説明

流体混合器

【課題】流体の流れ方向の濃度分布や温度分布をムラなく均一化して混合する。
【解決手段】第一流路1と第二流路3からなる主流路1,3と、第一流路1の周囲に第一流路1に対し略同心状に形成され、一端部に第二流路3が連通する螺旋流路2と、第一流路1の流れ方向複数個所とその外側の螺旋流路2とをそれぞれ連通する複数の分岐流路4a〜4eと、第一流路1または第二流路3の端部に設けられた流体入口部5と、流体入口部5とは異なる、第一流路1または第二流路3の端部に設けられた流体出口部6とを有し、複数の分岐流路4a〜4eは、主流路1,3または螺旋流路2の少なくとも一方の流路中央軸線から偏芯した位置で、該主流路1,3または該螺旋流路2の少なくとも一方に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工場、半導体製造分野、食品分野、医療分野、バイオ分野などの各種産業における流体輸送配管に用いられる流体混合器に関するものであり、特に流体の流れ方向の濃度分布や温度分布をムラなく均一化して混合して撹拌させることのできる流体混合器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、配管内に装着して管内を流れる流体を均一に混合する方法として、図18に示すように捻り羽根状のスタティックミキサーエレメント101を用いたものが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。通常、スタティックミキサーエレメント101は、矩形板をその長手軸線周りに180度捻ったものを最小単位部材として、複数の最小単位部材を、捻り方向が交互に異なる方向になるように一体的に直列に結合した構造を有している。このスタティックミキサーエレメント101を管102内に配置し、管102の両端部にメールコネクター103を取り付け、フレアー105を装着して締付ナット104を締め付けることによりスタティックミキサーが形成される。このとき、スタティックミキサーエレメント101の外径が管102の内径にほぼ等しく設計されて、流体が効果的に撹拌されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−205062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のスタティックミキサーを用いた流体の混合方法は、流れてくる流体を流れに沿って撹拌する構成であるため図19(a)に示すように配管の径方向の濃度分布をムラなく均一化することはできるが、図19(b)に示すように軸方向(流れ方向)の濃度分布をムラなく均一化することはできない。そのため、例えばスタティックミキサーの上流側で水と薬液を混合させて流す時、薬液の混合比が一時的に増加した場合には流路内で部分的に濃度が濃くなった状態でスタティックミキサーを通過する。このとき、径方向で均一化されて水と薬液は撹拌されても、軸方向(流れ方向)においては流路内で部分的に濃度が濃くなった箇所はほとんど希釈されることなく濃くなった状態のまま下流側へ流れてしまう(図19(b)参照)。これにより、半導体洗浄装置、特に半導体ウェハの表面に直接薬液を塗布して各種の処理を行うような装置に接続された場合、濃度の異なる薬液が半導体ウエハの表面に塗布されて不良品の原因となる問題があった。
【0005】
この軸方向(流れ方向)の濃度分布のムラを回避する方法としては、流路の途中でタンクを設置してタンク内に流体を一旦貯めてタンク内の濃度を均一化させた後で流体を流す方法(図示せず)などが挙げられる。しかしながら、タンクを設置するには広いスペースが必要となり装置が大きくなる問題や、タンクから再び流体を輸送するにはポンプ、配管などが必要となるため、使用する部材の点数が多くなるという問題や、配管ラインを施工するためのコストが発生するという問題があった。また、この方法ではタンク内で流体が滞留する。流体が滞留するとバクテリアの発生原因となり、タンク内で発生したバクテリアが配管ラインに流れ込み、半導体製造ラインにおいては半導体ウエハに付着して不良品の原因となる問題があった。
【0006】
本発明の目的は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、流体の流れ方向の濃度分布や温度分布をムラなく均一化して混合すると共に撹拌できる、コンパクトな構成の流体混合器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異種流体を混合するための混合流路を有する流体混合器であって、混合流路は、第一流路と第二流路からなる主流路と、該第一流路の周囲に第一流路に対し略同心状に形成され、一端部に該第二流路が連通する螺旋流路と、第一流路の流れ方向複数個所とその外側の螺旋流路とをそれぞれ連通する複数の分岐流路と、第一流路または第二流路の端部に設けられた流体入口部と、流体入口部とは異なる、第一流路または第二流路の端部に設けられた流体出口部とを有し、複数の分岐流路は、主流路または螺旋流路の少なくとも一方の流路中央軸線から偏芯した位置で、該主流路または該螺旋流路の少なくとも一方に連通することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば以下のような効果が得られる。
(1)流路内で一時的に流体の濃度が濃くなったり薄くなったりした状態でも、流体の流れ方向の濃度分布をムラなく均一化して混合でき、濃度の安定した流体の供給が可能である。
(2)分岐流路が偏芯して接続された流路形状によって流体が撹拌されて流れるので流体の流れ方向の混合と共に径方向の混合が行われるため、より均一な混合を行うことができる。
(3)流路内で渦を巻く流れを発生させることでデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
(4)流路内で一時的に流体の温度が高くなったり低くなったりした状態でも、流体の流れ方向の温度分布をムラなく均一化して混合でき、温度の安定した流体の供給が可能である。
(5)流体混合器を小型化することができ、その設置スペースも必要最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る流体混合器の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1の流体混合器を用いて流体の濃度を測定する装置を示す模式図である。
【図3】図2の流体混合器の上流側の濃度を測定したグラフである。
【図4】図2の流体混合器の下流側の濃度を測定したグラフである。
【図5】本発明の第二の実施形態の流体混合器を示す縦断面図である。
【図6】図5のA−A縦断面図である。
【図7】図5の連通孔の位置を変えた流体混合器を示す縦断面図である。
【図8】図5の連通孔を斜めにした流体混合器を示す縦断面図である。
【図9】第二の実施形態における円筒体の異なる装着構造を示す縦断面図である。
【図10】第二の実施形態における第一流路の異なる構造を示す縦断面図である。
