流体透過性構造化繊維質ウェブ
本開示は、流体透過性の構造化繊維質ウェブを含む使い捨て吸収性物品であって、熱を用いて一体に熱結合されることにより熱的に安定したベース基材を形成する熱的に安定した繊維を前記繊維質ウェブが含む使い捨て吸収性物品に関する。ベース基材は機械的処理によってテクスチャ加工されて、1.5mm未満のエイジング処理キャリパー、少なくとも5mmの垂直吸い上げ高さ、少なくとも10,000cm2/(Pa・s)の透過性、及び少なくとも5cm3/gの比容積を有する構造化繊維質ウェブを形成する。構造化繊維質ウェブは、最適な流体吸い上げ性能及び流体捕捉性能をもたらすものであり、流体管理用途をその対象としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体透過性繊維質ウェブに関し、詳細には最適な流体捕捉性能及び流体分配性能をもたらす流体透過性繊維質ウェブに関する。
【背景技術】
【0002】
市販の織布及び不織布は、典型的には、繊維として形成された合成ポリマーを含んでいる。これらの布地は、典型的には0.9g/cm3〜1.4g/cm3の高い固有の全体密度を有する中実繊維によって、典型的には製造される。布地の全体重量又は坪量は、許容される厚さすなわちキャリパー、強度及び保護感を促進するために布地の所望の不透明度、機械的特性、柔軟性/柔らかさ、又は特定の流体との相互作用によってしばしば規定される。多くの場合、これらの性質は、所望の性能レベルを実現するために組み合わせとして求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合成繊維不織布を使用することの1つの重要な側面は、その機能性である。多くの布地及び不織布では、その機能は製品に所望の感触を与える、すなわち製品をより柔軟にしたり、製品により自然な風合いを与えることである。他の布地又は不織布では、機能性は製品の直接的な性能を向上させるうえで重要である。例えば、使い捨て吸収性物品は、典型的には、不織布トップシート、バックシート及びその間の吸収性コアを含む。不織布トップシートは透過性であり、吸収性コアに流体を通過させる。漏れ及び溢出による再湿潤を制御するため、典型的には、少なくとも1つの不織布層を含む流体捕捉層がトップシートと吸収性コアとの間に配置される。この不織布捕捉層は、流体を取り込んでこれを吸収性コアに透過させる機能を有する。この機能を実行するうえでの捕捉層の有効性は、層の厚さ及び捕捉層を形成するために使用される繊維の性質に大きく依存する。しかしながら、厚さは消費者にとって望ましくない嵩高性につながる。したがって、捕捉層の最適な厚さすなわちキャリパーはしばしば、流体を処理するための厚さと快適性のための薄さとの妥協点である。したがって、流体捕捉のための厚さと快適性のための薄さとを呈する流体捕捉層が望ましい。更に、キャリパーすなわち厚さは、材料の取り扱い、保管、及び通常の使用時に引き起こされる圧縮力のために維持することが困難である。したがって、通常の取り扱い、パッケージング及び使用の際に持続的な強いキャリパーを呈する不織布が提供されることもまた望ましい。更に、材料の取り扱い及び転換の際に引き起こされるこのような圧縮力の影響を最小に抑えるために、最終用途に近い不織布材料のキャリパーを高めるためのプロセスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、熱可塑性繊維を含む流体透過性構造化繊維質ウェブに関する。構造化繊維質ウェブは、1.5mm未満のエイジング処理キャリパー、少なくとも5mmの垂直吸い上げ高さ、少なくとも10,000cm2/(Pa・s)の透過性及び少なくとも5cm3/gの比容積を有する。熱可塑性繊維は好ましくは熱安定性であり、下記に述べるような機械的処理の際にウェブの平面内において破断するように非伸長性であり、使用時の圧縮力に抗するように剛性である。繊維は少なくとも0.5GPaの弾性率を有することが好ましく、熱を用いて一体に熱結合されることによって熱安定性である繊維質ウェブのベース基材を作り出す。繊維の形状としては中実円形及び中空円形繊維が含まれるが、他の形状として3葉形、デルタ形又は繊維の表面積を増大させて垂直吸い上げ性能を高める他の任意の多葉形の繊維形状が含まれる。
【0005】
繊維質ウェブのベース基材は、構造化された繊維質ウェブを形成するようベース基材に局所的な平面外の厚みを付与するために、機械的に処理される第1の表面及び第2の表面を含む。構造化繊維質ウェブは、第1の領域、及び第1の領域の全体にわたって配置される多数の別個の第2の領域を含む。第2の領域は繊維質ウェブの第2の表面上に不連続部を、第1の表面上に変位した繊維を形成する。変位した繊維は第2の領域の第1の側面に沿って固定され、第1の側面の反対側の第2の領域の第2の側面に沿って第1の表面の近くで分離していることにより、繊維質ウェブの第1の表面から遠ざかる方向に延びる自由端を形成する。好ましくは、変位した繊維の少なくとも50%かつ100%未満が自由端を有することにより、流体を捕集するための自由容積をもたらす。
【0006】
一実施形態では、液体透過性の構造化繊維質ウェブは、第1の領域の全体にわたって第2の領域間に配置された多数の過剰結合領域を含む。過剰結合領域は第2の領域間に連続的に延びてよく、流体捕捉のための更なる間隙容積をもたらす凹部と、透過性を高める流体分配性をもたらす通路を形成する。
【0007】
流体透過性の構造化繊維質ウェブは、最適な流体捕捉性能及び流体分配性能が望ましい流体管理用途を対象としたものである。
【0008】
本発明の構造化繊維質ウェブを備えた使い捨て吸収性物品は、シャーシ及び吸収性コアを更に備えてもよい。シャーシは、トップシート及びバックシートを有してもよい。吸収性コアはトップシートとバックシートとの間に配置され得、第1及び第2の吸収性層を含み得る。第1の吸収層は第1の基材を含み、第2の吸収層は第2の基材を含み得る。第1及び第2の吸収層は、第1及び第2の基材上に置かれた吸収性粒子状ポリマー材料、並びに第1及び第2の基材のそれぞれの上の吸収性粒子状ポリマー材料を覆う熱可塑性接着材料を更に含み得る。
【0009】
前記第1の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部が、前記第2の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部と接触するように、第1の吸収層と第2の吸収層とは一体に合わせることができ、吸収性粒子状ポリマー材料は、吸収性粒子状ポリマー材料領域内において第1の基材と第2の基材との間に配置され、吸収性粒子状ポリマー材料は吸収性粒子状ポリマー材料領域にわたって実質的に連続的に分配されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらの特徴並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明文、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することで更に深い理解がなされるであろう。
【図1】本発明に基づいてウェブを製造するための装置の概略図。
【図1A】本発明による積層ウェブを製造するための代替的な装置の概略図。
【図2】図1に示される装置の一部の拡大図。
【図3】構造化基材の部分斜視図。
【図4】図3に示される構造化基材の部分拡大図。
【図5】図4に示される構造化基材の一部の断面図。
【図6】図5に示される構造化基材の一部の平面図。
【図7】図2に示される装置の一部の断面図。
【図8】本発明のウェブの一実施形態を形成する装置の一部の斜視図。
【図9】本発明のウェブを形成するための装置の一部の拡大斜視図。
【図10】変位した繊維の溶融結合部分を有する構造化基材の部分斜視図。
【図11】図10に示される構造化基材の部分拡大図。
【図12a】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12b】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12c】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12d】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12e】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12f】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図13】結合領域及び/又は過剰結合領域を示す構造化基材の一部の断面図。
【図14】構造化基材の両面上の結合領域及び/又は過剰結合領域を示す構造化基材の一部の断面図。
【図15】低い繊維変位の変形で形成されたテント状構造を示す、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図16】増大した繊維変位の変形による顕著な繊維の破断を示す、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図17a】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の部分を示す本発明のウェブの部分の顕微鏡写真。
【図17b】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の部分を示す本発明のウェブの部分の顕微鏡写真。
【図18】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の、先端が結合された変位した繊維に沿った位置を特定する、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図19a】成形繊維の形態の断面図。
【図19b】成形繊維の形態の断面図。
【図19c】成形繊維の形態の断面図。
【図20】平面内径方向透過性試験装置の構成の概略図。
【図21a】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図21b】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図21c】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図22】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成用の流体供給リザーバの概略図。
【図23】本発明の一実施形態に基づくおむつの平面図。
【図24】図23に示されるおむつの、図23の切断線2−2に沿って取った断面図。
【図25】本発明の一実施形態に基づく吸収性コア層の部分断面図。
【図26】本発明の別の実施形態に基づく吸収性コア層の部分断面図。
【図27】図25に示される吸収性コア層の平面図。
【図28】本発明の一実施形態に基づく第2の吸収性コア層の平面図。
【図29a】図27及び28に示される第1及び第2の吸収性コア層の組み合わせを含む吸収性コアの部分断面図。
【図29b】図27及び28に示される第1及び第2の吸収性コア層の組み合わせを含む吸収性コアの部分断面図。
【図30】図29a及び29bに示される吸収性コアの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語の定義
本明細書で使用するところの用語「活性化」とは、歯と溝との噛み合いによって発生する引っ張り歪みによって中間のウェブ部分を延伸又は伸長する任意のプロセスを意味する。こうしたプロセスは、通気性フィルム、伸縮性複合材料、孔あき材料及びテクスチャ加工材料などの多くの物品の製造において有用であることが分かっている。不織布では、延伸によって繊維再配向、繊維のデニール及び/又は断面の変化、坪量の低下、及び/又は中間ウェブ部分の制御された繊維破壊をもたらすことができる。一般的な活性化方法としては、例えば、当該技術分野ではリングロール加工として知られるプロセスがある。
【0012】
本明細書で使用するところの「噛合深さ」とは、対向する活性化部材の噛み合った歯と溝とが互いの中に入り込む程度を意味する。
【0013】
本明細書で使用するところの用語「不織布ウェブ」とは、個々の繊維又は糸が入り組んではいるものの、ランダムに配向された繊維を典型的には有しない織布又は編布におけるような繰り返しパターンとして入り組んではいない構造を有するウェブのことを指す。不織布ウェブ又は不織布は、例えばメルトブローイング法、スパンボンド法、水流交絡法、エアレイド法、及びカード熱結合法(carded thermal bonding)を含む接着カードウェブ法(bonded carded web process)などの多くのプロセスによって形成されてきた。不織布の坪量は、通常、1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で表される。積層ウェブの坪量は、構成層及び他の任意の添加成分を合わせた坪量である。繊維直径は通常、マイクロメートルで表されるが、繊維径は、繊維の長さ当たりの重量の単位であるデニールで表すこともできる。本発明における使用に適した不織布又は積層ウェブの坪量は、6g/m2〜300g/m2、好ましくは10g/m2〜200g/m2、より好ましくは15g/m2〜120g/m2、及び最も好ましくは20g/m2〜100g/m2の範囲である。
【0014】
本明細書で使用するところの「スパンボンド繊維」とは、紡糸口金の微細で通常は円形の複数の毛管から溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして押し出した後、押し出されたフィラメントの直径を外部から加えた力によって急速に小径化することによって形成される、比較的小径の繊維を指す。スパンボンド繊維は、捕集面に堆積させる際に概ね粘着性がない。スパンボンド繊維は概ね連続的であり、7マイクロメートルより大きい、より詳細には約10〜40マイクロメートルの平均直径(少なくとも10個の試料から)を有する。
【0015】
本明細書で使用するところの用語「メルトブローイング」は、溶融した熱可塑性材料を、微細で通常は円形の複数の金型毛管を通じて、通常は加熱された収束する高速気体(例えば空気)流中に溶融糸又はフィラメントとして押し出し、この気体流によって溶融熱可塑性材料のフィラメントを場合によりマイクロファイバー径にまで小径化することによって繊維を形成するプロセスを指す。この後、メルトブローン繊維は高速気体流により運ばれて、しばしばまだ粘着性であるうちに捕集面上に堆積されて、ランダムに分散されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。メルトブローン繊維は、連続的又は不連続的であり得る、平均直径が一般的に10マイクロメートルよりも小さいマイクロファイバーである。
【0016】
本明細書で使用するところの用語「ポリマー」には、これらに限定されるものではないが、一般的に、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマーなどのコポリマー、ターポリマーなど、並びにこれらのブレンド及び修飾物が挙げられる。更に特に限定しないかぎり、用語「ポリマー」には、材料のあらゆる可能な幾何学的形態が含まれる。その形態としては、これらに限定されるものではないが、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称が挙げられる。
【0017】
本明細書で使用するところの用語「1要素」繊維とは、1種類のポリマーのみを使用して1以上の押出成形機によって形成される繊維のことを指す。これは、1種類のポリマーから形成されているが、着色、静電気防止特性、潤滑、親水性などを付与するために少量の添加剤が添加された繊維を除外するものではない。これらの添加剤、例えば着色用の二酸化チタンは、一般的に約5重量%未満、より典型的には約2重量%未満の量で存在する。
【0018】
本明細書で使用するところの用語「2要素繊維」(bicomponent fiber)とは、別々の押出成形機から押し出された少なくとも2種類の異なるポリマーを合わせて紡糸し、1本の繊維として形成した繊維を指す。2要素繊維は、複合繊維又は多要素繊維と呼ばれることもある。各ポリマーは、2要素繊維の断面においてほぼ位置が一定した異なる領域に配され、2要素繊維の長さに沿って連続的に延びる。そのような2要素繊維の構成は、例えば、1つのポリマーが別のポリマーにより包囲されたシース/コア配置とするか、又はサイドバイサイド配置、パイ型配置、又は「海島型」配置とすることができる。
【0019】
本明細書で使用するところの用語「2成分繊維」(biconstituent fiber)とは、同じ押出成形機からブレンドとして押し出される少なくとも2種類のポリマーから形成された繊維を指す。2成分繊維は、繊維の断面において比較的位置が一定した異なる領域に配された異なるポリマー成分を有しておらず、更に、この異なるポリマーは通常、繊維の全長に沿って連続的ではなく、代わりにランダムに開始及び終了する繊維を通常形成している。2成分繊維は、多成分繊維と呼ばれることもある。
【0020】
本明細書で使用するところの用語「非円形繊維」とは、非円形断面を有する繊維について述べる場合にいい、「成形繊維」及び「毛管通路繊維」を含む。このような繊維は中実又は中空であってよく、3葉形のデルタ形状であってよく、好ましくは外表面に毛管通路を有する繊維である。毛管通路は、例えば「U字形」、「H字形」、「C字形」及び「V字形」などの様々な断面形状のものであり得る。好ましい毛管通路繊維の1つとして、Fiber Innovation Technologies(テネシー州ジョンソンシティー)より販売される4DG繊維と称されるT−401がある。T−401繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PETポリエステル)である。
【0021】
「配置された」とは、物品の1つの要素の、物品の別の要素に対する配置のことを指す。例えば、各要素は、おむつの他の要素との一体構造として、あるいはおむつの別の要素と接合された別の要素として特定の場所又は位置に形成される(接合及び位置決めされる)。
【0022】
「伸長性不織布」とは、断裂又は破断することなく少なくとも50%伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、少なくとも150mmにまで伸長し得る。ある材料は1つの方向(例えばCD方向)に伸長可能であるが、別の方向(例えばMD方向)には伸長できない場合がある。伸長性不織布は、一般的に伸長性繊維から構成される。
【0023】
「高伸長性不織布」とは、断裂又は破断することなく少なくとも100%伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する高伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、少なくとも200mmにまで伸長し得る。ある材料は1つの方向(例えばCD方向)に高度に伸長可能であるが、別の方向(例えばMD方向)には伸長できないか、又は他の方向には伸長可能である場合がある。高伸長性不織布は、一般的に高伸長性繊維から構成される。
【0024】
「非伸長性不織布」とは、50%の伸長率に達する前に断裂又は破断するように伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する非伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、50mmよりも大きく伸長できない。非伸長性不織布は、機械方向(MD)及び横断方向(CD)のいずれにも非伸長性である。
【0025】
「伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断することなく少なくとも400%伸長する繊維のことである。
【0026】
「高伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断することなく少なくとも500%伸長する繊維のことである。
【0027】
「非伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断のない伸長率が400%未満である繊維のことである。
【0028】
「親水性の」又は「親水性」とは、水又は生理食塩水によって表面が速やかに濡れる繊維又は不織布材料のことを指す。水又は生理食塩水を吸い上げる材料は、親水性として分類することができる。親水性を測定する方法の1つとして、垂直吸い上げ性能を測定することによるものがある。本発明においては、ある不織布材料は少なくとも5mmの垂直吸い上げ性能を示す場合に親水性とされる。
【0029】
「接合された」とは、要素を直接別の要素に取り付けることにより一方の要素を他方の要素に直接固定する構成、及び要素を中間部材に取り付け、その中間部材を次に別の要素に取り付けることにより、一方の要素を間接的に他方の要素に固定する構成を指す。
【0030】
「積層体」とは、例えば接着剤結合、熱結合、超音波結合などの当該技術分野では既知の方法によって互いに結合された2つ以上の材料を意味する。
【0031】
「機械方向」又は「MD」は、製造プロセスにおいてウェブが移動する際のウェブの移動方向と平行な方向である。MD方向の±45°以内の範囲の方向は、機械方向とみなされる。「機械横断方向」又は「CD」は、MD方向にほぼ垂直な、ウェブによって概ね画定される平面内の方向である。横断方向の±45°以内の範囲の方向は、横断方向とみなされる。
【0032】
「外側寄り」及び「内側寄り」とはそれぞれ、第2の要素に対して吸収性物品の長手方向の中心線から相対的に遠く、又は近くに配置された要素の位置を指す。例えば、要素Aが要素Bの外側寄りである場合、要素Aは、要素Bよりも長手方向の中心線から遠くにある。
【0033】
「吸い上げ」とは、毛管力による不織布を通じた流体の能動的な流体輸送のことを指す。吸い上げ速度とは、単位時間当たりの流体の移動、すなわち、特定の時間の間に流体がどれくらい遠くに移動するかを指す。
【0034】
「捕捉速度」とは、ある材料が所定量の流体を吸収する速度、又は流体が材料を通過するのに要する時間のことを指す。
【0035】
「透過性」とは、ある材料を通じてX−Y平面上に流れる流体の相対的な能力のことを指す。透過性が高い材料は、透過性がより低い材料よりも高い流体の流速を可能とする。
【0036】
「ウェブ」とは、ロールに巻くことができる材料のことを意味する。ウェブは、フィルム、不織布、積層体、孔あき積層体などであってよい。ウェブの面とは、その縁部とは対照的に、その2次元の表面の1つを指す。
【0037】
「X−Y平面」は、移動ウェブのMD方向とCD方向とによって、又はその長さによって画定される平面を意味する。
【0038】
「吸収性物品」とは、身体排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指し、より詳細には、着用者の身体に接して又は近接して置かれることによって、身体から排出される様々な排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指す。吸収性物品としては、おむつ、パンツ、トレーニングパンツ、成人用失禁下着、女性用衛生用品などが挙げられる。本明細書で使用するところの用語「体液」又は「身体排出物」としては、これらに限定されるものではないが、尿、血液、膣排出物、母乳、汗及び糞便が挙げられる。本発明の好ましい吸収性物品としては、おむつ、パンツ及びトレーニングパンツがある。
【0039】
「吸収性コア」は、吸収性物品によって受け取られた液体を吸収し封じ込めるために、吸収性物品のトップシートとバックシートとの間に典型的に配置される構造体を意味し、1つ以上の基材と、1つ以上の基材上に配置された吸収性ポリマー材料と、吸収性粒子状ポリマー材料を1つ以上の基材上に不動化するための、吸収性粒子状ポリマー材料上及び1つ以上の基材の少なくとも一部分上の熱可塑性組成物と、を含んでもよい。多層吸収性コアでは、吸収性コアはまたカバー層も含んでもよい。1以上の基材及びカバー層が不織布を含んでもよい。更に、吸収性コアはセルロースを実質上含まない。吸収性コアには、吸収性物品の捕捉システム、トップシート、又はバックシートは含まれない。特定の実施形態では、吸収性コアは、1以上の基材、吸収性ポリマー材料、熱可塑性組成物、及び必要に応じて用いられるカバー層から基本的に構成される。
【0040】
「吸収性ポリマー材料」、「吸収性ゲル材料」、「AGM」、「超吸収体」、及び「超吸収性材料」は、本明細書において互換可能に使用され、遠心分離保持容量試験(Edana 441.2−01)を使用して測定した場合に、重量の少なくとも5倍の0.9%生理食塩水を吸収することが可能な架橋ポリマー材料のことを指す。
【0041】
本明細書において「吸収性粒子状ポリマー材料」とは、乾燥状態で流動性を有する粒子状形態である吸収性ポリマー材料のことを指して使用される。
【0042】
本明細書で使用するところの「吸収性粒子状ポリマー材料領域」とは、第1の基材264と第2の基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されているコアの領域のことを指す。図30において、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、重なり合った円の外周によって画定される。この外周の外側の第1の基材264と第2の基材272との間には、一定量の外部超吸収性粒子が存在し得る。
【0043】
本明細書において「エアフェルト」とは、セルロース繊維の一形態である粉砕木材パルプのことを指して使用される。
【0044】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、及び「備える(comprises)」は非限定的な用語であり、それぞれの語の後に記載されるもの(例えば構成要素)の存在を特定するものであるが、他の特徴(例えば要素、工程、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示される構成要素)の存在を除外するものではない。
【0045】
本明細書において「基本的に〜からなる」とは、例えば特許請求の範囲におけるような発明の主題の範囲を、特定の要素又は工程、及び発明の主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定するために使用される。
【0046】
「使い捨て式の」とは、その通常の意味において、様々な期間にわたって、限定された使用回数、例えば約20回未満、約10回未満、約5回未満、又は約2回未満の後に処分又は廃棄される物品を意味するものとして使用される。
【0047】
「おむつ」とは、幼児及び失禁患者によって胴体下部の周囲に一般に着用されることにより、着用者の腰部及び脚部を包囲する吸収性物品のことであって、尿及び糞便を受容して閉じ込めるように特に適合されたもののことを指す。本明細書で使用するところの用語「おむつ」には、以下で定義する「パンツ」も含まれる。
【0048】
本明細書で使用するところの「パンツ」又は「トレーニングパンツ」とは、幼児又は成人の着用者用に設計された、腰部開口部及び脚部開口部を有する使い捨て式衣類のことを指す。パンツは、着用者の脚を脚部開口部に挿入し、パンツを着用者の胴体下部の周囲にまでずらすことによって着用者に対して定位置に置くことができる。パンツは、再締結可能な及び/又は再締結不能な結合手段(例えば、縫い目、溶接、接着剤、粘着性結合、ファスナーなど)を用いて物品の部分同士を接合することを含む(ただしこれらに限定されない)任意の好適な技術によって予備成形することができる。パンツは、物品の外周に沿った任意の位置において予備成形することができる(例えば、側面固定、前腰部固定)。本明細書では「パンツ」なる用語を用いているが、パンツは「閉鎖状態のおむつ」、「予め締結されたおむつ」、「プルオンおむつ」、「トレーニングパンツ」、及び「おむつパンツ」とも一般的に呼ばれる。好適なパンツについては、Hasseらに付与された1993年9月21日発行の米国特許第5,246、433号、Buellらに付与された1996年10月29日発行の米国特許第5,569,234号、Ashtonに付与された2000年9月19日発行の米国特許第6,120,487号、Johnsonらに付与された2000年9月19日発行の米国特許第6,120,489号、Van Gompelらに付与された1990年7月10日発行の米国特許第4,940,464号、Nomuraらに付与された1992年3月3日発行の米国特許第5,092,861号、2002年6月13日に出願された、発明の名称が「Highly Flexible And Low Deformation Fastening Device」である米国特許出願公開第2003/0233082(A1)号、Klineらに付与された1999年4月27日発行の米国特許第5,897,545号、Klineらに付与された1999年9月28日発行の米国特許第5,957,908号に開示されている。
【0049】
本明細書で使用するところの「実質的にセルロースを含まない」とは、10重量%未満のセルロース繊維、5重量%未満のセルロース繊維、1重量%未満のセルロース繊維を含むか、まったくセルロース繊維を含まないか、あるいはごく微量のセルロース繊維しか含まない吸収性コアなどの物品のことを述べるのに使用される。ごく微量のセルロース材料は、吸収性コアの薄さ、可撓性、又は吸収性に大きく影響することはない。
【0050】
本明細書で使用するところの「ほぼ連続的に分配された」とは、吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1の基材264と第2の基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されていることを示す。吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1の基材264と第2の基材272との間にわずかな偶然の接触領域があってもよい点は認識される。第1の基材264と第2の基材272との間の偶然の接触領域は、意図的である場合も又はそうでない場合(例えば製造加工されたもの)もあるが、枕、ポケット、チューブ、キルト柄などの幾何形状を形成することはない。
【0051】
本明細書で使用するところの「熱可塑性接着材料」とは、それから繊維が形成され、その繊維が乾燥及び湿潤状態の両方において超吸収性材料を固定することを目的として超吸収性材料に適用されるポリマー組成物を含むものとして理解される。本発明の熱可塑性接着材料は、超吸収性材料を覆って繊維質のネットワークを形成する。
【0052】
本明細書において開示されるすべての数値範囲に関し、本明細書全体を通じて与えられるすべての最大値の限定は、それよりも小さいすべての数値の限定を、そうしたより小さい数値限定が本明細書にあたかも明確に記載されているのと同様に含むものとして理解すべきである。更に、本明細書全体を通じて与えられるすべての最小値の限定は、それよりも大きいすべての数値の限定を、そうしたより大きい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含むものである。更に、本明細書の全体を通じて与えられるすべての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に含まれるすべてのより狭い数値の範囲、並びにその数値範囲内のそれぞれの個々の数値を、そのようなより狭い数値範囲及び個々の数値のすべてがあたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に包含するものである。
【0053】
本発明は、好適なベース基材の活性化によって形成される構造化基材を提供する。活性化は繊維の変位を誘導し、ベース基材の流体捕捉特性を高める3次元のテクスチャを形成する。ベース基材の表面エネルギーをもまた改変して、その流体吸い上げ特性を高めることもできる。本発明の構造化基材について、ベース基材から構造化基材を製造するために使用される好ましい方法及び装置に関して説明する。図1及び図2に好ましい装置150を示し、以下により詳細に考察する。
【0054】
ベース基材
本発明に基づくベース基材20は、熱的に安定した繊維の緩い集合体から形成される流体透過性の繊維質不織布ウェブである。本発明に基づく繊維は、断裂又は破断のない伸長率が300%未満であるものとして上記に定義した非伸長性のものであるが、本発明のベース基材を形成する非伸長性繊維は、断裂又は破断のない伸長率が200%未満であることが好ましい。繊維には業界標準のカーディング、エアレイド、又はウェットレイド技術を用いてウェブに形成された短繊維(staple fiber)が含まれるが、業界標準のスパンボンド方式の技術を使用してスパンレイド不織布を形成する連続的なスパンボンド繊維が好ましい。スパンレイドウェブを製造するための繊維及びスパンレイドプロセスについては以下により詳細に考察する。
【0055】
本発明の繊維は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、星形、3葉形、3〜8葉を有する多葉形、長方形、H字形、C字形、I字形、U字形及び他の様々な変形を含む様々な断面形状を有し得る。中空繊維を使用することもできる。好ましい形状は、円形、3葉形及びH字形である。円形繊維は、最も低コストであることから経済的な観点から好ましいものであるが、3葉形状の繊維は大きな表面積をもたらすことから機能的な観点で好ましい。円形及び3葉形の繊維形状は中空であってもよいが、中実の繊維が好ましい。中空の繊維は、同じ形状及びデニールの中実の繊維よりも同等のデニールでの耐圧縮性がより高いことから有用である。
【0056】
本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布に見られる繊維よりも大きい傾向がある。成形繊維の直径を決定することは困難であるため、繊維のデニールがしばしば参照される。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義され、dpf(デニール/フィラメント)として表される。本発明においては好ましいデニールの範囲は、1dpfよりも大きく100dpfよりも小さい範囲である。より好ましいデニールの範囲は1.5dpf〜50dpfであり、より好ましい範囲は2.0dpf〜20dpfであり、最も好ましい範囲は4dpf〜10dpfである。
【0057】
本発明のベース基材を形成する繊維の緩い集合体は、活性化及び付随する繊維の変位に先立って結合される。繊維質ウェブは、繊維が高い移動度を有し、張力下で結合部位から抜ける傾向を有するように不完全に結合させるか、あるいは、繊維の繊維移動度が最小となり、張力下で破断する傾向を有するように結合部位の一体性をより高くして完全に結合させることができる。本発明のベース基材を形成する非伸長性繊維は、非伸長性の繊維質ウェブ材料を形成するように完全に結合されることが好ましい。以下により詳細に説明するように、非伸長性のベース基材は繊維変位によって構造化基材を形成するうえで好ましい。
【0058】
ベース基材の完全な結合は、例えばベース基材の製造時に、1回の結合工程で行うことができる。あるいは、1回よりも多い結合工程によって予備結合されたベース基材を製造してもよく、例えば、巻くことができるような充分な一体性を与えるために製造時にベース基材をごく軽く結合させるか、不完全に結合させてもよい。この後、例えば、ベース基材を本発明の繊維変位処理に供する直前に、ベース基材に更なる結合工程を行って完全に結合したウェブを得ることができる。更に、ベース基材の製造と繊維変位処理との間の任意の時点で結合工程を行ってもよい。異なる結合工程によって異なる結合パターンを与えることもできる。
【0059】
繊維を結合するプロセスについては、Albin Turbakによる「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」(Tappi 1997)に詳しく述べられている。典型的な結合法としては、機械的交絡法、流体力学的交絡法、ニードルパンチング法、並びにケミカルボンド法及び/又はレジンボンド法が挙げられるが、熱を利用したスルーエアボンド法(thru-air bonding)及び圧力と熱を利用したサーマルポイントボンド法などの熱結合法が好ましく、サーマルポイントボンド法が最も好ましい。
【0060】
スルーエアボンド法は、繊維の集合体に加熱気体を通過させることによって行われ、固着した不織布ウェブを製造する。サーマルポインドボンド法では、異なる位置に熱及び圧力を加えて不織布ウェブ上に結合部位を形成する。実際の結合部位は、これらに限定されるものではないが、楕円形、円形及び四辺形状などの様々な形状及びサイズを有する。全体のサーマルポイント結合面積の合計は、2%〜60%、好ましくは4%〜35%、より好ましくは5%〜30%、最も好ましくは8%〜20%である。本発明の完全に結合されたベース基材の全体の結合面積の合計は、8%〜70%、好ましくは12%〜50%、最も好ましくは15%〜35%である。サーマルポイント結合のピン密度は、5ピン/cm2〜100ピン/cm2、好ましくは10ピン/cm2〜60ピン/cm2、最も好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2である。本発明の完全に結合されたベース基材は、10ピン/cm2〜60ピン/cm2、好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2の結合ピン密度を有する。
【0061】
熱結合法は、熱可塑性ポリマー及びそれから製造された繊維などの熱結合性ポリマーから形成された繊維を必要とする。本発明では、繊維組成物には熱結合性ポリマーが含まれる。好ましい熱結合性ポリマーは、下記により詳細に考察するような、熱結合性かつ熱安定性である繊維をもたらすポリエステル樹脂、好ましくはPET樹脂、より好ましくはPET樹脂及びcoPET樹脂を含む。本発明では、熱可塑性ポリマーの含量は、繊維の約30重量%よりも高いレベル、好ましくは約50重量%よりも高いレベル、より好ましくは約70重量%よりも高いレベル、最も好ましくは約90重量%よりも高いレベルで存在する。
【0062】
結合の結果、ベース基材は、機械方向(MD)及び機械横断方向(CD)の両方に機械的性質を有することになる。MD方向の引っ張り強度は、1N/cm〜200N/cm、好ましくは5N/cm〜100N/cm、より好ましくは10N/cm〜50N/cm、最も好ましくは20N/cm〜40N/cmである。CD方向の引っ張り強度は、0.5N/cm〜50N/cm、好ましくは2N/cm〜35N/cm、最も好ましくは5N/cm〜25N/cmである。ベース基材は更に、1.1〜10、好ましくは1.5〜6、最も好ましくは1.8〜5のCD方向に対するMD方向の引っ張り強度の比である特徴比を有しなければならない。
【0063】
結合法は、ベース基材の厚さにも影響する。ベース基材の厚さすなわちキャリパーは、特定の測定位置に存在する繊維の数、径及び形状にも依存する。ベース基材の厚さは、0.10mm〜1.3mm、より好ましくは0.15mm〜1.0mm、最も好ましくは0.20mm〜0.7mmである。
【0064】
ベース基材は、更に固有の不透明度を有する。不透明度は、ベース基材を通過する光の相対量の目安である。理論に束縛されるものではないが、固有の不透明度は、特定の測定位置に存在する繊維の数、径、種類、形態、及び形状によって決まるものと考えられる。不透明度は、TAPPI試験法T 425 om−01「紙の不透明度(Opacity of Paper)」(15/d形態、照射角度A/2°、反射率89%の裏材及び紙裏材)を用いて測定することができる。不透明度はパーセントで測定される。本発明では、ベース基材の不透明度は5%よりも大きく、好ましくは10%よりも大きく、より好ましくは20%よりも大きく、更により好ましくは30%よりも大きく、最も好ましくは40%よりも大きい。
【0065】
使い捨て吸収性物品の捕捉システムによって構成される構造化繊維質ウェブは、下側の吸収性コアの潜在的な汚れを隠す効果があることから比較的高い不透明度が望ましい。吸収性コアの汚れは、尿又は低粘度の便通などの体液の吸収によってもたらされ得る。吸収性物品における最近の傾向は、コスト削減の理由から吸収性物品の異なる要素の坪量を低減させる方向にある。このため、低坪量のトップシートが用いられる場合、こうしたトップシートの不透明度は、高坪量のトップシートと比較して低くなりやすい。また、孔あきトップシートが用いられる場合、こうした孔によっても、捕捉システム及び吸収性コアといった吸収性物品の下側の層が見えてしまう。したがって、低坪量のトップシート及び/又は孔あきトップシートが吸収性物品において使用される実施形態では、構造化繊維質ウェブの高い不透明度が特に望ましい。本発明の一実施形態では、使い捨て吸収性物品は、5g/m2〜25g/m2、より好ましくは8g/m2〜16gm2の坪量を有するトップシートを含む。
【0066】
ベース基材は、固有坪量及び固有密度を有する。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明では、ベース基材の坪量は10g/m2〜200g/m2である。ベース基材の密度は、ベース基材の坪量をベース基材の厚さで割ることによって求められる。本発明では、ベース基材の密度は14kg/m3〜200kg/m3である。ベース基材は、立方センチメートル/グラムで測定される、ベース基材密度の逆数であるベース基材比容積もまた有する。
【0067】
ベース基材の改質
本発明においては、ベース基材を改質して流体の管理が重要となる製品において使用するための流体分散性及び流体捕捉性を最適化することができる。流体分散性は、親水性及び付随する吸い上げ性を高めるようにベース基材の表面エネルギーを変化させることによって高めることができる。ベース基材の表面エネルギーの改変は必要に応じて行えばよく、典型的にはベース基材が製造される際に行われる。流体捕捉性は、基材の厚さ又はふくらみ及び付随する比容積を増大させる3次元のテクスチャを導入するための繊維の変位処理によってベース基材の構造を改変することによって影響され得る。
【0068】
表面エネルギー
ベース基材の親水性は、表面エネルギーと関係している。ベース基材の表面エネルギーは、局所的表面処理、繊維の表面に対する化学グラフト化、又はプラズマ若しくはコロナ処理による繊維表面の反応性酸化の後、ガス反応付加による更なる化学結合によって、改変することができる。
【0069】
ベース基材の表面エネルギーは、ベース基材の繊維の製造に使用されるポリマー材料によってもまた影響され得る。ポリマー材料は本来的に親水性を有するか、あるいは溶融添加剤又は親水性挙動を誘導する他の物質とポリマー材料との組み合わせによるポリマー、繊維表面、及びベース基材表面の化学的修飾によって親水性とすることができる。ポリプロピレンに対して使用される材料の例としては、Cibaより販売されるIRGASURF(登録商標)HL560、及びEastman Chemicalより販売されるPETコポリマーであるPET用の重合材料のEASTONE(登録商標)ファミリーがある。
【0070】
表面エネルギーは、繊維の局所的処理によっても影響され得る。繊維表面の局所的処理では一般に界面活性剤を、泡、スプレー、キスロール又は他の好適な方法によって希釈状態でエマルションに加えた後に乾燥させる。局所的処理を必要とし得るポリマーは、ポリプロピレン又はポリエステルテレフタレート系のポリマーシステムである。他のポリマーとしては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート及びコポリマー、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーなどの芳香族ポリエステル;ポリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリ乳酸及びコポリマーが挙げられる。防汚ポリマー(SRP)と呼ばれる部類の材料もまた、局所的処理に適している。防汚ポリマーは、低分子量のポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー、及び非イオン性ポリエステル化合物を含む一群の材料である。これらの材料の一部のものは溶融添加剤として加えることができるが、それらの好ましい用途は局所的処理剤としてのものである。この部類の材料の市販の例としては、ClariantよりTexcare(商標)の製品群として販売されるものがある。
【0071】
構造化基材
ベース基材20の第2の改質では、ベース基材を機械的に処理して構造化された繊維質ウェブ基材(「構造化繊維質ウェブ」と「構造化基材」という用語は本明細書では互換可能に使用される)を製造する。構造化基材は、(1)構造化基材がベース基材の厚さよりも大きな厚さの値を有するように永久的な繊維の転位(以後、「繊維の変位」と呼ぶものとする)を生ずる繊維の再配置並びに繊維の分離及び破断によって永久的に変形されたベース基材、また場合により(2)ベース基材の厚さよりも厚さの小さい圧縮領域を形成するために過剰な結合(以後、「過剰結合」と呼ぶものとする)によって改質されたベース基材、として定義される。繊維変位処理では、ロッド、ピン、ボタン、構造化スクリーン若しくはベルト又は他の好適な技術による繊維の永久的な機械的変位処理を行う。こうした永久的な繊維の転位により、ベース基材と比較して更なる厚さすなわちキャリパーがもたらされる。更なる厚さによって基材の比容積が大きくなり、基材の流体透過性もまた高くなる。過剰結合によってベース基材の機械的特性が向上し、流体管理のための変位した繊維領域間の通路の深さが増大し得る。
【0072】
繊維の変位処理
上記に述べたベース基材は、図1に示される装置150を用いて処理することによって、その一部が図3〜6に示される構造化基材21を形成することができる。図3に示されるように、構造化基材は、X−Y平面内の第1の領域2及び第1の領域2の全体にわたって配置された複数の第2の領域4を有している。第2の領域4は、構造化基材21の第2の表面14に不連続部16を形成する変位した繊維6、及び第1の表面12から延びる自由端18を有する変位した繊維6を含んでいる。図4に示されるように、変位した繊維6は、第2の領域4の第1の側面11から延び、更に分離及び破断して、第1の側面11と対向する第2の側面13に沿って第1の表面12に近接して自由端18を形成する。本発明では、第1の表面12に近接して、とは、繊維の破断が、第1の表面12と、変位した繊維の頂点又は末端部3との間、好ましくは変位した繊維6の末端部3よりも第1の表面12のより近くにおいて生ずることを意味する。
【0073】
繊維の分離又は破断の位置は、ベース基材を形成する非伸長性繊維に主として帰するものであるが、変位した繊維の形成及び付随する繊維の破断は、ベース基材の形成に使用される結合の程度によっても影響される。完全に結合された非伸長性繊維からなるベース基材は、その繊維強度、繊維剛性、及び結合強度のために、図15の顕微鏡写真に示されるようなテント状構造を低い繊維変位変形で形成する。繊維の変位変形部が伸長されると、図16の顕微鏡写真に示されるように、典型的には一方の側面に集中した相当の繊維の破断が認められる。
【0074】
図4の自由端18を有する変位した繊維6を形成する目的は、空隙体積を形成することによってベース基材の比容積を上回るように構造化基材比容積を増大させることにある。本発明では、第2の領域において少なくとも50%かつ100%よりも少ない自由端を有する変位した繊維6を形成することによって、高いキャリパー及び使用に際して持続する付随する比容積を有する構造化基材が製造されることが判明した(下記に示す表6の実施形態1N5〜1N9を参照)。本明細書において更に述べられる特定の実施形態では、変位した繊維6の自由端18は、耐圧縮性及び付随する持続性を高めるために熱結合させることができる。熱結合された自由端を有する変位した繊維6、及びこれを製造するためのプロセスについて、以下により詳細に考察する。
【0075】
図5に示されるように、第2の領域4の変位した繊維6は、典型的にはベース基材の厚さと同じである第1の領域2の厚さ32よりも大きな厚さ又はキャリパーを呈する。変位した繊維6を有する第2の領域4のサイズ及び形状は、使用される技術に応じて変化し得る。図5は、第2の領域4の変位した繊維6を示した、構造化基材21の断面を示している。変位した繊維6の厚さ34は、変位した繊維6に基づく構造化基材21の第2の領域4の厚さ又はキャリパーを表す。図に示されるように、変位した繊維の厚さ34は第1の領域の厚さ32よりも大きい。変位した繊維の厚さ34は、第1の領域の厚さ32よりも少なくとも110%大きいことが好ましく、より好ましくは少なくとも125%大きく、最も好ましくは第1の領域の厚さ32よりも少なくとも150%大きい。変位した繊維の厚さ34のエイジング処理キャリパーは、0.1mm〜5mm、好ましくは0.2mm〜2mm、最も好ましくは0.5mm〜1.5mmである。
【0076】
変位した繊維6を有する第2の領域4の構造化基材21の単位面積当たりの数は、図3に示されるように変化し得る。一般的に、この面密度は構造化基材21の全体の領域にわたって均一である必要はなく、第2の領域4は、線、縞、帯、円などの所定の形状を有する領域などの構造化基材21の特定の領域に限定され得る。
【0077】
図3に示されるように、第2の領域4によって占められる全体の面積は、全体の面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満であるが、少なくとも10%である。第2の領域のサイズ及び第2の領域4の間の間隔は異なり得る。図3及び図4は、長さ36、幅38、並びに第2の領域4の間の間隔37及び39を示している。図3に示される、第2の領域4の間の機械方向の間隔39は、好ましくは0.1mm〜1000mm、より好ましくは0.5mm〜100mm、最も好ましくは1mm〜10mmである。第2の領域4の間の機械横断方向の側面間の間隔37は、0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmである。
【0078】
図1に示されるように、構造化基材21は、供給ロール152から供給される概ね平面状の2次元的な不織布ベース基材20から形成することができる。ベース基材20は、自由端18を有する変位した繊維6を形成する互いに噛み合ったローラー104及び102Aによって形成されるニップ116へと、装置150によって機械方向MDに移動する。変位した繊維6を有する構造化基材21は、変位した繊維6の自由端18を結合するロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117へと必要に応じて進む。ここから、構造化基材22は、必要に応じて相互に噛み合うロール102B及び104へと進み、ロール102Bは構造化基材22をロール104から剥がして必要に応じてこれをロール102Bと結合ロール158との間に形成されたニップ119へと搬送し、構造化基材23に過剰結合領域が形成されて、構造化基材23は最終的に供給ロール160上に巻き取られる。図1は、上記で述べた一連の処理工程を示したものであるが、完全には結合されていないベース基材では、変位した繊維6を形成する前にベース基材に結合領域が形成されるように処理を逆転させることが望ましい。この実施形態では、ベース基材20は、図1に示される巻き取り供給ロール160に似た供給ロールから供給され、ロール102Bと結合ロール158との間に形成されたニップ119へと移動し、基材が結合された後、互いに噛み合ったロール102Bと104との間に形成されたニップ118へと基材が進入して、自由端18を有する変位した繊維6が第2の領域4に形成される。
【0079】
図1は、供給ロール152から供給されるベース基材20を示しているが、ベース基材20は当該技術分野では既知の飾りウェブ(festooned web)のような他の任意の供給手段から供給されてもよい。一実施形態では、ベース基材20は、不織布ウェブ製造用製造ラインのようなウェブ製造装置から直接供給されてもよい。
【0080】
図1に示されるように、第1の表面12は、ベース基材20の第1の側面並びに構造化基材21の第1の側面に対応している。第2の表面14は、ベース基材20の第2の側面並びに構造化基材21の第2の側面に対応している。一般的に、「側面」という用語は、本明細書においては、不織布のような概ね2次元的なウェブの2つの主面について述べる一般的な用語の用法で使用する。ベース基材20は、ほぼランダムに配向した繊維、すなわち、少なくともMD方向及びCD方向に対してランダムに配向した繊維からなる不織布ウェブである。「ほぼランダムに配向した」とは、処理条件により、CD方向よりもMD方向に(又はその逆に)より多くの繊維が配向され得ることを意味する。例えばスパンボンド及びメルトブローンプロセスでは、繊維の連続的なストランドが、MD方向に移動する支持材上に堆積される。スパンボンド又はメルトブローン不織布ウェブの繊維の配向を真に「ランダム化」しようとしても、通常は高い割合の繊維が、CD方向ではなくMD方向に配向される。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、ウェブの平面内のMD方向に対する所定の方向に繊維の相当の割合を意図的に配向させることが望ましい場合がある。例えば、ロール104上の歯の間隔及び配置(後述する)のため、ウェブの長手方向軸に平行な方向に対して60°の角度の主繊維配向を有する不織布ウェブを製造することが望ましい場合がある。このようなウェブは、所望の角度にウェブを揃えることと、必要に応じてウェブを完成ウェブにカーディングすることとを組み合わせたプロセスによって製造することができる。高い割合の繊維が所定の角度を有するウェブでは、下記により詳しく述べるように構造化基材21においてより多くの繊維が変位した繊維として形成されるような統計学的傾向を有し得る。
【0082】
ベース基材20は、ウェブ製造プロセスから直接的に、又は図1に示されるように供給ロール152から間接的に、のいずれかで供給することができる。ベース基材20は、オイル加熱又は電気加熱されたローラー上で加熱するなど、当該技術分野では既知の手段によって予備加熱することができる。例えば、繊維の変位処理に先立ってベース基材20を予備加熱するためにロール154を加熱することができる。
【0083】
図1に示されるように、供給ロール152は、ベース基材20が、逆回転する互いに噛み合ったロール102A及び104の第1の組のニップ116へとローラー154上を機械方向に移動するに従って、矢印で示される方向に回転する。ロール102A及び104は、装置150の互いに噛み合ったローラーの第1の組である。互いに噛み合ったロール102A及び104の第1の組が、ベース基材20に変位した繊維を形成し、更に繊維の破断を促進するように動作することによって、本明細書において以後、構造化基材21と呼ぶ構造化基材が製造される。互いに噛み合ったロール102A及び104は、図2により分かりやすく示されている。
【0084】
図2を参照すると、本発明の構造化基材21上に変位した繊維を製造するための装置150の部分がより詳細に示されている。装置150のこの部分は図2ではニップローラー100として示されており、同一平面内で平行な軸Aを中心としてそれぞれが回転する、互いに噛み合ったロール102及び104の組(それぞれ図1のロール102A及び104に対応している)からなっている。装置150は、ベース基材20が所定の回転角度にわたってロール104上に維持されるような設計となっているが、図2では、ベース基材20が装置150上のニップ116を通過して変位した繊維6の領域を有する構造化基材21として出てくる様子を原則的に示している。互いに噛み合ったロールは、金属又はプラスチックから製造することができる。金属ロールの非限定的な例としては、アルミニウム及び鋼がある。プラスチックロールの非限定的な例としては、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びポリフェニレンオキシド(PPO)がある。これらのプラスチックに金属又は無機添加材料を充填してもよい。
【0085】
