流体噴射装置、及び、流体噴射方法
【課題】画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】第1ノズル列による主画像の形成と第2ノズル列による背景画像の形成を媒体に重ねて行う場合に、ノズル列と媒体を移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作、ノズル列と媒体を移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作、ノズル列と媒体の相対位置を移動方向と交差する搬送方向に搬送する搬送動作を順に繰り返し、主画像を形成する第1ノズル列の一部と背景画像を形成する第2ノズル列の一部のうちの搬送方向上流側の一部を、下流側の一部よりも先に、媒体の所定領域に対して画像を形成させ、主画像の形成のために往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方でノズルから流体を噴射させ、背景画像の形成のために往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方でノズルから流体を噴射させる流体噴射装置。
【解決手段】第1ノズル列による主画像の形成と第2ノズル列による背景画像の形成を媒体に重ねて行う場合に、ノズル列と媒体を移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作、ノズル列と媒体を移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作、ノズル列と媒体の相対位置を移動方向と交差する搬送方向に搬送する搬送動作を順に繰り返し、主画像を形成する第1ノズル列の一部と背景画像を形成する第2ノズル列の一部のうちの搬送方向上流側の一部を、下流側の一部よりも先に、媒体の所定領域に対して画像を形成させ、主画像の形成のために往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方でノズルから流体を噴射させ、背景画像の形成のために往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方でノズルから流体を噴射させる流体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、媒体に対してインク(流体)を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を備えるインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。プリンターとして、ノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射させる画像形成動作と、ノズル列に対して媒体を所定方向である搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンターが知られている。
プリンターの中には、主画像と背景画像を重ねて印刷するために、背景画像を印刷する2つのノズル列が移動方向に並び、その背景画像を印刷する2つのノズル列の間に主画像を印刷するノズル列を配置したプリンターがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、上述のプリンターでは、例えば、背景画像が印刷された直ぐ後に主画像が印刷される。そのため、背景画像の乾燥時間を十分に確保できず、画像が滲んだり混色したりしてしまう。その結果、印刷画像の画質が劣化してしまう。
そこで、本発明では、画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの斜視図である。
【図3】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図4】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図5】プリンターが実施する印刷方法を説明する図である。
【図6】印刷方法の決定フローを示す図である。
【図7】実施例1の印刷方法を説明する図である。
【図8】比較例の印刷方法を説明する図である。
【図9】実施例2の印刷方法を説明する図である。
【図10】図10Aは実施例2における裏刷り・白使用モードの印刷方法を説明する図であり、図10Bは実施例2におけるインターレース印刷を説明する図である。
【図11】実施例3の印刷方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、主画像と背景画像のうちの下層画像の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲み等を抑制することができる。その結果、画像の画質劣化を抑制できる。
【0009】
かかる流体噴射装置であって、前記媒体の所定領域に対して先に画像形成を行う前記一方のノズル群は、少なくとも前記往路動作時に流体を噴射すること。
このような流体噴射装置によれば、復路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができ、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、前記媒体の所定領域に対して後に画像形成を行う前記他方のノズル群は、少なくとも前記復路動作時に流体を噴射すること。
このような流体噴射装置によれば、往路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができ、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、1回の前記往路動作に要する時間と1回の前記復路動作に要する時間のうちの少なくとも一方は、1回の前記搬送動作に要する時間よりも長いこと。
このような流体噴射装置によれば、往路動作または復路動作に要する時間が下層画像の乾燥時間となる場合に、下層画像の乾燥時間がより長くなる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列の前記ノズルも使用して、前記背景画像を形成すること。
このような流体噴射装置によれば、所望の背景画像を形成することができる。
【0013】
また、第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成し、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成し、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射し、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射する、ことを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、主画像と背景画像のうちの下層画像の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲み等を抑制することができ、画像の画質劣化を抑制できる。
【0014】
===印刷システムについて===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0015】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の斜視図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0016】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0018】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入った圧力室(不図示)が設けられている。
【0019】
図3は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔Dで並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンインクを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエローインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0020】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に噴射させて媒体上にドットを形成する画像形成動作と、ヘッド41に対して媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とが繰り返される。そうすることで、先の画像形成動作により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後の画像形成動作にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。
【0021】
===印刷モードについて===
図4は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK)によって印刷する主画像(カラー画像やモノクロ画像)だけを媒体上に印刷する「カラーモード」と、白インクによる白色の背景画像と主画像を重ねて媒体上に印刷する「白使用モード」のうちの、何れか一方のモードにて媒体上に画像を印刷する。白使用モードのように主画像の背景に白色の背景画像を設けることで、特に媒体が白色でない場合に、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合には、主画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0022】
更に、プリンター1は、表刷りモードと裏刷りモードのうちの何れか一方のモードにて媒体上に画像を印刷する。表刷りモードは、主画像が印刷面側から視認されるように画像を印刷するモードであり、裏刷りモードは、媒体を介して主画像が印刷面と反対側の面から視認されるように画像を印刷するモードである。よって、媒体が透明性を有する場合に、裏刷りモードが実施される。カラーモードでは媒体上に主画像だけが印刷されるため、表刷りモードであっても裏刷りモードであっても、媒体上に直に主画像が印刷される。一方、白使用モードでは主画像と背景画像が重ねて印刷されるため、表刷りモードでは媒体の所定領域に対して先に背景画像が印刷され、その背景画像上に主画像が印刷される。逆に、裏刷りモードでは媒体の所定領域に対して先に主画像が印刷され、その主画像上に背景画像が印刷される。
【0023】
このように、プリンター1は、表刷り・カラーモードと、裏刷り・カラーモードと、表刷り・白使用モードと、裏刷り・白使用モードの4通りの印刷モードを有する。
【0024】
なお、本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0025】
また、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、その白インクの色そのものの色が背景画像の色となる。しかし、同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。そのため、使用する白インクによってユーザーが所望する色とは異なる色の背景画像が印刷されてしまう場合がある。また、単純な白色ではなく、若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。そこで、本実施形態のプリンター1は、白インクと共に少量の4色インク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像(調整された白色の背景画像)を印刷する。そうすることで、逆に、白インクが若干の色彩を有する場合、その色彩を打ち消すインクと共に背景画像を印刷し、背景画像を無彩色に近づけることもできる。
【0026】
所望の白色の背景画像をプリンター1に印刷させるための印刷データは、プリンター1が予め記憶するようにしても良いし、プリンタードライバーが作成するようにしても良い。プリンター1のモニターやコンピューターの画面をユーザーが見るなどして、所望の背景画像の色の選択が行われる場合には、選択された色に応じた背景画像の印刷データをプリンタードライバーが生成するようにするとよい。
【0027】
===印刷方法===
図5は、本実施形態のプリンター1が実施する印刷方法を説明する図である。プリンター1は、「第1印刷方法」と「第2印刷方法」のうちの何れか一方の印刷方法にて媒体上に画像を印刷する。以下では、ヘッド41に対して媒体が搬送方向下流側に搬送される動作を「搬送動作」と呼び、ヘッド41が移動方向に移動する動作を「パス」と呼ぶ。また、ヘッド41が媒体に対して移動方向の一方の方向へ移動する動作(例えば右側から左側へ移動する動作)を「往路動作」と呼び、ヘッド41が媒体に対して移動方向の他方の方向へ移動する動作(例えば左側から右側へ移動する動作)を「復路動作」と呼ぶ。即ち、往路動作と復路動作は、移動方向の双方向におけるヘッド41(ノズル列)と媒体との相対移動である。なお、往路動作は、図2に示すホームポジションHPからキャリッジ31が離れる動作をいい、復路動作は、キャリッジ31がホームポジションHPに近付く動作をいう。
【0028】
図5に示すように、第1印刷方法では、往路動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される。一方、第2印刷方法では、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される。即ち、第2印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されるのに対して、第1印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない。よって、第2印刷方法では、往路動作でも復路動作でも画像が印刷される。一方、第1印刷方法では、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方で画像が印刷される。即ち、第1印刷方法では、図4に示す主画像を形成するために、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に、4色インクのノズル列(YMCK)からインクが噴射され、背景画像を形成するために、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に、ホワイトノズル列W、及び、4色インクのノズル列からインクが噴射される。
【0029】
図6は、印刷方法の設定フローを示す図である。プリンタードライバーは、ユーザーから印刷指令を受け取ると、コンピューター60のディスプレイにウィンドウを表示する等して、ユーザーに「白使用モード」と「カラーモード」の何れか一方の印刷モードを選択させる。その後、プリンタードライバーは、ユーザーによって白使用モードが選択されたのか否かを判断する(S01)。白使用モードが選択された場合(S01→Y)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第1印刷方法に設定する(S02)。
【0030】
これに対して、カラーモードが選択された場合(S01→N)、プリンタードライバーは、ユーザーに「第1印刷方法」と「第2印刷方法」の何れか一方の印刷方法を選択させる(S03)。ユーザーによって第1印刷方法が選択された場合(S03→N)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第1印刷方法に設定する(S02)。一方、ユーザーによって第2印刷方法が選択された場合(S03→Y)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第2印刷方法に設定する(S04)。
【0031】
その後、プリンタードライバーは、印刷モードに応じて印刷データを作成する。例えば、カラーモードが設定されている場合、プリンタードライバーは主画像用の印刷データだけを作成し、白使用モードが設定されている場合、プリンタードライバーは主画像用の印刷データだけでなく背景画像用の印刷データも作成する。また、プリンタードライバーは、作成した印刷データを、印刷モードや印刷方法に応じて、プリンター1に転送する順に並べ替える。例えば、表刷り・白使用モードが設定されている場合、プリンタードライバーは、媒体の所定領域に対して主画像よりも背景画像が先に印刷されるように、各画像の印刷データを並べ替える。また、第1印刷方法が設定されている場合、プリンタードライバーは往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に画像が印刷されるように各画像の印刷データを並べ替える。一方、第2印刷方法が設定されている場合、プリンタードライバーは往路動作でも復路動作でも画像が印刷されるように各画像の印刷データを並べ替える。
