説明

流体噴射における流量制御装置及び流量制御方法

【課題】 同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制する。
【解決手段】 複数の噴射ノズル20にそれぞれ対応して設けられ、各噴射ノズル20と同等の流体噴射を行う複数のダミー噴射ノズル120と、任意の噴射ノズル20における流体噴射の停止に応じて、当該噴射ノズル20と同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズル120における流体噴射を開始させる流体噴射経路切換装置(三方弁50)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御装置及び流量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同一のポンプから流体が供給され、この流体を噴射するノズルが高さ方向に複数段設置されている場合に、各段のノズルから流体を噴射するか否かを独立して制御したいことがある。この場合には、各段のノズルの手前に開閉弁を設けておき、この開閉弁を開閉することにより、各段のノズルにおいて流体を噴射するか否かを制御するのが一般的である。
【0003】
しかし、このように開閉弁の開閉操作により、各段のノズルから流体を噴射するか否かを制御すると、開閉弁を開いた状態にある他のノズルにかかる流体圧が変化し、流体の流量が変化してしまうという不都合がある。
【0004】
従来、複数の噴射ノズルを備えた流体噴射装置において、各噴射ノズルから均一に流体を噴射するための技術が種々提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1に記載された技術は、ノズルへの供給量に対して噴射量を増量可能とし、また、幅方向の噴射分布を均一とすることを目的としたものである。この技術は、流体供給管に接続する流入路にオリフィスを設け、当該オリフィスに近接した下流側位置の周壁に周囲の流体を吸い込む吸込孔を設けたものである。そして、流入路の下流端に流路軸線方向と直交する幅方向に広がる第1チャンバーを連通し、さらに第1チャンバーを幅方向全長に亙って同様な形状の第2チャンバーに対して第1スリット部を介して連通し、第2チャンバーに流入する流体を幅方向に均一化させ、第2チャンバーの先端を噴射孔となる第2スリット部に連通した構造となっている。
【0005】
特許文献2に記載された技術は、供給口から距離の異なる複数の噴射口を設けた場合に、各噴射口間で均一な流量分布でかつ十分な流量を得ることができる噴射ノズルを提供することを目的としたものである。この技術は、供給口から距離の異なる複数の噴射口群への流体の流路を、軸心の周りに多重に配設した円管で区画される各空隙に分岐させて、各噴射口群への流体の流路となる各空隙の断面積をほぼ等しくした構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−205256号公報
【特許文献2】特開2006−167531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するように制御することは容易ではなく、上述した特許文献1及び特許文献2等の従来の技術では対処できなかった。すなわち、従来の技術では、開閉弁の開閉操作により、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える以外に適切な方法はなく、上述した特許文献1及び特許文献2等の従来の技術は、このような噴射ノズルの選択的な切り換えを考慮したものではない。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御装置及び流量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の流体噴射における流量制御装置及び流量制御方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を備えている。すなわち、本発明の流体噴射における流量制御装置は、同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御装置であって、複数の噴射ノズルにそれぞれ対応して設けられ、各噴射ノズルと同等の流体噴射を行う複数のダミー噴射ノズルと、任意の噴射ノズルにおける流体噴射の停止に応じて、当該噴射ノズルと同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズルにおける流体噴射を開始させる流体噴射経路切換装置とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
また、複数の噴射ノズルが上下方向に複数段に配設されている場合に、各ダミー噴射ノズルを、各段の噴射ノズルに対応してそれぞれ配設することが好ましい。
【0011】
