説明

流水部材の固定装置

【課題】 流水部材の確実な固定性を確保した上で高さ位置調節を迅速に行うことができるようにする。
【解決手段】 排水管Pを保持する保持部材40と、この保持部材40を所定の高さ位置で支持する支柱30と、設定された保持部材40の高さ位置を固定する位置決め具50とを備えてなり、支柱30には複数の菱形孔38が狭小隙間38aを介して連通するように連設されてなる上下方向に延びた長孔37が設けられ、位置決め具50は、菱形孔38に嵌挿された状態で狭小隙間38aに阻止されて昇降が規制される係止姿勢と狭小隙間38aを通過し得る係止解除姿勢との間で姿勢変更可能な係止体53と、該係止体53の姿勢変更を操作するための操作部57とを備え、係止体53は、操作部57のワンタッチ操作で係止姿勢および係止解除姿勢間で姿勢変更し得るように構成されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管などの流水部材の固定装置に関するものであり、特に、流水部材の現地施工の効率化を図ることが可能な流水部材の固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図11に示すような排水管(流水部材)Pの固定装置100が知られている。この固定装置100は、例えば建屋内で発生した各種の汚水を排出するために床下のコンクリート基礎Sに敷設される排水管Pを固定するためのものであり、細長い矩形状のベース板101と、このベース板101の両側部から立設された一対のねじ軸102と、両側部が各ねじ軸102に外嵌されることによって当該ねじ軸102に装着される上下一対のバンド体103と、各バンド体103がねじ軸102に外嵌された状態で当該上下一対のバンド体103を挟持して締結する各ねじ軸102当り2個のナット106とからなっている。
【0003】
前記バンド体103は、各側部に設けられた一対の座金部104と、これら一対の座金部104間に形成された円弧部105とから構成されている。かかるバンド体103は、各座金部104がねじ軸102に外嵌された状態で上下の円弧部105によって排水管Pを挟持し得るようになっている。そして、上下の円弧部105によって排水管Pが挟持された状態で、各ねじ軸102に螺着されている上下のナット106で各座金部104を締結することにより、排水管Pが固定装置100に固定されることになる。
【0004】
このような固定装置100は、ベース板101を介してアンカーボルト107をコンクリート基礎S内に螺着し締結することによりコンクリート基礎S上に敷設されるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで排水管Pは、通常、自然流下で汚水を流出させるようになされているため、上流側から下流側に向けて先下がりに傾斜するように敷設されている。したがって、バンド体103は、この傾斜に合わせて高さ位置が調節されなければならないが、この高さ位置の調節は、ねじ軸102に螺着されているナット106を回転操作することによって行われるため昇降速度が非常に遅く、コンクリート基礎S上に多数敷設された固定装置100の全てを対象としてかかる作業を行うためには多数の時間を要し、排水管Pの敷設工事が極めて非効率なものなるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであり、流水部材の確実な固定性を確保した上で迅速な高さ位置調節を行うことが可能であり、これによって流水部材の敷設工事の効率化を図ることができる排水管等の流水部材の固定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、排水管等の流水部材を保持する保持部材と、該保持部材を所定の高さ位置で支持する支持部材と、設定された保持部材の高さ位置を位置決めする位置決め具とを備え、前記支持部材は、前記保持部材を支持し得るように構成された少なくとも1本の支柱を備え、該支柱は、複数の装着孔が連設されてなる上下方向に延びた長孔を備え、前記位置決め具は、前記装着孔に嵌り込むことにより前記支柱を係止する係止突起と、該係止突起が前記支柱を係止することにより昇降が規制される係止姿勢および当該係止が解除されることにより昇降が許容される係止解除姿勢間で姿勢変更可能な係止体とを備える流水部材の固定装置であって、前記位置決め具は、前記長孔を通過可能で且つ、前記係止体、前記支持部材および前記保持部材に抜け止め状態で嵌挿される軸体と、該軸体に外嵌され、前記係止体および前記保持部材を前記支柱に密着させる付勢手段とを備え、前記係止体は、前記支柱に対する対向面を有する板体と、該板体の対向面に膨出されてなる膨出突起を備え、該膨出突起は、前記係止体が係止姿勢に姿勢設定された状態において前記付勢手段により前記支柱に向けて付勢されることで姿勢変更するのを規制すべく、前記係止体が係止解除姿勢から係止姿勢に姿勢変更される際に、前記付勢手段に抗して前記板体を前記支柱から離させるように形状設定されてなることを特徴とする流水部材の固定装置である。