【0032】
また、プリンタードライバーは、作成した印刷データと共に、第1印刷方法と第2印刷方法のうちの何れの印刷方法を実施するのかを示すデータを、プリンター1に送信する。プリンター1(コントローラー10)は、第1印刷方法を実施するデータを受信した場合には、往路動作、復路動作、搬送動作を順に繰り返し、第2印刷方法を実施するデータを受信した場合には、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作を順に繰り返す。
【0033】
なお、本実施形態では、ユーザーに白使用モードとカラーモードの何れかを選択させるとしているが、これに限らない。例えば、印刷媒体が透明性の有る媒体である場合にはプリンタードライバーが白使用モードを選択し、印刷媒体がそれ以外の媒体である場合にはプリンタードライバーがカラーモードを選択するようにしてもよい。
【0034】
また、図6のフローでは、カラーモードの場合に、ユーザーに第1印刷方法と第2印刷方法の何れかを選択させているが、これに限らない。第1印刷方法において往路動作と復路動作の一方だけで画像を印刷するようにすれば、往路と復路の特性差が排除され、より高画質な画像を印刷することができる。一方で、第1印刷方法に比べて第2印刷方法の方が画像を早く印刷することができる。そこで、プリンター1の基本設定で「きれいモード」が設定されている場合、プリンタードライバーは印刷方法を第1印刷方法に設定し、「はやいモード」が設定されている場合には、プリンタードライバーは印刷方法を第2印刷方法に設定するようにしてもよい。
【0035】
<実施例1>
図7は、実施例1の印刷方法を説明する図である。以下、ユーザーによって白使用モードが選択され、プリンタードライバーが印刷方法を第1印刷方法に設定した場合について説明する。図7は、表刷り・白使用モードの印刷を示す。また、説明の簡略のため、4色インクを各々噴射するノズル列(YMCK)をまとめて「カラーノズル列Co(第1ノズル列に相当)」と呼ぶ。図では、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列W(第2ノズル列に相当)にそれぞれ属するノズル数を10個(#1〜#10)とし、ノズル列において搬送方向に並ぶノズルの間隔をDとする。カラーノズル列Coに属するノズルを丸で示し、ホワイトノズル列Wに属するノズルを三角で示す。また、実際のプリンター1ではヘッド41に対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、図7の下図ではヘッド41が搬送方向上流側に搬送される様子を示す。
【0036】
図7の上図は、各画像を印刷するために使用するノズルを示す図である。表刷り・白使用モードの印刷では、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#5を、主画像を印刷するための主画像用ノズル(●・黒塗りのノズル)とし、ホワイトノズル列Wおよびカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル#6〜#10を、背景画像(白色の色味を調整した背景画像)を印刷するための背景画像用ノズル(△○・白抜きのノズル)とする。なお、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#5)は印刷に使用しないノズルとする。
【0037】
このように、本実施形態では、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wのノズル(△)の搬送方向の位置と、同じく背景画像を印刷するカラーノズル列Coのノズル(○)の搬送方向の位置とを等しくする。そうすると、背景画像を印刷するために、媒体の所定領域に対して同じパスで白インクとカラーインクが噴射される。その結果、白インクとカラーインクが混ざり、背景画像の粒状感を低減することができる。また、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さい。ただし、背景画像におけるカラーインクの粒状感を低減するため、背景画像上においてカラーインクのドットをなるべく均一に分散することが好ましい。即ち、背景画像の単位領域あたりの白インク密度(ドット密度)に対して背景画像の単位領域あたりのカラーインク密度(ドット密度)を小さくする。そのため、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さいものの、本実施形態では、背景画像を印刷するために使用するホワイトノズル列Wのノズル数とカラーノズル列Coのノズル数を等しくする(図7では5個)。ただし、これに限らず、背景画像を印刷するカラーノズル列Coのノズルをホワイトノズル列Wのノズルよりも少なくしてもよい。
【0038】
そして、図7の下図は、パス毎のヘッド41の搬送方向の位置を示し、カラーノズル列Coとホワイトノズル列Wを1つのノズル列として示す。図7に示す印刷方法はバンド印刷である。バンド印刷とは、先のパスで形成されたラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に、後のパスでラスターラインが形成されない印刷方法である。そのため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される主画像または背景画像の搬送方向の幅長さに相当する。図7では1回の媒体搬送量がノズル列の半分の長さ(5D)となる。
【0039】
本実施形態では、ユーザーによって白使用モードが選択された場合、第1印刷方法によって画像が印刷される。即ち、往路動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される印刷方法によって画像が印刷される。そして、この実施例1では、往路動作または復路動作の一方の動作時に、主画像および背景画像が共に印刷されるとし、他方の動作時には何も画像が印刷されないとする。図7では、往路動作において主画像と背景画像が印刷され、復路動作では何も画像が印刷されないとする。即ち、図7では、主画像と背景画像が印刷される往路動作、何も画像が印刷されない復路動作、搬送量5Dだけ媒体が搬送される搬送動作が順に繰り返される。
【0040】
具体的には、図7に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、次のパス2の復路動作でヘッド41が移動方向に移動した後、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス3の往路動作で主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷され、また、背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、その後、媒体が搬送されることなく次のパス4の復路動作でヘッド41が移動方向に移動し、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。そうすることで、媒体の所定領域は、まず背景画像用ノズル(△○)と対向し、その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって主画像用ノズル(●)と対向する。その結果、媒体の所定領域では、背景画像上に主画像が印刷される。
【0041】
なお、図示しないが、裏刷り・白使用モードの場合には、逆に、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#6〜#10)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#5)を背景画像用ノズルとする。そうすることで、媒体の所定領域は、まず主画像用ノズル(#6〜#10)と対向し、その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって背景画像用ノズル(#1〜#5)と対向する。その結果、媒体の所定領域では、主画像上に背景画像が印刷される。
【0042】
このように、媒体の所定領域に対して、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像用のノズル(図7では背景画像用ノズル・一方のノズル群に相当)を、後に印刷する画像用ノズル(図7では主画像用ノズル・他方のノズル群に相当)よりも、搬送方向上流側のノズルとする。そうすることで、表刷りモード又は裏刷りモードに応じた順で主画像と背景画像を重ねて印刷することができる。また、媒体の所定領域に対して、主画像を印刷するパスと背景画像を印刷するパスとを異ならせることができる。そうすると、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像(以下、下層画像ともいう)を印刷するパスから、後に印刷する画像(以下、上層画像ともいう)を印刷するパスまでの時間、即ち、下層画像の乾燥時間を、比較的に長くすることができる。
【0043】
更に、本実施形態では、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法にて主画像と背景画像を印刷し、また、実施例1では、往路動作と復路動作のうちの一方の動作時(図7では往路動作時)に主画像と背景画像を印刷し、他方の動作時(図7では復路動作時)には画像を印刷しない。そうすることで、例えば、図7のように表刷りモードの場合、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像である背景画像が、往路動作時に印刷される。そして、本実施形態のプリンター1は、往路動作と復路動作のうちの画像を印刷しない他方の動作(図7では復路動作)を、搬送動作と同時に行わないとする。この場合、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間が、往路動作又は復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。図7の場合、下層画像である背景画像の乾燥時間が、復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。
【0044】
図8は、比較例の印刷方法を説明する図である。比較例では、ユーザーによって白使用モードが選択された場合にも、印刷方法が第2印刷方法に設定されるとする。図8は、表刷り・白使用モードの印刷方法を示す。なお、印刷に使用するノズルは、実施例1(図7)と同様に、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。
【0045】
第2印刷方法では、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返され、往路動作でも復路動作でも画像が印刷される。具体的には、図8に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス2の復路動作で、主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷され、また、背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷される。この場合、下層画像である背景画像の乾燥時間が搬送動作に要する時間だけとなる。
【0046】
このように比較例(図8)では、下層画像の乾燥時間が搬送動作に要する時間だけとなる。これに対して、実施例1(図7)では、下層画像の乾燥時間が往路動作又は復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。つまり、実施例1の方が比較例よりも、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0047】
これは、第1印刷方法によって画像を印刷することで、媒体の所定領域は、同じノズル群(例えば、主画像用ノズルや背景画像用ノズル)と往路動作でも復路動作でも対向するため、第2印刷方法のように往路動作でも復路動作でも画像を形成する必要が無くなるからである。言い換えれば、第1印刷方法では、往路動作と復路動作の一方の動作時にだけ画像を形成することが可能となり、他方の動作時を下層画像の乾燥時間に充てることができる。例えば、この実施例1のように、往路動作と復路動作のうちの一方の動作時に主画像と背景画像を印刷し、他方の動作時に画像を印刷しないとする。その結果、他方の動作に要する時間だけ比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制し、印刷画像の画質劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、図示しないが、往路動作時には画像を印刷せず、復路動作時に主画像と背景画像を印刷するようにしてもよい。例えば、図7を用いて説明すると、パス4やパス6で主画像と背景画像を印刷し、パス3やパス5では画像を印刷しないようにする。この場合、表刷りモードであれば、背景画像よりも後に印刷される主画像が復路動作時に印刷され、裏刷りモードであれば、主画像よりも後に印刷される背景画像が復路動作時に印刷されることになる。よって、往路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができる。即ち、下層画像の乾燥時間が、搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となり、比較例(図8)よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、1回の往路動作に要する時間が1回の搬送動作に要する時間よりも長く、また、1回の復路動作に要する時間が1回の搬送動作に要する時間よりも長いとする。これは、本実施形態では、媒体の所定領域に対して主画像と背景画像を異なるパスで印刷するために、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像用のノズルを、後に印刷する画像用のノズルよりも、搬送方向上流側のノズルとする。そのため、各画像を印刷するノズルがノズル列の半分の長さとなり、1回の搬送動作における媒体搬送量が比較的に短くなるからである。一方で、近年は大型化プリンターの需要が高まっており、大型プリンターではヘッド41の移動方向への移動距離が長く、往路動作に要する時間、及び、復路動作に要する時間が比較的に長くなるからである。つまり、比較例では比較的に短い搬送動作に要する時間を乾燥時間に利用するのに対して、実施例1では比較的に長い往路動作又は復路動作に要する時間を乾燥時間に利用しているため、比較例よりも実施例1の方が乾燥時間をより長くすることができる。具体的には、実施例1における下層画像の乾燥時間を比較例における下層画像の乾燥時間の2倍以上にすることができる。なお、往路動作に要する時間と復路動作に要する時間の少なくとも一方だけが、搬送動作に要する時間よりも長いとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態のプリンター1では、前述のように、往路動作又は復路動作で画像が何も印刷されないとしても、往路動作又は復路動作と搬送動作を同時に行わないとする。そうすることで、実施例1における下層画像の乾燥時間をより長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。逆に、往路動作又は復路動作と搬送動作を同時に行ってしまうと、下層画像の乾燥時間が短くなるだけでなく、制御が複雑となり、また、機械的な振動が発生したり、駆動信号にノイズが発生したりする等して、搬送精度が低下する虞がある。
【0051】
また、比較例(図8)のように、白使用モードにおいて第2印刷方法を実施する場合であっても、往路動作又は復路動作で画像を印刷した後に休止時間を設けることで、画像の乾燥時間を長くすることができる。しかし、白使用モードの場合には往路動作又は復路動作で画像を印刷した後に休止時間を設け、カラーモードの場合には休止時間を設けないとすると、印刷制御が複雑となる。また、休止時間を設けるためには、所定の休止時間をカウントするプログラムや装置が必要となる。
【0052】