【図11】第二の実施形態における他の構造を示す縦断面図である。
【図12】第二の実施形態にスタティックミキサーエレメントを設置した構造を示す縦断面図である。
【図13】本発明の第三の実施形態に係る流体混合器の概略構成を示す斜視図である。
【図14】本発明の第四の実施形態の流体混合器を示す縦断面図である。
【図15】第四の実施形態における円筒体の異なる装着構造を示す縦断面図である。
【図16】本発明の第五の実施形態の流体混合器を示す縦断面図である。
【図17】本発明の第六の実施形態の流体混合器を示す縦断面図である。
【図18】従来のスタティックミキサーを示す縦断面図である。
【図19】図18のスタティックミキサーの流体の撹拌状態を示す模式図である。
【図20】本発明の比較例としての分岐希釈装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面に示す実施例を参照して説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0011】
−第一の実施の形態−
以下、図1〜4を参照して、本発明の第一の実施形態である流体混合器について説明する。図1は、第一の実施の形態に係る流体混合器の概略構成を示す斜視図である。この流体混合器は、異種流体を混合するための混合流路を有する。混合流路は、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)製のチューブにより形成される。なお、金属配管等、他の材質により混合流路を形成することもできる。
【0012】
混合流路は、流体の流入する流体入口5と、流体入口5が一端部に設けられた第一流路1と、流体の流出する流体出口6と、流体入口5の反対側端部に流体出口6が設けられた第二流路3と、該流路1、3を螺旋の中心軸にしてこれらの周囲に同心状に配設される螺旋流路2と、第一流路1または第二流路3と螺旋流路3とを流れ方向の複数個所で連通する複数の分岐流路4a〜4eとを有する。
【0013】
第一流路1および第二流路3は、同軸上にかつ互いに離間して配設された直線形流路であり、これらは主流路を構成する。螺旋流路2の一端部には第二流路3の流体入口側端部が接続している。第一流路1の流れ方向複数個所からは螺旋流路2にかけて第一流路1から分岐し、略直線状、すなわち直線状もしくはほぼ直線状の5つの分岐流路4a〜4eが延設されている。各分岐流路4a〜4eは、第一流路1に対する略垂直面内、すなわち垂直もしくはほぼ垂直の面内で延設され、流体入口5側から最も近い場所に位置する分岐流路4aは螺旋流路2の他端部に接続されている。
【0014】
複数の分岐流路4a〜4eは、螺旋流路2の異なる位置から各々分岐し、第一流路1の異なる位置において第一流路1と各々接続している。このとき、複数の分岐流路4a〜4eは第一流路1の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されると共に、螺旋流路2の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されている。すなわち、分岐流路4a〜4eの中央軸線の延長線は、第一流路1の中央軸線に交差せず、螺旋流路2の中央軸線にも交差しない。ここで、中央軸線とは流路断面積の中心を通る軸線のことである。
【0015】
次に、本発明の第一の実施形態である流体混合器の作用について説明する。
【0016】
流体混合器の上流側で水と薬液を混合させ、一時的に薬液の濃度が濃くなった状態で流した時、流路内で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は、流体入口5から第一流路1に流入して部分的に濃度が濃くなって流れる薬液が第一流路1の分岐流路4aの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路4aを流れて螺旋流路2を通って第二流路3へと流れる。残りの薬液は第一流路1の下流側へ流れて行き、さらに部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液が分岐流路4bの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路4bを流れて螺旋流路2を通って第二流路3へと流れる。残りの薬液は第一流路1の下流側へ流れて行き、さらに部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液は、分岐流路4bを流れた薬液と同様に分岐流路4cの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路4cを流れて螺旋流路2を通って第二流路3へと流れる。以下、分岐流路4a、4b、4cと同様に残りの部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液は分岐流路4d、4eを流れて螺旋流路2を通って第二流路3へと流れて行く。第二流路3に流れた薬液は流体出口6から流出される。
【0017】
このとき、分岐流路4eを流れる部分的に濃度が濃くなった薬液は、流体入口5から流体出口6までの流路の長さが最も短いことから他の部分的に濃度が濃くなって流れる薬液よりも早く流体出口6から流出し、時間差で分岐流路4d、分岐流路4c、分岐流路4b、分岐流路4aの順で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液の一部ずつが流体出口6から流出していく。つまり、流路内で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は流体混合器よって時間差で5つに分割されて流れることとなり、濃度の濃くなっていない薬液と各々混ざり合うことで流体の流れ方向の濃度分布をムラなく均一化して混合することができる。
【0018】
また、分岐流路4a〜4eは螺旋流路2の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されていることから、薬液は螺旋流路2の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図5の矢印参照)、螺旋流路2における流れと合わせて螺旋流路の中央軸線と直角方向にも螺旋流れが形成される。これにより、螺旋流路2内で薬液が効率よく撹拌され、流体の流れ方向による混合が維持されたまま径方向にも合わせて混合され、流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。このとき各々の分岐流路の内径が同一もしくはほぼ同一であると、部分的に濃度が濃くなって流れる薬液はほぼ5等分に分割されるので、流体の流れ方向の濃度分布をムラなくより均一化して混合することができる。
【0019】
