説明

流動導管の調査用デバイス

ベースと、このベース内に形成されたモジュールとを含む、流動導管の調査用デバイスであって、モジュールが、流動導管を装填するための装填入口を有する流動導管用の主チャネルと、流動導管の灌流及び表面灌流の少なくとも1つのための主チャネル内の培養チャンバーと、流動導管の長さに沿った少なくとも2つの固定位置に流動導管の固定を行なうための、主チャネルと連絡している少なくとも2つの固定ラインとを含むデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、流動導管の調査用デバイスに関する。特に、この開示は小型流動導管、例えば灌流可能な軟質材料サンプル又は小さい生存若しくは非生存生物脈管セグメントの調査に適し得るチップベースデバイス又はラブオンチップ(lab-on-a-chip)デバイスなどのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
高血圧、又は高血圧症は、蔓延している致命的状態である。高血圧症の世界的負担は、2000年の26.4%(972百万人)から2025年までには29.2%(15.6億人)に60%増加すると予測されている[Kearney, P.M. et al., Lancet, 2005. 365(9455): p. 217-223]。高血圧症は伝統的に加齢に伴う疾患と見なされているが、今や若年成人で流行しており、いくつかの遺伝的及び生活様式の因子がその発生率及び重症度に寄与している。高血圧症は、心臓疾患、脳卒中、及び腎不全といった多くの疾患の主要な危険因子である。現在でさえ我々の高血圧症に対する理解は未だにその固有の複雑さを網羅していないので、高血圧症患者の大多数が必然的ではなく症候的に治療を受けている。この状況を改善するために高血圧症に関する知識を発展させるべきである。高血圧症は主として、血管樹の末端部の主に小さい抵抗動脈に起因する末梢血管抵抗の上昇に関連しているというコンセンサスの高まりがある。
血管の構造及び機能に関する現在の知識は主として、容易に利用できる大きい非抵抗動脈を用いた実験に由来している。残念ながら、大きい導管と小さい抵抗動脈との間及び異なる血管床由来の抵抗動脈間には機能の差異が存在する。概して小さい抵抗血管を実験的に取扱うには相当な技術的スキルが必要なため、小さい抵抗血管の代わりに使用されている。抵抗動脈の構造と機能を制御する機構をより良く理解することが高血圧症を治療するための改良された戦略の手掛かりなので、抵抗動脈の取扱いを容易にする技術が必要である。このような小動脈を用いた他の調査を試みる際、例えば医薬品などの他の刺激物に対する構造応答を探究する際に同様の課題が生じる。これらの課題は、他の同様の流動導管、例えば肺、膵臓などで見られる小管の調査でも存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の方法及びプロセスは、細胞ベーススクリーン、遺伝子解析及び動物モデルと組み合わせた薬理学的ツールを用いて、可能性のある薬品の安全性と効力を同定、試験及び評価する。結果として、プロセスが相対的に長く、人体試験に提案される前に千回の前臨床確認試験の約1回だけしか成功を収められない。
現在の方法は多くの場合、時間がかかり、調査者のケア及び訓練が必要であり、かつ調査に使える血管の割合が低くなることが多い。これらの小さい流動導管を調査するための有効かつ標準化された方法を提供するという課題が残っている。他の生物導管、及び人工又は改変導管に適用できることが、これらの課題の解決に有用であろう。
(概要)
上記課題の少なくともいくつかに取り組む、流動導管の調査を斟酌するデバイスを提供することが望ましいだろう。このような技術がスケーラブルであれば望ましいであろう。これらの流動導管を治療に対するその応答、例えば医薬化合物に対するその応答をモニターするための方法又はデバイスも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この開示は、流動導管の調査用デバイスについて述べる。このデバイスは、小さい生存若しくは非生存生物導管(例えば、抵抗動脈)といった導管を生理的条件下で可逆的又は不可逆的に装填、固定及び灌流できるようにする。このデバイスは、チップ又はマイクロデバイス、例えばマイクロ流体チップ又はラブオンチップデバイス上でのヒト、動物、及び植物由来の流動導管又は人工導管の固定及び灌流を可能にし得る。このデバイスは、流動導管の機能分析及び器官培養のための相対的に最適化された微小環境、相対的に困難な導管カニューレ挿入プロセスの自動化、及び小さくて脆弱な導管を用いたルーチン研究を行なう能力を提供することができる。
このデバイスは、例えば治療製品の確認試験における流動導管の構造試験及び応答試験を可能にし得る。このデバイスを用いて、動物、ヒト、植物、及び他の生物由来の流動導管を試験することができる。流動導管は、いずれの器官由来であってもよく、かつ人工又は改変導管を包含し得る。流動導管としては、生物内で見られる導管、例えば脂質細管、改変血管、中空繊維、動脈、細動脈、静脈、細静脈、リンパ管、腸管、精管、卵巣管、胆管、気管支、細気管支、気管、又はいずれの他の同様の構造、並びに植物内で見られる構造が挙げられる。本デバイスは、特定の薬物、疾患、状態、若しくは治療のスクリーニング又はそれらの評価において、個体又は個体群の代表的な導管を使用することによって、個体又は個体群の標的治療又は個別化治療を斟酌することもできる。
本デバイスはスケーラブルであり、及び/又は多重化することができ、相対的に最小限に訓練された人員によっても取り扱うことができ、かつこれらの研究で常用されている他のデバイスに比べて実験単位当たりのコストを低減することができる。使用者のスキルセットにかかわらず、均一な取扱いを可能にすることによって、このデバイスは標準化を促進し得る。対照的に、抵抗動脈の単離及び培養のための以前に開発された従来の実験手順は[例えば、Bolz SS et al., J Vasc Res, 2003. 40(4): p. 399-405;及びBolz SS et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol., 2000. 279(3): p. H1434-9に開示されているように]、典型的に顕微解剖法及び特殊機器の分野で相対的に高いスキルの人員を必要とする。
【0005】
一部の態様では、ベースと、このベース内に形成されたモジュールとを含む、流動導管の調査用デバイスであって、前記モジュールが、前記流動導管を装填するための装填入口を有する、前記流動導管用の主チャネルと、前記流動導管の灌流及び表面灌流(superfusion)の少なくとも1つのための、前記主チャネル内の培養チャンバーと、前記流動導管の長さに沿った少なくとも2つの固定位置に前記流動導管の固定を行なうための、前記主チャネルと連絡している少なくとも2つの固定ラインとを含むデバイスを提供する。
一部の態様では、流動導管を調査する方法であって、以下の工程:上記デバイスを準備する工程;前記流動導管を主チャネル内に装填する工程;前記主チャネル内に前記流動導管を固定する工程(このとき前記流動導管の少なくとも一部は前記培養チャンバー内にある);前記流動導管に生理溶液を灌流又は表面灌流させる工程;及び前記流動導管を経時的にモニターする工程を含む方法を提供する。
本デバイスは、複数のモジュール(例えば、直列又は並列に配置された)を含んでよく、かつ流動導管の少なくとも一部を溶解するための溶解チャンバーをさらに含んでよい。このデバイスは、小血管の構造特性及び機能特性の調査で役に立ち得る。さらに、このデバイスは、血管形成の調査及び血管のみならず他の生物又は非生物の流動導管に関係する他の状態の調査で役に立ち得る。このデバイスは、個別化医療のため、及び薬剤の開発のために役立ち得る。
添付図面全体を通じて、同様の特徴は同様の参照番号によって同一視していることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
以下、本開示の例として実施形態を示す図面を参照する。
【図1】流動導管の調査用デバイスのモジュールの実例実施形態における流動導管を装填する例を概略的に示す。
【図2】流動導管の調査用デバイスの実例実施形態の画像を示す。
【図3】動脈が装填された流動導管の調査用デバイスの実例実施形態の画像を示す。
【図4】動脈の還流で使われた流動導管の調査用デバイスの実例実施形態の画像を示す。
【図5】流動導管の調査用デバイスの実例実施形態における流動導管の固定の例を概略的に示す。
【図6】流動導管の調査用デバイスの実例実施形態における流動導管の固定の別の例を概略的に示す。
【図7】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図8】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図9】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図10】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図11】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図12】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図13】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図14】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図15】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図16】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図17】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図18】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図19】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図20】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図21】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図22】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図23】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図24】異なるレイアウト設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図25】直列設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図26】直列設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図27】直列設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図28】並列設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図29】並列設計を有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図30】集積光ファイバーを有する流動導管の調査用デバイスの実例実施形態を示す。