なお、白使用モードにおいて、画像の乾燥時間を更に長くするためには、主画像用ノズルと背景画像用のズルの間に不使用ノズルを設けるとよい。そうすることで、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスとの間に、画像が印刷されないパス(不使用ノズルが媒体と対向するパス)を設けることができ、下層画像の乾燥時間を更に長くすることができる。また、不使用ノズルが属する領域の搬送方向の長さは媒体搬送量の整数倍の長さにするとよい。そうすることで、下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスとの間のパス数を、画像全域において一定にすることができ、画像の濃度むらを防止できる。
【0053】
また、白使用モードでは、主画像と背景画像を異なるパスで印刷するために、ノズル列に属する半分のノズルを用いて各画像を印刷する。一方、カラーモードでは、主画像だけを印刷するため、ノズル列に属する全てのノズルを用いて主画像を印刷することができる。そうすることで、カラーモードでは白使用モードに比べて、1回のパスで形成可能な画像幅が大きくなり、印刷時間を短縮することができる。
【0054】
ただし、これに限らず、カラーモードにおいても白使用モードと同様に、ノズル列に属する半分のノズルだけを用いて主画像を印刷してもよい。例えば、表刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、表刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向下流側のノズル)と同じにし、裏刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、裏刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向上流側のノズル)と同じにしてもよい。この場合、表刷り・カラーモードと表刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化でき、裏刷り・カラーモードと裏刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化できる。そうすることで、プリンター1の製造工程において、最適な印刷パターンや搬送動作の制御方法を決定する処理を簡略化できる。そして、各モードの最適な印刷パターンや媒体の搬送制御の情報を記憶するメモリー容量を削減できる。また、白使用モードでの本番印刷の前にカラーモードでテスト印刷し、カラー画像の画質を確認することができるため、白インクの消費量を抑えることもできる。
【0055】
<実施例2>
図9は、実施例2の印刷方法を説明する図である。図は、表刷り・白使用モードのバンド印刷の様子を示し、印刷に使用するノズルは図7と同様に、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。前述のように、本実施形態では、白使用モードの場合、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法によって画像を印刷する。
【0056】
更に、実施例2では、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する下層画像を、復路動作よりも先の動作である往路動作で印刷し、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して後に印刷する上層画像を往路動作の後の動作である復路動作で印刷する。例えば、図9のように表刷りモードの場合には、主画像よりも背景画像の方が先に印刷される。よって、背景画像が往路動作で印刷され、主画像が復路動作で印刷される。つまり、実施例2では、主画像を印刷するパスと背景画像を印刷するパスが異なる。
【0057】
具体的には、図9に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、次のパス2の復路動作でヘッド41が移動方向に移動した後、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス3の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、パス4の復路動作で主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷される。
【0058】
この場合、媒体の所定領域に対して下層画像である背景画像を印刷するパスから上層画像である主画像を印刷するパスまでの時間が、復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となる。即ち、下層画像の乾燥時間が、往路動作及び復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。よって、実施例2の方が図8に示す比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。更に、実施例2の方が図7に示す実施例1よりも、往路動作に要する時間分だけ下層画像の乾燥時間を長くすることができる。そのため、実施例2では、印刷画像の滲みや混色をより抑制し、印刷画像の画質劣化をより抑制することができる。
【0059】
第1印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されないため、媒体の所定領域に対して同じノズルが往路動作と復路動作の2パスに亘って対向する。そこで、実施例2では、主画像と背景画像のうちの先に印刷する下層画像を出来る限り早く印刷するために往路動作で印刷し、後に印刷する上層画像を出来る限り遅く印刷するために復路動作で印刷する。そうすることで、下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの乾燥時間を出来る限り長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0060】
なお、実施例1(図7)では、主画像も背景画像も共に、往路動作と復路動作のうちの一方の動作で印刷する。そのため、往路と復路の特性差が排除された画像を印刷することができる。これに対して、実施例2では、主画像と背景画像のうちの一方は往路動作で印刷され、他方は復路動作で印刷される。ただし、実施例2においても、同じ画像は往路動作と復路動作のうちの一方の動作で印刷されるため、往路と復路の特性差が排除された画像を印刷することができる。
【0061】
図10Aは、実施例2における裏刷り・白使用モードの印刷方法を説明する図である。裏刷りモードの場合、媒体の所定領域に対して背景画像よりも主画像が先に印刷される。よって、図10Aに示すように、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(●・#6〜#10)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列Wおよびカラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(△○・#1〜#5)を背景画像用ノズルとする。実施例2では、下層画像を往路動作で印刷し、上層画像を復路動作で印刷する。よって、裏刷りモードでは、主画像を往路動作で印刷し、背景画像を復路動作で印刷する。そうすることで、下層画像の乾燥時間が往路動作及び復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となり、比較例(図8)や実施例1(図7)よりも乾燥時間を長くすることができる。
【0062】
図10Bは、実施例2におけるインターレース印刷を説明する図である。ここまで、バンド印刷を例に挙げているがこれに限らず、例えば、インターレース印刷を実施してもよい。インターレース印刷とは、あるパスで形成されたラスターライン間に他のパスでラスターラインを形成する印刷方法である。即ち、インターレース印刷ではバンド印刷よりも搬送方向の印刷解像度が高くなる。図10Bでは、例えば、パス1のノズル#9,#10で形成されたラスターライン間に、パス2とパス3で2つのスターラインが形成される。そのため、図10Bのインターレース印刷では媒体搬送量が5D/3となり、図9のバンド印刷での媒体搬送量5Dよりも短くなる。そのため、インターレース印刷では、媒体の所定領域に対して下層画像(図10Bでは背景画像)を印刷するパスと上層画像(図10Bでは主画像)を印刷するパスの間に、媒体の所定領域がノズルと対向しないパスを設けることができる。よって、インターレース印刷の方がバンド印刷よりも、下層画像の乾燥時間をより長くすることができる。逆に言えば、バンド印刷のように、下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスの間にノズルと対向しないパスを設けることができない場合に、本発明がより有効であると言える。
【0063】
<実施例3>
図11は、実施例3の印刷方法を説明する図である。図は、表刷り・白使用モードにおけるバンド印刷の様子を示す。印刷に使用するノズルは、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。前述のように、本実施形態では、白使用モードの場合、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法によって画像を印刷する。
【0064】
更に、実施例3では、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する。即ち、主画像と背景画像のうちの一方の画像を往路動作と復路動作で印刷する。そして、主画像と背景画像のうちの先に印刷する下層画像は少なくとも往路動作で印刷し、後に印刷する上層画像は少なくとも復路動作で印刷する。例えば、図11のように、表刷りモードにおいて背景画像を2回のパスで印刷する場合、背景画像を往路動作と復路動作で印刷し、主画像を復路動作で印刷する。この場合、媒体の所定領域に対して下層画像である背景画像を印刷するパスから上層画像である主画像を印刷するパスまでの時間、即ち、下層画像の乾燥時間が、搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となる。よって、実施例3の方が図8に示す比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。その結果、印刷画像の滲みや混色を抑制し、印刷画像の画質劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、図示しないが、表刷りモードにおいて主画像を2回のパスで印刷する場合、背景画像を往路動作で印刷し、主画像を往路動作と復路動作で印刷する。また、裏刷りモードにおいて背景画像を2回のパスで印刷する場合、主画像を往路動作で印刷し、背景画像を往路動作と復路動作で印刷し、裏刷りモードにおいて主画像を2回のパスで印刷する場合、主画像を往路動作と復路動作で印刷し、背景画像を復路動作で印刷する。これらの場合においても、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間を、搬送動作に要する時間と往路動作または復路動作に要する時間との合計時間となる。よって、実施例3の方が比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0066】
また、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作のドットと復路動作のドットを重ねて形成することができる。その結果、実施例3では、実施例1(図7)や実施例2(図9)に比べて、画像を構成するインク量を増やすことができる。例えば、背景画像を2回のパスで印刷する場合には、背景画像の遮蔽性を上げることができ、主画像を2回のパスで印刷する場合には、主画像の発色性を上げることができる。
【0067】
また、ドットを重ねて形成するに限らず、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する場合には、往路動作のドット形成位置と復路動作のドット形成位置を異ならせることができる。例えば、前述の図7に示す実施例1のように、背景画像を1回のパスでバンド印刷により印刷する場合、背景画像用の各ノズルが1回のパスで移動方向に並ぶドットを形成しなければならない。これに対して、図11の実施例3のように背景画像を2回のパスでバンド印刷により印刷する場合、背景画像用の各ノズルは往路動作と復路動作で移動方向に並ぶドットを交互に形成することができる、即ち、移動方向に並ぶドットを異なるパスで形成することができる。その結果、移動方向に並ぶドットの滲みや混色を抑制でき、印刷画像の画質劣化を抑制できる。
【0068】
更に、2回のパスで画像を印刷する場合、ノズル列において搬送方向に並ぶノズルを往路動作と復路動作で交互で使用することができる。例えば、往路動作では偶数番号のノズルを使用し、復路動作では奇数番号のノズルを使用する。例えば、図11の場合には、背景画像用ノズル(#6〜#10)のうち、往路動作では偶数番号のノズル#6,#8,#10を使用し、復路動作では奇数番号のノズル#7,#9を使用するようにしてもよい。その結果、搬送方向に並ぶドットを異なるパスで印刷することができ、搬送方向に並ぶドットの滲みや混色を抑制できる。
【0069】
また、下層画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作(先のパス)で印刷する画像部分(ドット)の方が、復路動作(後のパス)で印刷する画像部分(ドット)よりも、乾燥時間が長くなる。よって、下層画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作で印刷する画像部分を復路動作で印刷する画像部分よりも大きくするとよい。逆に、上層画像を2回のパスで印刷する場合、復路動作(後のパス)で印刷する上層画像部分と重なる下層画像部分の方が、往路動作(先のパス)で印刷する上層画像部分と重なる下層画像部分よりも、乾燥時間が長くなる。よって、上層画像を2回のパスで印刷する場合、復路動作で印刷する画像部分を往路動作で印刷する画像部分よりも大きくするとよい。例えば、図11に示すように下層画像である背景画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作では移動方向に並ぶ3個のドットのうちの2個のドットを形成し、復路動作では移動方向に並ぶ3個のドットのうちの1個のドットを形成するようにするとよい。また、往路動作で背景画像を印刷するノズル数(#6,#8,#10)を、復路動作で印刷するノズル数(#7,#9)よりも多くするとよい。そうすることで、下層画像のより多くの部分の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0070】
以上、本実施形態では、白使用モードを実施する場合に、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像用のノズルが、後に印刷する画像用のノズルよりも搬送方向上流側のノズルとなり、往路動作と復路動作と搬送動作が順に繰り返される第1印刷方法で画像が印刷され、各画像が往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方で印刷されるように、プリンタードライバーが印刷データを作成したり並べ替えたりする。よって、プリンター1のコントローラー10とプリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とが制御部に相当し、プリンター1とコントローラー10が接続された印刷システムが流体噴射装置に相当する。
ただし、これに限らず、プリンタードライバーの役割をプリンター1のコントローラー10が担ってもよく、この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が流体噴射装置に相当する。
【0071】
===変形例===
前述の図6のフローでは、白使用モードが選択された場合に、印刷方法が必ず第1印刷方法に設定されてしまうが、これに限らない。白使用モードが選択された場合に、推奨の印刷方法として(デフォルトとして)、第1印刷方法に設定されるようにしてもよい。そして、白使用モードであっても、ユーザーが設定画面等において、第2印刷方法を選択できるようにしてもよい。第1印刷方法よりも第2印刷方法の方が印刷時間を短縮できるため、ユーザーが早く印刷したい場合に(例えば試し印刷などにおいて)、白使用モードであっても第2印刷方法を実施できるようにしてもよい。
【0072】
前述の実施形態では、白インクと4色のインクを使用して白色の色味を調整した背景画像を例に挙げているが、これに限らない。白インクだけを用いて印刷した背景画像であっても良い。
