流体管の移動防止装置
【課題】重複爪構造に供される抜止め部材の組み立てミスを防止できるようにした流体管の移動防止装置を提供する。
【解決手段】環状のハウジング7が有する収容溝9には、周方向の両側に張り出して爪8Aが形成された張出部60Aを有する抜止め部材6Aと、周方向の両側に張り出して爪8Bが形成された張出部60Bを有する抜止め部材6Bとが収容されている。セット状態では、その爪8Aと爪8Bとが管軸方向に互いに重なるように配置される。抜止め部材6Aとそれに隣接した抜止め部材6Bとの間には仕切壁20が介在しており、その仕切壁20は、抜止め部材6Aに面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、張出部60Aと管軸方向に対向する突部21と、抜止め部材6Bに面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、張出部60Bと管軸方向に対向する突部22とを有する。
【解決手段】環状のハウジング7が有する収容溝9には、周方向の両側に張り出して爪8Aが形成された張出部60Aを有する抜止め部材6Aと、周方向の両側に張り出して爪8Bが形成された張出部60Bを有する抜止め部材6Bとが収容されている。セット状態では、その爪8Aと爪8Bとが管軸方向に互いに重なるように配置される。抜止め部材6Aとそれに隣接した抜止め部材6Bとの間には仕切壁20が介在しており、その仕切壁20は、抜止め部材6Aに面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、張出部60Aと管軸方向に対向する突部21と、抜止め部材6Bに面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、張出部60Bと管軸方向に対向する突部22とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管の移動防止装置として、特許文献1には、図14に示すような押輪(連結用環)が記載されている。この押輪34は、ハウジング37の収容溝39内に抜止め部材36を収容しており、図14では、抜止め部材36の爪38が流体管Pの外周面に係止可能なセット状態を示している。図15は、運搬時や外嵌作業開始時などの初期状態を示しており、押輪34を流体管Pに外嵌装着した後、押ボルト31で抜止め部材36を押し込むことにより図14のセット状態に移行する。保持ピース32は、抜止め部材36を収容溝39から脱落しないように保持する。
【0003】
図16は、矢印方向Fへの外力が流体管Pに作用したときの負荷状態を示す。セット状態から流体管Pが矢印方向Fに移動しようとすると、抜止め部材36の外周に形成された傾斜面が押ボルト31の先端に強く押し当たり、抜止め部材36を流体管P側に押圧する力が働いて爪38が強固に食い込み、流体管Pの管軸方向への移動を防止することができる。このときの抜止め部材36の移動代Mは、セット状態における抜止め部材36の側面と、それに対向する収容溝39の内壁面との間隔に基づいて定まる。
【0004】
また、本出願人による特許文献2では、隣り合う抜止め部材の爪同士がセット状態において管軸方向に重なるように配置される、重複爪構造を備えた流体管の移動防止装置が提案されている。この構造によれば、流体管の外周面に対する爪の接触領域を増大させて、移動防止効果を格段に向上することができる。図17では、管軸方向に間隔を設けて配置された二本の爪48A,48Bを有する二種の抜止め部材46A,46Bが交互に並んでおり、セット状態にすると、これらの爪同士が接近して、抜止め部材46Aの爪48Aと抜止め部材46Bの爪48Bとが管軸方向に重なるように配置される。
【0005】
ところで、この装置の製造工程では、ハウジング47が有する環状の収容溝49に抜止め部材46Aと抜止め部材46Bを押し込んで装着するに際し、異なる種類の抜止め部材を隣接させる必要があるが、実際の製造現場においては、同じ種類の抜止め部材を隣接させて組み立ててしまうことがあった。このような組み立てミスを生じると、流体管の外周面に抜止め部材を近付けてセット状態に移行するときに、爪48A同士または爪48B同士が干渉し、所定の位置に爪を配置できないという弊害を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4−39507号公報
【特許文献2】特開2008−309186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重複爪構造に供される抜止め部材の組み立てミスを防止できるようにした流体管の移動防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る流体管の移動防止装置は、流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置において、前記流体管の周方向の複数箇所に配設され、前記流体管の外周面に食い込み可能な爪を有する複数の抜止め部材と、前記流体管の外周面に向けて開口した収容溝を有し、その収容溝内に前記抜止め部材を収容する環状のハウジングとを備え、複数の前記抜止め部材が、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向一方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第1の抜止め部材と、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向他方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第2の抜止め部材とを含み、前記第1の抜止め部材の張出部に形成された爪と、その第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材の張出部に形成された爪とが、それぞれ前記流体管の外周面に係止可能な状態で、管軸方向に互いに重なるように配置され、前記ハウジングに、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材とその第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材との間に介在する仕切壁が設けられており、前記仕切壁が、前記第1の抜止め部材に面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第1の突部と、前記第2の抜止め部材に面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第2の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第2の突部とを有するものである。
【0009】
本発明に係る流体管の移動防止装置では、その製造工程において、ハウジングの収容溝に抜止め部材を押し込んで装着する際、第1の抜止め部材を収容するべき箇所に第2の抜止め部材を収容しようとすると、その第2の抜止め部材の張出部が仕切壁の第1の突部に干渉する。また逆に、第2の抜止め部材を収容するべき箇所に第1の抜止め部材を収容しようとすると、その第1の抜止め部材の張出部が仕切壁の第2の突部に干渉する。このため、同じ種類の抜止め部材を隣接させることができず、組み立てミスの発生を防止できる。
【0010】
この装置は、抜止め部材の爪が流体管の外周面に係止可能な状態で、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重なるように配置される、いわゆる重複爪構造を備えるため、抜止め部材を流体管の外周面に近付ける過程で、隣り合う抜止め部材の爪同士が接近することになる。それ故、前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されていることが好ましく、それによって流体管の外周面に近付けた抜止め部材の爪が仕切壁に干渉することを避けるとともに、仕切壁の厚みを確保して十分な強度を保持することができる。