【図31】流動導管の調査用デバイスを用いて測定された、フェニレフリンに対する動脈の応答を図示するチャートを示す。
【図32】流動導管の調査用デバイスにおける腸間膜血管の狭窄を図示するチャートを示す。
【図33】流動導管の調査用デバイスにおける動脈についての画像及び比率測定を図示するチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(詳細な説明)
流動導管の調査用デバイスについて説明する。このデバイスは、少なくとも(i)生物流動導管の機能分析及び器官培養のため相対的に最適化された微小環境、(ii)そうでなければ相対的に困難な血管カニューレ挿入プロセスの自動化、及び(iii)抵抗動脈等の非常に小さくて脆弱な導管をルーチン的に研究する能力を提供することができる。これらは、世界中の研究室及び病院によって供給されるヒトの微小循環に基づいた高血圧症データベースの構築において重要な要素であり得る。このデバイスは、微小管からのデータ収集の国際基準を確立する可能性のある有効な手段を提供することができる。
一般的に、このデバイスは、ベースと、このベース内にエッチング、埋め込み、成形、レーザー加工又は他の方法で形成されたモジュールとを有する。モジュールは、流動導管用の主チャネルと、この主チャネル内にある流動導管の灌流及び/又は表面灌流用の培養チャンバーと、流動導管をその長さに沿って固定するための、主チャネルと連絡している少なくとも2つの固定ラインとを含む。主チャネルは典型的に、流動導管を装填するための装填入口を有する。一部の実施例では、デバイス上に形成された装填ウェルに装填入口を接続して、流動導管の装填を容易にしている。
【0008】
以下、流動導管の調査用デバイスのモジュールの実例実施形態を概略的に示す図1を参照する。図1は、特にモジュール内で流動導管を固定する実例方法を示している。デバイス内の異なる点における圧力を示すチャートをも図示する。a)は、例えば低圧又は吸引法を利用する、流動導管の可逆固定の実例実施形態の模式図を示す。上述したように、モジュールは装填入口4を備えた主チャネル1を有する。二対の固定ライン2があり、一対の固定ラインが、小血管等の流動導管6の末端を固定するため、培養チャンバー5の各端部に位置づけられている。ここでは、培養チャネル3が、培養チャンバー5を出入りしてフィードし、例えば器官浴(organ bath)を流動導管6に提供することができる。培養チャネル3は、流動導管6の表面灌流を可能にし得る。他の実例実施形態では、培養チャンバー5が周囲に向いた開口を有し、この開口を通じて直接フィードすることができ、この場合は培養チャネル3は必要ないかもしれない。この例では、主チャネル1、装填入口4、固定ライン2、及び/又は培養チャネル3がマイクロチャネルであってよい。
模式図の傍らの圧力プロファイルは、流動導管6に作用する相対圧を図示する。この例では、装填入口4が周囲圧、PAに開放されている(例えば、装填入口4が、ペトリ皿(これから流動導管6が装填された)に向けて開放していてよい)。或いは、モジュールが、P4≠PAが実現され得る閉じたコンフィギュレーションであってよい(例えば、装填入口4を別のモジュールのチャネルに取り付けてよい。これについては後述する)。
【0009】
この例では、まず培養チャネル3及び固定ライン2を閉じることによって流動導管6を装填することができる。血管の装填と灌流プロセスを制御するシリンジポンプを、装填入口4の反対側の主チャネル1に接続し、「引抜き」又は吸引モードで操作することができる。このようにして流動導管6を培養チャンバー5内におけるその最終位置に向けて引き込むことができる。流動導管6が所望の位置に到達したら、そのさらなる動きは、主チャネル1の十分な狭さによって及び/又は主チャネル1を通じた引抜きプロセスを停止することによって防止される。次にシリンジポンプのスイッチをオフにしてよい。培養チャンバー5の両端に、予め定義し得る吸引圧が固定ライン2によって加えられる(P2)。これは、固定ライン2を、培養チャンバー5より低い静水圧レベルに接続されている液体充填チューブに接続することによって加えられる。流動導管6の典型的に短い長さと遅い灌流速度を考慮すると、典型的に血管6の各端部の圧力差は無視してよい(すなわち、P1≒P4)。吸引圧を固定ライン2に加えながら、その圧力差(すなわちP1−P2及びP4−P2)は、血管の両端において相対的に効率的かつ可逆的な固定機構をもたらし得る。従って、低圧、真空又は吸引とは、固定ライン2で加えられる圧力が流動導管の内側と外側(すなわち、培養チャンバー内)の圧力より低いことを意味する。この方法は、必ずしも真空又は吸引源の使用に限られない。次に流動導管6を調査することができる。例えば、固定された流動導管6を培養チャネル3を介して表面灌流させ及び/又は培養チャンバー5を通る流れ(例えば、入口4から主チャネル1を通る流れ)によって灌流させ得る。流動導管6の壁を横切って経壁圧(例えば、P1−P3)が確立され得る。流動導管6をモジュールから離すため、固定ライン2の圧力をP1まで高めてよい。これが両血管端における可逆シールを解放し、装填入口4を通じて流動導管6を取り外すことができる。
【0010】
さらに図1b)及びc)を参照すると、流動導管の不可逆装填、例えば重合又は組織接着剤を用いる固定用のデバイスの例を示す。b)及びc)のモジュールも、上述したように、装填入口4を備えた主チャネル1、培養チャネル3を備えた培養チャンバー5を有する。このモジュールは、後述するように、わずかに異なる配置を有する固定ライン2a及び2bを有する。
a)におけるように吸引法を用いて、血管等の流動導管6を固定するのではなく、b)及びc)の例は、不可逆的結合剤、例えばポリマー(例えば、露光、又は水分との接触(例えば組織接着剤)、又は温度変化(例えばフィブリン又はMatrigelTM)によって架橋するポリマー)、又は他の方法で誘発される凝固化学反応を用いて流動導管6を不可逆的に固定することができる。例えばシリンジポンプによる一定流速で、固定ライン2aを介して未硬化ポリマー又は組織接着剤を導入することができ(例えば、P1を超える圧力で)、結果として入口圧力が上昇する。この実例実施形態では、培養チャンバー5が結合剤であふれてしまう状況を防止するため、固定ライン2bで一定流速を除去し得る。これはにより流動導管6が1つの所望位置に確実に固定される。結合剤が流動導管6と接触したら、例えばフォトポリマー上のUV光を使用するか、又は単に組織と接触させることによって、結合剤を硬化させ得る。硬化が開始したら、固定ライン2aからのフィード流を停止してよい。同様の手順を利用して流動導管6の両端を固定することができる。次に流動導管6を調査することができる。この実例実施形態では、流動導管6をモジュールから取り外せない。例えばb)及びc)は、不可逆的に流動導管6を固定するための結合剤の導入を示す。b)は、固定ライン2aへの結合剤(灰色で)、例えば組織接着剤の導入を示す。c)は、連続した結合剤の導入と固定ライン2bを介したその除去を示す。c)に示すように、結合剤は、明確な点でのみ選択的に流動導管6と接触し、流動導管6の管腔を開いたままにする。接触点で、例えば水分との接触によってのような化学反応を介して、結合剤が硬化又は凝固し、それによって流動導管6を不可逆的に固定することができる。
【0011】
このデバイスは、動物及びヒトの種々の流動導管、例えば脳、肺、内耳及び他の器官から単離された(例えば、バイオプシーによって)血管などの研究に適合し得る。このデバイスを用いて、血管だけでなく、他の流動導管を収容又は研究することができる。他の可能な流動導管としては、脂質細管、改変血管移植片、中空繊維、動脈、細動脈、静脈、細静脈、リンパ管、腸管(例えば、十二指腸、空腸、回腸、及び結腸管)、精管、卵巣管、胆管、気管支、細気管支、気管導管、尿管、尿道、膵管、及び腎尿細管が挙げられる。このデバイスを用いて、木部内のような植物内で見られる導管を研究することもできる。人工又は改変流動導管、例えば改変血管も研究することもできる。
流動導管は、直径が約3μm〜約2,000μm、さらに特に約15μm〜約300μm、及び長さが約10μm〜1.5cmの大きさの範囲であってよい。導管を健康組織又は疾患組織から単離して、例えば、腫瘍、又は転移性組織由来の梗塞、虚血、炎症、硬化、免疫低下している血管を研究することができる。
【0012】
流動導管を約0〜500ml/時間の速度で灌流させ、或いは約0〜500ml/時間の速度で表面灌流させることができる。「灌流」とは、流動導管の管腔を通る流体の動きを意味し;「表面灌流」とは、流動導管の外側に沿うか又は外側の上方を通る流体の動きを意味する(流動導管の長さに沿って軸方向であるか、又は流動導管の周縁の回りで横方向であろうと)。両タイプの流体の動きが培養チャンバー内で存在し得る。灌流も表面灌流も培養チャンバー内で流動導管を出入りする栄養分及び他の化合物(例えば、可溶性因子、色素又は薬剤)を供給する際に役立ち得る。一部の例では、灌流又は表面灌流のどちらかが好ましいことがある。本デバイスは、灌流及び/又は表面灌流を検出及び測定するためのセンサーを含んでよい。例えば、灌流及び/又は表面灌流の判定の指標となり得る圧力降下センサーをデバイス上に組み込むことができる(例えば、ピエゾ抵抗圧力トランスデューサーを用いて)。流動導管の灌流及び/又は表面灌流に備えるとしてデバイスを説明しているが、灌流も表面灌流もないか、或いは流動導管が静流条件下に置かれている場合に本デバイスを使用することもできる。培養チャンバーを「灌流チャンバー」又は「表面灌流チャンバー」と呼ぶこともあり、培養チャネルを「灌流チャネル」又は「表面灌流チャネル」と呼ぶこともあり;このような言及は、デバイスのこれらの部品の使用を灌流又は表面灌流のみに限定するものではなく、培養チャネル及び培養チャンバーも培養液を送達することに限定されない。
【0013】