【0008】
この発明によれば、係止体は、操作部のワンタッチ操作で係止姿勢と係止解除姿勢との間で姿勢変更し得るように構成されているため、従来のようにボルト締め等の面倒な操作を行うことなく保持部材の高さ位置調節および位置決めを容易に行うことができ、流水部材固定装置の現地施工の迅速性を確保する上で有効である。
【0009】
なお、本発明においては、前記係止体は、係止姿勢に姿勢設定された状態で係止突起が狭小隙間に阻止されることにより昇降が規制される一方、係止解除姿勢に姿勢設定された状態で係止突起が狭小隙間を通過して昇降し得るように構成されてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、係止解除姿勢に姿勢設定された状態の係止体は、係止突起が長孔の狭小隙間を通過し得るようになっているため、操作部を摘持して上下方向に力を加えることにより、当該係止体を支柱に沿って昇降させることができ、これによって保持部材の高さ位置を調節することができる。
【0011】
保持部材の高さ位置が調節された状態で、操作部を所定の方向に操作して係止体の係止突起が長孔の狭小隙間を通過し得ない係止姿勢に姿勢変更させることにより係止体は係止突起が所定の装着孔に嵌り込んで昇降し得なくなるため、保持部材を設定された高さ位置で支柱に固定することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記支柱は、保持部材を挟持し得るように対面距離が可変に構成された一対からなる構成を採用してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、保持部材は一対の支柱に挟持されるため、支柱が1本である場合に比較して当該保持部材の支柱による支持状態がさらに安定したものになる。
【0014】
また、本発明においては、前記支柱には、上端縁から前記長孔に連通した開口が設けられ、該開口は、少なくとも係止解除姿勢に設定された係止体を通過し得るように口幅寸法が設定されてもよい。
【0015】
かかる構成によれば、保持部材に取り付けられた状態の係止体の一部(長孔に嵌め込まれる部分)を開口から嵌め込むことによって係止体を支柱に装着することが可能になり、保持部材の支柱に対する装着操作が容易になる。特に支柱が2本の場合は、一対の支柱間の距離を予め設定した状態で一対の係止体を支柱頂部から各長孔に装着することが可能になり、保持部材の支持部材に対する装着操作の迅速化に貢献する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の流水部材の固定装置によれば、保持部材の高さ位置を固定するための位置決め具の構成要素である係止体は、操作部のワンタッチ操作で係止姿勢および係止解除姿勢間で姿勢変更し得るように構成されているため、従来のようにボルト締め等の面倒な操作を行うことなく保持部材の高さ位置調節を容易に行うことができ、流水部材固定装置の現地施工の迅速性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る流水部材の固定装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の固定装置の組立て斜視図であり、保持部材の高さ位置が固定された状態を示している。
【図3】図1の固定装置の組立て斜視図であり、保持部材の高さ位置を調節し得る状態を示している。
【図4】位置決め具の構成要素である係止体および操作部を構成する係止金具の第1実施形態を示す展開図である。
【図5】図4の位置決め具の完成斜視図であり、(イ)は、保持部材に装着される前の状態、(ロ)は、保持部材に装着された状態をそれぞれ示している。
【図6】第1実施形態の位置決め具の作用を説明するため説明図であり、(イ)は、係止金具が係止姿勢に姿勢された状態、(ロ)は、係止金具が係止解除姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