また、前述の実施形態では、4色のインク(YMCK)だけで主画像を印刷しているが、これに限らない。例えば、4色のインクと共に白インクを用いて主画像を印刷してもよい。4色のインクに白インクを加えて主画像を印刷することで、高明度、且つ、高彩度の色を再現した画像を印刷することができる。この場合、前述の図7に示す表刷り・白使用モードの印刷では、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側のノズル群(#1〜#5)も用いて主画像を印刷することになる。
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしているが、これに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。
【0073】
前述の変形例3では、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパス(往路動作と復路動作)で印刷するとしているが、これに限らない。主画像も背景画像も2回のパスで印刷してもよい。この場合、主画像と背景画像のうちの下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間が、比較例と同様に、搬送動作に要する時間となる。ただし、往路動作のドットと復路動作のドットを重ねなければ、1回のパスで噴射されるインク量が比較例よりも減り、また、移動方向や搬送方向に並ぶドットが異なるパスで形成される。そのため、下層画像の乾燥時間が比較例と同程度であっても、第1印刷方法を実施する本実施形態の方が、第2印刷方法を実施する比較例よりも、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0074】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、印刷方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0075】
<インクと記録媒体について>
本実施形態では、インクと該インクを吸収するインク吸収性の有る媒体(インク吸収性記録媒体)を用いる。インク吸収性記録媒体としては、インク吸収性の有る基材からなる記録媒体や基材にインク受容層を設けた記録媒体が使用可能である。インク吸収性の有る基材としては、紙、布などが挙げられる。インクは吸収性媒体に吸収されるインクであればよいが、インク吸収性媒体への吸収性を確保するために蒸発性の溶剤を含むことが好ましい。また、溶剤として水を少なくとも含む「水系インク」が特に好ましい。インクを構成する他の成分としては、色材としての染料や顔料がある。また、インクジェットヘッドからの吐出安定性のために水溶性の有機溶剤をも含有していてもよいし、保湿剤、浸透促進剤、ph調整剤、防虫剤、紫外線吸収剤などを必要により含有していてもよい。このようなカラーインクとして、例えば、特開2008−81693、特開2005−105135、特開2003−292834に記載のインクを使用できる。
【0076】
記録媒体は、インク組成物の溶剤を吸収することでインク組成物の色材を固着するものである。例えば、紙、布などのインクを吸収する基材を用いた媒体でも良いし、インクを吸収する基材或いはインクを吸収しない基材にインクを吸収するインク受容層を設けたものでもよい。透明性の有る媒体を用いる場合は、例えば、特開2009−925、特開平9−99634、特開平9−208870に記載の記録媒体が使用できる。
【0077】
インク受容層としては、インクジェット記録方法用の記録媒体上に通常設けられる公知のインク受容層を用いることができる。公知のインク受容層としては、例えば、樹脂からなるインク受容層が知られており、インク受容層に用いられる樹脂の例としては、例えば、特開昭57−38185号、同62−184879号公報等に開示されているようなポリビニルピロリドンもしくはビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、特開昭60−168651号、同60−171143号、同61−134290号公報に開示されているようなポリビニルアルコールを主体とする樹脂組成物、特開昭60−234879号公報に開示されているようなビニルアルコールとオレフィン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体、特開昭61−74879号公報に開示されているようなポリエチレンオキサイドとイソシアネートとの架橋物、特開昭61−181679号公報に開示されているようなカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイドとの混合物、特開昭61−132377号公報に開示されているようなポリビニルアルコールにメタクリルアミドをグラフト化したポリマー、特開昭62−220383号公報に開示されているようなカルボキシル基を有するアクリル系ポリマー、特開平4−214382号公報等に開示されているようなポリビニルアセタール系ポリマー、特開平4−282282号、同4−285650号公報に開示されているような架橋性アクリル系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーを挙げることができる。
【0078】
また、公知のインク受容層としては、特開平4−282282号、同4−285650号公報等には架橋性ポリマーから構成されるポリマーマトリックスと吸収性ポリマーとを併用したインク受容層が開示されている。更に、アルミナ水和物(カチオン性アルミナ水和物)を用いたインク受容層も知られており、例えば、特開昭60−232990号、同60−245588号公報、特公平3−24906号公報、特開平6−199035号、同7−82694号公報等には、微細な擬ベーマイト形アルミナ水和物を水溶性バインダーと共に基材表面に塗工した記録媒体が開示されている。また、例えば特開平10−203006号公報には、一次粒子径が3nm〜30nmである主として気相法による合成シリカを使用するインク受容層が開示されている。更にまた、特開2001−328344号公報には、無機顔料及び高分子接着剤を含むインク受容層が開示されている。本発明においては、これらの各インク受容層を設けたフィルム基材を用いることが好ましい。
【0079】
本発明方法においては、背景画像用の白インク組成物として、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の白色インク組成物を用いることができる。このような白色顔料としては、例えば、無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子を挙げることができ、白色インク組成物としては、着色剤成分として中空ポリマー微粒子を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。
【0080】
無機白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。特に酸化チタンは、隠蔽性、着色性及び分散粒径が好ましい白色顔料として知られている。
【0081】
有機白色顔料としては、特開平11−129613号に示される有機化合物塩や特開平11−140365号、特開2001−234093号に示されるアルキレンビスメラミン誘導体が挙げられる。上記白色顔料の具体的な商品としては、ShigenoxOWP、ShigenoxOWPL、ShigenoxFWP、ShigenoxFWG、ShigenoxUL、ShigenoxU(以上、ハッコールケミカル社製、何れも商品名)などが挙げられる。
【0082】
着色剤成分として含有させる中空ポリマー微粒子は、例えば、その外径が約0.1〜1μm、内径が約0.05〜0.8μmの微粒子であることができ、白色インク組成物の溶剤に不溶で、その他の成分、例えば、バインダー樹脂成分とは化学的に反応しないものであることが必要である。この中空ポリマー微粒子は、壁が液体を透過可能な合成重合体でつくられ、中空ポリマー微粒子中央部の空間はその壁を透過して液体の出入りが可能である。したがつて、この中空ポリマー微粒子中央部の空間はインク組成物の状態では溶媒によって満たされ、中空ポリマー微粒子の比重とインク組成物の比重が実質的に同一になり、中空ポリマー微粒子はインク組成物中に安定に分散されている。一方、このインク組成物を印字面に印字して乾燥すると、中空ポリマー微粒子中央部の空間は空気で置換されるため、樹脂と空間部で入射光が乱反射されて、実質的に白色を呈する。
【0083】
また、中空ポリマー微粒子は、前記のように、印刷前には微粒子内に液体を含有しているが、その微粒子内に入り込んでいた液体が印刷後に微粒子の璧を通過して拡散し、微粒子の微細気孔を空気で充満させるというタイプであるか、もしくは最初から内部に空気を含んだ完全密封タイプであることもできる。白色インク組成物に用いられる中空ポリマー微粒子はインク組成物中で沈殿しないことが望まれるため、インク組成物溶液の比重とほぼ同等の比重を有するものが好ましい。このため、必要に応じてグリセロールのような比重調整剤を用いてインク組成物溶液の比重を調節することが好ましい。
【0084】
上記の性質を満たす中空ポリマー微粒子市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)社から市販されているロペーグ(Ropaque)OP−62等を挙げることができる。これは、アクリル・スチレン共重合体からなる中空ポリマー微粒子を38重量%含んだ水分散液である。この微粒子の内径は約0.3μmで、外径は約0.5μmであり、内部には水が充満している。
【0085】
また、前記中空ポリマー微粒子は、公知の製造方法、例えば米国特許第4,089,800号明細書に開示されている方法により得ることもできる。この中空ポリマー微粒子は、実質的に有機重合体で作られており、熟可塑性を示す。中空ポリマー微粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、好ましくは、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーポネート、ポリスチレン、スチレン若しくは他のビニルモノマーの共重合体、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル又はビニルブチラールのホモ重合体あるいは共重合体のようなビニルポリマー、ジエンのホモ重合体及び共重合体等を挙げることができる。特に好ましい熱可塑性重合体としては、2−へキシルアクリレートの共重合体、メチルメタアクリレートの共重合体のような共重合体、スチレンとアクリロニトリルのようなその他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0086】
本発明で用いる白色インク組成物中の中空ポリマー微粒子の含有量は、例えば、0.1〜20重量%とすることができる。中空ポリマー微粒子の含有量を0.1重量%以上にすると、充分な白色度を得ることができる。一方、20重量%以下にすると、インクジェット印刷用インク組成物に要求される粘度を確保するために必要なインクバインダー樹脂成分を充分な量で含有させることができ、その結果として、充分な印字密着性を確保することができる。
【0087】
本発明においては、前記の白色顔料を単独で用いてもよいし、併用してもよい。顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。
【0088】
本発明で用いる白色インク組成物は、白色着色剤成分の他に、インクジェット印刷用インク組成物に通常含有される種々の成分、例えば、樹脂成分、分散剤成分、溶媒成分(特に水)などを含有することができる。なお、本願明細書では溶媒と溶剤は同じ意味で用いる。また、中空ポリマー微粒子を白色着色剤として含有する白色インク組成物としては、例えば、特許第3562754号公報(特許文献1)又は特許第3639479号公報(特許文献2)に記載の組成物を用いることもできる。
【0089】
本発明で用いるカラー画像用の非白色インク組成物は、例えば、カラーインク組成物、黒色インク組成物、又は灰色インク組成物である。また、カラーインク組成物としては、例えば、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、あるいはライトシアンインク組成物、ライトマゼンタインク組成物、更には、レッドインク組成物、グリーンインク組成物、又はブルーインク組成物等を挙げることができる。非白色インク組成物は、前記の各種インク組成物を1種又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0090】
非白色インク組成物としては、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の非白色インク組成物を用いることができ、着色剤成分として染料又は顔料を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。特に、透明フィルム基材又はインク受容層に対して良好な特性(例えば、発色性や定着性)を示すインク組成物を用いることが好ましい。
【0091】
本発明で用いるインクと記録媒体が上述のものであれば、前述の実施形態のように先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インクの乾燥時間を長く設けることができ、画像の滲みや混色を防止することができる。ただし、本発明で用いるインクや記録媒体は上述のものに限るものでは無い。先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インク中の成分が記録媒体に固着する時間を設けるものであればよい。即ち、前述の実施形態により先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、画像の滲みや混色を防止するものであれば、他のインクや記録媒体を用いても良い。
【0092】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41を移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、(複数の)ヘッド41を有するヘッドユニット40を媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニット40を紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0093】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示しているが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、ノズルからの流体噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、
60 コンピューター
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、媒体に対してインク(流体)を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を備えるインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。プリンターとして、ノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射させる画像形成動作と、ノズル列に対して媒体を所定方向である搬送方向に搬送する搬送動作を繰り返すプリンターが知られている。
プリンターの中には、主画像と背景画像を重ねて印刷するために、背景画像を印刷する2つのノズル列が移動方向に並び、その背景画像を印刷する2つのノズル列の間に主画像を印刷するノズル列を配置したプリンターがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−285422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、上述のプリンターでは、例えば、背景画像が印刷された直ぐ後に主画像が印刷される。そのため、背景画像の乾燥時間を十分に確保できず、画像が滲んだり混色したりしてしまう。その結果、印刷画像の画質が劣化してしまう。
そこで、本発明では、画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンターの斜視図である。
【図3】ヘッドの下面に設けられるノズルの配列を示す図である。
【図4】プリンターが有する印刷モードを説明する図である。
【図5】プリンターが実施する印刷方法を説明する図である。
【図6】印刷方法の決定フローを示す図である。
【図7】実施例1の印刷方法を説明する図である。