通常の二次加工法、例えばレプリカ成形、熱エンボス加工、射出成形、リソグラフィー(例えば、X線リソグラフィー)、電気メッキ、成形(例えば、LIGA)、乾式及び湿式エッチング、アブレイシブジェット加工(abrasive jet machining)、及びレーザー加工などを利用して、ベース内にモジュールをエッチング、埋め込み、成形又は他のやり方で形成することができる。他の標準的なソフトリソグラフィー技術も適している[例えば、Xia, Y.N. et al., Annual Review of Materials Science, 1998. 28: p. 153-184に記載されているように]。種々の材料、例えばシリコーン(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS))で標準的なソフトリソグラフィー技術を使用し得る。典型的に、ベースの一方の半分の表面上にモジュールのチャネル及び構造をエッチング、埋め込み、成形又は他の方法で形成してよい。次に例えばプラズマ内でフリーラジカル表面活性化後に結合、溶剤結合、圧縮結合、又はアノード結合などの技術を利用して当該表面をベースの他方の半分に結合することができる。デバイスを単層設計から、又は二層若しくは多層設計から作製することができる。二層若しくは多層設計では、各層がモジュールの少なくとも一部又はモジュールへのチャネル接続の少なくとも一部を与える。多層設計は、デバイスの必要な大きさを減じるのに有用であり、例えば、米国特許公開第2001/0029983号、第2001/0033796号、第2001/0054778号、第2002/0029814号、第2003/0019833号に記載されているように、いずれの適切な方法によっても設計及び製造することができる。
【0014】
デバイスをポリマー(例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)、及びバイオポリマー、例えばフィブリノーゲン、コラーゲン、ラミニン及びその組合せ)、ガラス、半導体(例えば、珪素又はガリウム砒素)、金属、セラミック、及びその組合せから作製することができる。デバイスを生分解性材料から作製し得る。例えば、バイオポリマー、例えばMatrigelTMから作製することができ、血管形成の調査に有用であろう。
典型的に、デバイスに固定されると、流動導管の少なくとも一部が見えるか又は検出可能なので、導管の変化をモニター及び/又は測定することができる。モジュールは典型的に、モジュールの大部分が取り囲まれるように(例えば、入口と出口を除いて)ベース内にエッチング、埋め込み、成形又は他の方法で形成されるが、モジュールの部分が開いていてもよい。例えば、培養チャンバーは少なくとも部分的に開いていてよいので、調査者は化合物を加えるか又は他の方法で流動導管を直接刺激することができる。
【0015】
培養チャンバーに加えて、モジュールが溶解チャンバー(図示せず)を含んでよい。主チャネル内に培養チャンバーと直列に溶解チャンバーを設けてよい。溶解チャンバーは、培養チャンバーと同様であってよく、それぞれの固定ラインと溶解チャネルを有する。実際には、流動導管を培養チャンバーから離し(例えば、流動導管が可逆的に固定されている場合)、流動導管が溶解チャンバーに到達するまで下流に追いやり(例えば、装填入口に高圧を加えることによって)、そこで再び固定ラインによって流動導管を固定することができる。或いは、溶解チャンバーはそれぞれの固定ラインを持たなくてもよいが、導管全体を収容するのに十分な大きさであり得る。或いは、流動中に溶解が生じることもある(すなわち、導管を固定せずに)。溶解チャネルを介して酵素などの溶解化合物を導入することによって導管を溶解することができる。結果として生じる細胞材料及び/又は細胞内材料を次にデバイスから主チャネルの出口を介して又は装填入口を介して抽出することができる。或いは、例えば培養チャンバーに溶解化合物を導入することによって、溶解チャンバーを使用せずに、流動導管の溶解を引き起こすことができる。溶解チャンバーが流動導管の一部だけを受け入れてもよい。例えば、レーザー加工、吸引又は他の適切な手段による除去のように、流動導管の一部を溶解のために除去してよい。溶解チャンバーを流動導管の一部だけに合うように適応させることもでき、そうすると溶解チャンバーに含まれる部分だけが溶解する。流動導管の一部だけを許容すると、流動導管の特定の所望部分、例えば流動導管の平滑筋細胞のみを調査するために役立ち得る。
本デバイスは種々のチャネルに合った異なる深さを有し得る。例えば、導管固定点及び培養チャンバーに2つの異なるチャネル深さがあってよい。これは、導管の中心部とデバイス内部の上壁又は底壁との間の望ましくない接触を防止することができる。
デバイスを顕微鏡(例えば、蛍光又は明視野顕微鏡)、質量分析、又は電気泳動などの分析機器と連動させることができる。蛍光強度及び蛍光寿命に基づいた画像処理、光学分光法、オンチップ溶解、又は質量分析用の設備と連動するようにデバイスを設計することもできる。例えば、他の分析機器に容易に接続できるように装填入口又は主チャネルに接続される別の出口を設計すると、デバイス内の流動導管又は溶解された材料を分析機器に直接抽出することができる。
【0016】
シリンジポンプ(例えば、培養チャンバー及び/又は入口用)をコンピューター(例えば、シリアルポート:RS232、RS423、RS 485、ファイヤーワイヤー、USB等を用いて)に接続することによって、灌流及び/又は表面灌流プロセスを自動化することができる。例えばデバイス上にプロセッサー(例えば、マイクロプロセッサー)及び/又は記憶装置を設けることによって、流動導管の応答(例えば、経壁圧及び/又は動脈収縮状態)をデバイス上に直接記録することができる。これは、本デバイスを用いた可搬式かつ内臓式調査及び分析を可能にし得る。本デバイスは、温度制御装置(例えば、熱電素子又は抵抗素子)を含んでよく、或いは定温流体のクロスフローストリーム用チャネルは、デバイス内の流動導管の調査又は培養中に固定流動導管の温度を制御(例えば、生理的レベルで維持)できるようにする。デバイス内に流動導管を固定すれば、温度を例えば4℃に下げてよい。これは、例えば、デバイス内に固定した流動導管を調査の前後に輸送することを可能にし得る。デバイスの寸法を小さくするか、又は追加の機能性のため他の機器及び部品を加えてよい。デバイスがコンピューター又は他の計算装置と通信する場合、流動導管のモニタリングを自動で行うことができる。デバイスがメモリを含む場合、記録データ、例えば流動導管のモニタリング又は調査からのデータをデバイスに保存することができる。この保存データを分析のため有線又は無線で外部デバイス、例えばワークステーション又は外部コンピューターに送信することができる。
【0017】
小さい流動導管(例えば、抵抗動脈)又は大きい流動導管(例えば、腸間膜動脈)の調査のためにこのデバイスを使用し得る。生き残るために機械的刺激が必要な流動導管もある。例えば、腸間膜動脈は、培養中に長手方向に伸ばす必要がある(例えば、1mmの長さの腸間膜動脈セグメントについて200μmまで)。このような機械的刺激は培養チャンバーを介して与えられる。流動導管の末端をマニピュレーターに取り付けて流動導管を機械的に伸ばすことができる。このようなマニピュレーターはデバイスに組み込まれていても外部にあってもよい。或いは又はこれに加えて、機械的アクチュエーターをデバイス上に取り付けるか又は埋め込んでよい。
実例実施形態では、デバイスのベースは、それが変形できるように相対的に柔軟であるか又は弾力性があってよい。固定流動導管の長さに合わせた方向のベースの伸長は、流動導管の機械的伸長に変えることができる。流動導管の一端に配置され、かつ流動導管から離れた方に曲がるように設計された組込型圧電曲げアクチュエーターによって、このベースの伸長を与えることができ、こうして長さ方向の伸長がもたらされる。このようなアクチュエーターをデバイスのベース内に二次加工してよく、或いはデバイスの表面上に取り付けてよい。他の同様の機械的アクチュエーターを使用することができる。
このデバイスは、長時間(例えば、10日以上)その構造上及び機能上の完全性を維持しながら、流動導管のすべてにわたり完全な環境を制御することができる。このデバイスを用いて、流動導管の特性、例えば収縮、イオン、電気、分子及び/又は構造特性などをモニター及び調査することができる。
一部の実例実施形態では、本デバイスは流動導管に投与すべき化合物を含んでよい。例えば、本デバイスは、経時的に培養チャンバー内に放出される活性化合物を含んでよい。他の例では、デバイス内の化合物を手動又は自動機構で固定流動導管に投与することができる。
【実施例】
【0018】
(単モジュールデバイスの実施例)
以下、動脈セグメントと共に使用されている、流動導管の調査用デバイスの実例実施形態の画像を示す図2を参照する。この例では、多層ソフトリソグラフィー技術を利用してデバイスを製作した。長さが約1mmの抵抗動脈セグメントを入口(装填ウェルに接続され得る)を介して導入した。
この例では、図2a)に示すように、入口「A」を通る圧力駆動流によって円筒状動脈セグメントを培養チャンバー、つまり動脈検査領域に導いた。次に吸引圧を加えることによって固定ライン「E」で動脈を固定した。引き続き、(i)ストリーム「B→C」で動脈外壁を選択的に表面灌流させること(例えば、培養チャネルを介して)、(ii)動脈の内側(すなわち、管腔)をストリーム「A→D」で灌流させること(例えば、主チャネルを介して)、(iii)動脈壁を横切る差圧を制御すること及び(iv)温度を37℃に調整することによって生理的条件を模倣した微小環境に動脈セグメントを供した。灌流/表面灌流ストリームの流速、圧力及び組成を独立に調整することができる。灌流ラインと表面灌流ラインとの間のクロストークを固定ライン「E」で阻止した。
【0019】
さらに図2を参照すると、b)は、前もって単離した血管又は血管セグメントを培養チャンバー内に装填した直後のデバイスを示す。血管は加圧され、まだ血液で満たされていることに留意されたい。100mmHgに加圧して、経時的に管腔内血液を生理食塩水と置き換えるように血管の管腔を通る流れを惹起した。c)は、食塩水を灌流させた後かつ規定の経壁を加えた後の管腔が開いている血管を示す。この例では、デバイスはチップとも呼ばれ、培養チャンバーは器官浴(OB)とも呼ばれる。
このデバイスの実例実施形態は、外寸が75mm(L)×25mm(W)×4mm(H)であり、通常の直立若しくは倒立明視野又は蛍光顕微鏡を用いた検査ができる典型的な大きさでである。標準的ソフトリソグラフィー技術を用いてマイクロチャネル設計をコンピューター支援設計(CAD)ファイルからプリント透明マスクに変換した。負のフォトレジストのスピンコーティング層(この例では、MicroChem, Newton, MAのSU8-25TM及びSU8-2050TM)を予備焼成し、透明マスクを用いて露光し、後焼成し、引き続き現像した。逆マイクロチャネルパターンをポリ(ジメチルシロキサン)型に移した。光学的に透明なエラストマー型をマスターから剥がし、カットし、別のエラストマー層又はO2プラズマを用いて前洗浄したスライドガラスに結合した。多層リソグラフィーは、固定点及び培養チャンバーで2つの異なるチャネル深さの収容を許容した。それによって、動脈の中心部とデバイスの上部壁/下部壁との間の望ましくない接触を阻止した。