【図7】本発明に係る位置決め具の第2実施形態を示す図であり、(イ)は、分解斜視図、(ロ)は、組立て斜視図である。
【図8】第2実施形態の位置決め具の作用を説明するための説明図であり、(イ)は、係止金具が係止姿勢に姿勢された状態、(ロ)は、係止金具が係止解除姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
【図9】図1の固定装置の組立て斜視図であり、保持部材の高さ位置が固定され、且つカバー部材が装着される状態を示している。
【図10】位置決め具の第3実施形態を示す説明図であり、(イ)は、操作部が係止解除姿勢に姿勢設定された状態、(ロ)は、操作部が係止姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
【図11】従来の排水管の固定装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に係る流水部材の固定装置10の一実施形態を示す分解斜視図である。また、図2および図3はその組立て斜視図であり、図2は、位置決め具50が係止姿勢に姿勢設定されることにより保持部材40の高さ位置が固定された状態、図3は、位置決め具50が係止解除姿勢に姿勢設定されることにより保持部材40の高さ位置が調節され得るようになった状態をそれぞれ示している。
【0019】
これらの図に示すように、固定装置10は、コンクリート基礎S(図2)に固定されるベース部材20と、このベース部材20に装着される一対の支柱30と、これら一対の支柱30間に介設されて支持される、排水管(流水部材)Pを保持するための保持部材40と、この保持部材40の設定された高さ位置を固定するための位置決め具50とを備えた基本構成を有している。
【0020】
前記ベース部材20は、本実施形態においては、断面視でU字形状を呈した鋼材等の金属材料によって形成されている。かかるベース部材20は、長尺で矩形状の平板部21と、この平板部21の両側部から上方に向けて突設され平板部21の全長に亘って延びる幅方向一対の側板22とからなり、平板部21がコンクリート基礎Sに接地された状態で当該平板部21の両端部がアンカーボルト23によってコンクリート基礎Sに固定されることによりベース部材20がコンクリート基礎S上に敷設されるようになっている。
【0021】
前記ベース部材20の平板部21には、図1における右方位置に幅方向中央部で長手方向に延びる遊び孔24が穿設されている。この遊び孔24は、右側の支柱30の左右動を案内するためのものである。
【0022】
前記支柱30は、外幅寸法がベース部材20の側板22間の内寸法より僅かに小さく寸法設定された断面視でU字形状を呈する鋼材等の金属材料によって形成されている。かかる支柱30は、ベース部材20の平板部21上に立設される支柱本体31と、この支柱本体31の基端部から対向方向に向けて直角に折り曲げられて形成した据付座部32とからなっている。
【0023】
支柱本体31および据付座部32の幅方向両側部には、支柱30の内角側に突出した正面視でL字形状の側板33が設けられているとともに、支柱本体31の側板33間には垂直板34が、また据付座部32の側板33間には水平板35がそれぞれ形成されている。このような支柱30は、一対が各据付座部32を互いに対向方向に向かわせた状態でベース部材20の側板22間に装着されることによって一対の支柱本体31がベース部材20上で互いに対向配置で立設されるようになっている。
【0024】
そして、本実施形態においては、一方の支柱30(図1〜図3に示す例では左方の支柱30)は、その据付座部32がベース部材20の側板22間に嵌め込まれた状態で、平板部21を下面側から貫通したリベット25が水平板35の中央部に穿孔された貫通孔に嵌入され、かしめ処理されることによってベース部材20に固定されている。
【0025】
これに対し、他方の支柱30(図1〜図3に示す例では右方の支柱30)は、その据付座部32がベース部材20の側板22間に嵌め込まれた状態で、平板部21の遊び孔24を下面側から貫通したリベット25が水平板35の中央部に穿孔された貫通孔に嵌入され、かしめ処理されることによってベース部材20に装着されている。したがって、右側の支柱30は、リベット25が遊び孔24に案内されつつ当該遊び孔24の範囲内で左右方向に正逆移動し、排水管Pの径寸法に応じて一対の支柱本体31間の間隔寸法を変化させ得るようになっている。
【0026】