【0011】
これに対して、仕切壁の頂面をハウジングの内周面に揃える場合には、抜止め部材の爪が仕切壁に干渉することがないように、仕切壁の頂部を肉薄の先細り形状にする必要が生じ、十分な強度を確保できない場合がある。また、前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されている場合には、抜止め部材を収容溝の奥に押し入れた状態において、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重ねて配置される構造を簡単に実現できる。このような構造でも、組み立てミスの防止によって作業効率が高められるため、本発明が有用となる。
【0012】
本発明では、前記第1の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第1の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成され、前記第2の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第2の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成されているものが好ましい。上記構成によれば、収容溝に収容した抜止め部材の姿勢が崩れることが抑えられるため、流体管の外周面に係止可能な状態における爪の位置決め精度を向上し、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重なるように的確に配置することができる。
【0013】
本発明では、前記仕切壁が、前記ハウジングと一体的に成形されているものが好ましい。これにより、ハウジングに仕切壁を簡便に具備することができる。また、流体管が管軸方向に移動しようとするときには、収容溝の溝幅を拡げる方向の外力が作用するが、ハウジングと一体的に仕切壁を設けることによって、その外力に対するハウジング自体の強度が高められ、ハウジングの割れなどの発生を抑制できる。
【0014】
本発明では、前記流体管の移動方向を向いた前記抜止め部材の第1側面に取り付けられた弾性部材と、前記第1側面の反対側を向いた前記抜止め部材の第2側面に取り付けられた保持部材とを備え、初期状態から前記抜止め部材の爪が前記流体管の外周面に係止可能なセット状態に至る過程で、前記第2側面に対向する前記収容溝の内壁面に前記保持部材が当接しつつ、前記第1側面とそれに対向する前記収容溝の内壁面との間隔が前記弾性部材を介して保持されるものが好ましい。
【0015】
かかる構成では、初期状態からセット状態に至る過程で、抜止め部材の第2側面に対向する収容溝の内壁面に保持部材が接当しつつ、抜止め部材の第1側面とそれに対向する収容溝の内壁面との間隔が弾性部材を介して保持されるため、抜止め部材の押込み量や収容溝の溝幅に左右されることなく抜止め部材の移動代が定まる。その結果、抜止め部材の移動代のばらつきを抑えて、流体管の移動防止効果を安定的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る流体管の移動防止装置の一例である押輪を装着した管継手の断面図
【図2】押輪を管軸方向から見た断面図
【図3】押輪の斜視図
【図4】押輪の内周面を示す展開図
【図5】初期状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図6】セット状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図7】負荷状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図8】押輪に抜止め部材を装着する前の状態を示す斜視図
【図9】押輪の斜視断面図
【図10】押輪に抜止め部材を装着する前の状態を示す斜視断面図
【図11】本発明の別実施形態における押輪の(A)要部断面図と(B)内周面の展開図
【図12】抜止め部材の後方側面を示す図
【図13】抜止め部材の前方側面を示す図
【図14】特許文献1に記載された押輪のセット状態における(A)要部断面図、(B)D−D断面図、及び、(C)E−E断面図
【図15】初期状態におけるD−D断面図
【図16】負荷状態におけるD−D断面図
【図17】特許文献2に記載された装置の初期状態におけるハウジングの内周面を示す展開図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る流体管の移動防止装置を押輪に適用した例を示す。
【0018】
図1は、流体管の移動防止装置としての押輪4を装着した管継手の断面図である。図2は、その押輪4を管軸方向から見た断面図であり、これのA−A断面が図1に相当する。図3は、押輪4の斜視図である。この管継手では、水道管の受口部1に、ダクタイル鋳鉄製の水道管P(流体管の一例)の挿口部2が挿入接続されており、その水道管Pに外嵌装着された押輪4によって、水道管Pの管軸方向への移動を防ぎ、延いては受口部1からの挿口部2の離脱を阻止可能に構成されている。
【0019】
押輪4は、挿通孔50に挿通された複数本のT頭ボルト51と、そのT頭ボルト51に締結されたナット52とからなる締結具によって、受口部1のフランジ1aに連結されている。押輪4は、ナット52の締め付けに伴ってフランジ1aに引き寄せられ、シール材3を管軸方向から圧縮する。受口部1の内周面と挿口部2の外周面2aとの間は、シール材3により密封されている。押輪4は、水道管Pの周方向の複数箇所(本実施形態では四箇所)に配設された抜止め部材6と、環状のハウジング7とを備えている。
【0020】
抜止め部材6は、水道管Pの外周面2aに食い込み可能な爪8A,8Bを有する。押ボルト10の先端が対向する抜止め部材6の外周面には、管軸方向に沿って外径が変化する傾斜面63が形成されており、その傾斜面63の外径が大きくなる前方側(図1の右側)に前方爪8Aが形成され、傾斜面63の外径が小さくなる後方側(図1の左側)に後方爪8Bが形成されている。本実施形態では、抜止め部材6が二本の爪8A,8Bを有しているが、抜止め部材6が有する爪の本数は一本または三本以上であっても構わない。
【0021】
前方爪8Aと後方爪8Bとは、管軸方向に間隔を設けて配置され、それぞれ先端が外周面2aに沿って弧状に湾曲しつつ、断面三角形状をなして抜止め部材6の内周面に突設されている。抜止め部材6は、金属のような堅牢な材料で作製され、具体的には鋳鉄が例示される。本実施形態では、抜止め部材6として、図2,4に示すように抜止め部材6A(第1の抜止め部材)と抜止め部材6B(第2の抜止め部材)の二種を採用し、それらを交互に配置して周方向に隣り合わせている。
【0022】
抜止め部材6Aは、周方向の両側に張り出した張出部60Aを内周面の前方側(管軸方向一方側)に有し、その張出部60Aに前方爪8Aが形成されている。また、抜止め部材6Bは、周方向の両側に張り出した張出部60Bを内周面の後方側(管軸方向他方側)に有し、その張出部60Bに後方爪8Bが形成されている。この押輪4は重複爪構造を備えており、抜止め部材6Aの前方爪8Aと、その抜止め部材6Aに隣接した抜止め部材6Bの後方爪8Bとは、それぞれが水道管Pの外周面に係止可能な状態において、管軸方向に互いに重なるように配置される。
【0023】
ハウジング7は、水道管Pの外周面2aに向けて開口した収容溝9を有し、その収容溝9内に抜止め部材6を収容している。収容溝9には、抜止め部材6を外周面2aに向かって押圧する押圧部材としての押ボルト10が取り付けられており、その押ボルト10の操作によって抜止め部材6を押し込み可能に構成されている。本実施形態では、ハウジング7が環状に一体的に成形されている例を示すが、これに代えて分割構造としてもよく、その場合には、複数の分割片の周端を互いに組み付けることで環状に形成される。
【0024】