【0020】
デバイス製作は構造材料としてPDMS/ガラスに限定されず、微細加工法としてソフトリソグラフィーに限定されない。一般的に知られているように、微細加工に適したいずれの材料及び方法をも利用することができる。或いは、半導体材料、例えば珪素を用いて、確立されたバルク珪素加工技術を利用してデバイスを製作してよい。ガラスを使用する製作は、湿式及び/又は乾式エッチング並びにレーザー加工技術を利用して達成することができる。生体適合性及び分解性ポリマーマトリックスを含め、種々多様のポリマーを用いた製作も可能である。可能なポリマーデバイス製作技術として、レプリカ成形、熱エンボス加工、射出成形、アブレイシブジェット及びレーザー加工が挙げられる。
この例では、灌流、表面灌流及び廃棄ラインを含む外径(OD)1.59mm(1/16”)のポリマー(例えば、Tygon(登録商標)、PEEK、Teflon(登録商標))チューブにエポキシ接続又は可逆性マニフォールド(例えば、圧縮シール)を介してデバイスを接続した。外径1.59mmのポリマーチューブをさらに可逆性流体ユニオン(例えばUpchurch Scientific, Oak Harbor, WAから)と接続して、デバイスの流体充填バイアルへの接続からデバイスを便利に除去できるように及び/又は手動でシリンジポンプを制御できるようにした。異なる流体ラインは、流動導管の内部を通る灌流と培養チャンバー内における導管の外側の表面灌流とを提供するための、デバイスへの流動導管の装填を可能にした。
【0021】
以下、流動導管、この場合は動脈をこの実例実施形態のデバイス内に装填する実例プロセスについて述べる。最初にデバイスをウシ血清アルブミン(BSA)溶液で洗い流して、主チャネル又は培養チャンバーの壁への動脈のいずれの望ましくない接着をも阻止した。前もって単離した抵抗動脈(典型的に長さが1〜2mm、直径が30〜200μm)をデバイス内に200μm幅、150〜200μm深さの装填入口(例えば、デバイスレイアウトが装填ウェルを含まない場合)を介して又は装填ウェル(例えば、デバイスレイアウトが入口に接続された装填ウェルを含む場合)から装填した。上述したように、ここで使用する動脈の可逆固定の代替として、不可逆固定法を利用することができる。
固定したら(例えば、可逆固定法を利用して)、培養チャネルの入口に接続されたシリンジポンプを灌流モードで操作することによって動脈の管腔を灌流させた。培養チャネルの入口と出口を異なる静水圧レベルに接続することによって、動脈の壁を横切る規定経壁圧差を維持しながら培養チャンバーを通る流れを達成した。培養チャネルの入口に接続された、灌流モードで作動する第2のシリンジポンプで培養チャンバーを表面灌流させることによって、規定経壁圧差(すなわち、図1中のP1−P3)を維持しながら培養チャンバーを通る流れを達成した。このようにして培養チャネルの出口の静水圧レベルを低減した。動脈の内壁及び外壁を規定経壁圧にさらして、規定濃度の活性分子を含む3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸(MOPS緩衝液)を灌流させた。
【0022】
図3は、動脈を装填したデバイスの実例実施形態の画像を示す。a)は、縫合糸で適所に保持し、常法を利用して45mmHgに加圧したガラスマイクロピペット上にカニューレ挿入した腸間膜動脈を示す。b)は、45mmHgに加圧し、この例ではシリンジ制御低圧チャネルである固定ラインを介して加えた吸引によって適所に保持した実例デバイの培養チャンバー内に装填した腸間膜動脈を示す。
図4は、動脈の灌流での使用を実証するデバイスの実例実施形態の画像を示す。抵抗動脈をデバイス内に装填し、赤を示すローダミン色素を動脈の管腔を通して灌流させ、かつ培養浴内で、緑色を示す蛍光色素を表面灌流させた。a)は、フルオレッセインのベースラインレベルにおける動脈を示す。0秒で、シリンジポンプを用いてフルオレッセインを4mL/時間の流速で注入した。b)は、4秒(フルオレッセインが余分な管腔スペースに達したとき)の動脈を示す。c)は、5秒(動脈がさらにフルオレッセインにさらされたとき)の動脈を示す。d)は、6秒(動脈がフルオレッセインに完全に浸されたとき)の動脈を示す。これらの画像は、血管の管腔内スペース内を流れる流体(すなわち灌流)の、血管の外側を流れる流体(すなわち、表面灌流)からの分離をも実証する。
【0023】
(実例レイアウト)
このデバイスについて特定の設計及びレイアウトを調製し、後述する図面に示す。必要に応じて、モジュールを拡大して詳細を示す。これらの例は、説明の目的のためだけであり、限定する意図ではない。
ここで述べる例では、2つ以上の層がある場合、外部接続(例えば、シリンジポンプ又は低圧源)を「×」を有する穴で表し、上層と下層との間の接続を穴で表す。これらの模式図中、培養チャンバーの入口と出口は、「器官浴」又は「灌流」又は「ドレイン」と呼び、固定ラインの入口と出口を「吸引」と呼ぶことがある。いずれのこれらの標識もこれらの入口と出口又はそれらの種々のチャネルの可能な接続及び機能を全く限定しない。例えば、「吸引」と標識された入口を用いて流動導管の可逆固定のために吸引を加え得るが、これを用いて流動導管の不可逆固定用の結合材料を投与してもよい。
図示しないが、デバイスが多層レイアウトを有してよく、多層内の1つ以上のエッチングチャネル又はチャンバーは触れている。すなわち、上層と下層のチャネル及びチャンバーが分離されているのではなく、層間で連続している。これは、いくつかのより深いチャネル又はチャンバーを設けながら、デバイス上の他のチャネル又はチャンバーを相対的に浅くしたままにすることができる。この設計についての変形は、層の数を3以上に増やすことによって、さらに深いチャンバー及び/又はチャネルを考慮に入れることができる。
【0024】
図5は、デバイスの実例実施形態における流動導管の固定の例を模式的に示す。ここでは、固定位置を示す破線円を用いて、可逆固定技術を明らかにする。a)及びb)は、培養チャンバーの各端部に単一の固定ラインを有する設計例を示す。c)及びd)は、培養チャンバーのそれぞれに複数の固定を有する設計例を示す。
図6は、流動導管を不可逆的にデバイス上に固定し得る実例デバイスレイアウトの模式図である。特に、a)では、流動導管(1)の内側領域と外側領域が相互に分離されるように、流動導管(1)を両端(4)で可逆的に固定してある。外側領域で、流動導管をポリマー(2)でさらに埋め込むことができる。例えば埋め込まれた導波路又は光ファイバーを介して集束光を導いて、流動導管の一セクション上に焦点を合わせ得る。この配置は、流動導管からサンプルを選択的に取り出して引き続き分析するのに有用であり、かつさらに詳細に後述するように、健康及び疾患の血管内における血管の網目構造の形成を研究するのにも役に立ち得る。
図7は、装填浴のない単層レイアウトを示す実例デバイスの模式図である。流動導管は、デバイスの下隅に伸長する主チャネルを介してデバイスに入る。2つの固定ラインは個々に又は別々にアクセスされ又は取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームは流動導管を横切って流れる。
図8は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。上側画像が上部流体層を示し、下部画像がデバイスの下部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスの下部層に入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームは流動導管を横切って流れる。
【0025】
図9は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。上側画像が上部流体層を示し、下部画像がデバイスの下部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスの下部層に入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームの流れはまず分割された後、この2つのサブストリームが流動導管に沿って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。一般的に、表面灌流ストリームは2つのサブストリームに分割されてから、培養チャンバーの左側と右側に同時に入るように導かれる。この設計は、培養チャンバー内の中身の相対的に速く、勾配のない置換を確実にすることができ、かつ流動導管の両側の刺激をも可能にする。
図10は、装填浴のない二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。上側画像が下部流体層を示し、下部画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、デバイスの下部層に下側で主チャネルを介して入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームの流れはまず分割された後、この2つのサブストリームが流動導管に沿って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。
図11は、装填浴のない単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。流動導管は、デバイスの下部層に下側で主チャネルを介して入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームの流れはまず分割された後、この2つのサブストリームが流動導管に沿って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。
【0026】
図12は、装填浴のない二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。上側画像が上部流体層を示し、下部画像がデバイスの下部流体層を示す。流動導管は、デバイスの下部層に下側で主チャネルを介して入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームの流れはまず分割された後、この2つのサブストリームが流動導管に沿って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。
図13は、装填浴のない単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。流動導管は、下側でデバイスに主チャネルを介して入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームは流動導管を横切って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。
