレーム2の一方面側からの被処理流体の流入を受け、セル2C内への流通をなさしめ、そして反対面側から排出する機能を果たすものであり、かかる機能が可能なものである限り、シート体としての構造、材質、厚さ、流体透過性の具体的仕様などは何ら限定されるものではない。
【0026】
ただし、フレーム2(のセル2C)中に収容する内包物4の重量が大きい場合でもシート体3が容易に剥がれない構造を備えたものであることが、より望ましい。そのようなシート体3としては、伸縮に対する異方性の多い不織布よりも、たとえばニット状に織られたネットやその他の織布などのように、伸縮に対して異方性の少ない構造のものが望ましい。かかる構成により、内包物4の重量によるシート体3の撓みが低減されるため、シート体3とフレーム2およびセル2Cの各接着箇所への張力を低く抑えることができ、シート体3は剥がれにくくなる。
【0027】
本発明流体処理用エレメント1の内包物4は、セル2Cに無理なく収容、封入できる形状・サイズであれば特に限定されない。粒状・粉状といった不定形状でも、またそれらの集合体でも、また一定形状に成形・成型されたものでもよい。なおエアーフィルターエレメント用途としては、吸着剤のように表面積が性能に大きく影響するものを内包物4として用いる場合が多い。したがって、粒状、粉状といった比表面積の大きい形状が好ましい。
【0028】
いかなる形状であれ、本発明の内包物4は、それ自体には接着剤が塗布されたり担持されたりしていない構成とすることができ、またそれが大いに望ましい。かかる構成であることにより、内包物4の表面の全部または一部が接着剤によって被覆されて被処理流体に対する特定の機能の発揮に影響する有効表面積が減少することが防止されるため、内包物4の所定の機能をいかんなく発揮することができるからである。
【0029】
図2に示すように、本発明流体処理用エレメント1は、内包物4の少なくとも一部または一部位がシート体3に添着された状態のものとして構成することができる。上述のように内包物4自体には事前の接着剤処理はせずとも、シート体3に予め接着剤処理を施しておき、かつ追って詳述する本発明独自の製造方法によって、かかる構成を容易に実現することができる。
【0030】
なおここで、「少なくとも一部」とは、内包物4が粒状、粉状あるいはそれらの集合体状であって図示するように複数の単位がセル2C内に存在する場合に、それらのうちの少なくとも一部、を意味する。一方、「少なくとも・・・一部位」は、内包物4がたとえば特定形状に成形・成型されたもので、セル2C当たり1個が収容される場合に、そのうちの少なくとも一部位、を意味する。
【0031】
このように、シート体3に内包物4が添着している構成とすることにより、接着剤が塗布されたシート体3に吸着剤等の内包物4が各粒毎に添着するため、内包物4がセル2C内で偏りにくくなり、つまり内包物4の分布の偏りが少なくなり、内包物4の被処理流体に対する作用の減少が防止、低減される。また、各粒間には適度な空隙が維持され、表面積減少を最小限に留めることができる。したがって、吸着剤の吸着効率など収容する内包物4の機能を低下させず、ひいてはエレメント1全体としての性能をいかんなく発揮することができる。
【0032】
上述のように内包物4として適宜の吸着剤を用いて、本発明をエアフィルターエレメントとして用いることができる。吸着剤としては、従来多用されている活性炭の他にも、特に近年種々の材質のものが提案されており、活性炭と比較して重量が大きい場合もある。そのような新型の吸着剤であっても、本発明エレメントであれば、耐久性等の問題も生じることなく収容・封入できる。
【0033】
吸着剤には、対象物質、吸着原理、材料または吸着性能上、種々のものがあるが、本発明はそれらに特に限定されない。
【0034】
図3は、本発明の流体処理用エレメントの製造方法について、フレームを構成する1つのセルを取り上げて説明する断面視説明図である。図示するように本製造方法は、複数のセル2Cの配列により構成されるフレームのセル2C中に被処理流体処理用の内包物4が収容されてなる流体処理用エレメントを製造する方法であって、フレームの開放端部上に、予め接着剤が処理された被処理流体透過性のシート体3を置き、シート体3をセル2Cの側面にも接触部位3Xをもって接触可能なように、押圧Pによりセル2C内に押し込むことによって、シート体3をセル2Cの側面にも接着させることを、主たる構成とする。
【0035】
つまり本製造方法により、フレームの開放端部上にシート体3が置かれ、外方から押圧Pによりシート体3がセル2C方向に押圧されてセル2C内に押し込まれ、予めシート体3に処理されていた接着剤によってシート体3は、フレーム開放端部(セル2C上面部)上のみではなくセル2Cの側面にも接着される。このセル2C側面の接着部位を3Xと示している。このようにして、シート体3がフレームに強力に接着された被処理流体処理用の内包物4が収容されてなる流体処理用エレメントを得ることができる。