図4,5は、出荷運搬時や水道管Pへの外嵌作業開始時などの、抜止め部材6を収容溝9の奥に押し入れた初期状態を示しており、爪8A,8Bは水道管Pの外周面2aに係止しない。押輪4を水道管Pに外嵌装着した後、押ボルト10を操作して抜止め部材6を押し込むと、図6のように収容溝9から前方爪8Aと後方爪8Bが突出して外周面2aに係止可能なセット状態となる。図1,2もセット状態を示している。セット状態における爪8A,8Bは、外周面2aに引っ掛かるものであればよく、外周面2aに少し食い込んでいても構わない。
【0025】
セット状態の水道管Pに矢印方向Fの外力(後方側への外力)が作用すると、図7のように抜止め部材6が同方向に移動し、押ボルト10の先端に傾斜面63が押し当たって楔効果を発揮する。これにより、抜止め部材6を外周面2aに向かって押圧する力が働いて爪8A,8Bが強固に食い込み、抜止め部材6による抜止め作用を高めて、水道管Pの移動を防止することができる。尚、水道管Pを前方側へ移動させる外力が作用しても、挿口部2の先端が受口部1の内面に当接するために特段の不都合は生じない。
【0026】
図4に示す初期状態では、抜止め部材8Aの前方爪8Aと抜止め部材8Bの後方爪8Bとが管軸方向に重なって配置されておらず、仕切壁20によって完全に仕切られている。この抜止め部材6A,6Bを押ボルト10で押圧してセット状態へ移行すると、隣り合う抜止め部材6A,6Bが互いに接近し、抜止め部材8Aの前方爪8Aと抜止め部材8Bの後方爪8Bとが管軸方向に重なって配置される。
【0027】
かかる重複爪構造によれば、外周面2aに対する爪の接触領域の周長を増やして、水道管Pの移動防止効果を高めることができる。また、このような重複爪構造においては、抜止め部材6の移動代のばらつきに応じて、周方向に隣り合う抜止め部材6同士で爪が干渉する恐れが生じるものの、本実施形態では、後述するように抜止め部材6の移動代Mを均一にできるため、かかる不具合を防止することができる。
【0028】
図2〜4,8〜10に示すように、ハウジング7には、収容溝9内に収容された抜止め部材6Aとその抜止め部材6Aに隣接した抜止め部材6Bとの間に介在する仕切壁20が設けられている。仕切壁20は、抜止め部材6Aに面する側壁の後方側(管軸方向他方側)を周方向に突出させてなり、収容溝9内に収容された抜止め部材6Aの張出部60Aと管軸方向に対向する突部21(第1の突部)と、抜止め部材6Bに面する側壁の前方側(管軸方向一方側)を周方向に突出させてなり、収容溝9内に収容された抜止め部材6Bの張出部60Bと管軸方向に対向する突部22(第2の突部)とを有する。
【0029】
押輪4の製造工程において、収容溝9に抜止め部材6を押し込んで装着する際、抜止め部材6Aを収容するべき箇所に抜止め部材6Bを収容しようとすると、その抜止め部材6Bの張出部60Bが仕切壁20の突部21に干渉する。また逆に、抜止め部材6Bを収容するべき箇所に抜止め部材6Aを収容しようとすると、その抜止め部材6Aの張出部60Aが仕切壁20の突部22に干渉する。このため、同じ種類の抜止め部材を隣接させることができず、組み立てミスの発生を防止できる。
【0030】
仕切壁20の頂面20aは、ハウジング7の内周面よりも径方向外側に設定されている。これにより、外周面2aに近付いた抜止め部材6の爪8A,8Bが仕切壁20に干渉することを避けるとともに、仕切壁20の厚みを確保して十分な強度を保持することができる。また、仕切壁20には、周方向の両側に突部21,22が設けられていることから、それによる補強効果も見込まれる。仕切壁20は、例えば鋳造によって、ハウジング7と一体的に成形されている。
【0031】
また、頂面20aがハウジング7の内周面よりも径方向外側に設定されていることにより、図11に示すように、初期状態において、隣り合う抜止め部材6A,6Bの爪同士が管軸方向に重ねて配置される構造を比較的簡単に実現できる。抜止め部材6A,6Bの間に介在する仕切壁25には、その根元側において張出部60Aに対向する突部26と、張出部60Bに対向する突部27が形成されており、既述のように組み立てミスを防止できるようになっている。かかる重複爪構造においても、組み立てミスの防止によって作業効率が高められることから、本発明が有用となる。
【0032】
図8,10に示すように、突部21が形成された仕切壁20の側壁には、径方向外側に向かって抜止め部材6A側に傾斜した傾斜面21aが形成され、突部22が形成された仕切壁20の側壁には、径方向外側に向かって抜止め部材6B側に傾斜した傾斜面22aが形成されている。これらの傾斜面21a,22aには、初期状態にある抜止め部材6の側面が面接触し、収容溝9に収容した抜止め部材6の姿勢が崩れることが抑えられる。これにより、爪8A,8Bの位置決め精度を向上して、隣り合う抜止め部材6A,6Bの爪同士が管軸方向に重なるように的確に配置できる。
【0033】
本実施形態の押輪4は、抜止め部材6の後方側面61(第1側面に相当)に取り付けられた弾性部材11と、抜止め部材6の前方側面62(第2側面に相当)に取り付けられた保持部材12とを備えており、初期状態からセット状態に至る過程で、前方側面62に対向する収容溝9の内壁面92に保持部材12が接当しつつ、後方側面61とそれに対向する収容溝9の内壁面91との間隔が弾性部材11を介して保持されるように構成されている。
【0034】
図12に示すように、弾性部材11は、水道管Pの移動方向となる後方側を向いた抜止め部材6の後方側面61に取り付けられている。本実施形態では、弾性部材11が、シート状に形成され、抜止め部材6の周方向における中央部と両端部の三箇所に取り付けられている。弾性部材11は、ゴムなどの弾性材料により形成され、保持部材12よりも硬質であることが好ましい。後方側面61への取り付けには、接着剤や粘着剤による貼着、ゴムの焼き付け、ライニング等が利用できる。
【0035】
図13に示すように、保持部材12は、後方側面61の反対側を向いた抜止め部材6の前方側面62に取り付けられている。本実施形態では、保持部材12がシート状に形成され、その周方向の両端部が中央部よりも肉厚であって、該肉厚部分の下部に突起が設けられている(図7(B)参照)。保持部材12は、例えばゴムやウレタンで形成され、特に限定されないが、弾性材料により形成されることが好ましい。前方側面62への取り付けには、上記した貼着や焼き付け、ライニング等が利用できる。
【0036】
図5に示す初期状態において、保持部材12は、収容溝9の内壁面91に弾性部材11を接当させた抜止め部材6と、その抜止め部材6の前方側面62に対向する収容溝9の内壁面92との間に介在し、抜止め部材6を内壁面91に向けて付勢して、収容溝9から脱落しないように保持する。即ち、抜止め部材6は、弾性部材11と保持部材12を介して、収容溝9の内壁面91,92の間に挟まされた状態で仮止めされてある。
【0037】
初期状態では、後方側面61に対向する内壁面91に弾性部材11が圧縮代を残して接当するとともに、前方側面62に対向する内壁面92に保持部材12が接当し、後方側面61と内壁面91との間に間隔Dが設けられている。抜止め部材6は、保持部材12により内壁面91に向けて付勢され、これにより内壁面91に接当する弾性部材11の厚みに対応したサイズで間隔Dが設けられる。図6に示す管へのセット状態においても、弾性部材11が内壁面91に接当しつつ、保持部材12が内壁面92に接当し、やはり弾性部材11の厚みに対応した間隔Dが設けられる。
【0038】
図7に示す負荷状態では、水道管Pと一緒に抜止め部材6が矢印方向Fに移動する。このときの抜止め部材6の移動代Mは、セット状態における間隔Dに基づいて定まり、より正確には、負荷状態における弾性部材11の厚み分を間隔Dから差し引いた距離が移動代Mに相当する。
【0039】
この押輪4では、初期状態からセット状態に至る過程で、押ボルト10が抜止め部材6を斜め方向に押し込むものの、収容溝9の内壁面92に保持部材12が接当しつつ、弾性部材11を介して間隔Dが一定に保持されるため、抜止め部材6の押込み量や収容溝9の溝幅に左右されることなく、抜止め部材6の移動代Mが定まる。
【0040】