また、各支柱本体31の垂直板34には、上下方向に延びる長孔37が穿設されている。この長孔37は、菱形状を呈した菱形孔(装着孔)38の複数個が一部を重ね合せながら上下方向に連設されることによって形成されている。そして、互いに隣接した菱形孔38の重なり合っている部分には、幅寸法が菱形孔38の直径寸法より小さな狭小隙間38aが形成されている。かかる長孔37を介して位置決め具50が支柱本体31に装着される。
【0027】
かかる長孔37を備えた支柱本体31の上端面には長孔37に連通した開口38bが設けられている。この開口38bは、位置決め具50を長孔37内へ導くためのものであり、開口幅が長孔37の狭小隙間38aの隙間寸法と同一に寸法設定されている。
【0028】
前記保持部材40は、排水管Pを挟み込んで保持するためのものであり、帯状の金属材料が円弧状に折り曲げ処理されることによって形成されている。かかる保持部材40は、半円状の配管受け部41と、この配管受け部41の上方位置に形成された幅方向一対の配管抜止め部42と、配管受け部41の上端部と、配管抜止め部42の下端部との間に介設され、かつ、コ字形状を呈して外方に向けて突設された一対のコ字状部43とを備えて構成されている。
【0029】
前記配管受け部41は、内面側が保持するべき排水管Pの外径(半径)寸法と等しい曲率半径を有しており、これによって排水管Pが配管受け部41に密着状態で支持されるようになっている。
【0030】
前記各配管抜止め部42は、排水管Pの外周面に密着し得る曲率半径を備えた円弧状の配管押え部42aと、各配管押え部42aの上端部から互いに離間する方向に向けて斜め上方に延設された案内片42bとからなっている。案内片42bは、保持部材40に装着される排水管Pを案内するためのものであり、一対の案内片42bに排水管Pを支持させた状態で、当該排水管Pを下方に向かって押圧することにより、案内片42bが配管押え部42aの弾性力に抗して互いに離間し、これによって排水管Pは一対の案内片42b間をすり抜けて保持部材40内に嵌り込み、配管受け部41に保持されることになる。
【0031】
前記各コ字状部43は、保持部材40の支柱本体31への接続用として使用されるものであり、位置決め具50を構成する後述の軸体51の頭部51bを嵌め込み得るように互いに離間方向に膨出して形成され、外面が各支柱本体31の対向面と密着し得る対向面を備えた平板状の軸座43aをそれぞれ備えている。各軸座43aには、摺接状態で後述の軸体51を挿通する挿通孔43bがそれぞれ穿設されている。
【0032】
前記位置決め具50は、前記長孔37との関連で保持部材40の高さ位置を固定するためのものである。以下、図4および図5を基に位置決め具50について詳細に説明する。図4は、位置決め具50の構成要素である係止体および操作部を構成する係止金具の第1実施形態を示す展開図である。また、図5は、図4の位置決め具50の完成斜視図であり、(イ)は、保持部材40に装着される前の状態、(ロ)は、保持部材40に装着された状態をそれぞれ示している。
【0033】
位置決め具50は、図5に示す軸体51と、図4に展開状態を示す係止金具52と、前記軸体51に外嵌されるスプリングワッシャ59とを備えて構成されている。前記軸体51は、図5に示すように、筒状に形成された軸体本体51aと、この軸体本体51aの一端部に同心で形成された軸体本体51aより大径の頭部51bとからなるいわゆる中空リベットが採用されている。軸体本体51aは、外径寸法が保持部材40のコ字状部43の軸座43aに穿設された挿通孔43bより僅かに小さく径設定され、これによって摺接状態で挿通孔43bに嵌挿され得るようになっている。
【0034】
前記係止金具52は、図4に示すように、金属製の所定の原料板材にプレス処理を施すことによって打ち抜きで形成され、2本の二点鎖線で示す山折り線に沿って直角に山折りすることによって形成されている。かかる係止金具52は、中央部に形成された異形平板状の係止体53と、該係止体53の左右の端部から外方(図4の紙面の裏面側)に向かって図4の二点鎖線の位置から折り曲げられて形成した左右一対の操作部57と、各操作部57から前方(操作部57の突出方向と反対方向)へ向けて突設された幅方向一対のストッパー58とからなっている。
【0035】
前記係止体53は、幅寸法が支柱本体31のそれと略同一に設定され、且つ図4における正面視で左上がり右下がりに段違いに形成された異形板体54と、この異形板体54の中央部に図4における左上がりの傾斜で延びる前方(図4の紙面の表側)に向かって膨出した直状膨出突起55と、該直状膨出突起55の先端面からさらに前方に向かって膨設された幅方向一対の係止突起56とを備えている。直状膨出突起55の中央部には、軸体本体51aが摺接状態で嵌挿し得る嵌挿孔55aが穿設されている。