【0036】
また、かかる方法によって、内包物4もまた、少なくともその一部または一部位が内部に押し込まれたシート体3と接触するため、容易にシート体3に内包物4を接着させることができる。
【0037】
図示するように本製造方法では、セル2Cの側面に接触可能なようにシート体3をセル2C内に押し込む具体的方法として、シート体3の上(外方)には弾性または柔軟性を備えた押し込み材5を置き、その上から押圧手段によって該押し込み材を介してシート体3に対して押圧Pを施すようにすることができる。
【0038】
押し込み材5としては、たとえばスポンジシートを好適に用いることができるが、これに限定されず、その弾性または柔軟性により可逆的に容易に変形可能であり、かつ押圧手段による押圧Pによってセル2C内に問題なく押し込まれてシート体3をセル2C側面に対して押圧可能なものであれば、すべて本発明の押し込み材5として用いることができる。
【0039】
かかる構成によれば、押圧Pによって押し込み材5がセル2Cの形状に合わせて一時的に変形して内部に押し込まれ、それによりシート体3もセル2C内に押し込まれて側面に押し付けられ、シート体3は予め処理されている接着剤によりセル2C側面に、接着部位3Xにおいて接着される。押し込み材5はその弾性または柔軟性により、押圧Pを解除すれば原形に復する。
【0040】
また、実施例に詳述するように、本発明はシート体3に施す接着剤を感熱型のものとすることによってとりわけ良好な結果が得られるが、その場合は、上記押圧手段として熱盤等の熱圧手段を、押し込み材5としてはシリコンスポンジシート等の耐熱性を備えたものを用いた方法とすればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明する。しかしながら、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
<1 エアーフィルターエレメントの作成>
ハニカムコアをフレームとして用い、吸着剤をそのセル毎に充填し、フレームの表裏両面に接着芯地(シート体。以下同様。)を貼付してなるエアーフィルターエレメントの作成を行った。
ハニカムコアの厚みを調節することで、1cmあたり0.5gの吸着剤を充填することができた。ハニカムコアは紙製のものを使用したが、フィルターとしては充分な剛性があることが確認された。
【0042】
しかし、ハニカムコアと接着芯地の接着面積が少ないこと、今回用いた吸着剤は重く、そのためエレメントが撓みやすいものとなったため、従来のようにハニカムコアの端面のみにおける接着では、接着芯地が剥がれやすいことが確認された。そこで、熱盤と接着芯地の間にシリコンスポンジシートを挟みこむ方法により、作成を行った。
【0043】
図4は、実施例の製造方法を示す断面写真図であり、熱盤の押圧前の状態を示す図である。また、
図5は、実施例の製造方法を示す断面写真図であり、熱盤による押圧中の状態を示す図である。これらに図示するように、接着芯地23を耐熱性のスポンジ25(シリコンスポンジシート)でハニカムコアのセル22C内に押し込み、セル22C壁面にも接着部位23Xでもって接着するように、熱盤29により押圧Pを施した。
【0044】
<2 スポンジシート利用の効果>
これにより、セル22C側面の23X分、接着面積が増え、接着強度が上昇することが期待された。確認のため、スポンジを使って成型したものと、使わなかったものについて、その接着強度を測定し比較した。作成条件は、スポンジ使用有無の他は、共通の条件とした。すなわち、熱盤設定温度140℃、熱盤の加重2.0kg/cm、押圧時間10秒 とした。
【0045】
測定試験方法は、エレメントを水平に保持し、片面のみ設けた接着芯地の上から治具により荷重をかけ、芯地が剥がれる時の荷重を測定した。
表1に1セルあたりでの測定結果を示す。単位はgfである。予想通り、スポンジを用いることによる接着強度の上昇が確認できた。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、本実施例においては、接着芯地として不織布製のものではなく、比較的伸びの均一なニット織布のもの(東海サーモ製 3GF39)を使用した。これにより、収容する吸着剤に重さがあってもシートの撓みを吸収可能であり、剥がれを有効に防止できることが確認された。
【0048】
<3 造粒物の成型>
