説明

流動床ガス化炉の流動剤、その製造方法および流動床ガス化炉

【課題】 ガス燃料とするための生成ガス中のタール発生を従来以上に抑制でき、それによりタール含有量の極めて低いガス燃料製造を可能とする、流動床ガス化炉および関連技術を提供すること。
【解決手段】 流動床ガス化炉の流動剤(流動触媒)7は、アルミナ担体14にジルコニア15が含浸法によって担持されていることを、主たる構成とする。ジルコニアの担持量は、アルミナ担体の5〜15重量%とする構成を、流動床ガス化炉の流動剤として好適に採用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床ガス化炉の流動剤、その製造方法および流動床ガス化炉に係り、特に、木質バイオマスを原料としたガス生成過程におけるタールの発生を効果的に抑制するための、流動床ガス化炉の流動剤、その製造方法および流動床ガス化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動床ガス化炉では一般に、発生したタールを流動触媒に吸着して、その流動媒体を燃焼炉に通して、タールを燃焼させて除去する方式が取られていた。たとえば、生成ガスを熱交換器で所定温度まで昇温させ、タール改質塔において触媒と接触させて、ガス中のタールを炭化水素等に分解する方法(特許文献1)、有機性廃棄物の焼却によるガス生成において、低温ガス化と高温ガス化を組合せ、低温ガス化には流動層ガス化炉、高温ガス化には溶融炉を用いる方法(特許文献2)、ガス化炉の後流側にニッケル触媒等を内装したガス分解炉を設ける構成(特許文献3)、ガス化によって発生した熱分解ガスに暴露される部分の一部又は全部の表面に高沸点有機化合物を酸化分解する触媒の層を設ける提案(特許文献4)等がなされている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−21566「可燃性ガス中のタール分解処理方法」
【特許文献2】特開平10−236801「有機性廃棄物の資源化方法及び資源化装置」
【特許文献3】特開平9−111254「有機物のガス化・分解装置」
【特許文献4】特開2001−81478「ガス化炉」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示されたような従来のガス化炉では、ガス化炉の他に燃焼炉を設ける必要があり、プラントの構成が複雑になること、また、バイオマス原料を用いた場合、タール分を燃焼させることでバイオマスのガス生成への転換効率が低下するなどの問題点がある。また、上記特許文献4に開示された技術では、ガス化炉の他に設備を設ける必要はないものの、ガス化炉内部の暴露表面に触媒層を設ける構成であり、熱分解ガスがこれと反応する機会は限定的であり、タール含有量の極めて少ない上質のガス燃料製造を可能とする観点からは、充分なタール発生抑制効果は期待できない。
【0005】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解決して、ガス燃料とするための生成ガス中のタール発生を従来以上に抑制することができる、流動床ガス化炉および関連技術を提供することである。そして、生成ガス中のタール発生を抑制することによりタール含有量の極めて低いガス燃料製造を可能とする、流動床ガス化炉および関連技術を提供することである。
【0006】
また本発明の課題は、これに加えて、ガス化炉内で生成ガス中のタール分を改質して、発熱量の高い生成ガスを得ることのできる、流動床ガス化炉および関連技術を提供することである。さらに本発明の課題は、プラントの構成の複雑さを排して、プラントの小型化および設備導入ならびに運転コスト低減を図ることのできる、流動床ガス化炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らが上記課題について鋭意検討した結果、ガス化炉内の流動剤として、タール分発生抑制のための新規なる流動触媒を構成し、これを適用することによって課題を解決できることを見出し、本発明に至った。すなわち、本願で特許請求される発明もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
(1) アルミナ担体にジルコニアが担持されていることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
(2) アルミナ担体にジルコニアが担持されており、該ジルコニアの担持量が該アルミナ担体の5〜15重量%であることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
(3) ジルコニアがアルミナ担体に含浸法によって担持されてなることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
(4) 硝酸ジルコニウム水溶液中にアルミナ粒子を投入してアルミナ表面にジルコニウムを含浸させ、ついでこれを空気雰囲気下で焼成してジルコニアとし、これを流動床ガス化炉の流動剤とすることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤の製造方法。
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載の流動剤を流動触媒として用いることを特徴とする、流動床ガス化炉。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流動床ガス化炉の流動剤、その製造方法および流動床ガス化炉は上述のように構成されるため、これによれば、ガス燃料とするための生成ガス中のタール発生を、従来以上に抑制することができる。また、生成ガス中のタール発生を抑制することによりタール含有量の極めて低いガス燃料を製造することができる。さらに、ガス化炉内で生成ガス中のタール分を改質して、発熱量の高い生成ガスを得ること、プラントの小型化と、それによる設備導入・運転コスト低減にも効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の流動床ガス化炉の構成を示す説明図である。図において本発明の流動床ガス化炉1は、前流側から、流動ガスを流動ガス導入ライン2から導入するための流動ガス導入部3、該流動ガス導入部3で導入された流動ガスを流動ガス噴流5とするための分散板4、触媒が設けられ、該流動ガス噴流5により流動触媒の噴流が生じ、供給された原料の熱分解反応が行われる流動触媒保有部6、該流動触媒保有部6の後流側の空間であるフリーボード10、生成ガスを搬送する生成ガスライン12、を基本的に備えてなり、該流動触媒7として、後述する本発明の流動剤が用いられることを、特徴的な構成とする。
【0010】