図2に示されるように、ロール102は、ロール102の全周にわたって切れ目なく延び得る複数の山部105及び対応する溝部108を含む。特定の実施形態では、構造化基材21においてどの種類のパターンが望ましいかに応じて、ロール102(及び同様にロール102A)は、山部106の一部又は全部が周方向に連続的でなく切れ目又は間隙を有するように、例えばエッチング、ミリング、又は他の機械加工によって一部が除去された山部106を有してもよい。切れ目又は間隙は、円形又は菱形などの単純な幾何学パターンに限らず、ロゴ及び商標などの複雑なパターンを含む所定のパターンを形成するように配列することができる。一実施形態では、ロール102は、後に更に詳しく述べるロール104上の歯と同様の歯を有し得る。これにより、構造化基材21の両面12、14に変位した繊維6を形成することが可能となる。
【0086】
ロール104はロール102と似ているが、ロール104は外周全体に切れ間なく延び得る山部を有する代わりに、ロール104の少なくとも一部に離間して延びる、周方向に間隔を置いて配された歯列110として改変された周方向に延びる複数の山部の列を含む。ロール104の個々の歯列110は、対応する溝112によって分離されている。動作時には、ロール102と104とは、ロール102の山部106がロール104の溝112内に延び、ロール104の歯110がロール102の溝108内に延びるようにして互いに噛み合う。この噛み合わせは、後述する図7の断面図により詳細に示されている。ロール102及び104の両方又は一方は、高温のオイルを充填したローラー又は電気的に加熱したローラーを使用するなど、当該技術分野では既知の手段によって加熱することができる。
【0087】
図3に示されるように、構造化基材21は、ベース基材20の概ね平面状の2次元的形態によって構造化基材21の両面上に画定される第1の領域2、及び間隔を置いて配された変位した繊維6と、ベース基材20の繊維の一体的伸長によって生じ得る不連続部16とによって画定される複数の個別の第2の領域4を有している。第2の領域4の構造は、構造化基材21のどちらの側面が考慮されるかによって異なる。図3に示される構造化基材21の実施形態では、構造化基材21の第1の表面12と関連付けられた構造化基材21の側面上において、別個の第2の領域4のそれぞれは、第1の表面12から外側に延びるとともに自由端18を有する多数の変位した繊維6を含み得る。変位した繊維6はZ方向に大きく配向した繊維を含み、それぞれの変位した繊維6は、第2の領域4の第1の表面12に近接した第1の側面11に沿って配置された基部5、第2の領域4の第1の側面11と対向した第2の側面13の第1の表面12の近くにおいて分離又は破断した自由端18、及び第1の表面12からZ方向に最大距離に位置する末端部3を有する。構造化基材21の、第2の表面14と関連付けられた側面上においては、第2の領域4は、構造化基材21の第2の表面14上の繊維配向の不連続部16によって画定される不連続部16を含む。不連続部16は、ロール104の歯110がベース基材20を貫通する位置に相当する。
【0088】
本明細書において使用するところの「一体的伸長」における用語「一体的」とは、第2の領域4について使用される場合、ベース基材20の繊維に由来する第2の領域4の繊維のことを指す。したがって、例えば変位した繊維6の破断繊維8は、ベース基材20から塑性変形及び/又は伸長された繊維であってよく、したがって、構造化基材21の第1の領域2と一体であり得る。別の言い方をすれば、繊維のすべてではないが一部が破断しており、その繊維は最初からベース基材20中に存在していたものである。本明細書で使用するところの「一体的」とは、変位した繊維を製造する目的で別の前駆体ウェブに導入又は添加される繊維とは区別されるべきものである。本発明の構造化基材21、22及び23の特定の実施形態では、このような添加される繊維を用い得るが、好ましい一実施形態では、変位した繊維6の破断繊維8は、構造化基材21と一体のものである。
【0089】
変位した繊維6中に破断繊維8を有する本発明の構造化基材21に適したベース基材20は、自由端18を破断及び形成するうえで充分な繊維の固定性及び/又は塑性変形を有する繊維を含む必要がある点は認識される。このような繊維は、図4及び5に自由繊維端18として示されている。本発明では、変位した繊維6の自由繊維端18は、流体を捕集するための空間又は自由体積を作り出すうえで望ましい。好ましい一実施形態では、Z方向に押し出された繊維の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%かつ100%未満が自由端18を有する破断繊維8である。
【0090】
第2の領域4は、形状、サイズ及び分布が異なり得る比容積分布を目標としてX−Y平面及びZ平面の両方にパターンを形成するように成形することができる。
【0091】
図2に示される構造化基材21の実施形態における変位した繊維6を有する代表的な第2の領域を、図3〜6に更なる拡大図で示す。代表的な変位した繊維6は、ロール104上の細長い歯110上で形成される種類のものであるため、変位した繊維6は、変位した繊維6が明瞭な長手方向の配向及び長手方向軸Lを有するようにほぼ整列した多数の破断繊維8を含んでいる。変位した繊維6は、MD−CD平面内の長手方向軸Lに対してほぼ直交する横方向軸Tもまた有する。図2〜6に示される実施形態では、長手方向軸LはMD方向に平行である。一実施形態では、間隔を置いて配されたすべての第2の領域4がほぼ平行な長手方向軸Lを有している。好ましい実施形態では、第2の領域4は長手方向の向きを有する。すなわち、第2の領域は細長い形状を有しており、円形とはならない。図4に示され、図5及び6により分かりやすく示されるように、ロール104に細長い歯110が用いられる場合、構造化基材21の一実施形態における変位した繊維6の破断繊維8の1つの特徴として、破断繊維8が主方向に整列している点がある。図5及び6に示されるように、破断繊維8の多くは図6におけるような平面図で見た場合に横方向軸Tに対してほぼ一様に整列し得る。「破断」繊維8とは、変位した繊維6が第2の領域4の第1の側面11を始点として、構造化基材21の第1の側面11に対向する第2の領域4の第2の側面13に沿って分離していることを意味する。
【0092】
したがって装置150に関して理解されるように、構造化基材21の変位した繊維6は、ほぼ平面状かつ2次元的ということができるベース基材20を機械的に変形させることによって製造される。「平面状」及び「2次元的」とは、第2の領域4が形成されたことによって付与された明瞭な面外のZ方向の3次元性を有する完成した構造化基材1に対してウェブが平坦であることを単純に意味する。「平面状」及び「2次元的」とは、いかなる特定の平坦度、平滑度又は次元性をも示唆するものではない。ベース基材20がニップ116を通過するに従って、ロール104の歯110がロール102Aの溝108に入り込むと同時に繊維をベース基材20の平面外に押し出すことによって、変位した繊維6及び不連続部16を含む第2の領域4が形成される。実際には、歯110はベース基材20を貫通するようにして「押す」か又は「打ち抜く」。歯110の先端が構造化基材20を貫通するようにして押す際、CD方向に主として配向した、歯110を横断する繊維の部分が歯110によってベース基材20の平面外に押し出され、Z方向に伸ばされ、引っ張られ、かつ/又は塑性変形されることにより、変位した繊維6の破断繊維8を含む第2の領域4が形成される。長手方向軸L、すなわち構造化基材20の機械方向にほぼ平行に主として配向された繊維は、歯110によって単純に拡げられてベース基材20の第1の領域2内にほぼ留まり得る。
【0093】
図2において、装置100は、1個のパターン形成ロール(例えばロール104)及び1個のパターン形成されていない溝形成ロール102を有する1つの構成として示されている。しかしながら、特定の実施形態では、各ロールの同じ又は異なる対応する領域に同じ又は異なるパターンのいずれかを有する2個のパターン形成ロールを使用することによって、ニップ116を形成することが好ましい場合もある。このような装置によって、変位した繊維6が構造化ウェブ21の両面から突出したウェブばかりでなく、ウェブ21に巨視的なパターンがエンボス加工されたウェブを製造することができる。
【0094】
変位した繊維6の数、間隔、及びサイズは、歯110の数、間隔、及びサイズを変えること、並びに必要に応じてロール104及び/又はロール102に対応する寸法的変更を加えること、によって変更することができる。このような変更は、ベース基材20において可能な変更、及びライン速度などのプロセスにおける変更とともに、多くの目的に応じた多くの異なる構造化ウェブ21の製造を可能とするものである。
【0095】
構造化ウェブ21の説明より、変位した繊維の破断繊維8は、構造化基材21の第1の表面12又は第2の表面14のいずれを始点として延び出してもよい点は理解される。変位した繊維6の破断繊維8はまた、構造化基材21の内部19から延びてもよいことはいうまでもない。図5に示されるように、変位した繊維6の破断繊維8は、ベース基材20のほぼ2次元的な平面外に押し出される(すなわち、図3に示されるように「Z方向」に押される)ことによって伸長する。一般に、第2の領域4の破断繊維8又は自由端18は、繊維質ウェブの第1の領域2の繊維と一体である繊維及び第1の領域2の繊維から延びる繊維を含む。
【0096】
破断繊維8の伸長は、繊維の塑性変形及びポアソン比の効果による、繊維断面寸法(すなわち丸い繊維の直径)の一般的な縮小をともない得る。したがって、変位した繊維6の破断繊維8の部分は、ベース基材20の繊維及び第1の領域2の繊維の平均繊維直径よりも小さい平均繊維直径を有し得る。繊維断面寸法の縮小は、変位した繊維6の基部5と自由端3との中間において最大であることが判明した。これは、変位した繊維6の基部5及び末端部3の繊維の部分が、下記により詳細に述べるロール104の歯110の先端に隣接することによって、それらがプロセスの間に摩擦によって引っかかって動かなくなることによるものと考えられる。本発明では、繊維断面の縮小は、高い繊維強度及び低い繊維の伸長率のために最小となっている。
【0097】
図7は、山部106及び歯110を含む互いに噛み合ったロール102(並びに下記に述べる102A及び102B)及び104の一部の断面図を示している。図に示されるように、歯110は、歯の高さTH(THは、山部106の高さにも適用され得る点に注意。好ましい一実施形態では歯の高さと山部の高さとは等しい)、及びピッチPと呼ぶ歯間の間隔(又は山部間の間隔)を有する。示されるように、噛合深さ(DOE(depth of engagement))Eは、ロール102と104との噛み合いの程度の目安であり、山部106の先端から歯110の先端までを測定したものである。噛合深さE、歯の高さTH、及びピッチPは、本発明のベース基材20の性質及び構造化基材1の所望の特徴に応じて望み通りに変更することができる。例えば一般に、変位した繊維6において破断繊維8を得るには、繊維が破断する点まで変位した繊維を伸長及び塑性変形させるうえで充分な噛合度Eを必要とする。更に、下記に述べるように、所望の第2の領域4の密度(構造化基材1の単位面積当たりの第2の領域4)が大きいほど、ピッチは小さくなければならず、歯の長さTL及び歯間距離TDは小さくなければならない。
【0098】
図8は、スパンボンド不織布のベース基材20からスパンボンド不織布材料の構造化基材21又は構造化基材1を製造するうえで有用な多数の歯110を有するロール104の一実施形態の一部を示している。図8に示される歯110の拡大図を図9に示す。このロール104の図では、歯110は、歯の先端111において前縁LEから後縁TEまでを概ね測定した場合に約1.25mmの一様な周方向の長さ寸法TLを有し、周方向に約1.5mmの距離TDだけ互いから一様に離間している。ベース基材20から繊維質構造化基材1を製造するには、ロール104の歯110は、約0.5mm〜約3mmの範囲の長さTL及び約0.5mm〜約3mmの間隔TD、約0.5mm〜約10mmの範囲の歯の高さTH、及び約1mm(0.040インチ)〜2.54mm(0.100インチ)のピッチPを有し得る。噛合深さEは、約0.5mm〜約5mm(最大で歯高THに達する)であり得る。無論、E、P、TH、TD及びTLは、変位した繊維6の所望の径、間隔、及び面密度(構造化基材1の単位面積当たりの変位した繊維6の数)を実現するために互いに独立してそれぞれ変化させることができる。
【0099】
図9に示されるように、各歯110は、先端111、前縁LE及び後縁TEを有する。歯の先端111は、繊維の破断を最小にするために丸めることができ、好ましくは細長い形状に形成され、第2の領域4の長手方向軸Lと一致した概ね長手方向を有している。構造化基材1の変位した繊維6を得るには、LE及びTEはロール104の局所的周辺面120に対して極めて直角に近い角度で直交しなければならないものと考えられる。同様に、先端111からLE又はTEへの移行部は、使用時に歯110がLE及びTEにおいてベース基材20を貫通するように充分に小さい曲率半径を有する、直角のような比較的鋭角でなければならない。代替的な歯の先端111として、結合を最適化するような平坦面としてもよい。
【0100】
再び図1を参照すると、変位した繊維6が形成された後、構造化基材21は回転ロール104上を、ロール104と第1の結合ロール156との間のニップ117へと移動することができる。結合ロール156は、多くの結合法を容易にし得るものである。例えば、結合ロール156は、ニップ117において熱エネルギーを付与することにより、変位した繊維6の末端(先端部)において構造化基材21の隣り合う繊維同士を溶融結合するための加熱スチールローラであってよい。
【0101】
好ましい一実施形態では、下記に好ましい構造化基材の文脈において述べるように、結合ロール156は、変位した繊維6の末端の隣り合う繊維同士を熱結合するうえで充分な熱エネルギーを構造化基材21に付与するように設計された加熱ロールである。熱結合は、隣り合う繊維同士を直接溶融結合することにより、あるいは、ポリエチレン粉末などの中間熱可塑剤を溶融し、これによって隣り合う繊維同士を接着することによって行うことができる。こうした目的では、ベース基材20にポリエチレン粉末を添加することができる。
【0102】
第1の結合ロール156は、変位した繊維6の末端3の繊維が溶融又は部分的に溶融されるように充分に加熱することができる。第1の結合ロール156において必要とされる熱の量又は熱容量は、変位した繊維6の繊維の溶融特性、及びロール104の回転速度によって決まる。第1の結合ロール156において必要とされる熱の量はまた、第1の結合ロール156とロール104上の歯110の先端との間に引き起こされる圧力、及び変位した繊維6の末端3において望ましい溶融度にも依存する。
【0103】
一実施形態では、第1の結合ロール156は、変位した繊維6の隣り合う繊維同士を溶融結合するうえで充分な表面温度にまで加熱された加熱スチール円筒状ロールである。第1の結合ロール156は、内部電気抵抗ヒーター、高温のオイル、又は加熱ロールを製造するための当該技術分野では既知の任意の方法によって加熱することができる。第1の結合ロール156は、当該技術分野では既知の好適なモータ及び連結要素によって駆動することができる。同様に、第1の結合ロールは、ニップ117を正確に調節及び設定することができるように調節可能な支持部材に取り付けることができる。
【0104】
図10は、ニップ117を通して構造化基材22へと処理された後の構造化基材21の一部を示したものである。構造化基材22は、更なる処理を行わなければ本発明の構造化基材21であり得る。構造化基材22は、変位した繊維6の末端3が結合、好ましくは熱溶融結合されていることにより、隣り合う繊維同士が少なくとも部分的に結合して末端に位置する溶融結合部分9を形成している点以外は、上記で述べた構造化基材21と似ている。上記に述べたプロセスによって変位した繊維6を形成した後、変位した繊維6の末端部3を加熱して繊維の部分同士を熱的に接合することによって、隣り合う繊維部分同士が互いに接合されて、「先端結合」とも呼ばれる溶融結合部分9を有する変位した繊維6を形成することができる。
【0105】
末端に位置する溶融結合部分9は、変位した繊維6の末端部に熱エネルギー及び圧力を作用させることによって製造することができる。末端に位置する溶融結合部分9のサイズ及び質量は、変位した繊維6の末端部に加えられる熱エネルギーの量、装置150のライン速度、及び熱を加える方法を改変することによって改変することができる。
【0106】
別の実施形態では、末端に位置する溶融結合部分9は、放射熱を加えることによって作ることができる。すなわち、一実施形態では、結合ロール156を放射熱源によって置き換えるか、又は補充することにより、変位した繊維6の末端に位置する部分の繊維部分が軟化又は溶融するうえで充分な距離かつ対応する充分な時間で構造化基材21に向けて放射熱を放射することができる。放射熱は、既知の放射熱ヒーターのいずれによって加えてもよい。一実施形態では、構造化基材21に対して配置される抵抗熱線によって放射熱を与えることが可能であり、抵抗熱線を充分に近接かつ均一な間隔を置いた距離でCD方向に延在させることによって、ウェブが熱線に対して動かされるのに従って放射熱が変位した繊維6の末端に位置する部分を少なくとも部分的に溶融する。別の実施形態では、衣類にアイロンをかけるための手持ち式アイロンのような加熱された平坦なアイロンを、変位した繊維6の末端3に接して保持することにより、アイロンによって溶融を行うことができる。
【0107】
上記に述べたようにして構造化基材22を処理することの効果は、変位した繊維6の末端3を、変位した繊維6を圧縮又は平坦化することなくニップ117における所定の圧力下で溶融させることができる点である。これにより、成形後に熱結合を行うことによって、3次元ウェブを製造及び所定形状に硬化又はいわば「固定(lock in)」することができる。更に、末端に位置する結合又は溶融結合された部分9は、構造化基材22が圧縮又は剪断力に曝される際に変位した繊維6の厚みのある構造及び構造化基材のエイジング処理キャリパー(aged caliper)を維持する助けとなり得る。例えば、第1の領域2と一体であるが第1の領域2から延びるとともに末端に位置する溶融結合部分9を有する繊維からなる変位した繊維6を有するように、上記に述べたようにして処理された構造化基材22は、供給ロールに巻き取られた後に巻き出されることによる圧縮後の形状維持性が高くなり得る。変位した繊維6の末端部において隣り合う繊維同士を結合することにより、圧縮時に繊維がランダムに圧し潰れることが少なくなるものと考えられる。すなわち、変位した繊維6の全体の構造が一緒に動く傾向にあるため、ウェブの表面が擦られることにともなって生じる圧縮力及び/又は剪断力などの秩序を乱す事象に際して高い形状維持性が与えられる。
【0108】
図1を参照して述べる代替的な一実施形態では、基材20は、ローラー154上を、噛合深さが0.25mm〜3.81mm(0.01インチ〜0.15インチ)である、逆回転する互いに噛み合ったロール102Aと104の第1の組のニップ116へと機械方向に移送されることにより、部分的な繊維の変位が生じるが、繊維の破断は生じたとしてもごくわずかである。次いでウェブは、ロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117へと進み、部分的に変位した繊維の先端が結合される。ニップ117を通過した後、構造化基材22は、噛合深さがニップ116における噛合深さよりも大きい、ロール104と102Bとの間に形成されたニップ118へと進むことにより、変位した繊維が更に変位させられて破断繊維が形成される。このプロセスにより、より多くの変位した繊維6が溶融結合部分9によって接合されることになる。
【0109】
過剰結合とは、予め繊維が変位させられた基材に対して行われる溶融結合のことを指す。過剰結合は、必要に応じて行われる処理工程である。過剰結合はインラインで行われてもよいが、あるいは別の転換プロセスで行うこともできる。
【0110】
過剰結合は、フィラメント同士を固着したパターンで融合させるうえで熱及び圧力に依存している。固着したパターンは、繰り返しパターンが認められるように構造化基材の長さに沿って再現可能なパターンとして定義される。過剰結合は、少なくとも一方のロールが加熱された、好ましくは両方のロールが加熱された、加圧されたローラニップを通過させることによって行われる。ベース基材が既に加熱されている場合に過剰結合が行われる場合には、加圧されたローラニップを加熱する必要はない。過剰結合領域11のパターンの例が図12a〜12fに示されているが、他の過剰結合のパターンも可能である。図12aは、機械方向に連続的なパターンを形成する過剰結合領域11を示す。図12bは、過剰結合11の連続的なネットワークが形成されるように、機械方向及び横断方向の両方に形成された連続的な過剰結合領域11を示す。この種のシステムは、単一工程過剰結合ロール又は複数のロール結合システムによって製造することができる。図12cは、機械方向に不連続な過剰結合領域11を示す。図12cに示されるMD方向の過剰結合パターンは、MD方向の過剰結合ラインを連続的又は不連続的な配置で連結するCD方向の過剰結合領域11を更に含んでもよい。図12dは、MD方向に波形のパターンを形成する過剰結合領域11を示す。図12eは、ヘリンボーンパターンを形成する過剰結合領域11を示しており、図12fは、波状のヘリンボーンパターンを示している。
【0111】
過剰結合パターンは均一に分布している必要はなく、特定の用途に合わせた外形とすることができる。過剰結合が行われる全体の面積は、繊維質ウェブの全体の面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは25%未満であるが、少なくとも3%である。
【0112】
図13は、過剰結合の特徴を示したものである。過剰結合領域11は、過剰結合領域間で測定されるベース基材20の第1の領域の厚さ32に対する厚さ特性を有する。過剰結合領域11は、圧縮された厚さ42を有する。過剰結合領域は、構造化基材21上における固有の幅44、及び過剰結合領域間の間隔46を有する。
【0113】
第1の領域の厚さ32は、好ましくは0.1mm〜1.5mm、より好ましくは0.15mm〜1.3mm、より好ましくは0.2mm〜1.0mm、最も好ましくは0.25mm〜0.7mmである。過剰結合領域の厚さ42は、好ましくは0.01mmから0.5mm、より好ましくは0.02mm〜0.25mm、更により好ましくは0.03mm〜0.1mm、最も好ましくは0.05mm〜0.08mmである。過剰結合領域11の幅44は、0.05mm〜15mm、より好ましくは0.075mm〜10mm、更により好ましくは0.1mm〜7.5mm、最も好ましくは0.2mm〜5mmである。過剰結合領域11間の間隔46は、構造化基材21内で均一である必要はないが、極値は0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmの範囲に含まれる。過剰結合領域11の間隔46、幅44及び厚さ42は、引っ張り強度及び流体処理特性などの構造化基材21において望ましい性質に基づいたものである。
【0114】
図13は、過剰結合の厚さ42を有する過剰結合11が、構造化基材21の一方の側面に形成され得ることを示している。図14は、過剰結合11が、構造化基材21を製造するために使用される方法に応じて、構造化基材21の両側に存在し得ることを示している。構造化基材21の両側12、14の過剰結合11は、流体の管理を更に容易とするために構造化基材が他の不織布を組み合わされる場合にトンネルを形成するうえで望ましいものとなり得る。例えば両面構造化基材は、多層高容積流体捕捉システムにおいて使用することができる。
【0115】
過剰結合プロセス
図1の装置を参照すると、構造化基材23は、変位した繊維6の末端に位置する部分には存在しない、又はその部分のみに存在するわけではない結合部分を有し得る。例えば、結合ロール156として平坦な円筒状ロールの代わりに噛合する山部が形成されたローラーを使用することによって、第1の領域2の第1の表面12上の第2の領域4間の位置などの構造化基材23の他の部分を結合させることができる。例えば、溶融結合された材料の連続的なラインを第1の表面12上の変位した繊維6の列の間に作ることができる。溶融結合された材料の連続的なラインは、上記に述べたような過剰結合領域11を形成する。
【0116】
1個の第1の結合ロール156が示されているが、一般的には1個よりも多い結合ロールをプロセスのこの段階で使用することにより、結合が一連のニップ117において行われ、かつ/又は異なる種類の結合ロール156が関与するようにしてもよい。更に、結合ロールのみばかりでなく、機能的効果を付与するための様々な表面処理剤などの様々な物質をベース基材20又は構造化ウェブ21に転写するための同様のロールを設けることができる。そのような処理剤を塗布するための当該技術分野では既知の任意のプロセスを用いることができる。
【0117】
ニップ117を通過後、構造化基材22は、ロール104と、好ましくはロール102Aと同じものであるロール102Bとの間に形成されたニップ118に進む。ロール102Bの周囲を通過させる目的は、構造化基材22上に形成された変位した繊維6を乱すことなく、構造化基材22をロール104から剥がすことである。ロール102Bはロール102Aとまったく同様にしてロール104と噛み合うため、変位した繊維6は構造化基材22がロール102Bの周囲に巻き付けられるに従ってロール102Bの溝108に嵌まり込む。ニップ118を通過した後、構造化基材22は、本発明の構造化基材23として更なる処理を行うために供給ロール上に巻き取られる。しかしながら、図1に示される実施形態では、構造化基材22はロール102Bと第2の結合ロール158との間のニップ119を通過して処理される。第2の結合ロール158は、第1の結合ロール156と同じ設計のものでよい。第2の結合ロール158は、構造化基材22の第2の表面14の一部を少なくとも部分的に溶融するだけの充分な熱を与えることによって、ロール102Bの山部106の先端とロール158のほぼ平坦かつ平滑な表面との間のニップ圧に対応した、多数の互いに交差しない、ほぼ連続的な過剰結合領域11を形成することができる。
【0118】
第2の結合ロール158は、プロセスにおける唯一の結合工程として使用することができる(すなわち、変位した繊維6の末端を結合させることによって構造化基材22を最初に形成することなく)。その場合、構造化ウェブ22は、その第2の側面14上に結合部分を有する構造化ウェブ23となる。しかしながら一般的には、構造化ウェブ23は、第1の側面12又は第2の側面14上に変位した繊維6の結合された末端(先端結合部)及び多数の互いに交差しない、ほぼ連続的な溶融結合領域を有する両面過剰結合構造化ウェブ22であることが好ましい。
【0119】
最後に、構造化基材23が形成された後、構造化基材23を保管及び他の製品の要素として更なる処理を行うために供給ロール160上に巻き取ることができる。
【0120】
代替的な一実施形態では、図1Aに示されるプロセスを用いて第2の基材21Aを構造化基材21に加えることができる。第2の基材21Aは、フィルム、不織布又は上記に述べたような第2のベース基材であり得る。この実施形態では、ベース基材20は、ローラー154上を、逆回転する互いに噛み合ったロール102Aと104の第1の組のニップ116へと機械方向に移送され、繊維が完全に変位させられて破断繊維が形成される。次いでウェブは、ロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117に進み、第2の基材21Aが導入され、変位した繊維6の末端部3に結合される。ニップ117を通過した後、構造化基材22はロール104と102Bとの間に形成されたニップ118に進むが、噛合深さが0であるためにロール104と102Bとは噛み合わないか、又は噛合深さがロール102Aと104との間のニップ116において形成される噛合深さよりも小さいために、構造化基材に更なる繊維の変位は生じない。また、この実施形態では、ニップ118における噛合深さを、第2の基材21Aに変形が生じるが構造化基材22には更なる繊維の変位が生じないように設定することもできる。換言すれば、ニップ118における噛合深さは、ニップ116における噛合深さよりもやはり小さくなっている。
【0121】
材料
本発明のベース基材の繊維を形成するために使用される組成物には、熱可塑性ポリマー材料及び非熱可塑性ポリマー材料が含まれ得る。熱可塑性ポリマー材料は、溶融紡糸に適したレオロジー特徴を有する必要がある。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするうえで充分でなければならず、なおかつ溶融紡糸を可能とするだけ充分に低くなければならない。溶融紡糸のためには、熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満、好ましくは約5,000g/mol〜約750,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol〜約500,000g/mol、更により好ましくは約50,000g/mol〜約400,000g/molの分子量を有する。他の部分において特に断らないかぎりは、示される分子量は数平均分子量である。
【0122】
熱可塑性ポリマー材料は、短繊維用の紡糸延伸プロセス又はスパンボンド連続繊維プロセスなどの既知のプロセスにおいて典型的に見られるように、好ましくは伸長流れ下において比較的急速に固化して熱的に安定な繊維構造を形成可能なものである。好ましいポリマー材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。その他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーについては、米国特許第6746766号、同第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に述べられている。一般的な熱可塑性ポリマー繊維グレードの材料が好ましく、最も注目すべきものとしては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせがある。最も好ましいのは、ポリエステル及びポリプロピレン系樹脂である。
【0123】
本発明における使用に適した熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート(PET)及びコポリマー(coPET)、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーを含む芳香族ポリエステル;ポリトリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレン及びプロピレンコポリマー;ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー;脂肪族/芳香族コポリエステル;ポリカプロラクトン;ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−ヘキサノエート)、又は本明細書に参照により援用するNodaに付与された米国特許第5,498,692号に参照される他の高分子量(ヒドロキシブチレート−コ−アルカノエート)を含むポリ(ヒドロキシアルカノエート);脂肪族ポリオール(すなわち、ジアルカノイルポリマー)から誘導されたポリエステル及びポリウレタン;ポリアミド;ポリエチレン/ビニルアルコールコポリマー;乳酸ホモポリマー及び乳酸コポリマーを含む乳酸ポリマー;ラクチドホモポリマー及びラクチドコポリマーを含むラクチドポリマー;グリコリドホモポリマー及びグリコリドコポリマーを含むグリコリドポリマー;並びにこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、乳酸ポリマー、及びラクチドポリマーが好ましい。
【0124】
好適な乳酸及びラクチドポリマーとしては、一般的に約10,000g/mol〜約約600,000g/mol、好ましくは約30,000g/mol〜約400,000g/mol、より好ましくは約50,000g/mol〜約200,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する乳酸及び/又はラクチドのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。市販のポリ乳酸ポリマーの例としては、コロラド州ゴールデン所在のChronopol Incorporationより販売される各種のポリ乳酸、及びEcoPLA(登録商標)の商品名で販売されるポリラクチドが挙げられる。好適な市販のポリ乳酸の例としては、Cargill DowからのNATUREWORKS及び三井化学株式会社からのLACEAがある。約160℃〜約175℃の融点を有するポリ乳酸のホモポリマー又はコポリマーが好ましい。ポリL−乳酸、及びD異性体レベルが最大で75%であるポリD,L−乳酸などの修飾ポリ乳酸及び異なる立体配置を使用することもできる。高融点のPLAポリマーを作り出すためのD及びL異性体の必要に応じたラセミ混合物も好ましい。これらの高融点のPLポリマーは、融点が180℃よりも高い特殊なPLAコポリマーである(D異性体とL異性体が異なる立体モノマーとして処理されるとの理解に基づく)。このような高い融点は、平均融点を上げるための結晶寸法の特別な制御によって実現される。
【0125】
使用される特定のポリマー、プロセス、及び繊維の最終用途に応じて1種類よりも多いポリマーが望ましい場合もある。本発明のポリマーは、繊維の機械的特性、繊維の不透明度を高め、繊維と流体の相互作用を最適化し、溶融物の加工性を高め、繊維の細径化性を高める量で存在する。ポリマーの選択及び量は、繊維が熱的に結合可能であるか否かを更に決定し、最終製品の柔軟性及びテクスチャに影響する。本発明の繊維は、単一のポリマー、複数のポリマーのブレンドを含むか、あるいは1種類よりも多いポリマーを含む多要素繊維であってよい。本発明における繊維は熱結合性のものである。
【0126】
多成分のブレンドが望ましい場合もある。例えば、この方法を用いてポリエチレンとポリプロピレンのブレンド(以後、ポリマーアロイと呼ぶ)を混合及び紡糸することができる。別の例は、粘性又はモノマー含量が異なるポリエステルのブレンドである。区別可能な化学種を各要素に含有する多要素繊維を製造することもできる。その非限定的な例としては、25メルトフローレート(MFR)のポリプロピレンと50MFRのポリプロピレンとの混合物、及び25MFRのホモポリマーポリプロピレンと、コモノマーとしてのエチレンとポリプロピレンとの25MFRのコポリマーとの混合物が挙げられる。
【0127】
より好ましいポリマー材料は、110℃よりも高い、より好ましくは130℃よりも高い、更により好ましくは145℃よりも高い、更により好ましくは160℃よりも高い、最も好ましくは200℃よりも高い融点を有する。本発明において更に好ましいのは、高いガラス転移温度を有するポリマーである。最終用途の繊維の形態において−10℃よりも高い、より好ましくは0℃よりも高い、更により好ましくは20℃よりも高い、最も好ましくは50℃よりも高いガラス転移温度が好ましい。このような性質の組み合わせによって、高い温度において安定的な繊維が製造される。この主の材料の代表的な例としては、ポリプロピレン、ポリ乳酸系ポリマー、及びポリエチレンテレフタレート(polyester terephthalate)(PET)系ポリマーシステムがある。
【0128】
必要に応じて用いられる材料
必要に応じて、ベース基材の繊維を形成するために使用される紡糸可能な組成物に他の成分を加えることができる。必要に応じて用いられる材料を使用することによって加工性を改変し、及び/又は最終製品の不透明度、弾性、引っ張り強度、湿潤強度、及び弾性率などの物理特性を改変することができる。他の効果としては、これらに限定されるものではないが、酸化安定性などの安定性、白色度、色、可撓性、弾力性、加工性、加工助剤、粘度改変剤、及び悪臭防止効果が挙げられる。必要に応じて用いられる材料の例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化チタン、炭酸カルシウム、着色顔料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらに限定されるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加物を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。他の好適な無機材料としては、これらに限定されるものではないが、ケイ酸マグネシウム水和物、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰岩、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、これらに限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩などの無機塩類を使用することもできる。
【0129】
必要に応じて、他の成分を組成物に加えることもできる。必要に応じて用いられるこれらの成分は、組成物の重量に対して約50重量%未満、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約12重量%の量で存在してよい。必要に応じて用いられるこれらの成分を使用することによって、加工性を改変し、及び/又は最終製品の弾性、引っ張り強度及び弾性率といった物理的特性を改変することができる。他の効果としては、これらに限定されるものではないが、酸化安定性などの安定性、白色度、可撓性、色、弾力性、加工性、加工助剤、粘度改変剤、生分解性、及び悪臭防止効果が挙げられる。非限定的な例として、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は遅延剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、その他の加工助剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、タンパク質及びそのアルカリ塩、ワックス、粘着性付与樹脂、増量剤、及びこれらの混合物が挙げられる。スリップ剤は、繊維の粘着性又は摩擦係数を低下させるために使用される。スリップ剤は、特に高い湿度又は高温における繊維の安定性を高めるために使用することもできる。好適なスリップ剤はポリエチレンである。熱可塑性デンプン(TPS)をポリマー組成物に加えることもできる。特に重要なのは、ポリエステル熱可塑性材料、特にPETの製造及び使用における静電気の蓄積を低減させるために使用されるポリマー添加剤である。このような好適な材料としては、アセトアルデヒド酸スカベンジャー、エトキシル化ソルビトールエステル、グリセロールエステル、スルホン酸アルキル、これらの組み合わせ及び混合物、並びに誘導体化合物がある。
【0130】
マグネシウム、アルミニウム、シリコン、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加剤を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。その他の無機材料としては、水和ケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰石、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩などの無機塩類を加工助剤として使用してもよい。熱可塑性デンプンブレンド繊維の水反応性を改変する他の必要に応じて用いられる材料としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及び他のステアリン酸塩などのステアリン酸塩、並びにガムロジンなどのロジン成分がある。
【0131】
親水性剤をポリマー組成物に加えることができる。親水性剤は、当該技術分野では既知の標準的な方法によって添加することができる。親水性剤は、低分子量のポリマー材料又は化合物であってよい。親水性剤は、高分子量のポリマー材料であってもよい。親水性剤は、0.01重量%〜90重量%の量で、好ましくは0.1重量%〜50重量%の範囲で、より好ましくは0.5重量%〜10重量%の範囲で存在すればよい。親水性剤は、最初の樹脂が樹脂製造業者において製造される際に添加されてもよく、又は繊維が製造される際に押出成形機にマスターバッチとして加えられてもよい。好ましい親水性剤としては、ポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルコポリマー、及びポリエステル系ポリマー用の非イオン性ポリエステル化合物がある。エトキシ化された低分子量及び高分子量のポリオレフィン性化合物を添加することもできる。これらの材料の加工性を高めるとともに、より均一かつ均質なポリマー化合物を製造する助けとするために相溶化剤をこれらの材料に添加することができる。当業者であれば、相溶化剤を混合工程において添加することにより、溶融添加剤がベースポリマーに対して本来的に効果的ではないポリマーアロイを製造することができる点は理解するであろう。例えば、マレイン酸化ポリプロピレンを相溶化剤として使用することにより、ベースポリプロピレンを親水性ポリエステルポリエーテルコポリマーと合わせることができる。
【0132】
繊維
本発明においてベース基材を形成する繊維は、1要素又は多要素のものであってよい。用語「繊維」とは、厚さに対する長さの比が1,000よりも大きい固化ポリマー形状として定義される。本発明の1要素繊維はまた多成分であってもよい。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。本明細書で使用するところの多成分繊維とは、1種類よりも多い化学種又は材料を含む繊維を意味するものとして定義される。多成分ポリマーとアロイ化ポリマーは、本発明では同じ意味を有し、互換可能に使用され得る。一般的に繊維は、1要素又は多要素のタイプのものであり得る。本明細書で使用するところの要素とは、繊維の別の部分と所定の空間的関係を有する、繊維の別の部分として定義される。本明細書で使用するところの多要素(multicomponent)とは、互いに対して空間的関係にある1つよりも多い別々の部分を有する繊維として定義される。多要素繊維なる用語には、互いに対して空間的関係にある2つの別々の部分を有する繊維として定義される2要素繊維が含まれる。多要素繊維の異なる要素は、繊維の断面において実質的に異なる領域に配され、繊維の長さに沿って連続的に延在する。多要素繊維の製造方法は、当該技術分野では周知のものである。多要素繊維の押出成形は1960年代には周知であった。DuPontは多要素繊維機能の先端技術開発企業であり、米国特許第3,244,785号及び同第3,704,971号に、これらの繊維の製造に使用される技術の技術的な説明が掲載されている。1971年にMerrow Publishingより刊行された、R.Jeffries著のBicomponent Fibersは、2要素繊維の製造技術の確固たる基盤を確立した。より最近の出版物としては、「Taylor−Made Polypropylene and Bicomponent Fibers for the Nonwoven Industry」、Tappi Journal、1991年12月(103頁)、及びWoodhead Publishingより刊行されたナカジマ編、「Advanced Fiber Spinning Technology」がある。
【0133】
本発明において形成される不織布は、同じ紡糸口金を通じて異なる押し出しシステムから供給される複数の種類の1要素繊維を含み得る。この例における押出システムは、別々の毛管に異なるポリマーを供給する多要素押出しシステムである。例えば、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレートを供給し、他方がポリエステルテレフタレートコポリマーを供給するようにすることでコポリマー組成物は異なる温度で溶融する。第2の例では、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方がポリプロピレンを供給する。第3の例では、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方が第1のポリエステルテレフタレート樹脂と異なる分子量を有する更なるポリエステルテレフタレートを供給する。このシステムにおけるポリマー比は、95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、及び80:20〜20:80の範囲であり得る。
【0134】
2要素繊維及び多要素繊維は、サイドバイサイド型の構成、シース/コア型の構成、分割パイ型の構成、リボン型の構成、海島型の構成、又はこれらの組み合わせであってよい。シースはコアの周囲において連続的又は非連続的であってよい。代表的な多要素繊維の非包括的な例が、米国特許第6,746,766号に開示されている。コアに対するシースの重量比は、約5:95〜約95:5である。本発明の繊維は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、星形、3葉形、3〜8葉を有する多葉形、長方形、H字形、C字形、I字形、U字形、及び他の様々な変形を含む異なる幾何学形状を有し得る。中空繊維を使用することもできる。好ましい形状は、円形、3葉形及びH字形である。円形又は3葉形の繊維の形状はまた中空であってもよい。
【0135】
「高度に細径化された繊維」とは、高いドローダウン比を有する繊維として定義される。繊維の全体のドローダウン比は、最終用途における最終的な繊維の直径に対する繊維の最大直径(典型的には毛管を出た直後に生ずる)の比として定義される。繊維の全体のドローダウン比は1.5よりも大きく、好ましくは5よりも大きく、より好ましくは10よりも大きく、最も好ましくは12よりも大きい。これは、触覚性及び有用な機械的特性を実現するうえで必要である。
【0136】
本発明の成形繊維の繊維の「直径」は、繊維の外周に外接する円の直径として定義される。中空繊維の場合では、直径は中空領域の直径ではなく、中実領域の外縁部の直径である。非円形の繊維の場合では、繊維直径は、非円形繊維の葉部又は縁部の最も外側の点に外接する円を用いて測定される。この外接円の直径は、その繊維の有効直径と呼ばれる場合もある。好ましくは、高度に細径化された多要素繊維は、500マイクロメートルよりも小さい有効繊維直径を有する。より好ましくは、有効繊維直径は250マイクロメートル以下であり、更により好ましくは100マイクロメートル以下であり、最も好ましくは50マイクロメートルよりも小さい。不織布を製造するために一般的に使用される繊維は、約5マイクロメートル〜約30マイクロメートルの有効繊維直径を有する。本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布に見られる繊維よりも大きい傾向がある。このため、10マイクロメートルよりも小さい有効直径を有する繊維は使用されない。本発明において有用な繊維は、約10マイクロメートルよりも大きい、より好ましくは15マイクロメートルよりも大きい、最も好ましくは20マイクロメートルよりも大きい有効直径を有する。繊維の直径は、紡糸速度、質量スループット、及びブレンド組成によって制御される。本発明における繊維が個別の層として製造される場合、その層を、細い繊維、場合によりナノ寸法の繊維を含む更なる層と合わせることができる。
【0137】
スパンレイド直径なる用語は、約12.5マイクロメートルより大きく、最大50マイクロメートルまでの有効直径を有する繊維のことを指す。この直径範囲は、最も標準的なスパンレイド装置によって製造されるものである。マイクロメートル(micrometer)とマイクロメートル(micron)(μm)は同じものを意味し、互換可能に使用することができる。メルトブローン直径は、スパンレイド直径よりも小さい。メルトブローン直径は、典型的には、約0.5〜約12.5マイクロメートルである。好ましいメルトブローン直径は、約1〜約10マイクロメートルの範囲である。
【0138】
成形繊維の直径を決定することは困難であるため、繊維のデニールがしばしば参照される。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義され、dpf(デニール/フィラメント)として表される。したがって、直径からデニールに変換する及びその逆の場合には、この繊維の固有の密度も考慮される。本発明においては好ましいデニールの範囲は、1dpfよりも大きく100dpfよりも小さい範囲である。より好ましいデニールの範囲は1.5dpf〜50dpfであり、より好ましい範囲は2.0dpf〜20dpfであり、最も好ましい範囲は4dpf〜10dpfである。ポリプロピレンにおける直径に対するデニールの関係の一例として、約0.900g/cm3の密度を有する中実、円形のポリプロピレンの1dpfの繊維は約12.55マイクロメートルの直径を有する。
【0139】
本発明では、繊維は圧縮力に耐えるために限られた伸長性を有し、一定の剛性を示すことが望ましい。本発明の繊維は、個々の繊維破断負荷が5g/フィラメントよりも大きいものである。繊維の引っ張り特性は、ASTM規格D 3822−91に一般的に述べられる方法、又はこれに相当する試験に従って測定されるが、使用した実際の試験については下記に詳細に述べる。引っ張り係数(特に断らないかぎりはASTM規格D 3822−91に述べられる初期弾性率)は、0.5GPa(ギガパスカル)よりも大きく、より好ましくは1.5GPaよりも大きく、更により好ましくは2.0GPaよりも大きく、最も好ましくは3.0GPaよりも大きくなければならない。引っ張り係数が大きいほど、持続的な比容積をもたらす剛性の高い繊維となる。以下に例を示す。
【0140】
本発明においては、繊維の親水性及び疎水性を調節することが可能である。ベース樹脂の性質は、共重合による親水性を有するか(特定のポリエステル(Eastman Chemicalより販売されるEASTONE、スルホポリエステルのポリマー群一般)又はポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィンの場合)、あるいはベース樹脂に親水性をもたらす材料をベース樹脂に添加することができる。添加剤の代表的な例としては、CIBA Irgasurf(登録商標)の添加剤群が挙げられる。本発明の繊維は、繊維の製造後に繊維に親水性を与えるための処理又はコーティングを行ってもよい。本発明では、耐久性のある親水性が好ましい。耐久性のある親水性とは、複数回の流体との相互作用の後に親水性を維持していることとして定義される。例えば、評価を行う試料に耐久性のある親水性について試験を行う場合、試料に水を注いで濡れを観察することができる。試料が濡れた場合には、試料は最初、親水性である。次いで試料を水でよくすすいで乾燥させる。すすぎは、試料を大きな容器に入れ、10秒間揺動した後、乾燥させることによって最も効果的に行われる。乾燥後の試料は、再び水と接触させた場合にやはり濡れなければならない。
【0141】
本発明の繊維は熱安定性である。繊維の熱安定性は、沸騰水中での収縮率が30%よりも小さい、より好ましくは収縮率が20%よりも小さい、最も好ましくは収縮率が10%よりも小さいものとして定義される。本発明の繊維の一部のものは、5%よりも小さい収縮率を有する。収縮率は、沸騰水中に繊維を1分間入れた前後に繊維の長さを測定することによって求められる。高度に細径化された繊維は、熱安定性繊維の製造を可能とするものである。
【0142】
本発明でのベース基材に使用される繊維形状は、数ある形状の中でも、中実円形、中空円形、及び様々な多葉(multi-lobal)形状の繊維からなるものでよい。互いに異なる断面形状を有する成形繊維の混合物とは、走査型電子顕微鏡によって断面を調べた場合に、区別可能に充分に異なる断面形状を有する少なくとも2種類の繊維として定義される。例えば、2種類の繊維は3葉形であるが、一方の3葉形は長い脚を有し、他方の3葉形は短い脚を有してもよい。好ましくはないが、成形繊維は、全体的な断面形状が同じであっても1つの繊維が中空であって別の繊維が中実である場合には、異なっているとされる場合もある。
【0143】
多葉(multi-lobal)形状の繊維は、中実であっても、中空であってもよい。多葉状繊維とは、繊維の外表面に沿って複数の変曲点を有するものとして定義される。変曲点とは、繊維を繊維軸に対して垂直に切断する場合における、繊維表面に対して垂直に引かれた線の傾きの絶対値の変化として定義される。成形繊維には、三日月形、楕円形、方形、菱形、又は他の好適な形状も含まれる。
【0144】
中実円形の繊維は、合成繊維の業界では長年にわたって既知である。これらの繊維は、繊維断面の幅にわたって光学的に実質的に連続した物質の分布を有する。これらの繊維は、微小空隙又は内部フィブリルを含んでもよいが、実質的に連続であるとみなされる。中実円形繊維の外表面には変曲点は存在しない。
【0145】
本発明の中空繊維は、円形形状又は多葉形状のいずれかによらず中空領域を有する。中空繊維の中実の領域が中空の領域を包囲する。中空領域の外周は、中実領域の内周でもある。中空領域は、中空繊維と同じ形状であってもよく、又は中空領域の形状は、非円形又は非同心状とすることができる。複数の中空領域が繊維内に存在してもよい。
【0146】
中空領域は、いかなる材料も含まない繊維の部分として定義される。また、空隙領域又はから空間として述べることもできる。中空領域は、繊維の約2%〜約60%を構成する。中空領域は、好ましくは繊維の約5%〜約40%を構成する。中空領域は、より好ましくは繊維の約5%〜約30%を構成し、最も好ましくは繊維の約10%〜約30%を構成する。これらの割合は、中空繊維の断面領域(すなわち2次元)に対して与えられたものである。
【0147】
本発明においては中空領域の割合を制御する必要がある。中空領域の割合は、好ましくは2%よりも大きく、そうでない場合には中空領域の相応の効果は得られない。しかしながら、中空領域は60%よりも小さいことが好ましく、そうでない場合には繊維が潰れてしまう可能性がある。所望の中空率(%)は、使用される材料、繊維の最終用途、並びに他の繊維特徴及び用途によって決まる。
【0148】
互いに異なる断面形状を有する2種類以上の成形繊維の平均繊維直径は、それぞれの繊維の種類の平均のデニールを測定し、各成形繊維のデニールを同等の中実円形繊維の直径に変換し、それぞれの総繊維含有率(%)によって重み付けされた各成形繊維の平均直径を加え合わせ、繊維の種類(異なる形状の繊維)の合計数によって割ることによって計算される。平均繊維デニールはまた、平均繊維直径(又は同等の中実円形繊維の直径)を繊維密度の関係によって変換することによっても計算される。ある繊維は、平均直径が少なくとも約10%大きい又は小さい場合に異なる直径を有するものとみなされる。互いに異なる断面形状を有する2種類以上の成形繊維は、同じ直径を有しても、又は異なる直径を有してもよい。更にこれらの成形繊維は、同じデニールを有しても、又は異なるデニールを有してもよい。特定の実施形態では、これらの成形繊維は、直径は異なるが同じデニールを有する。
【0149】
多葉形繊維には、これらに限定されるものではないが、3葉形及びデルタ形などの最も一般的に見られる形態が含まれる。多葉形繊維の他の好適な形状としては、三角形、方形、星形、又は楕円形が挙げられる。これらの繊維は、少なくとも1つの傾きの変曲点を有するものとして最も正確に述べられる。傾きの変曲点は、繊維の傾きが変化する繊維の表面の外周に沿った点として定義される。例えば、デルタ形の3葉繊維は3個の傾き変曲点を有し、明確な3葉繊維では6個の傾き変曲点を有する。本発明における多葉繊維は、一般的に約50個よりも少ない傾き変曲点、最も好ましくは約20個よりも少ない傾き変曲点を有する。多葉形繊維は非円形として一般的に述べることができ、中実又は中空のいずれであってもよい。
【0150】
本発明の1成分及び多成分繊維(multiconstituent fiber)は、多くの異なる形態を有し得る。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。繊維は1要素の形態であってもよい。本明細書で使用するところの要素とは、繊維の別の部分と所定の空間的関係を有する、繊維の別の部分として定義される。
【0151】
繊維が形成された後、繊維を更に処理するか、又は結合した布地を処理することができる。親水性又は疎水性の仕上げ剤を添加することによって、布地の表面エネルギー及び化学的性質を調節することができる。例えば、疎水性の繊維を湿潤剤で処理することによって、水性液の吸収性を高めることができる。結合させた布地を、界面活性剤、含量、スリップ剤、塩、又は他の材料を含む局所的溶液で処理することによって、繊維の表面特性を更に調節することもできる。
【0152】