本発明の流体噴射における流量制御方法は、同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給し、当該流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御方法であって、複数の噴射ノズルのいずれか一つ以上で流体噴射を停止させる際に、流体噴射を停止させる噴射ノズルと同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズルに対して流体を供給して流体噴射を開始させることを特徴とするものである。
【0012】
また、複数の噴射ノズルと各噴射ノズルに対応するダミー噴射ノズルが、上下方向に複数段配設されている場合に、任意の段に配設された噴射ノズルからの流体噴射を停止させる際に、当該噴射ノズルに対応する段のダミー噴射ノズルに対して流体を供給して流体噴射を開始させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の流体噴射における流量制御装置及び流量制御方法によれば、複数の噴射ノズルにそれぞれ対応して、各噴射ノズルと同等の流体噴射を行う複数のダミー噴射ノズルを設けておき、任意の噴射ノズルにおいて流体の噴射を停止させる際に、この噴射ノズルに対応したダミー噴射ノズルから流体を噴射させている。
【0014】
すなわち、本発明の流体噴射における流量制御装置及び流量制御方法では、開閉弁の開閉操作により流体の噴射状態を制御するのではなく、任意の噴射ノズルにおける流体の噴射を停止させる際に、同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズルに流体の流れを瞬時に切り換えることができる。
【0015】
したがって、同一(1個)のポンプから流体が供給される噴射ノズルの流量が変化しないため、流体噴射装置全体の水圧バランスが変化せず、流体噴射を行っている他の噴射ノズルにおける流体圧に影響を及ぼすことがない。これにより、各噴射ノズルからの流量を一定に保った状態とすることができる。
【0016】
また、高さ方向に複数段の噴射ノズルが設置されている場合には、各段の噴射ノズルと同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズルを複数段設置することで、噴射ノズルにおける流体の流れをダミー噴射ノズルに切り換えた際に、水頭バランスが変化しないので、各噴射ノズルからの流量を一定に保った状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る流体噴射における流量制御方法の説明図。
【図2】本発明の実施形態に係る流体噴射における流量制御装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明の実施形態に係る流量制御装置を適用した加水装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る流体噴射における流量制御装置及び流量制御方法(以下、流量制御装置、流量制御方法と略記する)の実施形態を説明する。図1及び図2は本発明の実施形態に係る流量制御装置及び流量制御方法を示すもので、図1は流量制御方法の説明図、図2は流量制御装置の模式図である。また、図3は本発明の実施形態に係る流量制御装置を適用した加水装置の構成を示す模式図である。
【0019】
なお、以下の説明では、水を噴射する流体噴射装置における流量制御装置及び流量制御方法について説明するが、噴射する流体は水に限られず、流動性を有する物質であればどのような流体であってもよく、例えば、コンクリート混和剤(空気連行剤、減水剤、凝結・硬化調節剤、増粘剤、発泡剤・起泡剤等の溶液)等、種々の流体に適用することができる。
【0020】
また、本実施形態の噴射ノズルは、水を微粒子状に噴射(噴霧)するようになっているが、噴射する流体は必ずしも微粒子状である必要はない。本実施形態では、噴射ノズルから噴霧する水粒子の径は、例えば、約10〜400μmである。また、噴霧する水の圧力は、例えば、約0.05〜1.0MPaである。
【0021】
<流量制御装置の概要>
本発明の実施形態に係る流量制御装置100は、図1及び図2に示すように、同一(1個)のポンプ60から複数の噴射ノズル(噴射ノズル20、ダミー噴射ノズル120)に対して流体(例えば水)を供給する流体噴射装置(流体噴射装置300及びダミー流体噴射装置310)に適用する装置であり、流体を噴射する噴射ノズル(噴射ノズル20、ダミー噴射ノズル120)を選択的に切り換える際に、ポンプ60から供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するために使用される。
【0022】
