説明

流動接触分解装置及びディレードコーキング装置の脱エタン塔での不安定性の制御方法

【課題】流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置における脱エタン塔の運転の不安定性を制御する方法を提供する。
【解決手段】脱エタン塔で不安定性が発生したときに脱エタン塔に介入し、原料負荷流9中の過剰な水が共沸混合物としてのみ引き出されるようなやり方で、物質バランスを調整する工程を含む方法を用いて達成される。該介入は、脱エタン塔13の原料負荷流9中へ、乾燥炭化水素又は低含有率の水を有する炭化水素類のいずれかであってもよい、炭化水素流及び/又は該装置の外部流の体積分画18を導入することによって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置における脱エタン塔の操作の不安定性を制御する方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解装置及びディレードコーキング装置の分留塔の塔頂から生じるガスは、通常は2段階で圧縮手段を通過して、汚染性であると考えられる化合物を除去するための水による洗浄手段を通過する。
【0003】
今や洗浄されたガスは、水と炭化水素類とを分離するために高圧ドラムとして知られた装置に、高圧において導かれる。
【0004】
実際の運転から考慮すると、水と炭化水素類との分離は失敗し易い。
【0005】
直接の結果は、ガス回収装置の脱エタン塔として知られる精留塔への負荷としての炭化水素類流と共に、装置プランによる予測をはるかに超える量で水が存在すること及び/又は引き込まれること(dragging)である。
【0006】
この脱エタン塔における過剰な水は、結果として、不安定性をも招来し、該不安定性は、脱エタン塔自体の運転能力にあるのみでなく、それに連結した装置にもある。
【0007】
この不安定性は、該塔の塔頂における水の貯留を生じて、溢水状態(flooding situation)にさえ達する。脱エタン塔での過剰な液体によるこの氾濫は、「逆流(backup flood)」なる表現で知られる。
【0008】
重大な場合には、この溢水は、例えば一次吸収塔のような、他の装置に影響を及ぼし、最後には、ガス回収装置全体の不安定性を惹起する。
【0009】
該溢水は、実際には、「チョーク流」なる表現で知られる、蒸気の過剰な形成によって生じる。蒸気のこの過剰な形成は、脱エタン塔で、該塔の上半分の領域において生じる。形成される過剰な蒸気は、該塔の溢水としての、該塔での不安定性の原因である。
【0010】
脱エタン塔の負荷を減少する必要性を招来するのは、この状態である。
【0011】
関連技術
溢水による脱エタン塔での不安定性に関連して、非常に重大な場合には、溢水が、常に液体の最大の負荷が存在する場所、したがって、「逆流」開始の論理的領域である、該塔の下部ではなくて、該塔の上部において生じるという事実によって、文献は常に困惑しているように思われる。
【0012】
この課題に関する入手可能な文献は、精油所で発生している事例を検討し、設計における誤りに関連した問題を参照し、又は実際に、コンピュータによるシミュレータでなされた予測と、実際の装置の機能との相違という問題を提起している。
【0013】
種々な面に関する多様な発見事項を考えれば、ガス回収のための脱エタン塔を中心としたガス回収装置の問題の場合には、該装置の安定性回復のための代替策が通常は支持される。
【0014】
専門的な技術的出版物に記載された幾つかの解決策は、例えば、次のように挙げることができる:
・ 「Reduction of the de−ethanizer tower load or parameter control」(Kister,Z.H.著,Component Trapping in Distillation Towers:Causes,Symptoms and Cures,CEP,August 2004,22−33頁);
・ 「Elimination of the water present in the tower by a removal procedure」(Langdon,D.,Barletta,T.,Fulton,S.著,FCC Gas Plant Stripper Capacity,PTQ Revamps and Operations,2004,3−7頁);及び