本発明の繊維は捲縮加工してもよいが、繊維は捲縮加工されないことが好ましい。捲縮繊維は、一般的に2つの方法で製造される。第1の方法は、繊維が既に紡糸された後に繊維を機械的に変形させることである。繊維は、溶融紡糸され、最終的なフィラメント直径にまで引き伸ばされて、一般的に2次元又は3次元の捲縮をもたらすギア又はスタッファーボックスによって機械的に処理される。この方法は、多くのカーディングされた短繊維の製造において使用されているが、カーディングされた短繊維の布地は繊維が連続しておらず、捲縮加工された繊維から製造される布地は繊維の変形技術が使用される前には、一般的に極めて厚みが大きいことから好ましくない。繊維を捲縮するための第2の方法は、スパンレイド処理によって捲縮し得る多要素繊維を押し出し成形することである。2要素捲縮スパンボンド繊維を製造するための多くの方法が存在することは当業者であれば認識されるところであるが、本発明においては、捲縮されたスパンレイド不織布を製造するための3つの主要な方法について検討する。第1は、ポリマーの種類、ポリマーの分子量特性(例えば分子量の分布)、又は添加剤の含量の差異に基づく紡糸線におけるポリマーの結晶化の差のために紡糸線において生じる捲縮である。第2の方法は、繊維をスパンレイド基材に紡糸した後で繊維を収縮差に基づいて収縮させることである。例えば、スパンレイドウェブを加熱することによって、例えば熱結合プロセスの間に紡糸される繊維における結晶化度の差のために繊維が収縮し得る。捲縮を生じさせる第3の方法は、繊維又はスパンレイドウェブを機械的に延伸することである(一般的に機械的延伸を行うためにはウェブを一体に結合させておく)。機械的延伸によって、捲縮を生じさせる2種類のポリマー成分間の応力歪み曲線における差異が顕在化し得る。
【0153】
後者の2つの方法は、繊維を紡糸した後に活性化させる必要があることから、一般的に潜在的捲縮化プロセスと呼ばれている。本発明においては、捲縮された繊維の使用について優先順位がある。ベース基材の厚さが1.3mm未満のものであれば、カーディングされた短繊維の布地を使用することができる。スパンレイド又はスパンボンド布地は、ベース基材の厚さ又はキャリパーが1.3mm未満のものであれば、捲縮可能な連続したフィラメントを含んでいることから好ましい。本発明においては、ベース基材は100重量%未満の捲縮された繊維、好ましくは50重量%未満の捲縮された繊維、より好ましくは20重量%未満の捲縮された繊維、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは0重量%の捲縮された繊維を含む。捲縮加工は繊維の表面に移行する流体の量を低減させ得るばかりでなく、捲縮加工によってベース基材の比重が小さくなることによって、ベース基材の固有の毛管作用が低下し得ることから、捲縮されていない繊維が好ましい。
【0154】
短繊維とは、50mm未満の長さを有する繊維として定義される。本発明においては、2つの更なる効果が得られることから連続的な繊維が短く切断された繊維よりも好ましい。第1の効果は、繊維が途切れることなく流体がより大きな距離を移送され得るために、高い毛管作用が得られる点である。第2の効果は、連続的な繊維が結合されたネットワークは、短繊維からなるネットワークと比較して集合的により相互に連結された連続的な繊維のマトリクスを有するため、連続的な繊維によってより高い引っ張り強度及び剛性を有するベース基材が製造される点である。本発明のベース基材は、極めて少ない量の短繊維、好ましくは50重量%未満の短繊維、より好ましくは20重量%未満の短繊維、より好ましくは10重量%未満の短繊維、最も好ましくは0重量%未満の短繊維を含むことが好ましい。
【0155】
本発明のベース基材用に製造される繊維は、熱結合性を有するものであることが好ましい。本発明において、熱結合性とは、ピーク融点の近く又はそれよりも高い温度に昇温されると軟化し、少なくとも低い圧力の作用下で互いに粘着又は融合する繊維として定義される。熱結合を行うためには、繊維の熱可塑性樹脂の総含有率は、30重量%よりも大きくなければならず、好ましくは50重量%よりも大きい、更により好ましくは70重量%よりも大きい、最も好ましくは90重量%よりも大きい。
【0156】
スパンレイドプロセス
本発明のベース基材を形成する繊維は、スパンレイド布地を形成する連続したフィラメントであることが好ましい。スパンレイド布地は、基本的に連続したフィラメントから形成される、凝集引っ張り特性を基本的にまったく有さない、結合されていない布地として定義される。連続したフィラメントは、直径に対する長さの比が10,000:1と高い比である繊維として定義される。スパンレイド布地を構成する本発明における連続したフィラメントは、短繊維、短く切断された繊維、又は他の意図的に製造された短繊維のいずれでもない。本発明における連続したフィラメントは、平均で100mmよりも長く、好ましくは200mmよりも長い。本発明における連続したフィラメントはまた、意図するとしないとに関わらず捲縮されていない。
【0157】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、米国特許第3,802,817号、同第5,545,371号、同第6,548,431号、及び同第5,885,909号に開示されるような高速紡糸プロセスを使用して形成される。これらの溶融紡糸プロセスでは、押出成形機が溶融ポリマーを溶融ポンプに供給し、溶融ポンプが所定体積の溶融ポリマーを供給すると、溶融ポリマーは繊維として形成された多数の毛管から構成されたスピンパックを通じて移送される。スピンパックにおいて繊維は空気冷却領域を通じて冷却され、高度に細径化された繊維へと径が減少するように空気圧により引き伸ばされることによって分子レベルの繊維の配向により繊維の強度が高められる。次いで引き伸ばされた繊維は、しばしば形成ベルト又は形成テーブルと呼ばれる多孔質のベルト上に堆積される。
【0158】
連続したフィラメントを製造するために使用される本発明のスパンレイドプロセスは、1m当たり100〜10,000本の毛管、好ましくは1m当たり200〜7,000本の毛管、より好ましくは1m当たり500〜5,000本の毛管、更により好ましくは1m当たり1,000〜3,000本の毛管を含んでいる。本発明における毛管1本当たりのポリマーの質量流量は、0.3GHM(g/穴/分)よりも大きい。好ましい範囲は0.4GHM〜15GHMであり、好ましくは0.6GHM〜10GHMであり、更により好ましくは0.8GHM〜5GHMであり、最も好ましい範囲は1GHM〜4GHMである。
【0159】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、高度に細径化された、捲縮されていない連続フィラメントを製造するための単一のプロセス工程を含む。押し出されたフィラメントは冷却空気の領域を通じて引き伸ばされ、細径化される際に冷却及び固化される。このようなスパンレイドプロセスについては、米国特許第3338992号、同第3802817号、同第4233014号、同第5688468号、同第6548431(B1)号、同第6908292(B2)号、及び米国特許出願公開第2007/0057414(A1)号に開示されている。欧州特許出願公開第EP 1340843(B1)号及び同第EP 1323852(B1)号に述べられる技術を使用して、スパンレイド不織布を製造することもできる。高度に細径化された連続フィラメントは、紡糸口金からのポリマーの出口から細径化装置へと直接引き伸ばされ、その際、連続フィラメントの直径又はデニールは形成テーブル上でスパンレイド布地が形成されるのに従って大きく変化することはない。本発明における好ましいスパンレイドプロセスには、紡糸口金の出口間の繊維を空圧式延伸装置へと空圧によって引き伸ばすことによって、繊維を形成ベルト上に堆積させる引き抜き装置が含まれる。このプロセスは、紡糸口金から繊維を機械的に引き伸ばす他のスパンレイドプロセスとは異なるものである。
【0160】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、上記に開示したような規定の固有引っ張り強度、繊維直径又はデニールを有する、熱安定性である連続した捲縮されていない繊維を単一の工程で製造するものである。好ましいポリマー材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。その他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーは、米国特許第6746766号、同第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に述べられている。一般的な熱可塑性ポリマー繊維グレードの材料が好ましく、最も注目すべきものとしては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせがある。最も好ましいのは、ポリエステル及びポリプロピレン系樹脂である。代表的なポリエステルテレフタレート(特に断らないかぎり、以後、ポリエステルと呼ぶ)樹脂としては、Eastman F61HC(IV=0.61dl/g)、Eastman 9663(IV=0.80dl/g)、DuPont Crystar 4415(IV=0.61gl/g)がある。好適なコポリエステルは、Eastman 9921(IV−0.81)である。本発明に適したポリエステルの固有粘度(IV)の範囲は、0.3dl/g〜0.9dl/g、好ましくは0.45dl/g〜0.85dl/g、より好ましくは0.55dl/g〜0.82dl/gの範囲である。固有粘度はポリマーの分子量の目安であり、ポリマーの技術分野における当業者には周知のものである。本発明におけるポリエステル繊維は、アロイであり、1要素かつ成形されたものであってよい。好適な一実施形態は、3dpf〜8dpfのデニールを有する0.61dl/gの樹脂から製造された多葉形、好ましくは3葉形のポリエステル繊維である。本発明ではPETが最も一般的に参照されるが、PBT、PTT、PCTなどの他のポリエステルテレフタレートポリマーを使用することもできる。
【0161】
特定の樹脂特性の組み合わせをスパンボンドプロセスで使用することによって、熱結合されたPET不織布を高デニールで製造することが可能であることが予期せずして発見された。Eastman F61HC PETポリマー及びEastman 9921 coPETは、熱によって結合可能である一方で熱安定性である繊維の製造において理想的な組み合わせを提供することが分かっている。この予期せざる発見は、F61HC及び9921を70:30〜90:10の範囲の比(F61HC:9921の比)で別々の毛管から押し出すことが可能であり、これによって得られるウェブを熱によって一体に結合することによって熱安定性である不織布を製造することが可能であるというものである。この例における熱安定性である、とは、沸騰水中に5分間入れた後のMD方向における収縮率が10%未満であるものとして定義される。このような熱安定性は、4000m/分よりも大きな紡糸速度で、円形及び成形繊維の両方において1dpf〜10dpfの範囲のデニールのフィラメントを製造することによって実現される。5g/m2〜100g/m2の範囲の坪量が製造される。これらの布地は、サーマルポイントボンド法によって製造されている。これらの種類の布地は、使い捨て吸収性物品、ドライヤーシート、及び屋根の断熱処理などの広範な用途において使用することができる。必要に応じて、マルチビームシステムを単独で使用するか、2つのスパンレイド層間に細繊維径層を置いた後にこれを一体に結合することができる。
【0162】
更なる好ましい一実施形態は、ポリプロピレン繊維及びスパンレイド不織布の使用である。ポリプロピレンの好ましい樹脂特性は、5MFR(10分間当たりのメルトフローレートをグラムで表したもの)〜400MFRのメルトフローであり、好ましい範囲は10MFR〜100MFRであり、更により好ましい範囲は15MFR〜65MFRであり、最も好ましい範囲は23MFR〜40MFRである。MFRの測定に使用される方法については、230℃で2.16kgの質量を用いて測定したものがASTM D1238に概略的に述べられている。
【0163】
1要素及び多要素繊維から製造された不織布製品は、特に強度、可撓性、柔軟性、及び吸収性といった特定の性質も示す。強度の目安としては、乾燥及び/又は湿潤引っ張り強度が挙げられる。可撓性は剛性と関連しており、柔軟性に起因するものであると考えられる。一般的に柔軟性は、可撓性及びテクスチャの両方と関連する生理学的に知覚される属性として述べられる。吸収性は、製品が流体を取り込む能力、並びにその流体を保持する容量と関連している。本発明における吸収性には、パルプ繊維、再生セルロース繊維(例えばレーヨン)に見られるような水を取り込む繊維自体の内部領域は含まれない。一部の熱可塑性ポリマーは、本来的に小量の水を取り込むことから(例えばポリアミド)、水の取り込み率は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満に制限される。本発明における吸収性は、繊維の親水性及び不織布の構造に起因するものであり、主として繊維の表面積、孔径、及び結合の交差によって決まる。毛管現象は、流体と繊維質基材との相互作用を述べるために使用される一般的現象である。毛管現象の性質は当該技術分野ではよく理解されており、「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」by Albin Turbak,Chapter 4に詳しく述べられている。
【0164】
本発明においてベース基材を形成するスパンレイドウェブは、1g/g(グラム/グラム)〜10g/g、より好ましくは2g/g〜8g/g、最も好ましくは3g/g〜7g/gの吸収取り込み率すなわち保持容量(C保持)を有する。この取り込み率の測定は、MD方向の長さが15cm、CD方向の幅が5cmである乾燥試料を秤量し(グラムで)、乾燥重量をm乾燥とし、試料を蒸留水に30秒間浸漬した後、水から試料を取り出し、これを10秒間垂直に(MD方向に)吊してから、試料を再び秤量し、湿潤重量をm湿潤とすることによって行われる。最終的な湿潤試料の重量(m湿潤)から乾燥試料の重量(m乾燥)を差し引いて、乾燥試料の重量(m乾燥)で割ることによって、試料の吸収性すなわち保持容量(C保持)が得られる。すなわち、
【数1】
構造化基材は同様の保持容量を有している。
【0165】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、所望の坪量を有するスパンレイド不織布を製造するものである。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明においては、ベース基材の坪量は、10g/m2〜200g/m2、好ましくは15g/m2〜100g/m2の範囲、より好ましくは18g/m2〜80g/m2、更により好ましくは25g/m2〜72g/m2の範囲である。最も好ましい範囲は30g/m2〜62g/m2である。
【0166】
多成分繊維の製造における第1の工程は、配合又は混合工程である。配合工程では、典型的には、剪断力の作用下で原材料を加熱する。組成が適切に選択されていれば、熱の存在下での剪断によって均質な溶融物が得られる。次いで溶融物を押出成形機に入れて繊維を形成する。まとまった量の繊維を、熱、圧力、化学結合剤、機械的交絡、及びこれらの組み合わせを用いて一体に結合すると、不織布が形成される。次いでこの不織布を改質し、ベース基材へと編組する。
【0167】
配合工程の目的は、均質な溶融組成物を製造することである。多成分ブレンドの場合では、この工程の目的は、熱可塑性ポリマー材料同士を溶融ブレンドすることであり、その際の混合温度は最も融点が高い熱可塑性成分よりも高い。必要に応じて用いられる成分を添加及び互いに混合してもよい。溶融組成物は均質であることが好ましいが、これは広範囲にわたって均一な分布が見られ、目立って異なる領域が認められないということを意味する。ポリ乳酸をポリプロピレンに加える場合や、熱可塑性デンプンをポリプロピレンに加える場合には、相溶化剤を加えることによって混和性の低い材料同士を混和することができる。
【0168】
二軸配合は当該技術分野では周知のものであり、ポリマーアロイを調製する目的、又はポリマーを必要に応じて用いられる材料と互いに適切に混合する目的で使用される。二軸押出成形機は一般的に、ポリマーの製造と繊維の紡糸工程との間で使用される独立したプロセスである。コストを低減するには、繊維の押出しが単軸押出成形機で開始されることによって、配合が繊維の製造と直接つながる。特定の形式の単軸押出成形機では、良好な混合及び混和がインラインで行われ得る。
【0169】
最も好ましい混合装置は、複数の注入点を有する複数混合領域型の二軸押出成形機である。二軸バッチ混合機又は単軸押出成形システムも使用することができる。充分な混合及び加熱がなされるかぎり、使用される特定の機器はさほど重要ではない。
【0170】
本発明では溶融紡糸法を用いる。溶融紡糸法では押出品における質量の損失がない。溶融紡糸法は、溶媒が押出品からの揮発又は拡散によって除去されるために質量の損失につながる、溶液からの湿式又は乾式紡糸法などの他の紡糸法とは区別される。
【0171】
紡糸は、120℃〜約350℃、好ましくは160℃〜約320℃、最も好ましくは190℃〜約300℃で生じる。繊維の紡糸速度は、100メートル/分よりも大きいことが求められる。好ましくは繊維の紡糸速度は、約1,000〜約10,000メートル/分であり、より好ましくは約2.000〜約7,000であり、最も好ましくは約2,500〜約5,000メートル/分である。単一繊維の試験及びベース基材又は構造化基材の熱安定性に基づけば、強度が高く熱的に安定した繊維を製造するためにはポリマー組成物を高速で紡糸しなければならない。
【0172】
均質な溶融組成物は、市販の溶融紡糸装置上で1要素又は多要素繊維に溶融紡糸することができる。装置は、多要素繊維の所望の形態に基づいて選択される。市販の溶融紡糸装置は、フロリダ州メルボルン所在のHills,Inc.より販売されている。繊維紡糸(1要素及び多要素)の傑出した情報源として、「Advanced Fiber Spinning Technology」by Nakajima from Woodhead Publishingがある。紡糸の温度は、約120℃〜約350℃の範囲である。加工温度は、各成分の化学的性質、分子量、及び濃度によって決められる。空気細径化技術の例は、Hill’s Inc、Neumag及びREICOFILによって販売されている。本発明に適した技術の一例としては、Reifenhauser REICOFIL 4スパンレイドプロセスがある。これらの技術は、不織布産業界においては周知のものである。
【0173】
流体処理
本発明の構造化基材は、流体を管理するために使用することができる。流体管理は、構造化基材の特性を制御することによる流体の意図的な運動として定義される。本発明においては、流体管理は2つの工程によって行われる。第1の工程は、繊維の形状、繊維のデニール、坪量、結合法、及び表面エネルギーによってベース基材の特性を設計することである。第2の工程では、繊維の変位によって生じる空隙の容積を設計する。
【0174】
吸収性物品
図23は、本発明の特定の実施形態に基づいたおむつ210の平面図である。おむつ210は、その広げられた非収縮(弾性による収縮がない)状態で示され、おむつ210の一部は、おむつ210の下層構造をより明瞭に示すために切り取られている。着用者と接触するおむつ210の部分は、図23において観察者の方を向いている。おむつ210は、一般的に、シャーシ212と、シャーシ内に配置される吸収性コア214とを有し得る。
【0175】
図23におけるおむつ210のシャーシ212は、おむつ210の本体を構成してもよい。シャーシ212は、液体透過性であってよいトップシート218、及び/又は液体不透過性であってよいバックシート220を含む外側カバー216を有し得る。吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に収容されてもよい。シャーシ212はまた、サイドパネル222、弾性レッグカフ224、及び弾性ウェスト機構226も有し得る。
【0176】
レッグカフ224及び弾性ウェスト機構226は、典型的には、それぞれ弾性部材228を有し得る。おむつ210の一方の端部は、おむつ210の第1のウェスト領域230として構成することができる。おむつ210の反対側の端部は、おむつ210の第2のウェスト領域232として構成することができる。おむつ210の中間部分は、第1のウェスト領域230と第2のウェスト領域232との間に長手方向に延びる股領域234として構成することができる。ウェスト領域230及び232は弾性要素を有することにより、着用者の腰部の周囲に寄り集まって高いフィット感及び密閉性をもたらすことができる(弾性ウェスト機構226)。股部領域34は、おむつ210の着用時に着用者の脚の間に概ね位置するおむつ210の部分である。
【0177】
おむつ210は、図23にその長手方向軸236及び横方向軸238とともに示されている。おむつ210の外周240はおむつ210の外縁部によって画定され、長手方向の縁部242がおむつ210の長手方向軸236にほぼ平行に延び、端縁部244がおむつ210の横方向軸238にほぼ平行に長手方向の縁部242の間に延びている。シャーシ212は、少なくとも1つの締結部材246及び少なくとも1つの保存ランディング領域248を含み得る締結システムを備えてもよい。
【0178】
おむつ220はまた、フィット感、密閉性、美的特徴を向上させるための前方及び後方イヤーパネル、ウェストキャップ機構、伸縮材などの当技術分野では既知の他の機構を含んでもよい。このような更なる機構は当該技術分野では周知のものであり、例えば米国特許第3,860,003号及び同第5,151,092号に述べられている。
【0179】
おむつ210を着用者の周囲の定位置に保持するため、第1のウェスト領域230の少なくとも一部を締結部材246により第2のウェスト領域232の少なくとも一部に取り付けることによって、脚部開口部及び物品の腰部を形成することができる。締結時には、締結システムが物品の腰部周辺の引っ張り荷重を支える。締結システムにより、物品の使用者は締結部材246のような締結システムの1つの要素を掴んで、第1のウェスト領域230を第2のウェスト領域232と少なくとも2箇所において連結することができる。これは、締結装置の要素間の結合強度を操作することによって実現することができる。
【0180】
特定の実施形態によれば、おむつ210は再閉鎖可能な締結システムを備えてもよく、あるいはパンツ型のおむつの形態で提供されてもよい。吸収性物品がおむつである場合、吸収性物品は、おむつを着用者に固定するためにシャーシに接合された再閉鎖可能な締結システムを含んでもよい。吸収性物品がパンツ型のおむつである場合、物品は、シャーシ及び互いに接合されてパンツを形成する少なくとも2つのサイドパネルを有してもよい。締結システム及びその任意の要素は、これらに限定されるものではないが、プラスチック、フィルム、発泡体、不織布、織布、紙、積層体、繊維強化プラスチックなど、又はこれらの組み合わせを含む、こうした用途に適した任意の材料を含み得る。特定の実施形態では、締結システムを構成する材料は可撓性のものであってよい。こうした可撓性により、締結システムを身体の形状に適合させることができるため、締結システムが着用者の皮膚を刺激したり傷つけたりする可能性を低減させることができる。
【0181】
一体型の吸収性物品の場合では、シャーシ212及び吸収性コア214がおむつ210の主構造を形成し、他の機構を加えることで複合おむつ構造を形成することができる。トップシート218、バックシート220、及び吸収性コア214は周知の様々な形態に組み立てることができるが、好ましいおむつの形態が、Roeらに付与された1996年9月10日発行の発明の名称が「Absorbent Article With Multiple Zone Structural Elastic−Like Film Web Extensible Waist Feature」である米国特許第5,554,145号、Buellらに付与された1996年10月29日発行の発明の名称が「Disposable Pull−On Pant」である米国特許第5,569,234号、並びにRoblesらに付与された1999年12月21日発行の発明の名称が「Absorbent Article With Multi−Directional Extensible Side Panels」である米国特許第6,004,306号に一般的に述べられている。
【0182】
図23のトップシート218は全体的又は部分的に伸縮性を持たせてもよく、又はトップシート218と吸収性コア214との間に隙間が形成されるように短縮させてもよい。伸縮性トップシート又は短縮させたトップシートを含む代表的な構造については、Allenらに付与された1991年8月6日発行の発明の名称が「Disposable Absorbent Article Having Elastically Extensible Topsheet」である米国特許第5,037,416号、及びFreelandらに付与された1993年12月14日発行の発明の名称が「Trisection Topsheets for Disposable Absorbent Articles and Disposable Absorbent Articles Having Such Trisection Topsheets」である米国特許第5,269,775号に更に詳細に述べられている。
【0183】
バックシート226は、トップシート218に接合されてもよい。バックシート220は、吸収性コア214により吸収されておむつ210内に封じ込められた排出物が、例えばベッドシーツ及び下着などのおむつ210と接触し得る他の外部の物品を汚すことを防止することができる。特定の実施形態では、バックシート226は、液体(例えば、尿)に対して実質的に不透過性であってもよく、不織布と約0.012mm(0.5ミル)〜約0.051mm(2.0ミル)の厚さを有する熱可塑性フィルムのような薄いプラスチックフィルムとの積層体で構成することができる。好適なバックシートフィルムとしては、インディアナ州テレホート所在のTredegar Industries Inc.の製造する、X15306、X10962、及びX10964の商品名で販売されるものが挙げられる。他の好適なバックシート材料としては、蒸気をおむつ210から逃がす一方で、液体排出物がバックシート210を通過することは防止する通気性材料を挙げることができる。代表的な通気性材料としては、織布ウェブ、不織布ウェブなどの材料、フィルムコートされた不織布ウェブなどの複合材料、並びに三井石油化学工業株式会社によりESPOIR NOの表記で製造されるもの、及びテキサス州ベイシティー所在のEXXON Chemical Co.によりEXXAIREの表記で製造されるものなどの微多孔質フィルムを挙げることができる。ポリマーブレンドを含む好適な通気性複合材料は、オハイオ州シンシナティ所在のClopay CorporationよりHYTRELブレンドP18−3097の名称で販売されている。こうした通気性複合材料については、E.I.DuPontの名義で1995年6月22日に公開された国際特許出願公開第WO 95/16746号により詳細に述べられている。不織布ウェブ及び孔あき成形フィルムなどの他の通気性バックシートについては、Dobrinらに付与された1996年11月5日発行の米国特許第5,571,096号に述べられている。
【0184】
図24は、図23の切断線2−2に沿って取った図23の断面を示す。おむつ210は、着用者に面した面から順に、トップシート218、吸収性コア214の各要素、及びバックシート220を含み得る。おむつ210は更に、液体透過性のトップシート218と、吸収性コア214の着用者に面した面との間に配される捕捉システム250を有し得る。捕捉システム250は、吸収性コアと直接接触し得る。
【0185】
捕捉システム250は本発明の繊維質ウェブを含んでいる。本発明においては、吸収性物品は全体として比較的薄いものであることが望ましい。これにより、必要とされる貯蔵容量が小さくなり、陳列用のスペースが小さくて済む。更に、より薄い吸収性物品は、多くの消費者により魅力的であることが分かっている。薄い吸収性物品を助長するには、捕捉システムもできるだけ薄くする必要がある。しかしながら、薄い材料ほど一時的な液体保持容量がしばしば小さくなる。薄いことに加えて、捕捉システムは、トップシート上の自由流体による吸収性物品の漏れを防ぐために流体を速やかに捕捉できるものである必要がある。本発明の捕捉システムは更に、物品の前方及び後方ウェスト領域に向かう液体の輸送を可能とするために高い吸い上げ性能を有する必要がある。これにより、吸収性コアによって構成された吸収性物品のより効率的な使用が可能である。更に、前方及び後方ウェスト領域に向かった液体の貯蔵性が高いことにより、濡れた場合においても股部における嵩が小さい吸収性物品が実現される。
【0186】
本発明の繊維質ウェブは、第2の表面がトップシートに面した状態で捕捉システムにおいて使用することができる。これらの実施形態では、第1の領域のトップシートに面した表面は、吸収性物品内に排出された液体を一時的に保持する機能を有する間隙容積を形成する。すなわち、繊維質ウェブ自体のみではなく、繊維質ウェブの表面の直ぐ上の領域も流体を保持するように機能する。第2の領域によって形成される、トップシートに面した不連続部は、トップシートと繊維質ウェブの第1の領域との間の間隔を維持するための隆起部として機能する。第2の領域によって形成される不連続部の自由端は、繊維質ウェブ内に比較的開放的な構造を形成し、液体が繊維質ウェブ内、更には繊維質ウェブの下の吸収性コア内へと、あるいは捕捉システムの更なる下層内へと(更なる捕捉システムの層を有する実施形態の場合)、容易かつ速やかに流入することが可能である。
【0187】
また、本発明の繊維質ウェブは、第1の表面がトップシートに面した状態で捕捉システムにおいて使用することもできる。これらの実施形態では、不連続部の内部の間隙容積は、流体を速やかに捕捉して一時的に保持する機能を有する。液体は、繊維質ウェブの他の領域へ、更に繊維質ウェブの下の吸収性コアへと、特に変位した繊維によって形成される自由端を通って広がってゆくことができる。
【0188】
大量の吸収性ポリマー材料を有する吸収性コアを備えた吸収性物品では、所定量のエアフェルトを有する吸収性コアと比較して初期の流体吸収は遅いことが多い。これらの吸収性物品では、捕捉システムが流体を捕捉して一時的に保持できることが特に重要である。更に、大量の吸収性ポリマー材料を有する吸収性コアは、典型的には、薄い吸収性物品の製造を可能とするものであり、こうした薄い吸収性物品は、本発明の薄い構造化繊維質ウェブを使用して捕捉システムによって更に支持される。
【0189】
捕捉システム250は、本発明の繊維質ウェブのみから構成されてもよい。しかしながら、繊維質ウェブは、繊維質ウェブが本明細書で述べる繊維の変位に供されるよりも前に積層体の異なる層が互いに積層された積層体であってもよい。
【0190】
また、捕捉システムは、着用者の皮膚に面する上側捕捉層252、及び着用者の下着に面する異なる下側捕捉層254として、本発明の繊維質ウェブを含んでもよい。特定の実施形態によれば、捕捉システム250は尿の放出などの大量の液体を受容する機能を有してもよい。別の言い方をすれば、捕捉システム250は、吸収性コア214が液体を吸収できるようになるまでの間、液体の一時的な貯留部として機能し得る。
【0191】
特定の実施形態では、捕捉システム250は、化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。このような架橋されたセルロース繊維は、所望の吸収特性を有し得る。代表的な化学的に架橋されたセルロース繊維については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態では、化学的に架橋されたセルロース繊維は、グルコース単位に基づいて約0.5モル%〜約10.0モル%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤、又は約1.5モル%〜約6.0モル%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤により架橋される。クエン酸は代表的な架橋剤の1つである。他の実施形態では、ポリアクリル酸を使用することもできる。更に、特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は約25〜約60、又は約28〜約50、又は約30〜約45の保水値を有する。保水値を求めるための方法については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、捲縮、撚糸、若しくはカールさせるか、又は捲縮、撚糸、及びカールさせることをを含むこれらの組み合わせを行うことができる。
【0192】
特定の実施形態では、下側捕捉層254は、親水性を有し得る不織布で構成するか、又はこれを含むことができる。更に、特定の実施形態によれば、下側捕捉システム254は化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよく、こうしたセルロース繊維は不織布材料の一部を形成してもしなくともよい。更に、一実施形態によれば、下部捕捉層254は、天然又は合成ポリマー繊維などの他の繊維と混合された化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。代表的な実施形態によれば、このような他の天然又は合成ポリマー繊維としては、表面積の大きな繊維、熱可塑性結合繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、PET繊維、レーヨン繊維、リオセル繊維、及びこれらの混合物を挙げることができる。特定の実施形態によれば、下側捕捉層254は一定の総乾燥重量を有し、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約30重量%〜約95重量%の量で上側捕捉層中に存在し、他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約70重量%〜約5重量%の量で下側捕捉層254中に存在する。別の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約80重量%〜約90重量%の量で第1の捕捉層中に存在し、更に他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約20重量%〜約10重量%の量で下側捕捉層254中に存在する。
【0193】
特定の実施形態によれば、下側捕捉層254は高い流体取り込み性能を有することが望ましい。流体取り込み率は、吸収性材料の1グラム当たりの吸収された流体のグラム数として測定され、「最大取り込み率」の値によって表される。したがって流体取り込み率が高いほど材料容量は高くなり、これにより捕捉材料によって吸収されるべき流体が完全に捕捉されることから有益である。代表的な実施形態によれば、下側捕捉層254は、約10g/gの最大取り込み率を有する。
【0194】
注目すべき点として、本発明の繊維質ウェブは、吸収性物品の他の部分においても有用であり得る。例えば、上記に述べたような永久的な親水性を有する不織布を含んだトップシート及び吸収性コア層は、効果的に機能することが判明した。
【0195】
図23〜30の吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に概ね配置され、第1の吸収層260及び第2の吸収層262の2層を含む。図25に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第1の吸収層260は、基材264、基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266、及び吸収性粒子状ポリマー材料266上の熱可塑性組成物268からなり、第1の基材264の少なくとも部分が接着剤として、第1の基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266を覆って固定している。図26に示される別の実施形態によれば、吸収性コア214の第1の吸収層260はまた、熱可塑性組成物268上にカバー層270も含み得る。
【0196】
同様に図24に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第2の吸収層262はまた、基材272、第2の基材272上の吸収性粒子状ポリマー材料274、及び吸収性粒子状ポリマー材料274上の熱可塑性組成物266も含んでよく、第2の基材272の少なくとも部分が第2の基材272上に吸収性粒子状ポリマー材料274を固定している。図には示されていないが、第2の吸収層262もまた、図26に示されるカバー層270のようなカバー層を含み得る。
【0197】
第1の吸収層260の基材264はダスティング層と呼ぶことができるもので、おむつ210のバックシート220に面する第1の表面278と、吸収性粒子状ポリマー材料266に面する第2の表面280とを有している。同様に、第2の吸収層262の基材272はコアカバーと呼ぶことができるもので、おむつ210のトップシート218に面する第1の表面282と、吸収性粒子状ポリマー材料274に面する第2の表面284とを有している。第1の基材264及び第2の基材272は、外周に沿って接着剤で互いに接着されることによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を吸収性コア214内に保持するための封入要素を吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の周囲に形成することができる。
【0198】
特定の一実施形態によれば、第1の吸収層260及び第2の吸収層262の基材264及び272は、上記に述べた不織布材料のような不織布材料とすることができる。特定の実施形態では、不織布は多孔質であり、一実施形態では約32マイクロメートルの孔径を有する。
【0199】
図24〜30に示されるように、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの基材264及び272上に粒子のクラスター290として置かれることによって、ランド領域294とランド領域294の間の接合領域296とからなる格子パターン292を形成する。本明細書において定義するように、ランド領域294は、熱可塑性接着材料が不織布基材又は補助接着剤と直接接触していない領域であり、接合領域296は、熱可塑性接着材料が不織布基材又は補助接着剤と直接接触している領域である。格子パターン292の接合領域296は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274をほとんど又はまったく含んでいない。ランド領域94及び接合領域296は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形などの様々な形状を有し得る。
【0200】
図30に示される格子パターンは、ランド領域が規則的な間隔及びサイズを備えた正方形の格子である。六角形、菱形、斜方晶状、平行四辺形、三角形、長方形、及びこれらの組み合わせなどの他の格子パターンを使用することもできる。格子線間の間隔は、規則的であっても不規則的であってもよい。
【0201】
格子パターン292内のランド領域294のサイズは、異なり得る。特定の実施形態によれば、格子パターン292内のランド領域294の幅319は、約8mm〜約12mmの範囲である。特定の一実施形態では、ランド領域294の幅は約10mmである。これに対して接合領域296は、特定の実施形態において、約5mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1.5mm未満、約1mm未満、若しくは約0.5mm未満の幅又はこれよりも大きなスパンを有する。
【0202】
図30に示されるように、吸収性コア214は、後端部302から前端部304に延びる長手方向軸300と、長手方向軸300と直交する、第1の縁部308から第2の縁部310に延びる横方向軸306と、を有している。吸収性粒子状ポリマー材料のクラスター290の格子パターン292は、ランド領域294及び接合領域296の配列によって形成される格子パターン292がパターン角312をなすように、それぞれの吸収層260及び262の基材264及び272上に配列されている。パターン角312は、0.5°よりも大きいか、又は15〜30°、又は約5〜約85°、又は約10〜約60°、又は約15〜約30°であり得る。
【0203】
図29a、29b、及び30に最も分かりやすいように、第1の層260と第2の層262とを合わせることによって吸収性コア214を形成することができる。吸収性コア214は、パターン長さ116とパターン幅318とによって区切られた吸収性粒子状ポリマー材料領域314を有する。吸収性粒子状ポリマー材料領域314の大きさ及び形状は、吸収性コア214及び吸収性コア214を組み込むことができる特定の吸収性物品の所望の用途に応じて異なり得る。しかしながら、特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料領域314は、図30に示されるように、吸収性コア214のほぼ全体にわたって延びる。
【0204】
第1の吸収層262及び第2の吸収層264のそれぞれの格子パターン292が、吸収性コア214の長さ及び/又は幅に沿って互いからずれるように、第1の吸収層260と第2の吸収層262とを合わせることによって、吸収性コア214を形成することができる。それぞれの格子パターン292は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が、吸収性粒子状ポリマー領域314にわたってほぼ連続的に分配されるようにずらすことができる。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、個々の格子パターン292が、第1の基材264及び第2の基材272にわたってクラスター290に不連続的に分配された吸収性粒子状ポリマー材料266及び274からなる場合であっても、吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたってほぼ連続的に分配される。特定の一実施形態では、格子パターンは、第1の吸収層260のランド領域294が第2の吸収層262の接合領域296と対向し、第2の吸収層262のランド領域が第1の吸収層260の接合領域296と対向するようにずらすことができる。ランド領域294及び接合領域296が適切なサイズ及び配列である場合、得られる吸収性粒子状ポリマー材料266と274との組み合わせは、吸収性コア214の吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたった吸収性粒子状ポリマー材料のほぼ連続的な層となる(すなわち、第1の基材264及び第2の基材272は、それらの間に吸収性粒子状ポリマー材料266のクラスター290が含まれる複数のポケットを形成しない)。特定の一実施形態では、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの格子パターン292は、ほぼ同じである。
【0205】
図30に示されるような特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、格子パターン292の長さ316に沿って変化し得る。特定の一実施形態では、格子パターンを吸収材領域320、322、324、及び326に分割し、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量が各領域毎に異なるようにしてもよい。本明細書で使用するところの「吸収材領域」とは、図30に示される長手方向軸と直交する境界線を有する吸収性粒子状ポリマー材料領域の領域のことを指す。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、複数の吸収材領域320、322、324、及び326の1つから別の吸収材領域へと徐々に変化する。吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量がこのように徐々に変化することにより、吸収性コア214にひび割れが生じる可能性が低減され得る。
【0206】
吸収性コア214内に存在する吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は異なり得るが、特定の実施形態においては、吸収性コアの約80重量%よりも多い、又は吸収性コアの約85重量%よりも多い、又は吸収性コアの約90重量%よりも多い、又はコアの約95重量%よりも多い量で吸収性コア内に存在する。特定の一実施形態では、吸収性コア214は、第1の基材264及び第2の基材272、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274、並びに熱可塑性接着剤組成物268及び276によって基本的に構成される。一実施形態では、吸収性コア214は、実質的にセルロースを含まなくてもよい。
【0207】
特定の実施形態によれば、1cm×1cmの大きさの少なくとも1個の自由に選択された第1の正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重さは、1cm×1cmの大きさの少なくとも1個の自由に選択された第2の正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重さよりも少なくとも10%、又は20%、又は30%、40%又は50%大きくてよい。特定の一実施形態では、第1及び第2の正方形は、長手方向軸を中心とする。
【0208】
代表的な一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、着心地を高めるために吸収性物品の股部において比較的狭い幅を有してもよい。すなわち、一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、吸収性物品の前縁部及び後縁部に対して等距離に位置する横線に沿って測定した幅が、約100mm、90mm、80mm、70mm、60mm未満又は更には約50mm未満でよい。
【0209】
おむつなどの多くの吸収性物品では、液体の放出は主としておむつの前半分において起きることが分かっている。したがって、吸収性コア214の前半分が、コアの吸収容量の大部分を含む必要がある。このため、特定の実施形態よれば、前記吸収性コア214の前半分が、超吸収性材料の約60%よりも多く、又は超吸収性材料の約65%、70%、75%、80%、85%、又は90%よりも多くを含むことができる。
【0210】
特定の実施形態では、吸収性コア214は、一般的に圧縮可能で、柔軟性があり、着用者の皮膚に対して刺激を与えない、尿及び他の特定の身体排出物などの液体を吸収及び保持することが可能な任意の吸収性材料を更に含み得る。こうした実施形態では、吸収性コア214は、エアフェルトと一般に呼ばれる粉砕木材パルプ、縮みセルロース詰め物、コフォームを含むメルトブローンポリマー、化学的に剛化、改質若しくは架橋されたセルロース繊維、ティッシュラップ及びティッシュラミネートを含むティッシュ、吸収性発泡体、吸収性スポンジ、又は他の任意の既知の吸収性材料若しくは材料の組み合わせなど、使い捨ておむつ及び他の吸収性物品に一般的に使用される広範な液体吸収性材料を含み得る。吸収性コア214は、接着剤、ワックス、オイルなどの小量(典型的には約10%未満)の物質を更に含んでもよい。
【0211】
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造体については、米国特許第4,610,678号(Weismanら)、同第4,834,735号(Alemanyら)、同第4,888,231号(Angstadt)、同第5,260,345号(DesMaraisら)、同第5,387,207号(Dyerら)、同第5,397,316号(LaVonら)、及び同第5,625,222号(DesMaraisら)に述べられている。
【0212】
熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆って少なくとも部分的に固定するのに役立つことができる。本発明の一実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274内においてポリマー間に基本的に均一に配置することができる。しかしながら、特定の一実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と少なくとも部分的に接触し、更に第1の吸収層260及び第2の吸収層262の基材層264及び272と部分的に接触する繊維層として準備され得る。図25、26、及び29はこうした構造を示しており、この構造では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は不連続層として準備され、繊維質の熱可塑性接着材料268及び276の層が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の層上に置かれていることによって、熱可塑性接着材料268及び276は吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と直接接触し、更に、基材264及び272の第2の表面280及び284の、基材が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274によって覆われていない部分とも直接接触している。これにより、熱可塑性接着材料268及び276の繊維層に基本的な3次元構造が与えられるが、この構造自体は、長さ及び幅方向の寸法と比較すれば基本的に比較的厚みの小さい2次元的構造である。別の言い方をすれば、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料268及び276と、基材264及び272の第2の表面との間で波形の構造となっている。
【0213】
これにより、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆う空洞を与えることによって、この材料を固定することができる。更なる一態様では、熱可塑性接着材料268及び276は基材264及び272と結合することによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を基材264及び272に対して付着させる。したがって特定の実施形態によれば、熱可塑性接着材料268及び276が湿潤状態にある場合に吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定することによって、吸収性コア214は、2008年6月13日に出願された国際特許出願公開第WO2008/155699(A1)号に述べられる湿潤固定化試験に従って、約70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下の吸収性粒子状ポリマー材料の損失率を実現する。特定の熱可塑性接着材料はまた、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに基材264及び272の両方に浸透することによって、更なる固定及び付着効果をもたらす。無論、本明細書において開示する熱可塑性接着材料は大幅に向上した湿潤固定性(すなわち、物品が濡れているか少なくとも部分的に充填されている場合の吸収性材料の固定性)を与えるものであるが、これら熱可塑性接着材料は吸収性コア214が乾燥している場合にもまた吸収性材料の極めて優れた固定性を与え得るものである。熱可塑性接着材料268及び276はまた、ホットメルト接着剤と呼ばれる場合もある。
【0214】
理論によって束縛されるものではないが、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定するうえで最も有用なこれらの熱可塑性接着材料は、優れた凝集挙動及び優れた粘着挙動を兼ね備えたものであることが判明している。優れた粘着性は、熱可塑性接着材料268及び276と、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と、基材264及び272との間の良好な接触を促し得るものである。優れた凝集性は、特に外力、すなわち歪みに応じて接着剤が破断する可能性を低減するものである。吸収性コア214が液体を吸収すると、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が膨潤して、熱可塑性接着材料268及び276に外力が作用する。特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、破断することなく、また吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の膨潤を制限する過剰な圧縮力を付与することなく、このような膨潤を許容し得るものである。
【0215】
特定の実施形態によれば、熱可塑性接着材料268及び276は、ASTM試験方法D−36−95「環状体及び球体(Ring and Ball)」によって測定した軟化点が50℃〜300℃の範囲である単一の熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドからその全体がなるものでもよく、あるいは、熱可塑性接着材料は、粘着性付与樹脂などの他の熱可塑性希釈剤、可塑剤及び酸化防止剤などの添加剤と組み合わせて、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーを含む、ホットメルト接着剤であってもよい。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、典型的には、10,000よりも大きい分子量(Mw)、及び通常室温よりも低いか又は−6℃>Tg<16℃であるガラス転移温度(Tg)を有する。特定の実施形態では、ホットメルト中のポリマーの典型的な濃度は、約20〜約40重量%の範囲である。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは水と非反応性であり得る。代表的なポリマーは、Aブロックが典型的にはポリスチレンを含む非弾性ポリマーブロックであり、Bブロックが不飽和共役ジエン又はその(部分)水素添加物であるものとして、A−B−Aトリブロック構造、A−Bジブロック構造及び(A−B)nラジアルブロックコポリマー構造を含む(スチレン性)ブロックコポリマーである。Bブロックは、典型的には、イソプレン、ブタジエン、エチレン/ブチレン(水素添加ブタジエン)、エチレン/プロピレン(水素添加イソプレン)、及びこれらの混合物である。
【0216】
使用することが可能な他の好適な熱可塑性ポリマーは、シングルサイト又はメタロセン触媒を使用して調製されたエチレンポリマーであるメタロセンポリオレフィンである。ここで、少なくとも1種類のコモノマーをエチレンと重合させてコポリマー、ターポリマー又はこれよりも高次のポリマーとすることができる。やはり使用可能なものとして、非晶質ポリオレフィン、又はC2〜C8のαオレフィンのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーである非晶質ポリアルファオレフィン(APAO)がある。
【0217】
代表的な実施形態では、粘着性付与樹脂は、典型的には、5,000未満のMw、及び通常、室温よりも高いTgを有し、ホットメルト中の樹脂の典型的な濃度は約30〜約60%の範囲であり、可塑剤は典型的には1,000未満の低い分子量(Mw)及び室温よりも低いTgを有し、典型的な濃度は約0〜約15%である。
【0218】
特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は繊維の形態で存在する。特定の実施形態では、この繊維は約1〜約50マイクロメートル又は約1〜約35マイクロメートルの平均厚さ、及び約約5mm〜約50mm又は約5mm〜約30mmの平均長さを有する。基材264及び272又は他の任意の層、特に他の任意の不織布層に対する熱可塑性接着材料268及び276の接着性を高めるには、こうした層を補助的接着剤で前処理することができる。