この流量制御装置100は、複数の噴射ノズル20にそれぞれ対応して設けられ、各噴射ノズル20と同等の流体噴射を行う複数のダミー噴射ノズル120と、任意の噴射ノズル20における流体噴射の停止に応じて、当該噴射ノズル20と同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズル120における流体噴射を開始させる三方弁50(流体噴射経路切換装置)とを備えている。
【0023】
また、本実施形態の流量制御装置100は、複数段の流体噴射部40を備えており、各段の流体噴射部40には、それぞれ複数の噴射ノズル20が配設されている。同様に、各段の流体噴射部40に対応するように、複数段のダミー流体噴射部140を備えており、各段のダミー流体噴射部140には、それぞれ複数のダミー噴射ノズル120が配設されている。なお、水を供給するポンプ60と三方弁50との間には、水の供給量を調整するためのバルブ70が設けられている。
【0024】
<流体噴射装置>
本実施形態の流量制御装置100を適用する流体噴射装置300は、例えば、落下する粉体又は粒状体に対して、複数の噴射ノズル20から水を噴射(噴霧)するための装置であり、円筒状の流体貯留部30の外周面に等間隔で複数の噴射ノズル20が取り付けられており、流体貯留部30には、それぞれ給水配管10が接続されている。また、ダミー流体噴射装置310は、流体噴射装置300と同等の流体噴射を行うことができるようになっている。
【0025】
すなわち、本発明の実施形態に係る流体噴射装置300は、図2に示すように、上下方向に配設した複数段の流体噴射部40を備えており、各段の流体噴射部40には、複数の噴射ノズル20及び流体貯留部30が設けられている。また、各段の流体噴射部40に水を供給する給水配管10は、流体噴射部40を貫通して他の流体噴射部40に接続されている。さらに、各系統の給水配管10は、1つのポンプ60から水の供給を受けている。
【0026】
同様に、ダミー流体噴射装置310は、図2に示すように、上下方向に配設した複数段のダミー流体噴射部140を備えており、各段のダミー流体噴射部140には、複数のダミー噴射ノズル120及びダミー流体貯留部130が設けられている。また、各段のダミー流体噴射部140に水を供給する給水配管10は、ダミー流体噴射部140を貫通して他のダミー流体噴射部140に接続されている。さらに、各系統の給水配管10は、1つのポンプ60から水の供給を受けている。なお、給水配管10から供給される水は、各段にそれぞれ設けた三方弁50により流路が切り換えられて、流体噴射装置300またはダミー流体噴射装置310のいずれか一方へ流れるようになっている。
【0027】
また、流体噴射装置300及びダミー流体噴射装置310は、図1及び図2に示すように、複数段の流体噴射部40に対応させて、上下方向に配設した複数段のダミー流体噴射部140を備えており、各段のダミー流体噴射部140には、複数のダミー噴射ノズル120及びダミー流体貯留部130が設けられている。また、各段のダミー流体噴射部140に水を供給する給水配管10は、ダミー流体噴射部140を貫通して他のダミー流体噴射部140に接続されている。
【0028】
この流体噴射装置300では、上下方向に設けた複数段の流体噴射部40に設けた複数の噴射ノズル20から、流体が等圧かつ等流量で噴射(噴霧)される。同様に、ダミー流体噴射装置310では、上下方向に設けた複数段のダミー流体噴射部140に設けた複数のダミー噴射ノズル120から、流体が等圧かつ等流量で噴射(噴霧)される。また、各流体噴射部40及びダミー流体噴射部140に水を供給する給水配管10の途中には、それぞれ三方弁50が設けられており、三方弁50を切り換えることにより、各段の流体噴射部40毎に水を噴射させるか否か(噴射ノズル20に水を供給するか否か)を決定するとともに、水の噴射を停止させた流体噴射部40に代えて、同等の水噴射を行うダミー流体噴射部140に水の流れを切り換えるようになっている。本実施形態では、三方弁50が流体噴射経路切換装置として機能する。
【0029】
なお、図1及び図2に示す例では、噴射ノズル20と、これに対応するダミー噴射ノズル120は略同一の高さに配設されているが、使用するダミー噴射ノズル120の種類、個数並びに給水配管10の径によっては、噴射ノズル20と、これに対応するダミー噴射ノズル120とを、略同一の高さに配設しなくてもよい場合もある。
【0030】
<流量制御方法>
次に、図1を参照して、本実施形態の流量制御装置100を用いた流量制御方法を説明する。本実施形態の流量制御装置100を用いて流量制御を行うには、ポンプ60から供給する流体(例えば水)を噴射する噴射ノズル20のいずれか一つ以上で流体噴射を停止させる際に、流体噴射を停止させる噴射ノズル20と同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズル120に対して流体を供給して流体噴射を開始させる。また、複数の噴射ノズル20と各噴射ノズルに対応するダミー噴射ノズル120が、上下方向の位置を対応させて複数段に配設されている場合には、流体噴射を停止させる噴射ノズル20に対応させて、同一段に配設されたダミー噴射ノズル120に対して流体を供給して流体噴射を開始させる。