図14は、装填浴のない単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。流動導管は、下側でデバイスに主チャネルを介して入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。表面灌流ストリームの流れはまず分割された後、この2つのサブストリームが流動導管に沿って流れ、次にデバイスから別々の出口に導かれる。
【0027】
図15は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例は、150μmの導管、例えば150μmの血管の調査に適合し得る。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。2つの表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、2つの等価なサブストリームに分割されてから導管の外側の流れに沿って流れ、デバイスから接合出口に導かれる。
図16は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例は、120μmの導管、例えば120μmの血管の調査に適合し得る。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の1つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。両ストリームの流速及び流圧を別々に調整/制御することができる。2つの表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、2つの等価なサブストリームに分割されてから導管の外側の流れに沿って流れ、デバイスから接合出口に導かれる。
図17は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。左画像が下部流体層を示し、右画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流ストリーム用の2つの培養チャネルと、灌流ストリーム用の1つの入口がある。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。2つの表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、2つの等価なサブストリームに分割されてから導管の外側の流れに沿って流れ、デバイスから接合出口に導かれる。
【0028】
図18は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、1つの共通の灌流ラインと、培養チャンバーの左側と右側への2つの別々の表面灌流ラインがある。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。流動導管の軸に沿った各側面で、2つの表面灌流ストリーム(異なってよい)がまず拡散によって混合した後、それらが導管の外側に沿って反対側に流れる。
図19は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、共通の灌流ラインと、培養チャンバーの左側と右側への2つの別々の表面灌流ラインがある。左画像が下部流体層を示し、右画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入り、下部層内に含まれる主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。流動導管の軸に沿った各側面で、2つの表面灌流ストリーム(異なってよい)がまず拡散によって混合した後、それらが導管の外側に沿って反対側に流れる。
図20は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、共通の灌流ラインがある。このレイアウトは、軸方向に加えられる表面灌流ストリームの濃度の段階変化を可能にし得る。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。2つの表面灌流ストリーム(異なってよい)がまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の軸に沿って異なるセクションにさらされる。生存流動導管のため、この設計は、該導管の生理的環境では見られない微小環境の創造を可能にし得る。
【0029】
図21は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、共通の灌流ラインがある。このレイアウトは、軸方向に加えられる表面灌流ストリームの濃度の段階変化を可能にし得る。左画像が下部流体層を示し、右画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入り、下部層内に位置する主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。2つの表面灌流ストリーム(異なってよい)がまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の軸に沿って異なるセクションにさらされる。生存流動導管のため、この設計は、該導管の生理的環境では見られない微小環境の創造を可能にし得る。
図22は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、共通の灌流ラインがある。このレイアウトは、2つのサブストリームの拡散混合によって、表面灌流ストリームの濃度を経時的に変えることができる。左画像が下部流体層を示し、右画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入り、下部層内に位置する主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。2つの別々の表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の外側で合流する。2つの別々の灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の内側で合流する。
【0030】
図23は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、2つの灌流ラインがあり、2つの灌流ストリームを混合せずに相互に接触させる。このレイアウトは、2つのサブストリームの拡散混合によって、表面灌流ストリームの濃度を経時的に変えることができる。左画像が下部流体層を示し、右画像がデバイスの上部流体層を示す。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入り、下部層内に位置する主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。2つの別々の表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の外側で合流する。2つの別々の灌流ストリームは、最小限の拡散混合によって、反対側の流動導管の内部で合流する。生存流動導管のため、この設計は、該導管の生理的環境では見られない微小環境の創造を可能にし得る。
図24は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。この例では、共通の灌流ラインがある。3つの異なる表面灌流ラインがあってもよく、異なる表面灌流ストリームを拡散によって混合させることができる。流動導管は、装填ウェルを介してデバイスに入って主チャネルに入る。モジュールの各端部の2つの固定点は個々に取り扱い得る。表面灌流/灌流ストリームの全ての個々の流速及び結果として生じる全表面灌流ストリームと灌流ストリーム内の圧力を別々に調整/制御することができる。3つの別々の表面灌流ストリームがまず拡散によって混合した後、それらが流動導管の外側で合流する。
【0031】
(複数モジュール設計)
単一モジュール設計に加えて、単一デバイスに複数のモジュールを設けてよい。直列配置、並列配置、網目構造配置、又は他の多重配置でベース内にモジュールを形成することができる。
(直列モジュールの例)
2つ以上のモジュールをデバイス上に直列に配置することができる。共通の主チャネルと共通の装填入口を有することを除き、各モジュールは上述した単一モジュールと機能的に同様であってよい。一部の実例実施形態では、共通の主チャネル又は共通の装填入口を共有することなく、モジュールが直列にあってよい。流動導管を各モジュール内に連続的に装填し、固定ラインを用いて各モジュールに固定することができる。各モジュール内に固定された導管が本質的に同一条件にさらされ得るように、各モジュールが同一の灌流ポンプ、表面灌流ポンプ及び/又は低圧源を共有してよい。或いは、例えば別々の灌流ポンプを使用することによって、各モジュール内の導管を異なる条件にさらしてよく、例えば、1つのモジュールの培養チャンバーに化合物を灌流させるが、いずれの他のモジュールにも灌流させないくてよい。
流動導管の装填、固定、調査、及び取外しは上記と同一であってよい。典型的に、装填入口から最も遠いモジュールに最初の流動導管を装填して固定した後、次の流動導管をより近いモジュールに装填することによって、流動導管を順々に装填することができる。
【0032】
図25は、装填浴のない二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。直列の2つのモジュールがある。2つの短い流動導管又は全ての固定部位にわたって伸長する1つの長い流動導管が、下部層内に位置する主チャネルを介してデバイスに入る。この例では、共通の灌流ライン、個々の固定ライン及び2つの別々の表面灌流ラインがある。個々の流動導管又は同一流動導管の個々のセクション(例えば、十分長い流動導管の場合)がその/それらの軸を横切って表面灌流され得る。
図26は、流動導管を装填するための装填浴のある二層レイアウトを示す実例デバイスレイアウトの模式図である。直列の2つのモジュールがある。2つの短い流動導管又は全ての固定部位にわたって伸長する1つの長い流動導管が装填浴を介してデバイスに入り、下部層内に位置する主チャネルに入る。この例では、共通の灌流ライン、個々の固定ライン及び2つの別々の表面灌流ラインがある。個々の流動導管又は同一流動導管の個々のセクション(例えば、十分長い流動導管の場合)がその/それらの軸を横切って表面灌流され得る。
図27は、流動導管を装填するための装填浴のある単層レイアウトを有する実例デバイスレイアウトの異なる模式図である。これらの実例レイアウトは直列の2つのモジュールを有する。2つの短い流動導管又は全ての固定部位にわたって伸長する1つの長い流動導管が、下部層内に位置する主チャネルを介してデバイスに入る。この例では、共通の灌流ライン、個々の固定ライン及び2つの別々の表面灌流ラインがある。個々の流動導管又は同一流動導管の個々のセクション(例えば、十分長い流動導管の場合)がその/それらの軸を横切って表面灌流され得る。