・ 「Preheating of the load of the de−ethanizer tower to a temperature at which instability does not cause effects」(Deeley,J.S.,Graf,K.著,Random Packing Debottlenecks Refinery De−Ethanizing Stripper,Oil and Gas Journal,Aug.1,1994,39−41頁;及びBarletta,T.,Fulton,S.著,Maximizing Gas Plant Capacity,PTQ Revamps and Turnarounds,Spring 2004,105−113頁)。
【0015】
塔負荷の減少に関する解決策は、結果として流動接触分解装置で、及び更にディレードコーキング装置で、の両方で処理される負荷の減少を直接生じる。
【0016】
脱エタン塔を安定性状態に戻すために、この脱エタン塔内部に存在する水の除去に関する解決策は、次の提案をしている:貯留し、その後に廃棄するために、脱エタン塔の外部にある容器への水の流出を可能にするデバイスの設置;又はそこで水が貯留され、系から除去される「排水だめ」として知られる、通常はプレートである内部デバイスの設置。
【0017】
第2手段は、該脱エタン塔負荷を、水が蒸発するような温度に、即ち、水が液体形で該塔に入らないような温度に予め加熱することによる、貯留水が脱エタン塔に入る前に該貯留水を蒸発させることを包含する。
【0018】
水の除去と貯留水の蒸発による解決策のための該提案は、限界を有する。水の除去に関しては、水はなおも該塔の内側に下降して、後でのみ該塔から引き出されることになる。
【0019】
水を予め蒸発させることでは、これは該水が該塔を下降するのを回避するが、温度の影響もあって水が過剰に蒸発する場合には、該負荷中の、例えば炭素数1〜4の炭化水素類のような、軽質成分が過剰に気化し、これによって、高圧ドラムへのこれらの軽質炭化水素類の高度なリサイクリングが生じ、系の過剰負荷が付随して生じて、一次吸収塔及び二次吸収塔にも影響を及ぼし、可燃性ガス中の炭素数3の炭化水素類のかなりの損失を招来することになる。
【0020】
しかし、文献は、脱エタン塔の負荷中に存在する共沸混合物の形成である、水と炭化水素類との間で生じる現象の発生を述べていない。この形成は、炭化水素流への水溶解性によって、及び高圧ドラム内への貯留によっても、惹起される。
【0021】
水と炭水化物との間の共沸混合物は、過剰な蒸気の形成の原因となる主要な要因であり、したがって、先行技術では今日まで効果的な解決策を有していない問題である、脱エタン塔での不安定性及び溢水の発生の基本原因である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】「Reduction of the de−ethanizer tower load or parameter control」(Kister,Z.H.著,Component Trapping in Distillation Towers:Causes,Symptoms and Cures,CEP,August 2004,22−33頁)
【非特許文献2】「Elimination of the water present in the tower by a removal procedure」(Langdon,D.,Barletta,T.,Fulton,S.著,FCC Gas Plant Stripper Capacity,PTQ Revamps and Operations,2004,3−7頁)
【非特許文献3】「Preheating of the load of the de−ethanizer tower to a temperature at which instability does not cause effects」(Deeley,J.S.,Graf,K.著,Random Packing Debottlenecks Refinery De−Ethanizing Stripper,Oil and Gas Journal,Aug.1,1994,39−41頁;及びBarletta,T.,Fulton,S.著,Maximizing Gas Plant Capacity,PTQ Revamps and Turnarounds,Spring 2004,105−113頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の課題は、流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置における脱エタン塔での運転の不安定性を制御する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の目的は、脱エタン塔で不安定性が発生したときに脱エタン塔に介入する工程と、その後に、原料負荷(feed load)流中の過剰な水を共沸混合物としてのみ引き出すようなやり方で、脱エタン塔中の物質バランスを調整することを含む方法を用いて達成される。該介入は、炭化水素流の体積分画(a fraction of volume)をこの脱エタン塔の原料負荷流中へ導入することによって行われ、乾燥炭化水素及び低水含有率の炭化水素から選択されてもよい。該体積分画は、該装置の内部及び該装置の外部から選択されてもよい。