なお、図1に示すように、本実施形態では、分岐流路4a〜4eは第一流路1の軸線に沿って等間隔の位置になるように設けられているが、各々の分岐流路4a〜4eを流れる流体に付与する時間差を調節するため、接続される位置を自由に設定したり、螺旋流路2が第二流路3と接続した一端部から他端部に向かって通路断面積を漸次小さくなるように形成したりしても良い。分岐流路4a〜4eの数も特に限定されない。分岐流路4a〜4eの数は多く設ける方が流体の流れ方向の濃度分布をムラなくより細かく均一化することができる。
【0020】
ここで、部分的に濃度が濃くなって流れる薬液を流体混合器で分割して流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用について説明する。図2に示すように、2つの物質である純水と薬液が各々流れるラインの合流部の下流側に図1の流体混合器を配置させたラインにおいて、図1の流体混合器の上流側と下流側に濃度計19、20を各々設置して、上流側から純水と薬液を混合して流す装置を作成し、純水と薬液を一定の比率で流している途中で瞬間的に薬液の濃度を濃くした状態(純水に対して薬液の比率を大きくする)にした後で、元の一定の比率で流して濃度分布のムラを生じさせる。この時の上流側と下流側の濃度を測定すると図3及び図4のようになる。
【0021】
図3は流体混合器の上流側に設置した濃度計19により得られる特性を示すが、ここで横軸は経過時間、縦軸は濃度であり、ある一定時間に濃度が濃くなるような場合では、図のようなピーク(h1)が現れることとなる。図4は流体混合器の下流側に設置した濃度計20により得られる特性を示すが、濃度のピークが5つに分散されて、ピーク(h2)の高さは約5分の1になっている。濃度のピーク間の間隔t1は、流体が第一流路1内において分岐流路4aの位置を通過してから分岐流路4bに至るまでの時間に対応しており、同様にt2は分岐流路4bから分岐流路4cまで、t3は分岐流路4cから分岐流路4dまで、t4は分岐流路4dから分岐流路4eに至るまでの時間に対応している。
【0022】
このとき、螺旋流路2の各々の分岐流路4a〜4eに至るまでの長さを変えることでピーク(h2)の出る間隔t1〜t4を変化させることができ、分岐流路4a〜4eの数をさらに増やすとピーク(h2)の高さは上流側のピーク(h1)に対して分岐流路の数で分割した程度の高さまで抑えることができる。なお、仮に流体混合器を設置しない場合、図3に示される濃度のピークは流体の流れによって若干低下することはあるがピーク(h1)はほぼ変わらずに流れることになる。
【0023】
本実施の形態においては、流体入口5を流体入口部、流体出口6を流体出口部として流体入口部から流体出口部へと流体を流すようにしたが、流体を逆方向に流しても同様の効果を得ることができる。この場合には、流体出口6が流体入口部になり、流体入口5が流体出口部になる。このとき、螺旋流路2と複数の分岐流路4a〜4eを通過することで流体入口部から流体出口部までの流路の距離が各々異なる距離にすることで流体の流れ方向の濃度分布をムラなくより細かく均一化することができる。
【0024】
また、径方向の混合については、第一流路1の軸線に対して偏芯した位置に分岐流路4a〜4eが各々接続されていることから、第二流路3から螺旋流路2を通って分岐流路4a〜4eで分岐された薬液は第一流路1の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図6の矢印参照)、さらに流体が分岐、合流することで第一流路1内にて薬液が撹拌されるので径方向の混合が行われる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
【0025】
なお、本実施形態では濃度分布のムラについて説明しているが、熱湯と冷水を混合した時の温度分布の流れ方向の均一化についても同様の効果を得ることができる。温度分布の均一化を目的として、給湯器などへの利用も可能となり、流路内で部分的に高温となった流体の温度の流れ方向の均一化を行うことでより温度を安定させ、熱湯が流れることによる火傷の防止を行うことができる。
【0026】
図20は、本実施の形態の比較例であり、軸方向(流れ方向)の濃度分布のムラを回避する他の方法を示す。図20には、流路を分岐して流体の希釈を行う分岐希釈装置が示されている。この装置は、細管111の中を一定の速度で流れている試料溶液を分析する装置において、流れている試料を複数の流路に分岐する分岐部112を流路の途中に設けることにより試料溶液を分割し、各分岐流路の細管113、114の内径や長さを変化させて検出器115の手前の合流部116で再度合流させ、試料溶液が検出される時間差を利用して希釈する。
【0027】
しかしながら、図20の分岐希釈装置の技術を流体輸送配管に用いる場合、管路の途中で分岐された長さの異なる管路を設けて再び合流させる配管ラインを設ける必要がある。このため、軸方向(流れ方向)の濃度分布をムラなく流路内で均一化するには分岐した流路を多く設けなくてはならず、その場合には分岐した配管ラインを設けるスペースが大きくなってしまうという問題がある。また、このような配管ラインを施工するには部品点数が多く必要であり、煩雑で時間がかかるという問題がある。この点、本実施の形態では、配管を設けるスペースを多く必要とせず、配管施行も容易で、短時間で配管施行を行うことができる。
【0028】
−第二の実施の形態−
次に、図5〜12を参照して、本発明の第二の実施形態である流体混合器について説明する。図5は、第二の実施の形態に係る流体混合器の概略構成を示す縦断面図であり、図6は、図5のA−A縦断面図である。第二の実施の形態では、略円柱状、すなわち円柱状もしくはほぼ円柱状の本体部7と、本体部7の外周面に嵌合する円筒体14とにより、混合流路を有する流体混合器が形成される。
【0029】
本体部7はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製であり、本体部7内には、主流路としての第一流路9と第二流路11が、本体部7の中心軸上に互いに離間して設けられている。本体部7の一端面には、第一流路9の端部(第二流路11の反対側端部)に連通する流体入口8が設けられ、他端面には、第二流路11の端部(第一流路9の反対側端部)に連通する流体出口10が設けられている。本体部7の外周面には螺旋溝12が設けられ、螺旋溝12の底面は略円弧状に形成されている。この略円弧状とは緩やかなカーブで形成されていれば良く、円状、楕円状、半円状、半楕円状などいずれでも良い。
【0030】
第二流路11の端部は、径方向外側に屈曲して形成され、螺旋溝12の流体出口10側端部に接続している。各螺旋溝12の底面からは、周方向所定の位相において、第一流路9と連通する分岐流路としての略直線状、すなわち直線もしくはほぼ直線状の複数の連通孔13が開口され、流体入口8側から最も近い場所に位置する連通孔13は、螺旋溝12の流体入口8側端部に連通している。なお、図では、連通孔13は、周方向対称な位相に設けられているが、連通孔13の設けられる位相はこれに限らない。
【0031】
各々の連通孔13は、螺旋溝12の中央軸線からずらして溝側面に沿った位置で連通するように形成されていれば良く、基準となる溝側面は図5に示すように連通孔13を流体入口8側に設けたり、図7に示すように連通孔38を流体出口10側に設けたり、さらには図8に示すように第一流路9から螺旋溝12に対して斜めになる連通孔39を設けても良く、これらの組合せで設けても良い。