その結果、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えて、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮することができる。即ち、抜止め部材6の各々の押込み量が互いに異なる場合や、ハウジング7が鋳物(例えば鋳鉄製)であって寸法公差が大きい場合であっても、移動代Mのばらつきを抑えて、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮でき、特に水道管Pに強大な外力が作用したときの極限性能の向上に資することができる。
【0041】
これに対し、上述した従来構造では、初期状態における抜止め部材36と収容溝39との間隔D(図15)が移動代M(図14)よりも小さく、初期状態の間隔Dが抜止め部材36の押し込みに伴って拡がり、セット状態で移動代Mとなる。このため、抜止め部材36の押込み量に応じて移動代Mがばらつくという問題がある。また、押込み量が一定であっても、収容溝39の溝幅に応じて移動代Mが変化しうるため、ハウジング37が寸法公差の大きい鋳物である場合には特に、移動代Mがばらつきやすい。
【0042】
弾性部材11は、少なくとも抜止め部材6の周方向における中央部と両端部に取り付けることが好ましく、それによって、初期状態からセット状態、更には負荷状態に移行する過程で、抜止め部材6が弾性部材11を介して内壁面91にバランス良く押し当たり、移動代Mのばらつきを効果的に抑えられるとともに、抜止め部材6に負荷が局部的に集中しないため、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮できる。本実施形態では上記の3箇所に弾性部材11を取り付けているが、これらを含む後方側面61の略全域に取り付けても構わない。
【0043】
収容溝9の内壁面92には段部92aが形成されており、図5に示した初期状態では、この段部92aに保持部材12が係合している。かかる構成によれば、初期状態において抜止め部材6を的確に位置決めできるため、抜止め部材6の落下が防止できるとともに、後方側面61と収容溝9の内壁面91との間隔をより精度良く保持して、抜止め部材6の移動代のばらつきを効果的に抑えられる。
【0044】
また、本実施形態では、初期状態において保持部材12に設けた突起が段部92aと係合するため、内壁面92に対して保持部材12を堅固に係合させて、初期状態にある保持部材12の位置決め精度を高めることができる。尚、保持部材12の肉厚部分の上部に突起を設けておき、その突起がセット状態で段部92aと係合するように構成してもよく、その場合には、セット状態おける抜止め部材6を的確に位置決めして間隔Dをより精度良く保持し、移動代Mのばらつきを有効に抑えることができる。
【0045】
[他の実施形態]
(1)本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、張出部により段差状に形成された抜止め部材の両端部に沿うようにして、仕切壁の側壁を突部により段差状に形成した例を示したが、これに限られるものではなく、上記の如く抜止め部材の組み立てミスを防止できるものであれば、突部の形状やサイズは適宜に変更可能である。
【0046】
(2)本発明に係る流体管の移動防止装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、押輪以外の種々の製品への適用が可能である。例えば、本発明に係る流体管の移動防止装置をスリップオンタイプの管継手に適用し、管の受口部でハウジングを構成してもよい。その場合、受口部の内周面に形成された収容溝に抜止め部材が収容され、セット状態においては、その抜止め部材の爪が、受口部に挿入した流体管の挿口部の外周面に係止可能に配置される。
【0047】
或いは、管継手の挿口部を取り囲んで装着され、受口部から挿口部が抜け出す力が働いた際に受口部のフランジに係合するフックを持つ補強金具(例えば、特開平10−122466号公報参照)や、流体管を取り囲んで装着される不平均力の支持装置(例えば、特開2002−243066号公報参照)に、本発明に係る流体管の移動防止装置を適用し、それらが備える環状の本体でハウジングを構成することも可能である。
【0048】
(3)前述の実施形態では、ハウジングに取り付けた押ボルトによって抜止め部材を押圧する例を示したが、このような押圧部材を省略しても構わない。例えば、ハウジングを周方向の複数箇所で分割し、その分割片の周端同士を締結具で連結する構造にすれば、締結具の締め付けによってハウジングが縮径することから、収容溝の外周壁で抜止め部材を押圧することが可能となる。
【0049】
(4)本発明において、流体管は、水道管に限定されるものではなく、各種の液体や気体が流れる流体管であってよい。
【符号の説明】
【0050】
1 受口部
2 挿口部
2a 外周面
3 シール材
4 押輪
6A 第1の抜止め部材
6B 第2の抜止め部材
7 ハウジング
8A 前方爪
8A 後方爪
9 収容溝
10 押ボルト
11 弾性部材
12 保持部材
20 仕切壁
20a 頂面
21 第1の突部
21a 傾斜面
22 第2の突部
22a 傾斜面
60A 張出部
60B 張出部
61 後方側面(第1側面)
62 前方側面(第2側面)
63 傾斜面
P 水道管(流体管の一例)
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管の移動防止装置として、特許文献1には、図14に示すような押輪(連結用環)が記載されている。この押輪34は、ハウジング37の収容溝39内に抜止め部材36を収容しており、図14では、抜止め部材36の爪38が流体管Pの外周面に係止可能なセット状態を示している。図15は、運搬時や外嵌作業開始時などの初期状態を示しており、押輪34を流体管Pに外嵌装着した後、押ボルト31で抜止め部材36を押し込むことにより図14のセット状態に移行する。保持ピース32は、抜止め部材36を収容溝39から脱落しないように保持する。
【0003】
図16は、矢印方向Fへの外力が流体管Pに作用したときの負荷状態を示す。セット状態から流体管Pが矢印方向Fに移動しようとすると、抜止め部材36の外周に形成された傾斜面が押ボルト31の先端に強く押し当たり、抜止め部材36を流体管P側に押圧する力が働いて爪38が強固に食い込み、流体管Pの管軸方向への移動を防止することができる。このときの抜止め部材36の移動代Mは、セット状態における抜止め部材36の側面と、それに対向する収容溝39の内壁面との間隔に基づいて定まる。
【0004】
また、本出願人による特許文献2では、隣り合う抜止め部材の爪同士がセット状態において管軸方向に重なるように配置される、重複爪構造を備えた流体管の移動防止装置が提案されている。この構造によれば、流体管の外周面に対する爪の接触領域を増大させて、移動防止効果を格段に向上することができる。図17では、管軸方向に間隔を設けて配置された二本の爪48A,48Bを有する二種の抜止め部材46A,46Bが交互に並んでおり、セット状態にすると、これらの爪同士が接近して、抜止め部材46Aの爪48Aと抜止め部材46Bの爪48Bとが管軸方向に重なるように配置される。
【0005】
ところで、この装置の製造工程では、ハウジング47が有する環状の収容溝49に抜止め部材46Aと抜止め部材46Bを押し込んで装着するに際し、異なる種類の抜止め部材を隣接させる必要があるが、実際の製造現場においては、同じ種類の抜止め部材を隣接させて組み立ててしまうことがあった。このような組み立てミスを生じると、流体管の外周面に抜止め部材を近付けてセット状態に移行するときに、爪48A同士または爪48B同士が干渉し、所定の位置に爪を配置できないという弊害を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4−39507号公報