これらの例は2つだけの直列モジュールを示すが、当業者には3つ以上の直列モジュールを有するようにデバイスを設計できることが明らかであろう。一部の例では、直列モジュールが共通の培養チャンバーを共有し得る。すなわち、共通の長い培養チャンバーを、複数の流動導管を固定するか又は培養チャンバーの長さに沿って流動導管の複数部分を固定するための2つより多くの固定点と共に使用することができる。
このデバイスの直列設計は、例えば、バイオアッセイを行なうとき、及び治癒プロセスを研究するために役立ち得る。例えば、バイオアッセイでは、薬剤を上流の動脈だけ(すなわち、装填入口により近い動脈)に投与して、下流動脈(すなわち、装填入口から離れた動脈)に及ぼす効果を観察することができる。動脈の治癒又は接合を研究するため、2つ以上の別々の動脈を連続モジュールに装填し、隣接端間に小さい隙間を設けて固定することができる。別々の動脈端の成長及び接合を経時的に観察できるのみならず、該成長を促進する際の種々の薬剤の有効性を観察することができる。
【0033】
(並列モジュールの例)
2つ以上のモジュールを単一デバイス上に並列に配置することができる。モジュールは上述した単一モジュールと同様の接続を有し、かつ機能的に同様であってよい。モジュールは、各モジュール内に固定された流動導管が本質的に同一条件にさらされ得るように、同一の灌流ポンプ、表面灌流ポンプ及び/又は低圧源を共有してよい。或いは、例えば別々の灌流ポンプを使用することによって、各モジュール内の導管を異なる条件にさらしてよく、例えば、1つのモジュールの培養チャンバーに化合物を灌流させるが、デバイス上の他のいずれのモジュールにも灌流させないようにすることができる。モジュールが共通の培養チャンバーと培養チャネルを共有してよい。すなわち、各モジュールの培養チャンバーと培養チャネルを一緒に接続してよい。流動導管の装填、固定、調査、及び取外しは上記と同一であってよい。
図28は、流動導管を装填するための装填浴のない単層レイアウトを有する実例デバイスレイアウトの異なる模式図を示す。これらの実例レイアウトは並列の2つのモジュールを有する。2つの流動導管が個々の主チャネルを介してデバイスに入ることができる。この例では、共通の灌流ライン、個々の固定ライン及び別々の表面灌流ラインがある。各モジュール内に固定された2つの流動導管がそれらの軸を横切る別々のストリームで表面灌流され得る。
図29は、いくつかの並列流動導管を装填するための別々の相互接続された装填浴のある二層レイアウトを有する実例デバイスレイアウトの異なる模式図を示す。下部層に位置する個々の主チャネルを介して流動導管を装填することができる。これらの実例レイアウトはそれぞれ8つの並列モジュールを有する。
並列の2又は8つのモジュールについてだけ示してあるが、当業者には異なる数の並列モジュールを有するようにデバイスを設計できることが明らかであろう。
【0034】
このデバイスの並列設計は、調査する流動導管を同一の条件に本質的に同一の時間確実にさらすのに役立ち得る。例えば、統計目的のため本質的に同一時間同一条件(例えば、培養液、流動導管)下の多数の動脈から結果を得ることが望ましいであろう。同一デバイス内の並列配置の全ての動脈を固定すると、同一条件下、同一時間で全ての動脈を一緒に試験することができる。並列配置は、単にモジュールごとに前進させることによって、並列流動導管を1つずつ次第に進められるので(例えば、自動分析計で)、試験手順を自動化するのにも役立ち得る。
上記直列及び並列配置に加えて、他の多重配置が可能である。例えば、直列配置と並列配置を組み合わせて単一デバイス上にモジュールのアレイ配置を得ることができる。分岐網目構造、円形網目構造、又はいずれの他の所望配置にモジュールを配置してもよい。全ての場合、一部又は全てのモジュールが別々の培養チャンバーを有してよく、或いは培養チャンバーと培養チャネルを共有してよい。一部又は全てのモジュールが個々の灌流ポンプ、表面灌流ポンプ、低圧源、並びに他の入口及び出口を有してよく、或いは一部又は全てのモジュール間でこれらを共有してよい。モジュールが全て同一の固定方法(例えば、可逆的又は不可逆的)を利用してよく、或いは異なる固定方法を用いてよい。
【0035】
(集積光ファイバーを有する例)
図30は、集積光ファイバーを有するデバイスの実例実施形態を示す。ここで、この例は、装填浴のある単層レイアウトを有する。単一又は複数の光ファイバーを、例えば、デバイスの隅につながる直線チャネルを介して挿入することができる。小レンズをモジュール内に埋め込んで(例えば、“PDMS 2D optical lens integrated with microfluidic channels: principle and characterization” Camou S, Fujita H, Fujii T, Lab on a Chip 3 (1), 40-45 2003に記載されているように)、光ファイバーによって放射された光の焦点を主チャネル内の位置に合わせることができる。
この設計は、光ファイバーによってレーザー光を固定流動導管の方向に導くことができる。例えば、このようなセットアップは、正確に定義された傷害を、血管の管腔からの内皮細胞のその後の成長の必要条件又はイニシエーターとして設定するための血管形成研究で役立ち得る。パルスレーザー(例えば、パルス状Nd:YAG又は超速パルスレーザー)又は連続波レーザーが、可能なレーザー源である。デバイス内のレンズによって、光ファイバー又は導波路30を離れる光の焦点を血管壁(それが、正確に定義された傷害を引き起こすところ)の方向に合わせることができる。
【0036】
(応用)
このデバイスをチップ又はマイクロデバイス上に、例えば、マイクロ流体チップ又はラブオンチップとして設けてよい。これは、多くのアッセイ及び試験の小型化及び拡大縮小を可能にし、高処理能力を斟酌することができる。例えば、このデバイスを用いて、WO2003/078606(Bolz)に記載の手順を行なうことができ、相対的に未熟な技術者によってでさえ、相対的に容易かつ効率的に実施することができる。
一般的に、流動導管を調査するために本デバイスを使用し得る。流動導管を主チャネル内に装填し、導管の少なくとも一部で培養チャンバー内の適所に固定することができる。問題の化合物、例えば生物因子などを含んでよい生理的溶液を導管上に灌流又は表面灌流させ得る。次に流動導管をモニターして、いかなる応答をも調査することができる。
上述したいずれの方法を利用しても流動導管を分析又はモニターすることができる。方法としては、明視野若しくは蛍光顕微鏡技術、蛍光強度及び蛍光寿命に基づいた画像処理、光学分光法、オンチップ溶解及び質量分析法などが挙げられる。例えば、集積光技術、例えばレーザー光技術を用いて、直径を測定することによって、モニタリングを行なってもよい。
【0037】
(血管の研究)
本デバイスを一過性Ca2+画像処理などの画像処理技術と組み合わせて、動脈などの流動導管の収縮状態、及びCa2+応答の時間分解記録を得ることができる。本デバイスは、上述したように、溶解能力を含んでよく、かつ質量分析計と連動するように本デバイスを設計することができる。
血管の標準的特徴づけは、動脈の緊張度及び/又は直径の測定を含み、明視野及び蛍光倒立顕微鏡で行なわれる。このデバイスを種々のタイプの明視野又は蛍光画像処理、例えばCa2+画像処理と組み合わせて、動脈の収縮状態及びCa2+応答の時間分解記録を得ることができる。溶解能力、並びに電気泳動法、蛍光分光法、及び質量分析法への自動化インターフェースを包含し得る。
1つの研究的興味は、血管壁の血管平滑筋細胞における細胞内プロセスをマッピングすることである。しかし、培養内の主な平滑筋細胞は数時間以内に収縮性表現型から合成表現型に脱分化する傾向がある。観察される最も顕著な変化は、アクチンベース細胞骨格の再構築である。従って、この脱分化作用が起こらない細胞モデルを使用することが望ましいであろう。無傷組織(例えば、微小血管壁内の完全に分化した血管平滑金細胞)内の輸送プロセスの研究を可能にするであろう先進実験システムも望ましい。組織モデルはin vivo状況をよく反映するので、細胞培養モデルよりむしろ組織モデルが典型的に選ばれる。トランスフェクトされた単離微小血管の実験モデルは、細胞内輸送機構に関する細胞ベースの知識を器官系全体に翻訳するためのユニークな枠組みを提供することができる。しかし、従来技術のセットアップでは、単離微小血管の使用は、顕微解剖法に高度に熟練した人員、特殊な設備及び相当な時間を必要とする(例えば、単離及びカニューレ挿入プロセスのため)。本明細書で開示したデバイスは、基本的な実験手順を容易にし、かつより高い処理能力を斟酌することができる。
このデバイスを用いて、研究者は、例えば(i)光技術の新技術革新を試験するため及び(ii)複雑な多細胞環境内における重大な微小血管輸送タンパク質及びそれらの制御パターンを同定するため、より容易かつより効率的に単離血管を使用することができる。ヒト組織へのアクセスと共に、このデバイスは、研究者が個々の疾患パターン(例えば、臨床診断)を、患者のバイオプシーから単離した微小血管内の細胞内輸送機構の変化と関連づける立場にあるようにすることができる。
【0038】
(実施例)
本デバイスを用いて生物流動導管の応答を調査することができる。本デバイスを利用する調査は、他の常法によって得られた結果と同様の結果をもたらすことが分かった。例えば、図31は、本デバイスを用いて測定した、フェニレフリン(PE)に対する動脈の応答を図示するチャートを示す。この例では、PEを流動導管の外面に適用し、PEの用量を段階的に変えた。流動導管径の測定された変化をチャートに示してある。a)は、通常のピペットカニューレ挿入セットアップを用いて腸間膜動脈で測定された、PEに対する用量依存性応答を示す。この例では、最大外径狭窄は、3.0μMのPEで44.5±2.5%だった(n=5)。b)は、本デバイスを用いて測定された、用量依存性PE応答(ここでは、流動導管の内径と外径の変化)を示す。通常のピペットカニューレ挿入セットアップを用いた結果と同様かつ本質的に同一であり、3.0μMのPEで42.2±3.8%の最大外径狭窄だった(n=5)。
【0039】
別の例では、本デバイスを用いて腸間膜血管を調査した。図32は、本デバイス内の腸間膜血管の狭窄を図示するチャートを示す。この例では、マウス腸間膜血管を用い、PEの単一用量を投与した。PEを流動導管の外面に適用した。a)は、即座にPEによる刺激にさらした単離したばかりの動脈で測定された、3.0μMのPEに対する腸間膜血管の応答の代表的な追跡を示し、41.8%の持続性狭窄があった。b)は、PEに対する応答を試験する前に本デバイスで24時間培養内で維持した単一の腸間膜血管の代表的な追跡を示し、3.0μMのPEに対して41.4%の持続性狭窄を示している。本デバイスを用いて調査した血管は24時間後でもまだ生存可能であり、PEに対して変化した応答は示さなかった。