【0032】
円筒体14はPFAチューブ製の筐体であり、略円筒形、すなわち円筒もしくはほぼ円筒形に形成されている。円筒体14の内径は本体部7の外径と略同径に形成され、本体部7とチューブである円筒体14との焼きばめによって、円筒体14は本体部7の外周面にシールされた状態で嵌合されている。本体部7に円筒体14を嵌合させることにより、本体部7の螺旋溝12と円筒体14内周面とで螺旋流路15が形成される。
【0033】
なお、筐体である円筒体14はチューブのような軟質の部材以外でも硬質の部材で形成しても良い。筐体の形状は円筒体以外にも直方体などであっても良い。また、円筒体14と本体部7はシールした状態で嵌合されているのであればどのような方法で嵌合させても良く、焼きばめ以外にも溶接や接着でも良く、図9に示すようにPFAチューブ製の円筒体17を本体部16に密着嵌合させて本体部16の両端にキャップナット18を螺合させることで円筒体17を本体部16の外周面にシールされた状態で固定させたり、図11に示すように略円筒形の円筒体28を本体部27に嵌合させてキャップナット29によって円筒体28をシールリング30で本体部27の外周面にシールされた状態で固定させたりしても良い。
【0034】
次に、図5を用いて本発明の第二の実施形態である流体混合器の作用について説明する。
【0035】
流体混合器の上流側から水と薬液を混合させて流しており、一時的に薬液の濃度が濃くなった状態で流した時、流路内で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は、流体入口8から流入して第一流路9に流れて行く。第一流路9を流れる部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は各々の連通孔13によって分割して流れ、部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は、時間差で螺旋流路15を流れて濃度の濃くなっていない薬液と各々混ざり合うことで流体の流れ方向に均一化して混合することができる。第二の実施形態の流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用は、第一の実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0036】
連通孔13は、螺旋流路15の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されていることから、薬液は螺旋流路15の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図5の矢印)、かつ流路が分岐と合流を繰り返すことで螺旋流路15内において薬液が撹拌されるので径方向の混合が行われる。そのため、螺旋溝12の底面を略円弧状にすると渦を巻く流れをよりスムーズに発生させることができ、かつ螺旋流路15の内壁への液の残留抑制を図ることができる。これにより流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
【0037】
本実施形態の流体混合器では、第一流路9の内周面と螺旋溝12の底面とを各々連通する連通孔13を容易に形成することができ、連通孔13の設置位置や設置する数を自由に設定することができる。このため、流れの時間差を細かく均等に調節することができ、流体の流れ方向の濃度分布をムラなくより細かく均一化することができる。また、本実施形態の流体混合器は、流路の複雑さの割りに加工が比較的容易であり、部品点数も少ないため、容易に製造することができる。さらに、流路構造が小さくまとめられているため、流体混合器を小型化することができ、配管スペースを取らずに設置することができる。また、流体混合器を配管ラインに接続する際も、流体入口8と流体出口10に各々継手等で接続するだけで施工が完了するため、配管施工が容易であり、短時間で接続することができる。
【0038】
本実施の形態において、連通孔13は、図6に示すように第一流路9の中央軸線に対して偏芯した位置に連通孔13が各々接続するように形成される。これにより、流体を逆方向に流す場合には、螺旋流路15を通って連通孔13で分岐された薬液は、第一流路9の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図6の矢印)、第一流路9内で薬液が撹拌されるので、径方向の混合が行われる。流体を逆方向に流した時の流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用は、第一の実施形態と同様なので、説明を省略する。
【0039】
連通孔13は、各々の通路断面積が略同一に形成されることが望ましい。これは、各々の連通孔13によって分割される流体の流量が各々一定で流れ、流体混合器に流入した流体は連通孔13の個数でほぼ等しく分割されて各々時間差をつけて合流して流れるためであり、これにより濃度分布をムラなく均一化することができる。
【0040】
図10に示すように第一流路22の内周面は、流体入口23側から下流部(流体出口24側)に向かって漸次縮径して形成されることが望ましい。これは、第一流路22を流れる流体は、各々の連通孔26から流体が分割して螺旋流路25に流れることで圧力損失が発生し、第一流路22の下流側の流速が低下するためであり、第一流路22の通路断面積を流れ方向下流側にかけて徐々に小さくすることで、圧力損失が起こっても流体は一定の速度で流れ、分割して流れる流体の時間差を安定させることができる。
【0041】
また、図11に示すように螺旋流路31は、第二流路32と接続した一端部から他端部に向かって通路断面積が漸次小さくなるように形成されることが望ましい。これは、流体を逆方向に流す場合、螺旋流路31を流れる流体は各々の連通孔33から流体が分割して流れることで圧損が発生し、螺旋流路31の下流側の流速が低下するためであり、螺旋流路31の通路断面積を流れ方向下流側にかけて徐々に小さくすることで、圧損が起こっても流体が一定の速度で流れ、分割して流れる流体の時間差を安定させることができる。
【0042】
なお、螺旋流路31の通路断面積を第二流路32と接続した一端部(流体出口35側)から他端部(流体入口34側)に向かって漸次小さくする方法は、図11のように螺旋溝の底面位置を合わせた本体部27において、本体部27の外周面が流体入口34側から流体出口35側に向かって漸次拡径するように設けて、この外周面形状に合わせた円筒体28を嵌合して螺旋流路31を形成しても良い。このほかにも本体部27に設ける螺旋溝の深さを流体入口34側から流体出口35側に向かって漸次深くなるように形成したり(図示せず)、螺旋溝の幅を漸次狭くなるように形成したり(図示せず)、これらの複合によって形成しても良い。
【0043】