【特許文献2】特開2008−309186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重複爪構造に供される抜止め部材の組み立てミスを防止できるようにした流体管の移動防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係る流体管の移動防止装置は、流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置において、前記流体管の周方向の複数箇所に配設され、前記流体管の外周面に食い込み可能な爪を有する複数の抜止め部材と、前記流体管の外周面に向けて開口した収容溝を有し、その収容溝内に前記抜止め部材を収容する環状のハウジングとを備え、複数の前記抜止め部材が、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向一方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第1の抜止め部材と、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向他方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第2の抜止め部材とを含み、前記第1の抜止め部材の張出部に形成された爪と、その第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材の張出部に形成された爪とが、それぞれ前記流体管の外周面に係止可能な状態で、管軸方向に互いに重なるように配置され、前記ハウジングに、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材とその第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材との間に介在する仕切壁が設けられており、前記仕切壁が、前記第1の抜止め部材に面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第1の突部と、前記第2の抜止め部材に面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第2の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第2の突部とを有するものである。
【0009】
本発明に係る流体管の移動防止装置では、その製造工程において、ハウジングの収容溝に抜止め部材を押し込んで装着する際、第1の抜止め部材を収容するべき箇所に第2の抜止め部材を収容しようとすると、その第2の抜止め部材の張出部が仕切壁の第1の突部に干渉する。また逆に、第2の抜止め部材を収容するべき箇所に第1の抜止め部材を収容しようとすると、その第1の抜止め部材の張出部が仕切壁の第2の突部に干渉する。このため、同じ種類の抜止め部材を隣接させることができず、組み立てミスの発生を防止できる。
【0010】
この装置は、抜止め部材の爪が流体管の外周面に係止可能な状態で、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重なるように配置される、いわゆる重複爪構造を備えるため、抜止め部材を流体管の外周面に近付ける過程で、隣り合う抜止め部材の爪同士が接近することになる。それ故、前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されていることが好ましく、それによって流体管の外周面に近付けた抜止め部材の爪が仕切壁に干渉することを避けるとともに、仕切壁の厚みを確保して十分な強度を保持することができる。
【0011】
これに対して、仕切壁の頂面をハウジングの内周面に揃える場合には、抜止め部材の爪が仕切壁に干渉することがないように、仕切壁の頂部を肉薄の先細り形状にする必要が生じ、十分な強度を確保できない場合がある。また、前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されている場合には、抜止め部材を収容溝の奥に押し入れた状態において、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重ねて配置される構造を簡単に実現できる。このような構造でも、組み立てミスの防止によって作業効率が高められるため、本発明が有用となる。
【0012】
本発明では、前記第1の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第1の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成され、前記第2の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第2の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成されているものが好ましい。上記構成によれば、収容溝に収容した抜止め部材の姿勢が崩れることが抑えられるため、流体管の外周面に係止可能な状態における爪の位置決め精度を向上し、隣り合う抜止め部材の爪同士が管軸方向に重なるように的確に配置することができる。
【0013】
本発明では、前記仕切壁が、前記ハウジングと一体的に成形されているものが好ましい。これにより、ハウジングに仕切壁を簡便に具備することができる。また、流体管が管軸方向に移動しようとするときには、収容溝の溝幅を拡げる方向の外力が作用するが、ハウジングと一体的に仕切壁を設けることによって、その外力に対するハウジング自体の強度が高められ、ハウジングの割れなどの発生を抑制できる。
【0014】
本発明では、前記流体管の移動方向を向いた前記抜止め部材の第1側面に取り付けられた弾性部材と、前記第1側面の反対側を向いた前記抜止め部材の第2側面に取り付けられた保持部材とを備え、初期状態から前記抜止め部材の爪が前記流体管の外周面に係止可能なセット状態に至る過程で、前記第2側面に対向する前記収容溝の内壁面に前記保持部材が当接しつつ、前記第1側面とそれに対向する前記収容溝の内壁面との間隔が前記弾性部材を介して保持されるものが好ましい。
【0015】
かかる構成では、初期状態からセット状態に至る過程で、抜止め部材の第2側面に対向する収容溝の内壁面に保持部材が接当しつつ、抜止め部材の第1側面とそれに対向する収容溝の内壁面との間隔が弾性部材を介して保持されるため、抜止め部材の押込み量や収容溝の溝幅に左右されることなく抜止め部材の移動代が定まる。その結果、抜止め部材の移動代のばらつきを抑えて、流体管の移動防止効果を安定的に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る流体管の移動防止装置の一例である押輪を装着した管継手の断面図
【図2】押輪を管軸方向から見た断面図
【図3】押輪の斜視図
【図4】押輪の内周面を示す展開図
【図5】初期状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図6】セット状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図7】負荷状態における図4の(A)B−B断面図と(B)C−C断面図
【図8】押輪に抜止め部材を装着する前の状態を示す斜視図
【図9】押輪の斜視断面図
【図10】押輪に抜止め部材を装着する前の状態を示す斜視断面図
【図11】本発明の別実施形態における押輪の(A)要部断面図と(B)内周面の展開図
【図12】抜止め部材の後方側面を示す図
【図13】抜止め部材の前方側面を示す図
【図14】特許文献1に記載された押輪のセット状態における(A)要部断面図、(B)D−D断面図、及び、(C)E−E断面図
【図15】初期状態におけるD−D断面図
【図16】負荷状態におけるD−D断面図
【図17】特許文献2に記載された装置の初期状態におけるハウジングの内周面を示す展開図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る流体管の移動防止装置を押輪に適用した例を示す。
【0018】
図1は、流体管の移動防止装置としての押輪4を装着した管継手の断面図である。図2は、その押輪4を管軸方向から見た断面図であり、これのA−A断面が図1に相当する。図3は、押輪4の斜視図である。この管継手では、水道管の受口部1に、ダクタイル鋳鉄製の水道管P(流体管の一例)の挿口部2が挿入接続されており、その水道管Pに外嵌装着された押輪4によって、水道管Pの管軸方向への移動を防ぎ、延いては受口部1からの挿口部2の離脱を阻止可能に構成されている。