【0219】
特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は以下のパラメータの少なくとも1つ、又は幾つか、又はすべてを満たすものである:
代表的な熱可塑性接着材料268及び276は、20℃で測定した貯蔵弾性率G’が少なくとも30,000Paかつ300,000Pa未満、又は200,000Pa未満、又は140,000Pa〜200,000、又は100,000Pa未満であってよい。更なる一態様では、35℃で測定した貯蔵弾性率G’が、80,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、60℃で測定した貯蔵弾性率G’が、300,000Pa未満でかつ18,000Paよりも大きいか、又は24,000Paより大きいか、又は30,000Paよりも大きいか、又は90,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、90℃で測定した貯蔵弾性率G’が、200,000Pa未満でかつ10,000Paよりも大きいか、又は20,000Paよりも大きいか、又は30,000Paよりも大きくてもよい。60℃及び90℃で測定した貯蔵弾性率は、高い周囲温度における熱可塑性接着材料の形状安定性の目安となり得る。この値は、60℃及び90℃における貯蔵弾性率G’が充分に高くなければ、熱可塑性接着材料がその一体性を失ってしまうような高温の気候において吸収性製品が使用される場合に特に重要である。
【0220】
G’は、米国特許出願公開第2008/0312617(A1)号に述べられるレオメーターyを使用して測定される。このレオメーターは、接着剤に剪断応力を加え、生ずる歪み(剪断変形)応答を一定温度において測定することが可能である。接着剤は、下側の固定プレートとして機能するペルチエ素子と、剪断応力を発生させるようにモータの駆動軸に連結された、例えば10mmの半径Rを有する上側プレートとの間に置かれる。両プレート間の間隙は、例えば高さ1500マイクロメートルである。ペルチエ素子によって材料の温度制御が可能である(+0.5℃)。歪み速度及び周波数は、すべての測定が直線的な粘弾性領域において行われるように選択する必要がある。
【0221】
吸収性コア214は、図に示されていない補助的な接着剤を更に含んでもよい。補助的な接着剤は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに熱可塑性接着材料268及び276のそれぞれの基材264及び272に対する接着性を高めるために、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を塗布するのに先立って、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの第1の基材264及び第2の基材272上に置くことができる。補助接着剤はまた、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定する助けともなり、上記に述べたものと同様の熱可塑性接着材料を含むか、あるいはこれに限定されないが、H.B.Fuller製(ミネソタ州セントポール)の製品番号HL−1620−Bなどのスプレー式ホットメルト接着剤などの他の接着剤を含んでもよい。補助接着剤は、任意の適当な手段によって基材264及び272に塗布することができるが、特定の実施形態によれば、約0.5〜約2mmの間隔を置いた幅約0.5〜約1mmの溝内に塗布することができる。
【0222】
図26に示されるカバー層270は、基材264及び272と同じ材料からなるものでも、異なる材料からなるものでもよい。特定の実施形態では、カバー層270に適した材料は不織布であり、典型的には基材264及び272において有用であるものとして上記に述べたような材料である。
【0223】
以下のベース基材は、Hills Inc.において幅0.5mのスパンボンドライン上で製造された。詳細は各実施例において述べる。実施例1、2、4及び7において製造された材料の測定された特性を下記に掲げる表に示す。
【実施例】
【0224】
実施例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。本実施例及び後に続く実施例では異なる距離を使用することができるが、ここに示した距離によって最良の結果が得られた。関連するプロセスの残りのデータを表1〜3に示す。
【0225】
比較例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0226】
実施例2:100重量%のEastman F61HC PETからなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表1〜3に示す。
【0227】
実施例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。半径0.18mmの丸い端点を有する、長さ0.55mm及び幅0.127mmの標準的な3葉形の紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表4〜6に示す。
【0228】
比較例2:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。半径0.18mmの丸い端点を有する、長さ0.55mm及び幅0.127mmの標準的な3葉形の紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0229】
実施例4:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。毛管出口直径が0.35mm、直径に対する長さの比が4:1である中実の丸い紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表7〜9に示す。
【0230】
比較例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。毛管出口直径が0.35mm、直径に対する長さの比が4:1である中実の丸い紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0231】
試料の種類:以下の情報は、下記に掲げるデータの表中の実施例を識別するために使用される試料の種類の命名法を規定するものである。
【0232】
●最初の数字は試料が製造された実施例の番号を示す。
【0233】
●数字の後に続く文字は、大まかに述べた実施例の説明において、異なる条件下で製造された試料を指定するためのものである。この文字と数字の組み合わせによってベース基材の製造を指定する。
【0234】
●文字の後に続く数字は、本特許において述べる構造化基材の製造を指定する。異なる数字は、構造化基材を製造するために使用される条件を示す。
【0235】
本発明には、ベース基材及び構造化基材の試料を、カーディングした樹脂結合試料に対して比較するための2種類の参照資料が含まれる。
【0236】
●43g/m2−30%のスチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。繊維混合物は、それぞれ6デニールの中実円形PET繊維と9デニールの中実円形PET繊維の40:60混合物を含む。
【0237】
●60g/m2−30%の(カルボキシル化)スチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。繊維混合物は、それぞれ6デニールの中実円形PET繊維と9デニールの中空螺旋形PET繊維(25〜40%が中空)の50:50混合物を含む。
【0238】
開示される方法のいずれかにおいて予め試料をエイジングするか、製品から取り除く場合、試料は一切の試験プロトコルに先立って圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管しなければならない。このエイジング後の試料を「製造時の」と呼ぶものとする。
【0239】
本発明における特性の定義及び試験方法:特性表における性質の試験方法を下記に記載する。特に断らないかぎり、試験はすべて、約23±2℃及び相対湿度50±2%で行われる。特に明確に断らないかぎり、使用した特定の合成尿は、脱イオン水で作られた0.9重量%の生理食塩水(NaCl)によって作られている。
【0240】
●質量スループット:穴1個当たりの毎分のグラム数(GHM)として測定される、毛管1本当たりのポリマー流速を測定するものであり、ポリマー溶融物の密度、1回転当たりのポリマー溶融物のポンプ吐き出し量、及び溶融物ポンプによって供給される毛管の数に基づいて計算される。
【0241】
●形状:実施例の表記名において記載する毛管の幾何形状に基づいて繊維の形状を指定する。
【0242】
●坪量の実測値:好ましい坪量は、少なくとも10個の7500mm2(幅50mm×長さ150mmの試料サイズ)の試料部分をランダムに試料から切り出して、各試料部分を±1mgの範囲内で秤量した後、秤量した試料の合計数により質量の平均を求めることによって測定される。坪量の単位は、1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)である。7500mm2平方の部分を坪量の測定に使用することができない場合には、試料サイズを2000mm2(例えば100mm×20mmの試料サイズ又は50mm×40mmの試料サイズ)にまで小さくしてもよいが、試料の数は少なくとも20個の測定値にまで増やす必要がある。坪量の実測値は、平均質量を試料面積で割り、単位が1平方メートル当たりのグラム数であることを確認することによって求められる。
【0243】
●布地の厚さ:厚さはキャリパーとも呼ばれ、これら2つの語は互換可能に使用される。布地の厚さ及び新鮮キャリパーとは、一切のエイジング条件のないキャリパーのことを指す。製造時のキャリパーの試験条件は、0.5kPaで測定し、少なくとも5つの測定値の平均を求める。一般的な試験装置は、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。各測定において滞留時間は2秒である。試料は、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管しなければならず、その後、布地の厚さ測定に供される。改質前にベース基材の測定を行うことが好ましいが、この材料が利用可能でない場合には代替的な方法を使用することができる。構造化基材の場合では、第2の領域(変位した繊維の領域)間の第1の領域の厚さは、電子厚さ計(例えばMcMaster−CarrのカタログよりMitutoyo No 547−500として入手可能なもの)を使用して求めることができる。これらの電子厚さ計は、極めて小さな領域を測定するために交換された先端部を有するものでよい。これらの装置は、測定を行うために予め負荷がかけられたバネを有し、これはブランド毎に異なる。例えば、長さ6.6mm及び幅1mmのブレード形の先端部を使用することができる。直径1.5mmよりも小さい領域を測定する平坦で丸い先端部を挿入することもできる。構造化基材上で測定を行うためには、製造時の布地の厚さを測定するためにこれらの先端部を構造化基材の間に挿入する必要がある。この測定法において使用する圧力は、この方法を用いて慎重に制御することはできず、加えられる圧力は一般的に0.5kPaよりも高い。
【0244】
●エイジング処理キャリパー:これは、40℃かつ35kPaの圧力下で15時間エイジングした後、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間弛緩させた後の試料のキャリパーのことを指す。これはキャリパー回復と呼ぶこともできる。エイジングされたキャリパーは2.1kPaの圧力下で測定される。一般的な試験装置は、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。各測定において滞留時間は2秒である。試料はすべて、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管した後、エイジング処理キャリパー試験に供する。
【0245】
●Mod比:「Mod比」すなわち改変比は、非円形繊維の更なる表面積形状を補償するために使用される。改変比は、繊維の最も長い軸に対して垂直な断面における最も長い連続した直線距離を測定し、その距離の50%における繊維の幅で割ることによって求められる。特定の複雑な繊維形状では、改変比を容易に求めることは困難な場合がある。図19a〜19cは、成形繊維の形態の例を示す。「A」により示されるのは長軸方向の寸法であり、「B」により示されるのは幅方向の寸法である。比は、長い方の寸法を短い方の寸法で割ることによって求められる。これらの単位は顕微鏡によって直接測定される。
【0246】
●デニールの実測値:デニールの実測値は、特定の実施例の繊維の測定されたデニールである。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義される。したがって、異なるポリマーの繊維を比較する際には、dpf(デニール/フィラメント)として表される繊維の固有密度もまたデニールを計算するうえで考慮されるため、2dpfのPP繊維と2dpfのPET繊維とは異なる繊維直径を有することになる。ポリプロピレンにおける直径に対するデニールの関係の一例として、約0.900g/cm3の密度を有する中実、円形のポリプロピレンの1dpfの繊維は約12.55マイクロメートルの直径を有する。本発明におけるPET繊維の密度は、デニールの計算においては1.4g/cm3(グラム/立方センチメートル)とされる。当業者にとって、中実円形繊維の直径をPP及びPET繊維のデニールに換算することは日常的なことである。
【0247】
●等価な中実円形繊維の直径:等価な中実円形繊維の直径は、非円形又は中空成形繊維の繊維特性の測定値として繊維の弾性率を計算するために使用される。等価な中実円形繊維の直径は、繊維のデニールの実測値から求められる。非円形繊維のデニールの実測値は、繊維のデニールの実測値を測定し、繊維が中実円形であったと仮定してフィラメントの直径を計算することによって等価な中実円形繊維の直径に変換される。この変換は、非円形繊維の断面について1本の繊維の弾性率を求めるうえで重要である。
【0248】
●不織布の引っ張り特性:ベース基材及び構造化基材の引っ張り特性は、すべて同様にして測定した。ゲージ幅は50mm、ゲージ長さは100mm、及び伸長速度は100mm/分である。報告される値は、特に断らないかぎり、強度及びピーク伸長率についてのものである。MD方向及びCD方向の特性については別々の測定を行った。一般的な単位は、ニュートン(N)/センチメートル(N/cm)である。示される値は少なくとも5つの測定値の平均である。必然的荷重(perforce load)は0.2Nである。試料は、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管し、その後、23±2℃及び相対湿度50±2%で試験しなければならない。本明細書において報告される引っ張り強度は、応力歪み曲線におけるピーク引っ張り強度である。引っ張りピークにおける伸長率とは、引っ張りピークが記録される伸長率(%)である。
【0249】
●MD/CD比:これはMD方向の引っ張り強度をCD方向の引っ張り強度で割ったものとして定義される。MD/CD比は、不織布繊維質基材中の相対的な繊維の配向を比較するために使用される方法である。
【0250】
●繊維周長:これは顕微鏡により直接測定したものであり、マイクロメートルで表した不織布中の典型的な繊維の周長である。示される値は少なくとも5つの測定値の平均である。
【0251】
●不透明度:不透明度はベース基材を通過する光の相対量の尺度である。固有の不透明度は、測定される特定の位置に存在する繊維の数、径、種類及び形状に特に依存する。本発明では、ベース基材の不透明度は、好ましくは5%よりも大きく、より好ましくは10%よりも大きく、より好ましくは20%よりも大きく、更により好ましくは30%よりも大きく、最も好ましくは40%よりも大きい。不透明度は、TAPPI試験法T 425 om−01「紙の不透明度(Opacity of Paper)(15/d形態、照射角度A/2°、反射率89%の裏材及び紙裏材)」を用いて測定される。不透明度はパーセントで測定される。
【0252】
●ベース基材の密度:ベース基材密度は、試料の坪量の実測値を試料のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
【0253】
●ベース基材の比容積:ベース基材の比容積は、立方センチメートル/グラムの単位で表される、ベース基材密度の逆数である。
【0254】
●ライン速度:ライン速度は、試料が製造される直線的な機械方向の速度である。
【0255】
●結合温度:結合温度は、スパンボンド試料が一体に結合される温度である。結合温度には2つの温度が含まれる。第1の温度は彫刻又はパターン形成されたロールの温度であり、第2の温度は平滑ロールの温度である。特に断らないかぎり、結合領域は18%であり、カレンダー線圧は71.4kg/cm(400ポンド/直線インチ)であった。
【0256】
●本発明の試料への界面活性剤の添加:これは、ベース基材及び構造化基材に親水性を付与する目的でこれらを処理するために使用される物質のことを指す。本発明では、すべての試料に対して同じ界面活性剤を使用した。この界面活性剤は、コード番号DP−988AのProcter & Gamble開発グレード材料である。この物質はポリエステルポリエーテルコポリマーである。Clariantより販売される商業グレードの防汚ポリマー(SRP)(TexCare SRN−240及びTexCare SRN−170)もまた使用したところ、効果的に機能することが判明した。基本的な手順は以下のとおりである。
【0257】
○5ガロン(18.9L)のバケツ中で、200mLの界面活性剤を80℃の15Lの水道水と混合する。
【0258】
○コーティングしようとする試料を、希釈した界面活性剤のバケツに5分間入れる。各試料は公称幅100mm及び長さ300mmである。最大で9個の試料を一度にバケツに入れ、試料を最初の10秒間揺動する。同じバケツを最大で50個の試料に使用することができる。
【0259】
○次いで各試料を取り出し、1つの角を持ってバケツの上に垂直に保持し、残留した水を5〜10秒間バケツに切る。
【0260】
○試料をすすぎ、水道水の入ったきれいなバケツに少なくとも2分間浸漬する。最大で9個の試料を一度にバケツに入れ、試料を最初の10秒間揺動する。すすぎ用のバケツは9個の試料1組の終了後に交換する。
【0261】
○試料を乾燥状態となるまで強制空気オーブン中で80℃で乾燥させる。一般的な時間は2〜3分間である。
【0262】
●保持容量:保持容量の測定には界面活性剤でコーティングした試料を用い、材料の流体取り込み率を測定する。200mm×100mmの試料を20℃で水道水に1分間浸漬してから取り出す。試料は、取り出す際に1つの角を持って10秒間保持してから秤量する。最終的な重量を最初の重量で割ることによって保持容量を計算する。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で保持容量を測定する。これらの試料には、試験に先立って圧縮エイジングを行わない。この試験では異なる試料のサイズを使用することができる。使用することが可能な代替的な試料のサイズは、100mm×50mm又は150mm×75mmである。計算方法は選択される試料のサイズによらず同じである。
【0263】
●吸い上げ拡散面積:吸い上げ拡散はMD方向とCD方向の拡散に分けられる。界面活性剤で処理した試料を少なくとも長さ30cm及び幅20cmに切断する。処理しない試料は流体を一切吸い上げない。1個が試料の中央に位置し、2個が両側に位置する一連のペトリ皿(直径10cm及び深さ1cm)の上に試料を置く。次に20mlの蒸留水を毎秒5mLの速度で試料の上に注ぐ。不織布の彫刻ロール側を流体が注がれる方向に面するように上にする。流体が吸い上げられる距離を1分後にMD方向及びCD方向で測定する。必要に応じて蒸留水に着色することができる(Merck、インジゴカルミン、c.i.73015)。色素は蒸留水の表面張力を変化させてはならない。各材料につき少なくとも3回測定を行わなければならない。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で吸い上げ拡散性を測定する。これらの試料には、試験に先立って圧縮エイジングを行わない。長さ30cm及び幅20cmよりも小さい試料のサイズを使用する場合、試料は最初に試験を行って、1分以内に吸い上げが材料の縁にまで拡散するか否かを判定する必要がある。MD方向又はCD方向への吸い上げ拡散が1分以内に試料の幅よりも大きくなる場合には、MD方向の水平吸い上げ試験高さの方法を使用しなければならない。毎回の測定につき、各ペトリ皿の中身を空け、洗浄する。
【0264】
●MD方向の水平輸送:
【表1】
【0265】
試薬
●疑似尿:0.9%生理食塩水(9.0g/lの分析グレードの塩化ナトリウムを脱イオン水に加え、青色色素(例えばMerck、インジゴカルミン、c.i.73015)で着色した、23±2℃の表面張力が70±2N/mのもの)を調製する。
【0266】
設備
調整室......温度....摂氏23℃(±2℃)
相対湿度..50%(±2%)
【0267】
手順
1.)試料を機械方向に幅70±1mm×長さ300±1mmに切断する。
【0268】
2.)試料の重量(w1)を最も近い0.01gの値で測定して報告する。
【0269】
3.)トレーの上側の縁に赤ちゃん側(構造化基材を測定する場合にはテクスチャ加工側、又はベース基材を測定する場合には彫刻ロール側)が上になるようにして幅全体にわたって試料をクランプ留めする。この時点で、材料はトレーの底の上に自由に動けるように吊られた状態となる。
【0270】
4.)バルブを備えた250mLガラス漏斗の出口を、試料上で機械方向及び横断方向の中心で試料の上方25.4±3mmとなるように調節する。
【0271】
5.)疑似尿を調製する。
【0272】
6.)漏斗のバルブを閉じた状態で、ピペット又はビュレットを用いて5.0mLの疑似尿(4.)を漏斗内に加える。
【0273】
7.)漏斗のバルブを開いて5.0mLの疑似尿を放出する。
【0274】
8.)30秒間待つ(ストップウォッチを使用)。
【0275】
9.)最大のMD方向の分布を測定する。最も近いセンチメートルの値で報告する。
【0276】
●垂直吸い上げ高さ:少なくとも長さ20cm及び幅5cmの好ましいサイズの試料を、大量の蒸留水の上に垂直に保持することによって垂直吸い上げ試験を行う。試料の下端を液面下少なくとも1cmにまで水に漬ける。5分間で流体が昇った最も高い点を記録する。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で垂直吸い上げ性を測定する。他の試料サイズを使用することもできるが、構造化基材で行った場合には試料の幅が測定値に影響し得る。最小の試料の幅は幅2cm、最小の長さは10cmとしなければならない。
【0277】
●熱安定性:ベース基材又は構造化基材不織布の熱安定性は、MD方向に10cm×CD方向に少なくとも2cmの試料が沸騰水中で5分間にどれくらい収縮するかに基づいて評価を行う。熱的に安定であるとみなされるためには、ベース基材の収縮率は10%未満でなければならず、あるいは機械方向の最終的な寸法が9cmよりも大きくなければならない。試料の収縮率が10%よりも大きい場合には、試料は熱的に安定ではない。10cm×2cmの試料サイズに切り出し、MD方向の正確な長さを測定し、沸騰水の中に試料を5分間入れることによって、測定された。試料を取り出し、MD方向の長さを再び測定する。本発明で試験した試料のすべては、比較例において最も高い収縮率を示した試料でさえも、沸騰水中での時間後に平坦な状態に保たれた。理論によって束縛されるものではないが、不織布の熱安定性は構成成分の繊維の熱安定性に依存している。不織布を構成する繊維が収縮する場合に不織布も収縮する。したがって、ここでの熱安定性の測定によって繊維の熱安定性も実証される。不織布の熱安定性は本発明において重要である。本発明において好ましい10%を大幅に上回る顕著な収縮率を示す試料では、沸騰水中で試料が束になったり、あるいは丸まってしまう場合がある。これらの試料では、20gの重りを試料の下部に取り付けて長さを測定することができる。20gの重りは、金属のバインダークリップ又は下部に取り付けることが可能でなおかつ長さの測定を可能とするような他の任意の好適な重りであってよい。
【0278】
●FDT:FDTは繊維変位技術(Fiber Displacement Technology)の略であり、変位した繊維を有する構造化基材を形成するためのベース基材の機械的処理のことを指す。ベース基材が任意の種類の繊維の変形又は再配置によって改変される場合に、ベース基材にFDTが行われたことになる。平坦なローラーに不織布を通過させたり、又は折り曲げたりといった単純な操作はFDTではない。FDTとは、Z方向の平面内に繊維を意図的に移動させるための集中的な機械的又は流体力学的力による繊維の意図的な移動のことを指す。
【0279】
●歪み深さ:FDTプロセスにおいて使用される機械的歪み距離。
【0280】
●過剰熱結合:熱及び/又は圧力を用いた第2の別個の結合工程によって試料が過剰結合されているか否かを示す。
【0281】
●FS先端:変位した繊維の先端又は上部が結合されているか否かを示す。
【0282】
●構造化基材の密度:構造化基材の密度は、坪量の実測値を構造化基材のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
【0283】
●構造化基材比容積:構造化基材比容積は、立方センチメートル/グラムの単位で表される、構造化基材密度の逆数である。
【0284】
●間隙容積の形成:間隙容積の形成とは、繊維の変位工程において形成される間隙容積のことを指す。間隙容積の形成は、構造化基材比容積とベース基材の比容積との差である。
【0285】
エイジングを行った裏抜け及び再湿潤試験:裏抜け試験を行うため、Edanaによる方法150.3−96を以下のように変更して使用した。
【0286】
B.試験条件
●試料の調整及び測定は23±2℃及び50±2%相対湿度で行う。
【0287】
E:装置
●参照吸収パッドとして、10層のAhlstromグレード989又はこれに相当するもの(平均裏抜け時間:1.7秒±0.3秒、寸法:10cm×10cm)。
【0288】
F:手順
2.Eにおいて述べた参照吸収パッド
3.試験片を70×125mmの長方形に切断する
4.Bに述べたのと同様にして調整する
5.試験片を10枚の濾紙の組の上に置く。構造化基材については構造化された側を上にする。
【0289】
10.第1の液体噴射及び第2の液体噴射の60秒後に、それぞれ手順を繰り返して第2及び第3の裏抜け時間を記録する。
【0290】
11.各試料からの試験片に対して、最低でも3回の試験を行うことが推奨される。
【0291】
再湿潤性の測定には、Edanaによる方法151.1−96を以下のように変更して使用した。
【0292】
B.試験条件
●試料の調整及び測定は23±2℃及び50±2%相対湿度で行う。
【0293】
D.原理
●裏抜け測定からの試験片を上に乗せた濾紙の組を使用して再湿潤性を測定した。
【0294】
E.装置
●ピックアップ紙:Ahlstromグレード632又はこれに相当するものを62mm×125mmに切断し、参照吸収パッドと接触しないように試験片の上に中心を合わせて置く。
【0295】
●赤ちゃんの模擬体重:総重量3629g±20g。
【0296】
F.手順
12.裏抜け試験法の第3の液体噴出の終了直後に、工程12において手順を開始する。追加量(L)は、濡れ戻り(wetback)試験に要した液体の総量(Q)から、裏抜け試験の15mlの3回の液体噴出を差し引くことによって求めた。
【0297】
21.本発明では濡れ戻り値は再湿潤値と等しい。
【0298】
●繊維の特性:本発明における繊維の特性は、MTS Synergie 400シリーズの試験システムを使用して測定された。正確に長さ25mm及び幅1cmの穴が予め切り抜かれたテンプレート紙の上に単一の繊維を乗せた。繊維は、紙にあいた穴に弛みがないように長さ方向に真っ直ぐわたされるように置いた。少なくとも10回の測定を行うことによって、中実円形繊維の平均繊維直径又は非円形繊維の等価な中実円形繊維の直径を求める。これら10回の測定値の平均を、ソフトウェアの入力によって繊維の弾性率を求める際に繊維の直径として使用する。繊維はMTSシステムに装填し、テンプレート紙の各辺を試験の前に切断する。繊維試料を、0.009N(0.1gf)よりも大きな負荷力で始まる強度プロファイルに従って、50mm/分の速度で引っ張る。ピーク繊維負荷及び破断点歪みをMTSソフトウェアによって測定する。繊維の弾性率は1%の歪みでMTSによっても測定される。表10に示される繊維の弾性率は、このようにして報告されたものである。表10には、繊維の破断点伸長率及びピーク繊維負荷も報告されている。結果は10回の測定の平均である。繊維の弾性率を計算する際、中実円形繊維には繊維の直径を使用するか、又は非円形若しくは中空の繊維には等価な中実円形繊維の直径を使用する。
【0299】
●破断したフィラメントの割合:繊維の変位した位置における破断したフィラメントの割合を測定することができる。破断したフィラメントの数を求める方法は、計数によるものである。変位した繊維を有するように製造された試料は、先端の結合が行われている場合もいない場合もある。実際に繊維を計数することで測定を行うには、精密なピンセット及びハサミが必要とされる。Tweezermanというブランドではこれらの測定用のツールを製造しており、商品コード1240Tのピンセット及び商品コード3042−Rのハサミなどを使用することができる。医療機器の供給元であるExpertの商品コードMDS0859411のものをハサミとして使用することもできる。使用可能なツールは他の供給元によっても製造されている。
【0300】
○先端の結合が行われない試料の場合:一般的に、図16に示されるように、変位した繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。構造化された繊維質ウェブは、破断したフィラメントがより少ない第2の領域内の変位した繊維の側の第1の表面上で切断されなければならない。図16に示されるように、これは第1の切断部82として示される左側である。これは変位した繊維の基部において、第1の表面に沿って切断されなければならない。この切断部を図17a及び17bに示す。図17bに示される側面図は、図に示されるようにMD方向に向けられている。この切断が行われた時点で、それ以上繊維が落ちなくなるまですべての遊離した繊維を払い落とすか、ブラシで掃き落とす。この繊維を集めて計数する。次いで第2の領域の他方の側を切断し(図16に第2の切断部84として示す)、繊維の数を数える。第1の切断により破断繊維の数が詳細に判明する。第1の切断及び第2の切断において計数された繊維の数の合計は、全繊維数に等しい。第1の切断における繊維の数を全繊維数で割って100を掛けることにより、破断繊維の割合(%)が得られる。多くの場合、目視検査によって繊維の大部分が破断しているか否かを示すことができる。定量的な数が必要な場合には、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10個の試料に対して行い、全体の平均を求めなければならない。試料が一定時間の間、圧縮されている場合には、この試験のための変位領域を明確にするために、切断に先立って試料を軽くブラッシングすることが必要な場合もある。これらの割合(%)が近い値であり、統計的に有意な試料のサイズが得られていない場合には、95%の信頼区間内で充分な統計的確実性が得られるように試料の数を10個ずつ増やす必要がある。
【0301】
○先端の結合が行われた試料の場合:図18に示されるように、一般に変位した繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。破断したフィラメントが、より少ない側を最初に切断する必要がある。図18に示されるように、これは第1の切断部として示される左側の上部であり、この部分は先端結合部が位置する部分の頂部にあるが、先端が結合された材料は一切含んでいない(すなわち、破断繊維の側に向かって先端結合部の側で切断しなければならない)。この切断を行い、遊離した繊維を払い落として計数し、繊維カウント1とする。第2の切断は、図18において第2の切断部として示される、変位した繊維の基部において行う必要がある。この繊維を払い落として計数し、このカウントを繊維カウント2とする。先端結合領域の他方の側において第3の切断を行い、繊維を払い落として計数し、繊維カウント3とする。変位した繊維の基部において第4の切断を行い、繊維を払い落として計数し、繊維カウント4とする。この切断部を図17a及び17bに示す。繊維カウント1及び繊維カウント2において計数された繊維の数は、その側面1−2の全繊維数に等しい。繊維カウント3及び繊維カウント4において計数された繊維の数は、その側面3−4の全繊維数に等しい。繊維カウント1と繊維カウント2との差を求め、これを繊維カウント1と繊維カウント2との合計で割ってから100を掛けたものを、破断フィラメントの割合(%)1−2と呼ぶ。繊維カウント3と繊維カウント4との差を求め、これを繊維カウント3と繊維カウント4との合計で割ってから100を掛けたものを、破断フィラメントの割合(%)3−4と呼ぶ。本発明においては、破断フィラメントの割合(%)1−2又は破断フィラメントの割合(%)3−4が50%よりも大きくなければならない。多くの場合、目視検査によって繊維の大部分が破断しているか否かを示すことができる。定量的な数が必要な場合には、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10個の試料に対して行い、全体の平均を求めなければならない。試料が一定時間の間、圧縮されている場合には、この試験のための変位領域を明確にするために、切断に先立って試料を軽くブラッシングすることが必要な場合もある。これらの割合(%)が近い値であり、統計的に有意な試料のサイズが得られていない場合には、95%の信頼区間内で充分な統計的確実性が得られるように試料の数を10個ずつ増やす必要がある。
【0302】
●平面内径方向の透過性(IPRP):平面内径方向の透過性すなわちIPRP、又は本発明で単に透過性とは、不織布の透過性の目安であり、材料を通じて液体を輸送するために必要とされる圧力に関係している。以下の試験は、多孔質材料の平面内径方向の透過性(IPRP)の測定に適したものである。一定の圧力下で材料の環状試料を通じて径方向に流れる生理食塩水(0.9% NaCl)の量は、時間の関数として測定される(参照:J.D.Lindsay,「The anisotropic Permeability of Paper」TAPPI Journal,(May 1990,pp223)平面内の生理食塩水の透水計数を求めるにはダルシーの法則及び安定状態流の方法が使用される。)
IPRP試料格納装置400が図20に示されており、円筒状の下側プレート405、上側プレート420、及び図21に詳細に示される円筒状のステンレス鋼ウェイト415を含んでいる。
【0303】
上側プレート420は厚さ10mm、外径70.0mmであり、その中央に固定された長さ190mmの管425に連結されている。管425は、外径15.8mm及び内径12.0mmである。この管は、図21に示されるように、管の下縁部が上側プレートの下面と面一となるように、上側プレート420の中央の円形の12mm径の穴に接着により固定されている。下側プレート405及び上側プレート420は、Lexan(登録商標)又はこれに相当するもので製造される。ステンレス鋼ウェイト415は、ウェイトが管425上に緊密に滑り嵌めされるように70mmの外径及び15.9mmの内径を有している。ステンレス鋼ウェイト415の厚さは約25mmであり、上側プレート420、管425、及びステンレス鋼ウェイト415の合計重量が788gとなるように調節されており、これにより測定時に2.1kPaの拘束圧がもたらされる。
【0304】
図21に示されるように、下側プレート405は厚さ約50mmであり、それぞれの溝が下側プレートの直径にわたって延びるとともに溝同士が互いに直交するようにして、2本の位置合わせ溝430がプレートの下面に切り込まれている。各溝は幅1.5mm及び深さ2mmである。下側プレート405は、プレートの直径にわたって延びる水平方向の穴435を有している。水平方向の穴435は直径が11mmであり、その中心軸は下側プレート405の上面の12mm下にある。下側プレート405は、直径10mm及び深さ8mmの中央の垂直方向の穴440も有している。中央の穴440は、下側プレート405にT字形の空洞を形成するように水平方向の穴435と接続している。水平方向の穴435の外側の部分は、下側プレート405に水密に取り付けられる配管エルボ445を収容するようにネジ切りされている。一方のエルボは、高さ190mm及び内径10mmの垂直な透明管460と接続されている。管460には、下側プレート420の上面から50mm上の高さに好適なマーク470が刻まれている。これは測定時に維持されるべき液面の高さの基準である。他方のエルボ445は、可撓管を介して流体供給リザーバ700(後述する)に接続されている。
【0305】
好適な流体供給リザーバ700が図22に示されている。リザーバ700は好適な実験用ジャッキ705の上に置かれ、リザーバへの流体の充填を助けるための、気密に栓がされた開口部710を有する。開放端を有する内径10mmのガラス管715が、管の外側とリザーバとの間に気密シールが形成されるようにしてリザーバの上部のポート720を通じて延びている。リザーバ700には、リザーバ内の液面よりも下に位置する入口730、ストップコック735、及び出口740を有するL字形の供給管725が備え付けられている。出口740は、可撓性プラスチック管450(例えばTygon(登録商標))を介してエルボ445に接続されている。供給管725、ストップコック735、及び可撓性プラスチック管450の内径は、管460の液面の高さが測定の間、刻みマーク470に常に維持されるだけの充分に大きな流速で流体がIPRP試料格納装置400に供給されるようなものとなっている。リザーバ700の容量は約6リットルであるが、試料の厚さ及び透過性によってはこれよりも大きなリザーバが必要とされる場合もある。試料格納装置400に流体を供給可能であり、管460内の液面の高さを測定が行われる間に刻みマーク470に維持することが可能なものであれば、他の流体供給システムを使用することもできる。
【0306】
IPRP集水漏斗500は、図20に示されており、漏斗の上縁部における内径が約125mmである外側ハウジング505を含む。漏斗500は、漏斗内に落下する液体が流出口515から速やかかつ自由に流出するように構成されている。漏斗500の周囲の水平方向のフランジ520によって、漏斗を水平な位置に取り付けることが容易となっている。一体形成された垂直方向の2個の内部リブ510が漏斗の内径にわたって延び、互いに対して直交している。各リブ510の幅は1.5mmであり、各リブの上面は所定の水平面内にある。漏斗ハウジング500及びリブ510は、試料格納装置400を支持するためにLexan(登録商標)又はこれに相当するもののような好適な剛性材料から製造される。試料の装填を容易に行うには、リブの高さは、下側プレート405がリブ510上に配置される際に、下側プレート405の上面が漏斗のフランジ520よりも上に位置するような充分な高さであることが有利である。ステンレス鋼ウェイト415の相対的な高さを測定するためのダイヤルゲージ535を取り付けるために、架橋部材530がフランジ520に取り付けられている。ダイヤルゲージ535は、25mmの範囲にわたって0.01mmの解像度を有する。好適なデジタルダイアルゲージは、Mitutoyoモデル575−123(McMaster−Carrよりカタログ番号19975−A73にて販売される)、又はこれに相当するものである。架橋部材530は、管425及び460を架橋部材と接触せずに通すことができるような直径17mmの2個の円形の穴17を有している。
【0307】
図20に示されるように、漏斗500は電子秤600の上に設置されている。秤は、0.01gの精度及び少なくとも2000gの容量を有するものである。秤600はコンピュータともインターフェースされており、秤の読み取り値を定期的に記録して、コンピュータ上に電子的に保存することが可能である。好適な秤は、Mettler−ToledoモデルPG5002−S、又はこれに相当するものである。漏斗流出口515から流出する液体が直接容器610の中に落ちるように回収容器610が秤量皿の上に置かれている。
【0308】
漏斗500は、各リブ510の上面が水平面内に位置するように設置される。秤600及び容器610は、漏斗流出口515から流出する液体が直接容器610の中に落ちるように漏斗500の下に配置される。IPRP試料格納装置400は、リブ510が溝430内に配置された状態で漏斗700内の中央に置かれる。下側プレート405の上面は、完全に平坦かつ水平でなければならない。上側プレート420は、下側プレート405と整列して下側プレート405上に置かれる。ステンレス鋼ウェイト415は、管425を包囲するようにして上側プレート420上に置かれる。管425は架橋部材530の中央穴を通じて垂直に延びる。ダイヤルゲージ535は、ステンレス鋼ウェイト415の上面の所定の点にプローブが置かれた状態で、架橋部材530に対してしっかりと取り付けられる。ダイヤルゲージをこの状態で0に設定する。リザーバ700に0.9%生理食塩水を満たして再び封止する。出口740は、可撓性プラスチック管450を介してエルボ445に接続されている。
【0309】
試験する材料の環状試料475を好適な手段によって切断する。試料は外径70mm及び内側の穴の直径が12mmである。試料を切断するための好適な手段の1つは、鋭利な同心状のブレードを有するダイカッターを使用することである。
【0310】
上側プレート420を充分高く持ち上げ、試料が下側プレート上に中心を合わせて置かれ、プレート同士が整列された状態で上側プレートと下側プレート405との間に試料475を挿入する。ストップコップ735を開き、ジャッキ705を用いてリザーバ700の高さを調節すること及びリザーバ内の管715の位置を調節することによって、管460内の液面の高さを刻みマーク470に合わせる。管460内の液面の高さが刻みマーク470で安定し、ダイヤルゲージ535の読み取り値が一定となった時点で、その読み取り値を記録し(初期の試料厚さ)、コンピュータによる秤からのデータの記録を開始する。秤の読み取り値及び経過時間を10秒毎に5分間記録する。3分後にダイヤルゲージの読み取り値を記録し(最終的な試料厚さ)、ストップコックを閉じる。平均の試料厚さLpは、初期の試料厚さと最終的な試料厚さとの平均をcmで表したものである。
【0311】
30秒〜300秒のデータに線形最小2乗回帰フィッティングを行って、流速をg/秒で計算する。材料の透過性を下式を使用して計算する。
【数2】
式中、
kは、材料の透過性(cm2)であり、
Qは、流速(g/s)であり、
ρは、22℃における液体の密度(g/cm3)であり、
μは、22℃における液体の粘度(Pa・s)であり、
Roは、試料の外側半径(mm)であり、
Riは、試料の内側半径(mm)であり、
Lpは、平均の試料厚さ(cm)であり、
ΔPは、静水圧(Pa)である。
【数3】
式中、
Δhは、管460内の液体の下側プレートの上面からの高さ(cm)であり、
Gは、重力加速度定数(m/s2)である。
【数4】
式中、
Krは、cm2/(Pa・s)の単位で表されるIPRP値である。
【0312】
表中のデータの考察:以下の情報は、表中に見られる情報を本発明に含めるうえでの根拠を与えるものである。
【0313】
●表1及び表2:明確な3葉形の繊維のベース基材の材料特性、中実円形及び標準的な3葉形ベース基材の製造時特性。表1は、ベース基材の製造時特性を示す。表は、各実施例について具体的数値を示している。表1において注目すべき重要な特性は、明確な3葉形フィラメントの改変比、及びこれらの点結合PET基材における比較的低いMD方向の伸長率である。
【0314】
●表3:ベース基材の流体処理特性を示す。これらのベース基材の保持容量は、g/gの保持容量が10よりも低いこれらのベース基材は吸収性材料ではないことを示すものであった。
【0315】
●表4:プロセスの設定及びベース基材の特性に対する構造化基材の特性変化を示す。試料の1D群の各実施例は、本発明の主たる目的の1つを強調するものである。1Dがベース基材(60g/m2 6.9dpf PET)であるのに対して、1D1〜1D6では、歪み深さによって示されるように繊維の変位が大きくなるに従ってキャリパーの変化を示している。歪みを大きくするとキャリパーが増大する。過剰熱結合によって過剰結合が示されている。先端結合はFS先端によって示され、表に示されるように、エイジング処理キャリパー及び形成される間隙容積の量にも影響している。本発明の目的は、液体捕捉のための間隙容積を形成することにある。過剰熱結合は、ベース基材に対するMD方向の引っ張り強度の増大によって示されるように、機械的特性を高めるために使用することもできる。実施例1Nのデータ群は、ベース基材と、異なる歪み深さプロセスを行った1N1〜1N9とを比較するものである。このデータ群は、過剰熱結合、FS先端及び全体の歪みによって決定されるキャリパー生成の最適化が可能であることを示している。これらのデータは、歪みが大きすぎるとエイジング処理キャリパーが低下した試料が製造されることを示している。本発明の一実行形態においては、これは活性化領域において完全に破断したフィラメントに相当するが、間隙容積の形成が最も高い領域では、好ましい破断繊維の範囲を有している。これらの結果はまた、本発明においては、流体輸送特性を更に有する一方で、典型的な樹脂結合構造と同様の構造化基材の容積を形成することが可能であることも示している。
【0316】
●表5:データ及び実施例は、本発明におけるキャリパーの増大及び間隙容積の形成を、標準的な3葉形及び中実円形の繊維形状に対して使用することが可能であることを示している。本発明の効果は、明確な3葉形の繊維に限定されない。
【0317】
●表6:表6は、ベース基材の特性に対する構造化基材の流体処理特性を示す。表6の各実施例は表4と同じものである。表6のデータは、FDTの使用によって構造化基材のMD方向への水平輸送特性が、ベース基材に対して増大することを示している。過剰結合はMD方向への流体輸送性を高めることが示された。垂直吸い上げ高さ要素は、中程度のFDT歪みでは構造化基材はベース基材に対して同様の性質を示すが、より高い歪みでは垂直吸い上げ高さ要素はわずかに減少することを示している。カーディングした樹脂結合不織布に関しては、垂直輸送要素はやはり極めて良好であった。エイジングを行った裏抜き試験のデータは、ベース基材に対して構造化基材の液体捕捉速度が劇的に向上していることを示している。ベース基材に対してFDTでは、裏抜き時間が劇的に減少している。再湿潤特性は、FDTではベース基材に対して概ね低下している。表6のデータは、構造化基材の流体輸送性を与える能力及び流体捕捉速度を制御する能力を実証するものである。この表には、各試料に行ったIPRPによる材料の流体透過性も含まれているが、これはFDT後の劇的な改善、更に構造化基材が、カーディングされた樹脂結合基材と同様のキャリパーにおいて、より高い透過性をどのように有しているかを示している。
【0318】
●表7は、ベース基材に対する、特定の明確な繊維形状の構造化基材の更なる流体処理特性を示す。試料の種類において使用した活性化条件を表5に示す。表5は、FDTにおける変更によって流体捕捉速度が増大し得ることを示している。
【0319】
●表8は、ベース基材試料に対して更なる構造化基材を示しており、中実円形(SR)及び標準的3葉形繊維(TRI)において流体捕捉速度が向上していることを示している。構造化基材試料に対して使用した活性化条件を表9に示す。
【0320】
●表9は、表8で作った試料のプロセス条件を示す。
【0321】
●表10は、本発明において使用する基材の単一繊維特性の値を示す。本発明では熱安定性であるPETを製造するために高速繊維紡糸法を使用しているため、弾性率の値は、強度がフィラメント1本当たり10gよりも高い繊維で極めて高くなっている。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0322】
本明細書において開示する寸法及び値は、記載される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解すべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、こうした各寸法は、記載される値及びその値周辺の機能的に同等な範囲の両方を意味するものとする。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0323】
相互に参照される、又は関連するすべての特許若しくは特許出願を含む、本明細書において引用する文献はすべて、明示的に除外若しくは限定されないかぎりにおいて、その全容を本明細書に参照によって援用するものである。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示若しくは特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいずれかの参照とのいずれかの組み合わせにおいて、こうした発明を教示、示唆、若しくは開示することを容認するものではない。更に、本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照によって援用する文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文書においてその用語に与えられた定義又は意味が優先するものとする。
【0324】
以上、本発明の特定の実施形態を図示、説明したが、他の様々な変更及び改変を本発明の趣旨及び範囲より逸脱することなく実施することが可能である点は当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲に含まれるそうした変更及び改変はすべて、添付の「特許請求の範囲」において網羅されるものとする。
【技術分野】
【0001】
本発明は流体透過性繊維質ウェブに関し、詳細には最適な流体捕捉性能及び流体分配性能をもたらす流体透過性繊維質ウェブに関する。
【背景技術】
【0002】
市販の織布及び不織布は、典型的には、繊維として形成された合成ポリマーを含んでいる。これらの布地は、典型的には0.9g/cm3〜1.4g/cm3の高い固有の全体密度を有する中実繊維によって、典型的には製造される。布地の全体重量又は坪量は、許容される厚さすなわちキャリパー、強度及び保護感を促進するために布地の所望の不透明度、機械的特性、柔軟性/柔らかさ、又は特定の流体との相互作用によってしばしば規定される。多くの場合、これらの性質は、所望の性能レベルを実現するために組み合わせとして求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
合成繊維不織布を使用することの1つの重要な側面は、その機能性である。多くの布地及び不織布では、その機能は製品に所望の感触を与える、すなわち製品をより柔軟にしたり、製品により自然な風合いを与えることである。他の布地又は不織布では、機能性は製品の直接的な性能を向上させるうえで重要である。例えば、使い捨て吸収性物品は、典型的には、不織布トップシート、バックシート及びその間の吸収性コアを含む。不織布トップシートは透過性であり、吸収性コアに流体を通過させる。漏れ及び溢出による再湿潤を制御するため、典型的には、少なくとも1つの不織布層を含む流体捕捉層がトップシートと吸収性コアとの間に配置される。この不織布捕捉層は、流体を取り込んでこれを吸収性コアに透過させる機能を有する。この機能を実行するうえでの捕捉層の有効性は、層の厚さ及び捕捉層を形成するために使用される繊維の性質に大きく依存する。しかしながら、厚さは消費者にとって望ましくない嵩高性につながる。したがって、捕捉層の最適な厚さすなわちキャリパーはしばしば、流体を処理するための厚さと快適性のための薄さとの妥協点である。したがって、流体捕捉のための厚さと快適性のための薄さとを呈する流体捕捉層が望ましい。更に、キャリパーすなわち厚さは、材料の取り扱い、保管、及び通常の使用時に引き起こされる圧縮力のために維持することが困難である。したがって、通常の取り扱い、パッケージング及び使用の際に持続的な強いキャリパーを呈する不織布が提供されることもまた望ましい。更に、材料の取り扱い及び転換の際に引き起こされるこのような圧縮力の影響を最小に抑えるために、最終用途に近い不織布材料のキャリパーを高めるためのプロセスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、熱可塑性繊維を含む流体透過性構造化繊維質ウェブに関する。構造化繊維質ウェブは、1.5mm未満のエイジング処理キャリパー、少なくとも5mmの垂直吸い上げ高さ、少なくとも10,000cm2/(Pa・s)の透過性及び少なくとも5cm3/gの比容積を有する。熱可塑性繊維は好ましくは熱安定性であり、下記に述べるような機械的処理の際にウェブの平面内において破断するように非伸長性であり、使用時の圧縮力に抗するように剛性である。繊維は少なくとも0.5GPaの弾性率を有することが好ましく、熱を用いて一体に熱結合されることによって熱安定性である繊維質ウェブのベース基材を作り出す。繊維の形状としては中実円形及び中空円形繊維が含まれるが、他の形状として3葉形、デルタ形又は繊維の表面積を増大させて垂直吸い上げ性能を高める他の任意の多葉形の繊維形状が含まれる。
【0005】
繊維質ウェブのベース基材は、構造化された繊維質ウェブを形成するようベース基材に局所的な平面外の厚みを付与するために、機械的に処理される第1の表面及び第2の表面を含む。構造化繊維質ウェブは、第1の領域、及び第1の領域の全体にわたって配置される多数の別個の第2の領域を含む。第2の領域は繊維質ウェブの第2の表面上に不連続部を、第1の表面上に変位した繊維を形成する。変位した繊維は第2の領域の第1の側面に沿って固定され、第1の側面の反対側の第2の領域の第2の側面に沿って第1の表面の近くで分離していることにより、繊維質ウェブの第1の表面から遠ざかる方向に延びる自由端を形成する。好ましくは、変位した繊維の少なくとも50%かつ100%未満が自由端を有することにより、流体を捕集するための自由容積をもたらす。
【0006】
一実施形態では、液体透過性の構造化繊維質ウェブは、第1の領域の全体にわたって第2の領域間に配置された多数の過剰結合領域を含む。過剰結合領域は第2の領域間に連続的に延びてよく、流体捕捉のための更なる間隙容積をもたらす凹部と、透過性を高める流体分配性をもたらす通路を形成する。
【0007】
流体透過性の構造化繊維質ウェブは、最適な流体捕捉性能及び流体分配性能が望ましい流体管理用途を対象としたものである。
【0008】
本発明の構造化繊維質ウェブを備えた使い捨て吸収性物品は、シャーシ及び吸収性コアを更に備えてもよい。シャーシは、トップシート及びバックシートを有してもよい。吸収性コアはトップシートとバックシートとの間に配置され得、第1及び第2の吸収性層を含み得る。第1の吸収層は第1の基材を含み、第2の吸収層は第2の基材を含み得る。第1及び第2の吸収層は、第1及び第2の基材上に置かれた吸収性粒子状ポリマー材料、並びに第1及び第2の基材のそれぞれの上の吸収性粒子状ポリマー材料を覆う熱可塑性接着材料を更に含み得る。
【0009】
前記第1の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部が、前記第2の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部と接触するように、第1の吸収層と第2の吸収層とは一体に合わせることができ、吸収性粒子状ポリマー材料は、吸収性粒子状ポリマー材料領域内において第1の基材と第2の基材との間に配置され、吸収性粒子状ポリマー材料は吸収性粒子状ポリマー材料領域にわたって実質的に連続的に分配されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらの特徴並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明文、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面を参照することで更に深い理解がなされるであろう。
