説明

流体回路中の少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する装置及び方法

本発明は、流体回路における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する装置及び方法に関し、流体回路は、少なくとも2つの部分回路を備え、各部分回路はフィルターによって半透過的に分離されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体回路中の少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する装置及び方法であって、流体回路が少なくとも2つの部分回路を備え、各部分回路は半透過的にフィルターによって分離されている装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの部分回路を有する流体回路システムであって、その1つの部分回路が例えばアクセスし難い、当該部分回路にアクセスしやすいことは望ましくない、又は、当該部分回路はアクセス自体不可能であり、且つ/又は、溶質の濃度を定量してこれに作用するためのセンサー及び駆動部がアクセス可能な部分回路だけに接続できるようなシステムは、通常、次のような場合においてユーザーを問題に直面させる。つまり、アクセス可能な部分回路における溶質の濃度を一定に保つこと、及び/又は、目標値に制御することが必要であり、当該目標値がアクセス不可能な部分回路における前記溶質の濃度の実際値又は目標値に依存するが、アクセス不可能な部分回路における前記溶質の濃度の実際値は、例えば、定量不可能であるか又は過大な労力によってのみ定量でき、且つ/又は、未知である場合である。
【0003】
この問題は、多くの技術領域において発生し、特に、1つの部分回路から他の部分回路への溶質の交換が半透過膜を介して行なわれる濾過工学において発生する。
【0004】
この問題は、特に、透析技術において発生する。これは、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、塩化物イオン等といった溶質の濃度の監視及び操作は、明らかに、透析液回路において行なわれるからである。しかしながら、血液回路においてこれらを行なうのは、仮に可能としても大変な努力を要して初めて可能となり、多くの場合、衛生上の理由から望ましいことでさえない。
【0005】
以上に概観した問題は、正ナトリウム透析(isonatremic dialysis)の場合に容易に示される。
【0006】
健康な人であれば、体内のナトリウム濃度は、実質的に個人毎に固有の狭い範囲内に維持されており、これは、腎臓による電解質及び水の排出制御によるものである。設定値仮説(set-point hypothesis)によると、末期腎不全の透析患者もまたナトリウム濃度を概ね一定に維持する。しかしながら、これが意味するのは、水もナトリウムも透析治療と透析治療の間には排出できないので、摂取した全ての量のナトリウムが、喉の渇きを覚えさせて水を摂取させるということである。
【0007】
代表的な血液透析治療では、電解質含有量が患者の血漿水分に対応する液体が患者から除かれるので、ナトリウム移動の大部分は限外濾過によって対流的に行なわれる。理想的には、この量は、二度の透析治療の間に患者が摂取したナトリウム量に対応する。通例では、患者が透析治療の間に摂取した液体の量だけ、限外濾過によって除去される。患者におけるナトリウム濃度は、限外濾過によっては変化しない。これに対し、結果として患者におけるナトリウム濃度の変化を起こしうる電解質の移動が、透析装置内の拡散によって起る。
【0008】
仮に、透析液のナトリウム濃度が患者のナトリウム濃度よりも大幅に高かったとすると、患者に対して、透析治療中にナトリウムが拡散により供給される。これは、しばしば実際に、ナトリウム濃度が通常は個々に適応されないことから意図せずに行なわれるか、又は、透析治療中の血流力学的な安定を向上させるために意図して行なわれる。
【0009】
しかしながら、患者は、当人の設定値(set-point )よりも高くなった濃度を透析治療後に飲み物を飲むことで相殺するので、透析治療中のナトリウム濃度が高くなりすぎると、透析間の液体摂取が増えて、水分過剰及び場合によっては慢性高血圧の原因となる。
【0010】
上の問題を避けるために、正ナトリウム透析を行なうことが医学的に理に適っている。正ナトリウム透析とは、患者に対し、透析装置の膜を通じた拡散によるナトリウムの供給も除去も無い透析である。これを行なうための方法の1つは、治療の初めに血漿のナトリウム濃度を病院の検査室又は血液ガス分析装置によって定量し、血液中のナトリウム濃度がフィルター膜を介する拡散によって変化しない値に透析液のナトリウム濃度を設定することである。この点に関して、ドナン効果(Donnan effect)を計算に入れられなければならず、結果として血液中と透析液中とのナトリウム濃度が正ナトリウム透析において異なることになる。
【0011】
ここで、更なる一般的問題が、人件費及び検査室費用のような血液試料を取るための問題に加えて生じる。検査室的手法の精度の限界のために、測定値は、実際値に対して容易に3mmol/l以上の差を生じる。更に、血液ガス分析装置と病院の検査室とでは、系統的に異なる値を示す。というのは、一方の手順は直接電位差測定法を基礎としているのに対し、他方の手順は間接電位差測定法を基礎としているからである。更に、透析液濃縮液には製造公差があるので、透析液中のナトリウム濃度は正確さを欠くことがある。付け加えれば、透析液濃縮液のナトリウム濃度を測定して製造公差を補正するのは可能としても困難である。これは、血液に対して較正された分析装置によって透析液のナトリウム濃度を正確に測定するのは事実上不可能であることによる。
【0012】
このため、正ナトリウム透析を達成するために残る可能性は、血液試料における血漿のナトリウム濃度を透析の前後に測定し、正ナトリウム透析を達成するまで透析液のナトリウム設定をバッチ毎に変更することだろう。しかしながら、実情としては同じ透析センターの患者達全員が同じ透析液ナトリウムを用いて実質的に処置されているので、この手法は実現できない。
【0013】
透析装置のいわゆるナトリウム出納中立プロファイル(sodium balance-neutral profiles)もここでは助けにならない。というのは、出納中立性(balance-neutrality)は、前記プロファイルを用いると同時にモデルの基礎を用い、透析装置を介するナトリウム輸送が、ある特定の決まった透析液ナトリウムの輸送に対応するという事実のみに関係するからである。
【0014】