【図8】比較例の印刷方法を説明する図である。
【図9】実施例2の印刷方法を説明する図である。
【図10】図10Aは実施例2における裏刷り・白使用モードの印刷方法を説明する図であり、図10Bは実施例2におけるインターレース印刷を説明する図である。
【図11】実施例3の印刷方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、(D)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、主画像と背景画像のうちの下層画像の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲み等を抑制することができる。その結果、画像の画質劣化を抑制できる。
【0009】
かかる流体噴射装置であって、前記媒体の所定領域に対して先に画像形成を行う前記一方のノズル群は、少なくとも前記往路動作時に流体を噴射すること。
このような流体噴射装置によれば、復路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができ、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、前記媒体の所定領域に対して後に画像形成を行う前記他方のノズル群は、少なくとも前記復路動作時に流体を噴射すること。
このような流体噴射装置によれば、往路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができ、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、1回の前記往路動作に要する時間と1回の前記復路動作に要する時間のうちの少なくとも一方は、1回の前記搬送動作に要する時間よりも長いこと。
このような流体噴射装置によれば、往路動作または復路動作に要する時間が下層画像の乾燥時間となる場合に、下層画像の乾燥時間がより長くなる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列の前記ノズルも使用して、前記背景画像を形成すること。
このような流体噴射装置によれば、所望の背景画像を形成することができる。
【0013】
また、第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成し、前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成し、前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射し、前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射する、ことを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、主画像と背景画像のうちの下層画像の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲み等を抑制することができ、画像の画質劣化を抑制できる。
【0014】
===印刷システムについて===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0015】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図である。図2は、プリンター1の斜視図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0016】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0017】
搬送ユニット20は、媒体Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送させるものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を搬送方向と交差する移動方向に移動させるためのものであり、キャリッジ31を有する。
【0018】
ヘッドユニット40は、媒体Sにインクを噴射するためのものであり、ヘッド41を有する。ヘッド41はキャリッジ31によって移動方向に移動する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルには、インクが入った圧力室(不図示)が設けられている。
【0019】
図3は、ヘッド41の下面に設けられるノズルの配列を示す図である。なお、図はヘッド41の上面から仮想的にノズルを見た図である。ヘッド41の下面には、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔Dで並んだノズル列が5列形成されている。図示するように、ブラックインクを噴射するブラックノズル列K・シアンインクを噴射するシアンノズル列C・マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列M・イエローインクを噴射するイエローノズル列Y・白インクを噴射するホワイトノズル列Wが、移動方向に並んでいる。なお、各ノズル列が有する180個のノズルに対して、搬送方向の下流側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0020】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41からインク滴を断続的に噴射させて媒体上にドットを形成する画像形成動作と、ヘッド41に対して媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とが繰り返される。そうすることで、先の画像形成動作により形成されたドットの位置とは異なる媒体上の位置に、後の画像形成動作にてドットを形成することができ、媒体上に2次元の画像を印刷することができる。
【0021】
===印刷モードについて===
図4は、本実施形態のプリンター1が有する印刷モードを説明する図である。プリンター1は、4色のインク(YMCK)によって印刷する主画像(カラー画像やモノクロ画像)だけを媒体上に印刷する「カラーモード」と、白インクによる白色の背景画像と主画像を重ねて媒体上に印刷する「白使用モード」のうちの、何れか一方のモードにて媒体上に画像を印刷する。白使用モードのように主画像の背景に白色の背景画像を設けることで、特に媒体が白色でない場合に、発色性の良い画像を印刷することができる。また、媒体が透明である場合には、主画像と背景画像を重ねて印刷することで、印刷物の反対側が透けてしまうことを防止できる。
【0022】
更に、プリンター1は、表刷りモードと裏刷りモードのうちの何れか一方のモードにて媒体上に画像を印刷する。表刷りモードは、主画像が印刷面側から視認されるように画像を印刷するモードであり、裏刷りモードは、媒体を介して主画像が印刷面と反対側の面から視認されるように画像を印刷するモードである。よって、媒体が透明性を有する場合に、裏刷りモードが実施される。カラーモードでは媒体上に主画像だけが印刷されるため、表刷りモードであっても裏刷りモードであっても、媒体上に直に主画像が印刷される。一方、白使用モードでは主画像と背景画像が重ねて印刷されるため、表刷りモードでは媒体の所定領域に対して先に背景画像が印刷され、その背景画像上に主画像が印刷される。逆に、裏刷りモードでは媒体の所定領域に対して先に主画像が印刷され、その主画像上に背景画像が印刷される。
【0023】
このように、プリンター1は、表刷り・カラーモードと、裏刷り・カラーモードと、表刷り・白使用モードと、裏刷り・白使用モードの4通りの印刷モードを有する。
【0024】
なお、本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L*a*b*色空間での標記がa*b*平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L*値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、背景として用いられるのであれば純粋な白に限られない。
【0025】
また、白インクのみを使用して背景画像を印刷すると、その白インクの色そのものの色が背景画像の色となる。しかし、同じように白インクと呼ばれるインクであっても、インクの材料などによって白色の色味が若干異なる。そのため、使用する白インクによってユーザーが所望する色とは異なる色の背景画像が印刷されてしまう場合がある。また、単純な白色ではなく、若干の有彩色を有する背景画像が所望されることもある。そこで、本実施形態のプリンター1は、白インクと共に少量の4色インク(YMCK)を適宜使用して、所望の白色の背景画像(調整された白色の背景画像)を印刷する。そうすることで、逆に、白インクが若干の色彩を有する場合、その色彩を打ち消すインクと共に背景画像を印刷し、背景画像を無彩色に近づけることもできる。
【0026】
所望の白色の背景画像をプリンター1に印刷させるための印刷データは、プリンター1が予め記憶するようにしても良いし、プリンタードライバーが作成するようにしても良い。プリンター1のモニターやコンピューターの画面をユーザーが見るなどして、所望の背景画像の色の選択が行われる場合には、選択された色に応じた背景画像の印刷データをプリンタードライバーが生成するようにするとよい。
【0027】
===印刷方法===
図5は、本実施形態のプリンター1が実施する印刷方法を説明する図である。プリンター1は、「第1印刷方法」と「第2印刷方法」のうちの何れか一方の印刷方法にて媒体上に画像を印刷する。以下では、ヘッド41に対して媒体が搬送方向下流側に搬送される動作を「搬送動作」と呼び、ヘッド41が移動方向に移動する動作を「パス」と呼ぶ。また、ヘッド41が媒体に対して移動方向の一方の方向へ移動する動作(例えば右側から左側へ移動する動作)を「往路動作」と呼び、ヘッド41が媒体に対して移動方向の他方の方向へ移動する動作(例えば左側から右側へ移動する動作)を「復路動作」と呼ぶ。即ち、往路動作と復路動作は、移動方向の双方向におけるヘッド41(ノズル列)と媒体との相対移動である。なお、往路動作は、図2に示すホームポジションHPからキャリッジ31が離れる動作をいい、復路動作は、キャリッジ31がホームポジションHPに近付く動作をいう。
【0028】
図5に示すように、第1印刷方法では、往路動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される。一方、第2印刷方法では、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される。即ち、第2印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されるのに対して、第1印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない。よって、第2印刷方法では、往路動作でも復路動作でも画像が印刷される。一方、第1印刷方法では、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方で画像が印刷される。即ち、第1印刷方法では、図4に示す主画像を形成するために、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に、4色インクのノズル列(YMCK)からインクが噴射され、背景画像を形成するために、往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に、ホワイトノズル列W、及び、4色インクのノズル列からインクが噴射される。
【0029】
図6は、印刷方法の設定フローを示す図である。プリンタードライバーは、ユーザーから印刷指令を受け取ると、コンピューター60のディスプレイにウィンドウを表示する等して、ユーザーに「白使用モード」と「カラーモード」の何れか一方の印刷モードを選択させる。その後、プリンタードライバーは、ユーザーによって白使用モードが選択されたのか否かを判断する(S01)。白使用モードが選択された場合(S01→Y)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第1印刷方法に設定する(S02)。
【0030】
これに対して、カラーモードが選択された場合(S01→N)、プリンタードライバーは、ユーザーに「第1印刷方法」と「第2印刷方法」の何れか一方の印刷方法を選択させる(S03)。ユーザーによって第1印刷方法が選択された場合(S03→N)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第1印刷方法に設定する(S02)。一方、ユーザーによって第2印刷方法が選択された場合(S03→Y)、プリンタードライバーは、印刷指令を受け取った画像の印刷方法を第2印刷方法に設定する(S04)。
【0031】
その後、プリンタードライバーは、印刷モードに応じて印刷データを作成する。例えば、カラーモードが設定されている場合、プリンタードライバーは主画像用の印刷データだけを作成し、白使用モードが設定されている場合、プリンタードライバーは主画像用の印刷データだけでなく背景画像用の印刷データも作成する。また、プリンタードライバーは、作成した印刷データを、印刷モードや印刷方法に応じて、プリンター1に転送する順に並べ替える。例えば、表刷り・白使用モードが設定されている場合、プリンタードライバーは、媒体の所定領域に対して主画像よりも背景画像が先に印刷されるように、各画像の印刷データを並べ替える。また、第1印刷方法が設定されている場合、プリンタードライバーは往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に画像が印刷されるように各画像の印刷データを並べ替える。一方、第2印刷方法が設定されている場合、プリンタードライバーは往路動作でも復路動作でも画像が印刷されるように各画像の印刷データを並べ替える。
【0032】
また、プリンタードライバーは、作成した印刷データと共に、第1印刷方法と第2印刷方法のうちの何れの印刷方法を実施するのかを示すデータを、プリンター1に送信する。プリンター1(コントローラー10)は、第1印刷方法を実施するデータを受信した場合には、往路動作、復路動作、搬送動作を順に繰り返し、第2印刷方法を実施するデータを受信した場合には、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作を順に繰り返す。
【0033】
なお、本実施形態では、ユーザーに白使用モードとカラーモードの何れかを選択させるとしているが、これに限らない。例えば、印刷媒体が透明性の有る媒体である場合にはプリンタードライバーが白使用モードを選択し、印刷媒体がそれ以外の媒体である場合にはプリンタードライバーがカラーモードを選択するようにしてもよい。
【0034】
また、図6のフローでは、カラーモードの場合に、ユーザーに第1印刷方法と第2印刷方法の何れかを選択させているが、これに限らない。第1印刷方法において往路動作と復路動作の一方だけで画像を印刷するようにすれば、往路と復路の特性差が排除され、より高画質な画像を印刷することができる。一方で、第1印刷方法に比べて第2印刷方法の方が画像を早く印刷することができる。そこで、プリンター1の基本設定で「きれいモード」が設定されている場合、プリンタードライバーは印刷方法を第1印刷方法に設定し、「はやいモード」が設定されている場合には、プリンタードライバーは印刷方法を第2印刷方法に設定するようにしてもよい。
【0035】
<実施例1>
図7は、実施例1の印刷方法を説明する図である。以下、ユーザーによって白使用モードが選択され、プリンタードライバーが印刷方法を第1印刷方法に設定した場合について説明する。図7は、表刷り・白使用モードの印刷を示す。また、説明の簡略のため、4色インクを各々噴射するノズル列(YMCK)をまとめて「カラーノズル列Co(第1ノズル列に相当)」と呼ぶ。図では、カラーノズル列Co及びホワイトノズル列W(第2ノズル列に相当)にそれぞれ属するノズル数を10個(#1〜#10)とし、ノズル列において搬送方向に並ぶノズルの間隔をDとする。カラーノズル列Coに属するノズルを丸で示し、ホワイトノズル列Wに属するノズルを三角で示す。また、実際のプリンター1ではヘッド41に対して媒体が搬送方向下流側に搬送されるが、図7の下図ではヘッド41が搬送方向上流側に搬送される様子を示す。
【0036】