図1において本発明の流動床ガス化炉1は上述のように構成されているため、流動ガスは流動ガス導入ライン2から流動ガス導入部3に導入され、該流動ガスは分散板4を通過することにより流動ガス噴流5とされ、これにより流動触媒保有部6に保有されている本発明流動剤すなわち触媒は流動触媒7の噴流となり、一方、該流動触媒保有部6には原料が供給され、該流動触媒保有部6で原料は流動触媒7の噴流存在下で熱分解され、その際タール分解機能を有する触媒の作用によりタール分の発生は抑制された生成ガス11はフリーボード10を通ってガス化炉出口部に設けられた生成ガスライン12により搬送される。かかる作用により、供給される原料は流動ガスおよび流動触媒7によって熱分解され、ガス燃料(生成ガス)が製造される。流動触媒保有部6での原料の熱分解反応後の残さは、灰分排出ライン13を通って外部に排出される。
【0011】
つまり、かかる流動床ガス化炉1におけるプロセス中、流動触媒保有部6保有の触媒として、後述する本発明流動剤が用いられる。
【0012】
図2は、本発明の流動床ガス化炉の流動剤すなわち流動触媒の構成を示す説明図である。図示するように本流動剤(流動触媒)7は、アルミナ担体14にジルコニア15が担持されていることを、主たる構成とする。ジルコニアの担持量は、アルミナ担体の5〜15重量%とする構成を、流動床ガス化炉の流動剤として好適に採用することができる。その理由は次の通りである。すなわち、担持ジルコニア量が5重量%未満ではタールの吸着・分解が充分ではなく、タール発生抑制の効果が低い状態にある。一方、担持量が15重量%を超えても、タールの吸着・分解機能はそれ以上向上しないため、これを上限とすることで充分だからである。また、ジルコニア担時の製造過程の短縮の面からも、かかる数値範囲を好適に採用することができる。
【0013】
図2に示される流動触媒7は、担体であるアルミナ14にジルコニア15を含浸法によって担持して得られる。流動触媒7の製造は、たとえば、硝酸ジルコニウム水溶液中にアルミナ粒子を投入して、アルミナ表面にジルコニウムを含浸させ、その後、空気雰囲気下で焼成して、ジルコニウムをジルコニアに酸化させることにより行うことができる。
【0014】
本発明の流動剤(流動触媒)が有する、生成ガス中のタール発生抑制作用について、詳述する。アルミナのみを流動触媒として用いた場合であっても、タール発生抑制の効果は認められるものの、生成したガスをタール除去装置を設置しないでガスエンジン等に直接用いるという観点からは、タールの発生を充分に抑制するまでには至っていない。また、アルミナを担体としてこれにルテニウムやロジウムなどの貴金属を担持することによって、タール発生を抑制し得る知見が従来示されているが、これらルテニウム、ロジウムなどは、単位重量当りの単価が高いという欠点がある。一方、ジルコニアは、これら貴金属に比べて、単価が相当に低減できるため、製造コストの面で有利であり、かつタール発生に対する抑制効果としては、同等の性能を示すことができるものである。
【0015】
また、本発明の流動触媒はジルコニアが担持されているものであるため、流動時における流動剤同士の磨耗に対する耐摩耗性に優れている。また、耐熱性にも優れているため、流動剤の担持触媒の再生までの期間を長くすることができ、再生のためのコストの低減にも寄与できる。
【0016】
本発明の流動床ガス化炉の流動剤は上述のように構成されているため、バイオマス原料の熱分解過程で発生したタールは、流動ガス中の水蒸気雰囲気下で、活性化されたOHラジカルによってタール中の炭化物が水素、二酸化炭素あるいは一酸化炭素に分解される。この反応によって、可燃性のガスである水素、一酸化炭素が生成される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の流動床ガス化炉の流動剤、その製造方法および流動床ガス化炉は上述のように構成されているため、以下のような効果を得ることができ、産業上利用価値が高い発明である。
1.本発明の流動床ガス化炉および流動触媒により、タールを含有する割合を極めて低く抑えたガス燃料を供給することが可能となり、発電装置で用いられる原動機の燃料仕様条件を満足する燃料を得ることができる。
2.また、従来はガス化炉出口ラインに設けられていたタール除去装置が不要となり、プラントの小型化とコスト低減に寄与できる。
【0018】
3.また、ガス化炉内でタール分を水素と一酸化炭素に分解するため、生成ガスの発熱量を高くすることができる。
4.また、流動触媒はジルコニアが担持されているため、流動時における流動剤同士の磨耗に対する耐摩耗性に優れており、かつ、耐熱性にも優れているため、流動剤の担持触媒の再生までの期間を長くすることができ、再生のためのコストの低減に寄与できる。
5.このような流動床ガス化炉を用いたガス発電システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の流動床ガス化炉の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の流動触媒の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1…ガス化炉
2…流動ガスライン
3…流動ガス導入部
4…分散板
5…流動ガス噴流
6…流動触媒保有部
7…流動触媒
8…原料供給ライン
9…原料供給装置
10…フリーボード
11…生成ガス
12…生成ガスライン
13…灰分排出ライン
14…アルミナ
15…ジルコニア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ担体にジルコニアが担持されていることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
【請求項2】
アルミナ担体にジルコニアが担持されており、該ジルコニアの担持量が該アルミナ担体の5〜15重量%であることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
【請求項3】
ジルコニアがアルミナ担体に含浸法によって担持されてなることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤。
【請求項4】
硝酸ジルコニウム水溶液中にアルミナ粒子を投入してアルミナ表面にジルコニウムを含浸させ、ついでこれを空気雰囲気下で焼成してジルコニアとし、これを流動床ガス化炉の流動剤とすることを特徴とする、流動床ガス化炉の流動剤の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の流動剤を流動触媒として用いることを特徴とする、流動床ガス化炉。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−257315(P2006−257315A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78414(P2005−78414)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(503116257)学校法人八戸工業大学 (5)