また、図12に示すように第二流路36内にスタティックミキサエレメント37を配置しても良い。スタティックミキサエレメント37は、流路軸心回りで所定角度ずつ交互に逆回りで捻られた複数の捻り板が直列に連結されており、スタティックミキサエレメント37が配置された第二流路36を流体が通過すると、捻り板に沿って流体が交互に逆回転で撹拌されて径方向の混合が行われる。そのため、流体混合器の流れ方向と径方向の混合の効果にスタティックミキサエレメントの径方向の混合の相乗効果により、より均一に流体が混合される。特に流体に粘度があり、混合されにくい流体の混合には好適である。
【0044】
−第三の実施の形態−
次に、図13を参照して、本発明の第三の実施形態である流体混合器について説明する。図13は、第三の実施の形態に係る流体混合器の概略構成を示す縦断面図であり、第三の実施の形態では、第一の実施の形態と同様、チューブなどによって配管接続されて流体混合器が構成され、混合流路が形成される。
【0045】
この流体混合器は、流体の流入する流体入口45と、一端部に流体入口45が設けられた第一流路41と、第一流路41を螺旋の中心軸にして第一流路41の周囲に配設された螺旋流路42と、流体の流出する流体出口46と、一端部が螺旋流路42の流体入口45側の一端部に接続され、他端部に流体出口46が設けられた第二流路43と、第一流路41の流れ方向複数個所から分岐され、螺旋流路42に各々接続する5つの分岐流路44a〜44eとを有する。最も流体入口45側から遠い場所に位置する分岐流路44eは、螺旋流路42の他端部に接続されている。複数の分岐流路44a〜44eは第一流路41の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されると共に、螺旋流路42の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されている。
【0046】
次に、本発明の第三の実施形態である流体混合器の作用について説明する。
【0047】
流体混合器の上流側から水と薬液を混合させ、一時的に薬液の濃度が濃くなった状態で流した時、流路内で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は、流体入口45から第一流路41に流入して部分的に濃度が濃くなって流れる薬液が第一流路41の分岐流路44aの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路44aを流れて螺旋流路42を通って第二流路43へと流れる。残りの薬液は第一流路41の下流側へ流れて行き、また、部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液が分岐流路44bの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路44bを流れて螺旋流路42を通って第二流路43へと流れる。残りの薬液は第一流路41の下流側へ流れて行き、さらに部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液は、分岐流路44bを流れた薬液と同様に分岐流路44cの接続した箇所を流れた時点で、その一部が分岐流路44cを流れて螺旋流路42を通って第二流路43へと流れる。以下、分岐流路44a、44b、44cと同様に部分的に濃度が濃くなって流れる残りの薬液は分岐流路44d、44eを流れて螺旋流路42を通って第二流路43へと流れていく。第二流路43に流れた薬液は流体出口46から流出される。
【0048】
このとき、分岐流路44aを流れる部分的に濃度が濃くなった薬液は、最短ルートで第二流路43を通って他の部分的に濃度が濃くなって流れる薬液よりも早く流体出口46から流出し、時間差で分岐流路44b、分岐流路44c、分岐流路44d、分岐流路44eの順で徐々に長くなるルートを通って部分的に濃度が濃くなって流れる薬液の一部ずつが流体出口46から流出していく。つまり、流路内で部分的に濃度が濃くなって流れる薬液は、流体混合器よって時間差で5つに分割されて流れることとなり、濃度の濃くなっていない薬液と各々混ざり合うことで流体の流れ方向に均一化して混合することができる。特に各々の分岐流路44a〜44eから分割した順に流体出口46までの距離が一定距離ごとに長くなるので、時間差をより明確にすることができる。
【0049】
また、分岐流路44a〜44eは螺旋流路42の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されていることから、薬液は螺旋流路42の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図14の矢印参照)、螺旋流路42における流れと合わせて螺旋流路42の中央軸線と直角方向にも螺旋流れが形成される。これにより、螺旋流路42内で薬液が効率よく撹拌され、流体の流れ方向による混合を維持させたまま径方向にも合わせて混合され、流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
【0050】
なお、図13の分岐流路44a〜44eは、第一流路41の軸線に沿って等間隔の位置になるように設けられているが、各々の分岐流路44a〜44eを流れる流体に時間差を調節するために、第一流路41と接続される位置を自由に設けたり、螺旋流路42の通路断面積を第二流路43と接続した一端部から他端部に向かって漸次小さくなるように形成しても良く、分岐流路44a〜44eの数も上述したものに限定されない。分岐流路44a〜44eの数を多く設ける方が、流体の流れ方向の濃度分布をムラなくより細かく均一化することができる。本実施の形態においては作用の説明の便宜上、流体入口と流体出口とを記載しているが、流体を逆方向に流しても同様の効果を得ることができる。流体を逆方向に流した場合の作用は、第一の実施形態の流体を逆方向に流した場合と同様なので、説明を省略する。
【0051】
−第四の実施の形態−
次に、図14を参照して、本発明の第四の実施形態である流体混合器について説明する。図14は、第四の実施の形態に係る流体今後浮きの概略構成を示す縦断面図であり、第四の実施の形態では、第二の実施の形態と同様、本体部47と円筒体52とにより、混合流路を有する流体混合器が形成される。
【0052】
本体部47は、PTFE製であり、略円柱状に形成されている。本体部47内には、主流路としての第一流路49が本体部47の中心軸上に設けられ、本体部47の一端面には、第一流路49の一端部に連通する流体入口48が設けられている。本体部47の外周面には、螺旋溝50が設けられ、螺旋溝12の底面は略円弧状に形成されている。螺旋溝50の流体入口48側の一端部には、円筒体52を径方向に貫通する第二流路55が接続されている。本体部47には、周方向所定の位相において、各螺旋溝50の底面から第一流路49の内周面にかけて螺旋溝50と第一流路49とを各々連通する複数の直線状の連通孔51が設けられ、流体入口48側から最も遠い場所に位置する連通孔51は螺旋溝50の他端部に連通している。
【0053】