【0031】
すなわち、図1に示す例では、下から第2段目及び第4段目の流体噴射部40に設けた噴射ノズル20から水を噴射させ、下から1段目及び3段目の流体噴射部40に設けた噴射ノズル20では水の噴射を停止させている。この際に、給水配管10の途中に連通接続された三方弁50を切り換えて、下から第1段目及び第3段目のダミー流体噴射部140に設けたダミー噴射ノズル120から水を噴射させ、下から2段目及び4段目の流体噴射部140に設けた噴射ノズル120では水の噴射を停止させている。すなわち、各段の流体噴射部40及びダミー流体噴射部140では、三方弁50を切り換えることにより、流体噴射部40及びダミー流体噴射部140のいずれか一方のみから水を噴射させるような制御を行っている。
【0032】
さらに具体的に説明すると、下から第1段目の流体噴射部40から水を噴射させる場合には、下から第1段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させない。反対に、下から第1段目の流体噴射部40から水を噴射させない場合には、下から第1段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させる。
【0033】
また、下から第2段目の流体噴射部40から水を噴射させる場合には、下から第2段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させない。反対に、下から第2段目の流体噴射部40から水を噴射させない場合には、下から第2段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させる。
【0034】
また、下から第3段目の流体噴射部40から水を噴射させる場合には、下から第3段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させない。反対に、下から第3段目の流体噴射部40から水を噴射させない場合には、下から第3段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させる。
【0035】
また、下から第4段目の流体噴射部40から水を噴射させる場合には、下から第4段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させない。反対に、下から第4段目の流体噴射部40から水を噴射させない場合には、下から第4段目のダミー流体噴射部140から水を噴射させる。
【0036】
<加水装置の概要>
本発明の実施形態に係る流体噴射装置300を適用可能な加水装置200は、図3に示すように、略円筒形状の落下部210を備えており、この落下部210の上方に供給部220を配置している。本実施形態の供給部220は、ホッパー221、スクリューコンベア222及び攪拌部223等を有する定量供給装置からなり、ベントナイト又は空練りされたベントナイト混合土(以下、両者をベントナイト混合土230と総称する)をホッパー221に蓄え、このベントナイト混合土230を定量供給装置により、落下部210内に定量的に落下させる。落下部210には、ホッパー221の直下に位置するように拡散装置240が設けられており、この拡散装置240により、ベントナイト混合土230が同心円状に広がって、落下部210内を鉛直に落下する。
【0037】
また、落下部210内には、落下するベントナイト混合土230に対して、内側及び外側から水を噴霧するための流体噴射装置が設けられている。そして、内側に配置された流体噴射装置として、上述した多段式の流体噴射装置300を利用している。なお、図3では、内外の流体噴射装置に水を供給する給水配管10が、内外それぞれ1本ずつとなっているが、実際には、図2に示すように、各段の流体噴射部40及び各段のダミー流体噴射部140毎に独立した給水配管10が接続されている。また、図2に示すように、各給水配管10にはそれぞれ三方弁50が設けられており、各段の流体噴射部40及び各段のダミー流体噴射部140において、それぞれ独立して水の供給状態を調整することができるようになっている。このような流量調整は、外側の流体噴射装置においても同様に行うことが可能である。
【0038】
なお、以下の説明では、粉体又は粒状体の代表例としてベントナイト又はベントナイト混合土について説明するが、本実施形態を適用する粉体又は粒状体はこれに限られるものではなく、セメントのように、他の粉体や、その混合物からなる粒状体にも適用することができる。なお、本実施形態が対象とする粉体とは、粒径がおよそ1mm未満程度の固体粒子のことであり、また、本実施形態が対象とする粒状体とは、粒径がおよそ1mm〜20mm程度の固体粒子のことである。
【0039】