【図1】本発明に基づいてウェブを製造するための装置の概略図。
【図1A】本発明による積層ウェブを製造するための代替的な装置の概略図。
【図2】図1に示される装置の一部の拡大図。
【図3】構造化基材の部分斜視図。
【図4】図3に示される構造化基材の部分拡大図。
【図5】図4に示される構造化基材の一部の断面図。
【図6】図5に示される構造化基材の一部の平面図。
【図7】図2に示される装置の一部の断面図。
【図8】本発明のウェブの一実施形態を形成する装置の一部の斜視図。
【図9】本発明のウェブを形成するための装置の一部の拡大斜視図。
【図10】変位した繊維の溶融結合部分を有する構造化基材の部分斜視図。
【図11】図10に示される構造化基材の部分拡大図。
【図12a】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12b】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12c】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12d】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12e】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図12f】結合領域及び/又は過剰結合領域の異なるパターンを示す本発明の構造化基材の一部の平面図。
【図13】結合領域及び/又は過剰結合領域を示す構造化基材の一部の断面図。
【図14】構造化基材の両面上の結合領域及び/又は過剰結合領域を示す構造化基材の一部の断面図。
【図15】低い繊維変位の変形で形成されたテント状構造を示す、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図16】増大した繊維変位の変形による顕著な繊維の破断を示す、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図17a】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の部分を示す本発明のウェブの部分の顕微鏡写真。
【図17b】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の部分を示す本発明のウェブの部分の顕微鏡写真。
【図18】変位した繊維の数を求めるために切断された構造化基材の、先端が結合された変位した繊維に沿った位置を特定する、本発明のウェブの一部の顕微鏡写真。
【図19a】成形繊維の形態の断面図。
【図19b】成形繊維の形態の断面図。
【図19c】成形繊維の形態の断面図。
【図20】平面内径方向透過性試験装置の構成の概略図。
【図21a】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図21b】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図21c】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成の一部の代替図。
【図22】図20に示される平面内径方向透過性試験装置の構成用の流体供給リザーバの概略図。
【図23】本発明の一実施形態に基づくおむつの平面図。
【図24】図23に示されるおむつの、図23の切断線2−2に沿って取った断面図。
【図25】本発明の一実施形態に基づく吸収性コア層の部分断面図。
【図26】本発明の別の実施形態に基づく吸収性コア層の部分断面図。
【図27】図25に示される吸収性コア層の平面図。
【図28】本発明の一実施形態に基づく第2の吸収性コア層の平面図。
【図29a】図27及び28に示される第1及び第2の吸収性コア層の組み合わせを含む吸収性コアの部分断面図。
【図29b】図27及び28に示される第1及び第2の吸収性コア層の組み合わせを含む吸収性コアの部分断面図。
【図30】図29a及び29bに示される吸収性コアの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語の定義
本明細書で使用するところの用語「活性化」とは、歯と溝との噛み合いによって発生する引っ張り歪みによって中間のウェブ部分を延伸又は伸長する任意のプロセスを意味する。こうしたプロセスは、通気性フィルム、伸縮性複合材料、孔あき材料及びテクスチャ加工材料などの多くの物品の製造において有用であることが分かっている。不織布では、延伸によって繊維再配向、繊維のデニール及び/又は断面の変化、坪量の低下、及び/又は中間ウェブ部分の制御された繊維破壊をもたらすことができる。一般的な活性化方法としては、例えば、当該技術分野ではリングロール加工として知られるプロセスがある。
【0012】
本明細書で使用するところの「噛合深さ」とは、対向する活性化部材の噛み合った歯と溝とが互いの中に入り込む程度を意味する。
【0013】
本明細書で使用するところの用語「不織布ウェブ」とは、個々の繊維又は糸が入り組んではいるものの、ランダムに配向された繊維を典型的には有しない織布又は編布におけるような繰り返しパターンとして入り組んではいない構造を有するウェブのことを指す。不織布ウェブ又は不織布は、例えばメルトブローイング法、スパンボンド法、水流交絡法、エアレイド法、及びカード熱結合法(carded thermal bonding)を含む接着カードウェブ法(bonded carded web process)などの多くのプロセスによって形成されてきた。不織布の坪量は、通常、1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で表される。積層ウェブの坪量は、構成層及び他の任意の添加成分を合わせた坪量である。繊維直径は通常、マイクロメートルで表されるが、繊維径は、繊維の長さ当たりの重量の単位であるデニールで表すこともできる。本発明における使用に適した不織布又は積層ウェブの坪量は、6g/m2〜300g/m2、好ましくは10g/m2〜200g/m2、より好ましくは15g/m2〜120g/m2、及び最も好ましくは20g/m2〜100g/m2の範囲である。
【0014】
本明細書で使用するところの「スパンボンド繊維」とは、紡糸口金の微細で通常は円形の複数の毛管から溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして押し出した後、押し出されたフィラメントの直径を外部から加えた力によって急速に小径化することによって形成される、比較的小径の繊維を指す。スパンボンド繊維は、捕集面に堆積させる際に概ね粘着性がない。スパンボンド繊維は概ね連続的であり、7マイクロメートルより大きい、より詳細には約10〜40マイクロメートルの平均直径(少なくとも10個の試料から)を有する。
【0015】
本明細書で使用するところの用語「メルトブローイング」は、溶融した熱可塑性材料を、微細で通常は円形の複数の金型毛管を通じて、通常は加熱された収束する高速気体(例えば空気)流中に溶融糸又はフィラメントとして押し出し、この気体流によって溶融熱可塑性材料のフィラメントを場合によりマイクロファイバー径にまで小径化することによって繊維を形成するプロセスを指す。この後、メルトブローン繊維は高速気体流により運ばれて、しばしばまだ粘着性であるうちに捕集面上に堆積されて、ランダムに分散されたメルトブローン繊維のウェブを形成する。メルトブローン繊維は、連続的又は不連続的であり得る、平均直径が一般的に10マイクロメートルよりも小さいマイクロファイバーである。
【0016】
本明細書で使用するところの用語「ポリマー」には、これらに限定されるものではないが、一般的に、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマーなどのコポリマー、ターポリマーなど、並びにこれらのブレンド及び修飾物が挙げられる。更に特に限定しないかぎり、用語「ポリマー」には、材料のあらゆる可能な幾何学的形態が含まれる。その形態としては、これらに限定されるものではないが、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック、及びランダム対称が挙げられる。
【0017】
本明細書で使用するところの用語「1要素」繊維とは、1種類のポリマーのみを使用して1以上の押出成形機によって形成される繊維のことを指す。これは、1種類のポリマーから形成されているが、着色、静電気防止特性、潤滑、親水性などを付与するために少量の添加剤が添加された繊維を除外するものではない。これらの添加剤、例えば着色用の二酸化チタンは、一般的に約5重量%未満、より典型的には約2重量%未満の量で存在する。
【0018】
本明細書で使用するところの用語「2要素繊維」(bicomponent fiber)とは、別々の押出成形機から押し出された少なくとも2種類の異なるポリマーを合わせて紡糸し、1本の繊維として形成した繊維を指す。2要素繊維は、複合繊維又は多要素繊維と呼ばれることもある。各ポリマーは、2要素繊維の断面においてほぼ位置が一定した異なる領域に配され、2要素繊維の長さに沿って連続的に延びる。そのような2要素繊維の構成は、例えば、1つのポリマーが別のポリマーにより包囲されたシース/コア配置とするか、又はサイドバイサイド配置、パイ型配置、又は「海島型」配置とすることができる。
【0019】
本明細書で使用するところの用語「2成分繊維」(biconstituent fiber)とは、同じ押出成形機からブレンドとして押し出される少なくとも2種類のポリマーから形成された繊維を指す。2成分繊維は、繊維の断面において比較的位置が一定した異なる領域に配された異なるポリマー成分を有しておらず、更に、この異なるポリマーは通常、繊維の全長に沿って連続的ではなく、代わりにランダムに開始及び終了する繊維を通常形成している。2成分繊維は、多成分繊維と呼ばれることもある。
【0020】
本明細書で使用するところの用語「非円形繊維」とは、非円形断面を有する繊維について述べる場合にいい、「成形繊維」及び「毛管通路繊維」を含む。このような繊維は中実又は中空であってよく、3葉形のデルタ形状であってよく、好ましくは外表面に毛管通路を有する繊維である。毛管通路は、例えば「U字形」、「H字形」、「C字形」及び「V字形」などの様々な断面形状のものであり得る。好ましい毛管通路繊維の1つとして、Fiber Innovation Technologies(テネシー州ジョンソンシティー)より販売される4DG繊維と称されるT−401がある。T−401繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PETポリエステル)である。
【0021】
「配置された」とは、物品の1つの要素の、物品の別の要素に対する配置のことを指す。例えば、各要素は、おむつの他の要素との一体構造として、あるいはおむつの別の要素と接合された別の要素として特定の場所又は位置に形成される(接合及び位置決めされる)。
【0022】
「伸長性不織布」とは、断裂又は破断することなく少なくとも50%伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、少なくとも150mmにまで伸長し得る。ある材料は1つの方向(例えばCD方向)に伸長可能であるが、別の方向(例えばMD方向)には伸長できない場合がある。伸長性不織布は、一般的に伸長性繊維から構成される。
【0023】
「高伸長性不織布」とは、断裂又は破断することなく少なくとも100%伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する高伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、少なくとも200mmにまで伸長し得る。ある材料は1つの方向(例えばCD方向)に高度に伸長可能であるが、別の方向(例えばMD方向)には伸長できないか、又は他の方向には伸長可能である場合がある。高伸長性不織布は、一般的に高伸長性繊維から構成される。
【0024】
「非伸長性不織布」とは、50%の伸長率に達する前に断裂又は破断するように伸長する繊維質不織布ウェブのことである。例えば、100mmの初期長を有する非伸長性材料は、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、50mmよりも大きく伸長できない。非伸長性不織布は、機械方向(MD)及び横断方向(CD)のいずれにも非伸長性である。
【0025】
「伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断することなく少なくとも400%伸長する繊維のことである。
【0026】
「高伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断することなく少なくとも500%伸長する繊維のことである。
【0027】
「非伸長性繊維」とは、23±2℃及び50±2%の相対湿度で試験を行って毎分100%の歪み速度で引っ張った場合に、断裂又は破断のない伸長率が400%未満である繊維のことである。
【0028】
「親水性の」又は「親水性」とは、水又は生理食塩水によって表面が速やかに濡れる繊維又は不織布材料のことを指す。水又は生理食塩水を吸い上げる材料は、親水性として分類することができる。親水性を測定する方法の1つとして、垂直吸い上げ性能を測定することによるものがある。本発明においては、ある不織布材料は少なくとも5mmの垂直吸い上げ性能を示す場合に親水性とされる。
【0029】
「接合された」とは、要素を直接別の要素に取り付けることにより一方の要素を他方の要素に直接固定する構成、及び要素を中間部材に取り付け、その中間部材を次に別の要素に取り付けることにより、一方の要素を間接的に他方の要素に固定する構成を指す。
【0030】
「積層体」とは、例えば接着剤結合、熱結合、超音波結合などの当該技術分野では既知の方法によって互いに結合された2つ以上の材料を意味する。
【0031】
「機械方向」又は「MD」は、製造プロセスにおいてウェブが移動する際のウェブの移動方向と平行な方向である。MD方向の±45°以内の範囲の方向は、機械方向とみなされる。「機械横断方向」又は「CD」は、MD方向にほぼ垂直な、ウェブによって概ね画定される平面内の方向である。横断方向の±45°以内の範囲の方向は、横断方向とみなされる。
【0032】
「外側寄り」及び「内側寄り」とはそれぞれ、第2の要素に対して吸収性物品の長手方向の中心線から相対的に遠く、又は近くに配置された要素の位置を指す。例えば、要素Aが要素Bの外側寄りである場合、要素Aは、要素Bよりも長手方向の中心線から遠くにある。
【0033】
「吸い上げ」とは、毛管力による不織布を通じた流体の能動的な流体輸送のことを指す。吸い上げ速度とは、単位時間当たりの流体の移動、すなわち、特定の時間の間に流体がどれくらい遠くに移動するかを指す。
【0034】
「捕捉速度」とは、ある材料が所定量の流体を吸収する速度、又は流体が材料を通過するのに要する時間のことを指す。
【0035】
「透過性」とは、ある材料を通じてX−Y平面上に流れる流体の相対的な能力のことを指す。透過性が高い材料は、透過性がより低い材料よりも高い流体の流速を可能とする。
【0036】
「ウェブ」とは、ロールに巻くことができる材料のことを意味する。ウェブは、フィルム、不織布、積層体、孔あき積層体などであってよい。ウェブの面とは、その縁部とは対照的に、その2次元の表面の1つを指す。
【0037】
「X−Y平面」は、移動ウェブのMD方向とCD方向とによって、又はその長さによって画定される平面を意味する。
【0038】
「吸収性物品」とは、身体排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指し、より詳細には、着用者の身体に接して又は近接して置かれることによって、身体から排出される様々な排出物を吸収して閉じ込める装置のことを指す。吸収性物品としては、おむつ、パンツ、トレーニングパンツ、成人用失禁下着、女性用衛生用品などが挙げられる。本明細書で使用するところの用語「体液」又は「身体排出物」としては、これらに限定されるものではないが、尿、血液、膣排出物、母乳、汗及び糞便が挙げられる。本発明の好ましい吸収性物品としては、おむつ、パンツ及びトレーニングパンツがある。
【0039】
「吸収性コア」は、吸収性物品によって受け取られた液体を吸収し封じ込めるために、吸収性物品のトップシートとバックシートとの間に典型的に配置される構造体を意味し、1つ以上の基材と、1つ以上の基材上に配置された吸収性ポリマー材料と、吸収性粒子状ポリマー材料を1つ以上の基材上に不動化するための、吸収性粒子状ポリマー材料上及び1つ以上の基材の少なくとも一部分上の熱可塑性組成物と、を含んでもよい。多層吸収性コアでは、吸収性コアはまたカバー層も含んでもよい。1以上の基材及びカバー層が不織布を含んでもよい。更に、吸収性コアはセルロースを実質上含まない。吸収性コアには、吸収性物品の捕捉システム、トップシート、又はバックシートは含まれない。特定の実施形態では、吸収性コアは、1以上の基材、吸収性ポリマー材料、熱可塑性組成物、及び必要に応じて用いられるカバー層から基本的に構成される。
【0040】
「吸収性ポリマー材料」、「吸収性ゲル材料」、「AGM」、「超吸収体」、及び「超吸収性材料」は、本明細書において互換可能に使用され、遠心分離保持容量試験(Edana 441.2−01)を使用して測定した場合に、重量の少なくとも5倍の0.9%生理食塩水を吸収することが可能な架橋ポリマー材料のことを指す。
【0041】
本明細書において「吸収性粒子状ポリマー材料」とは、乾燥状態で流動性を有する粒子状形態である吸収性ポリマー材料のことを指して使用される。
【0042】
本明細書で使用するところの「吸収性粒子状ポリマー材料領域」とは、第1の基材264と第2の基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されているコアの領域のことを指す。図30において、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、重なり合った円の外周によって画定される。この外周の外側の第1の基材264と第2の基材272との間には、一定量の外部超吸収性粒子が存在し得る。
【0043】
本明細書において「エアフェルト」とは、セルロース繊維の一形態である粉砕木材パルプのことを指して使用される。
【0044】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、及び「備える(comprises)」は非限定的な用語であり、それぞれの語の後に記載されるもの(例えば構成要素)の存在を特定するものであるが、他の特徴(例えば要素、工程、当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示される構成要素)の存在を除外するものではない。
【0045】
本明細書において「基本的に〜からなる」とは、例えば特許請求の範囲におけるような発明の主題の範囲を、特定の要素又は工程、及び発明の主題の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定するために使用される。
【0046】
「使い捨て式の」とは、その通常の意味において、様々な期間にわたって、限定された使用回数、例えば約20回未満、約10回未満、約5回未満、又は約2回未満の後に処分又は廃棄される物品を意味するものとして使用される。
【0047】
「おむつ」とは、幼児及び失禁患者によって胴体下部の周囲に一般に着用されることにより、着用者の腰部及び脚部を包囲する吸収性物品のことであって、尿及び糞便を受容して閉じ込めるように特に適合されたもののことを指す。本明細書で使用するところの用語「おむつ」には、以下で定義する「パンツ」も含まれる。
【0048】
本明細書で使用するところの「パンツ」又は「トレーニングパンツ」とは、幼児又は成人の着用者用に設計された、腰部開口部及び脚部開口部を有する使い捨て式衣類のことを指す。パンツは、着用者の脚を脚部開口部に挿入し、パンツを着用者の胴体下部の周囲にまでずらすことによって着用者に対して定位置に置くことができる。パンツは、再締結可能な及び/又は再締結不能な結合手段(例えば、縫い目、溶接、接着剤、粘着性結合、ファスナーなど)を用いて物品の部分同士を接合することを含む(ただしこれらに限定されない)任意の好適な技術によって予備成形することができる。パンツは、物品の外周に沿った任意の位置において予備成形することができる(例えば、側面固定、前腰部固定)。本明細書では「パンツ」なる用語を用いているが、パンツは「閉鎖状態のおむつ」、「予め締結されたおむつ」、「プルオンおむつ」、「トレーニングパンツ」、及び「おむつパンツ」とも一般的に呼ばれる。好適なパンツについては、Hasseらに付与された1993年9月21日発行の米国特許第5,246、433号、Buellらに付与された1996年10月29日発行の米国特許第5,569,234号、Ashtonに付与された2000年9月19日発行の米国特許第6,120,487号、Johnsonらに付与された2000年9月19日発行の米国特許第6,120,489号、Van Gompelらに付与された1990年7月10日発行の米国特許第4,940,464号、Nomuraらに付与された1992年3月3日発行の米国特許第5,092,861号、2002年6月13日に出願された、発明の名称が「Highly Flexible And Low Deformation Fastening Device」である米国特許出願公開第2003/0233082(A1)号、Klineらに付与された1999年4月27日発行の米国特許第5,897,545号、Klineらに付与された1999年9月28日発行の米国特許第5,957,908号に開示されている。
【0049】
本明細書で使用するところの「実質的にセルロースを含まない」とは、10重量%未満のセルロース繊維、5重量%未満のセルロース繊維、1重量%未満のセルロース繊維を含むか、まったくセルロース繊維を含まないか、あるいはごく微量のセルロース繊維しか含まない吸収性コアなどの物品のことを述べるのに使用される。ごく微量のセルロース材料は、吸収性コアの薄さ、可撓性、又は吸収性に大きく影響することはない。
【0050】
本明細書で使用するところの「ほぼ連続的に分配された」とは、吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1の基材264と第2の基材272とが多数の超吸収性粒子によって分離されていることを示す。吸収性粒子状ポリマー材料領域内において、第1の基材264と第2の基材272との間にわずかな偶然の接触領域があってもよい点は認識される。第1の基材264と第2の基材272との間の偶然の接触領域は、意図的である場合も又はそうでない場合(例えば製造加工されたもの)もあるが、枕、ポケット、チューブ、キルト柄などの幾何形状を形成することはない。
【0051】
本明細書で使用するところの「熱可塑性接着材料」とは、それから繊維が形成され、その繊維が乾燥及び湿潤状態の両方において超吸収性材料を固定することを目的として超吸収性材料に適用されるポリマー組成物を含むものとして理解される。本発明の熱可塑性接着材料は、超吸収性材料を覆って繊維質のネットワークを形成する。
【0052】
本明細書において開示されるすべての数値範囲に関し、本明細書全体を通じて与えられるすべての最大値の限定は、それよりも小さいすべての数値の限定を、そうしたより小さい数値限定が本明細書にあたかも明確に記載されているのと同様に含むものとして理解すべきである。更に、本明細書全体を通じて与えられるすべての最小値の限定は、それよりも大きいすべての数値の限定を、そうしたより大きい数値限定があたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に含むものである。更に、本明細書の全体を通じて与えられるすべての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に含まれるすべてのより狭い数値の範囲、並びにその数値範囲内のそれぞれの個々の数値を、そのようなより狭い数値範囲及び個々の数値のすべてがあたかも本明細書に明確に記載されているのと同様に包含するものである。
【0053】
本発明は、好適なベース基材の活性化によって形成される構造化基材を提供する。活性化は繊維の変位を誘導し、ベース基材の流体捕捉特性を高める3次元のテクスチャを形成する。ベース基材の表面エネルギーをもまた改変して、その流体吸い上げ特性を高めることもできる。本発明の構造化基材について、ベース基材から構造化基材を製造するために使用される好ましい方法及び装置に関して説明する。図1及び図2に好ましい装置150を示し、以下により詳細に考察する。
【0054】
ベース基材
本発明に基づくベース基材20は、熱的に安定した繊維の緩い集合体から形成される流体透過性の繊維質不織布ウェブである。本発明に基づく繊維は、断裂又は破断のない伸長率が300%未満であるものとして上記に定義した非伸長性のものであるが、本発明のベース基材を形成する非伸長性繊維は、断裂又は破断のない伸長率が200%未満であることが好ましい。繊維には業界標準のカーディング、エアレイド、又はウェットレイド技術を用いてウェブに形成された短繊維(staple fiber)が含まれるが、業界標準のスパンボンド方式の技術を使用してスパンレイド不織布を形成する連続的なスパンボンド繊維が好ましい。スパンレイドウェブを製造するための繊維及びスパンレイドプロセスについては以下により詳細に考察する。
【0055】
本発明の繊維は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、星形、3葉形、3〜8葉を有する多葉形、長方形、H字形、C字形、I字形、U字形及び他の様々な変形を含む様々な断面形状を有し得る。中空繊維を使用することもできる。好ましい形状は、円形、3葉形及びH字形である。円形繊維は、最も低コストであることから経済的な観点から好ましいものであるが、3葉形状の繊維は大きな表面積をもたらすことから機能的な観点で好ましい。円形及び3葉形の繊維形状は中空であってもよいが、中実の繊維が好ましい。中空の繊維は、同じ形状及びデニールの中実の繊維よりも同等のデニールでの耐圧縮性がより高いことから有用である。
【0056】
本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布に見られる繊維よりも大きい傾向がある。成形繊維の直径を決定することは困難であるため、繊維のデニールがしばしば参照される。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義され、dpf(デニール/フィラメント)として表される。本発明においては好ましいデニールの範囲は、1dpfよりも大きく100dpfよりも小さい範囲である。より好ましいデニールの範囲は1.5dpf〜50dpfであり、より好ましい範囲は2.0dpf〜20dpfであり、最も好ましい範囲は4dpf〜10dpfである。
【0057】
本発明のベース基材を形成する繊維の緩い集合体は、活性化及び付随する繊維の変位に先立って結合される。繊維質ウェブは、繊維が高い移動度を有し、張力下で結合部位から抜ける傾向を有するように不完全に結合させるか、あるいは、繊維の繊維移動度が最小となり、張力下で破断する傾向を有するように結合部位の一体性をより高くして完全に結合させることができる。本発明のベース基材を形成する非伸長性繊維は、非伸長性の繊維質ウェブ材料を形成するように完全に結合されることが好ましい。以下により詳細に説明するように、非伸長性のベース基材は繊維変位によって構造化基材を形成するうえで好ましい。
【0058】
ベース基材の完全な結合は、例えばベース基材の製造時に、1回の結合工程で行うことができる。あるいは、1回よりも多い結合工程によって予備結合されたベース基材を製造してもよく、例えば、巻くことができるような充分な一体性を与えるために製造時にベース基材をごく軽く結合させるか、不完全に結合させてもよい。この後、例えば、ベース基材を本発明の繊維変位処理に供する直前に、ベース基材に更なる結合工程を行って完全に結合したウェブを得ることができる。更に、ベース基材の製造と繊維変位処理との間の任意の時点で結合工程を行ってもよい。異なる結合工程によって異なる結合パターンを与えることもできる。
【0059】
繊維を結合するプロセスについては、Albin Turbakによる「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」(Tappi 1997)に詳しく述べられている。典型的な結合法としては、機械的交絡法、流体力学的交絡法、ニードルパンチング法、並びにケミカルボンド法及び/又はレジンボンド法が挙げられるが、熱を利用したスルーエアボンド法(thru-air bonding)及び圧力と熱を利用したサーマルポイントボンド法などの熱結合法が好ましく、サーマルポイントボンド法が最も好ましい。
【0060】
スルーエアボンド法は、繊維の集合体に加熱気体を通過させることによって行われ、固着した不織布ウェブを製造する。サーマルポインドボンド法では、異なる位置に熱及び圧力を加えて不織布ウェブ上に結合部位を形成する。実際の結合部位は、これらに限定されるものではないが、楕円形、円形及び四辺形状などの様々な形状及びサイズを有する。全体のサーマルポイント結合面積の合計は、2%〜60%、好ましくは4%〜35%、より好ましくは5%〜30%、最も好ましくは8%〜20%である。本発明の完全に結合されたベース基材の全体の結合面積の合計は、8%〜70%、好ましくは12%〜50%、最も好ましくは15%〜35%である。サーマルポイント結合のピン密度は、5ピン/cm2〜100ピン/cm2、好ましくは10ピン/cm2〜60ピン/cm2、最も好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2である。本発明の完全に結合されたベース基材は、10ピン/cm2〜60ピン/cm2、好ましくは20ピン/cm2〜40ピン/cm2の結合ピン密度を有する。
【0061】
熱結合法は、熱可塑性ポリマー及びそれから製造された繊維などの熱結合性ポリマーから形成された繊維を必要とする。本発明では、繊維組成物には熱結合性ポリマーが含まれる。好ましい熱結合性ポリマーは、下記により詳細に考察するような、熱結合性かつ熱安定性である繊維をもたらすポリエステル樹脂、好ましくはPET樹脂、より好ましくはPET樹脂及びcoPET樹脂を含む。本発明では、熱可塑性ポリマーの含量は、繊維の約30重量%よりも高いレベル、好ましくは約50重量%よりも高いレベル、より好ましくは約70重量%よりも高いレベル、最も好ましくは約90重量%よりも高いレベルで存在する。
【0062】
結合の結果、ベース基材は、機械方向(MD)及び機械横断方向(CD)の両方に機械的性質を有することになる。MD方向の引っ張り強度は、1N/cm〜200N/cm、好ましくは5N/cm〜100N/cm、より好ましくは10N/cm〜50N/cm、最も好ましくは20N/cm〜40N/cmである。CD方向の引っ張り強度は、0.5N/cm〜50N/cm、好ましくは2N/cm〜35N/cm、最も好ましくは5N/cm〜25N/cmである。ベース基材は更に、1.1〜10、好ましくは1.5〜6、最も好ましくは1.8〜5のCD方向に対するMD方向の引っ張り強度の比である特徴比を有しなければならない。
【0063】
結合法は、ベース基材の厚さにも影響する。ベース基材の厚さすなわちキャリパーは、特定の測定位置に存在する繊維の数、径及び形状にも依存する。ベース基材の厚さは、0.10mm〜1.3mm、より好ましくは0.15mm〜1.0mm、最も好ましくは0.20mm〜0.7mmである。
【0064】
ベース基材は、更に固有の不透明度を有する。不透明度は、ベース基材を通過する光の相対量の目安である。理論に束縛されるものではないが、固有の不透明度は、特定の測定位置に存在する繊維の数、径、種類、形態、及び形状によって決まるものと考えられる。不透明度は、TAPPI試験法T 425 om−01「紙の不透明度(Opacity of Paper)」(15/d形態、照射角度A/2°、反射率89%の裏材及び紙裏材)を用いて測定することができる。不透明度はパーセントで測定される。本発明では、ベース基材の不透明度は5%よりも大きく、好ましくは10%よりも大きく、より好ましくは20%よりも大きく、更により好ましくは30%よりも大きく、最も好ましくは40%よりも大きい。
【0065】
使い捨て吸収性物品の捕捉システムによって構成される構造化繊維質ウェブは、下側の吸収性コアの潜在的な汚れを隠す効果があることから比較的高い不透明度が望ましい。吸収性コアの汚れは、尿又は低粘度の便通などの体液の吸収によってもたらされ得る。吸収性物品における最近の傾向は、コスト削減の理由から吸収性物品の異なる要素の坪量を低減させる方向にある。このため、低坪量のトップシートが用いられる場合、こうしたトップシートの不透明度は、高坪量のトップシートと比較して低くなりやすい。また、孔あきトップシートが用いられる場合、こうした孔によっても、捕捉システム及び吸収性コアといった吸収性物品の下側の層が見えてしまう。したがって、低坪量のトップシート及び/又は孔あきトップシートが吸収性物品において使用される実施形態では、構造化繊維質ウェブの高い不透明度が特に望ましい。本発明の一実施形態では、使い捨て吸収性物品は、5g/m2〜25g/m2、より好ましくは8g/m2〜16gm2の坪量を有するトップシートを含む。
【0066】
ベース基材は、固有坪量及び固有密度を有する。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明では、ベース基材の坪量は10g/m2〜200g/m2である。ベース基材の密度は、ベース基材の坪量をベース基材の厚さで割ることによって求められる。本発明では、ベース基材の密度は14kg/m3〜200kg/m3である。ベース基材は、立方センチメートル/グラムで測定される、ベース基材密度の逆数であるベース基材比容積もまた有する。
【0067】
ベース基材の改質
本発明においては、ベース基材を改質して流体の管理が重要となる製品において使用するための流体分散性及び流体捕捉性を最適化することができる。流体分散性は、親水性及び付随する吸い上げ性を高めるようにベース基材の表面エネルギーを変化させることによって高めることができる。ベース基材の表面エネルギーの改変は必要に応じて行えばよく、典型的にはベース基材が製造される際に行われる。流体捕捉性は、基材の厚さ又はふくらみ及び付随する比容積を増大させる3次元のテクスチャを導入するための繊維の変位処理によってベース基材の構造を改変することによって影響され得る。
【0068】
表面エネルギー
ベース基材の親水性は、表面エネルギーと関係している。ベース基材の表面エネルギーは、局所的表面処理、繊維の表面に対する化学グラフト化、又はプラズマ若しくはコロナ処理による繊維表面の反応性酸化の後、ガス反応付加による更なる化学結合によって、改変することができる。
【0069】
ベース基材の表面エネルギーは、ベース基材の繊維の製造に使用されるポリマー材料によってもまた影響され得る。ポリマー材料は本来的に親水性を有するか、あるいは溶融添加剤又は親水性挙動を誘導する他の物質とポリマー材料との組み合わせによるポリマー、繊維表面、及びベース基材表面の化学的修飾によって親水性とすることができる。ポリプロピレンに対して使用される材料の例としては、Cibaより販売されるIRGASURF(登録商標)HL560、及びEastman Chemicalより販売されるPETコポリマーであるPET用の重合材料のEASTONE(登録商標)ファミリーがある。
【0070】
表面エネルギーは、繊維の局所的処理によっても影響され得る。繊維表面の局所的処理では一般に界面活性剤を、泡、スプレー、キスロール又は他の好適な方法によって希釈状態でエマルションに加えた後に乾燥させる。局所的処理を必要とし得るポリマーは、ポリプロピレン又はポリエステルテレフタレート系のポリマーシステムである。他のポリマーとしては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート及びコポリマー、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーなどの芳香族ポリエステル;ポリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリ乳酸及びコポリマーが挙げられる。防汚ポリマー(SRP)と呼ばれる部類の材料もまた、局所的処理に適している。防汚ポリマーは、低分子量のポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルブロックコポリマー、及び非イオン性ポリエステル化合物を含む一群の材料である。これらの材料の一部のものは溶融添加剤として加えることができるが、それらの好ましい用途は局所的処理剤としてのものである。この部類の材料の市販の例としては、ClariantよりTexcare(商標)の製品群として販売されるものがある。
【0071】
構造化基材
ベース基材20の第2の改質では、ベース基材を機械的に処理して構造化された繊維質ウェブ基材(「構造化繊維質ウェブ」と「構造化基材」という用語は本明細書では互換可能に使用される)を製造する。構造化基材は、(1)構造化基材がベース基材の厚さよりも大きな厚さの値を有するように永久的な繊維の転位(以後、「繊維の変位」と呼ぶものとする)を生ずる繊維の再配置並びに繊維の分離及び破断によって永久的に変形されたベース基材、また場合により(2)ベース基材の厚さよりも厚さの小さい圧縮領域を形成するために過剰な結合(以後、「過剰結合」と呼ぶものとする)によって改質されたベース基材、として定義される。繊維変位処理では、ロッド、ピン、ボタン、構造化スクリーン若しくはベルト又は他の好適な技術による繊維の永久的な機械的変位処理を行う。こうした永久的な繊維の転位により、ベース基材と比較して更なる厚さすなわちキャリパーがもたらされる。更なる厚さによって基材の比容積が大きくなり、基材の流体透過性もまた高くなる。過剰結合によってベース基材の機械的特性が向上し、流体管理のための変位した繊維領域間の通路の深さが増大し得る。
【0072】
繊維の変位処理
上記に述べたベース基材は、図1に示される装置150を用いて処理することによって、その一部が図3〜6に示される構造化基材21を形成することができる。図3に示されるように、構造化基材は、X−Y平面内の第1の領域2及び第1の領域2の全体にわたって配置された複数の第2の領域4を有している。第2の領域4は、構造化基材21の第2の表面14に不連続部16を形成する変位した繊維6、及び第1の表面12から延びる自由端18を有する変位した繊維6を含んでいる。図4に示されるように、変位した繊維6は、第2の領域4の第1の側面11から延び、更に分離及び破断して、第1の側面11と対向する第2の側面13に沿って第1の表面12に近接して自由端18を形成する。本発明では、第1の表面12に近接して、とは、繊維の破断が、第1の表面12と、変位した繊維の頂点又は末端部3との間、好ましくは変位した繊維6の末端部3よりも第1の表面12のより近くにおいて生ずることを意味する。
【0073】
繊維の分離又は破断の位置は、ベース基材を形成する非伸長性繊維に主として帰するものであるが、変位した繊維の形成及び付随する繊維の破断は、ベース基材の形成に使用される結合の程度によっても影響される。完全に結合された非伸長性繊維からなるベース基材は、その繊維強度、繊維剛性、及び結合強度のために、図15の顕微鏡写真に示されるようなテント状構造を低い繊維変位変形で形成する。繊維の変位変形部が伸長されると、図16の顕微鏡写真に示されるように、典型的には一方の側面に集中した相当の繊維の破断が認められる。
【0074】
図4の自由端18を有する変位した繊維6を形成する目的は、空隙体積を形成することによってベース基材の比容積を上回るように構造化基材比容積を増大させることにある。本発明では、第2の領域において少なくとも50%かつ100%よりも少ない自由端を有する変位した繊維6を形成することによって、高いキャリパー及び使用に際して持続する付随する比容積を有する構造化基材が製造されることが判明した(下記に示す表6の実施形態1N5〜1N9を参照)。本明細書において更に述べられる特定の実施形態では、変位した繊維6の自由端18は、耐圧縮性及び付随する持続性を高めるために熱結合させることができる。熱結合された自由端を有する変位した繊維6、及びこれを製造するためのプロセスについて、以下により詳細に考察する。
【0075】
図5に示されるように、第2の領域4の変位した繊維6は、典型的にはベース基材の厚さと同じである第1の領域2の厚さ32よりも大きな厚さ又はキャリパーを呈する。変位した繊維6を有する第2の領域4のサイズ及び形状は、使用される技術に応じて変化し得る。図5は、第2の領域4の変位した繊維6を示した、構造化基材21の断面を示している。変位した繊維6の厚さ34は、変位した繊維6に基づく構造化基材21の第2の領域4の厚さ又はキャリパーを表す。図に示されるように、変位した繊維の厚さ34は第1の領域の厚さ32よりも大きい。変位した繊維の厚さ34は、第1の領域の厚さ32よりも少なくとも110%大きいことが好ましく、より好ましくは少なくとも125%大きく、最も好ましくは第1の領域の厚さ32よりも少なくとも150%大きい。変位した繊維の厚さ34のエイジング処理キャリパーは、0.1mm〜5mm、好ましくは0.2mm〜2mm、最も好ましくは0.5mm〜1.5mmである。
【0076】
変位した繊維6を有する第2の領域4の構造化基材21の単位面積当たりの数は、図3に示されるように変化し得る。一般的に、この面密度は構造化基材21の全体の領域にわたって均一である必要はなく、第2の領域4は、線、縞、帯、円などの所定の形状を有する領域などの構造化基材21の特定の領域に限定され得る。
【0077】
図3に示されるように、第2の領域4によって占められる全体の面積は、全体の面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満であるが、少なくとも10%である。第2の領域のサイズ及び第2の領域4の間の間隔は異なり得る。図3及び図4は、長さ36、幅38、並びに第2の領域4の間の間隔37及び39を示している。図3に示される、第2の領域4の間の機械方向の間隔39は、好ましくは0.1mm〜1000mm、より好ましくは0.5mm〜100mm、最も好ましくは1mm〜10mmである。第2の領域4の間の機械横断方向の側面間の間隔37は、0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmである。
【0078】
図1に示されるように、構造化基材21は、供給ロール152から供給される概ね平面状の2次元的な不織布ベース基材20から形成することができる。ベース基材20は、自由端18を有する変位した繊維6を形成する互いに噛み合ったローラー104及び102Aによって形成されるニップ116へと、装置150によって機械方向MDに移動する。変位した繊維6を有する構造化基材21は、変位した繊維6の自由端18を結合するロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117へと必要に応じて進む。ここから、構造化基材22は、必要に応じて相互に噛み合うロール102B及び104へと進み、ロール102Bは構造化基材22をロール104から剥がして必要に応じてこれをロール102Bと結合ロール158との間に形成されたニップ119へと搬送し、構造化基材23に過剰結合領域が形成されて、構造化基材23は最終的に供給ロール160上に巻き取られる。図1は、上記で述べた一連の処理工程を示したものであるが、完全には結合されていないベース基材では、変位した繊維6を形成する前にベース基材に結合領域が形成されるように処理を逆転させることが望ましい。この実施形態では、ベース基材20は、図1に示される巻き取り供給ロール160に似た供給ロールから供給され、ロール102Bと結合ロール158との間に形成されたニップ119へと移動し、基材が結合された後、互いに噛み合ったロール102Bと104との間に形成されたニップ118へと基材が進入して、自由端18を有する変位した繊維6が第2の領域4に形成される。
【0079】
図1は、供給ロール152から供給されるベース基材20を示しているが、ベース基材20は当該技術分野では既知の飾りウェブ(festooned web)のような他の任意の供給手段から供給されてもよい。一実施形態では、ベース基材20は、不織布ウェブ製造用製造ラインのようなウェブ製造装置から直接供給されてもよい。
【0080】
図1に示されるように、第1の表面12は、ベース基材20の第1の側面並びに構造化基材21の第1の側面に対応している。第2の表面14は、ベース基材20の第2の側面並びに構造化基材21の第2の側面に対応している。一般的に、「側面」という用語は、本明細書においては、不織布のような概ね2次元的なウェブの2つの主面について述べる一般的な用語の用法で使用する。ベース基材20は、ほぼランダムに配向した繊維、すなわち、少なくともMD方向及びCD方向に対してランダムに配向した繊維からなる不織布ウェブである。「ほぼランダムに配向した」とは、処理条件により、CD方向よりもMD方向に(又はその逆に)より多くの繊維が配向され得ることを意味する。例えばスパンボンド及びメルトブローンプロセスでは、繊維の連続的なストランドが、MD方向に移動する支持材上に堆積される。スパンボンド又はメルトブローン不織布ウェブの繊維の配向を真に「ランダム化」しようとしても、通常は高い割合の繊維が、CD方向ではなくMD方向に配向される。
【0081】
本発明の特定の実施形態では、ウェブの平面内のMD方向に対する所定の方向に繊維の相当の割合を意図的に配向させることが望ましい場合がある。例えば、ロール104上の歯の間隔及び配置(後述する)のため、ウェブの長手方向軸に平行な方向に対して60°の角度の主繊維配向を有する不織布ウェブを製造することが望ましい場合がある。このようなウェブは、所望の角度にウェブを揃えることと、必要に応じてウェブを完成ウェブにカーディングすることとを組み合わせたプロセスによって製造することができる。高い割合の繊維が所定の角度を有するウェブでは、下記により詳しく述べるように構造化基材21においてより多くの繊維が変位した繊維として形成されるような統計学的傾向を有し得る。
【0082】
ベース基材20は、ウェブ製造プロセスから直接的に、又は図1に示されるように供給ロール152から間接的に、のいずれかで供給することができる。ベース基材20は、オイル加熱又は電気加熱されたローラー上で加熱するなど、当該技術分野では既知の手段によって予備加熱することができる。例えば、繊維の変位処理に先立ってベース基材20を予備加熱するためにロール154を加熱することができる。
【0083】
図1に示されるように、供給ロール152は、ベース基材20が、逆回転する互いに噛み合ったロール102A及び104の第1の組のニップ116へとローラー154上を機械方向に移動するに従って、矢印で示される方向に回転する。ロール102A及び104は、装置150の互いに噛み合ったローラーの第1の組である。互いに噛み合ったロール102A及び104の第1の組が、ベース基材20に変位した繊維を形成し、更に繊維の破断を促進するように動作することによって、本明細書において以後、構造化基材21と呼ぶ構造化基材が製造される。互いに噛み合ったロール102A及び104は、図2により分かりやすく示されている。
【0084】
図2を参照すると、本発明の構造化基材21上に変位した繊維を製造するための装置150の部分がより詳細に示されている。装置150のこの部分は図2ではニップローラー100として示されており、同一平面内で平行な軸Aを中心としてそれぞれが回転する、互いに噛み合ったロール102及び104の組(それぞれ図1のロール102A及び104に対応している)からなっている。装置150は、ベース基材20が所定の回転角度にわたってロール104上に維持されるような設計となっているが、図2では、ベース基材20が装置150上のニップ116を通過して変位した繊維6の領域を有する構造化基材21として出てくる様子を原則的に示している。互いに噛み合ったロールは、金属又はプラスチックから製造することができる。金属ロールの非限定的な例としては、アルミニウム及び鋼がある。プラスチックロールの非限定的な例としては、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、及びポリフェニレンオキシド(PPO)がある。これらのプラスチックに金属又は無機添加材料を充填してもよい。
【0085】
図2に示されるように、ロール102は、ロール102の全周にわたって切れ目なく延び得る複数の山部105及び対応する溝部108を含む。特定の実施形態では、構造化基材21においてどの種類のパターンが望ましいかに応じて、ロール102(及び同様にロール102A)は、山部106の一部又は全部が周方向に連続的でなく切れ目又は間隙を有するように、例えばエッチング、ミリング、又は他の機械加工によって一部が除去された山部106を有してもよい。切れ目又は間隙は、円形又は菱形などの単純な幾何学パターンに限らず、ロゴ及び商標などの複雑なパターンを含む所定のパターンを形成するように配列することができる。一実施形態では、ロール102は、後に更に詳しく述べるロール104上の歯と同様の歯を有し得る。これにより、構造化基材21の両面12、14に変位した繊維6を形成することが可能となる。
【0086】
ロール104はロール102と似ているが、ロール104は外周全体に切れ間なく延び得る山部を有する代わりに、ロール104の少なくとも一部に離間して延びる、周方向に間隔を置いて配された歯列110として改変された周方向に延びる複数の山部の列を含む。ロール104の個々の歯列110は、対応する溝112によって分離されている。動作時には、ロール102と104とは、ロール102の山部106がロール104の溝112内に延び、ロール104の歯110がロール102の溝108内に延びるようにして互いに噛み合う。この噛み合わせは、後述する図7の断面図により詳細に示されている。ロール102及び104の両方又は一方は、高温のオイルを充填したローラー又は電気的に加熱したローラーを使用するなど、当該技術分野では既知の手段によって加熱することができる。
【0087】
図3に示されるように、構造化基材21は、ベース基材20の概ね平面状の2次元的形態によって構造化基材21の両面上に画定される第1の領域2、及び間隔を置いて配された変位した繊維6と、ベース基材20の繊維の一体的伸長によって生じ得る不連続部16とによって画定される複数の個別の第2の領域4を有している。第2の領域4の構造は、構造化基材21のどちらの側面が考慮されるかによって異なる。図3に示される構造化基材21の実施形態では、構造化基材21の第1の表面12と関連付けられた構造化基材21の側面上において、別個の第2の領域4のそれぞれは、第1の表面12から外側に延びるとともに自由端18を有する多数の変位した繊維6を含み得る。変位した繊維6はZ方向に大きく配向した繊維を含み、それぞれの変位した繊維6は、第2の領域4の第1の表面12に近接した第1の側面11に沿って配置された基部5、第2の領域4の第1の側面11と対向した第2の側面13の第1の表面12の近くにおいて分離又は破断した自由端18、及び第1の表面12からZ方向に最大距離に位置する末端部3を有する。構造化基材21の、第2の表面14と関連付けられた側面上においては、第2の領域4は、構造化基材21の第2の表面14上の繊維配向の不連続部16によって画定される不連続部16を含む。不連続部16は、ロール104の歯110がベース基材20を貫通する位置に相当する。
【0088】
本明細書において使用するところの「一体的伸長」における用語「一体的」とは、第2の領域4について使用される場合、ベース基材20の繊維に由来する第2の領域4の繊維のことを指す。したがって、例えば変位した繊維6の破断繊維8は、ベース基材20から塑性変形及び/又は伸長された繊維であってよく、したがって、構造化基材21の第1の領域2と一体であり得る。別の言い方をすれば、繊維のすべてではないが一部が破断しており、その繊維は最初からベース基材20中に存在していたものである。本明細書で使用するところの「一体的」とは、変位した繊維を製造する目的で別の前駆体ウェブに導入又は添加される繊維とは区別されるべきものである。本発明の構造化基材21、22及び23の特定の実施形態では、このような添加される繊維を用い得るが、好ましい一実施形態では、変位した繊維6の破断繊維8は、構造化基材21と一体のものである。
【0089】
変位した繊維6中に破断繊維8を有する本発明の構造化基材21に適したベース基材20は、自由端18を破断及び形成するうえで充分な繊維の固定性及び/又は塑性変形を有する繊維を含む必要がある点は認識される。このような繊維は、図4及び5に自由繊維端18として示されている。本発明では、変位した繊維6の自由繊維端18は、流体を捕集するための空間又は自由体積を作り出すうえで望ましい。好ましい一実施形態では、Z方向に押し出された繊維の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%かつ100%未満が自由端18を有する破断繊維8である。
【0090】
第2の領域4は、形状、サイズ及び分布が異なり得る比容積分布を目標としてX−Y平面及びZ平面の両方にパターンを形成するように成形することができる。
【0091】
図2に示される構造化基材21の実施形態における変位した繊維6を有する代表的な第2の領域を、図3〜6に更なる拡大図で示す。代表的な変位した繊維6は、ロール104上の細長い歯110上で形成される種類のものであるため、変位した繊維6は、変位した繊維6が明瞭な長手方向の配向及び長手方向軸Lを有するようにほぼ整列した多数の破断繊維8を含んでいる。変位した繊維6は、MD−CD平面内の長手方向軸Lに対してほぼ直交する横方向軸Tもまた有する。図2〜6に示される実施形態では、長手方向軸LはMD方向に平行である。一実施形態では、間隔を置いて配されたすべての第2の領域4がほぼ平行な長手方向軸Lを有している。好ましい実施形態では、第2の領域4は長手方向の向きを有する。すなわち、第2の領域は細長い形状を有しており、円形とはならない。図4に示され、図5及び6により分かりやすく示されるように、ロール104に細長い歯110が用いられる場合、構造化基材21の一実施形態における変位した繊維6の破断繊維8の1つの特徴として、破断繊維8が主方向に整列している点がある。図5及び6に示されるように、破断繊維8の多くは図6におけるような平面図で見た場合に横方向軸Tに対してほぼ一様に整列し得る。「破断」繊維8とは、変位した繊維6が第2の領域4の第1の側面11を始点として、構造化基材21の第1の側面11に対向する第2の領域4の第2の側面13に沿って分離していることを意味する。
【0092】
したがって装置150に関して理解されるように、構造化基材21の変位した繊維6は、ほぼ平面状かつ2次元的ということができるベース基材20を機械的に変形させることによって製造される。「平面状」及び「2次元的」とは、第2の領域4が形成されたことによって付与された明瞭な面外のZ方向の3次元性を有する完成した構造化基材1に対してウェブが平坦であることを単純に意味する。「平面状」及び「2次元的」とは、いかなる特定の平坦度、平滑度又は次元性をも示唆するものではない。ベース基材20がニップ116を通過するに従って、ロール104の歯110がロール102Aの溝108に入り込むと同時に繊維をベース基材20の平面外に押し出すことによって、変位した繊維6及び不連続部16を含む第2の領域4が形成される。実際には、歯110はベース基材20を貫通するようにして「押す」か又は「打ち抜く」。歯110の先端が構造化基材20を貫通するようにして押す際、CD方向に主として配向した、歯110を横断する繊維の部分が歯110によってベース基材20の平面外に押し出され、Z方向に伸ばされ、引っ張られ、かつ/又は塑性変形されることにより、変位した繊維6の破断繊維8を含む第2の領域4が形成される。長手方向軸L、すなわち構造化基材20の機械方向にほぼ平行に主として配向された繊維は、歯110によって単純に拡げられてベース基材20の第1の領域2内にほぼ留まり得る。
【0093】
図2において、装置100は、1個のパターン形成ロール(例えばロール104)及び1個のパターン形成されていない溝形成ロール102を有する1つの構成として示されている。しかしながら、特定の実施形態では、各ロールの同じ又は異なる対応する領域に同じ又は異なるパターンのいずれかを有する2個のパターン形成ロールを使用することによって、ニップ116を形成することが好ましい場合もある。このような装置によって、変位した繊維6が構造化ウェブ21の両面から突出したウェブばかりでなく、ウェブ21に巨視的なパターンがエンボス加工されたウェブを製造することができる。