更に、医療上の理由により、正ナトリウム透析から調整されただけ離れることが必要なこともある。これは、例えば、治療の日に電解質不均衡があって、患者の設定値仮説が満たされない場合かも知れない。同様に、血漿濃度を増加することは、低ナトリウム状態において理に適っている。逆に、各透析治療の間に液体を取りすぎがちな患者の場合、血漿ナトリウムを設定値以下に下げることが、患者の喉が渇く感覚を緩和して液体の摂取を減らすために理に適っていることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上に示した問題を解決する手だては従来技術から知られているが、まだ満足の行くものではない。
【0016】
透析液の伝導度測定に基づいて血中のナトリウム量を定量する方法は、Petitclercらの文献、"Sodium management in dialysis by conductivity", Advances in renal replacement therapy, Vol 6, No. 3 (July), 1999: pp 243-254 によって知られている。ここで利用されているのは、電解質の濃度差があった場合、血液と透析液との間において、フィルターを介する電解質交換によって電解質出納が生じるという事実である。透析液のフィルタより上流と下流とにおける伝導度の差によって、透析液と血液との間で電解質の輸送が起っているかどうかを検出することが可能である。しかしながら、透析中、フィルター膜を介してナトリウムの交換が起るだけではなく、例えば、カリウムが除去され、アシドーシスを補正するための重炭酸(bicarbonate)が加えられることもあり、カルシウム、塩素等の他の電解質に加えて、ブドウ糖及び尿素のような非電解質の交換もあるので、血中のナトリウム量を透析液の伝導度から直接定量することは不可能である。
【0017】
US 4,923,613は、透析患者の血中におけるナトリウム量を定量する方法及び装置を説明している。これは、時間tから以降に透析液の組成を変化させて、透析時間t+tの後に、透析フィルターの透析液側の下流を、時間tにおける透析フィルターの透析液側の上流と同じ伝導度として、その伝導度から血中のナトリウムを定量する。
【0018】
従って、この発明の目的は、冒頭に述べたような形の流体回路中における少なくとも1つの溶質の濃度を制御する装置を有利な形で更に発展させることである。特に、アクセスが難しい又は不可能な部分回路における溶質の濃度変化をより改善された形で確実に定量すること及び溶質を制御することを可能とすることであり、望ましくは、アクセス不可能な部分回路における当初は不明な溶質の実際値及び/又は目標値についてこれらを行なうことである。更に、本発明は、アクセス不可能な部分回路における溶質の濃度をより改善された形で確実に定量することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、請求項1の特徴を有する流体回路における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する装置を用いる本発明によって実現される。発明のより有利な実施形態は、従属請求項2から12の内容である。
【0020】
従って、望ましい実施形態は透析装置の流体回路に備えられた装置である。この流体回路は、以後アクセス可能な第1部分回路とも呼ぶ透析液回路と、以後アクセス不可能な第2部分回路とも呼ぶ血液回路とを備え、これらは少なくとも1つのフィルターによって半透過的に分離されている。この装置は、透析液回路におけるフィルター前後の透析液中について前記少なくとも1つの溶質の濃度を間接的又は直接的に検出するための第1及び第2の手段を含む。この装置は、患者に固有の先に入力されたデータと、透析液回路のフィルター前後における少なくとも1つの溶質の定量された又は既知の濃度とを用いて、血液回路中及び透析液回路中において制御されるべき溶質の濃度を定量する定量ユニットを更に含む。この装置は、血液回路中の制御されるべき前記溶質の濃度変化を制御し、予め入力した目標値とするか、又は、所定値に能動的に展開させる手段を更に含む。この装置は、記録媒体、望ましくは患者毎に個別の記録カードから先に記録したデータを読み出す手段と、当該記録媒体にデータを記録する手段とを更に備える。
【0021】
目標値は、通常アクセスし難いか又は衛生上の理由からセンサーが付けられるべきでない血液回路における溶質の濃度の変化の目標値であることが望ましい。
【0022】
定量ユニットは、制御モデルを有し、当該制御モデルが透析液回路中及び患者の血管血液回路中の溶質の挙動、半透過性膜を介する溶質の輸送挙動、治療パラメータと共に各患者のデータを計算に入れて目標値を繰り返し求めるための時間変化及び/又は初期値を示すか含むのが有利である。
【0023】
例えば、フィルターの上流及び下流における制御すべき物質の濃度差は、間接的又は直接的に定量された当該物質の濃度差、及び/又は、透析液回路中の1つ及び/又は複数の他の物質の濃度差を通して定量され、且つ、透析液回路のフィルター上流における1つ又は複数の物質の濃度を変化させる手段によって制御される。この点から、特に望ましい制御の目標は、患者の血管血液回路中における制御すべき物質の濃度が、治療中、変化しないことである。別の望ましい制御の目標は、患者の血管血液回路中における制御すべき物質の濃度が、治療の間ずっと、医者の入力した値を概ね保ちながら定常的に変化することである。変化は、濃度の増加又は減少のどちらであってもよい。
【0024】
この点から、直接適応できる、例えば濃度の変更のような補足的条件の変化に順応できる定量ユニットを提供できる。定量ユニットが直接適応可能であることについて、望ましくは、学習及び/又は自己適応システムであるのが良い。特に望ましく有利なのは、血管血液回路における溶質の制御が、血管血液回路における溶質の濃度の目標値を全く入力することなく行なわれることである。すなわち、透析液回路におけるフィルター前後の定量された溶質の濃度変化によって、血液中の制御すべき物質の濃度変化(望ましくはゼロ)を制御する利用可能な制御モデルを用い、患者の血管血液回路中における制御されるべき物質の絶対的濃度が未知のままで血管血液回路における溶質の制御が行なわれるのが望ましい。
【0025】
利用できる制御モデルは、この点において、血液回路中における溶質の濃度分布の規則性を対応付けするように設計されているのが有利である。特に、半透過膜を介する一方の部分回路から他方の部分回路への物質輸送の規則性についても、制御モデルに対応付けされされていてよい。
【0026】
更に、検出ユニットは、第2の部分回路中における溶質の濃度を定量するための追加の手段を有していないことが可能である。
【0027】
更に、第1及び第2の手段が、伝導度センサーを含んでいるか又は伝導度センサーとして構成されていることも考えられる。伝導度センサーは、各溶質の合計による伝導度を確実且つ信頼性高く定量できるという利点を有している。
【0028】