図33は、再構築された蛍光画像と、本デバイスの実例実施形態の腸間膜動脈について、カルシウム感受性色素、FURA-2色素を用いたレシオメトリック(ratiometric)測定を図示するチャートを示す。動脈内の平滑筋細胞が染色されている。この例ではマウス腸間膜動脈を用いた。a)は、本デバイス上に固定され、かつFURA-2 Ca2+レシオメトリック色素が装填された腸間膜動脈を示し、血管周縁に巻き付いた平滑筋細胞を示している。b)は、固定血管から得られたFURA-2レシオメトリック測定値を示しており、3.0μMのPEで刺激されるとFURA-2の比率が増え、洗い出し後にベースラインに戻ることを示している。チャートは、血管内のFURA-2のF340nm/F380nm比の増加を示している。
【0040】
(血管形成アッセイ)
本デバイスを用いて、生存可能な生物流動導管内における血管形成を調査することもできる。例えば、中に血管等の生物導管を埋め込んだバイオポリマー(例えばMatrigelTM、フィブリノーゲン等)で培養チャンバーを満たしてよい。血管は、灌流によって培養液又は他の化合物を受け得る。或いは又はさらに、培養液又は他の化合物でバイオポリマーを表面灌流させてよく、すると培養液又は他の化合物がバイオポリマーを介して拡散して血管に達し得る。場合によっては、成長因子のデポーをバイオポリマーの1つの所定スポットで注入し、バイオポリマーを介してゆっくり拡散させてよい。このように確立された勾配は、血管の成長中の細胞への走化性誘導をもたらし得る。
上述したように、デバイス内に血管を可逆的又は不可逆的に固定することができる。例えば、血管を血管形成因子にさらすことによって、或いは例えばレーザーアブレーション機器を用いたレーザーアブレーションによって、血管を局所的に傷つけることによって、血管形成を誘発することができる。次に血管の治癒又は血管形成活動を観察することができる。適切な血管形成因子としては、内皮細胞成長因子(ECGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンギオジェン(angiogen)、低分子量内皮マイトジェン、内皮細胞走化性因子、脂質、血管内皮成長因子(VEGF)及び血小板由来成長因子(PDGF)が挙げられる。
【0041】
他の応用として、問題の粒子又は分子を含む流体を流動導管に灌流させること、流動導管壁を通る粒子又は分子の輸送を評価すること及び毒性のモニタリングが挙げられる。
本デバイスを用いて血液脳関門を調査することもできる。例えば、流動導管が脳の微小血管網目構造由来の血管であってよい。調査し得る流動導管として、とりわけ、脳導管、肺導管、内耳導管、脂質細管、改変血管、中空繊維、動脈、細動脈、静脈、細静脈、リンパ管、腸管、精管、卵巣管、胆管、気管支、細気管支、気管、尿管、尿道、膵管、及び腎尿細管が挙げられる。流動導管が、調査すべき生理的条件を有してよく、例えば、流動導管が梗塞、虚血、炎症、硬化、免疫低下、腫瘍保有していてよく、又は転移性であってよい。人工又は改変流動導管を調査することもできる。
【0042】
(研究及び商業的応用)
(臨床用途)
基礎科学から臨床応用への知識の翻訳は、ヒト組織へのアクセスに基づく(例えば、バイオプシーから得た微小血管の分析)。翻訳アプローチをうまく実行するため、臨床医が微小血管研究の分野に関心をもつことが望ましいだろう。開示デバイス及び最新診断技術と組み合わせたヒト試料へのアクセス及びそれらのそれぞれの患者の記録が、微小血管疾患を理解及び治療する際のブレイクスルーのための機会を提供し得る。このデバイスは下記要素:(i)機能血管分析及び器官培養のために最適化された微小環境;(ii)困難な血管カニューレ挿入プロセスの可能な自動化;及び/又は(iii)非常に小さくて脆弱な動脈をルーチン的に研究する能力を提供し得るので、本デバイスは微小血管研究の実験アプローチの標準化を可能にし得る。例えば、これらの要素は、世界中の研究室及び病院によって供給される、ヒト微小循環に基づいた高血圧症データベースの構築に有用な要素である。このデバイスを用いた標準化実験プロセスの円滑化は、より多くの臨床医を積極的に参加することに関心をもたせ得る。
【0043】
(治療開発)
このデバイスは、器官、膜及び血管の導管レベルでの製剤の治療に対する高処理スクリーニング応答を提供することができる。
血管の研究は、生活の質を改善する可能性を有し、かつ経済活動を増大させる。血管の研究は、全身の血圧の制御に優勢に寄与する抵抗動脈の緊張度及び/又は直径の制御の遺伝的、後成的、プロテオミクス的、細胞的及び分子的機構の同定の促進に役立ち得る。血圧のコントロールは、心血管疾患の発生を予防するのに有用である。その根底にある分子機構の理解は、新規治療戦略の開発に有意に影響し得る。高血圧症及び関連分子機構についての知識の改善は、できるだけ正確にin vivo状況をシミュレートする調査モデルから利益を得ることができる。このデバイスは、このようなモデルを提供することができる。本デバイスは、治療の新規標的の同定に役立ち、かつ同基盤についてのそれらの即時検証を可能にし得る。従って、このデバイスは、基礎科学の発見をより短い時間でその臨床応用に導くことができる。
このデバイスは、基本的実験手順の高処理能力を備えることもできる。従って、このデバイスは、薬物開発プロセスにおける標的同定、標的検証、薬物設計及び高処理スクリーニングの魅力的ツールであり得る。このデバイスは動物及びヒトに基づいた試料の両方の調査のために使用し得る。例えば、特定患者の心血管の健康状態を彼/彼女の微小循環の機能状態に直接関連づけるための診断ツールで本デバイスを使用することもできる。これは、微小血管の病態の診断及び特有の治療への個別化アプローチを提供し、それによって基本科学の知識を臨床応用に翻訳することができる。従って、本デバイスは、個別化医療を可能にするのに役立ち得る。
【0044】
このデバイスは、例えば治療製品の確認試験における流動導管の構造試験及び応答試験を可能にし得る。このデバイスを用いて、動物、ヒト、植物、及び他の生物由来の流動導管を試験することができる。流動導管はいずれの器官由来であってもよく、人工又は改変導管を含んでもよい。本デバイスは、特定の薬物、疾患、状態、若しくは治療のスクリーニング又は評価において個体又は個体群の代表的な導管を利用することによって、個体又は個体群の標的治療を可能にし得る。
命を救う重要な新規薬剤は、市場に出すため迅速に規制認可されることが望ましい。ファスト・トラック臨床治験及び登録は、効力及び安全性を保証するプロセスの重大な部分である。in vivo状態により近い代表的なレベルでのスクリーニングにおいて標的製品を迅速に同定するためのデバイス及び方法論は、該プロセスを容易にし得る領域である。例えば、薬物開発においてさらに代表的な治療評価から利益を得ることができる健康管理の1つの領域が高血圧症又は高血圧の治療にある。このデバイスはこの必要性を満たす基盤を提供することができる。
同様に、このデバイスは、種々の流動導管内で実験化合物又は新規化合物を試験するための基盤を提供するので、植物及び動物で使う化合物の開発に役に立ち得る。
【0045】
(訓練)
開示デバイスは、研究者が血管の問題、例えば微小血管機能障害の問題、その細胞的及び分子的機構並びに該集団の健康に対するその固有のリスク等をできるだけ広く標的できるようにし得る。この関与技術は、新興分野の研究のパラダイム、及び基準の変化を表し得る。それは、微小血管研究の高度に専門化された分野の学部学生及び大学院生を含めた全レベルの研究訓練生を補充及び訓練する機会をもたらし得る。この訓練によって提供される技術的及び基本的スキルは、大学、生命科学及び医療研究機関、並びに生化学業界で大きな需要がある。
上述したように、本デバイスは、血管の可逆固定(例えば、吸引法を用いて)又は血管の永久固定(例えば、光硬化性ポリマー又は組織接着剤法を用いて)等の変形を包含し得る。デバイスの管状構造又はチャネルは脂質細管、中空繊維、又は他の適切な構造であってよい。本デバイスを複雑な流体網目構造で相互接続できるように設計してもよい。モジュールとチャネルの種々のレイアウト、種々の配置でデバイスを設計することができる。
このデバイスは、医薬品業界で標的同定、標的検証、分子薬物設計及び最適化、初期段階毒性試験、及び/又は新薬の概念証明のために役立ち得る。このデバイスの臨床応用は、個別化医療、血管運動状態を決定するための患者のバイオプシー由来の動脈及び静脈の単離(例えば、個々の患者病歴との相間関係を含めた個々の血管の構造特性及び機能特性の評価のため)、及び薬理遺伝学を包含する。薬理遺伝学におけるような評価において、本デバイスを用いて、ある薬剤に対する標的個体又は標的個体群の治療或いは個体又は代表的個体群の処置流動導管を利用することによる治療を評価することができる。このデバイスは、作物保護産業でも植物及び植物化合物の高処理試験のために役立ち得る。
【0046】
上述した本開示の実例実施形態は単に例であることを意図している。当業者は、本開示の意図した範囲から逸脱することなく、特定の実例実施形態に変更、修正及び変化を生じさせ得る。特に、上記実例実施形態の1つ以上から選択される特徴を組み合わせて、明白に記載されていない代替実例実施形態を作り出すことができる。当業者は、このような組合せに適した特徴が容易に分かる。本出願で列挙した請求項に記載の主題は、技術の全ての適切な変更を網羅及び包含することを意図する。言及した全ての参考文献は、参照によってその全体が本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、このベース内に形成されたモジュールとを含む、流動導管の調査用デバイスであって、
前記モジュールが、
前記流動導管を装填するための装填入口を有する、前記流動導管用の主チャネルと、
前記流動導管の灌流及び表面灌流の少なくとも1つのための、前記主チャネル内の培養チャンバーと、
前記流動導管の長さに沿った少なくとも2つの固定位置に前記流動導管の固定を行なうための、前記主チャネルと連絡している少なくとも2つの固定ラインと