【0019】
押輪4は、挿通孔50に挿通された複数本のT頭ボルト51と、そのT頭ボルト51に締結されたナット52とからなる締結具によって、受口部1のフランジ1aに連結されている。押輪4は、ナット52の締め付けに伴ってフランジ1aに引き寄せられ、シール材3を管軸方向から圧縮する。受口部1の内周面と挿口部2の外周面2aとの間は、シール材3により密封されている。押輪4は、水道管Pの周方向の複数箇所(本実施形態では四箇所)に配設された抜止め部材6と、環状のハウジング7とを備えている。
【0020】
抜止め部材6は、水道管Pの外周面2aに食い込み可能な爪8A,8Bを有する。押ボルト10の先端が対向する抜止め部材6の外周面には、管軸方向に沿って外径が変化する傾斜面63が形成されており、その傾斜面63の外径が大きくなる前方側(図1の右側)に前方爪8Aが形成され、傾斜面63の外径が小さくなる後方側(図1の左側)に後方爪8Bが形成されている。本実施形態では、抜止め部材6が二本の爪8A,8Bを有しているが、抜止め部材6が有する爪の本数は一本または三本以上であっても構わない。
【0021】
前方爪8Aと後方爪8Bとは、管軸方向に間隔を設けて配置され、それぞれ先端が外周面2aに沿って弧状に湾曲しつつ、断面三角形状をなして抜止め部材6の内周面に突設されている。抜止め部材6は、金属のような堅牢な材料で作製され、具体的には鋳鉄が例示される。本実施形態では、抜止め部材6として、図2,4に示すように抜止め部材6A(第1の抜止め部材)と抜止め部材6B(第2の抜止め部材)の二種を採用し、それらを交互に配置して周方向に隣り合わせている。
【0022】
抜止め部材6Aは、周方向の両側に張り出した張出部60Aを内周面の前方側(管軸方向一方側)に有し、その張出部60Aに前方爪8Aが形成されている。また、抜止め部材6Bは、周方向の両側に張り出した張出部60Bを内周面の後方側(管軸方向他方側)に有し、その張出部60Bに後方爪8Bが形成されている。この押輪4は重複爪構造を備えており、抜止め部材6Aの前方爪8Aと、その抜止め部材6Aに隣接した抜止め部材6Bの後方爪8Bとは、それぞれが水道管Pの外周面に係止可能な状態において、管軸方向に互いに重なるように配置される。
【0023】
ハウジング7は、水道管Pの外周面2aに向けて開口した収容溝9を有し、その収容溝9内に抜止め部材6を収容している。収容溝9には、抜止め部材6を外周面2aに向かって押圧する押圧部材としての押ボルト10が取り付けられており、その押ボルト10の操作によって抜止め部材6を押し込み可能に構成されている。本実施形態では、ハウジング7が環状に一体的に成形されている例を示すが、これに代えて分割構造としてもよく、その場合には、複数の分割片の周端を互いに組み付けることで環状に形成される。
【0024】
図4,5は、出荷運搬時や水道管Pへの外嵌作業開始時などの、抜止め部材6を収容溝9の奥に押し入れた初期状態を示しており、爪8A,8Bは水道管Pの外周面2aに係止しない。押輪4を水道管Pに外嵌装着した後、押ボルト10を操作して抜止め部材6を押し込むと、図6のように収容溝9から前方爪8Aと後方爪8Bが突出して外周面2aに係止可能なセット状態となる。図1,2もセット状態を示している。セット状態における爪8A,8Bは、外周面2aに引っ掛かるものであればよく、外周面2aに少し食い込んでいても構わない。
【0025】
セット状態の水道管Pに矢印方向Fの外力(後方側への外力)が作用すると、図7のように抜止め部材6が同方向に移動し、押ボルト10の先端に傾斜面63が押し当たって楔効果を発揮する。これにより、抜止め部材6を外周面2aに向かって押圧する力が働いて爪8A,8Bが強固に食い込み、抜止め部材6による抜止め作用を高めて、水道管Pの移動を防止することができる。尚、水道管Pを前方側へ移動させる外力が作用しても、挿口部2の先端が受口部1の内面に当接するために特段の不都合は生じない。
【0026】
図4に示す初期状態では、抜止め部材8Aの前方爪8Aと抜止め部材8Bの後方爪8Bとが管軸方向に重なって配置されておらず、仕切壁20によって完全に仕切られている。この抜止め部材6A,6Bを押ボルト10で押圧してセット状態へ移行すると、隣り合う抜止め部材6A,6Bが互いに接近し、抜止め部材8Aの前方爪8Aと抜止め部材8Bの後方爪8Bとが管軸方向に重なって配置される。
【0027】
かかる重複爪構造によれば、外周面2aに対する爪の接触領域の周長を増やして、水道管Pの移動防止効果を高めることができる。また、このような重複爪構造においては、抜止め部材6の移動代のばらつきに応じて、周方向に隣り合う抜止め部材6同士で爪が干渉する恐れが生じるものの、本実施形態では、後述するように抜止め部材6の移動代Mを均一にできるため、かかる不具合を防止することができる。
【0028】
図2〜4,8〜10に示すように、ハウジング7には、収容溝9内に収容された抜止め部材6Aとその抜止め部材6Aに隣接した抜止め部材6Bとの間に介在する仕切壁20が設けられている。仕切壁20は、抜止め部材6Aに面する側壁の後方側(管軸方向他方側)を周方向に突出させてなり、収容溝9内に収容された抜止め部材6Aの張出部60Aと管軸方向に対向する突部21(第1の突部)と、抜止め部材6Bに面する側壁の前方側(管軸方向一方側)を周方向に突出させてなり、収容溝9内に収容された抜止め部材6Bの張出部60Bと管軸方向に対向する突部22(第2の突部)とを有する。
【0029】
押輪4の製造工程において、収容溝9に抜止め部材6を押し込んで装着する際、抜止め部材6Aを収容するべき箇所に抜止め部材6Bを収容しようとすると、その抜止め部材6Bの張出部60Bが仕切壁20の突部21に干渉する。また逆に、抜止め部材6Bを収容するべき箇所に抜止め部材6Aを収容しようとすると、その抜止め部材6Aの張出部60Aが仕切壁20の突部22に干渉する。このため、同じ種類の抜止め部材を隣接させることができず、組み立てミスの発生を防止できる。
【0030】
仕切壁20の頂面20aは、ハウジング7の内周面よりも径方向外側に設定されている。これにより、外周面2aに近付いた抜止め部材6の爪8A,8Bが仕切壁20に干渉することを避けるとともに、仕切壁20の厚みを確保して十分な強度を保持することができる。また、仕切壁20には、周方向の両側に突部21,22が設けられていることから、それによる補強効果も見込まれる。仕切壁20は、例えば鋳造によって、ハウジング7と一体的に成形されている。
【0031】
また、頂面20aがハウジング7の内周面よりも径方向外側に設定されていることにより、図11に示すように、初期状態において、隣り合う抜止め部材6A,6Bの爪同士が管軸方向に重ねて配置される構造を比較的簡単に実現できる。抜止め部材6A,6Bの間に介在する仕切壁25には、その根元側において張出部60Aに対向する突部26と、張出部60Bに対向する突部27が形成されており、既述のように組み立てミスを防止できるようになっている。かかる重複爪構造においても、組み立てミスの防止によって作業効率が高められることから、本発明が有用となる。
【0032】
図8,10に示すように、突部21が形成された仕切壁20の側壁には、径方向外側に向かって抜止め部材6A側に傾斜した傾斜面21aが形成され、突部22が形成された仕切壁20の側壁には、径方向外側に向かって抜止め部材6B側に傾斜した傾斜面22aが形成されている。これらの傾斜面21a,22aには、初期状態にある抜止め部材6の側面が面接触し、収容溝9に収容した抜止め部材6の姿勢が崩れることが抑えられる。これにより、爪8A,8Bの位置決め精度を向上して、隣り合う抜止め部材6A,6Bの爪同士が管軸方向に重なるように的確に配置できる。
【0033】