図7の上図は、各画像を印刷するために使用するノズルを示す図である。表刷り・白使用モードの印刷では、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル#1〜#5を、主画像を印刷するための主画像用ノズル(●・黒塗りのノズル)とし、ホワイトノズル列Wおよびカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル#6〜#10を、背景画像(白色の色味を調整した背景画像)を印刷するための背景画像用ノズル(△○・白抜きのノズル)とする。なお、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#5)は印刷に使用しないノズルとする。
【0037】
このように、本実施形態では、背景画像を印刷するホワイトノズル列Wのノズル(△)の搬送方向の位置と、同じく背景画像を印刷するカラーノズル列Coのノズル(○)の搬送方向の位置とを等しくする。そうすると、背景画像を印刷するために、媒体の所定領域に対して同じパスで白インクとカラーインクが噴射される。その結果、白インクとカラーインクが混ざり、背景画像の粒状感を低減することができる。また、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さい。ただし、背景画像におけるカラーインクの粒状感を低減するため、背景画像上においてカラーインクのドットをなるべく均一に分散することが好ましい。即ち、背景画像の単位領域あたりの白インク密度(ドット密度)に対して背景画像の単位領域あたりのカラーインク密度(ドット密度)を小さくする。そのため、背景画像を構成するカラーインクの割合は白インクの割合に比べて小さいものの、本実施形態では、背景画像を印刷するために使用するホワイトノズル列Wのノズル数とカラーノズル列Coのノズル数を等しくする(図7では5個)。ただし、これに限らず、背景画像を印刷するカラーノズル列Coのノズルをホワイトノズル列Wのノズルよりも少なくしてもよい。
【0038】
そして、図7の下図は、パス毎のヘッド41の搬送方向の位置を示し、カラーノズル列Coとホワイトノズル列Wを1つのノズル列として示す。図7に示す印刷方法はバンド印刷である。バンド印刷とは、先のパスで形成されたラスターライン(移動方向に沿うドット列)の間に、後のパスでラスターラインが形成されない印刷方法である。そのため、1回の媒体搬送量は、1回のパスで形成される主画像または背景画像の搬送方向の幅長さに相当する。図7では1回の媒体搬送量がノズル列の半分の長さ(5D)となる。
【0039】
本実施形態では、ユーザーによって白使用モードが選択された場合、第1印刷方法によって画像が印刷される。即ち、往路動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返される印刷方法によって画像が印刷される。そして、この実施例1では、往路動作または復路動作の一方の動作時に、主画像および背景画像が共に印刷されるとし、他方の動作時には何も画像が印刷されないとする。図7では、往路動作において主画像と背景画像が印刷され、復路動作では何も画像が印刷されないとする。即ち、図7では、主画像と背景画像が印刷される往路動作、何も画像が印刷されない復路動作、搬送量5Dだけ媒体が搬送される搬送動作が順に繰り返される。
【0040】
具体的には、図7に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、次のパス2の復路動作でヘッド41が移動方向に移動した後、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス3の往路動作で主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷され、また、背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、その後、媒体が搬送されることなく次のパス4の復路動作でヘッド41が移動方向に移動し、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。そうすることで、媒体の所定領域は、まず背景画像用ノズル(△○)と対向し、その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって主画像用ノズル(●)と対向する。その結果、媒体の所定領域では、背景画像上に主画像が印刷される。
【0041】
なお、図示しないが、裏刷り・白使用モードの場合には、逆に、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(#6〜#10)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(#1〜#5)を背景画像用ノズルとする。そうすることで、媒体の所定領域は、まず主画像用ノズル(#6〜#10)と対向し、その後、媒体が搬送方向下流側に搬送されることによって背景画像用ノズル(#1〜#5)と対向する。その結果、媒体の所定領域では、主画像上に背景画像が印刷される。
【0042】
このように、媒体の所定領域に対して、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像用のノズル(図7では背景画像用ノズル・一方のノズル群に相当)を、後に印刷する画像用ノズル(図7では主画像用ノズル・他方のノズル群に相当)よりも、搬送方向上流側のノズルとする。そうすることで、表刷りモード又は裏刷りモードに応じた順で主画像と背景画像を重ねて印刷することができる。また、媒体の所定領域に対して、主画像を印刷するパスと背景画像を印刷するパスとを異ならせることができる。そうすると、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像(以下、下層画像ともいう)を印刷するパスから、後に印刷する画像(以下、上層画像ともいう)を印刷するパスまでの時間、即ち、下層画像の乾燥時間を、比較的に長くすることができる。
【0043】
更に、本実施形態では、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法にて主画像と背景画像を印刷し、また、実施例1では、往路動作と復路動作のうちの一方の動作時(図7では往路動作時)に主画像と背景画像を印刷し、他方の動作時(図7では復路動作時)には画像を印刷しない。そうすることで、例えば、図7のように表刷りモードの場合、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像である背景画像が、往路動作時に印刷される。そして、本実施形態のプリンター1は、往路動作と復路動作のうちの画像を印刷しない他方の動作(図7では復路動作)を、搬送動作と同時に行わないとする。この場合、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間が、往路動作又は復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。図7の場合、下層画像である背景画像の乾燥時間が、復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。
【0044】
図8は、比較例の印刷方法を説明する図である。比較例では、ユーザーによって白使用モードが選択された場合にも、印刷方法が第2印刷方法に設定されるとする。図8は、表刷り・白使用モードの印刷方法を示す。なお、印刷に使用するノズルは、実施例1(図7)と同様に、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。
【0045】
第2印刷方法では、往路動作、搬送動作、復路動作、搬送動作が順に繰り返され、往路動作でも復路動作でも画像が印刷される。具体的には、図8に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス2の復路動作で、主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷され、また、背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷される。この場合、下層画像である背景画像の乾燥時間が搬送動作に要する時間だけとなる。
【0046】
このように比較例(図8)では、下層画像の乾燥時間が搬送動作に要する時間だけとなる。これに対して、実施例1(図7)では、下層画像の乾燥時間が往路動作又は復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。つまり、実施例1の方が比較例よりも、下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0047】
これは、第1印刷方法によって画像を印刷することで、媒体の所定領域は、同じノズル群(例えば、主画像用ノズルや背景画像用ノズル)と往路動作でも復路動作でも対向するため、第2印刷方法のように往路動作でも復路動作でも画像を形成する必要が無くなるからである。言い換えれば、第1印刷方法では、往路動作と復路動作の一方の動作時にだけ画像を形成することが可能となり、他方の動作時を下層画像の乾燥時間に充てることができる。例えば、この実施例1のように、往路動作と復路動作のうちの一方の動作時に主画像と背景画像を印刷し、他方の動作時に画像を印刷しないとする。その結果、他方の動作に要する時間だけ比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制し、印刷画像の画質劣化を抑制することができる。
【0048】
なお、図示しないが、往路動作時には画像を印刷せず、復路動作時に主画像と背景画像を印刷するようにしてもよい。例えば、図7を用いて説明すると、パス4やパス6で主画像と背景画像を印刷し、パス3やパス5では画像を印刷しないようにする。この場合、表刷りモードであれば、背景画像よりも後に印刷される主画像が復路動作時に印刷され、裏刷りモードであれば、主画像よりも後に印刷される背景画像が復路動作時に印刷されることになる。よって、往路動作を下層画像の乾燥時間に充てることができる。即ち、下層画像の乾燥時間が、搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となり、比較例(図8)よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、1回の往路動作に要する時間が1回の搬送動作に要する時間よりも長く、また、1回の復路動作に要する時間が1回の搬送動作に要する時間よりも長いとする。これは、本実施形態では、媒体の所定領域に対して主画像と背景画像を異なるパスで印刷するために、主画像と背景画像のうちの先に印刷する画像用のノズルを、後に印刷する画像用のノズルよりも、搬送方向上流側のノズルとする。そのため、各画像を印刷するノズルがノズル列の半分の長さとなり、1回の搬送動作における媒体搬送量が比較的に短くなるからである。一方で、近年は大型化プリンターの需要が高まっており、大型プリンターではヘッド41の移動方向への移動距離が長く、往路動作に要する時間、及び、復路動作に要する時間が比較的に長くなるからである。つまり、比較例では比較的に短い搬送動作に要する時間を乾燥時間に利用するのに対して、実施例1では比較的に長い往路動作又は復路動作に要する時間を乾燥時間に利用しているため、比較例よりも実施例1の方が乾燥時間をより長くすることができる。具体的には、実施例1における下層画像の乾燥時間を比較例における下層画像の乾燥時間の2倍以上にすることができる。なお、往路動作に要する時間と復路動作に要する時間の少なくとも一方だけが、搬送動作に要する時間よりも長いとしてもよい。
【0050】
また、本実施形態のプリンター1では、前述のように、往路動作又は復路動作で画像が何も印刷されないとしても、往路動作又は復路動作と搬送動作を同時に行わないとする。そうすることで、実施例1における下層画像の乾燥時間をより長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。逆に、往路動作又は復路動作と搬送動作を同時に行ってしまうと、下層画像の乾燥時間が短くなるだけでなく、制御が複雑となり、また、機械的な振動が発生したり、駆動信号にノイズが発生したりする等して、搬送精度が低下する虞がある。
【0051】
また、比較例(図8)のように、白使用モードにおいて第2印刷方法を実施する場合であっても、往路動作又は復路動作で画像を印刷した後に休止時間を設けることで、画像の乾燥時間を長くすることができる。しかし、白使用モードの場合には往路動作又は復路動作で画像を印刷した後に休止時間を設け、カラーモードの場合には休止時間を設けないとすると、印刷制御が複雑となる。また、休止時間を設けるためには、所定の休止時間をカウントするプログラムや装置が必要となる。
【0052】
なお、白使用モードにおいて、画像の乾燥時間を更に長くするためには、主画像用ノズルと背景画像用のズルの間に不使用ノズルを設けるとよい。そうすることで、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスとの間に、画像が印刷されないパス(不使用ノズルが媒体と対向するパス)を設けることができ、下層画像の乾燥時間を更に長くすることができる。また、不使用ノズルが属する領域の搬送方向の長さは媒体搬送量の整数倍の長さにするとよい。そうすることで、下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスとの間のパス数を、画像全域において一定にすることができ、画像の濃度むらを防止できる。
【0053】
また、白使用モードでは、主画像と背景画像を異なるパスで印刷するために、ノズル列に属する半分のノズルを用いて各画像を印刷する。一方、カラーモードでは、主画像だけを印刷するため、ノズル列に属する全てのノズルを用いて主画像を印刷することができる。そうすることで、カラーモードでは白使用モードに比べて、1回のパスで形成可能な画像幅が大きくなり、印刷時間を短縮することができる。
【0054】
ただし、これに限らず、カラーモードにおいても白使用モードと同様に、ノズル列に属する半分のノズルだけを用いて主画像を印刷してもよい。例えば、表刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、表刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向下流側のノズル)と同じにし、裏刷り・カラーモードで使用するカラーノズルを、裏刷り・白使用モードで使用するカラーノズル(搬送方向上流側のノズル)と同じにしてもよい。この場合、表刷り・カラーモードと表刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化でき、裏刷り・カラーモードと裏刷り・白使用モードにおける最適な印刷パターンや媒体の搬送制御を共通化できる。そうすることで、プリンター1の製造工程において、最適な印刷パターンや搬送動作の制御方法を決定する処理を簡略化できる。そして、各モードの最適な印刷パターンや媒体の搬送制御の情報を記憶するメモリー容量を削減できる。また、白使用モードでの本番印刷の前にカラーモードでテスト印刷し、カラー画像の画質を確認することができるため、白インクの消費量を抑えることもできる。
【0055】
<実施例2>
図9は、実施例2の印刷方法を説明する図である。図は、表刷り・白使用モードのバンド印刷の様子を示し、印刷に使用するノズルは図7と同様に、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。前述のように、本実施形態では、白使用モードの場合、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法によって画像を印刷する。
【0056】
更に、実施例2では、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する下層画像を、復路動作よりも先の動作である往路動作で印刷し、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して後に印刷する上層画像を往路動作の後の動作である復路動作で印刷する。例えば、図9のように表刷りモードの場合には、主画像よりも背景画像の方が先に印刷される。よって、背景画像が往路動作で印刷され、主画像が復路動作で印刷される。つまり、実施例2では、主画像を印刷するパスと背景画像を印刷するパスが異なる。
【0057】
具体的には、図9に示すように、まず、パス1の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、次のパス2の復路動作でヘッド41が移動方向に移動した後、搬送量5Dだけ媒体が搬送される。その後、パス3の往路動作で背景画像用ノズル(△○)によって背景画像が印刷され、媒体が搬送されることなく、パス4の復路動作で主画像用ノズル(●)によって主画像が印刷される。
【0058】