【0094】
変位した繊維6の数、間隔、及びサイズは、歯110の数、間隔、及びサイズを変えること、並びに必要に応じてロール104及び/又はロール102に対応する寸法的変更を加えること、によって変更することができる。このような変更は、ベース基材20において可能な変更、及びライン速度などのプロセスにおける変更とともに、多くの目的に応じた多くの異なる構造化ウェブ21の製造を可能とするものである。
【0095】
構造化ウェブ21の説明より、変位した繊維の破断繊維8は、構造化基材21の第1の表面12又は第2の表面14のいずれを始点として延び出してもよい点は理解される。変位した繊維6の破断繊維8はまた、構造化基材21の内部19から延びてもよいことはいうまでもない。図5に示されるように、変位した繊維6の破断繊維8は、ベース基材20のほぼ2次元的な平面外に押し出される(すなわち、図3に示されるように「Z方向」に押される)ことによって伸長する。一般に、第2の領域4の破断繊維8又は自由端18は、繊維質ウェブの第1の領域2の繊維と一体である繊維及び第1の領域2の繊維から延びる繊維を含む。
【0096】
破断繊維8の伸長は、繊維の塑性変形及びポアソン比の効果による、繊維断面寸法(すなわち丸い繊維の直径)の一般的な縮小をともない得る。したがって、変位した繊維6の破断繊維8の部分は、ベース基材20の繊維及び第1の領域2の繊維の平均繊維直径よりも小さい平均繊維直径を有し得る。繊維断面寸法の縮小は、変位した繊維6の基部5と自由端3との中間において最大であることが判明した。これは、変位した繊維6の基部5及び末端部3の繊維の部分が、下記により詳細に述べるロール104の歯110の先端に隣接することによって、それらがプロセスの間に摩擦によって引っかかって動かなくなることによるものと考えられる。本発明では、繊維断面の縮小は、高い繊維強度及び低い繊維の伸長率のために最小となっている。
【0097】
図7は、山部106及び歯110を含む互いに噛み合ったロール102(並びに下記に述べる102A及び102B)及び104の一部の断面図を示している。図に示されるように、歯110は、歯の高さTH(THは、山部106の高さにも適用され得る点に注意。好ましい一実施形態では歯の高さと山部の高さとは等しい)、及びピッチPと呼ぶ歯間の間隔(又は山部間の間隔)を有する。示されるように、噛合深さ(DOE(depth of engagement))Eは、ロール102と104との噛み合いの程度の目安であり、山部106の先端から歯110の先端までを測定したものである。噛合深さE、歯の高さTH、及びピッチPは、本発明のベース基材20の性質及び構造化基材1の所望の特徴に応じて望み通りに変更することができる。例えば一般に、変位した繊維6において破断繊維8を得るには、繊維が破断する点まで変位した繊維を伸長及び塑性変形させるうえで充分な噛合度Eを必要とする。更に、下記に述べるように、所望の第2の領域4の密度(構造化基材1の単位面積当たりの第2の領域4)が大きいほど、ピッチは小さくなければならず、歯の長さTL及び歯間距離TDは小さくなければならない。
【0098】
図8は、スパンボンド不織布のベース基材20からスパンボンド不織布材料の構造化基材21又は構造化基材1を製造するうえで有用な多数の歯110を有するロール104の一実施形態の一部を示している。図8に示される歯110の拡大図を図9に示す。このロール104の図では、歯110は、歯の先端111において前縁LEから後縁TEまでを概ね測定した場合に約1.25mmの一様な周方向の長さ寸法TLを有し、周方向に約1.5mmの距離TDだけ互いから一様に離間している。ベース基材20から繊維質構造化基材1を製造するには、ロール104の歯110は、約0.5mm〜約3mmの範囲の長さTL及び約0.5mm〜約3mmの間隔TD、約0.5mm〜約10mmの範囲の歯の高さTH、及び約1mm(0.040インチ)〜2.54mm(0.100インチ)のピッチPを有し得る。噛合深さEは、約0.5mm〜約5mm(最大で歯高THに達する)であり得る。無論、E、P、TH、TD及びTLは、変位した繊維6の所望の径、間隔、及び面密度(構造化基材1の単位面積当たりの変位した繊維6の数)を実現するために互いに独立してそれぞれ変化させることができる。
【0099】
図9に示されるように、各歯110は、先端111、前縁LE及び後縁TEを有する。歯の先端111は、繊維の破断を最小にするために丸めることができ、好ましくは細長い形状に形成され、第2の領域4の長手方向軸Lと一致した概ね長手方向を有している。構造化基材1の変位した繊維6を得るには、LE及びTEはロール104の局所的周辺面120に対して極めて直角に近い角度で直交しなければならないものと考えられる。同様に、先端111からLE又はTEへの移行部は、使用時に歯110がLE及びTEにおいてベース基材20を貫通するように充分に小さい曲率半径を有する、直角のような比較的鋭角でなければならない。代替的な歯の先端111として、結合を最適化するような平坦面としてもよい。
【0100】
再び図1を参照すると、変位した繊維6が形成された後、構造化基材21は回転ロール104上を、ロール104と第1の結合ロール156との間のニップ117へと移動することができる。結合ロール156は、多くの結合法を容易にし得るものである。例えば、結合ロール156は、ニップ117において熱エネルギーを付与することにより、変位した繊維6の末端(先端部)において構造化基材21の隣り合う繊維同士を溶融結合するための加熱スチールローラであってよい。
【0101】
好ましい一実施形態では、下記に好ましい構造化基材の文脈において述べるように、結合ロール156は、変位した繊維6の末端の隣り合う繊維同士を熱結合するうえで充分な熱エネルギーを構造化基材21に付与するように設計された加熱ロールである。熱結合は、隣り合う繊維同士を直接溶融結合することにより、あるいは、ポリエチレン粉末などの中間熱可塑剤を溶融し、これによって隣り合う繊維同士を接着することによって行うことができる。こうした目的では、ベース基材20にポリエチレン粉末を添加することができる。
【0102】
第1の結合ロール156は、変位した繊維6の末端3の繊維が溶融又は部分的に溶融されるように充分に加熱することができる。第1の結合ロール156において必要とされる熱の量又は熱容量は、変位した繊維6の繊維の溶融特性、及びロール104の回転速度によって決まる。第1の結合ロール156において必要とされる熱の量はまた、第1の結合ロール156とロール104上の歯110の先端との間に引き起こされる圧力、及び変位した繊維6の末端3において望ましい溶融度にも依存する。
【0103】
一実施形態では、第1の結合ロール156は、変位した繊維6の隣り合う繊維同士を溶融結合するうえで充分な表面温度にまで加熱された加熱スチール円筒状ロールである。第1の結合ロール156は、内部電気抵抗ヒーター、高温のオイル、又は加熱ロールを製造するための当該技術分野では既知の任意の方法によって加熱することができる。第1の結合ロール156は、当該技術分野では既知の好適なモータ及び連結要素によって駆動することができる。同様に、第1の結合ロールは、ニップ117を正確に調節及び設定することができるように調節可能な支持部材に取り付けることができる。
【0104】
図10は、ニップ117を通して構造化基材22へと処理された後の構造化基材21の一部を示したものである。構造化基材22は、更なる処理を行わなければ本発明の構造化基材21であり得る。構造化基材22は、変位した繊維6の末端3が結合、好ましくは熱溶融結合されていることにより、隣り合う繊維同士が少なくとも部分的に結合して末端に位置する溶融結合部分9を形成している点以外は、上記で述べた構造化基材21と似ている。上記に述べたプロセスによって変位した繊維6を形成した後、変位した繊維6の末端部3を加熱して繊維の部分同士を熱的に接合することによって、隣り合う繊維部分同士が互いに接合されて、「先端結合」とも呼ばれる溶融結合部分9を有する変位した繊維6を形成することができる。
【0105】
末端に位置する溶融結合部分9は、変位した繊維6の末端部に熱エネルギー及び圧力を作用させることによって製造することができる。末端に位置する溶融結合部分9のサイズ及び質量は、変位した繊維6の末端部に加えられる熱エネルギーの量、装置150のライン速度、及び熱を加える方法を改変することによって改変することができる。
【0106】
別の実施形態では、末端に位置する溶融結合部分9は、放射熱を加えることによって作ることができる。すなわち、一実施形態では、結合ロール156を放射熱源によって置き換えるか、又は補充することにより、変位した繊維6の末端に位置する部分の繊維部分が軟化又は溶融するうえで充分な距離かつ対応する充分な時間で構造化基材21に向けて放射熱を放射することができる。放射熱は、既知の放射熱ヒーターのいずれによって加えてもよい。一実施形態では、構造化基材21に対して配置される抵抗熱線によって放射熱を与えることが可能であり、抵抗熱線を充分に近接かつ均一な間隔を置いた距離でCD方向に延在させることによって、ウェブが熱線に対して動かされるのに従って放射熱が変位した繊維6の末端に位置する部分を少なくとも部分的に溶融する。別の実施形態では、衣類にアイロンをかけるための手持ち式アイロンのような加熱された平坦なアイロンを、変位した繊維6の末端3に接して保持することにより、アイロンによって溶融を行うことができる。
【0107】
上記に述べたようにして構造化基材22を処理することの効果は、変位した繊維6の末端3を、変位した繊維6を圧縮又は平坦化することなくニップ117における所定の圧力下で溶融させることができる点である。これにより、成形後に熱結合を行うことによって、3次元ウェブを製造及び所定形状に硬化又はいわば「固定(lock in)」することができる。更に、末端に位置する結合又は溶融結合された部分9は、構造化基材22が圧縮又は剪断力に曝される際に変位した繊維6の厚みのある構造及び構造化基材のエイジング処理キャリパー(aged caliper)を維持する助けとなり得る。例えば、第1の領域2と一体であるが第1の領域2から延びるとともに末端に位置する溶融結合部分9を有する繊維からなる変位した繊維6を有するように、上記に述べたようにして処理された構造化基材22は、供給ロールに巻き取られた後に巻き出されることによる圧縮後の形状維持性が高くなり得る。変位した繊維6の末端部において隣り合う繊維同士を結合することにより、圧縮時に繊維がランダムに圧し潰れることが少なくなるものと考えられる。すなわち、変位した繊維6の全体の構造が一緒に動く傾向にあるため、ウェブの表面が擦られることにともなって生じる圧縮力及び/又は剪断力などの秩序を乱す事象に際して高い形状維持性が与えられる。
【0108】
図1を参照して述べる代替的な一実施形態では、基材20は、ローラー154上を、噛合深さが0.25mm〜3.81mm(0.01インチ〜0.15インチ)である、逆回転する互いに噛み合ったロール102Aと104の第1の組のニップ116へと機械方向に移送されることにより、部分的な繊維の変位が生じるが、繊維の破断は生じたとしてもごくわずかである。次いでウェブは、ロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117へと進み、部分的に変位した繊維の先端が結合される。ニップ117を通過した後、構造化基材22は、噛合深さがニップ116における噛合深さよりも大きい、ロール104と102Bとの間に形成されたニップ118へと進むことにより、変位した繊維が更に変位させられて破断繊維が形成される。このプロセスにより、より多くの変位した繊維6が溶融結合部分9によって接合されることになる。
【0109】
過剰結合とは、予め繊維が変位させられた基材に対して行われる溶融結合のことを指す。過剰結合は、必要に応じて行われる処理工程である。過剰結合はインラインで行われてもよいが、あるいは別の転換プロセスで行うこともできる。
【0110】
過剰結合は、フィラメント同士を固着したパターンで融合させるうえで熱及び圧力に依存している。固着したパターンは、繰り返しパターンが認められるように構造化基材の長さに沿って再現可能なパターンとして定義される。過剰結合は、少なくとも一方のロールが加熱された、好ましくは両方のロールが加熱された、加圧されたローラニップを通過させることによって行われる。ベース基材が既に加熱されている場合に過剰結合が行われる場合には、加圧されたローラニップを加熱する必要はない。過剰結合領域11のパターンの例が図12a〜12fに示されているが、他の過剰結合のパターンも可能である。図12aは、機械方向に連続的なパターンを形成する過剰結合領域11を示す。図12bは、過剰結合11の連続的なネットワークが形成されるように、機械方向及び横断方向の両方に形成された連続的な過剰結合領域11を示す。この種のシステムは、単一工程過剰結合ロール又は複数のロール結合システムによって製造することができる。図12cは、機械方向に不連続な過剰結合領域11を示す。図12cに示されるMD方向の過剰結合パターンは、MD方向の過剰結合ラインを連続的又は不連続的な配置で連結するCD方向の過剰結合領域11を更に含んでもよい。図12dは、MD方向に波形のパターンを形成する過剰結合領域11を示す。図12eは、ヘリンボーンパターンを形成する過剰結合領域11を示しており、図12fは、波状のヘリンボーンパターンを示している。
【0111】
過剰結合パターンは均一に分布している必要はなく、特定の用途に合わせた外形とすることができる。過剰結合が行われる全体の面積は、繊維質ウェブの全体の面積の75%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは25%未満であるが、少なくとも3%である。
【0112】
図13は、過剰結合の特徴を示したものである。過剰結合領域11は、過剰結合領域間で測定されるベース基材20の第1の領域の厚さ32に対する厚さ特性を有する。過剰結合領域11は、圧縮された厚さ42を有する。過剰結合領域は、構造化基材21上における固有の幅44、及び過剰結合領域間の間隔46を有する。
【0113】
第1の領域の厚さ32は、好ましくは0.1mm〜1.5mm、より好ましくは0.15mm〜1.3mm、より好ましくは0.2mm〜1.0mm、最も好ましくは0.25mm〜0.7mmである。過剰結合領域の厚さ42は、好ましくは0.01mmから0.5mm、より好ましくは0.02mm〜0.25mm、更により好ましくは0.03mm〜0.1mm、最も好ましくは0.05mm〜0.08mmである。過剰結合領域11の幅44は、0.05mm〜15mm、より好ましくは0.075mm〜10mm、更により好ましくは0.1mm〜7.5mm、最も好ましくは0.2mm〜5mmである。過剰結合領域11間の間隔46は、構造化基材21内で均一である必要はないが、極値は0.2mm〜16mm、好ましくは0.4mm〜10mm、より好ましくは0.8mm〜7mm、最も好ましくは1mm〜5.2mmの範囲に含まれる。過剰結合領域11の間隔46、幅44及び厚さ42は、引っ張り強度及び流体処理特性などの構造化基材21において望ましい性質に基づいたものである。
【0114】
図13は、過剰結合の厚さ42を有する過剰結合11が、構造化基材21の一方の側面に形成され得ることを示している。図14は、過剰結合11が、構造化基材21を製造するために使用される方法に応じて、構造化基材21の両側に存在し得ることを示している。構造化基材21の両側12、14の過剰結合11は、流体の管理を更に容易とするために構造化基材が他の不織布を組み合わされる場合にトンネルを形成するうえで望ましいものとなり得る。例えば両面構造化基材は、多層高容積流体捕捉システムにおいて使用することができる。
【0115】
過剰結合プロセス
図1の装置を参照すると、構造化基材23は、変位した繊維6の末端に位置する部分には存在しない、又はその部分のみに存在するわけではない結合部分を有し得る。例えば、結合ロール156として平坦な円筒状ロールの代わりに噛合する山部が形成されたローラーを使用することによって、第1の領域2の第1の表面12上の第2の領域4間の位置などの構造化基材23の他の部分を結合させることができる。例えば、溶融結合された材料の連続的なラインを第1の表面12上の変位した繊維6の列の間に作ることができる。溶融結合された材料の連続的なラインは、上記に述べたような過剰結合領域11を形成する。
【0116】
1個の第1の結合ロール156が示されているが、一般的には1個よりも多い結合ロールをプロセスのこの段階で使用することにより、結合が一連のニップ117において行われ、かつ/又は異なる種類の結合ロール156が関与するようにしてもよい。更に、結合ロールのみばかりでなく、機能的効果を付与するための様々な表面処理剤などの様々な物質をベース基材20又は構造化ウェブ21に転写するための同様のロールを設けることができる。そのような処理剤を塗布するための当該技術分野では既知の任意のプロセスを用いることができる。
【0117】
ニップ117を通過後、構造化基材22は、ロール104と、好ましくはロール102Aと同じものであるロール102Bとの間に形成されたニップ118に進む。ロール102Bの周囲を通過させる目的は、構造化基材22上に形成された変位した繊維6を乱すことなく、構造化基材22をロール104から剥がすことである。ロール102Bはロール102Aとまったく同様にしてロール104と噛み合うため、変位した繊維6は構造化基材22がロール102Bの周囲に巻き付けられるに従ってロール102Bの溝108に嵌まり込む。ニップ118を通過した後、構造化基材22は、本発明の構造化基材23として更なる処理を行うために供給ロール上に巻き取られる。しかしながら、図1に示される実施形態では、構造化基材22はロール102Bと第2の結合ロール158との間のニップ119を通過して処理される。第2の結合ロール158は、第1の結合ロール156と同じ設計のものでよい。第2の結合ロール158は、構造化基材22の第2の表面14の一部を少なくとも部分的に溶融するだけの充分な熱を与えることによって、ロール102Bの山部106の先端とロール158のほぼ平坦かつ平滑な表面との間のニップ圧に対応した、多数の互いに交差しない、ほぼ連続的な過剰結合領域11を形成することができる。
【0118】
第2の結合ロール158は、プロセスにおける唯一の結合工程として使用することができる(すなわち、変位した繊維6の末端を結合させることによって構造化基材22を最初に形成することなく)。その場合、構造化ウェブ22は、その第2の側面14上に結合部分を有する構造化ウェブ23となる。しかしながら一般的には、構造化ウェブ23は、第1の側面12又は第2の側面14上に変位した繊維6の結合された末端(先端結合部)及び多数の互いに交差しない、ほぼ連続的な溶融結合領域を有する両面過剰結合構造化ウェブ22であることが好ましい。
【0119】
最後に、構造化基材23が形成された後、構造化基材23を保管及び他の製品の要素として更なる処理を行うために供給ロール160上に巻き取ることができる。
【0120】
代替的な一実施形態では、図1Aに示されるプロセスを用いて第2の基材21Aを構造化基材21に加えることができる。第2の基材21Aは、フィルム、不織布又は上記に述べたような第2のベース基材であり得る。この実施形態では、ベース基材20は、ローラー154上を、逆回転する互いに噛み合ったロール102Aと104の第1の組のニップ116へと機械方向に移送され、繊維が完全に変位させられて破断繊維が形成される。次いでウェブは、ロール104と結合ロール156との間に形成されたニップ117に進み、第2の基材21Aが導入され、変位した繊維6の末端部3に結合される。ニップ117を通過した後、構造化基材22はロール104と102Bとの間に形成されたニップ118に進むが、噛合深さが0であるためにロール104と102Bとは噛み合わないか、又は噛合深さがロール102Aと104との間のニップ116において形成される噛合深さよりも小さいために、構造化基材に更なる繊維の変位は生じない。また、この実施形態では、ニップ118における噛合深さを、第2の基材21Aに変形が生じるが構造化基材22には更なる繊維の変位が生じないように設定することもできる。換言すれば、ニップ118における噛合深さは、ニップ116における噛合深さよりもやはり小さくなっている。
【0121】
材料
本発明のベース基材の繊維を形成するために使用される組成物には、熱可塑性ポリマー材料及び非熱可塑性ポリマー材料が含まれ得る。熱可塑性ポリマー材料は、溶融紡糸に適したレオロジー特徴を有する必要がある。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合いを可能にするうえで充分でなければならず、なおかつ溶融紡糸を可能とするだけ充分に低くなければならない。溶融紡糸のためには、熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol未満、好ましくは約5,000g/mol〜約750,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol〜約500,000g/mol、更により好ましくは約50,000g/mol〜約400,000g/molの分子量を有する。他の部分において特に断らないかぎりは、示される分子量は数平均分子量である。
【0122】
熱可塑性ポリマー材料は、短繊維用の紡糸延伸プロセス又はスパンボンド連続繊維プロセスなどの既知のプロセスにおいて典型的に見られるように、好ましくは伸長流れ下において比較的急速に固化して熱的に安定な繊維構造を形成可能なものである。好ましいポリマー材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。その他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーについては、米国特許第6746766号、同第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に述べられている。一般的な熱可塑性ポリマー繊維グレードの材料が好ましく、最も注目すべきものとしては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせがある。最も好ましいのは、ポリエステル及びポリプロピレン系樹脂である。
【0123】
本発明における使用に適した熱可塑性ポリマーの非限定的な例としては、脂肪族ポリエステルアミド;脂肪族ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート(PET)及びコポリマー(coPET)、ポリブチレンテレフタレート及びコポリマーを含む芳香族ポリエステル;ポリトリメチレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレンテレフタレート及びコポリマー;ポリプロピレン及びプロピレンコポリマー;ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー;脂肪族/芳香族コポリエステル;ポリカプロラクトン;ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−コ−ヘキサノエート)、又は本明細書に参照により援用するNodaに付与された米国特許第5,498,692号に参照される他の高分子量(ヒドロキシブチレート−コ−アルカノエート)を含むポリ(ヒドロキシアルカノエート);脂肪族ポリオール(すなわち、ジアルカノイルポリマー)から誘導されたポリエステル及びポリウレタン;ポリアミド;ポリエチレン/ビニルアルコールコポリマー;乳酸ホモポリマー及び乳酸コポリマーを含む乳酸ポリマー;ラクチドホモポリマー及びラクチドコポリマーを含むラクチドポリマー;グリコリドホモポリマー及びグリコリドコポリマーを含むグリコリドポリマー;並びにこれらの混合物が挙げられる。脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、乳酸ポリマー、及びラクチドポリマーが好ましい。
【0124】
好適な乳酸及びラクチドポリマーとしては、一般的に約10,000g/mol〜約約600,000g/mol、好ましくは約30,000g/mol〜約400,000g/mol、より好ましくは約50,000g/mol〜約200,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する乳酸及び/又はラクチドのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。市販のポリ乳酸ポリマーの例としては、コロラド州ゴールデン所在のChronopol Incorporationより販売される各種のポリ乳酸、及びEcoPLA(登録商標)の商品名で販売されるポリラクチドが挙げられる。好適な市販のポリ乳酸の例としては、Cargill DowからのNATUREWORKS及び三井化学株式会社からのLACEAがある。約160℃〜約175℃の融点を有するポリ乳酸のホモポリマー又はコポリマーが好ましい。ポリL−乳酸、及びD異性体レベルが最大で75%であるポリD,L−乳酸などの修飾ポリ乳酸及び異なる立体配置を使用することもできる。高融点のPLAポリマーを作り出すためのD及びL異性体の必要に応じたラセミ混合物も好ましい。これらの高融点のPLポリマーは、融点が180℃よりも高い特殊なPLAコポリマーである(D異性体とL異性体が異なる立体モノマーとして処理されるとの理解に基づく)。このような高い融点は、平均融点を上げるための結晶寸法の特別な制御によって実現される。
【0125】
使用される特定のポリマー、プロセス、及び繊維の最終用途に応じて1種類よりも多いポリマーが望ましい場合もある。本発明のポリマーは、繊維の機械的特性、繊維の不透明度を高め、繊維と流体の相互作用を最適化し、溶融物の加工性を高め、繊維の細径化性を高める量で存在する。ポリマーの選択及び量は、繊維が熱的に結合可能であるか否かを更に決定し、最終製品の柔軟性及びテクスチャに影響する。本発明の繊維は、単一のポリマー、複数のポリマーのブレンドを含むか、あるいは1種類よりも多いポリマーを含む多要素繊維であってよい。本発明における繊維は熱結合性のものである。
【0126】
多成分のブレンドが望ましい場合もある。例えば、この方法を用いてポリエチレンとポリプロピレンのブレンド(以後、ポリマーアロイと呼ぶ)を混合及び紡糸することができる。別の例は、粘性又はモノマー含量が異なるポリエステルのブレンドである。区別可能な化学種を各要素に含有する多要素繊維を製造することもできる。その非限定的な例としては、25メルトフローレート(MFR)のポリプロピレンと50MFRのポリプロピレンとの混合物、及び25MFRのホモポリマーポリプロピレンと、コモノマーとしてのエチレンとポリプロピレンとの25MFRのコポリマーとの混合物が挙げられる。
【0127】
より好ましいポリマー材料は、110℃よりも高い、より好ましくは130℃よりも高い、更により好ましくは145℃よりも高い、更により好ましくは160℃よりも高い、最も好ましくは200℃よりも高い融点を有する。本発明において更に好ましいのは、高いガラス転移温度を有するポリマーである。最終用途の繊維の形態において−10℃よりも高い、より好ましくは0℃よりも高い、更により好ましくは20℃よりも高い、最も好ましくは50℃よりも高いガラス転移温度が好ましい。このような性質の組み合わせによって、高い温度において安定的な繊維が製造される。この主の材料の代表的な例としては、ポリプロピレン、ポリ乳酸系ポリマー、及びポリエチレンテレフタレート(polyester terephthalate)(PET)系ポリマーシステムがある。
【0128】
必要に応じて用いられる材料
必要に応じて、ベース基材の繊維を形成するために使用される紡糸可能な組成物に他の成分を加えることができる。必要に応じて用いられる材料を使用することによって加工性を改変し、及び/又は最終製品の不透明度、弾性、引っ張り強度、湿潤強度、及び弾性率などの物理特性を改変することができる。他の効果としては、これらに限定されるものではないが、酸化安定性などの安定性、白色度、色、可撓性、弾力性、加工性、加工助剤、粘度改変剤、及び悪臭防止効果が挙げられる。必要に応じて用いられる材料の例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化チタン、炭酸カルシウム、着色顔料、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらに限定されるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加物を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。他の好適な無機材料としては、これらに限定されるものではないが、ケイ酸マグネシウム水和物、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰岩、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、これらに限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩などの無機塩類を使用することもできる。
【0129】
必要に応じて、他の成分を組成物に加えることもできる。必要に応じて用いられるこれらの成分は、組成物の重量に対して約50重量%未満、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、更に好ましくは約0.1重量%〜約12重量%の量で存在してよい。必要に応じて用いられるこれらの成分を使用することによって、加工性を改変し、及び/又は最終製品の弾性、引っ張り強度及び弾性率といった物理的特性を改変することができる。他の効果としては、これらに限定されるものではないが、酸化安定性などの安定性、白色度、可撓性、色、弾力性、加工性、加工助剤、粘度改変剤、生分解性、及び悪臭防止効果が挙げられる。非限定的な例として、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は遅延剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、その他の加工助剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、タンパク質及びそのアルカリ塩、ワックス、粘着性付与樹脂、増量剤、及びこれらの混合物が挙げられる。スリップ剤は、繊維の粘着性又は摩擦係数を低下させるために使用される。スリップ剤は、特に高い湿度又は高温における繊維の安定性を高めるために使用することもできる。好適なスリップ剤はポリエチレンである。熱可塑性デンプン(TPS)をポリマー組成物に加えることもできる。特に重要なのは、ポリエステル熱可塑性材料、特にPETの製造及び使用における静電気の蓄積を低減させるために使用されるポリマー添加剤である。このような好適な材料としては、アセトアルデヒド酸スカベンジャー、エトキシル化ソルビトールエステル、グリセロールエステル、スルホン酸アルキル、これらの組み合わせ及び混合物、並びに誘導体化合物がある。
【0130】
マグネシウム、アルミニウム、シリコン、及びチタンの酸化物などの無機充填剤を含む更なる添加剤を安価な充填剤又は加工助剤として添加してもよい。その他の無機材料としては、水和ケイ酸マグネシウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、粘土、チョーク、窒化ホウ素、石灰石、珪藻土、雲母、ガラス、石英、及びセラミックスが挙げられる。更に、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、リン酸塩などの無機塩類を加工助剤として使用してもよい。熱可塑性デンプンブレンド繊維の水反応性を改変する他の必要に応じて用いられる材料としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、及び他のステアリン酸塩などのステアリン酸塩、並びにガムロジンなどのロジン成分がある。
【0131】
親水性剤をポリマー組成物に加えることができる。親水性剤は、当該技術分野では既知の標準的な方法によって添加することができる。親水性剤は、低分子量のポリマー材料又は化合物であってよい。親水性剤は、高分子量のポリマー材料であってもよい。親水性剤は、0.01重量%〜90重量%の量で、好ましくは0.1重量%〜50重量%の範囲で、より好ましくは0.5重量%〜10重量%の範囲で存在すればよい。親水性剤は、最初の樹脂が樹脂製造業者において製造される際に添加されてもよく、又は繊維が製造される際に押出成形機にマスターバッチとして加えられてもよい。好ましい親水性剤としては、ポリエステルポリエーテル、ポリエステルポリエーテルコポリマー、及びポリエステル系ポリマー用の非イオン性ポリエステル化合物がある。エトキシ化された低分子量及び高分子量のポリオレフィン性化合物を添加することもできる。これらの材料の加工性を高めるとともに、より均一かつ均質なポリマー化合物を製造する助けとするために相溶化剤をこれらの材料に添加することができる。当業者であれば、相溶化剤を混合工程において添加することにより、溶融添加剤がベースポリマーに対して本来的に効果的ではないポリマーアロイを製造することができる点は理解するであろう。例えば、マレイン酸化ポリプロピレンを相溶化剤として使用することにより、ベースポリプロピレンを親水性ポリエステルポリエーテルコポリマーと合わせることができる。
【0132】
繊維
本発明においてベース基材を形成する繊維は、1要素又は多要素のものであってよい。用語「繊維」とは、厚さに対する長さの比が1,000よりも大きい固化ポリマー形状として定義される。本発明の1要素繊維はまた多成分であってもよい。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。本明細書で使用するところの多成分繊維とは、1種類よりも多い化学種又は材料を含む繊維を意味するものとして定義される。多成分ポリマーとアロイ化ポリマーは、本発明では同じ意味を有し、互換可能に使用され得る。一般的に繊維は、1要素又は多要素のタイプのものであり得る。本明細書で使用するところの要素とは、繊維の別の部分と所定の空間的関係を有する、繊維の別の部分として定義される。本明細書で使用するところの多要素(multicomponent)とは、互いに対して空間的関係にある1つよりも多い別々の部分を有する繊維として定義される。多要素繊維なる用語には、互いに対して空間的関係にある2つの別々の部分を有する繊維として定義される2要素繊維が含まれる。多要素繊維の異なる要素は、繊維の断面において実質的に異なる領域に配され、繊維の長さに沿って連続的に延在する。多要素繊維の製造方法は、当該技術分野では周知のものである。多要素繊維の押出成形は1960年代には周知であった。DuPontは多要素繊維機能の先端技術開発企業であり、米国特許第3,244,785号及び同第3,704,971号に、これらの繊維の製造に使用される技術の技術的な説明が掲載されている。1971年にMerrow Publishingより刊行された、R.Jeffries著のBicomponent Fibersは、2要素繊維の製造技術の確固たる基盤を確立した。より最近の出版物としては、「Taylor−Made Polypropylene and Bicomponent Fibers for the Nonwoven Industry」、Tappi Journal、1991年12月(103頁)、及びWoodhead Publishingより刊行されたナカジマ編、「Advanced Fiber Spinning Technology」がある。
【0133】
本発明において形成される不織布は、同じ紡糸口金を通じて異なる押し出しシステムから供給される複数の種類の1要素繊維を含み得る。この例における押出システムは、別々の毛管に異なるポリマーを供給する多要素押出しシステムである。例えば、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレートを供給し、他方がポリエステルテレフタレートコポリマーを供給するようにすることでコポリマー組成物は異なる温度で溶融する。第2の例では、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方がポリプロピレンを供給する。第3の例では、一方の押し出しシステムがポリエステルテレフタレート樹脂を供給し、他方が第1のポリエステルテレフタレート樹脂と異なる分子量を有する更なるポリエステルテレフタレートを供給する。このシステムにおけるポリマー比は、95:5〜5:95、好ましくは90:10〜10:90、及び80:20〜20:80の範囲であり得る。
【0134】
2要素繊維及び多要素繊維は、サイドバイサイド型の構成、シース/コア型の構成、分割パイ型の構成、リボン型の構成、海島型の構成、又はこれらの組み合わせであってよい。シースはコアの周囲において連続的又は非連続的であってよい。代表的な多要素繊維の非包括的な例が、米国特許第6,746,766号に開示されている。コアに対するシースの重量比は、約5:95〜約95:5である。本発明の繊維は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、星形、3葉形、3〜8葉を有する多葉形、長方形、H字形、C字形、I字形、U字形、及び他の様々な変形を含む異なる幾何学形状を有し得る。中空繊維を使用することもできる。好ましい形状は、円形、3葉形及びH字形である。円形又は3葉形の繊維の形状はまた中空であってもよい。
【0135】
「高度に細径化された繊維」とは、高いドローダウン比を有する繊維として定義される。繊維の全体のドローダウン比は、最終用途における最終的な繊維の直径に対する繊維の最大直径(典型的には毛管を出た直後に生ずる)の比として定義される。繊維の全体のドローダウン比は1.5よりも大きく、好ましくは5よりも大きく、より好ましくは10よりも大きく、最も好ましくは12よりも大きい。これは、触覚性及び有用な機械的特性を実現するうえで必要である。
【0136】
本発明の成形繊維の繊維の「直径」は、繊維の外周に外接する円の直径として定義される。中空繊維の場合では、直径は中空領域の直径ではなく、中実領域の外縁部の直径である。非円形の繊維の場合では、繊維直径は、非円形繊維の葉部又は縁部の最も外側の点に外接する円を用いて測定される。この外接円の直径は、その繊維の有効直径と呼ばれる場合もある。好ましくは、高度に細径化された多要素繊維は、500マイクロメートルよりも小さい有効繊維直径を有する。より好ましくは、有効繊維直径は250マイクロメートル以下であり、更により好ましくは100マイクロメートル以下であり、最も好ましくは50マイクロメートルよりも小さい。不織布を製造するために一般的に使用される繊維は、約5マイクロメートル〜約30マイクロメートルの有効繊維直径を有する。本発明における繊維は、典型的なスパンボンド不織布に見られる繊維よりも大きい傾向がある。このため、10マイクロメートルよりも小さい有効直径を有する繊維は使用されない。本発明において有用な繊維は、約10マイクロメートルよりも大きい、より好ましくは15マイクロメートルよりも大きい、最も好ましくは20マイクロメートルよりも大きい有効直径を有する。繊維の直径は、紡糸速度、質量スループット、及びブレンド組成によって制御される。本発明における繊維が個別の層として製造される場合、その層を、細い繊維、場合によりナノ寸法の繊維を含む更なる層と合わせることができる。
【0137】
スパンレイド直径なる用語は、約12.5マイクロメートルより大きく、最大50マイクロメートルまでの有効直径を有する繊維のことを指す。この直径範囲は、最も標準的なスパンレイド装置によって製造されるものである。マイクロメートル(micrometer)とマイクロメートル(micron)(μm)は同じものを意味し、互換可能に使用することができる。メルトブローン直径は、スパンレイド直径よりも小さい。メルトブローン直径は、典型的には、約0.5〜約12.5マイクロメートルである。好ましいメルトブローン直径は、約1〜約10マイクロメートルの範囲である。
【0138】
成形繊維の直径を決定することは困難であるため、繊維のデニールがしばしば参照される。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義され、dpf(デニール/フィラメント)として表される。したがって、直径からデニールに変換する及びその逆の場合には、この繊維の固有の密度も考慮される。本発明においては好ましいデニールの範囲は、1dpfよりも大きく100dpfよりも小さい範囲である。より好ましいデニールの範囲は1.5dpf〜50dpfであり、より好ましい範囲は2.0dpf〜20dpfであり、最も好ましい範囲は4dpf〜10dpfである。ポリプロピレンにおける直径に対するデニールの関係の一例として、約0.900g/cm3の密度を有する中実、円形のポリプロピレンの1dpfの繊維は約12.55マイクロメートルの直径を有する。
【0139】
本発明では、繊維は圧縮力に耐えるために限られた伸長性を有し、一定の剛性を示すことが望ましい。本発明の繊維は、個々の繊維破断負荷が5g/フィラメントよりも大きいものである。繊維の引っ張り特性は、ASTM規格D 3822−91に一般的に述べられる方法、又はこれに相当する試験に従って測定されるが、使用した実際の試験については下記に詳細に述べる。引っ張り係数(特に断らないかぎりはASTM規格D 3822−91に述べられる初期弾性率)は、0.5GPa(ギガパスカル)よりも大きく、より好ましくは1.5GPaよりも大きく、更により好ましくは2.0GPaよりも大きく、最も好ましくは3.0GPaよりも大きくなければならない。引っ張り係数が大きいほど、持続的な比容積をもたらす剛性の高い繊維となる。以下に例を示す。
【0140】
本発明においては、繊維の親水性及び疎水性を調節することが可能である。ベース樹脂の性質は、共重合による親水性を有するか(特定のポリエステル(Eastman Chemicalより販売されるEASTONE、スルホポリエステルのポリマー群一般)又はポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィンの場合)、あるいはベース樹脂に親水性をもたらす材料をベース樹脂に添加することができる。添加剤の代表的な例としては、CIBA Irgasurf(登録商標)の添加剤群が挙げられる。本発明の繊維は、繊維の製造後に繊維に親水性を与えるための処理又はコーティングを行ってもよい。本発明では、耐久性のある親水性が好ましい。耐久性のある親水性とは、複数回の流体との相互作用の後に親水性を維持していることとして定義される。例えば、評価を行う試料に耐久性のある親水性について試験を行う場合、試料に水を注いで濡れを観察することができる。試料が濡れた場合には、試料は最初、親水性である。次いで試料を水でよくすすいで乾燥させる。すすぎは、試料を大きな容器に入れ、10秒間揺動した後、乾燥させることによって最も効果的に行われる。乾燥後の試料は、再び水と接触させた場合にやはり濡れなければならない。
【0141】
本発明の繊維は熱安定性である。繊維の熱安定性は、沸騰水中での収縮率が30%よりも小さい、より好ましくは収縮率が20%よりも小さい、最も好ましくは収縮率が10%よりも小さいものとして定義される。本発明の繊維の一部のものは、5%よりも小さい収縮率を有する。収縮率は、沸騰水中に繊維を1分間入れた前後に繊維の長さを測定することによって求められる。高度に細径化された繊維は、熱安定性繊維の製造を可能とするものである。
【0142】
本発明でのベース基材に使用される繊維形状は、数ある形状の中でも、中実円形、中空円形、及び様々な多葉(multi-lobal)形状の繊維からなるものでよい。互いに異なる断面形状を有する成形繊維の混合物とは、走査型電子顕微鏡によって断面を調べた場合に、区別可能に充分に異なる断面形状を有する少なくとも2種類の繊維として定義される。例えば、2種類の繊維は3葉形であるが、一方の3葉形は長い脚を有し、他方の3葉形は短い脚を有してもよい。好ましくはないが、成形繊維は、全体的な断面形状が同じであっても1つの繊維が中空であって別の繊維が中実である場合には、異なっているとされる場合もある。
【0143】
多葉(multi-lobal)形状の繊維は、中実であっても、中空であってもよい。多葉状繊維とは、繊維の外表面に沿って複数の変曲点を有するものとして定義される。変曲点とは、繊維を繊維軸に対して垂直に切断する場合における、繊維表面に対して垂直に引かれた線の傾きの絶対値の変化として定義される。成形繊維には、三日月形、楕円形、方形、菱形、又は他の好適な形状も含まれる。
【0144】
中実円形の繊維は、合成繊維の業界では長年にわたって既知である。これらの繊維は、繊維断面の幅にわたって光学的に実質的に連続した物質の分布を有する。これらの繊維は、微小空隙又は内部フィブリルを含んでもよいが、実質的に連続であるとみなされる。中実円形繊維の外表面には変曲点は存在しない。
【0145】
本発明の中空繊維は、円形形状又は多葉形状のいずれかによらず中空領域を有する。中空繊維の中実の領域が中空の領域を包囲する。中空領域の外周は、中実領域の内周でもある。中空領域は、中空繊維と同じ形状であってもよく、又は中空領域の形状は、非円形又は非同心状とすることができる。複数の中空領域が繊維内に存在してもよい。
【0146】
中空領域は、いかなる材料も含まない繊維の部分として定義される。また、空隙領域又はから空間として述べることもできる。中空領域は、繊維の約2%〜約60%を構成する。中空領域は、好ましくは繊維の約5%〜約40%を構成する。中空領域は、より好ましくは繊維の約5%〜約30%を構成し、最も好ましくは繊維の約10%〜約30%を構成する。これらの割合は、中空繊維の断面領域(すなわち2次元)に対して与えられたものである。
【0147】
本発明においては中空領域の割合を制御する必要がある。中空領域の割合は、好ましくは2%よりも大きく、そうでない場合には中空領域の相応の効果は得られない。しかしながら、中空領域は60%よりも小さいことが好ましく、そうでない場合には繊維が潰れてしまう可能性がある。所望の中空率(%)は、使用される材料、繊維の最終用途、並びに他の繊維特徴及び用途によって決まる。
【0148】
互いに異なる断面形状を有する2種類以上の成形繊維の平均繊維直径は、それぞれの繊維の種類の平均のデニールを測定し、各成形繊維のデニールを同等の中実円形繊維の直径に変換し、それぞれの総繊維含有率(%)によって重み付けされた各成形繊維の平均直径を加え合わせ、繊維の種類(異なる形状の繊維)の合計数によって割ることによって計算される。平均繊維デニールはまた、平均繊維直径(又は同等の中実円形繊維の直径)を繊維密度の関係によって変換することによっても計算される。ある繊維は、平均直径が少なくとも約10%大きい又は小さい場合に異なる直径を有するものとみなされる。互いに異なる断面形状を有する2種類以上の成形繊維は、同じ直径を有しても、又は異なる直径を有してもよい。更にこれらの成形繊維は、同じデニールを有しても、又は異なるデニールを有してもよい。特定の実施形態では、これらの成形繊維は、直径は異なるが同じデニールを有する。
【0149】
多葉形繊維には、これらに限定されるものではないが、3葉形及びデルタ形などの最も一般的に見られる形態が含まれる。多葉形繊維の他の好適な形状としては、三角形、方形、星形、又は楕円形が挙げられる。これらの繊維は、少なくとも1つの傾きの変曲点を有するものとして最も正確に述べられる。傾きの変曲点は、繊維の傾きが変化する繊維の表面の外周に沿った点として定義される。例えば、デルタ形の3葉繊維は3個の傾き変曲点を有し、明確な3葉繊維では6個の傾き変曲点を有する。本発明における多葉繊維は、一般的に約50個よりも少ない傾き変曲点、最も好ましくは約20個よりも少ない傾き変曲点を有する。多葉形繊維は非円形として一般的に述べることができ、中実又は中空のいずれであってもよい。
【0150】
本発明の1成分及び多成分繊維(multiconstituent fiber)は、多くの異なる形態を有し得る。本明細書で使用するところの成分とは、物質又は材料の化学種を意味するものとして定義される。繊維は1要素の形態であってもよい。本明細書で使用するところの要素とは、繊維の別の部分と所定の空間的関係を有する、繊維の別の部分として定義される。
【0151】
繊維が形成された後、繊維を更に処理するか、又は結合した布地を処理することができる。親水性又は疎水性の仕上げ剤を添加することによって、布地の表面エネルギー及び化学的性質を調節することができる。例えば、疎水性の繊維を湿潤剤で処理することによって、水性液の吸収性を高めることができる。結合させた布地を、界面活性剤、含量、スリップ剤、塩、又は他の材料を含む局所的溶液で処理することによって、繊維の表面特性を更に調節することもできる。
【0152】
本発明の繊維は捲縮加工してもよいが、繊維は捲縮加工されないことが好ましい。捲縮繊維は、一般的に2つの方法で製造される。第1の方法は、繊維が既に紡糸された後に繊維を機械的に変形させることである。繊維は、溶融紡糸され、最終的なフィラメント直径にまで引き伸ばされて、一般的に2次元又は3次元の捲縮をもたらすギア又はスタッファーボックスによって機械的に処理される。この方法は、多くのカーディングされた短繊維の製造において使用されているが、カーディングされた短繊維の布地は繊維が連続しておらず、捲縮加工された繊維から製造される布地は繊維の変形技術が使用される前には、一般的に極めて厚みが大きいことから好ましくない。繊維を捲縮するための第2の方法は、スパンレイド処理によって捲縮し得る多要素繊維を押し出し成形することである。2要素捲縮スパンボンド繊維を製造するための多くの方法が存在することは当業者であれば認識されるところであるが、本発明においては、捲縮されたスパンレイド不織布を製造するための3つの主要な方法について検討する。第1は、ポリマーの種類、ポリマーの分子量特性(例えば分子量の分布)、又は添加剤の含量の差異に基づく紡糸線におけるポリマーの結晶化の差のために紡糸線において生じる捲縮である。第2の方法は、繊維をスパンレイド基材に紡糸した後で繊維を収縮差に基づいて収縮させることである。例えば、スパンレイドウェブを加熱することによって、例えば熱結合プロセスの間に紡糸される繊維における結晶化度の差のために繊維が収縮し得る。捲縮を生じさせる第3の方法は、繊維又はスパンレイドウェブを機械的に延伸することである(一般的に機械的延伸を行うためにはウェブを一体に結合させておく)。機械的延伸によって、捲縮を生じさせる2種類のポリマー成分間の応力歪み曲線における差異が顕在化し得る。
【0153】
後者の2つの方法は、繊維を紡糸した後に活性化させる必要があることから、一般的に潜在的捲縮化プロセスと呼ばれている。本発明においては、捲縮された繊維の使用について優先順位がある。ベース基材の厚さが1.3mm未満のものであれば、カーディングされた短繊維の布地を使用することができる。スパンレイド又はスパンボンド布地は、ベース基材の厚さ又はキャリパーが1.3mm未満のものであれば、捲縮可能な連続したフィラメントを含んでいることから好ましい。本発明においては、ベース基材は100重量%未満の捲縮された繊維、好ましくは50重量%未満の捲縮された繊維、より好ましくは20重量%未満の捲縮された繊維、より好ましくは10重量%未満、最も好ましくは0重量%の捲縮された繊維を含む。捲縮加工は繊維の表面に移行する流体の量を低減させ得るばかりでなく、捲縮加工によってベース基材の比重が小さくなることによって、ベース基材の固有の毛管作用が低下し得ることから、捲縮されていない繊維が好ましい。
【0154】
短繊維とは、50mm未満の長さを有する繊維として定義される。本発明においては、2つの更なる効果が得られることから連続的な繊維が短く切断された繊維よりも好ましい。第1の効果は、繊維が途切れることなく流体がより大きな距離を移送され得るために、高い毛管作用が得られる点である。第2の効果は、連続的な繊維が結合されたネットワークは、短繊維からなるネットワークと比較して集合的により相互に連結された連続的な繊維のマトリクスを有するため、連続的な繊維によってより高い引っ張り強度及び剛性を有するベース基材が製造される点である。本発明のベース基材は、極めて少ない量の短繊維、好ましくは50重量%未満の短繊維、より好ましくは20重量%未満の短繊維、より好ましくは10重量%未満の短繊維、最も好ましくは0重量%未満の短繊維を含むことが好ましい。
【0155】
本発明のベース基材用に製造される繊維は、熱結合性を有するものであることが好ましい。本発明において、熱結合性とは、ピーク融点の近く又はそれよりも高い温度に昇温されると軟化し、少なくとも低い圧力の作用下で互いに粘着又は融合する繊維として定義される。熱結合を行うためには、繊維の熱可塑性樹脂の総含有率は、30重量%よりも大きくなければならず、好ましくは50重量%よりも大きい、更により好ましくは70重量%よりも大きい、最も好ましくは90重量%よりも大きい。
【0156】
スパンレイドプロセス
本発明のベース基材を形成する繊維は、スパンレイド布地を形成する連続したフィラメントであることが好ましい。スパンレイド布地は、基本的に連続したフィラメントから形成される、凝集引っ張り特性を基本的にまったく有さない、結合されていない布地として定義される。連続したフィラメントは、直径に対する長さの比が10,000:1と高い比である繊維として定義される。スパンレイド布地を構成する本発明における連続したフィラメントは、短繊維、短く切断された繊維、又は他の意図的に製造された短繊維のいずれでもない。本発明における連続したフィラメントは、平均で100mmよりも長く、好ましくは200mmよりも長い。本発明における連続したフィラメントはまた、意図するとしないとに関わらず捲縮されていない。
【0157】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、米国特許第3,802,817号、同第5,545,371号、同第6,548,431号、及び同第5,885,909号に開示されるような高速紡糸プロセスを使用して形成される。これらの溶融紡糸プロセスでは、押出成形機が溶融ポリマーを溶融ポンプに供給し、溶融ポンプが所定体積の溶融ポリマーを供給すると、溶融ポリマーは繊維として形成された多数の毛管から構成されたスピンパックを通じて移送される。スピンパックにおいて繊維は空気冷却領域を通じて冷却され、高度に細径化された繊維へと径が減少するように空気圧により引き伸ばされることによって分子レベルの繊維の配向により繊維の強度が高められる。次いで引き伸ばされた繊維は、しばしば形成ベルト又は形成テーブルと呼ばれる多孔質のベルト上に堆積される。
【0158】
連続したフィラメントを製造するために使用される本発明のスパンレイドプロセスは、1m当たり100〜10,000本の毛管、好ましくは1m当たり200〜7,000本の毛管、より好ましくは1m当たり500〜5,000本の毛管、更により好ましくは1m当たり1,000〜3,000本の毛管を含んでいる。本発明における毛管1本当たりのポリマーの質量流量は、0.3GHM(g/穴/分)よりも大きい。好ましい範囲は0.4GHM〜15GHMであり、好ましくは0.6GHM〜10GHMであり、更により好ましくは0.8GHM〜5GHMであり、最も好ましい範囲は1GHM〜4GHMである。
【0159】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、高度に細径化された、捲縮されていない連続フィラメントを製造するための単一のプロセス工程を含む。押し出されたフィラメントは冷却空気の領域を通じて引き伸ばされ、細径化される際に冷却及び固化される。このようなスパンレイドプロセスについては、米国特許第3338992号、同第3802817号、同第4233014号、同第5688468号、同第6548431(B1)号、同第6908292(B2)号、及び米国特許出願公開第2007/0057414(A1)号に開示されている。欧州特許出願公開第EP 1340843(B1)号及び同第EP 1323852(B1)号に述べられる技術を使用して、スパンレイド不織布を製造することもできる。高度に細径化された連続フィラメントは、紡糸口金からのポリマーの出口から細径化装置へと直接引き伸ばされ、その際、連続フィラメントの直径又はデニールは形成テーブル上でスパンレイド布地が形成されるのに従って大きく変化することはない。本発明における好ましいスパンレイドプロセスには、紡糸口金の出口間の繊維を空圧式延伸装置へと空圧によって引き伸ばすことによって、繊維を形成ベルト上に堆積させる引き抜き装置が含まれる。このプロセスは、紡糸口金から繊維を機械的に引き伸ばす他のスパンレイドプロセスとは異なるものである。