本実施形態の押輪4は、抜止め部材6の後方側面61(第1側面に相当)に取り付けられた弾性部材11と、抜止め部材6の前方側面62(第2側面に相当)に取り付けられた保持部材12とを備えており、初期状態からセット状態に至る過程で、前方側面62に対向する収容溝9の内壁面92に保持部材12が接当しつつ、後方側面61とそれに対向する収容溝9の内壁面91との間隔が弾性部材11を介して保持されるように構成されている。
【0034】
図12に示すように、弾性部材11は、水道管Pの移動方向となる後方側を向いた抜止め部材6の後方側面61に取り付けられている。本実施形態では、弾性部材11が、シート状に形成され、抜止め部材6の周方向における中央部と両端部の三箇所に取り付けられている。弾性部材11は、ゴムなどの弾性材料により形成され、保持部材12よりも硬質であることが好ましい。後方側面61への取り付けには、接着剤や粘着剤による貼着、ゴムの焼き付け、ライニング等が利用できる。
【0035】
図13に示すように、保持部材12は、後方側面61の反対側を向いた抜止め部材6の前方側面62に取り付けられている。本実施形態では、保持部材12がシート状に形成され、その周方向の両端部が中央部よりも肉厚であって、該肉厚部分の下部に突起が設けられている(図7(B)参照)。保持部材12は、例えばゴムやウレタンで形成され、特に限定されないが、弾性材料により形成されることが好ましい。前方側面62への取り付けには、上記した貼着や焼き付け、ライニング等が利用できる。
【0036】
図5に示す初期状態において、保持部材12は、収容溝9の内壁面91に弾性部材11を接当させた抜止め部材6と、その抜止め部材6の前方側面62に対向する収容溝9の内壁面92との間に介在し、抜止め部材6を内壁面91に向けて付勢して、収容溝9から脱落しないように保持する。即ち、抜止め部材6は、弾性部材11と保持部材12を介して、収容溝9の内壁面91,92の間に挟まされた状態で仮止めされてある。
【0037】
初期状態では、後方側面61に対向する内壁面91に弾性部材11が圧縮代を残して接当するとともに、前方側面62に対向する内壁面92に保持部材12が接当し、後方側面61と内壁面91との間に間隔Dが設けられている。抜止め部材6は、保持部材12により内壁面91に向けて付勢され、これにより内壁面91に接当する弾性部材11の厚みに対応したサイズで間隔Dが設けられる。図6に示す管へのセット状態においても、弾性部材11が内壁面91に接当しつつ、保持部材12が内壁面92に接当し、やはり弾性部材11の厚みに対応した間隔Dが設けられる。
【0038】
図7に示す負荷状態では、水道管Pと一緒に抜止め部材6が矢印方向Fに移動する。このときの抜止め部材6の移動代Mは、セット状態における間隔Dに基づいて定まり、より正確には、負荷状態における弾性部材11の厚み分を間隔Dから差し引いた距離が移動代Mに相当する。
【0039】
この押輪4では、初期状態からセット状態に至る過程で、押ボルト10が抜止め部材6を斜め方向に押し込むものの、収容溝9の内壁面92に保持部材12が接当しつつ、弾性部材11を介して間隔Dが一定に保持されるため、抜止め部材6の押込み量や収容溝9の溝幅に左右されることなく、抜止め部材6の移動代Mが定まる。
【0040】
その結果、抜止め部材6の移動代のばらつきを抑えて、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮することができる。即ち、抜止め部材6の各々の押込み量が互いに異なる場合や、ハウジング7が鋳物(例えば鋳鉄製)であって寸法公差が大きい場合であっても、移動代Mのばらつきを抑えて、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮でき、特に水道管Pに強大な外力が作用したときの極限性能の向上に資することができる。
【0041】
これに対し、上述した従来構造では、初期状態における抜止め部材36と収容溝39との間隔D(図15)が移動代M(図14)よりも小さく、初期状態の間隔Dが抜止め部材36の押し込みに伴って拡がり、セット状態で移動代Mとなる。このため、抜止め部材36の押込み量に応じて移動代Mがばらつくという問題がある。また、押込み量が一定であっても、収容溝39の溝幅に応じて移動代Mが変化しうるため、ハウジング37が寸法公差の大きい鋳物である場合には特に、移動代Mがばらつきやすい。
【0042】
弾性部材11は、少なくとも抜止め部材6の周方向における中央部と両端部に取り付けることが好ましく、それによって、初期状態からセット状態、更には負荷状態に移行する過程で、抜止め部材6が弾性部材11を介して内壁面91にバランス良く押し当たり、移動代Mのばらつきを効果的に抑えられるとともに、抜止め部材6に負荷が局部的に集中しないため、水道管Pの移動防止効果を安定的に発揮できる。本実施形態では上記の3箇所に弾性部材11を取り付けているが、これらを含む後方側面61の略全域に取り付けても構わない。
【0043】
収容溝9の内壁面92には段部92aが形成されており、図5に示した初期状態では、この段部92aに保持部材12が係合している。かかる構成によれば、初期状態において抜止め部材6を的確に位置決めできるため、抜止め部材6の落下が防止できるとともに、後方側面61と収容溝9の内壁面91との間隔をより精度良く保持して、抜止め部材6の移動代のばらつきを効果的に抑えられる。
【0044】
また、本実施形態では、初期状態において保持部材12に設けた突起が段部92aと係合するため、内壁面92に対して保持部材12を堅固に係合させて、初期状態にある保持部材12の位置決め精度を高めることができる。尚、保持部材12の肉厚部分の上部に突起を設けておき、その突起がセット状態で段部92aと係合するように構成してもよく、その場合には、セット状態おける抜止め部材6を的確に位置決めして間隔Dをより精度良く保持し、移動代Mのばらつきを有効に抑えることができる。
【0045】
[他の実施形態]
(1)本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、張出部により段差状に形成された抜止め部材の両端部に沿うようにして、仕切壁の側壁を突部により段差状に形成した例を示したが、これに限られるものではなく、上記の如く抜止め部材の組み立てミスを防止できるものであれば、突部の形状やサイズは適宜に変更可能である。
【0046】
(2)本発明に係る流体管の移動防止装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、押輪以外の種々の製品への適用が可能である。例えば、本発明に係る流体管の移動防止装置をスリップオンタイプの管継手に適用し、管の受口部でハウジングを構成してもよい。その場合、受口部の内周面に形成された収容溝に抜止め部材が収容され、セット状態においては、その抜止め部材の爪が、受口部に挿入した流体管の挿口部の外周面に係止可能に配置される。
【0047】
或いは、管継手の挿口部を取り囲んで装着され、受口部から挿口部が抜け出す力が働いた際に受口部のフランジに係合するフックを持つ補強金具(例えば、特開平10−122466号公報参照)や、流体管を取り囲んで装着される不平均力の支持装置(例えば、特開2002−243066号公報参照)に、本発明に係る流体管の移動防止装置を適用し、それらが備える環状の本体でハウジングを構成することも可能である。
【0048】
(3)前述の実施形態では、ハウジングに取り付けた押ボルトによって抜止め部材を押圧する例を示したが、このような押圧部材を省略しても構わない。例えば、ハウジングを周方向の複数箇所で分割し、その分割片の周端同士を締結具で連結する構造にすれば、締結具の締め付けによってハウジングが縮径することから、収容溝の外周壁で抜止め部材を押圧することが可能となる。
【0049】
(4)本発明において、流体管は、水道管に限定されるものではなく、各種の液体や気体が流れる流体管であってよい。
【符号の説明】
【0050】
1 受口部
2 挿口部
2a 外周面
3 シール材
4 押輪
6A 第1の抜止め部材
6B 第2の抜止め部材
7 ハウジング
8A 前方爪
8A 後方爪
9 収容溝
10 押ボルト
11 弾性部材
12 保持部材
20 仕切壁
20a 頂面
21 第1の突部
21a 傾斜面
22 第2の突部
22a 傾斜面