【0025】
基本的に、この方法は、原料負荷を予熱しない状況を特に考慮して、如何なる運転状況の脱エタン塔の安定化のためにも用いることができる。該方法は、既に建造された装置及び/又は稼働中の装置に簡単な実施でも用いることができる。
【0026】
本発明は、脱エタン塔での頻繁な不安定性を制御し;高圧ドラムの不適当な運転によって発生した困難を正す作用を実施することであり;過剰な遊離水(free water)が生じた状況においても、流動接触分解装置及びディレードコーキング装置の負荷量の維持を可能にし;そして、他の要因の中でも特に、実施費用が安価である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の1つの可能な具体化の実施によるガス回収装置の典型的な設置図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置における脱エタン塔の運転の不安定性を制御する方法に関する。
【0029】
流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置の主要な機能は、分留塔から生じる流体の処理であり、ガスの形態である塔頂ガス流(1)と、非安定化軽質ナフサの液体流(2)とに分離する。これらを処理して、結果として、例えば、燃料ガス(FG)、液化石油ガス(LPG)及び軽質ナフサのような、販売可能である生成物を得る。
【0030】
生成物の分離は、圧縮、水による洗浄、ガス流の冷却、吸収及び分離によって行われる。
【0031】
今後は、このレポートを通して述べることになる、そして本発明の目的と相互関連のある又は本発明の目的の一部である、種々な構成要素(components)の最適な可視化のために図1を用いることにする。
【0032】
塔頂ガス流(1)は、一般に、第1コンプレッサー(3)と第2コンプレッサー(4)を包含する2段階での圧縮を受けた後に、該ガスの洗浄のために水流(5)を受け入れ、第1熱交換器(6)によって冷却される。
【0033】
今や冷却された塔頂ガス流(1)は、部分的に液化されて、高圧ドラム(7)に導かれ、そこで、該ガス流は、酸性水流(8)と呼ばれる液体水性相、原料負荷流(9)である液体炭化水素相、及びガス流(10)と呼ばれるガス相に分離される。
【0034】
この高圧ドラム(7)からのガス相流出は、炭素原子数3及び4の炭化水素類の画分(以下では、記号「C」及び「C」によって言及する)を分離するために、ガス流(10)によって一次吸収塔(11)に導かれる。
【0035】
これらの画分は、重質炭化水素類の吸収プロセスによって該ガス相から分離される。
【0036】
一次吸収塔(11)からのガス流は二次吸収塔(12)と呼ばれる第2塔に導かれ、運転状態の限界のために又は吸収液体の限界のために吸収されなかった可能なC及びC及び重質成分が吸収され得る。
【0037】
高圧ドラム(7)の液体流(8と9)は、デカンテーションのプロセスから生じる。酸性水流(8)(水性相)は、処理のために特定装置に導かれ、原料負荷流(9)(液体炭化水素相)は精留のために脱エタン塔(13)に導かれる。
【0038】
脱エタン塔(13)の塔底における生成物は、次に、主要塔底流(14)によって、軽質脱ブタン塔(light de−butanizer tower)(15)においてLPGとナフサに分留するために導かれる。
【0039】
流動接触分解装置及びディレードコーキング装置のガス回収装置の正常運転では、ある一定の状況において、液体炭化水素相は水性相の一部を引き込む。この液体炭化水素相は、脱エタン塔(13)の原料負荷である。
【0040】
液体炭化水素相中の引き込まれた水の存在は、脱エタン塔(13)の運転の不安定性の原因となり、これに連結した全ての系のプロセシングを害することになる溢水状態を惹起する可能性がある。脱エタン塔(13)の原料中の高度な水流は、高圧ドラム(7)の不適当な運転によって発生する可能性がある。