この場合、媒体の所定領域に対して下層画像である背景画像を印刷するパスから上層画像である主画像を印刷するパスまでの時間が、復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となる。即ち、下層画像の乾燥時間が、往路動作及び復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となる。よって、実施例2の方が図8に示す比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。更に、実施例2の方が図7に示す実施例1よりも、往路動作に要する時間分だけ下層画像の乾燥時間を長くすることができる。そのため、実施例2では、印刷画像の滲みや混色をより抑制し、印刷画像の画質劣化をより抑制することができる。
【0059】
第1印刷方法では往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されないため、媒体の所定領域に対して同じノズルが往路動作と復路動作の2パスに亘って対向する。そこで、実施例2では、主画像と背景画像のうちの先に印刷する下層画像を出来る限り早く印刷するために往路動作で印刷し、後に印刷する上層画像を出来る限り遅く印刷するために復路動作で印刷する。そうすることで、下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの乾燥時間を出来る限り長くすることができ、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0060】
なお、実施例1(図7)では、主画像も背景画像も共に、往路動作と復路動作のうちの一方の動作で印刷する。そのため、往路と復路の特性差が排除された画像を印刷することができる。これに対して、実施例2では、主画像と背景画像のうちの一方は往路動作で印刷され、他方は復路動作で印刷される。ただし、実施例2においても、同じ画像は往路動作と復路動作のうちの一方の動作で印刷されるため、往路と復路の特性差が排除された画像を印刷することができる。
【0061】
図10Aは、実施例2における裏刷り・白使用モードの印刷方法を説明する図である。裏刷りモードの場合、媒体の所定領域に対して背景画像よりも主画像が先に印刷される。よって、図10Aに示すように、カラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(●・#6〜#10)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列Wおよびカラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(△○・#1〜#5)を背景画像用ノズルとする。実施例2では、下層画像を往路動作で印刷し、上層画像を復路動作で印刷する。よって、裏刷りモードでは、主画像を往路動作で印刷し、背景画像を復路動作で印刷する。そうすることで、下層画像の乾燥時間が往路動作及び復路動作に要する時間と搬送動作に要する時間の合計時間となり、比較例(図8)や実施例1(図7)よりも乾燥時間を長くすることができる。
【0062】
図10Bは、実施例2におけるインターレース印刷を説明する図である。ここまで、バンド印刷を例に挙げているがこれに限らず、例えば、インターレース印刷を実施してもよい。インターレース印刷とは、あるパスで形成されたラスターライン間に他のパスでラスターラインを形成する印刷方法である。即ち、インターレース印刷ではバンド印刷よりも搬送方向の印刷解像度が高くなる。図10Bでは、例えば、パス1のノズル#9,#10で形成されたラスターライン間に、パス2とパス3で2つのスターラインが形成される。そのため、図10Bのインターレース印刷では媒体搬送量が5D/3となり、図9のバンド印刷での媒体搬送量5Dよりも短くなる。そのため、インターレース印刷では、媒体の所定領域に対して下層画像(図10Bでは背景画像)を印刷するパスと上層画像(図10Bでは主画像)を印刷するパスの間に、媒体の所定領域がノズルと対向しないパスを設けることができる。よって、インターレース印刷の方がバンド印刷よりも、下層画像の乾燥時間をより長くすることができる。逆に言えば、バンド印刷のように、下層画像を印刷するパスと上層画像を印刷するパスの間にノズルと対向しないパスを設けることができない場合に、本発明がより有効であると言える。
【0063】
<実施例3>
図11は、実施例3の印刷方法を説明する図である。図は、表刷り・白使用モードにおけるバンド印刷の様子を示す。印刷に使用するノズルは、カラーノズル列Coの搬送方向下流側の半分のノズル(●・#1〜#5)を主画像用ノズルとし、ホワイトノズル列W及びカラーノズル列Coの搬送方向上流側の半分のノズル(△○・#6〜#10)を背景画像用ノズルとする。前述のように、本実施形態では、白使用モードの場合、往路動作と復路動作の間に搬送動作が実施されない第1印刷方法によって画像を印刷する。
【0064】
更に、実施例3では、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する。即ち、主画像と背景画像のうちの一方の画像を往路動作と復路動作で印刷する。そして、主画像と背景画像のうちの先に印刷する下層画像は少なくとも往路動作で印刷し、後に印刷する上層画像は少なくとも復路動作で印刷する。例えば、図11のように、表刷りモードにおいて背景画像を2回のパスで印刷する場合、背景画像を往路動作と復路動作で印刷し、主画像を復路動作で印刷する。この場合、媒体の所定領域に対して下層画像である背景画像を印刷するパスから上層画像である主画像を印刷するパスまでの時間、即ち、下層画像の乾燥時間が、搬送動作に要する時間と往路動作に要する時間の合計時間となる。よって、実施例3の方が図8に示す比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。その結果、印刷画像の滲みや混色を抑制し、印刷画像の画質劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、図示しないが、表刷りモードにおいて主画像を2回のパスで印刷する場合、背景画像を往路動作で印刷し、主画像を往路動作と復路動作で印刷する。また、裏刷りモードにおいて背景画像を2回のパスで印刷する場合、主画像を往路動作で印刷し、背景画像を往路動作と復路動作で印刷し、裏刷りモードにおいて主画像を2回のパスで印刷する場合、主画像を往路動作と復路動作で印刷し、背景画像を復路動作で印刷する。これらの場合においても、媒体の所定領域に対して下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間を、搬送動作に要する時間と往路動作または復路動作に要する時間との合計時間となる。よって、実施例3の方が比較例よりも下層画像の乾燥時間を長くすることができる。
【0066】
また、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作のドットと復路動作のドットを重ねて形成することができる。その結果、実施例3では、実施例1(図7)や実施例2(図9)に比べて、画像を構成するインク量を増やすことができる。例えば、背景画像を2回のパスで印刷する場合には、背景画像の遮蔽性を上げることができ、主画像を2回のパスで印刷する場合には、主画像の発色性を上げることができる。
【0067】
また、ドットを重ねて形成するに限らず、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパスで印刷する場合には、往路動作のドット形成位置と復路動作のドット形成位置を異ならせることができる。例えば、前述の図7に示す実施例1のように、背景画像を1回のパスでバンド印刷により印刷する場合、背景画像用の各ノズルが1回のパスで移動方向に並ぶドットを形成しなければならない。これに対して、図11の実施例3のように背景画像を2回のパスでバンド印刷により印刷する場合、背景画像用の各ノズルは往路動作と復路動作で移動方向に並ぶドットを交互に形成することができる、即ち、移動方向に並ぶドットを異なるパスで形成することができる。その結果、移動方向に並ぶドットの滲みや混色を抑制でき、印刷画像の画質劣化を抑制できる。
【0068】
更に、2回のパスで画像を印刷する場合、ノズル列において搬送方向に並ぶノズルを往路動作と復路動作で交互で使用することができる。例えば、往路動作では偶数番号のノズルを使用し、復路動作では奇数番号のノズルを使用する。例えば、図11の場合には、背景画像用ノズル(#6〜#10)のうち、往路動作では偶数番号のノズル#6,#8,#10を使用し、復路動作では奇数番号のノズル#7,#9を使用するようにしてもよい。その結果、搬送方向に並ぶドットを異なるパスで印刷することができ、搬送方向に並ぶドットの滲みや混色を抑制できる。
【0069】
また、下層画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作(先のパス)で印刷する画像部分(ドット)の方が、復路動作(後のパス)で印刷する画像部分(ドット)よりも、乾燥時間が長くなる。よって、下層画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作で印刷する画像部分を復路動作で印刷する画像部分よりも大きくするとよい。逆に、上層画像を2回のパスで印刷する場合、復路動作(後のパス)で印刷する上層画像部分と重なる下層画像部分の方が、往路動作(先のパス)で印刷する上層画像部分と重なる下層画像部分よりも、乾燥時間が長くなる。よって、上層画像を2回のパスで印刷する場合、復路動作で印刷する画像部分を往路動作で印刷する画像部分よりも大きくするとよい。例えば、図11に示すように下層画像である背景画像を2回のパスで印刷する場合、往路動作では移動方向に並ぶ3個のドットのうちの2個のドットを形成し、復路動作では移動方向に並ぶ3個のドットのうちの1個のドットを形成するようにするとよい。また、往路動作で背景画像を印刷するノズル数(#6,#8,#10)を、復路動作で印刷するノズル数(#7,#9)よりも多くするとよい。そうすることで、下層画像のより多くの部分の乾燥時間を長くすることができ、画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0070】
以上、本実施形態では、白使用モードを実施する場合に、主画像と背景画像のうち、媒体の所定領域に対して先に印刷する画像用のノズルが、後に印刷する画像用のノズルよりも搬送方向上流側のノズルとなり、往路動作と復路動作と搬送動作が順に繰り返される第1印刷方法で画像が印刷され、各画像が往路動作と復路動作のうちの少なくとも一方で印刷されるように、プリンタードライバーが印刷データを作成したり並べ替えたりする。よって、プリンター1のコントローラー10とプリンタードライバーをインストールしたコンピューター60とが制御部に相当し、プリンター1とコントローラー10が接続された印刷システムが流体噴射装置に相当する。
ただし、これに限らず、プリンタードライバーの役割をプリンター1のコントローラー10が担ってもよく、この場合、プリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が流体噴射装置に相当する。
【0071】
===変形例===
前述の図6のフローでは、白使用モードが選択された場合に、印刷方法が必ず第1印刷方法に設定されてしまうが、これに限らない。白使用モードが選択された場合に、推奨の印刷方法として(デフォルトとして)、第1印刷方法に設定されるようにしてもよい。そして、白使用モードであっても、ユーザーが設定画面等において、第2印刷方法を選択できるようにしてもよい。第1印刷方法よりも第2印刷方法の方が印刷時間を短縮できるため、ユーザーが早く印刷したい場合に(例えば試し印刷などにおいて)、白使用モードであっても第2印刷方法を実施できるようにしてもよい。
【0072】
前述の実施形態では、白インクと4色のインクを使用して白色の色味を調整した背景画像を例に挙げているが、これに限らない。白インクだけを用いて印刷した背景画像であっても良い。
また、前述の実施形態では、4色のインク(YMCK)だけで主画像を印刷しているが、これに限らない。例えば、4色のインクと共に白インクを用いて主画像を印刷してもよい。4色のインクに白インクを加えて主画像を印刷することで、高明度、且つ、高彩度の色を再現した画像を印刷することができる。この場合、前述の図7に示す表刷り・白使用モードの印刷では、ホワイトノズル列Wの搬送方向下流側のノズル群(#1〜#5)も用いて主画像を印刷することになる。
前述の実施形態では、白インクによって背景画像を印刷するとしているが、これに限らず、白以外の色インク(例えば、メタリック系のインク)によって背景画像を印刷してもよい。
【0073】
前述の変形例3では、主画像と背景画像のうちの一方の画像を2回のパス(往路動作と復路動作)で印刷するとしているが、これに限らない。主画像も背景画像も2回のパスで印刷してもよい。この場合、主画像と背景画像のうちの下層画像を印刷するパスから上層画像を印刷するパスまでの時間が、比較例と同様に、搬送動作に要する時間となる。ただし、往路動作のドットと復路動作のドットを重ねなければ、1回のパスで噴射されるインク量が比較例よりも減り、また、移動方向や搬送方向に並ぶドットが異なるパスで形成される。そのため、下層画像の乾燥時間が比較例と同程度であっても、第1印刷方法を実施する本実施形態の方が、第2印刷方法を実施する比較例よりも、印刷画像の滲みや混色を抑制することができる。
【0074】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、印刷方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0075】
<インクと記録媒体について>
本実施形態では、インクと該インクを吸収するインク吸収性の有る媒体(インク吸収性記録媒体)を用いる。インク吸収性記録媒体としては、インク吸収性の有る基材からなる記録媒体や基材にインク受容層を設けた記録媒体が使用可能である。インク吸収性の有る基材としては、紙、布などが挙げられる。インクは吸収性媒体に吸収されるインクであればよいが、インク吸収性媒体への吸収性を確保するために蒸発性の溶剤を含むことが好ましい。また、溶剤として水を少なくとも含む「水系インク」が特に好ましい。インクを構成する他の成分としては、色材としての染料や顔料がある。また、インクジェットヘッドからの吐出安定性のために水溶性の有機溶剤をも含有していてもよいし、保湿剤、浸透促進剤、ph調整剤、防虫剤、紫外線吸収剤などを必要により含有していてもよい。このようなカラーインクとして、例えば、特開2008−81693、特開2005−105135、特開2003−292834に記載のインクを使用できる。
【0076】
記録媒体は、インク組成物の溶剤を吸収することでインク組成物の色材を固着するものである。例えば、紙、布などのインクを吸収する基材を用いた媒体でも良いし、インクを吸収する基材或いはインクを吸収しない基材にインクを吸収するインク受容層を設けたものでもよい。透明性の有る媒体を用いる場合は、例えば、特開2009−925、特開平9−99634、特開平9−208870に記載の記録媒体が使用できる。
【0077】
インク受容層としては、インクジェット記録方法用の記録媒体上に通常設けられる公知のインク受容層を用いることができる。公知のインク受容層としては、例えば、樹脂からなるインク受容層が知られており、インク受容層に用いられる樹脂の例としては、例えば、特開昭57−38185号、同62−184879号公報等に開示されているようなポリビニルピロリドンもしくはビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、特開昭60−168651号、同60−171143号、同61−134290号公報に開示されているようなポリビニルアルコールを主体とする樹脂組成物、特開昭60−234879号公報に開示されているようなビニルアルコールとオレフィン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体、特開昭61−74879号公報に開示されているようなポリエチレンオキサイドとイソシアネートとの架橋物、特開昭61−181679号公報に開示されているようなカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイドとの混合物、特開昭61−132377号公報に開示されているようなポリビニルアルコールにメタクリルアミドをグラフト化したポリマー、特開昭62−220383号公報に開示されているようなカルボキシル基を有するアクリル系ポリマー、特開平4−214382号公報等に開示されているようなポリビニルアセタール系ポリマー、特開平4−282282号、同4−285650号公報に開示されているような架橋性アクリル系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーを挙げることができる。