60A 張出部
60B 張出部
61 後方側面(第1側面)
62 前方側面(第2側面)
63 傾斜面
P 水道管(流体管の一例)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置において、
前記流体管の周方向の複数箇所に配設され、前記流体管の外周面に食い込み可能な爪を有する複数の抜止め部材と、前記流体管の外周面に向けて開口した収容溝を有し、その収容溝内に前記抜止め部材を収容する環状のハウジングとを備え、
複数の前記抜止め部材が、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向一方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第1の抜止め部材と、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向他方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第2の抜止め部材とを含み、
前記第1の抜止め部材の張出部に形成された爪と、その第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材の張出部に形成された爪とが、それぞれ前記流体管の外周面に係止可能な状態で、管軸方向に互いに重なるように配置され、
前記ハウジングに、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材とその第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材との間に介在する仕切壁が設けられており、
前記仕切壁が、前記第1の抜止め部材に面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第1の突部と、前記第2の抜止め部材に面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第2の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第2の突部とを有することを特徴とする流体管の移動防止装置。
【請求項2】
前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されている請求項1に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項3】
前記第1の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第1の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成され、前記第2の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第2の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成されている請求項1又は2に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項4】
前記仕切壁が、前記ハウジングと一体的に成形されている請求項1〜3いずれか1項に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項5】
前記流体管の移動方向を向いた前記抜止め部材の第1側面に取り付けられた弾性部材と、前記第1側面の反対側を向いた前記抜止め部材の第2側面に取り付けられた保持部材とを備え、
初期状態から前記抜止め部材の爪が前記流体管の外周面に係止可能なセット状態に至る過程で、前記第2側面に対向する前記収容溝の内壁面に前記保持部材が当接しつつ、前記第1側面とそれに対向する前記収容溝の内壁面との間隔が前記弾性部材を介して保持される請求項1〜4いずれか1項に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項1】
流体管に外嵌装着して、その流体管が管軸方向に移動するのを防止する流体管の移動防止装置において、
前記流体管の周方向の複数箇所に配設され、前記流体管の外周面に食い込み可能な爪を有する複数の抜止め部材と、前記流体管の外周面に向けて開口した収容溝を有し、その収容溝内に前記抜止め部材を収容する環状のハウジングとを備え、
複数の前記抜止め部材が、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向一方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第1の抜止め部材と、周方向の両側に張り出した張出部を内周面の管軸方向他方側に有し、その張出部に前記爪が形成された第2の抜止め部材とを含み、
前記第1の抜止め部材の張出部に形成された爪と、その第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材の張出部に形成された爪とが、それぞれ前記流体管の外周面に係止可能な状態で、管軸方向に互いに重なるように配置され、
前記ハウジングに、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材とその第1の抜止め部材に隣接した前記第2の抜止め部材との間に介在する仕切壁が設けられており、
前記仕切壁が、前記第1の抜止め部材に面する側壁の管軸方向他方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第1の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第1の突部と、前記第2の抜止め部材に面する側壁の管軸方向一方側を周方向に突出させてなり、前記収容溝内に収容された前記第2の抜止め部材の張出部と管軸方向に対向する第2の突部とを有することを特徴とする流体管の移動防止装置。
【請求項2】
前記仕切壁の頂面が前記ハウジングの内周面よりも径方向外側に設定されている請求項1に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項3】
前記第1の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第1の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成され、前記第2の突部が形成された前記仕切壁の側壁に、径方向外側に向かって前記第2の抜止め部材側に傾斜した傾斜面が形成されている請求項1又は2に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項4】
前記仕切壁が、前記ハウジングと一体的に成形されている請求項1〜3いずれか1項に記載の流体管の移動防止装置。
【請求項5】
前記流体管の移動方向を向いた前記抜止め部材の第1側面に取り付けられた弾性部材と、前記第1側面の反対側を向いた前記抜止め部材の第2側面に取り付けられた保持部材とを備え、
初期状態から前記抜止め部材の爪が前記流体管の外周面に係止可能なセット状態に至る過程で、前記第2側面に対向する前記収容溝の内壁面に前記保持部材が当接しつつ、前記第1側面とそれに対向する前記収容溝の内壁面との間隔が前記弾性部材を介して保持される請求項1〜4いずれか1項に記載の流体管の移動防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−15173(P2013−15173A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147402(P2011−147402)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(396020361)株式会社水道技術開発機構 (113)
【Fターム(参考)】
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