【0160】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、上記に開示したような規定の固有引っ張り強度、繊維直径又はデニールを有する、熱安定性である連続した捲縮されていない繊維を単一の工程で製造するものである。好ましいポリマー材料としては、これらに限定されるものではないが、ポリプロピレン及びポリプロピレンコポリマー、ポリエチレン及びポリエチレンコポリマー、ポリエステル及びポリエステルコポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリアクリレート、並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物が挙げられる。他の好適なポリマー材料としては、米国特許出願公開第2003/0109605(A1)号及び同第2003/0091803号に詳細に述べられるような熱可塑性デンプン組成物がある。その他の好適なポリマー材料としては、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸のコポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのポリマーは、米国特許第6746766号、同第6818295号、同第6946506号、及び米国特許出願第03/0092343号に述べられている。一般的な熱可塑性ポリマー繊維グレードの材料が好ましく、最も注目すべきものとしては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート系樹脂、及びポリエチレン系樹脂、並びにこれらの組み合わせがある。最も好ましいのは、ポリエステル及びポリプロピレン系樹脂である。代表的なポリエステルテレフタレート(特に断らないかぎり、以後、ポリエステルと呼ぶ)樹脂としては、Eastman F61HC(IV=0.61dl/g)、Eastman 9663(IV=0.80dl/g)、DuPont Crystar 4415(IV=0.61gl/g)がある。好適なコポリエステルは、Eastman 9921(IV−0.81)である。本発明に適したポリエステルの固有粘度(IV)の範囲は、0.3dl/g〜0.9dl/g、好ましくは0.45dl/g〜0.85dl/g、より好ましくは0.55dl/g〜0.82dl/gの範囲である。固有粘度はポリマーの分子量の目安であり、ポリマーの技術分野における当業者には周知のものである。本発明におけるポリエステル繊維は、アロイであり、1要素かつ成形されたものであってよい。好適な一実施形態は、3dpf〜8dpfのデニールを有する0.61dl/gの樹脂から製造された多葉形、好ましくは3葉形のポリエステル繊維である。本発明ではPETが最も一般的に参照されるが、PBT、PTT、PCTなどの他のポリエステルテレフタレートポリマーを使用することもできる。
【0161】
特定の樹脂特性の組み合わせをスパンボンドプロセスで使用することによって、熱結合されたPET不織布を高デニールで製造することが可能であることが予期せずして発見された。Eastman F61HC PETポリマー及びEastman 9921 coPETは、熱によって結合可能である一方で熱安定性である繊維の製造において理想的な組み合わせを提供することが分かっている。この予期せざる発見は、F61HC及び9921を70:30〜90:10の範囲の比(F61HC:9921の比)で別々の毛管から押し出すことが可能であり、これによって得られるウェブを熱によって一体に結合することによって熱安定性である不織布を製造することが可能であるというものである。この例における熱安定性である、とは、沸騰水中に5分間入れた後のMD方向における収縮率が10%未満であるものとして定義される。このような熱安定性は、4000m/分よりも大きな紡糸速度で、円形及び成形繊維の両方において1dpf〜10dpfの範囲のデニールのフィラメントを製造することによって実現される。5g/m2〜100g/m2の範囲の坪量が製造される。これらの布地は、サーマルポイントボンド法によって製造されている。これらの種類の布地は、使い捨て吸収性物品、ドライヤーシート、及び屋根の断熱処理などの広範な用途において使用することができる。必要に応じて、マルチビームシステムを単独で使用するか、2つのスパンレイド層間に細繊維径層を置いた後にこれを一体に結合することができる。
【0162】
更なる好ましい一実施形態は、ポリプロピレン繊維及びスパンレイド不織布の使用である。ポリプロピレンの好ましい樹脂特性は、5MFR(10分間当たりのメルトフローレートをグラムで表したもの)〜400MFRのメルトフローであり、好ましい範囲は10MFR〜100MFRであり、更により好ましい範囲は15MFR〜65MFRであり、最も好ましい範囲は23MFR〜40MFRである。MFRの測定に使用される方法については、230℃で2.16kgの質量を用いて測定したものがASTM D1238に概略的に述べられている。
【0163】
1要素及び多要素繊維から製造された不織布製品は、特に強度、可撓性、柔軟性、及び吸収性といった特定の性質も示す。強度の目安としては、乾燥及び/又は湿潤引っ張り強度が挙げられる。可撓性は剛性と関連しており、柔軟性に起因するものであると考えられる。一般的に柔軟性は、可撓性及びテクスチャの両方と関連する生理学的に知覚される属性として述べられる。吸収性は、製品が流体を取り込む能力、並びにその流体を保持する容量と関連している。本発明における吸収性には、パルプ繊維、再生セルロース繊維(例えばレーヨン)に見られるような水を取り込む繊維自体の内部領域は含まれない。一部の熱可塑性ポリマーは、本来的に小量の水を取り込むことから(例えばポリアミド)、水の取り込み率は10重量%未満、好ましくは5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満に制限される。本発明における吸収性は、繊維の親水性及び不織布の構造に起因するものであり、主として繊維の表面積、孔径、及び結合の交差によって決まる。毛管現象は、流体と繊維質基材との相互作用を述べるために使用される一般的現象である。毛管現象の性質は当該技術分野ではよく理解されており、「Nonwovens:Theory,Process,Performance and Testing」by Albin Turbak,Chapter 4に詳しく述べられている。
【0164】
本発明においてベース基材を形成するスパンレイドウェブは、1g/g(グラム/グラム)〜10g/g、より好ましくは2g/g〜8g/g、最も好ましくは3g/g〜7g/gの吸収取り込み率すなわち保持容量(C保持)を有する。この取り込み率の測定は、MD方向の長さが15cm、CD方向の幅が5cmである乾燥試料を秤量し(グラムで)、乾燥重量をm乾燥とし、試料を蒸留水に30秒間浸漬した後、水から試料を取り出し、これを10秒間垂直に(MD方向に)吊してから、試料を再び秤量し、湿潤重量をm湿潤とすることによって行われる。最終的な湿潤試料の重量(m湿潤)から乾燥試料の重量(m乾燥)を差し引いて、乾燥試料の重量(m乾燥)で割ることによって、試料の吸収性すなわち保持容量(C保持)が得られる。すなわち、
【数1】
構造化基材は同様の保持容量を有している。
【0165】
本発明におけるスパンレイドプロセスは、所望の坪量を有するスパンレイド不織布を製造するものである。坪量は、単位面積当たりの繊維/不織布の質量として定義される。本発明においては、ベース基材の坪量は、10g/m2〜200g/m2、好ましくは15g/m2〜100g/m2の範囲、より好ましくは18g/m2〜80g/m2、更により好ましくは25g/m2〜72g/m2の範囲である。最も好ましい範囲は30g/m2〜62g/m2である。
【0166】
多成分繊維の製造における第1の工程は、配合又は混合工程である。配合工程では、典型的には、剪断力の作用下で原材料を加熱する。組成が適切に選択されていれば、熱の存在下での剪断によって均質な溶融物が得られる。次いで溶融物を押出成形機に入れて繊維を形成する。まとまった量の繊維を、熱、圧力、化学結合剤、機械的交絡、及びこれらの組み合わせを用いて一体に結合すると、不織布が形成される。次いでこの不織布を改質し、ベース基材へと編組する。
【0167】
配合工程の目的は、均質な溶融組成物を製造することである。多成分ブレンドの場合では、この工程の目的は、熱可塑性ポリマー材料同士を溶融ブレンドすることであり、その際の混合温度は最も融点が高い熱可塑性成分よりも高い。必要に応じて用いられる成分を添加及び互いに混合してもよい。溶融組成物は均質であることが好ましいが、これは広範囲にわたって均一な分布が見られ、目立って異なる領域が認められないということを意味する。ポリ乳酸をポリプロピレンに加える場合や、熱可塑性デンプンをポリプロピレンに加える場合には、相溶化剤を加えることによって混和性の低い材料同士を混和することができる。
【0168】
二軸配合は当該技術分野では周知のものであり、ポリマーアロイを調製する目的、又はポリマーを必要に応じて用いられる材料と互いに適切に混合する目的で使用される。二軸押出成形機は一般的に、ポリマーの製造と繊維の紡糸工程との間で使用される独立したプロセスである。コストを低減するには、繊維の押出しが単軸押出成形機で開始されることによって、配合が繊維の製造と直接つながる。特定の形式の単軸押出成形機では、良好な混合及び混和がインラインで行われ得る。
【0169】
最も好ましい混合装置は、複数の注入点を有する複数混合領域型の二軸押出成形機である。二軸バッチ混合機又は単軸押出成形システムも使用することができる。充分な混合及び加熱がなされるかぎり、使用される特定の機器はさほど重要ではない。
【0170】
本発明では溶融紡糸法を用いる。溶融紡糸法では押出品における質量の損失がない。溶融紡糸法は、溶媒が押出品からの揮発又は拡散によって除去されるために質量の損失につながる、溶液からの湿式又は乾式紡糸法などの他の紡糸法とは区別される。
【0171】
紡糸は、120℃〜約350℃、好ましくは160℃〜約320℃、最も好ましくは190℃〜約300℃で生じる。繊維の紡糸速度は、100メートル/分よりも大きいことが求められる。好ましくは繊維の紡糸速度は、約1,000〜約10,000メートル/分であり、より好ましくは約2.000〜約7,000であり、最も好ましくは約2,500〜約5,000メートル/分である。単一繊維の試験及びベース基材又は構造化基材の熱安定性に基づけば、強度が高く熱的に安定した繊維を製造するためにはポリマー組成物を高速で紡糸しなければならない。
【0172】
均質な溶融組成物は、市販の溶融紡糸装置上で1要素又は多要素繊維に溶融紡糸することができる。装置は、多要素繊維の所望の形態に基づいて選択される。市販の溶融紡糸装置は、フロリダ州メルボルン所在のHills,Inc.より販売されている。繊維紡糸(1要素及び多要素)の傑出した情報源として、「Advanced Fiber Spinning Technology」by Nakajima from Woodhead Publishingがある。紡糸の温度は、約120℃〜約350℃の範囲である。加工温度は、各成分の化学的性質、分子量、及び濃度によって決められる。空気細径化技術の例は、Hill’s Inc、Neumag及びREICOFILによって販売されている。本発明に適した技術の一例としては、Reifenhauser REICOFIL 4スパンレイドプロセスがある。これらの技術は、不織布産業界においては周知のものである。
【0173】
流体処理
本発明の構造化基材は、流体を管理するために使用することができる。流体管理は、構造化基材の特性を制御することによる流体の意図的な運動として定義される。本発明においては、流体管理は2つの工程によって行われる。第1の工程は、繊維の形状、繊維のデニール、坪量、結合法、及び表面エネルギーによってベース基材の特性を設計することである。第2の工程では、繊維の変位によって生じる空隙の容積を設計する。
【0174】
吸収性物品
図23は、本発明の特定の実施形態に基づいたおむつ210の平面図である。おむつ210は、その広げられた非収縮(弾性による収縮がない)状態で示され、おむつ210の一部は、おむつ210の下層構造をより明瞭に示すために切り取られている。着用者と接触するおむつ210の部分は、図23において観察者の方を向いている。おむつ210は、一般的に、シャーシ212と、シャーシ内に配置される吸収性コア214とを有し得る。
【0175】
図23におけるおむつ210のシャーシ212は、おむつ210の本体を構成してもよい。シャーシ212は、液体透過性であってよいトップシート218、及び/又は液体不透過性であってよいバックシート220を含む外側カバー216を有し得る。吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に収容されてもよい。シャーシ212はまた、サイドパネル222、弾性レッグカフ224、及び弾性ウェスト機構226も有し得る。
【0176】
レッグカフ224及び弾性ウェスト機構226は、典型的には、それぞれ弾性部材228を有し得る。おむつ210の一方の端部は、おむつ210の第1のウェスト領域230として構成することができる。おむつ210の反対側の端部は、おむつ210の第2のウェスト領域232として構成することができる。おむつ210の中間部分は、第1のウェスト領域230と第2のウェスト領域232との間に長手方向に延びる股領域234として構成することができる。ウェスト領域230及び232は弾性要素を有することにより、着用者の腰部の周囲に寄り集まって高いフィット感及び密閉性をもたらすことができる(弾性ウェスト機構226)。股部領域34は、おむつ210の着用時に着用者の脚の間に概ね位置するおむつ210の部分である。
【0177】
おむつ210は、図23にその長手方向軸236及び横方向軸238とともに示されている。おむつ210の外周240はおむつ210の外縁部によって画定され、長手方向の縁部242がおむつ210の長手方向軸236にほぼ平行に延び、端縁部244がおむつ210の横方向軸238にほぼ平行に長手方向の縁部242の間に延びている。シャーシ212は、少なくとも1つの締結部材246及び少なくとも1つの保存ランディング領域248を含み得る締結システムを備えてもよい。
【0178】
おむつ220はまた、フィット感、密閉性、美的特徴を向上させるための前方及び後方イヤーパネル、ウェストキャップ機構、伸縮材などの当技術分野では既知の他の機構を含んでもよい。このような更なる機構は当該技術分野では周知のものであり、例えば米国特許第3,860,003号及び同第5,151,092号に述べられている。
【0179】
おむつ210を着用者の周囲の定位置に保持するため、第1のウェスト領域230の少なくとも一部を締結部材246により第2のウェスト領域232の少なくとも一部に取り付けることによって、脚部開口部及び物品の腰部を形成することができる。締結時には、締結システムが物品の腰部周辺の引っ張り荷重を支える。締結システムにより、物品の使用者は締結部材246のような締結システムの1つの要素を掴んで、第1のウェスト領域230を第2のウェスト領域232と少なくとも2箇所において連結することができる。これは、締結装置の要素間の結合強度を操作することによって実現することができる。
【0180】
特定の実施形態によれば、おむつ210は再閉鎖可能な締結システムを備えてもよく、あるいはパンツ型のおむつの形態で提供されてもよい。吸収性物品がおむつである場合、吸収性物品は、おむつを着用者に固定するためにシャーシに接合された再閉鎖可能な締結システムを含んでもよい。吸収性物品がパンツ型のおむつである場合、物品は、シャーシ及び互いに接合されてパンツを形成する少なくとも2つのサイドパネルを有してもよい。締結システム及びその任意の要素は、これらに限定されるものではないが、プラスチック、フィルム、発泡体、不織布、織布、紙、積層体、繊維強化プラスチックなど、又はこれらの組み合わせを含む、こうした用途に適した任意の材料を含み得る。特定の実施形態では、締結システムを構成する材料は可撓性のものであってよい。こうした可撓性により、締結システムを身体の形状に適合させることができるため、締結システムが着用者の皮膚を刺激したり傷つけたりする可能性を低減させることができる。
【0181】
一体型の吸収性物品の場合では、シャーシ212及び吸収性コア214がおむつ210の主構造を形成し、他の機構を加えることで複合おむつ構造を形成することができる。トップシート218、バックシート220、及び吸収性コア214は周知の様々な形態に組み立てることができるが、好ましいおむつの形態が、Roeらに付与された1996年9月10日発行の発明の名称が「Absorbent Article With Multiple Zone Structural Elastic−Like Film Web Extensible Waist Feature」である米国特許第5,554,145号、Buellらに付与された1996年10月29日発行の発明の名称が「Disposable Pull−On Pant」である米国特許第5,569,234号、並びにRoblesらに付与された1999年12月21日発行の発明の名称が「Absorbent Article With Multi−Directional Extensible Side Panels」である米国特許第6,004,306号に一般的に述べられている。
【0182】
図23のトップシート218は全体的又は部分的に伸縮性を持たせてもよく、又はトップシート218と吸収性コア214との間に隙間が形成されるように短縮させてもよい。伸縮性トップシート又は短縮させたトップシートを含む代表的な構造については、Allenらに付与された1991年8月6日発行の発明の名称が「Disposable Absorbent Article Having Elastically Extensible Topsheet」である米国特許第5,037,416号、及びFreelandらに付与された1993年12月14日発行の発明の名称が「Trisection Topsheets for Disposable Absorbent Articles and Disposable Absorbent Articles Having Such Trisection Topsheets」である米国特許第5,269,775号に更に詳細に述べられている。
【0183】
バックシート226は、トップシート218に接合されてもよい。バックシート220は、吸収性コア214により吸収されておむつ210内に封じ込められた排出物が、例えばベッドシーツ及び下着などのおむつ210と接触し得る他の外部の物品を汚すことを防止することができる。特定の実施形態では、バックシート226は、液体(例えば、尿)に対して実質的に不透過性であってもよく、不織布と約0.012mm(0.5ミル)〜約0.051mm(2.0ミル)の厚さを有する熱可塑性フィルムのような薄いプラスチックフィルムとの積層体で構成することができる。好適なバックシートフィルムとしては、インディアナ州テレホート所在のTredegar Industries Inc.の製造する、X15306、X10962、及びX10964の商品名で販売されるものが挙げられる。他の好適なバックシート材料としては、蒸気をおむつ210から逃がす一方で、液体排出物がバックシート210を通過することは防止する通気性材料を挙げることができる。代表的な通気性材料としては、織布ウェブ、不織布ウェブなどの材料、フィルムコートされた不織布ウェブなどの複合材料、並びに三井石油化学工業株式会社によりESPOIR NOの表記で製造されるもの、及びテキサス州ベイシティー所在のEXXON Chemical Co.によりEXXAIREの表記で製造されるものなどの微多孔質フィルムを挙げることができる。ポリマーブレンドを含む好適な通気性複合材料は、オハイオ州シンシナティ所在のClopay CorporationよりHYTRELブレンドP18−3097の名称で販売されている。こうした通気性複合材料については、E.I.DuPontの名義で1995年6月22日に公開された国際特許出願公開第WO 95/16746号により詳細に述べられている。不織布ウェブ及び孔あき成形フィルムなどの他の通気性バックシートについては、Dobrinらに付与された1996年11月5日発行の米国特許第5,571,096号に述べられている。
【0184】
図24は、図23の切断線2−2に沿って取った図23の断面を示す。おむつ210は、着用者に面した面から順に、トップシート218、吸収性コア214の各要素、及びバックシート220を含み得る。おむつ210は更に、液体透過性のトップシート218と、吸収性コア214の着用者に面した面との間に配される捕捉システム250を有し得る。捕捉システム250は、吸収性コアと直接接触し得る。
【0185】
捕捉システム250は本発明の繊維質ウェブを含んでいる。本発明においては、吸収性物品は全体として比較的薄いものであることが望ましい。これにより、必要とされる貯蔵容量が小さくなり、陳列用のスペースが小さくて済む。更に、より薄い吸収性物品は、多くの消費者により魅力的であることが分かっている。薄い吸収性物品を助長するには、捕捉システムもできるだけ薄くする必要がある。しかしながら、薄い材料ほど一時的な液体保持容量がしばしば小さくなる。薄いことに加えて、捕捉システムは、トップシート上の自由流体による吸収性物品の漏れを防ぐために流体を速やかに捕捉できるものである必要がある。本発明の捕捉システムは更に、物品の前方及び後方ウェスト領域に向かう液体の輸送を可能とするために高い吸い上げ性能を有する必要がある。これにより、吸収性コアによって構成された吸収性物品のより効率的な使用が可能である。更に、前方及び後方ウェスト領域に向かった液体の貯蔵性が高いことにより、濡れた場合においても股部における嵩が小さい吸収性物品が実現される。
【0186】
本発明の繊維質ウェブは、第2の表面がトップシートに面した状態で捕捉システムにおいて使用することができる。これらの実施形態では、第1の領域のトップシートに面した表面は、吸収性物品内に排出された液体を一時的に保持する機能を有する間隙容積を形成する。すなわち、繊維質ウェブ自体のみではなく、繊維質ウェブの表面の直ぐ上の領域も流体を保持するように機能する。第2の領域によって形成される、トップシートに面した不連続部は、トップシートと繊維質ウェブの第1の領域との間の間隔を維持するための隆起部として機能する。第2の領域によって形成される不連続部の自由端は、繊維質ウェブ内に比較的開放的な構造を形成し、液体が繊維質ウェブ内、更には繊維質ウェブの下の吸収性コア内へと、あるいは捕捉システムの更なる下層内へと(更なる捕捉システムの層を有する実施形態の場合)、容易かつ速やかに流入することが可能である。
【0187】
また、本発明の繊維質ウェブは、第1の表面がトップシートに面した状態で捕捉システムにおいて使用することもできる。これらの実施形態では、不連続部の内部の間隙容積は、流体を速やかに捕捉して一時的に保持する機能を有する。液体は、繊維質ウェブの他の領域へ、更に繊維質ウェブの下の吸収性コアへと、特に変位した繊維によって形成される自由端を通って広がってゆくことができる。
【0188】
大量の吸収性ポリマー材料を有する吸収性コアを備えた吸収性物品では、所定量のエアフェルトを有する吸収性コアと比較して初期の流体吸収は遅いことが多い。これらの吸収性物品では、捕捉システムが流体を捕捉して一時的に保持できることが特に重要である。更に、大量の吸収性ポリマー材料を有する吸収性コアは、典型的には、薄い吸収性物品の製造を可能とするものであり、こうした薄い吸収性物品は、本発明の薄い構造化繊維質ウェブを使用して捕捉システムによって更に支持される。
【0189】
捕捉システム250は、本発明の繊維質ウェブのみから構成されてもよい。しかしながら、繊維質ウェブは、繊維質ウェブが本明細書で述べる繊維の変位に供されるよりも前に積層体の異なる層が互いに積層された積層体であってもよい。
【0190】
また、捕捉システムは、着用者の皮膚に面する上側捕捉層252、及び着用者の下着に面する異なる下側捕捉層254として、本発明の繊維質ウェブを含んでもよい。特定の実施形態によれば、捕捉システム250は尿の放出などの大量の液体を受容する機能を有してもよい。別の言い方をすれば、捕捉システム250は、吸収性コア214が液体を吸収できるようになるまでの間、液体の一時的な貯留部として機能し得る。
【0191】
特定の実施形態では、捕捉システム250は、化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。このような架橋されたセルロース繊維は、所望の吸収特性を有し得る。代表的な化学的に架橋されたセルロース繊維については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態では、化学的に架橋されたセルロース繊維は、グルコース単位に基づいて約0.5モル%〜約10.0モル%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤、又は約1.5モル%〜約6.0モル%のC2〜C9ポリカルボン酸架橋剤により架橋される。クエン酸は代表的な架橋剤の1つである。他の実施形態では、ポリアクリル酸を使用することもできる。更に、特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は約25〜約60、又は約28〜約50、又は約30〜約45の保水値を有する。保水値を求めるための方法については、米国特許第5,137,537号に開示されている。特定の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、捲縮、撚糸、若しくはカールさせるか、又は捲縮、撚糸、及びカールさせることをを含むこれらの組み合わせを行うことができる。
【0192】
特定の実施形態では、下側捕捉層254は、親水性を有し得る不織布で構成するか、又はこれを含むことができる。更に、特定の実施形態によれば、下側捕捉システム254は化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよく、こうしたセルロース繊維は不織布材料の一部を形成してもしなくともよい。更に、一実施形態によれば、下部捕捉層254は、天然又は合成ポリマー繊維などの他の繊維と混合された化学的に架橋されたセルロース繊維を含んでもよい。代表的な実施形態によれば、このような他の天然又は合成ポリマー繊維としては、表面積の大きな繊維、熱可塑性結合繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、PET繊維、レーヨン繊維、リオセル繊維、及びこれらの混合物を挙げることができる。特定の実施形態によれば、下側捕捉層254は一定の総乾燥重量を有し、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約30重量%〜約95重量%の量で上側捕捉層中に存在し、他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約70重量%〜約5重量%の量で下側捕捉層254中に存在する。別の実施形態によれば、架橋されたセルロース繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約80重量%〜約90重量%の量で第1の捕捉層中に存在し、更に他の天然又は合成ポリマー繊維は、乾燥重量基準で下側捕捉層254の約20重量%〜約10重量%の量で下側捕捉層254中に存在する。
【0193】
特定の実施形態によれば、下側捕捉層254は高い流体取り込み性能を有することが望ましい。流体取り込み率は、吸収性材料の1グラム当たりの吸収された流体のグラム数として測定され、「最大取り込み率」の値によって表される。したがって流体取り込み率が高いほど材料容量は高くなり、これにより捕捉材料によって吸収されるべき流体が完全に捕捉されることから有益である。代表的な実施形態によれば、下側捕捉層254は、約10g/gの最大取り込み率を有する。
【0194】
注目すべき点として、本発明の繊維質ウェブは、吸収性物品の他の部分においても有用であり得る。例えば、上記に述べたような永久的な親水性を有する不織布を含んだトップシート及び吸収性コア層は、効果的に機能することが判明した。
【0195】
図23〜30の吸収性コア214は、トップシート218とバックシート220との間に概ね配置され、第1の吸収層260及び第2の吸収層262の2層を含む。図25に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第1の吸収層260は、基材264、基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266、及び吸収性粒子状ポリマー材料266上の熱可塑性組成物268からなり、第1の基材264の少なくとも部分が接着剤として、第1の基材264上の吸収性粒子状ポリマー材料266を覆って固定している。図26に示される別の実施形態によれば、吸収性コア214の第1の吸収層260はまた、熱可塑性組成物268上にカバー層270も含み得る。
【0196】
同様に図24に最も分かりやすく示されるように、吸収性コア214の第2の吸収層262はまた、基材272、第2の基材272上の吸収性粒子状ポリマー材料274、及び吸収性粒子状ポリマー材料274上の熱可塑性組成物266も含んでよく、第2の基材272の少なくとも部分が第2の基材272上に吸収性粒子状ポリマー材料274を固定している。図には示されていないが、第2の吸収層262もまた、図26に示されるカバー層270のようなカバー層を含み得る。
【0197】
第1の吸収層260の基材264はダスティング層と呼ぶことができるもので、おむつ210のバックシート220に面する第1の表面278と、吸収性粒子状ポリマー材料266に面する第2の表面280とを有している。同様に、第2の吸収層262の基材272はコアカバーと呼ぶことができるもので、おむつ210のトップシート218に面する第1の表面282と、吸収性粒子状ポリマー材料274に面する第2の表面284とを有している。第1の基材264及び第2の基材272は、外周に沿って接着剤で互いに接着されることによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を吸収性コア214内に保持するための封入要素を吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の周囲に形成することができる。
【0198】
特定の一実施形態によれば、第1の吸収層260及び第2の吸収層262の基材264及び272は、上記に述べた不織布材料のような不織布材料とすることができる。特定の実施形態では、不織布は多孔質であり、一実施形態では約32マイクロメートルの孔径を有する。
【0199】
図24〜30に示されるように、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの基材264及び272上に粒子のクラスター290として置かれることによって、ランド領域294とランド領域294の間の接合領域296とからなる格子パターン292を形成する。本明細書において定義するように、ランド領域294は、熱可塑性接着材料が不織布基材又は補助接着剤と直接接触していない領域であり、接合領域296は、熱可塑性接着材料が不織布基材又は補助接着剤と直接接触している領域である。格子パターン292の接合領域296は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274をほとんど又はまったく含んでいない。ランド領域94及び接合領域296は、これらに限定されるものではないが、円形、楕円形、正方形、長方形、三角形などの様々な形状を有し得る。
【0200】
図30に示される格子パターンは、ランド領域が規則的な間隔及びサイズを備えた正方形の格子である。六角形、菱形、斜方晶状、平行四辺形、三角形、長方形、及びこれらの組み合わせなどの他の格子パターンを使用することもできる。格子線間の間隔は、規則的であっても不規則的であってもよい。
【0201】
格子パターン292内のランド領域294のサイズは、異なり得る。特定の実施形態によれば、格子パターン292内のランド領域294の幅319は、約8mm〜約12mmの範囲である。特定の一実施形態では、ランド領域294の幅は約10mmである。これに対して接合領域296は、特定の実施形態において、約5mm未満、約3mm未満、約2mm未満、約1.5mm未満、約1mm未満、若しくは約0.5mm未満の幅又はこれよりも大きなスパンを有する。
【0202】
図30に示されるように、吸収性コア214は、後端部302から前端部304に延びる長手方向軸300と、長手方向軸300と直交する、第1の縁部308から第2の縁部310に延びる横方向軸306と、を有している。吸収性粒子状ポリマー材料のクラスター290の格子パターン292は、ランド領域294及び接合領域296の配列によって形成される格子パターン292がパターン角312をなすように、それぞれの吸収層260及び262の基材264及び272上に配列されている。パターン角312は、0.5°よりも大きいか、又は15〜30°、又は約5〜約85°、又は約10〜約60°、又は約15〜約30°であり得る。
【0203】
図29a、29b、及び30に最も分かりやすいように、第1の層260と第2の層262とを合わせることによって吸収性コア214を形成することができる。吸収性コア214は、パターン長さ116とパターン幅318とによって区切られた吸収性粒子状ポリマー材料領域314を有する。吸収性粒子状ポリマー材料領域314の大きさ及び形状は、吸収性コア214及び吸収性コア214を組み込むことができる特定の吸収性物品の所望の用途に応じて異なり得る。しかしながら、特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料領域314は、図30に示されるように、吸収性コア214のほぼ全体にわたって延びる。
【0204】
第1の吸収層262及び第2の吸収層264のそれぞれの格子パターン292が、吸収性コア214の長さ及び/又は幅に沿って互いからずれるように、第1の吸収層260と第2の吸収層262とを合わせることによって、吸収性コア214を形成することができる。それぞれの格子パターン292は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が、吸収性粒子状ポリマー領域314にわたってほぼ連続的に分配されるようにずらすことができる。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は、個々の格子パターン292が、第1の基材264及び第2の基材272にわたってクラスター290に不連続的に分配された吸収性粒子状ポリマー材料266及び274からなる場合であっても、吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたってほぼ連続的に分配される。特定の一実施形態では、格子パターンは、第1の吸収層260のランド領域294が第2の吸収層262の接合領域296と対向し、第2の吸収層262のランド領域が第1の吸収層260の接合領域296と対向するようにずらすことができる。ランド領域294及び接合領域296が適切なサイズ及び配列である場合、得られる吸収性粒子状ポリマー材料266と274との組み合わせは、吸収性コア214の吸収性粒子状ポリマー材料領域314にわたった吸収性粒子状ポリマー材料のほぼ連続的な層となる(すなわち、第1の基材264及び第2の基材272は、それらの間に吸収性粒子状ポリマー材料266のクラスター290が含まれる複数のポケットを形成しない)。特定の一実施形態では、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの格子パターン292は、ほぼ同じである。
【0205】
図30に示されるような特定の一実施形態においては、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、格子パターン292の長さ316に沿って変化し得る。特定の一実施形態では、格子パターンを吸収材領域320、322、324、及び326に分割し、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量が各領域毎に異なるようにしてもよい。本明細書で使用するところの「吸収材領域」とは、図30に示される長手方向軸と直交する境界線を有する吸収性粒子状ポリマー材料領域の領域のことを指す。特定の一実施形態では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は、複数の吸収材領域320、322、324、及び326の1つから別の吸収材領域へと徐々に変化する。吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量がこのように徐々に変化することにより、吸収性コア214にひび割れが生じる可能性が低減され得る。
【0206】
吸収性コア214内に存在する吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の量は異なり得るが、特定の実施形態においては、吸収性コアの約80重量%よりも多い、又は吸収性コアの約85重量%よりも多い、又は吸収性コアの約90重量%よりも多い、又はコアの約95重量%よりも多い量で吸収性コア内に存在する。特定の一実施形態では、吸収性コア214は、第1の基材264及び第2の基材272、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274、並びに熱可塑性接着剤組成物268及び276によって基本的に構成される。一実施形態では、吸収性コア214は、実質的にセルロースを含まなくてもよい。
【0207】
特定の実施形態によれば、1cm×1cmの大きさの少なくとも1個の自由に選択された第1の正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重さは、1cm×1cmの大きさの少なくとも1個の自由に選択された第2の正方形内の吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の重さよりも少なくとも10%、又は20%、又は30%、40%又は50%大きくてよい。特定の一実施形態では、第1及び第2の正方形は、長手方向軸を中心とする。
【0208】
代表的な一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、着心地を高めるために吸収性物品の股部において比較的狭い幅を有してもよい。すなわち、一実施形態によれば、吸収性粒子状ポリマー材料領域は、吸収性物品の前縁部及び後縁部に対して等距離に位置する横線に沿って測定した幅が、約100mm、90mm、80mm、70mm、60mm未満又は更には約50mm未満でよい。
【0209】
おむつなどの多くの吸収性物品では、液体の放出は主としておむつの前半分において起きることが分かっている。したがって、吸収性コア214の前半分が、コアの吸収容量の大部分を含む必要がある。このため、特定の実施形態よれば、前記吸収性コア214の前半分が、超吸収性材料の約60%よりも多く、又は超吸収性材料の約65%、70%、75%、80%、85%、又は90%よりも多くを含むことができる。
【0210】
特定の実施形態では、吸収性コア214は、一般的に圧縮可能で、柔軟性があり、着用者の皮膚に対して刺激を与えない、尿及び他の特定の身体排出物などの液体を吸収及び保持することが可能な任意の吸収性材料を更に含み得る。こうした実施形態では、吸収性コア214は、エアフェルトと一般に呼ばれる粉砕木材パルプ、縮みセルロース詰め物、コフォームを含むメルトブローンポリマー、化学的に剛化、改質若しくは架橋されたセルロース繊維、ティッシュラップ及びティッシュラミネートを含むティッシュ、吸収性発泡体、吸収性スポンジ、又は他の任意の既知の吸収性材料若しくは材料の組み合わせなど、使い捨ておむつ及び他の吸収性物品に一般的に使用される広範な液体吸収性材料を含み得る。吸収性コア214は、接着剤、ワックス、オイルなどの小量(典型的には約10%未満)の物質を更に含んでもよい。
【0211】
吸収性アセンブリとして使用するための代表的な吸収性構造体については、米国特許第4,610,678号(Weismanら)、同第4,834,735号(Alemanyら)、同第4,888,231号(Angstadt)、同第5,260,345号(DesMaraisら)、同第5,387,207号(Dyerら)、同第5,397,316号(LaVonら)、及び同第5,625,222号(DesMaraisら)に述べられている。
【0212】
熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆って少なくとも部分的に固定するのに役立つことができる。本発明の一実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274内においてポリマー間に基本的に均一に配置することができる。しかしながら、特定の一実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と少なくとも部分的に接触し、更に第1の吸収層260及び第2の吸収層262の基材層264及び272と部分的に接触する繊維層として準備され得る。図25、26、及び29はこうした構造を示しており、この構造では、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274は不連続層として準備され、繊維質の熱可塑性接着材料268及び276の層が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の層上に置かれていることによって、熱可塑性接着材料268及び276は吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と直接接触し、更に、基材264及び272の第2の表面280及び284の、基材が吸収性粒子状ポリマー材料266及び274によって覆われていない部分とも直接接触している。これにより、熱可塑性接着材料268及び276の繊維層に基本的な3次元構造が与えられるが、この構造自体は、長さ及び幅方向の寸法と比較すれば基本的に比較的厚みの小さい2次元的構造である。別の言い方をすれば、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料268及び276と、基材264及び272の第2の表面との間で波形の構造となっている。
【0213】
これにより、熱可塑性接着材料268及び276は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を覆う空洞を与えることによって、この材料を固定することができる。更なる一態様では、熱可塑性接着材料268及び276は基材264及び272と結合することによって、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を基材264及び272に対して付着させる。したがって特定の実施形態によれば、熱可塑性接着材料268及び276が湿潤状態にある場合に吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定することによって、吸収性コア214は、2008年6月13日に出願された国際特許出願公開第WO2008/155699(A1)号に述べられる湿潤固定化試験に従って、約70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%以下の吸収性粒子状ポリマー材料の損失率を実現する。特定の熱可塑性接着材料はまた、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに基材264及び272の両方に浸透することによって、更なる固定及び付着効果をもたらす。無論、本明細書において開示する熱可塑性接着材料は大幅に向上した湿潤固定性(すなわち、物品が濡れているか少なくとも部分的に充填されている場合の吸収性材料の固定性)を与えるものであるが、これら熱可塑性接着材料は吸収性コア214が乾燥している場合にもまた吸収性材料の極めて優れた固定性を与え得るものである。熱可塑性接着材料268及び276はまた、ホットメルト接着剤と呼ばれる場合もある。
【0214】
理論によって束縛されるものではないが、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定するうえで最も有用なこれらの熱可塑性接着材料は、優れた凝集挙動及び優れた粘着挙動を兼ね備えたものであることが判明している。優れた粘着性は、熱可塑性接着材料268及び276と、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274と、基材264及び272との間の良好な接触を促し得るものである。優れた凝集性は、特に外力、すなわち歪みに応じて接着剤が破断する可能性を低減するものである。吸収性コア214が液体を吸収すると、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274が膨潤して、熱可塑性接着材料268及び276に外力が作用する。特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は、破断することなく、また吸収性粒子状ポリマー材料266及び274の膨潤を制限する過剰な圧縮力を付与することなく、このような膨潤を許容し得るものである。
【0215】
特定の実施形態によれば、熱可塑性接着材料268及び276は、ASTM試験方法D−36−95「環状体及び球体(Ring and Ball)」によって測定した軟化点が50℃〜300℃の範囲である単一の熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドからその全体がなるものでもよく、あるいは、熱可塑性接着材料は、粘着性付与樹脂などの他の熱可塑性希釈剤、可塑剤及び酸化防止剤などの添加剤と組み合わせて、少なくとも1種類の熱可塑性ポリマーを含む、ホットメルト接着剤であってもよい。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは、典型的には、10,000よりも大きい分子量(Mw)、及び通常室温よりも低いか又は−6℃>Tg<16℃であるガラス転移温度(Tg)を有する。特定の実施形態では、ホットメルト中のポリマーの典型的な濃度は、約20〜約40重量%の範囲である。特定の実施形態では、熱可塑性ポリマーは水と非反応性であり得る。代表的なポリマーは、Aブロックが典型的にはポリスチレンを含む非弾性ポリマーブロックであり、Bブロックが不飽和共役ジエン又はその(部分)水素添加物であるものとして、A−B−Aトリブロック構造、A−Bジブロック構造及び(A−B)nラジアルブロックコポリマー構造を含む(スチレン性)ブロックコポリマーである。Bブロックは、典型的には、イソプレン、ブタジエン、エチレン/ブチレン(水素添加ブタジエン)、エチレン/プロピレン(水素添加イソプレン)、及びこれらの混合物である。
【0216】
使用することが可能な他の好適な熱可塑性ポリマーは、シングルサイト又はメタロセン触媒を使用して調製されたエチレンポリマーであるメタロセンポリオレフィンである。ここで、少なくとも1種類のコモノマーをエチレンと重合させてコポリマー、ターポリマー又はこれよりも高次のポリマーとすることができる。やはり使用可能なものとして、非晶質ポリオレフィン、又はC2〜C8のαオレフィンのホモポリマー、コポリマー又はターポリマーである非晶質ポリアルファオレフィン(APAO)がある。
【0217】
代表的な実施形態では、粘着性付与樹脂は、典型的には、5,000未満のMw、及び通常、室温よりも高いTgを有し、ホットメルト中の樹脂の典型的な濃度は約30〜約60%の範囲であり、可塑剤は典型的には1,000未満の低い分子量(Mw)及び室温よりも低いTgを有し、典型的な濃度は約0〜約15%である。
【0218】
特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は繊維の形態で存在する。特定の実施形態では、この繊維は約1〜約50マイクロメートル又は約1〜約35マイクロメートルの平均厚さ、及び約約5mm〜約50mm又は約5mm〜約30mmの平均長さを有する。基材264及び272又は他の任意の層、特に他の任意の不織布層に対する熱可塑性接着材料268及び276の接着性を高めるには、こうした層を補助的接着剤で前処理することができる。
【0219】
特定の実施形態では、熱可塑性接着材料268及び276は以下のパラメータの少なくとも1つ、又は幾つか、又はすべてを満たすものである:
代表的な熱可塑性接着材料268及び276は、20℃で測定した貯蔵弾性率G’が少なくとも30,000Paかつ300,000Pa未満、又は200,000Pa未満、又は140,000Pa〜200,000、又は100,000Pa未満であってよい。更なる一態様では、35℃で測定した貯蔵弾性率G’が、80,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、60℃で測定した貯蔵弾性率G’が、300,000Pa未満でかつ18,000Paよりも大きいか、又は24,000Paより大きいか、又は30,000Paよりも大きいか、又は90,000Paよりも大きくてもよい。更なる一態様では、90℃で測定した貯蔵弾性率G’が、200,000Pa未満でかつ10,000Paよりも大きいか、又は20,000Paよりも大きいか、又は30,000Paよりも大きくてもよい。60℃及び90℃で測定した貯蔵弾性率は、高い周囲温度における熱可塑性接着材料の形状安定性の目安となり得る。この値は、60℃及び90℃における貯蔵弾性率G’が充分に高くなければ、熱可塑性接着材料がその一体性を失ってしまうような高温の気候において吸収性製品が使用される場合に特に重要である。
【0220】
G’は、米国特許出願公開第2008/0312617(A1)号に述べられるレオメーターyを使用して測定される。このレオメーターは、接着剤に剪断応力を加え、生ずる歪み(剪断変形)応答を一定温度において測定することが可能である。接着剤は、下側の固定プレートとして機能するペルチエ素子と、剪断応力を発生させるようにモータの駆動軸に連結された、例えば10mmの半径Rを有する上側プレートとの間に置かれる。両プレート間の間隙は、例えば高さ1500マイクロメートルである。ペルチエ素子によって材料の温度制御が可能である(+0.5℃)。歪み速度及び周波数は、すべての測定が直線的な粘弾性領域において行われるように選択する必要がある。
【0221】
吸収性コア214は、図に示されていない補助的な接着剤を更に含んでもよい。補助的な接着剤は、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274並びに熱可塑性接着材料268及び276のそれぞれの基材264及び272に対する接着性を高めるために、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を塗布するのに先立って、第1の吸収層260及び第2の吸収層262のそれぞれの第1の基材264及び第2の基材272上に置くことができる。補助接着剤はまた、吸収性粒子状ポリマー材料266及び274を固定する助けともなり、上記に述べたものと同様の熱可塑性接着材料を含むか、あるいはこれに限定されないが、H.B.Fuller製(ミネソタ州セントポール)の製品番号HL−1620−Bなどのスプレー式ホットメルト接着剤などの他の接着剤を含んでもよい。補助接着剤は、任意の適当な手段によって基材264及び272に塗布することができるが、特定の実施形態によれば、約0.5〜約2mmの間隔を置いた幅約0.5〜約1mmの溝内に塗布することができる。
【0222】
図26に示されるカバー層270は、基材264及び272と同じ材料からなるものでも、異なる材料からなるものでもよい。特定の実施形態では、カバー層270に適した材料は不織布であり、典型的には基材264及び272において有用であるものとして上記に述べたような材料である。
【0223】
以下のベース基材は、Hills Inc.において幅0.5mのスパンボンドライン上で製造された。詳細は各実施例において述べる。実施例1、2、4及び7において製造された材料の測定された特性を下記に掲げる表に示す。
【実施例】
【0224】
実施例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。本実施例及び後に続く実施例では異なる距離を使用することができるが、ここに示した距離によって最良の結果が得られた。関連するプロセスの残りのデータを表1〜3に示す。
【0225】
比較例1:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0226】
実施例2:100重量%のEastman F61HC PETからなるスパンボンド布地を製造した。スパンボンド布地は、丸い端点を有する長さ1.125mm及び幅0.15mmの明確な3葉形の紡糸口金を使用して製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表1〜3に示す。
【0227】
実施例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。半径0.18mmの丸い端点を有する、長さ0.55mm及び幅0.127mmの標準的な3葉形の紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表4〜6に示す。
【0228】
比較例2:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。半径0.18mmの丸い端点を有する、長さ0.55mm及び幅0.127mmの標準的な3葉形の紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。水圧の直径に対する長さの比は2.2:1であった。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0229】
実施例4:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 9921 coPETからなるスパンボンド布地を製造した。毛管出口直径が0.35mm、直径に対する長さの比が4:1である中実の丸い紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。関連するプロセスの残りのデータを表7〜9に示す。
【0230】
比較例3:90重量%のEastman F61HC PET樹脂及び10重量%のEastman 20110からなるスパンボンド布地を製造した。毛管出口直径が0.35mm、直径に対する長さの比が4:1である中実の丸い紡糸口金を使用してスパンボンド布地を製造した。スピンパックは250本の毛管を有し、そのうち25本がcoPET樹脂を押し出し、225本がPET樹脂を押し出した。使用したビーム温度は285℃であった。紡糸距離は83.8cm(33インチ)とし、形成距離は86.4cm(34インチ)とした。このポリマーの組み合わせを用いて熱的に安定したスパンボンド不織布を製造することは困難であった。coPET繊維は熱的に安定ではなく、100℃よりも高い温度に加熱すると繊維構造全体が収縮した。MD方向の繊維の収縮率は20%であった。
【0231】
試料の種類:以下の情報は、下記に掲げるデータの表中の実施例を識別するために使用される試料の種類の命名法を規定するものである。
【0232】
●最初の数字は試料が製造された実施例の番号を示す。
【0233】
●数字の後に続く文字は、大まかに述べた実施例の説明において、異なる条件下で製造された試料を指定するためのものである。この文字と数字の組み合わせによってベース基材の製造を指定する。
【0234】
●文字の後に続く数字は、本特許において述べる構造化基材の製造を指定する。異なる数字は、構造化基材を製造するために使用される条件を示す。
【0235】
本発明には、ベース基材及び構造化基材の試料を、カーディングした樹脂結合試料に対して比較するための2種類の参照資料が含まれる。
【0236】
●43g/m2−30%のスチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。繊維混合物は、それぞれ6デニールの中実円形PET繊維と9デニールの中実円形PET繊維の40:60混合物を含む。