吸着剤を取扱い性のよい造粒物に成型し、これをセルに収容する他は上述の例と同様にしてエアーフィルターエレメントを作成を試みたところ、特に問題なく作成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の流体処理用エレメントおよびその製造方法によれば、内包する吸着剤等の重量が大きい場合も含めて、耐久性、取扱い性に優れ、信頼性の高い製品化が可能である。また、内包する吸着剤等の材質・収容量の選択の幅も広い。したがって、空気清浄機に適用可能な交換用エアーフィルターエレメントを初めとして、気体処理、水処理用途に適用可能であり、関連産業分野において利用価値が高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の流体処理用エレメントの基本構成を示す分解斜視説明図である。
【図2】本発明の流体処理用エレメント要部の基本構成を示す断面視説明図である。
【図3】本発明の流体処理用エレメントの製造方法について、フレームを構成する1つのセルを取り上げて説明する断面視説明図である。
【図4】実施例の製造方法を示す断面写真図であり、熱盤の押圧前の状態を示す図である。
【図5】実施例の製造方法を示す断面写真図であり、熱盤による押圧中の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…流体処理用エレメント
2…フレーム
2C…セル
3…シート体(被覆材)
3X…接着部位(セル内側面の)
4…内包物(吸着剤等)
5…押し込み材
P…押圧
22C…セル
23…接着芯地
23X…接着部位(セル内側面の)
25…スポンジシート
29…熱盤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルの配列により構成されるフレーム、その両開放端部に取り付けられた被処理流体透過性のシート体、および該セル内に入れられた被処理流体処理用の内包物とからなり、該シート体は、該フレームの端面に接着されかつ該セルの側面に接着部位を有していることを特徴とする、流体処理用エレメント。
【請求項2】
前記シート体は、接着剤の点添着など予め接着剤による処理が施されているものであることを特徴とする、請求項1に記載の流体処理用エレメント。
【請求項3】
前記シート体には、織布など伸縮に対して異方性の少ないネットが用いられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の流体処理用エレメント。
【請求項4】
前記内包物自体には接着剤の塗布処理や担持処理がなされておらず、該内包物の少なくとも一部または一部位は前記シート体に添着されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の流体処理用エレメント。
【請求項5】
前記内包物は吸着剤であり、エアフィルターとして機能することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の流体処理用エレメント。
【請求項6】
複数のセルの配列により構成されるフレームの該セル中に被処理流体処理用の内包物が収容されてなる流体処理用エレメントを製造する方法であって、該方法は、該フレームの開放端部上に、予め接着剤が処理された被処理流体透過性のシート体を置き、該シート体を該セルの側面にも接触可能なように該セル内に押し込むことによって、該シート体を該セルの側面にも接着させることを特徴とする、流体処理用エレメントの製造方法。
【請求項7】
複数のセルの配列により構成されるフレームの該セル中に被処理流体処理用の内包物が収容されてなる流体処理用エレメントを製造する方法であって、該方法は、該フレームの開放端部上に、予め接着剤が処理された被処理流体透過性のシート体を置き、その上に弾性または柔軟性を備えた押し込み材を置き、その上から押圧手段によって該押し込み材を押圧することによって、該シート体を該セルの側面にも接着させることを特徴とする、流体処理用エレメントの製造方法。
【請求項8】
前記押し込み材は耐熱性を備えており、前記押圧手段は熱圧手段であることを特徴とする、請求項7に記載の流体処理用エレメントの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−22863(P2009−22863A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187740(P2007−187740)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(306017014)地方独立行政法人 岩手県工業技術センター (61)
【Fターム(参考)】