各々の連通孔51は、螺旋溝50の中央軸線からずらして溝側面に沿った位置で連通するように形成されている。なお、図では連通孔51を本体部47一端面の流体入口48側に設けているが、本体部47他端面の流体入口48と反対側の溝側面に設けても良く、さらに図8と同様、第一流路49から螺旋流路53に対して斜めに連通孔51を設けても良い。
【0054】
円筒体52は、PP(ポリポロピレン)製の筐体であり、略円筒形に形成されている。円筒体52の内径は本体部47の外径と略同径に形成され、焼きばめによって本体部47の外周面にシールされた状態で嵌合されている。本体部47に円筒体52を嵌合させることにより、本体部47の螺旋溝50と円筒体52の内周面とで螺旋流路53が形成される。円筒体52の流体入口48側の周面には流体出口54が設けられ、流体出口54に連通して、本体部47の螺旋溝50の流体入口48側の一端部に接続する第二流路55が設けられている。
【0055】
なお、円筒体52は本体部47とシールした状態で嵌合されているのであればどのような方法で嵌合させても良く、第二の実施形態に記載された種々の態様のほかにも図15に示すように有底円筒状の円筒体56を本体部57に嵌合させ、キャップナット58によって円筒体56をシールリング59で本体部57の外周面(円筒体56と当接する面)にシールされた状態で固定しても良い。
【0056】
第四の実施形態において、流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用及び径方向に流体を混合する作用は、第二の実施形態と同様なので説明を省略する。連通孔51は、螺旋溝50の溝側面に沿った位置に設けられ、螺旋流路53の中央軸線に対して偏芯した位置に各々接続されている。このため、薬液は螺旋流路53の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図14の矢印)、かつ流路が分岐と合流を繰り返すことで螺旋流路53内において薬液が撹拌されるので径方向の混合が行われる。そのため、螺旋溝50の底面を略円弧状にすると渦を巻く流れをよりスムーズに発生させることができ、かつ螺旋流路53の内壁への液の残留抑制を図ることができる。これにより流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
【0057】
なお、連通孔51は第一流路49から螺旋溝50に斜めになるように設けても良い。第二の実施形態と同様に連通孔51は、各々の通路断面積が略同一に形成されることが望ましい。螺旋流路53は、第二流路55と接続した一端側から他端側に向かって通路断面積が漸次小さくなるように形成されること(図示せず)が望ましく、第一流路49の内周面は、流体入口48側から奥部に向かって漸次縮径して形成されること(図示せず)が望ましい。
【0058】
−第五の実施の形態−
次に、図16を参照して、本発明の第五の実施形態である流体混合器について説明する。図16は、第五の実施の形態に係る流体混合器の概略構成を示す縦断面図であり、フェルール継手を用いた形状の流体混合器を示している。この流体混合器は、略円柱状の本体部66と、本体部66の周囲を覆う一対の円筒部材(第一円筒部61、第二円筒部62)とを有する。
【0059】
本体部66と一対の円筒部材61,62は、例えばSUS304により構成されている。なお、第一円筒部61と第二円筒部62は同一形状なので、以下では主に第一円筒部61で代表して説明する。第一円筒部61の一端部外周にはフランジ部63が設けられ、他端部には円筒部が縮径された縮径部64が設けられている。縮径部64の縮径された端部にはフェルール継手部65が設けられている。フェルール継手部65の端面には入口開口76が設けられ、入口開口76は、第一円筒部61内部の入口流路77に連通している。なお、第二円筒部62のフェルール継手部の端面には出口開口78が設けられ、出口開口78は第二円頭部62内の出口流路79に連通している。
【0060】
本体部66の内部には、同軸上に互いに離間して第一流路71および第二流路72が設けられている。本体部66の一端面には、入口流路77と第一流路71とを連通する流体入口69が設けられ、他端面には、出口流路79と第二流路72とを連通する流体出口70が設けられている。本体部66の外周面には、底面が略円弧状に形成された螺旋溝73が設けられ、螺旋溝73の一端部には第二流路72が接続している。周方向所定の位相において、各螺旋溝73の底面から第一流路71の内周面にかけて、螺旋溝73と第一流路71とを各々連通する直線状の複数の連通孔75が設けられ、流体入口69側から最も近い場所に位置する連通孔75は、螺旋溝73の他端部に連通している。
【0061】
各々の連通孔75は、螺旋溝73の中央軸線からずらした溝側面に沿った位置に連通するように設けられている。本体部66の両端部は第一、第二円筒部61、62の内周面に合わせた形状に縮径され、外周は第一、第二円筒部61、62の内周と略同径に形成されている。本体部66は第一、第二円筒部61、62の縮径されてない側のフランジ部63、67の開口部に嵌挿されている。各々のフランジ部63、67の端面間にはガスケット74が挟持され、フランジ部63、67はクランプ68により連結されている。このとき、第一、第二円筒部61、62が筐体を形成し、第一、第二円筒部61、62と螺旋溝73の内周面とで螺旋流路を形成する。
【0062】
なお、本実施形態のフランジ部63、67の接続はフェルール継手の接続方法と同様であり、フェルール継手を用いても良い。図16に示した以外の形状であってもフェルール継手を用いて組立容易に流体混合器を形成することができる。例えば、円筒状の筐体の両端部にフェルール継手部を設けた筐体に本体部を嵌合させた構成とすることができる。このとき、本体部の流路の形状を第四の実施形態と同様の形状にしても良く、この場合には、有底円筒状の第一円筒部と、流体入口及び流体出口が設けられた第二円筒部とをフェルール継手部によって接続してもよい(図示せず)。
【0063】
次に第五の実施形態の作用について説明する。
【0064】
入口開口76から流体混合器に流入した流体は、流体入口69から本体部66の第一流路71を通って連通孔75で各々分岐して螺旋溝73が形成する螺旋流路へ流入する。本体部66内の流路を流れることで流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用及び径方向に流体を混合する作用は第二の実施形態と同様なので説明を省略する。薬液は螺旋溝73の形成された螺旋流路の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図16の矢印)、螺旋流路における流れと合わせて螺旋流路の中央軸線と直角方向にも螺旋流れが形成されることにより、螺旋流路内で薬液が効率よく撹拌される。
【0065】
さらに螺旋溝73の底面を略円弧状にすることで渦を巻く流れをよりスムーズに発生させることができ、螺旋流路内で薬液が撹拌されるので径方向の混合が行われ、流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。均一化した流体は第二流路72を通って流体出口70から出口開口78に流れて流出される。