【0041】
既に参照したことであるが、先行技術で提供されている2つの解決策はここで思い出す価値がある。
【0042】
第1解決策は、脱エタン塔(13)の内部に存在する水の除去である。この解決策は、水が実際に除去される箇所まで塔内を下降するのを防止していない、即ち、この解決策は基本原因に取り組んでいない。
【0043】
他方の解決策、原料負荷流(9)が脱エタン塔(13)に入る前に、該原料負荷流(9)中に存在する水を蒸発させるために予熱器(16)を設置することは、存在する水量に主に依存する。高圧ドラム(7)の不良な機能又は不良な運転のために原料負荷流(9)中に水が高度に存在する状況では、この解決策は、例えばC〜C範囲内の炭化水素類のような軽質成分の過度な気化をも招来するので、重大な限界を表す。この過度な気化の主な原因は、高圧ドラム(7)への軽質炭化水素類の高度なリサイクリング及び関連する系の過負荷の発生であり、可燃性ガス中のC炭化水素類の高度な損失を招来する可能性がある。
【0044】
以下の表1は、16kgf/cm(絶対圧)の圧力において脱エタン塔(13)で何が起こるのかについての情報を与える。この表には、純粋な炭化水素類(HC)と、この圧力における水とのこれらの共沸混合物(AZ)の沸点を示す。水と該炭水化物との間に形成される共沸混合物は最低限の共沸混合物である、即ち、これらは、水と該炭化水素類の両方の沸点よりも低い沸点を有する、独特の成分として挙動する。
【0045】
【表1】

【0046】
表1を分析すると、共沸混合物の沸点には、脱エタン塔(13)の運転圧力における水の沸点である、最大値に近づく傾向を見ることができる、即ち、16kgf/cm(絶対圧)において該沸点は200.4℃である。
【0047】
この事実は、重質炭化水素類の共沸混合物の沸点を、漸近的に200.4℃の温度に近づく傾向を有させている。
【0048】
重質炭化水素類の場合には、純粋な炭化水素に比べて共沸混合物の沸点に特徴的な低下があり、この低下によって、水と該重質炭化水素によって形成された共沸混合物はあたかもこれが軽質な純粋炭化水素であるかのごとく挙動する。
【0049】
例えば、安定化ナフサに関しては、軽質成分が最少量で存在するか又は存在しないことさえあることが知られている。
【0050】
したがって、小さい安定化ナフサ流が脱エタン塔(13)の負荷に加わるならば、安定化ナフサの該重質成分が共沸混合物の形で水を運ぶ高い容量を組み込むことになる。
【0051】
炭化水素類が重質であるほど、該重質成分と共に共沸混合物を形成する水の割合は高くなる。
【0052】
表1に記載された数値に戻ると、ノネン−1が、水との共沸混合物状態であるときには、純粋なn−ヘキサンの沸点(191.7℃)にほぼ等しい沸点(190.0℃)を有することを見ることができる。
【0053】
故に、炭化水素類と水との間に液体−蒸気平衡がある場合には、該蒸気相は、共沸の効果のために水が存在しない場合にそれが挙動するよりも軽質相(a lighter phase)であるかのごとく、挙動する。
【0054】
しかし、上述したように、炭化水素と水との共沸混合物のもう1つの特徴(aspect)が、該炭化水素が重質であるほど、共沸混合物の水含有割合は大きくなる傾向であることは強調する価値がある。
【0055】
この事実は、共沸混合物中の水含有率を示す、以下の表2に見ることができる。
【0056】
【表2】

【0057】
上述した全てのことを考慮すると、本発明は、原料負荷流(9)中に予熱器(16)が存在しない場合への適用を含めて、いずれかの運転状況における脱エタン塔(13)の不安定性の解決策を提供する;該解決策は、以下に述べるような、簡単な操作によって、既に建造された装置及び/又は稼働中の装置に適用することができ、原料負荷流(9)の量を減少させず、そして連結した系を過負荷させない。
【0058】
本発明は、高圧ドラムから出る炭化水素類の液体相と共に水が運ばれることによって生じる、流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性の制御方法から成る。上記方法は、脱エタン塔(13)の不安定性に介入する工程を含み、その根拠として、過剰な水が、該炭化水素に溶解している水であるか又は高圧ドラム(7)由来である小滴の形で引き込まれた水であるかのいずれの事実によるものであれ、原料負荷流(9)中に導入された過剰な水が共沸混合物としてのみ除去されるように、水の物質バランス(material balance of water)を改変すること(adaptation)を有する。
【0059】