【0036】
前記直状膨出突起55は、係止金具52の横方向に対して略10°〜15°(本実施形態では13°)で左上がりに傾斜して形成され、係止金具52が図2に示す係止姿勢(隙間非通過姿勢)に姿勢設定された状態で長孔37に嵌り込まないように長さ寸法が設定されているとともに、係止金具52が図3に示すように係止解除姿勢(隙間通過姿勢)に姿勢設定された状態で長孔37の狭小隙間38aに嵌り込み得るように幅寸法が設定されている。また、直状膨出突起55の異形板体54からの膨出量は、支柱本体31の厚み寸法と略同一に設定されている。
【0037】
前記係止突起56は、直状膨出突起55の先端面において嵌挿孔55aの孔心に対する点対称位置にそれぞれ蒲鉾状で設けられ、正面視(図4)および側面視でそれぞれ円弧状になるように膨設されている。かかる係止突起56は、係止金具52が係止姿勢(図2)に姿勢設定された状態で、図5の(イ)に一点鎖線で示すように、左側の係止突起56は菱形孔38の左隅部38cに嵌り込む一方、右側の係止突起56は1段下の菱形孔38の右隅部38dに嵌り込むように設置位置が設定されている。係止金具52が係止姿勢に姿勢設定された状態では、一対の係止突起56がこれら菱形孔38の左右の隅部38c,38dに嵌り込むことにより、位置決め具50の上下動(昇降)が規制されるようになっている。
【0038】
上記一対のストッパー58は、図5の(イ)に示すように、一方のものが右側の操作部57の上端部から前方に向かって突出しているとともに、他方のものが左方の操作部57の下端部から前方に向かって突出し、これによって異形板体54における嵌挿孔55aの孔心を基準にした点対称位置に設けられた状態になっている。かかる一対のストッパー58は、係止金具52が係止姿勢に姿勢設定された状態で、互いの対向面が、図2に示すように、それぞれ支柱本体31の側板33に当接するように寸法設定されている。
【0039】
このように構成された位置決め具50は、図5の(イ)に矢印で示すように、保持部材40のコ字状部43を支柱本体31の側板33間に嵌め込んだ状態で、軸体本体51aを保持部材40のコ字状部43の挿通孔43bおよび支柱本体31の長孔37に挿通し、この状態で係止体53の嵌挿孔55aおよびスプリングワッシャ59を軸体本体51aに外嵌した上で、スプリングワッシャ59が縮むようにしながら軸体本体51aの先端部をかしめることにより、図5の(ロ)に示すように、位置決め具50が保持部材40を支持しながら支柱本体31に装着された状態になる。
【0040】
そして、位置決め具50が支柱本体31に装着された状態では、係止金具52は、軸体51回りに正逆回動し得るようになっており、これによって一対の係止突起56は、所定の菱形孔38の左隅部38cおよび1段下の菱形孔38の右隅部38dにそれぞれ嵌り込むとともに、各ストッパー58が支柱本体31の側板33にそれぞれ当止した図2に示す係止姿勢と、この係止姿勢において57を摘持して軸体51回りに所定の方向に回動操作することにより直状膨出突起55が長孔37に嵌り込んだ図3に示す係止解除姿勢(図6の(イ)参照)との間で姿勢変更し得るようになる。
【0041】
図6は、第1実施形態の位置決め具50の作用を説明するため説明図であり、(イ)は、係止金具52が係止姿勢に姿勢された状態、(ロ)は、係止金具52が係止解除姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。因みに図6において、(イ)および(ロ)の右に付された添え字の1は、内側から支柱本体31に対面した図であり、添え字の2は、1の図のA−A線断面図であることを示している。
【0042】
まず、係止金具52が係止姿勢に姿勢設定された状態では、図6の(イ)−1に示すように、左右一対のストッパー58が支柱本体31の各側板33に当止した状態で、左側の係止突起56が所定の菱形孔38の左隅部38cに嵌り込むとともに右側の係止突起56が1段下の菱形孔38の右隅部38dに嵌り込み、しかも異形板体54は、直状膨出突起55が長孔37から抜け出ていることにより、図6の(イ)−2に示すように、スプリングワッシャ59の付勢力に抗して(すなわちスプリングワッシャ59が縮んで)支柱本体31から離間した状態になっている。
【0043】