落下部210には、同心円状に広がって自由落下するベントナイト混合土230の内側及び外側に位置するように、かつ、落下部210の高さ方向に沿って、流体噴射装置が設けられている。この流体噴射装置には、複数の噴射ノズル20(流体噴射部40)が設けられており、この噴射ノズル20(流体噴射部40)から、自由落下するベントナイト混合土230に対して微粒子状の水を噴射(噴霧)することにより、ベントナイト混合土230と水とを接触させる。この際、自由落下中のベントナイト混合土230が水の噴霧圧によって飛散しないように、噴射ノズル20(流体噴射部40)は、同心円の内外からベントナイト混合土230を挟み込む位置に配置して加水を行う。これにより、落下部210内を自由落下するベントナイト混合土230が、所望の状態となるまで加水される。
【0040】
<供給部>
供給部220は、図3に示すように、落下部210の上部に設けられたホッパー221と、ホッパー221の下部に設けられた定量供給装置とからなる。ホッパー221は、ベントナイト混合土230を貯留できればどのような形状であってもよいが、本実施形態では、下向きに縮径した円錐状となっており、下端部に排出口が設けられている。なお、ホッパー221の形状や容量は、加水処理を行うベントナイト混合土230の処理量等、処理現場の状況に応じて適宜変更することができる。
【0041】
<定量供給装置>
定量供給装置は、例えば、ホッパー221の下部に設けられたスクリューコンベア222と、スクリューコンベア222の回転軸を回転駆動するためのモータ(図示せず)とを備えており、さらに、ホッパー221内に貯留したベントナイト混合土230を攪拌するための攪拌部223を備えることが好ましい。
【0042】
この定量供給装置では、スクリューコンベア222を等速回転させることにより、ホッパー221内に貯留されたベントナイト混合土230が、排出口から定量的に排出される。なお、定量供給装置は、スクリューコンベア222及びその付属機器に限定されるものではなく、ベントナイト混合土230を定量供給できる装置であれば、ピストン式、ダイヤフラム式、プランジャ式、スネーク式等、どのような構造であってもよい。
【0043】
<落下部>
落下部210は、図3に示すように、架台250上に載置された円筒状の部材であり、ベントナイト混合土230を自由落下させる間に、所定量の加水を行うことができる高さを有している。落下部210の形状、径及び高さは、加水処理を行うベントナイト混合土230の処理量等、処理現場の状況に応じて適宜変更することができる。
【0044】
<拡散装置>
拡散装置240は、図3に示すように、下向きに拡径したコーン状の部材であり、供給部220の直下に設けられた円筒状の拡散部241内に収容されている。供給部220から供給されるベントナイト混合土230は、拡散装置240により同心円状に広がり、落下部210内を自由落下する。また、拡散装置240の下部には、拡散装置240と一体となって、ベントナイト混合土230を同心円状に広げるために、円筒状のスカート部242が設けられている。すなわち、ホッパー221の排出口から落下するベントナイト混合土230は、コーン状の拡散装置240により同心円状に広げられるが、この際、ベントナイト混合土230が拡散部241の内壁に衝突して跳ね返り、拡散装置240の径よりも内側へ広がることを防止するために、緩衝部として機能するスカート部242が設けられている。
【0045】
<噴射ノズル>
本実施形態の噴射ノズル20は、落下部210の略中心部と外周部の内外2系統に分かれており、落下部210の高さ方向(上下方向)に多段に配置されている。内側系統の噴射ノズル20は、上述した流体噴射装置300(図2参照)を用いている。すなわち、内側系統の噴射ノズル20は、高さ方向に複数段(例えば4〜8段)に設けられた流体噴射部40に取り付けられている。また、各段の流体噴射部40には、落下部210の中心から外側に向かって同心円状で等間隔に複数箇所(例えば4〜8カ所)の噴射ノズル20が取り付けられている。
【0046】
一方、外側系統の各噴射ノズル20は、内側系統の各噴射ノズル20にそれぞれ対向する位置に配置されている。すなわち、外側系統の各噴射ノズル20は、高さ方向に複数段(例えば4〜8段)の給水配管10に取り付けられている。各段の給水配管10には、落下部210の外側から中心に向かって同心円状で等間隔に複数箇所(例えば4〜8カ所)の噴射ノズル20が取り付けられている。なお、噴射ノズル20の向きは、自由落下するベントナイト混合土230を拡散させないために略水平方向とすることが好ましいが、ベントナイト混合土230に対して満遍なく加水を行うために、下向きあるいは上向きに設置する場合もある。
【0047】
本実施形態では、各段の流体噴射部40毎に、噴射ノズル20から水を噴射するか否かを調整することにより、加水量を調整することができる。具体的には、各流体噴射部40及び各ダミー流体噴射部140の給水配管10に設けた三方弁50を切り換えることにより、使用する流体噴射部40の段数を調整すればよい。上述したように、三方弁50を切り換えることにより、各段の流体噴射部40及びこれに対応した各段のダミー流体噴射部140のいずれか一方から水が噴射される。