【0237】
●60g/m2−30%の(カルボキシル化)スチレンブタジエンラテックス結合剤と70%の繊維混合物とからなるもの。繊維混合物は、それぞれ6デニールの中実円形PET繊維と9デニールの中空螺旋形PET繊維(25〜40%が中空)の50:50混合物を含む。
【0238】
開示される方法のいずれかにおいて予め試料をエイジングするか、製品から取り除く場合、試料は一切の試験プロトコルに先立って圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管しなければならない。このエイジング後の試料を「製造時の」と呼ぶものとする。
【0239】
本発明における特性の定義及び試験方法:特性表における性質の試験方法を下記に記載する。特に断らないかぎり、試験はすべて、約23±2℃及び相対湿度50±2%で行われる。特に明確に断らないかぎり、使用した特定の合成尿は、脱イオン水で作られた0.9重量%の生理食塩水(NaCl)によって作られている。
【0240】
●質量スループット:穴1個当たりの毎分のグラム数(GHM)として測定される、毛管1本当たりのポリマー流速を測定するものであり、ポリマー溶融物の密度、1回転当たりのポリマー溶融物のポンプ吐き出し量、及び溶融物ポンプによって供給される毛管の数に基づいて計算される。
【0241】
●形状:実施例の表記名において記載する毛管の幾何形状に基づいて繊維の形状を指定する。
【0242】
●坪量の実測値:好ましい坪量は、少なくとも10個の7500mm2(幅50mm×長さ150mmの試料サイズ)の試料部分をランダムに試料から切り出して、各試料部分を±1mgの範囲内で秤量した後、秤量した試料の合計数により質量の平均を求めることによって測定される。坪量の単位は、1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)である。7500mm2平方の部分を坪量の測定に使用することができない場合には、試料サイズを2000mm2(例えば100mm×20mmの試料サイズ又は50mm×40mmの試料サイズ)にまで小さくしてもよいが、試料の数は少なくとも20個の測定値にまで増やす必要がある。坪量の実測値は、平均質量を試料面積で割り、単位が1平方メートル当たりのグラム数であることを確認することによって求められる。
【0243】
●布地の厚さ:厚さはキャリパーとも呼ばれ、これら2つの語は互換可能に使用される。布地の厚さ及び新鮮キャリパーとは、一切のエイジング条件のないキャリパーのことを指す。製造時のキャリパーの試験条件は、0.5kPaで測定し、少なくとも5つの測定値の平均を求める。一般的な試験装置は、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。各測定において滞留時間は2秒である。試料は、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管しなければならず、その後、布地の厚さ測定に供される。改質前にベース基材の測定を行うことが好ましいが、この材料が利用可能でない場合には代替的な方法を使用することができる。構造化基材の場合では、第2の領域(変位した繊維の領域)間の第1の領域の厚さは、電子厚さ計(例えばMcMaster−CarrのカタログよりMitutoyo No 547−500として入手可能なもの)を使用して求めることができる。これらの電子厚さ計は、極めて小さな領域を測定するために交換された先端部を有するものでよい。これらの装置は、測定を行うために予め負荷がかけられたバネを有し、これはブランド毎に異なる。例えば、長さ6.6mm及び幅1mmのブレード形の先端部を使用することができる。直径1.5mmよりも小さい領域を測定する平坦で丸い先端部を挿入することもできる。構造化基材上で測定を行うためには、製造時の布地の厚さを測定するためにこれらの先端部を構造化基材の間に挿入する必要がある。この測定法において使用する圧力は、この方法を用いて慎重に制御することはできず、加えられる圧力は一般的に0.5kPaよりも高い。
【0244】
●エイジング処理キャリパー:これは、40℃かつ35kPaの圧力下で15時間エイジングした後、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間弛緩させた後の試料のキャリパーのことを指す。これはキャリパー回復と呼ぶこともできる。エイジングされたキャリパーは2.1kPaの圧力下で測定される。一般的な試験装置は、Thwing Albert ProGageシステムである。脚部の直径は50mm〜60mmである。各測定において滞留時間は2秒である。試料はすべて、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管した後、エイジング処理キャリパー試験に供する。
【0245】
●Mod比:「Mod比」すなわち改変比は、非円形繊維の更なる表面積形状を補償するために使用される。改変比は、繊維の最も長い軸に対して垂直な断面における最も長い連続した直線距離を測定し、その距離の50%における繊維の幅で割ることによって求められる。特定の複雑な繊維形状では、改変比を容易に求めることは困難な場合がある。図19a〜19cは、成形繊維の形態の例を示す。「A」により示されるのは長軸方向の寸法であり、「B」により示されるのは幅方向の寸法である。比は、長い方の寸法を短い方の寸法で割ることによって求められる。これらの単位は顕微鏡によって直接測定される。
【0246】
●デニールの実測値:デニールの実測値は、特定の実施例の繊維の測定されたデニールである。デニールは、直線的な長さが9000メートルの繊維の質量をグラム数で表したものとして定義される。したがって、異なるポリマーの繊維を比較する際には、dpf(デニール/フィラメント)として表される繊維の固有密度もまたデニールを計算するうえで考慮されるため、2dpfのPP繊維と2dpfのPET繊維とは異なる繊維直径を有することになる。ポリプロピレンにおける直径に対するデニールの関係の一例として、約0.900g/cm3の密度を有する中実、円形のポリプロピレンの1dpfの繊維は約12.55マイクロメートルの直径を有する。本発明におけるPET繊維の密度は、デニールの計算においては1.4g/cm3(グラム/立方センチメートル)とされる。当業者にとって、中実円形繊維の直径をPP及びPET繊維のデニールに換算することは日常的なことである。
【0247】
●等価な中実円形繊維の直径:等価な中実円形繊維の直径は、非円形又は中空成形繊維の繊維特性の測定値として繊維の弾性率を計算するために使用される。等価な中実円形繊維の直径は、繊維のデニールの実測値から求められる。非円形繊維のデニールの実測値は、繊維のデニールの実測値を測定し、繊維が中実円形であったと仮定してフィラメントの直径を計算することによって等価な中実円形繊維の直径に変換される。この変換は、非円形繊維の断面について1本の繊維の弾性率を求めるうえで重要である。
【0248】
●不織布の引っ張り特性:ベース基材及び構造化基材の引っ張り特性は、すべて同様にして測定した。ゲージ幅は50mm、ゲージ長さは100mm、及び伸長速度は100mm/分である。報告される値は、特に断らないかぎり、強度及びピーク伸長率についてのものである。MD方向及びCD方向の特性については別々の測定を行った。一般的な単位は、ニュートン(N)/センチメートル(N/cm)である。示される値は少なくとも5つの測定値の平均である。必然的荷重(perforce load)は0.2Nである。試料は、圧縮せずに23±2℃及び相対湿度50±2%で24時間保管し、その後、23±2℃及び相対湿度50±2%で試験しなければならない。本明細書において報告される引っ張り強度は、応力歪み曲線におけるピーク引っ張り強度である。引っ張りピークにおける伸長率とは、引っ張りピークが記録される伸長率(%)である。
【0249】
●MD/CD比:これはMD方向の引っ張り強度をCD方向の引っ張り強度で割ったものとして定義される。MD/CD比は、不織布繊維質基材中の相対的な繊維の配向を比較するために使用される方法である。
【0250】
●繊維周長:これは顕微鏡により直接測定したものであり、マイクロメートルで表した不織布中の典型的な繊維の周長である。示される値は少なくとも5つの測定値の平均である。
【0251】
●不透明度:不透明度はベース基材を通過する光の相対量の尺度である。固有の不透明度は、測定される特定の位置に存在する繊維の数、径、種類及び形状に特に依存する。本発明では、ベース基材の不透明度は、好ましくは5%よりも大きく、より好ましくは10%よりも大きく、より好ましくは20%よりも大きく、更により好ましくは30%よりも大きく、最も好ましくは40%よりも大きい。不透明度は、TAPPI試験法T 425 om−01「紙の不透明度(Opacity of Paper)(15/d形態、照射角度A/2°、反射率89%の裏材及び紙裏材)」を用いて測定される。不透明度はパーセントで測定される。
【0252】
●ベース基材の密度:ベース基材密度は、試料の坪量の実測値を試料のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
【0253】
●ベース基材の比容積:ベース基材の比容積は、立方センチメートル/グラムの単位で表される、ベース基材密度の逆数である。
【0254】
●ライン速度:ライン速度は、試料が製造される直線的な機械方向の速度である。
【0255】
●結合温度:結合温度は、スパンボンド試料が一体に結合される温度である。結合温度には2つの温度が含まれる。第1の温度は彫刻又はパターン形成されたロールの温度であり、第2の温度は平滑ロールの温度である。特に断らないかぎり、結合領域は18%であり、カレンダー線圧は71.4kg/cm(400ポンド/直線インチ)であった。
【0256】
●本発明の試料への界面活性剤の添加:これは、ベース基材及び構造化基材に親水性を付与する目的でこれらを処理するために使用される物質のことを指す。本発明では、すべての試料に対して同じ界面活性剤を使用した。この界面活性剤は、コード番号DP−988AのProcter & Gamble開発グレード材料である。この物質はポリエステルポリエーテルコポリマーである。Clariantより販売される商業グレードの防汚ポリマー(SRP)(TexCare SRN−240及びTexCare SRN−170)もまた使用したところ、効果的に機能することが判明した。基本的な手順は以下のとおりである。
【0257】
○5ガロン(18.9L)のバケツ中で、200mLの界面活性剤を80℃の15Lの水道水と混合する。
【0258】
○コーティングしようとする試料を、希釈した界面活性剤のバケツに5分間入れる。各試料は公称幅100mm及び長さ300mmである。最大で9個の試料を一度にバケツに入れ、試料を最初の10秒間揺動する。同じバケツを最大で50個の試料に使用することができる。
【0259】
○次いで各試料を取り出し、1つの角を持ってバケツの上に垂直に保持し、残留した水を5〜10秒間バケツに切る。
【0260】
○試料をすすぎ、水道水の入ったきれいなバケツに少なくとも2分間浸漬する。最大で9個の試料を一度にバケツに入れ、試料を最初の10秒間揺動する。すすぎ用のバケツは9個の試料1組の終了後に交換する。
【0261】
○試料を乾燥状態となるまで強制空気オーブン中で80℃で乾燥させる。一般的な時間は2〜3分間である。
【0262】
●保持容量:保持容量の測定には界面活性剤でコーティングした試料を用い、材料の流体取り込み率を測定する。200mm×100mmの試料を20℃で水道水に1分間浸漬してから取り出す。試料は、取り出す際に1つの角を持って10秒間保持してから秤量する。最終的な重量を最初の重量で割ることによって保持容量を計算する。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で保持容量を測定する。これらの試料には、試験に先立って圧縮エイジングを行わない。この試験では異なる試料のサイズを使用することができる。使用することが可能な代替的な試料のサイズは、100mm×50mm又は150mm×75mmである。計算方法は選択される試料のサイズによらず同じである。
【0263】
●吸い上げ拡散面積:吸い上げ拡散はMD方向とCD方向の拡散に分けられる。界面活性剤で処理した試料を少なくとも長さ30cm及び幅20cmに切断する。処理しない試料は流体を一切吸い上げない。1個が試料の中央に位置し、2個が両側に位置する一連のペトリ皿(直径10cm及び深さ1cm)の上に試料を置く。次に20mlの蒸留水を毎秒5mLの速度で試料の上に注ぐ。不織布の彫刻ロール側を流体が注がれる方向に面するように上にする。流体が吸い上げられる距離を1分後にMD方向及びCD方向で測定する。必要に応じて蒸留水に着色することができる(Merck、インジゴカルミン、c.i.73015)。色素は蒸留水の表面張力を変化させてはならない。各材料につき少なくとも3回測定を行わなければならない。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で吸い上げ拡散性を測定する。これらの試料には、試験に先立って圧縮エイジングを行わない。長さ30cm及び幅20cmよりも小さい試料のサイズを使用する場合、試料は最初に試験を行って、1分以内に吸い上げが材料の縁にまで拡散するか否かを判定する必要がある。MD方向又はCD方向への吸い上げ拡散が1分以内に試料の幅よりも大きくなる場合には、MD方向の水平吸い上げ試験高さの方法を使用しなければならない。毎回の測定につき、各ペトリ皿の中身を空け、洗浄する。
【0264】
●MD方向の水平輸送:
【表1】
【0265】
試薬
●疑似尿:0.9%生理食塩水(9.0g/lの分析グレードの塩化ナトリウムを脱イオン水に加え、青色色素(例えばMerck、インジゴカルミン、c.i.73015)で着色した、23±2℃の表面張力が70±2N/mのもの)を調製する。
【0266】
設備
調整室......温度....摂氏23℃(±2℃)
相対湿度..50%(±2%)
【0267】
手順
1.)試料を機械方向に幅70±1mm×長さ300±1mmに切断する。
【0268】
2.)試料の重量(w1)を最も近い0.01gの値で測定して報告する。
【0269】
3.)トレーの上側の縁に赤ちゃん側(構造化基材を測定する場合にはテクスチャ加工側、又はベース基材を測定する場合には彫刻ロール側)が上になるようにして幅全体にわたって試料をクランプ留めする。この時点で、材料はトレーの底の上に自由に動けるように吊られた状態となる。
【0270】
4.)バルブを備えた250mLガラス漏斗の出口を、試料上で機械方向及び横断方向の中心で試料の上方25.4±3mmとなるように調節する。
【0271】
5.)疑似尿を調製する。
【0272】
6.)漏斗のバルブを閉じた状態で、ピペット又はビュレットを用いて5.0mLの疑似尿(4.)を漏斗内に加える。
【0273】
7.)漏斗のバルブを開いて5.0mLの疑似尿を放出する。
【0274】
8.)30秒間待つ(ストップウォッチを使用)。
【0275】
9.)最大のMD方向の分布を測定する。最も近いセンチメートルの値で報告する。
【0276】
●垂直吸い上げ高さ:少なくとも長さ20cm及び幅5cmの好ましいサイズの試料を、大量の蒸留水の上に垂直に保持することによって垂直吸い上げ試験を行う。試料の下端を液面下少なくとも1cmにまで水に漬ける。5分間で流体が昇った最も高い点を記録する。特に断らないかぎり、製造時の布地厚さ試験において測定した条件と一致する製造時の布地試料で垂直吸い上げ性を測定する。他の試料サイズを使用することもできるが、構造化基材で行った場合には試料の幅が測定値に影響し得る。最小の試料の幅は幅2cm、最小の長さは10cmとしなければならない。
【0277】
●熱安定性:ベース基材又は構造化基材不織布の熱安定性は、MD方向に10cm×CD方向に少なくとも2cmの試料が沸騰水中で5分間にどれくらい収縮するかに基づいて評価を行う。熱的に安定であるとみなされるためには、ベース基材の収縮率は10%未満でなければならず、あるいは機械方向の最終的な寸法が9cmよりも大きくなければならない。試料の収縮率が10%よりも大きい場合には、試料は熱的に安定ではない。10cm×2cmの試料サイズに切り出し、MD方向の正確な長さを測定し、沸騰水の中に試料を5分間入れることによって、測定された。試料を取り出し、MD方向の長さを再び測定する。本発明で試験した試料のすべては、比較例において最も高い収縮率を示した試料でさえも、沸騰水中での時間後に平坦な状態に保たれた。理論によって束縛されるものではないが、不織布の熱安定性は構成成分の繊維の熱安定性に依存している。不織布を構成する繊維が収縮する場合に不織布も収縮する。したがって、ここでの熱安定性の測定によって繊維の熱安定性も実証される。不織布の熱安定性は本発明において重要である。本発明において好ましい10%を大幅に上回る顕著な収縮率を示す試料では、沸騰水中で試料が束になったり、あるいは丸まってしまう場合がある。これらの試料では、20gの重りを試料の下部に取り付けて長さを測定することができる。20gの重りは、金属のバインダークリップ又は下部に取り付けることが可能でなおかつ長さの測定を可能とするような他の任意の好適な重りであってよい。
【0278】
●FDT:FDTは繊維変位技術(Fiber Displacement Technology)の略であり、変位した繊維を有する構造化基材を形成するためのベース基材の機械的処理のことを指す。ベース基材が任意の種類の繊維の変形又は再配置によって改変される場合に、ベース基材にFDTが行われたことになる。平坦なローラーに不織布を通過させたり、又は折り曲げたりといった単純な操作はFDTではない。FDTとは、Z方向の平面内に繊維を意図的に移動させるための集中的な機械的又は流体力学的力による繊維の意図的な移動のことを指す。
【0279】
●歪み深さ:FDTプロセスにおいて使用される機械的歪み距離。
【0280】
●過剰熱結合:熱及び/又は圧力を用いた第2の別個の結合工程によって試料が過剰結合されているか否かを示す。
【0281】
●FS先端:変位した繊維の先端又は上部が結合されているか否かを示す。
【0282】
●構造化基材の密度:構造化基材の密度は、坪量の実測値を構造化基材のエイジング処理キャリパーで割り、同じ単位に変換し、g/立方メートルとして報告することによって求められる。
【0283】
●構造化基材比容積:構造化基材比容積は、立方センチメートル/グラムの単位で表される、構造化基材密度の逆数である。
【0284】
●間隙容積の形成:間隙容積の形成とは、繊維の変位工程において形成される間隙容積のことを指す。間隙容積の形成は、構造化基材比容積とベース基材の比容積との差である。
【0285】
エイジングを行った裏抜け及び再湿潤試験:裏抜け試験を行うため、Edanaによる方法150.3−96を以下のように変更して使用した。
【0286】
B.試験条件
●試料の調整及び測定は23±2℃及び50±2%相対湿度で行う。
【0287】
E:装置
●参照吸収パッドとして、10層のAhlstromグレード989又はこれに相当するもの(平均裏抜け時間:1.7秒±0.3秒、寸法:10cm×10cm)。
【0288】
F:手順
2.Eにおいて述べた参照吸収パッド
3.試験片を70×125mmの長方形に切断する
4.Bに述べたのと同様にして調整する
5.試験片を10枚の濾紙の組の上に置く。構造化基材については構造化された側を上にする。
【0289】
10.第1の液体噴射及び第2の液体噴射の60秒後に、それぞれ手順を繰り返して第2及び第3の裏抜け時間を記録する。
【0290】
11.各試料からの試験片に対して、最低でも3回の試験を行うことが推奨される。
【0291】
再湿潤性の測定には、Edanaによる方法151.1−96を以下のように変更して使用した。
【0292】
B.試験条件
●試料の調整及び測定は23±2℃及び50±2%相対湿度で行う。
【0293】
D.原理
●裏抜け測定からの試験片を上に乗せた濾紙の組を使用して再湿潤性を測定した。
【0294】
E.装置
●ピックアップ紙:Ahlstromグレード632又はこれに相当するものを62mm×125mmに切断し、参照吸収パッドと接触しないように試験片の上に中心を合わせて置く。
【0295】
●赤ちゃんの模擬体重:総重量3629g±20g。
【0296】
F.手順
12.裏抜け試験法の第3の液体噴出の終了直後に、工程12において手順を開始する。追加量(L)は、濡れ戻り(wetback)試験に要した液体の総量(Q)から、裏抜け試験の15mlの3回の液体噴出を差し引くことによって求めた。
【0297】
21.本発明では濡れ戻り値は再湿潤値と等しい。
【0298】
●繊維の特性:本発明における繊維の特性は、MTS Synergie 400シリーズの試験システムを使用して測定された。正確に長さ25mm及び幅1cmの穴が予め切り抜かれたテンプレート紙の上に単一の繊維を乗せた。繊維は、紙にあいた穴に弛みがないように長さ方向に真っ直ぐわたされるように置いた。少なくとも10回の測定を行うことによって、中実円形繊維の平均繊維直径又は非円形繊維の等価な中実円形繊維の直径を求める。これら10回の測定値の平均を、ソフトウェアの入力によって繊維の弾性率を求める際に繊維の直径として使用する。繊維はMTSシステムに装填し、テンプレート紙の各辺を試験の前に切断する。繊維試料を、0.009N(0.1gf)よりも大きな負荷力で始まる強度プロファイルに従って、50mm/分の速度で引っ張る。ピーク繊維負荷及び破断点歪みをMTSソフトウェアによって測定する。繊維の弾性率は1%の歪みでMTSによっても測定される。表10に示される繊維の弾性率は、このようにして報告されたものである。表10には、繊維の破断点伸長率及びピーク繊維負荷も報告されている。結果は10回の測定の平均である。繊維の弾性率を計算する際、中実円形繊維には繊維の直径を使用するか、又は非円形若しくは中空の繊維には等価な中実円形繊維の直径を使用する。
【0299】
●破断したフィラメントの割合:繊維の変位した位置における破断したフィラメントの割合を測定することができる。破断したフィラメントの数を求める方法は、計数によるものである。変位した繊維を有するように製造された試料は、先端の結合が行われている場合もいない場合もある。実際に繊維を計数することで測定を行うには、精密なピンセット及びハサミが必要とされる。Tweezermanというブランドではこれらの測定用のツールを製造しており、商品コード1240Tのピンセット及び商品コード3042−Rのハサミなどを使用することができる。医療機器の供給元であるExpertの商品コードMDS0859411のものをハサミとして使用することもできる。使用可能なツールは他の供給元によっても製造されている。
【0300】
○先端の結合が行われない試料の場合:一般的に、図16に示されるように、変位した繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。構造化された繊維質ウェブは、破断したフィラメントがより少ない第2の領域内の変位した繊維の側の第1の表面上で切断されなければならない。図16に示されるように、これは第1の切断部82として示される左側である。これは変位した繊維の基部において、第1の表面に沿って切断されなければならない。この切断部を図17a及び17bに示す。図17bに示される側面図は、図に示されるようにMD方向に向けられている。この切断が行われた時点で、それ以上繊維が落ちなくなるまですべての遊離した繊維を払い落とすか、ブラシで掃き落とす。この繊維を集めて計数する。次いで第2の領域の他方の側を切断し(図16に第2の切断部84として示す)、繊維の数を数える。第1の切断により破断繊維の数が詳細に判明する。第1の切断及び第2の切断において計数された繊維の数の合計は、全繊維数に等しい。第1の切断における繊維の数を全繊維数で割って100を掛けることにより、破断繊維の割合(%)が得られる。多くの場合、目視検査によって繊維の大部分が破断しているか否かを示すことができる。定量的な数が必要な場合には、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10個の試料に対して行い、全体の平均を求めなければならない。試料が一定時間の間、圧縮されている場合には、この試験のための変位領域を明確にするために、切断に先立って試料を軽くブラッシングすることが必要な場合もある。これらの割合(%)が近い値であり、統計的に有意な試料のサイズが得られていない場合には、95%の信頼区間内で充分な統計的確実性が得られるように試料の数を10個ずつ増やす必要がある。
【0301】
○先端の結合が行われた試料の場合:図18に示されるように、一般に変位した繊維の位置の一方の側において破断したフィラメントがより多くなる。破断したフィラメントが、より少ない側を最初に切断する必要がある。図18に示されるように、これは第1の切断部として示される左側の上部であり、この部分は先端結合部が位置する部分の頂部にあるが、先端が結合された材料は一切含んでいない(すなわち、破断繊維の側に向かって先端結合部の側で切断しなければならない)。この切断を行い、遊離した繊維を払い落として計数し、繊維カウント1とする。第2の切断は、図18において第2の切断部として示される、変位した繊維の基部において行う必要がある。この繊維を払い落として計数し、このカウントを繊維カウント2とする。先端結合領域の他方の側において第3の切断を行い、繊維を払い落として計数し、繊維カウント3とする。変位した繊維の基部において第4の切断を行い、繊維を払い落として計数し、繊維カウント4とする。この切断部を図17a及び17bに示す。繊維カウント1及び繊維カウント2において計数された繊維の数は、その側面1−2の全繊維数に等しい。繊維カウント3及び繊維カウント4において計数された繊維の数は、その側面3−4の全繊維数に等しい。繊維カウント1と繊維カウント2との差を求め、これを繊維カウント1と繊維カウント2との合計で割ってから100を掛けたものを、破断フィラメントの割合(%)1−2と呼ぶ。繊維カウント3と繊維カウント4との差を求め、これを繊維カウント3と繊維カウント4との合計で割ってから100を掛けたものを、破断フィラメントの割合(%)3−4と呼ぶ。本発明においては、破断フィラメントの割合(%)1−2又は破断フィラメントの割合(%)3−4が50%よりも大きくなければならない。多くの場合、目視検査によって繊維の大部分が破断しているか否かを示すことができる。定量的な数が必要な場合には、上記の手順を使用するべきである。この手順は、少なくとも10個の試料に対して行い、全体の平均を求めなければならない。試料が一定時間の間、圧縮されている場合には、この試験のための変位領域を明確にするために、切断に先立って試料を軽くブラッシングすることが必要な場合もある。これらの割合(%)が近い値であり、統計的に有意な試料のサイズが得られていない場合には、95%の信頼区間内で充分な統計的確実性が得られるように試料の数を10個ずつ増やす必要がある。
【0302】
●平面内径方向の透過性(IPRP):平面内径方向の透過性すなわちIPRP、又は本発明で単に透過性とは、不織布の透過性の目安であり、材料を通じて液体を輸送するために必要とされる圧力に関係している。以下の試験は、多孔質材料の平面内径方向の透過性(IPRP)の測定に適したものである。一定の圧力下で材料の環状試料を通じて径方向に流れる生理食塩水(0.9% NaCl)の量は、時間の関数として測定される(参照:J.D.Lindsay,「The anisotropic Permeability of Paper」TAPPI Journal,(May 1990,pp223)平面内の生理食塩水の透水計数を求めるにはダルシーの法則及び安定状態流の方法が使用される。)
IPRP試料格納装置400が図20に示されており、円筒状の下側プレート405、上側プレート420、及び図21に詳細に示される円筒状のステンレス鋼ウェイト415を含んでいる。
【0303】
上側プレート420は厚さ10mm、外径70.0mmであり、その中央に固定された長さ190mmの管425に連結されている。管425は、外径15.8mm及び内径12.0mmである。この管は、図21に示されるように、管の下縁部が上側プレートの下面と面一となるように、上側プレート420の中央の円形の12mm径の穴に接着により固定されている。下側プレート405及び上側プレート420は、Lexan(登録商標)又はこれに相当するもので製造される。ステンレス鋼ウェイト415は、ウェイトが管425上に緊密に滑り嵌めされるように70mmの外径及び15.9mmの内径を有している。ステンレス鋼ウェイト415の厚さは約25mmであり、上側プレート420、管425、及びステンレス鋼ウェイト415の合計重量が788gとなるように調節されており、これにより測定時に2.1kPaの拘束圧がもたらされる。
【0304】
図21に示されるように、下側プレート405は厚さ約50mmであり、それぞれの溝が下側プレートの直径にわたって延びるとともに溝同士が互いに直交するようにして、2本の位置合わせ溝430がプレートの下面に切り込まれている。各溝は幅1.5mm及び深さ2mmである。下側プレート405は、プレートの直径にわたって延びる水平方向の穴435を有している。水平方向の穴435は直径が11mmであり、その中心軸は下側プレート405の上面の12mm下にある。下側プレート405は、直径10mm及び深さ8mmの中央の垂直方向の穴440も有している。中央の穴440は、下側プレート405にT字形の空洞を形成するように水平方向の穴435と接続している。水平方向の穴435の外側の部分は、下側プレート405に水密に取り付けられる配管エルボ445を収容するようにネジ切りされている。一方のエルボは、高さ190mm及び内径10mmの垂直な透明管460と接続されている。管460には、下側プレート420の上面から50mm上の高さに好適なマーク470が刻まれている。これは測定時に維持されるべき液面の高さの基準である。他方のエルボ445は、可撓管を介して流体供給リザーバ700(後述する)に接続されている。
【0305】
好適な流体供給リザーバ700が図22に示されている。リザーバ700は好適な実験用ジャッキ705の上に置かれ、リザーバへの流体の充填を助けるための、気密に栓がされた開口部710を有する。開放端を有する内径10mmのガラス管715が、管の外側とリザーバとの間に気密シールが形成されるようにしてリザーバの上部のポート720を通じて延びている。リザーバ700には、リザーバ内の液面よりも下に位置する入口730、ストップコック735、及び出口740を有するL字形の供給管725が備え付けられている。出口740は、可撓性プラスチック管450(例えばTygon(登録商標))を介してエルボ445に接続されている。供給管725、ストップコック735、及び可撓性プラスチック管450の内径は、管460の液面の高さが測定の間、刻みマーク470に常に維持されるだけの充分に大きな流速で流体がIPRP試料格納装置400に供給されるようなものとなっている。リザーバ700の容量は約6リットルであるが、試料の厚さ及び透過性によってはこれよりも大きなリザーバが必要とされる場合もある。試料格納装置400に流体を供給可能であり、管460内の液面の高さを測定が行われる間に刻みマーク470に維持することが可能なものであれば、他の流体供給システムを使用することもできる。
【0306】
IPRP集水漏斗500は、図20に示されており、漏斗の上縁部における内径が約125mmである外側ハウジング505を含む。漏斗500は、漏斗内に落下する液体が流出口515から速やかかつ自由に流出するように構成されている。漏斗500の周囲の水平方向のフランジ520によって、漏斗を水平な位置に取り付けることが容易となっている。一体形成された垂直方向の2個の内部リブ510が漏斗の内径にわたって延び、互いに対して直交している。各リブ510の幅は1.5mmであり、各リブの上面は所定の水平面内にある。漏斗ハウジング500及びリブ510は、試料格納装置400を支持するためにLexan(登録商標)又はこれに相当するもののような好適な剛性材料から製造される。試料の装填を容易に行うには、リブの高さは、下側プレート405がリブ510上に配置される際に、下側プレート405の上面が漏斗のフランジ520よりも上に位置するような充分な高さであることが有利である。ステンレス鋼ウェイト415の相対的な高さを測定するためのダイヤルゲージ535を取り付けるために、架橋部材530がフランジ520に取り付けられている。ダイヤルゲージ535は、25mmの範囲にわたって0.01mmの解像度を有する。好適なデジタルダイアルゲージは、Mitutoyoモデル575−123(McMaster−Carrよりカタログ番号19975−A73にて販売される)、又はこれに相当するものである。架橋部材530は、管425及び460を架橋部材と接触せずに通すことができるような直径17mmの2個の円形の穴17を有している。
【0307】
図20に示されるように、漏斗500は電子秤600の上に設置されている。秤は、0.01gの精度及び少なくとも2000gの容量を有するものである。秤600はコンピュータともインターフェースされており、秤の読み取り値を定期的に記録して、コンピュータ上に電子的に保存することが可能である。好適な秤は、Mettler−ToledoモデルPG5002−S、又はこれに相当するものである。漏斗流出口515から流出する液体が直接容器610の中に落ちるように回収容器610が秤量皿の上に置かれている。
【0308】
漏斗500は、各リブ510の上面が水平面内に位置するように設置される。秤600及び容器610は、漏斗流出口515から流出する液体が直接容器610の中に落ちるように漏斗500の下に配置される。IPRP試料格納装置400は、リブ510が溝430内に配置された状態で漏斗700内の中央に置かれる。下側プレート405の上面は、完全に平坦かつ水平でなければならない。上側プレート420は、下側プレート405と整列して下側プレート405上に置かれる。ステンレス鋼ウェイト415は、管425を包囲するようにして上側プレート420上に置かれる。管425は架橋部材530の中央穴を通じて垂直に延びる。ダイヤルゲージ535は、ステンレス鋼ウェイト415の上面の所定の点にプローブが置かれた状態で、架橋部材530に対してしっかりと取り付けられる。ダイヤルゲージをこの状態で0に設定する。リザーバ700に0.9%生理食塩水を満たして再び封止する。出口740は、可撓性プラスチック管450を介してエルボ445に接続されている。
【0309】
試験する材料の環状試料475を好適な手段によって切断する。試料は外径70mm及び内側の穴の直径が12mmである。試料を切断するための好適な手段の1つは、鋭利な同心状のブレードを有するダイカッターを使用することである。
【0310】
上側プレート420を充分高く持ち上げ、試料が下側プレート上に中心を合わせて置かれ、プレート同士が整列された状態で上側プレートと下側プレート405との間に試料475を挿入する。ストップコップ735を開き、ジャッキ705を用いてリザーバ700の高さを調節すること及びリザーバ内の管715の位置を調節することによって、管460内の液面の高さを刻みマーク470に合わせる。管460内の液面の高さが刻みマーク470で安定し、ダイヤルゲージ535の読み取り値が一定となった時点で、その読み取り値を記録し(初期の試料厚さ)、コンピュータによる秤からのデータの記録を開始する。秤の読み取り値及び経過時間を10秒毎に5分間記録する。3分後にダイヤルゲージの読み取り値を記録し(最終的な試料厚さ)、ストップコックを閉じる。平均の試料厚さLpは、初期の試料厚さと最終的な試料厚さとの平均をcmで表したものである。
【0311】
30秒〜300秒のデータに線形最小2乗回帰フィッティングを行って、流速をg/秒で計算する。材料の透過性を下式を使用して計算する。
【数2】
式中、
kは、材料の透過性(cm2)であり、
Qは、流速(g/s)であり、
ρは、22℃における液体の密度(g/cm3)であり、
μは、22℃における液体の粘度(Pa・s)であり、
Roは、試料の外側半径(mm)であり、
Riは、試料の内側半径(mm)であり、
Lpは、平均の試料厚さ(cm)であり、
ΔPは、静水圧(Pa)である。
【数3】
式中、
Δhは、管460内の液体の下側プレートの上面からの高さ(cm)であり、
Gは、重力加速度定数(m/s2)である。
【数4】
式中、
Krは、cm2/(Pa・s)の単位で表されるIPRP値である。
【0312】
表中のデータの考察:以下の情報は、表中に見られる情報を本発明に含めるうえでの根拠を与えるものである。
【0313】
●表1及び表2:明確な3葉形の繊維のベース基材の材料特性、中実円形及び標準的な3葉形ベース基材の製造時特性。表1は、ベース基材の製造時特性を示す。表は、各実施例について具体的数値を示している。表1において注目すべき重要な特性は、明確な3葉形フィラメントの改変比、及びこれらの点結合PET基材における比較的低いMD方向の伸長率である。
【0314】
●表3:ベース基材の流体処理特性を示す。これらのベース基材の保持容量は、g/gの保持容量が10よりも低いこれらのベース基材は吸収性材料ではないことを示すものであった。
【0315】
●表4:プロセスの設定及びベース基材の特性に対する構造化基材の特性変化を示す。試料の1D群の各実施例は、本発明の主たる目的の1つを強調するものである。1Dがベース基材(60g/m2 6.9dpf PET)であるのに対して、1D1〜1D6では、歪み深さによって示されるように繊維の変位が大きくなるに従ってキャリパーの変化を示している。歪みを大きくするとキャリパーが増大する。過剰熱結合によって過剰結合が示されている。先端結合はFS先端によって示され、表に示されるように、エイジング処理キャリパー及び形成される間隙容積の量にも影響している。本発明の目的は、液体捕捉のための間隙容積を形成することにある。過剰熱結合は、ベース基材に対するMD方向の引っ張り強度の増大によって示されるように、機械的特性を高めるために使用することもできる。実施例1Nのデータ群は、ベース基材と、異なる歪み深さプロセスを行った1N1〜1N9とを比較するものである。このデータ群は、過剰熱結合、FS先端及び全体の歪みによって決定されるキャリパー生成の最適化が可能であることを示している。これらのデータは、歪みが大きすぎるとエイジング処理キャリパーが低下した試料が製造されることを示している。本発明の一実行形態においては、これは活性化領域において完全に破断したフィラメントに相当するが、間隙容積の形成が最も高い領域では、好ましい破断繊維の範囲を有している。これらの結果はまた、本発明においては、流体輸送特性を更に有する一方で、典型的な樹脂結合構造と同様の構造化基材の容積を形成することが可能であることも示している。
【0316】
●表5:データ及び実施例は、本発明におけるキャリパーの増大及び間隙容積の形成を、標準的な3葉形及び中実円形の繊維形状に対して使用することが可能であることを示している。本発明の効果は、明確な3葉形の繊維に限定されない。
【0317】
●表6:表6は、ベース基材の特性に対する構造化基材の流体処理特性を示す。表6の各実施例は表4と同じものである。表6のデータは、FDTの使用によって構造化基材のMD方向への水平輸送特性が、ベース基材に対して増大することを示している。過剰結合はMD方向への流体輸送性を高めることが示された。垂直吸い上げ高さ要素は、中程度のFDT歪みでは構造化基材はベース基材に対して同様の性質を示すが、より高い歪みでは垂直吸い上げ高さ要素はわずかに減少することを示している。カーディングした樹脂結合不織布に関しては、垂直輸送要素はやはり極めて良好であった。エイジングを行った裏抜き試験のデータは、ベース基材に対して構造化基材の液体捕捉速度が劇的に向上していることを示している。ベース基材に対してFDTでは、裏抜き時間が劇的に減少している。再湿潤特性は、FDTではベース基材に対して概ね低下している。表6のデータは、構造化基材の流体輸送性を与える能力及び流体捕捉速度を制御する能力を実証するものである。この表には、各試料に行ったIPRPによる材料の流体透過性も含まれているが、これはFDT後の劇的な改善、更に構造化基材が、カーディングされた樹脂結合基材と同様のキャリパーにおいて、より高い透過性をどのように有しているかを示している。
【0318】
●表7は、ベース基材に対する、特定の明確な繊維形状の構造化基材の更なる流体処理特性を示す。試料の種類において使用した活性化条件を表5に示す。表5は、FDTにおける変更によって流体捕捉速度が増大し得ることを示している。
【0319】
●表8は、ベース基材試料に対して更なる構造化基材を示しており、中実円形(SR)及び標準的3葉形繊維(TRI)において流体捕捉速度が向上していることを示している。構造化基材試料に対して使用した活性化条件を表9に示す。
【0320】
●表9は、表8で作った試料のプロセス条件を示す。
【0321】
●表10は、本発明において使用する基材の単一繊維特性の値を示す。本発明では熱安定性であるPETを製造するために高速繊維紡糸法を使用しているため、弾性率の値は、強度がフィラメント1本当たり10gよりも高い繊維で極めて高くなっている。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0322】
本明細書において開示する寸法及び値は、記載される正確な数値に厳密に限定されるものとして理解すべきではない。むしろ、特に断らないかぎり、こうした各寸法は、記載される値及びその値周辺の機能的に同等な範囲の両方を意味するものとする。例えば「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0323】
相互に参照される、又は関連するすべての特許若しくは特許出願を含む、本明細書において引用する文献はすべて、明示的に除外若しくは限定されないかぎりにおいて、その全容を本明細書に参照によって援用するものである。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示若しくは特許請求されるいずれかの発明に対する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいずれかの参照とのいずれかの組み合わせにおいて、こうした発明を教示、示唆、若しくは開示することを容認するものではない。更に、本文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照によって援用する文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文書においてその用語に与えられた定義又は意味が優先するものとする。
【0324】
以上、本発明の特定の実施形態を図示、説明したが、他の様々な変更及び改変を本発明の趣旨及び範囲より逸脱することなく実施することが可能である点は当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲に含まれるそうした変更及び改変はすべて、添付の「特許請求の範囲」において網羅されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップシート及びバックシートを含むシャーシと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、第1及び第2の吸収層を含む実質的にセルロースを含まない吸収性コアであって、前記第1の吸収層は第1の基材を含み、前記第2の吸収層は第2の基材を含み、前記第1及び第2の吸収層は更に前記第1及び第2の基材上に置かれた超吸収性粒子状ポリマー材料並びに前記第1及び第2の基材のそれぞれの上の前記吸収性粒子状ポリマー材料を覆う熱可塑性接着材料を含み、前記第1の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部が前記第2の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部と接触するように前記第1の吸収層と前記第2の吸収層とが一体に合わされ、前記吸収性粒子状ポリマー材料が吸収性粒子状ポリマー材料領域内において前記第1の基材と前記第2の基材との間に置かれ、前記吸収性粒子状ポリマー材料が前記吸収性粒子状ポリマー材料領域にわたって実質的に連続的に分配されている、吸収性コアと、
前記トップシートと前記吸収性コアとの間に配置された捕捉システムと、を含み、該補足システムが、熱可塑性繊維を含む流体透過性の構造化繊維質ウェブを含み、該繊維質ウェブが1.5mmよりも小さいエイジング処理キャリパー、少なくとも5mmの垂直吸い上げ高さ、少なくとも10,000cm2/(Pa・s)の透過性、及び少なくとも5cm3/gの構造化基材比容積を有する、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が熱安定性である、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が、連続した捲縮されていないスパンボンド繊維である、請求項1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記構造化繊維質ウェブの繊維がサーマルポイントボンド法によって結合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記構造化繊維質ウェブの前記垂直吸い上げ高さが少なくとも20mm、好ましくは少なくとも50mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記構造化繊維質ウェブの前記構造化基材比容積が少なくとも10cm3/gである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記構造化繊維質ウェブが少なくとも10cmのMD方向の水平輸送性(水平吸い上げ距離)を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記構造化繊維質ウェブが少なくとも20,000cm2/(Pa・s)の透過性を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
前記構造化繊維質ウェブの繊維がPETを含み、好ましくはPET及びcoPETを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項10】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が成形繊維を含み、好ましくは該成形繊維が多葉形状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項11】
前記構造化繊維質ウェブのエイジングを行った場合の第2の裏抜け値が2秒未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項12】
構造化繊維質ウェブが3.0未満の再湿潤値を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項13】
前記構造化繊維質ウェブが、30g/m2〜80g/m2の坪量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項14】
前記構造化繊維質ウェブのエイジング処理キャリパーが0.5mmよりも大きい、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項15】
前記構造化繊維質ウェブが、少なくとも50%の熱可塑性繊維を含む繊維含量を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項16】
吸収性粒子状ポリマー材料が前記第1及び第2の基板上に不連続的に分配されるように、前記吸収性粒子状ポリマー材料がランド領域及び前記ランド領域間の接合領域のそれぞれのパターンで前記第1及び第2の基材上に置かれ、
前記吸収性粒子状ポリマー材料の前記それぞれのパターンが、互いからずれるように前記第1の吸収層と前記第2の吸収層とが一体に合わされる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項17】
前記吸収性粒子状ポリマー材料領域が前記吸収性コアのほぼ全体にわたって延びる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項18】
前記吸収性粒子状ポリマー材料領域が前記吸収性コアの前部から後部にかけてほぼ全体に延びる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項19】
前記吸収性コアが、前記第1及び第2の基材、前記吸収性粒子状ポリマー材料、及び前記熱可塑性接着材料から基本的に構成される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項20】
前記吸収性コアが、前端部及び後端部、並びに前記後端部から前記前端部に延びる長手方向軸、並びに異なる量の吸収性粒子状ポリマー材料がそれぞれに存在する複数の吸収材領域を有し、好ましくは、前記複数の吸収材領域の1つから別の吸収材領域へと吸収性粒子状ポリマー材料の量が徐々に変化する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項1】
トップシート及びバックシートを含むシャーシと、
前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された、第1及び第2の吸収層を含む実質的にセルロースを含まない吸収性コアであって、前記第1の吸収層は第1の基材を含み、前記第2の吸収層は第2の基材を含み、前記第1及び第2の吸収層は更に前記第1及び第2の基材上に置かれた超吸収性粒子状ポリマー材料並びに前記第1及び第2の基材のそれぞれの上の前記吸収性粒子状ポリマー材料を覆う熱可塑性接着材料を含み、前記第1の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部が前記第2の吸収層の前記熱可塑性接着材料の少なくとも一部と接触するように前記第1の吸収層と前記第2の吸収層とが一体に合わされ、前記吸収性粒子状ポリマー材料が吸収性粒子状ポリマー材料領域内において前記第1の基材と前記第2の基材との間に置かれ、前記吸収性粒子状ポリマー材料が前記吸収性粒子状ポリマー材料領域にわたって実質的に連続的に分配されている、吸収性コアと、
前記トップシートと前記吸収性コアとの間に配置された捕捉システムと、を含み、該補足システムが、熱可塑性繊維を含む流体透過性の構造化繊維質ウェブを含み、該繊維質ウェブが1.5mmよりも小さいエイジング処理キャリパー、少なくとも5mmの垂直吸い上げ高さ、少なくとも10,000cm2/(Pa・s)の透過性、及び少なくとも5cm3/gの構造化基材比容積を有する、使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が熱安定性である、請求項1に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項3】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が、連続した捲縮されていないスパンボンド繊維である、請求項1又は2に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項4】
前記構造化繊維質ウェブの繊維がサーマルポイントボンド法によって結合されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項5】
前記構造化繊維質ウェブの前記垂直吸い上げ高さが少なくとも20mm、好ましくは少なくとも50mmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項6】
前記構造化繊維質ウェブの前記構造化基材比容積が少なくとも10cm3/gである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項7】
前記構造化繊維質ウェブが少なくとも10cmのMD方向の水平輸送性(水平吸い上げ距離)を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項8】
前記構造化繊維質ウェブが少なくとも20,000cm2/(Pa・s)の透過性を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項9】
前記構造化繊維質ウェブの繊維がPETを含み、好ましくはPET及びcoPETを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項10】
前記構造化繊維質ウェブの繊維が成形繊維を含み、好ましくは該成形繊維が多葉形状である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項11】
前記構造化繊維質ウェブのエイジングを行った場合の第2の裏抜け値が2秒未満である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項12】
構造化繊維質ウェブが3.0未満の再湿潤値を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項13】
前記構造化繊維質ウェブが、30g/m2〜80g/m2の坪量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項14】
前記構造化繊維質ウェブのエイジング処理キャリパーが0.5mmよりも大きい、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項15】
前記構造化繊維質ウェブが、少なくとも50%の熱可塑性繊維を含む繊維含量を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項16】
吸収性粒子状ポリマー材料が前記第1及び第2の基板上に不連続的に分配されるように、前記吸収性粒子状ポリマー材料がランド領域及び前記ランド領域間の接合領域のそれぞれのパターンで前記第1及び第2の基材上に置かれ、
前記吸収性粒子状ポリマー材料の前記それぞれのパターンが、互いからずれるように前記第1の吸収層と前記第2の吸収層とが一体に合わされる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項17】
前記吸収性粒子状ポリマー材料領域が前記吸収性コアのほぼ全体にわたって延びる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項18】
前記吸収性粒子状ポリマー材料領域が前記吸収性コアの前部から後部にかけてほぼ全体に延びる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項19】
前記吸収性コアが、前記第1及び第2の基材、前記吸収性粒子状ポリマー材料、及び前記熱可塑性接着材料から基本的に構成される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【請求項20】
前記吸収性コアが、前端部及び後端部、並びに前記後端部から前記前端部に延びる長手方向軸、並びに異なる量の吸収性粒子状ポリマー材料がそれぞれに存在する複数の吸収材領域を有し、好ましくは、前記複数の吸収材領域の1つから別の吸収材領域へと吸収性粒子状ポリマー材料の量が徐々に変化する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使い捨て吸収性物品。
【図1】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【図1A】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図12F】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図30】
【公表番号】特表2012−528693(P2012−528693A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514106(P2012−514106)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037146
【国際公開番号】WO2010/141643
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/037146
【国際公開番号】WO2010/141643
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】
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