【0066】
このとき、本実施形態の流体混合器は分解及び組立が容易であるため、フェルール継手部65によって配管ラインへの取り付け取り外しが容易となる。分解した状態の本体部66は、外周に螺旋溝73が形成され、内部に直線の第一、第二流路71、72が形成されたシンプルで入り組んだ部分が無い構造であるため、洗浄を容易かつ確実に行うことができる。また、螺旋溝73の底面が略円弧状であるため、螺旋溝73の底に固形物が溜まるようなことはなく、溝の隅々まで洗浄を容易に行うことができる。そのため、特に分解して部品を洗浄して組み立てる作業が頻繁に行われる食品分野において好適に使用できる。なお、必要に応じて流路内に図12のようなスタティックミキサーエレメントを設置しても良い。
【0067】
−第六の実施の形態−
次に、図17を参照して、本発明の第六の実施形態である流体混合器について説明する。図17は、第六の実施の形態に係る流体混合器の概略構成を示す縦断面図である。第六の実施の形態は、Y型ストレーナー形状の流体混合器であり、ボディ81とボディ81内に収容される本体部93とを有する。
【0068】
ボディ81は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)製であり、Y型管状に形成され、分岐部を有する。ボディ81の下部の分岐部に中空室82が設けられ、中空室82に連通する連通口83を有する台座84と、中空室82から下方へ開口する開口部85を有している。ボディ81両端面にはフランジ状の入口開口86及び出口開口87が形成され、入口開口86と中空室82に各々連通する入口流路88と、出口開口87と連通口83に各々連通する出口流路89とを有している。ボディ81の端部には蓋体90が取り付けられる。
【0069】
蓋体90は例えばPVC製であり、円板状に形成され、蓋体90の一端部外周には鍔部91が設けられている。蓋体90はキャップナット92によりボディに取り付けられる。キャップナット92は例えばPVC製であり、円筒状に形成されている。キャップナット92の一方の端部内周には、ボディ81の開口部85外周に設けられた雄ネジ部に螺着される雌ネジ部が設けられ、もう一方の端部には内周方向へ突出する内鍔部が設けられている。キャップナット92は、蓋体90の鍔部91端面に内鍔部が当接し、ボディ81の雄ネジ部に螺着することで、蓋体90を固定し、このボディ81と蓋体90とで筐体を形成する。
【0070】
なお、蓋体90と本体部93を一体で設けても良い。また、キャップナット92を用いずに蓋体90に雌ねじ部を形成してボディ81に螺着しても良く、ボディ81の開口部85に雌ねじ部を設けて雄ねじ部を有する蓋体90を螺着しても良い。また、固定方法は、ボディ81と蓋体90とを固着できるのであれば螺着以外でもよく、バヨネットやフェルールやねじなど特に限定されない。
【0071】
本体部93は例えばPVC製であり、円柱状に形成されている。本体部93の一端面に流体入口96と流体入口96に連通する第一流路95が設けられ、第一流路95は本体部93の中心軸の位置に配置されている。本体部93の外周面には底面が略円弧状に形成された螺旋溝94が設けられ、螺旋溝94の流体入口96側の一端部はボディ81の出口流路89に連通している。螺旋溝94の底面から第一流路95の内周面にかけて螺旋溝94と第一流路95とを各々連通する複数の連通孔97が設けられ、流体入口96側から最も遠い場所に位置する連通孔97は螺旋溝94の他端部に連通している。各連通孔97は、螺旋溝94の中央からずらして溝側面に沿った位置で連通するように形成されている。
【0072】
本体部93の外周はボディ81の中空室82の内周と略同径に形成され、本体部93の流体入口96の反対側の端部外周には開口部85内周面とシールされるOリングを有する環状溝が設けられている。本体部93はボディ81の開口部85から中空室82に嵌合され、挿入した本体部93の端部を台座84に当接させ、連通口83に本体部93の第一流路95が連通した状態で蓋体90とキャップナット92で固定されている。このとき出口開口87は流体混合器の流体出口となり、出口流路89は流体混合器の第二流路となる。ボディ81の中空室82と螺旋溝94の内周面で螺旋流路が形成される。なお、ボディ81の分岐部に中空室82が設けられるのであれば、中空室82はボディ81の下部以外にあってもよい。
【0073】
次に第六の実施形態の作用について説明する。
【0074】
流体混合器に流入した流体は、ボディ81の入口開口86から入口流路88を通って本体部93の第一流路95へ流入する。本体部93内の流路を流れることで流体の流れ方向の濃度分布がムラなく均一化される作用は第三の実施形態と同様なので説明を省略する。薬液は螺旋溝94の形成された螺旋流路の内壁に沿って渦を巻く流れを発生させ(図17の矢印)、螺旋流路における流れと合わせて螺旋流路の中心軸線と直角方向にも螺旋流れが形成されることにより、螺旋流路内で薬液が効率よく撹拌される。さらに螺旋溝94の底面を略円弧状にすることで渦を巻く流れをよりスムーズに発生させることができ、螺旋流路内で薬液が撹拌されるので径方向の混合が行われ、流体の流れ方向と径方向の混合を流体混合器によって同時に行うことができる。また、流路内で渦を巻く流れを発生させることにより、流路内のデッドスペースをなくして流体の滞留を防止できる。
【0075】
均一化した流体は螺旋溝94が形成する螺旋流路から出口流路89を通って出口開口87から流出される。このとき、本実施形態の流体混合器は分解及び組立が容易である。分解した状態の本体部93は外周に螺旋溝94、内部に直線の第一流路95が形成されたシンプルで入り組んだ部分が無い構造であるため、洗浄を容易かつ確実に行うことができる。また、螺旋溝94の底面が略円弧状であるため、螺旋溝94の底に固形物が溜まるようなことはなく、溝の隅々まで洗浄がより容易となる。そのため、特に分解して部品を洗浄して組み立てる作業が頻繁に行われる食品分野において好適に使用できる。また、必要に応じて流路内に図12のようなスタティックミキサーエレメントを設置しても良い。
【0076】
以上の流体混合器における本体部7、47、66、93、円筒体14、52、円筒体61、62、ボディ81、蓋体90、キャップナット92等の各部品の材質は、樹脂製であればポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどいずれでも良い。特に流体に腐食性流体を用いる場合は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂などのフッ素樹脂であることが好ましく、フッ素樹脂製であれば腐食性流体に用いることができ、また腐食性ガスが透過しても配管部材の腐食の心配がなくなるため好適である。本体部または筐体を形成する部材を透明または半透明な部材で用いても良く、流体の混合の状態を目視で確認できるため好適である。また、流体混合器に流す物質によっては各部品の材質は鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属や合金であっても良い。特に流体が食品である場合、衛生的で寿命の長いステンレスが好ましい。流体混合器により混合される異種流体としては、気体、液体等の物質の相が異なる流体、物質の温度、濃度、粘土等が異なる流体、物質そのものの種類が異なる流体等、いかなるものでもよい。