本発明の目的は、脱エタン塔(13)の原料負荷流(9)に、乾燥炭化水素類の又は低水含有率を有する炭化水素類の流れを導入することによって達成される。
【0060】
乾燥炭化水素類の又は低水含有率を有する炭化水素類の流れは、安定化軽質ナフサ流であることが好ましい。
【0061】
この安定化軽質ナフサ流は、典型的には「ブタン類」範囲の真沸点200℃を有する。
【0062】
この安定化軽質ナフサ流の源は、該装置の内部にあることも、又は該装置の外部にあることも可能である。
【0063】
該装置の内部にある源は、体積分画(18)に由来し、それは脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)に由来する。
【0064】
安定化軽質ナフサの第2塔底流(17)は、約280℃の高温を有し得る。
【0065】
安定化軽質ナフサの第2塔底流(17)は、約25℃程度の低い温度を有し得る。
【0066】
安定化軽質ナフサ装置に対して外部流の又は第2塔底流(17)の体積分画(18)の導入の制御は、共沸現象の発生に基づいて定められる。
【0067】
不安定性が発生する場合に、介入の時期は以下の根拠の一つに基づいて選択され得る、すなわち、
脱エタン塔(13)の原料負荷流(9)に含有される水含有率の関数として、
脱エタン塔(13)の塔頂と塔底の間の圧力差の数値の関数として、
脱エタン塔(13)の上半分の領域に位置しているプレート中の流体の温度の関数として、又は特定の状況では、脱エタン塔(13)の塔頂の温度の関数としても、定められ得る。
【0068】
脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)は、CとC炭化水素類が存在せず、C炭化水素類も低含有率であり、さらに水が存在しないか又は低含有率である、脱エタン塔(13)からの原料負荷流(9)に非常に類似した組成を有する。
【0069】
脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)の体積分画(18)は、脱エタン塔(13)の原料負荷流(9)中の過剰な水と安定化軽質ナフサ中に存在する炭化水素類との共沸混合物を形成する。該沸点は低下する傾向があるので、脱エタン塔(13)の塔頂に蒸気が貯留し、その結果の溢水が、脱エタン塔の塔頂又は脱エタン塔の塔底のいずれにしろ、生じる前に、共沸混合物を除去する。
【0070】
脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)中にC未満の軽質成分が存在しないことが、該ガス回収装置の第1コンプレッサー(3)と第2コンプレッサー(4)に連結したガス系の過負荷を回避する。
【0071】
本発明を用いた不安定性の制御は、高圧ドラム(7)の不適当な運転によって発生した困難を正す作用を提供し;高圧ドラム(7)由来の炭化水素流の過剰な遊離水が生じた状況においても、流動接触分解装置及びディレードコーキング装置の負荷の維持を提供し;該技術の現在の解決法によって提供される解決策に比較して、操作の容易さを提供し;該ガス回収装置のコンプレッサー(3)、(4)の上流及び下流の系に損失を発生させず;安定化軽質ナフサ流の操作が、脱エタン塔(13)自体の状態の指標によって作動させられるので、制御の容易さを提供し;及び、運転中の装置への低い費用での導入(implantation)を可能にする。
【実施例】
【0072】
本発明のターゲットである種類の装置の典型的な状況のシミュレータでの実験を行って、得られた結果を以下の表3に示す。該装置は脱エタン塔(13)である。
【0073】
【表3】

【0074】
「状況A」は、溢水状況にある脱エタン塔(13)のデータを示す。「状況B」は、脱エタン塔(13)が安定性状態に戻ったことを実証する、本発明の方法を適用した後のデータを示す。該シミュレーションのために、下記考慮を行った:
【0075】
状況A: 原料負荷流(9)の形態で高圧ドラム(7)由来の液体炭化水素の負荷、これは脱エタン塔(13)に入る前に、予熱器(16)内で予熱される;
状況B: 原料負荷流(9)の形態で高圧ドラム(7)由来の液体炭化水素の負荷、これは脱エタン塔(13)に入る前に、予熱器(16)内で予熱され、予熱器(16)を出た後に、安定化軽質ナフサから成る、脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)の一部を、温度218.5℃で、水を含まないものとして加えられている。
【0076】