を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記ベース内に複数のモジュールが形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記モジュールが直列に配置され、かつ前記モジュールが共通の主チャネルを共有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記モジュールが並列に配置され、かつ前記モジュールが共通の培養チャンバーを共有する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ベースに埋め込まれたアクチュエーターをさらに含み、このアクチュエーターが、少なくとも前記2つの固定位置の間で前記ベースの変形を引き起こす、請求項1〜4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記主チャネル内に溶解チャンバーをさらに含み、この溶解チャンバーが、前記培養チャンバーと直列であり、かつ前記培養チャンバーから前記流動導管の少なくとも一部を受け入れるように適応している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの固定ラインが、前記流動導管の可逆固定を可能にする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも2つの固定ラインが、前記流動導管の不可逆固定を可能にする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記主チャネルが、分析のため前記流動導管を抽出するための出口を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記モジュールが、約3μm〜約2,000μmの範囲の直径を有する流動導管を収容する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記モジュールが、約15μm〜約300μmの範囲の直径を有する流動導管を収容する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記モジュールが、約10μm〜約1.5cmの範囲の長さを有する流動導管を収容する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、経時的に放出される活性化合物を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ベースが生分解性材料を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ベースが、ポリマー、バイオポリマー、ガラス、半導体、金属、セラミック、及びその組合せから成る群より選択される材料を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリラート)、及びその組合せから成る群より選択される、請求項15のに記載のデバイス。
【請求項17】
前記バイオポリマーが、フィブリノーゲン、コラーゲン、ラミニン、及びその組合せから成る群より選択される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記半導体が、珪素及びガリウム砒素から成る群より選択される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
光学分光法、オンチップ溶解及び質量分析と一体となった、蛍光強度及び蛍光寿命に基づいた画像処理を含めた明視野又は蛍光顕微鏡技術のような、分析機器と連動するように適応したインターフェースをさらに含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記培養チャンバーがバイオポリマーを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記デバイスが2つ以上の層で構成され、各層が、前記モジュールの少なくとも一部又は前記モジュールへのチャネル接続の少なくとも一部を与えている、請求項1〜20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
プロセッサー、記憶装置、又は温度制御装置の少なくとも1つをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
流動導管を調査する方法であって、以下の工程、
請求項1〜22のいずれか1項に記載のデバイスを準備する工程、
前記流動導管を前記主チャネル内に装填する工程、
前記主チャネル内に前記流動導管を固定する工程であって、前記流動導管の少なくとも一部は前記培養チャンバー内にある工程、
前記流動導管に生理溶液を灌流又は表面灌流させる工程、及び
前記流動導管を経時的にモニターする工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
前記流動導管に前記培養チャンバーを介して生体因子を加える工程及び前記流動導管を応答についてモニターする工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
明視野又は蛍光顕微鏡技術、蛍光強度及び蛍光寿命に基づいた画像処理、光学分光法、オンチップ溶解及び質量分析から成る群より選択される技術を用いて前記流動導管を分析する工程をさらに含む、請求項23〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記流動導管を固定する工程が、前記固定ラインを介して、前記培養チャンバー内の圧力より低い圧力を加える工程をさらに含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記流動導管を固定する工程が、前記固定ラインを介して結合材料を加える工程をさらに含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記結合材料が、露光されると架橋するポリマー、水分にさらされると架橋するポリマー、及び温度変化に応じて架橋するポリマーから成る群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記流動導管に、前記流動導管のアキシャル軸に沿って機械的刺激を加える工程をさらに含む、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記流動導管をモニターする工程が、集積光技術を用いて直径を測定する工程を含む、請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
酵素的方法を利用して前記流動導管を溶解する工程をさらに含む、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記流動導管が血管であり、外側平滑筋細胞層を機械的に破壊すること、レーザーアブレーション、及び血管形成因子の投与の少なくとも1つによって血管形成を刺激する工程をさらに含む、血管形成の調査のための、請求項23〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記血管形成因子が、内皮細胞成長因子(ECGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、アンギオジェン、低分子量内皮マイトジェン、内皮細胞走化性因子、脂質、血管内皮成長因子(VEGF)、及び血小板由来成長因子(PDGF)から成る群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
粒子又は分子を含む流体を前記流動導管に灌流させる工程、並びに前記流動導管の壁を介した前記粒子又は分子の輸送及び毒性を評価する工程をさらに含む、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記流動導管が、約3μm〜約2,000μmの範囲の直径を有する、請求項23〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記流動導管が、約15μm〜約300μmの範囲の直径を有する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記流動導管が、約10μm〜約1.5cmの範囲の長さを有する、請求項23〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記流動導管が、脳導管、肺導管、内耳導管、脂質細管、改変血管、中空繊維、動脈、細動脈、静脈、細静脈、リンパ管、腸管、精管、卵巣管、胆管、気管支、細気管支、気管、尿管、尿道、膵管、及び腎尿細管から成る群より選択される、請求項23〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記流動導管が、脳の微小血管網目構造由来の血管である、血管脳関門の調査のための、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記流動導管が、梗塞、虚血、炎症、硬化、免疫低下、腫瘍保有、及び転移性状態から成る群より選択される疾患状態を有する生体導管である、請求項23〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
灌流が約0〜500ml/時間の速度であるか又は表面灌流が約0〜500ml/時間の速度である、請求項23〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記モニタリングをコンピューター・デバイスを用いて自動的に行なう、請求項23〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
分析のため前記モニタリングデータを外部デバイスに送信する工程をさらに含む、請求項23〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
個別化医療のための、請求項1〜22のいずれか1項に記載のデバイスの使用。
【請求項45】
薬剤の開発のための、請求項1〜22のいずれか1項に記載のデバイスの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6(a)】
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【図6(b)−6(c)】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30(a)】
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【図30(b)】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2011−524980(P2011−524980A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513831(P2011−513831)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000852
【国際公開番号】WO2009/152618
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510333782)ザ ガヴァーニング カウンシル オブ ザ ユニヴァーシティ オブ トロント (1)
【Fターム(参考)】