【0048】
本実施形態の流体噴射装置300及びダミー流体噴射装置310では、円筒状の流体貯留部30又はダミー流体貯留部130に貯留している流体を、各噴射ノズル20又は各ダミー噴射ノズル120から直接噴射(噴霧)するため、各噴射ノズル20又は各ダミー噴射ノズル120にかかる流体圧や流量は均等であり、かつ容量の大きな流体貯留部30及びダミー流体貯留部130を用いることにより、流体の供給配管(給水配管10)の屈曲などによる流体の流れの乱れ(乱流状態)や、水頭損失などが生じにくい。
【0049】
なお、外側の流体噴射装置では、給水配管10が流体貯留部30の役目を有しているが、外側の流体噴射装置においても、内側の流体噴射装置と同様に流体貯留部を設けてもよい。外側の流体噴射装置における流体貯留部は、例えば、給水配管10を拡径すればよい。
【0050】
さらに、本実施形態の流量制御装置100を適用した加水装置200によれば、例えば、ベントナイト又は予め空練りされたベントナイト混合土等の粉体又は粒状体に対して、水等の流体を多点的に噴射(噴霧)することができ、粉体又は粒状体の粒子と流体とを広く接触させることができる。
【0051】
これにより、ベントナイト又はベントナイト混合土等の粉体又は粒状体が、団子状の塊となることがなく、また、粉体又は粒状体に流体を混合する装置の構造部位に付着する等の問題を生じさせることなく、均質に粉体又は粒状体に粉体を混合することが可能となる。したがって、流体を混合させた後の粉体又は粒状体の品質が向上するだけではなく、施工能率が向上するので、高品質かつ安価な加水装置200を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100 流量制御装置
10 給水配管
20 噴射ノズル
120 ダミー噴射ノズル
30 流体貯留部
130 ダミー流体貯留部
40 流体噴射部
140 ダミー流体噴射部
50 三方弁
60 ポンプ
70 バルブ
200 加水装置
210 落下部
220 供給部
221 ホッパー
222 スクリューコンベア
223 攪拌部
230 ベントナイト混合土
240 拡散装置
241 拡散部
242 スカート部
250 架台
300 流体噴射装置
310 ダミー流体噴射装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給する流体噴射装置において、流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、前記ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御装置であって、
前記複数の噴射ノズルにそれぞれ対応して設けられ、各噴射ノズルと同等の流体噴射を行う複数のダミー噴射ノズルと、
任意の噴射ノズルにおける流体噴射の停止に応じて、当該噴射ノズルと同等の流体噴射を行う前記ダミー噴射ノズルにおける流体噴射を開始させる流体噴射経路切換装置と、
を備えたことを特徴とする流体噴射における流量制御装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、上下方向に複数段配設されており、
前記各ダミー噴射ノズルは、前記各段の噴射ノズルに対応してそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射における流量制御装置。
【請求項3】
同一のポンプから複数の噴射ノズルに対して流体を供給し、当該流体を噴射する噴射ノズルを選択的に切り換える際に、前記ポンプから供給される流体の圧力変動及び流量変動を抑制するための流量制御方法であって、
前記複数の噴射ノズルのいずれか一つ以上で流体噴射を停止させる際に、
前記流体噴射を停止させる噴射ノズルと同等の流体噴射を行うダミー噴射ノズルに対して流体を供給して流体噴射を開始させる、
ことを特徴とする流体噴射における流量制御方法。
【請求項4】
前記複数の噴射ノズルと各噴射ノズルに対応するダミー噴射ノズルが、上下方向に複数段配設されている場合に、
任意の段に配設された前記噴射ノズルからの流体噴射を停止させる際に、当該噴射ノズルに対応する段の前記ダミー噴射ノズルに対して流体を供給して流体噴射を開始させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射における流量制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81888(P2013−81888A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222553(P2011−222553)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】