【0077】
以上の実施の形態(例えば図1)では、第一流路1と第二流路3を同軸上に配設して主流路を形成したが、螺旋流路2の中央に配設されるのであれば、主流路の構成はいかなるものでもよい。上記実施の形態(例えば図1)では、複数の分岐流路4a〜4eを互いに同一形状としたが、主流路の流れ方向複数個所からその外側の螺旋流路2にかけてそれぞれ延設され、主流路と螺旋流路2とを複数個所でそれぞれ連通するのであれば、分岐流路を全て同一形状としなくてもよい。上記実施の形態(例えば図1)では、流体入口5と流体出口6をそれぞれ第一流路1と第二流路3の端部に設けたが、流体入口部と流体出口部のいずれか一方または両方を、螺旋流路2の端部に設けてもよい。すなわち流れ方向の端部に流体入口5または流体出口6のいずれか一方を設けるとともに、流れ方向の端部に流体入口5または流体出口6のいずれか他方を設けるのであれば、主流路の端部と螺旋流路の端部のいずれにあってもよい。
【0078】
主流路または螺旋流路の少なくとも一方の流路中央軸線から偏芯した位置で、主流路または該螺旋流路の少なくとも一方に連通するように設けられるのであれば、複数の分岐流路の構成は上述したものに限らない。例えば上記実施の形態では、螺旋流路の各螺旋部毎に分岐流路を設けたが、一部の螺旋部にのみ分岐流路を設けてもよい。図12では、第二流路36にスタティックミキサーエレメント37を配設したが、主流路の代わりに螺旋流路に配設してもよく、主流路と螺旋流路の両方に配設してもよい。
【0079】
なお、上記第一の実施の形態〜第六の実施の形態を任意に組み合わせて流体混合器を構成してもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の流体混合器に限定されない。
【符号の説明】
【0080】
1 第一流路
2 螺旋流路
3 第二流路
4a〜4e 分岐流路
5 流体入口
6 流体出口
7 本体部
8 流体入口
9 第一流路
10 流体出口
11 第二流路
12 螺旋溝
13 連通孔
14 円筒体
15 螺旋流路
37 スタティックミキサーエレメント
41 第一流路
42 螺旋流路
43 第二流路
44a〜44e 分岐流路
45 流体入口
46 流体出口
47 本体部
48 流体入口
49 第一流路
50 螺旋溝
51 連通孔
52 円筒体
53 螺旋流路
54 流体出口
55 第二流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種流体を混合するための混合流路を有する流体混合器であって、
前記混合流路は、
第一流路と第二流路からなる主流路と、
該第一流路の周囲に第一流路に対し略同心状に形成され、一端部に該第二流路が連通する螺旋流路と、
前記第一流路の流れ方向複数個所とその外側の前記螺旋流路とをそれぞれ連通する複数の分岐流路と、
前記第一流路または前記第二流路の端部に設けられた流体入口部と、
前記流体入口部とは異なる、前記第一流路または前記第二流路の端部に設けられた流体出口部とを有し、
前記複数の分岐流路は、前記主流路または前記螺旋流路の少なくとも一方の流路中央軸線から偏芯した位置で、該主流路または該螺旋流路の少なくとも一方に連通することを特徴とする流体混合器。
【請求項2】
前記主流路および前記分岐流路が内部に設けられるとともに、前記分岐流路に連通して外周面に螺旋溝が形成された本体部と、
前記本体部の外周面に嵌合され、前記螺旋溝とともに前記螺旋流路を形成する筐体とを備え、
前記主流路の第一流路および第二流路は、互いに同軸上に離間して配置され、
前記流体入口部および前記流体出口部は、それぞれ前記本体部の長手方向端部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体混合器。
【請求項3】
前記主流路および前記分岐流路が内部に設けられるとともに、前記分岐流路に連通して外周面に螺旋溝が形成された本体部と、
前記本体部の外周面に嵌合され、前記螺旋溝とともに前記螺旋流路を形成する筐体とを備え、
前記流体入口部および前記流体出口部の少なくとも一方は、前記筐体を貫通して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体混合器。
【請求項4】
前記螺旋溝は、底面が略円弧状に形成されてなることを特徴とする請求項2または3に記載の流体混合器。
【請求項5】
前記第一流路の流路断面積は、一端部側の流体入口部または流体出口部から他端部側に向かって徐々に小さくされていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項6】
前記螺旋流路の流路断面積は、前記第二流路と接続する一端部側から他端部側に向かって徐々に小さくされていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項7】
前記筐体の端部にフェルール継手部が設けられていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項8】
前記筐体は、フランジ部を介して長手方向に互いに連結される複数の部材からなることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項9】
前記部材は、一対の円筒部材であり、
これら各円筒部材の一端部には、径方向外側に突設された前記フランジ部がそれぞれ形成されるとともに、他端部には、径が縮小された縮径部がそれぞれ形成され、
前記本体部は、前記一対の円筒部材の内側に収容され、前記一対の円筒部材の前記フランジ部同士が連結されることにより固定されることを特徴とする請求項8に記載の流体混合器。
【請求項10】
前記筐体は、
一端部が開口された分岐部を有するボディと、
前記分岐部の開口を閉塞する蓋体とを有し、
前記分岐部は、中空室を形成するとともに、この中空室を介して前記ボディ内に入口流路と出口流路が形成され、前記本体部は、前記ボディの中空室に嵌合して配置されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項11】
前記螺旋流路または前記主流路の少なくともいずれかに、スタティックミキサエレメントが設置されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の流体混合器。
【請求項12】
前記スタティックミキサエレメントは、流路軸心回りで所定角度ずつ交互に逆回りで捻られた複数の捻り板が、直列に連結されてなることを特徴とする請求項11に記載の流体混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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