【0078】
また、公知のインク受容層としては、特開平4−282282号、同4−285650号公報等には架橋性ポリマーから構成されるポリマーマトリックスと吸収性ポリマーとを併用したインク受容層が開示されている。更に、アルミナ水和物(カチオン性アルミナ水和物)を用いたインク受容層も知られており、例えば、特開昭60−232990号、同60−245588号公報、特公平3−24906号公報、特開平6−199035号、同7−82694号公報等には、微細な擬ベーマイト形アルミナ水和物を水溶性バインダーと共に基材表面に塗工した記録媒体が開示されている。また、例えば特開平10−203006号公報には、一次粒子径が3nm〜30nmである主として気相法による合成シリカを使用するインク受容層が開示されている。更にまた、特開2001−328344号公報には、無機顔料及び高分子接着剤を含むインク受容層が開示されている。本発明においては、これらの各インク受容層を設けたフィルム基材を用いることが好ましい。
【0079】
本発明方法においては、背景画像用の白インク組成物として、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の白色インク組成物を用いることができる。このような白色顔料としては、例えば、無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子を挙げることができ、白色インク組成物としては、着色剤成分として中空ポリマー微粒子を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。
【0080】
無機白色顔料としては、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。特に酸化チタンは、隠蔽性、着色性及び分散粒径が好ましい白色顔料として知られている。
【0081】
有機白色顔料としては、特開平11−129613号に示される有機化合物塩や特開平11−140365号、特開2001−234093号に示されるアルキレンビスメラミン誘導体が挙げられる。上記白色顔料の具体的な商品としては、ShigenoxOWP、ShigenoxOWPL、ShigenoxFWP、ShigenoxFWG、ShigenoxUL、ShigenoxU(以上、ハッコールケミカル社製、何れも商品名)などが挙げられる。
【0082】
着色剤成分として含有させる中空ポリマー微粒子は、例えば、その外径が約0.1〜1μm、内径が約0.05〜0.8μmの微粒子であることができ、白色インク組成物の溶剤に不溶で、その他の成分、例えば、バインダー樹脂成分とは化学的に反応しないものであることが必要である。この中空ポリマー微粒子は、壁が液体を透過可能な合成重合体でつくられ、中空ポリマー微粒子中央部の空間はその壁を透過して液体の出入りが可能である。したがつて、この中空ポリマー微粒子中央部の空間はインク組成物の状態では溶媒によって満たされ、中空ポリマー微粒子の比重とインク組成物の比重が実質的に同一になり、中空ポリマー微粒子はインク組成物中に安定に分散されている。一方、このインク組成物を印字面に印字して乾燥すると、中空ポリマー微粒子中央部の空間は空気で置換されるため、樹脂と空間部で入射光が乱反射されて、実質的に白色を呈する。
【0083】
また、中空ポリマー微粒子は、前記のように、印刷前には微粒子内に液体を含有しているが、その微粒子内に入り込んでいた液体が印刷後に微粒子の璧を通過して拡散し、微粒子の微細気孔を空気で充満させるというタイプであるか、もしくは最初から内部に空気を含んだ完全密封タイプであることもできる。白色インク組成物に用いられる中空ポリマー微粒子はインク組成物中で沈殿しないことが望まれるため、インク組成物溶液の比重とほぼ同等の比重を有するものが好ましい。このため、必要に応じてグリセロールのような比重調整剤を用いてインク組成物溶液の比重を調節することが好ましい。
【0084】
上記の性質を満たす中空ポリマー微粒子市販品としては、例えば、ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas)社から市販されているロペーグ(Ropaque)OP−62等を挙げることができる。これは、アクリル・スチレン共重合体からなる中空ポリマー微粒子を38重量%含んだ水分散液である。この微粒子の内径は約0.3μmで、外径は約0.5μmであり、内部には水が充満している。
【0085】
また、前記中空ポリマー微粒子は、公知の製造方法、例えば米国特許第4,089,800号明細書に開示されている方法により得ることもできる。この中空ポリマー微粒子は、実質的に有機重合体で作られており、熟可塑性を示す。中空ポリマー微粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、好ましくは、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーポネート、ポリスチレン、スチレン若しくは他のビニルモノマーの共重合体、ビニルアセテート、ビニルアルコール、塩化ビニル又はビニルブチラールのホモ重合体あるいは共重合体のようなビニルポリマー、ジエンのホモ重合体及び共重合体等を挙げることができる。特に好ましい熱可塑性重合体としては、2−へキシルアクリレートの共重合体、メチルメタアクリレートの共重合体のような共重合体、スチレンとアクリロニトリルのようなその他のビニルモノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0086】
本発明で用いる白色インク組成物中の中空ポリマー微粒子の含有量は、例えば、0.1〜20重量%とすることができる。中空ポリマー微粒子の含有量を0.1重量%以上にすると、充分な白色度を得ることができる。一方、20重量%以下にすると、インクジェット印刷用インク組成物に要求される粘度を確保するために必要なインクバインダー樹脂成分を充分な量で含有させることができ、その結果として、充分な印字密着性を確保することができる。
【0087】
本発明においては、前記の白色顔料を単独で用いてもよいし、併用してもよい。顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。
【0088】
本発明で用いる白色インク組成物は、白色着色剤成分の他に、インクジェット印刷用インク組成物に通常含有される種々の成分、例えば、樹脂成分、分散剤成分、溶媒成分(特に水)などを含有することができる。なお、本願明細書では溶媒と溶剤は同じ意味で用いる。また、中空ポリマー微粒子を白色着色剤として含有する白色インク組成物としては、例えば、特許第3562754号公報(特許文献1)又は特許第3639479号公報(特許文献2)に記載の組成物を用いることもできる。
【0089】
本発明で用いるカラー画像用の非白色インク組成物は、例えば、カラーインク組成物、黒色インク組成物、又は灰色インク組成物である。また、カラーインク組成物としては、例えば、シアンインク組成物、マゼンタインク組成物、イエローインク組成物、あるいはライトシアンインク組成物、ライトマゼンタインク組成物、更には、レッドインク組成物、グリーンインク組成物、又はブルーインク組成物等を挙げることができる。非白色インク組成物は、前記の各種インク組成物を1種又は2種以上の組合せで用いることができる。
【0090】
非白色インク組成物としては、インクジェット記録方法において通常使用されている任意の非白色インク組成物を用いることができ、着色剤成分として染料又は顔料を含有する水系インク組成物を用いることが好ましい。特に、透明フィルム基材又はインク受容層に対して良好な特性(例えば、発色性や定着性)を示すインク組成物を用いることが好ましい。
【0091】
本発明で用いるインクと記録媒体が上述のものであれば、前述の実施形態のように先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インクの乾燥時間を長く設けることができ、画像の滲みや混色を防止することができる。ただし、本発明で用いるインクや記録媒体は上述のものに限るものでは無い。先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、インク中の成分が記録媒体に固着する時間を設けるものであればよい。即ち、前述の実施形態により先の画像形成と後の画像形成の時間間隔を長く設けることで、画像の滲みや混色を防止するものであれば、他のインクや記録媒体を用いても良い。
【0092】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、ヘッド41を移動方向に移動しながら単票紙に画像を形成する動作と、ヘッドに対して単票紙を搬送方向に搬送する動作と、を繰り返すプリンター1を例に挙げているが、これに限らない。例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、(複数の)ヘッド41を有するヘッドユニット40を媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘッドユニット40を紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されていない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0093】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示しているが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、ノズルからの流体噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて圧力室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。
【符号の説明】
【0094】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、
60 コンピューター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、
(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、
(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、
前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、
前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、
前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、
(D)を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記媒体の所定領域に対して先に画像形成を行う前記一方のノズル群は、少なくとも前記往路動作時に流体を噴射する、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記媒体の所定領域に対して後に画像形成を行う前記他方のノズル群は、少なくとも前記復路動作時に流体を噴射する、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の流体噴射装置であって、
1回の前記往路動作に要する時間と1回の前記復路動作に要する時間のうちの少なくとも一方は、1回の前記搬送動作に要する時間よりも長い、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列の前記ノズルも使用して、前記背景画像を形成する、
流体噴射装置。
【請求項6】
第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、
前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成し、
前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成し、
前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射し、
前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射する、
ことを特徴とする流体噴射方法。
【請求項1】
(A)第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、
(B)第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、
(C)前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成させ、
前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成させ、
前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させ、
前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射させる制御部と、
(D)を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記媒体の所定領域に対して先に画像形成を行う前記一方のノズル群は、少なくとも前記往路動作時に流体を噴射する、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記媒体の所定領域に対して後に画像形成を行う前記他方のノズル群は、少なくとも前記復路動作時に流体を噴射する、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の流体噴射装置であって、
1回の前記往路動作に要する時間と1回の前記復路動作に要する時間のうちの少なくとも一方は、1回の前記搬送動作に要する時間よりも長い、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群と前記所定方向の位置が同じである前記第1ノズル列の前記ノズルも使用して、前記背景画像を形成する、
流体噴射装置。
【請求項6】
第1の流体を噴射するノズルが所定方向に並ぶ第1ノズル列と、第2の流体を噴射するノズルが前記所定方向に並び、且つ、前記所定方向と交差する方向である移動方向に前記第1ノズル列と並ぶ第2ノズル列と、を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、
前記第1の流体による主画像の形成と、前記第2の流体による背景画像の形成とを、媒体に重ねて行う場合に、
前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の一方の方向に相対移動させる往路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列と前記媒体とを前記移動方向の他方の方向に相対移動させる復路動作と、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列に対する前記媒体の相対位置を前記所定方向の一方側に移動させる搬送動作とを、前記往路動作、前記復路動作、前記搬送動作の順に繰り返すことによって、前記媒体に画像を形成し、
前記主画像を形成する前記第1ノズル列の一部のノズル群と前記背景画像を形成する前記第2ノズル列の一部のノズル群のうちの一方のノズル群であり、他方のノズル群よりも前記所定方向の他方側に位置する前記一方のノズル群を用いて、前記他方のノズル群よりも先に、前記媒体の所定領域に対して画像を形成し、
前記主画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射し、
前記背景画像の形成のために、前記往路動作と前記復路動作のうちの少なくとも一方の動作時に前記ノズルから流体を噴射する、
ことを特徴とする流体噴射方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−11702(P2012−11702A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151331(P2010−151331)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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