第1及び第2の手段によって定量された伝導度を基に、溶質の濃度が制御ユニットによって間接的に算出されるようにすることもできる。これに関して特に記憶すべきなのは、溶質の1つが高濃度であり、他の物質は無視しうるか又は一定の濃度である場合、興味のある物質については伝導度のような合計量から容易に定量できることである。
【0029】
第1又は第2部分回路における望ましい値に関する予め定義された変動の裕度を限定することができれば有利である。予め決定した変動の裕度を設定すると、動作中の少なくとも一方の流体回路における濃度の不均衡を避けることができる。これに関して、変動の裕度は、目標値に対して望ましくは±5%以内、少なくとも±10%までの範囲であることが好ましい。
【0030】
更に、フィルターの上流に記憶装置を備え、患者の血管血液回路及び/又は透析液回路における溶質の濃度の初期の目標値を記憶しておくこともできる。記憶装置は、取り外し可能な記憶媒体を含むことが望ましい。そのような記憶媒体は、例えば透析部分回路における例えばナトリウムの初期の目標値を記憶しておくことができるチップカードである。一般に、他の値、例えば溶質全ての濃度とそれらによる伝導度等も記憶しておくことができる。更に、制御モデルの補助的条件を記憶しておき、制御をより正確にするか又はより迅速な制御を可能とすることもできる。
【0031】
記憶装置は、制御ユニットに接続されていることも考えられる。
【0032】
更に、溶質は、ナトリウムイオンによって代表されることも考えられる。
【0033】
本発明は、更に、請求項13の特徴を有する流体回路における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する方法に関する。当該方法の有利な実施の形態が、従属請求項14から17の内容である。
【0034】
この流体回路は、血液回路と、透析装置の透析液回路とを備え、これらは互いに少なくとも1つのフィルターによって半透過的に分離されている。従って、血管血液回路における溶質の濃度変化が血液透析治療中において直接的に又は間接的に定量でき、適切な方法によって制御できる。この目的のために、透析液中の制御されるべき物質の濃度差がフィルターの上流及び下流にて定量され、制御される物質の濃度差の直接的な又は間接的な定量に対する他の物質の寄与を対応付けるためのモデルが保存されている。患者の血管血液回路における制御されるべき物質の濃度変化は、半透過膜を介した物質輸送特性を対応付けるモデルによって定量される。
【0035】
この方法は、更に、透析液回路のフィルターの上流における制御されるべき物質の濃度を適切な手段により変化させる可能性、及び、患者の血管血液回路における当該物質の濃度変化を先に入力した値、望ましくは0にする可能性を有する。
【0036】
第2部分回路における溶質の濃度を、第1部分回路における伝導度を定量することによって間接的に定量可能とすることができる。
【0037】
前記方法は、請求項1から12の装置を用いて行なうことが特に有利である。
【0038】
本発明は、付加的に、請求項18の特徴を有する血液処理装置にも関係する。従って、血液処理装置は、体外血液回路及び透析液回路を備え、当該血液回路及び透析液回路は少なくとも1つのフィルターによって半透過的に分離されており、請求項1から12のうち1つの装置を備えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、流体回路におけるアクセスが難しい又は不可能な部分回路における溶質の濃度変化をより確実に定量すること及び溶質を制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、ナトリウム平衡化(sodium balancing)及び制御のための装置を模式的に示す図である。
【図2】図2(a)は、本発明の制御によりシミュレートされた患者のナトリウム濃度の進展を示す図であり、図2(b)は、本発明の制御によりシミュレートされた患者のカリウム濃度の進展を示す図である。
【図3】図3は、ナトリウム出納0制御(zero sodium balance regulation)についての測定曲線を示す図である。
【図4】図4は、制御されたナトリウム除去についての測定曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
更なる詳細及び利点を、図により詳しく示された実施形態を参照しながら以下に説明する。
【0042】
図1が示すのは、流体回路内における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する、より詳しくは、ナトリウム制御、ナトリウム平衡化及びナトリウム表示を行なう装置10である。装置10は、第1部分回路14に対応する透析液回路14に必要な構成要素に加えて、透析装置60の上流側及び下流側における温度補正された伝導度を定量するための測定装置22、24として作られた第1及び第2の手段22及び24と、詳しい図示はしていないが、透析液流量を正確に定量するための装置(バランス室、流量計等)とを備える。検出ユニット20は更に、制御ユニットと、当該制御ユニットの制御及び記憶手段(より詳しい図示はされていない)とを含んでいるので、定量ユニットが、体外血液回路12a及び血管血液回路12bを備える第2部分回路におけるナトリウムの動的定量を行なうことが可能となる。一般に、検出ユニット20及び制御ユニットは別々に構成することができる。
【0043】
伝導度センサー22、24のデータは検出ユニット20によって登録及び処理され、血漿ナトリウム濃度及びナトリウム出納の値が計算される。ユーザーデータ及び制御のパラメータと、計算されたデータの出力とは、ユーザーインターフェース30にて行なわれる。更に、検出ユニット20は更なる制御手段を含み、当該制御手段が、測定データ及びユーザーデータに基づいて透析濃縮液の目標値を連続的に計量ユニット40に送る。
【0044】
記憶装置50が、血漿ナトリウムの初期の目標値を記憶するために設けられ、チップカードが記憶装置50に挿入できるようになっていても良い。チップカードは、患者カードであって、例えば患者の標準値が記憶されていても良い。
【0045】
検出ユニット20の定量ユニットは制御モデルを有し、当該制御モデルが、第2部分回路12a及び12bにおける溶質の挙動、透析装置60の半透過膜を介する溶質の輸送挙動、その時間変化及び/又は反復目標値平均化の初期開始値を含んでいても良い。この点に関し、定量ユニットは、動的に順応可能であることができ、例えば、濃度の変移のような付随する状況における変化に順応しても良い。
【0046】
一般に、以下の規則性が保存された制御モデルに適用されるか又は制御モデルは以下の規則性に基づいており、且つ、対応する計算手段を備えている。
【0047】
患者からの電解質の流量に相対的な質量バランス(=単位時間当たり質量流量)Jは、患者側の電解質流量に対して以下の通りであるか又は以下のように書くことができる:

(式1)
【0048】
透析液側の電解質流量Jは、次の通りである:

(式2)
【0049】
ここで、Cbi及びCboは透析装置60前後における血液側の電解質濃度であり、Cdi及びCdoは透析液側の対応する濃度であり、Q及びQは血液流量又はUF(限外濾過)レートであり、且つ、Qは、代替流量を含む透析流量である。
【0050】
血液及び透析液は透析装置の膜を介して接続されるので、質量を定常状態に維持するために下記が適用されなければならない:

【0051】
結果として、透析の患者側における質量バランス又は瞬間電解質バランス(instant electrolyte balance)は、透析液側の値により次のように表される:

(式3)
【0052】
ΔJ>0は、電解質が患者に輸送されることを意味し、ΔJ<0は、電解質が患者から除去されることを意味する。
【0053】
分散部分については切り離す単純化された条件では、限外濾過による対流的な輸送は透析装置60における濃度の出力には影響しないと想定される。この想定は、一般に小さな分子及びイオンについては非常に良く満たされている。
【0054】
従って、これを瞬間電解質バランスに適用する:

(式4)
【0055】
電解質出納を計算するには、濃度Cdoの新しい透析液が注入口を通る間の遅延時間tを考慮しなければならない。これは、装置の流体力学、透析装置の体積及び透析液流量に依存する。
【0056】
透析液と患者との間を輸送される電解質の量は、遅延時間を考慮した積分(遅延時間を考慮した累積出納)によって得られる:

(式5)
【0057】
仮に、患者の分布容積Vが既知であれば、どの時点についても、1プールモデルにおける患者の平均電解質濃度の変化量dcPat を推量することができる。この変化は、十分な平衡時間の後、患者の血漿においても観察される(患者における濃度変化)。

(式6)
【0058】
血液と透析液との間のイオンタイプjの拡散流ΔJj.diffは、血液と透析液との間の濃度差によって決まり、物質固有のドナンファクター(Donnan factor)α及び物質固有のクリアランス(clearance )Dによって補正される(血液と透析液との間の拡散流)。

(式7)
【0059】
拡散流は、患者において、物質固有の数値及び当該物質が分配される区画の大きさに更に依存する濃度変化を起こす。
【0060】
以下からは、患者における濃度の進展は透析液側の伝導度の補正のみに用いられているので、必要とされる精度の枠において1プールモデルによる良好な近似が可能である。
【0061】
このモデルにおいて、分布容積Vの患者におけるΔJj.diffは、結果的に濃度変化dcj、biの微分となる:

【0062】
患者における濃度の時間的進展cj、biは、従って、既知の初期濃度cj,o から連続的に計算可能である(患者におけるイオン濃度の進展の計算):

(式8)
【0063】
血漿ナトリウム濃度は、透析装置60の上流及び下流における透析液の伝導度測定と、ダイアリザンスDと、透析液、置換液及び限外濾過の影響とを基に計算できる。より詳しくは、血漿の伝導度に適応して、以下のようになる。

(式9)
【0064】
制御の結果と、開始前又は制御中のユーザー設定とは内部又は外部(患者カード、データベースシステムを伴うネットワーク)に患者毎に記憶できる。
【0065】
溶液の温度補正伝導度σは、一般に、当該溶液の全ての成分の濃度の関数である。透析液において実際的にあり得る濃度範囲では、主要な成分の濃度の線形結合によって伝導度σを近似できる(物質濃度の関数としての伝導度の一般的な表現):

(式10)
【0066】
ここで、Cはイオン濃度を表し、γは代表的な透析液組成における既知のモル導電率を表し、σOfs は線形近似からのオフセット(offset)を表す。電荷の中性により、

が保証されなければならず(Zはイオンjの価数)、

である塩化物イオンの濃度は消去可能である。

【0067】
代表的な透析液組成において、従って、以下を伝導度に適応する(物質の濃度と伝導度との線形化された変換)。

(式11)
係数

は、測定データから実験的に得ることができる。
【0068】
係数γ<0は、ブドウ糖及び尿素等の場合にはあり得ることであり、非イオノゲン性(non-ionogenic)物質はイオンの移動を妨害して伝導度を減少させることに起因する。
【0069】
伝導度出納は、この透析装置における伝導度センサー22、24を用いて極めて正確に定量することができる。
【0070】
このことから、ナトリウム濃度の変化が透析装置の注入口と排出口との間における伝導度の変化から計算できるのであれば、ナトリウム出納が推量可能である。この目的のためには、透析液の残りの組成の濃度変化による寄与が、伝導度変化に対して推量されなければならず、そのために以下のモデルが近似として用いられる。
【0071】
1.Naイオン及び暗黙的に考慮されているClイオンに加えて、原則的に、Kイオン及びBicイオンの濃度変化が伝導度変化に寄与する。これは、一般にこれらのイオンの濃度が透析過程中に患者において最も変化することによる。
【0072】
2.残りの透析液の組成の濃度変化は、伝導度変化に実際上の影響を及ぼさない。これは、濃度変化が小さすぎるか、又は、個々の組成の濃度変化による伝導度変化が互いに相殺することによる。従って、これらの濃度変化は定常的であると想定できる(以下を参照)。
【0073】
透析装置の注入口における伝導度σdiは、従って、式11に基づいて次のように与えられる:

【0074】
ここで、

であり、定数

は新しい透析液におけるNaを除く全ての組成の寄与を含む。透析装置の排出口における伝導度σdoについて同様に、

となる。
【0075】
上記の想定に従って、

は、次のように書くことができる。

【0076】
及びBicの濃度変化の寄与は、Δσdo(透析装置の排出口における伝導度補正)に含まれる:

(式12)
【0077】
この点において、ΔJj,diffは、jがK及びBicを表すとして、式8及び式7を繰り返し用いることで定量できる。以上のσdi及びσdoの表記からナトリウム濃度を式5に挿入すると、Bic及びKの濃度は時間t内では変化しないとの想定下では、拡散ナトリウム出納(伝導度に基づく拡散ナトリウム出納)について以下が得られる。

(式13)
【0078】
従って、拡散ナトリウム出納は、透析装置60の前後における伝導度測定から直接的に定量できる伝導度バランス

と、透析装置の膜を介するイオン交換に対する補正項(これは患者及び透析装置モジュールを用いて計算できる)

とに分けることができる。
【0079】
ユーザーによって予め設定された拡散ナトリウム出納を患者において透析の終わりまでに達成するのが、制御の役割である。設定値仮説を用いる場合、正ナトリウム透析、つまりナトリウム出納0、が目標である。出納0から外れるべきである場合、ユーザーは初めに追加のナトリウム量

を予め設定することができ、当該量のナトリウムが治療の終わりまでに拡散によって輸送される。

は、NaClが患者に供給されるべきであれば>0であり、NaClが患者から除去されるべきであれば<0である。ナトリウム制御は、この量をUF時間が終わる30分前までに線形に分配する(tEnd=tUF−30min):

(式14)
【0080】
この点において、当該追加のナトリウム輸送を実現するための制御が、ナトリウム出納0を実現するための濃度設定とは異なっている場合であっても、他のイオンの交換には影響しないと想定されている。
【0081】
制御は、出納の目標を達成するためには、2つの条件を満たさなければならない:
1.患者と透析液との拡散ナトリウム流量(式4を参照)は消えなければならない。2つの伝導度センサー間における透析液の移動時間tと、イオン交換による伝導度補正とを考慮すると、この条件は、次を満たすことの要求に等しい:

2.同時に、ユーザーが予め設定した拡散出納は常に満たされているべきであり、積算される不均衡も均衡化されなければならない。従って、次が適用されなければならない(式13を参照):

【0082】
これらの要求は、定量ユニットにおいて、又は、制御モデルにおいて、時間差有りのPIコントローラによって実現される。最初、測定された伝導度から計算され、その時の所望の伝導度に設定される。

(式15)
【0083】
遅延時間tは、下流の伝導度セル24に位置する体積要素が、遅延時間t前には上流の伝導度セル22に位置していたことになるように決められる。従って、式15におけるコントローラーの制御変数は、透析装置の注入口及び排出口における測定された伝導度と、初期にはパラメータが固定されているモデルの補正項とに依存する。F1及びF2は制御パラメータであって、当業者(the skilled person)に知られているシステム論の方法によって実験的に又は分析的に決定でき、特にステップ応答の観点から最善の制御挙動が得られるようにする。
【0084】
等価血漿伝導度σbiの計算は、当初、式9に従って、透析装置60前後における測定された伝導度から行なわれる。
【0085】
その後、σbiからナトリウム濃度が式11の反転として計算される(血漿ナトリウムの計算):

(式16)
【0086】
ここで、カリウム及び重炭酸の濃度は、式8に示されるように1プール患者モデルによって推量される。下の濃度は、透析液の他の組成に対して一定と見なされている:

【0087】
この患者についてナトリウム出納0に達するために必要な透析液ナトリウム

によって初めから次回の透析を始めるために、この値を制御によって決定し、透析の最後に患者カードに保存することができる。
【0088】
ナトリウム出納0が達成されたとすると、

は、通常なら制御の最後における所望のナトリウム値と等しい。しかしながら、ナトリウム出納0が達成されないこともあり、これは、例えば、ユーザーによってナトリウム除去が選択された場合、又は、出納0を達成するために必要な値をウインドウ内では設定できない場合等である。同様に、透析治療の最後にはナトリウム出納0が確かに達成されるが、不均衡を補正するために、最後の所望ナトリウム値がナトリウム出納0に対応する値とは異なることもある。
【0089】
従って、

はモデルによって近似される。単純化のために、ここでは患者は次の平均透析液濃度<Cdi>を基準として透析が行なわれる分布容積Vにより表現できると想定される。

(式17)
【0090】
式6及び式7に従い、ドナン効果を無視すると、次が得られる:

ナトリウム出納0(MDiff(t)=0)は、ちょうど

の時に達成される。

に対して、次が成り立つ。

(式18)
【0091】
透析液におけるナトリウム量の目標値は、正ナトリウム透析について式18から求めることができ、患者カードに記憶することができる。検出ユニット20、及び、患者カードが挿入される記憶装置50は、そのためのデータ交換手段によって接続することができる。
【0092】
ユーザーは、透析を開始する前に制御範囲を設定する。これは、施設における透析液ナトリウムの通常値、正ナトリウム状態を達成するために必要とされる透析液ナトリウムの推量値、患者のナトリウム量の分析室測定値又はこれまでの治療から制御により求められた値であっても良い。安全上の理由から、治療の間、ユーザーに確認することなしに固定の許容範囲、例えば±5%を越える制御を行なうことは許されない。正ナトリウムを達成するために既定値から更に大きく外れることが必要だとすると、ユーザーは既定値を変えるように促される。加えて、拡散出納の補正のためにモデルを適用するために、患者の分布容積を入力しなければならない。当該分布容積は、人体計測公式により計算することもできるし、生体インピーダンス又は力学モデリングから求めることもできる。更に、患者の重炭酸及びカリウムの初期濃度が必要である。これらは、透析治療の前に血液ガス分析装置による分析によって得ることができる。
【0093】
必要な全パラメータ(分布容積、初期透析液ナトリウム、重炭酸及びカリウムの初期値)は、透析治療の初めにおいて、しばしば一人の患者については概ね同じである。従って、患者カードに記録し、治療を始める際に自動的に読み出すようにしても良い。
【0094】
治療を開始した後、透析液流量及び伝導度は、透析装置60の上流及び下流において定量される。更に、重炭酸及びカリウムの最新の濃度の計算は、カリウムクリアランスはナトリウムクリアランスに一致し、重炭酸クリアランスはナトリウムクリアランスの70%に一致するとの想定において、式7及び式8に従って行なわれる。血液流からのナトリウムクリアランスは、最初のクリアランス測定(約20分後)までは推量される。
【0095】
式12及び式13に従い、伝導度出納の計算と、イオン交換及びひいてはナトリウム出納に対する補正項の計算とが、これらのデータから行なわれる。
【0096】
透析液伝導度は上流及び下流にて測定され、ナトリウム出納と、透析装置60の下流における透析液伝導度の補正項(式12を参照)とは、式15に従うナトリウム制御のための入力値とされる。このようにして決められた伝導度の目標値は、最終的に、透析液濃縮液の組成を考慮して透析液ナトリウムの目標値に変換され、この既定値は計量ユニット40に転送される。
【0097】
図2(a)及び図2(b)は、20リットルの食塩水で満たした容器によりシミュレートされる模擬患者を、ナトリウム濃度について本発明に従う制御を用いて透析治療する際のナトリウム濃度及びカリウム濃度の進展を表す。ここで、患者における初期濃度はカリウムが6mmol/lで且つナトリウムが130mmol/lであり、透析液についてはカリウムが2mmol/lで且つナトリウムが145mmol/lである。本発明に従う制御は、図2(a)に示すように、透析期間に亘ってナトリウム濃度の変化を可能な限り小さくするように透析液の組成を順応させる。図2(b)は患者におけるカリウム濃度の進展を示しており、実線は測定値を、破線はモデルによる計算値を表している。透析液の伝導度を一定に保つだけの制御であれば、この例において、約3.5mmol/lのカリウムの減少は約4.5mmol/lのナトリウムの供給によって補正されると思われ、これは、患者において望ましくないナトリウム濃度の増加をもたらす。本発明に従う制御によると、透析の初めにおいて透析液におけるナトリウム及びカリウムの濃度が患者の血液における濃度と大きく異なったとしても、患者のナトリウム濃度はほぼ一定に維持される。
【0098】
図3は、カリウム及び重炭酸の交換を補正するために用いられるナトリウム出納0制御の実験室的イン・ビトロ(in vitro)実験を示す。制御における目標値は、透析液ナトリウムについて示されている(下の曲線、左側の目盛り)と共に、モデル患者の伝導度の測定された進展(上の曲線、右側の目盛り)が示されている。モデル患者(分布容積10リットル)は、初期には14.6mS/cmの伝導度を有する。補正無しでは、制御により透析液ナトリウムは約146mmol/lに設定され、伝導度はこの透析液組成に対して一定に維持される。患者においては、カリウムの喪失と重炭酸の摂取による伝導度の降下はナトリウムの供給によって補正され、最終的なナトリウムは最初のナトリウムよりも遙かに多くなる。
【0099】
本補正を用いることにより、制御は治療の初めにおけるナトリウム値を既に大きく下げ、且つ、概ね一定に保っている。患者の伝導度の降下は、血漿ナトリウム値は明らかに一定であるが、カリウムの喪失及び重炭酸の摂取により血漿の伝導度が低下した状態に対応する。
【0100】
図4は、ユーザー定義によるNaCl除去の実験室的イン・ビトロ実験を示す。血漿ナトリウムを既定値に合わせる制御だけが可能な従来技術とは対照的に、ユーザーは、血漿ナトリウムの現在値に対する変化を開始することができ、例えば、正ナトリウム状態から外れることが可能な変化の程度を設定することができる。この目的のために、患者の分布容積が入力されるか又はデータキャリアから読み出される必要がある。加えて、典型的には、限外濾過の時間として、治療時間が与えられる必要がある。ここでユーザーは、ナトリウム濃度変化の目標値をmmol/l単位で与えることができる。同様に、前記のような平衡化の補正を行なうために、カリウム及び重炭酸の初期値が必要である。
【0101】
その後、上に説明したような制御により、予定した治療時間に亘って線形に分配される。ここでは、クリアランスの変化及びイオン交換による伝導度の変化は、治療の過程において自動的に計算に入れられる。この結果、治療において、血漿と透析液との間では概ね一定の拡散勾配となる。あるいは、ユーザーは、限外濾過及び拡散により透析中に患者から除去されるか又は患者に供給されるべきナトリウムの総量を予め設定することもできる。これは、透析と透析との間のナトリウム摂取量が食事療法により正確に分かる場合に有用である。
【0102】
図4は、モデル患者(NaCl溶液、分布容積10リットル)からユーザー定義によりNaCl(ユーザー既定値4.5mmol/l)を除去する実験室的イン・ビトロ実験を表している。ここでは、左側において下部を延びている曲線が透析液ナトリウムについての制御の目標値を表し、上部に広がっている曲線がモデル患者における伝導度の測定された範囲を表している。この実験ではイオン交換に対する補正が行なわれていないので、制御によって設定された透析液ナトリウムの進展は、濃度変化を達成するためのアルゴリズムだけによって生じている。約3500秒において透析液ナトリウムが一定値になっているのは、このとき制御における下限に達したことによる。5000秒においてユーザーがナトリウム濃度を下方に動かしたので、結果として、計画されたナトリウム除去に対する「取り返し」が生じている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体回路における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する装置(10)において、前記流体回路は体外血液回路(12a)及び透析液回路(14)を備え、当該透析液回路は前記各部分回路(12a、14)を半透過的に分割する少なくとも1つのフィルター(60)を有しており、
少なくとも1つの第1溶質の濃度差を、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後において間接的及び/又は直接的に定量する少なくとも1つの手段(24)を有する検出ユニット(20)と、
前記少なくとも1つの第1溶質と同一ではない少なくとも1つの第2溶質による前記検出ユニット(20)の前記手段(24)に対する影響をモデルを用いて定量し、且つ、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度差を計算する定量ユニットと、
前記流体回路中における前記少なくとも1つの溶質の濃度を制御する制御ユニットとを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置(10)において、
制御手段及び記憶手段を有する制御ユニットを備え、
前記少なくとも1つの第1溶質の前記透析液回路(14)中において定量された濃度差の実際値が、当該物質の前記体外血液回路(12a)又は血管血液回路(12b)中における濃度又は濃度変化の目標値を基準として前記制御手段により調整され、且つ、前記透析液回路(14)中における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度が前記制御手段により目標値に制御される、又は、