本発明をその好ましい作用形態で説明してきたが、本発明を導く主要概念、即ち、流動接触分解装置の及び更にディレードコーキング装置の、ガス回収装置における脱エタン塔(13)の運転の不安定性を制御する方法は、その革新的特性に関して保護された状態である、この場合に、当該技術に通常に精通している人は、問題の研究手段に適当で、適合する変化、修正、変更、改変及び同等物を、以下に提示する特許請求の範囲によって明らかにされる、本発明の要旨及び範囲による保護(coverage)から離れることなく、作製し、実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 塔頂ガス流
2 非安定化軽質ナフサの液体流
3 第1コンプレッサー
4 第2コンプレッサー
5 水流
6 第1熱交換器
7 高圧ドラム
8 酸性水流
9 原料負荷流
10 ガス流
11 一次吸収塔
12 二次吸収塔
13 脱エタン塔
14 主要塔底流
15 脱ブタン塔
16 予熱器
17 第2塔底流
18 体積分画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
該不安定性は高圧ドラム由来の炭化水素類の液体相と共に水が運ばれることによって惹起されるものであり、
脱エタン塔(13)で不安定性が生じたときに該塔に介入して、原料負荷(feed load)流(9)の過剰な水が共沸混合物としてのみ引き出されるようなやり方で、脱エタン塔の水の物質バランス(material balance of water)を調整する工程を含むことを特徴とし、
前記介入が、この脱エタン塔(13)の原料負荷流(9)中に、乾燥炭化水素類又は低含有率の水を有している炭化水素類のいずれかである、炭化水素類の流れを導入することによって行われ、及び、
この導入が該装置の内部のであってもよく、該装置の外部のであってもよい、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
脱エタン塔(13)での不安定性のための介入の時期は、
脱エタン塔(13)の原料負荷流(9)に含有される水含有率の関数として、
脱エタン塔(13)の塔頂と塔底の間の圧力差の関数として、
脱エタン塔(13)の上半分の領域に位置しているプレート中の流体の温度の関数として選択され得るものであり、
及び特定の状況では、脱エタン塔(13)の塔頂の温度の関数としても定められ得るものである、
ことを特徴とする、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
装置の内部の該炭化水素流の体積分画(18)が安定化軽質ナフサから構成されていることを特徴とする、
方法。
【請求項4】
請求項1に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
装置の外部の該炭化水素流が安定化軽質ナフサから構成されていることを特徴とする、
方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
該安定化軽質ナフサ流が、典型的には「ブタン類」の範囲の真沸点200℃を有することを特徴とする、
方法。
【請求項6】
請求項1又は3に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
装置の内部の安定化軽質ナフサから構成されている該炭化水素流が、脱ブタン塔(15)の第2塔底流(17)由来であることを特徴とする、
方法。
【請求項7】
請求項1又は3に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
第2塔底流(17)が、約25℃の低温から約280℃の高温までの範囲のいずれかであり得る温度を有し得ることを特徴とする、
方法。
【請求項8】
請求項1又は3に記載の流動接触分解装置における及びディレードコーキング装置における脱エタン塔での不安定性を制御する方法であって、
安定化軽質ナフサの第2塔底流(17)の体積分画(18)の量が、共沸の現象に基づいて定められることを特徴とする、
方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−163605(P2010−163605A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−281724(P2009−281724)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(591005349)ペトロレオ ブラジレイロ ソシエダ アノニマ − ペトロブラス (25)
【Fターム(参考)】