前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)の上流における当該物質の濃度の目標値が、前記少なくとも1つの第1溶質の前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後における定量された濃度差の実際値から、前記制御手段により決定され、且つ、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)の上流における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度が、前記制御ユニットにより当該目標値に制御されることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2の装置(10)において、
前記検出ユニット(20)は、第1の前記手段(24)に加えて、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後において、前記少なくとも1つの第1溶質の濃度差を間接的及び/又は直接的に定量する少なくとも1つの第2手段(22)を有し、前記手段の1つ(22)は前記フィルター(60)の上流側に、1つは下流側に配置されていることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの装置(10)において、
前記検出ユニット(20)は、前記少なくとも1つの溶質の濃度を前記血液回路(12a)において定量するための他の手段を有していないか、又は、
前記少なくとも1つの溶質の濃度の目標値が前記透析液回路(14)における前記フィルター(60)の上流側において決定されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つの装置(10)において、
前記第1の手段及び/又は前記第2の手段(22、24)は、伝導度センサーを含んでいるか、伝導度センサーとして作られていることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5の装置(10)において、
前記少なくとも1つの第1溶質の濃度は、前記第1の手段及び/又は第2の手段(22、24)により定量される伝導度から間接的に前記制御ユニットによって定量されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの装置(10)において、
前記少なくとも1つの第1溶質の濃度は、前記透析液回路(14)の前記フィルター(60)の上流において前記制御ユニットにより前記目標値に制御されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つの装置(10)において、
前記少なくとも1つの第1溶質の濃度は、前記透析液回路(14)のフィルター(60)の上流側において、前記制御手段により前記目標値とは異なる第2の目標値に制御されることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの装置(10)において、
前記制御は、前記第1又は前記第2回路(12a、14)において、予め決定された変動の裕度内、望ましくは±5%内だけに限定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの装置(10)において、
前記溶質の初期の目標値を記憶する記憶装置(50)を備え、前記記憶装置(50)は望ましくは取り外し可能な記憶媒体を含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10の装置(10)において、
前記記憶装置(50)は、前記制御ユニットに接続されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つの装置(10)において、
前記装置は透析装置の構成要素であり且つ/又は前記溶質はナトリウムイオンであることを特徴とする装置。
【請求項13】
流体回路における少なくとも1つの溶質の濃度を定量及び制御する方法において、前記流体回路は体外血液回路(12a)及び透析液回路(14)を備え、当該透析液回路は前記各部分回路(12a、14)を半透過的に分割する少なくとも1つのフィルター(60)を有しており、
少なくとも1つの第1溶質の濃度差は、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後において、少なくとも1つの手段(24)を有する検出ユニット(20)により間接的に及び/又は直接的に定量され、
定量ユニットが、前記少なくとも1つの第1溶質と同一ではない少なくとも1つの第2溶質による前記検出ユニット(20)の前記手段(24)における影響をモデルを用いて定量すると共に、前記透析液回路(14)中のフィルター(60)前後における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度差を計算し、
制御ユニットが、前記流体回路中における前記少なくとも1つの溶質の濃度の濃度を制御することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、
前記制御ユニットは制御手段及び記憶手段を備え、
前記少なくとも1つの第1溶質の定量された濃度差の実際値が、前記体外血液回路(12a)又は血管血液回路(12b)中における濃度又は濃度変化の目標値を基準として前記制御手段により調整されると共に、前記透析液回路(14)中における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度が前記制御手段により目標値に制御される、又は、
前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)の上流における当該物質の濃度の目標値が、前記少なくとも1つの第1溶質の前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後における定量された濃度差の実際値から、前記制御手段により決定されると共に、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)の上流における前記少なくとも1つの第1溶質の濃度が、前記制御ユニットにより当該目標値に制御されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13又は14の方法において、
前記検出ユニット(20)は、第1の前記手段(24)に加えて、少なくとも1つの第1溶質について、前記透析液回路(14)中の前記フィルター(60)前後における濃度差を間接的及び/又は直接的に定量する少なくとも1つの第2手段(22)を有し、手段の1つ(22)は前記フィルター(60)の上流側に、1つは下流側に配置されており、且つ/又は、
前記検出ユニット(20)は、前記少なくとも1つの溶質の濃度を前記血液回路(12a)において定量するための他の手段を有していないか、又は、前記少なくとも1つの溶質の濃度の目標値が前記透析液回路(14)における前記フィルター(60)の上流側において決定されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1つの方法において、
前記血液回路(12a)における前記溶質の濃度は、前記透析液回路(14)における伝導度から間接的に定量されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか1つの方法において、
当該方法は、請求項1〜12のいずれか1つの装置(10)を用いて行なわれることを特徴とする方法。
【請求項18】
体外血液回路(12a)及び透析液回路(14)を備え、前記血液回路(12a)及び前記透析液回路(14)は互いに少なくとも1つのフィルター(60)によって半透過的に分離され、
請求項1〜12のいずれか1つの装置を備えることを特徴とする血液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−521816(P2012−521816A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502510(P2012−502510)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002086
【国際公開番号】WO2010/112223
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】