直状膨出突起55は、スプリングワッシャ59の付勢力によって支柱本体31の垂直板34に押圧されていることにより、その摩擦力で軸体51回りに回動し難くなっており、これによって係止金具52は、設定された係止姿勢が安定するようになされている。
【0044】
この状態で一対の操作部57を摘んで係止金具52を軸体本体51a回りに時計方向に回動させると、各係止突起56は、図6の(ロ)−1に示すように、菱形孔38の各隅部38c,38dから外れるとともに、直状膨出突起55が、図6の(ロ)−2に示すように、スプリングワッシャ59の付勢力によって長孔37に嵌り込んだ状態になる。この状態では、直状膨出突起55が狭小隙間38aを通過し得るため、操作部57を摘持して位置決め具50を昇降させることができる。
【0045】
そして、位置決め具50を昇降させて新たな高さ位置が設定された後に、今度は操作部57を軸体51回りに反時計方向に回動させると、直状膨出突起55がスプリングワッシャ59の付勢力抗して支柱本体31の垂直板34に乗り上げていくと同時に、一対の係止突起56が、図6の(イ)に示すように、新たな高さ位置で菱形孔38に嵌り込み、これによって保持部材40、すなわち排水管Pの高さ位置が固定される。
【0046】
図7は、本発明に係る位置決め具50aの第2実施形態を示す図であり、(イ)は分解斜視図、(ロ)は組立て斜視図である。この実施形態の位置決め具50aは、先の実施形態で採用されていたような直状膨出突起55が設けられていない点、先の係止突起56に代えて菱形膨出突起560が設けられている点、およびスプリングワッシャ59が設けられていない点で先の位置決め具50と相違している。その他の構成は第1実施形態のものと同様である。
【0047】
すなわち、この実施形態の位置決め具50aは、軸体51と、この軸体51が嵌挿される係止金具52とから構成され、係止金具52は、係止体53と操作部57と、ストッパー58とから構成されている点については、先の実施形態の位置決め具50と同様であるが、係止体53が異形板体54と、この異形板体54の中心位置に支柱本体31に向かって膨設された、先の実施形態の係止突起56に対応する菱形膨出突起560とからのみ構成され、直状膨出突起55は設けられていないばかりか、先の実施形態で重要な役割を果たしたスプリングワッシャ59は採用されていない。
【0048】
前記菱形膨出突起560は、係止金具52が係止姿勢に設定された状態で、長尺側の対角線L1と水平面との間で形成される角度αが、上下で隣設された菱形孔38における上段の菱形孔38の左隅部38cと、下段の菱形孔38の右隅部38dとを結ぶ直線L2と水平面との間で形成される角度と同様になるように設定されているとともに、対角線L1の方が前記直線L2より若干短めに設定されている。
【0049】
また、菱形膨出突起560の短尺側の対角線は、狭小隙間38aの隙間寸法より僅かに短く寸法設定されている。そして、菱形膨出突起560の左角部561が菱形孔38の左隅部38cに嵌り込むとともに、同右角部562が1段下の菱形孔38の右隅部38dに嵌り込むことにより、係止金具52の昇降が阻止されるようになっている。
【0050】
このように構成された菱形膨出突起560の中心位置には、軸体本体51aが摺接状態で貫通し得る嵌挿孔55aが穿設されている。かかる第2実施形態の位置決め具50aは、保持部材40のコ字状部43の挿通孔43bおよび支柱本体31の長孔37を介して軸体本体51aを係止体53の嵌挿孔55aに差し通し、軸体本体51aの先端部にかしめ処理を施すことにより、保持部材40を支持した状態で支柱本体31に装着される。
【0051】
図8は、第2実施形態の位置決め具50aの作用を説明するための説明図であり、(イ)は、係止金具52が係止姿勢に姿勢された状態、(ロ)は、係止金具52が係止解除姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。
【0052】
まず、係止金具52が係止姿勢に姿勢設定された状態では、図8の(イ)に示すように、左右一対のストッパー58が支柱本体31の各側板33に当止した状態で、菱形膨出突起560の左角部561が所定の菱形孔38の左隅部38cに嵌り込むとともに右角部562が1段下の菱形孔38の右隅部38dに嵌り込み、これによって係止金具52の昇降が規制された状態になっている。
【0053】
この状態で一対の操作部57を摘んで係止金具52を軸体本体51a回りに時計方向に回動させると、菱形膨出突起560の各角部561,562は、図8の(ロ)に示すように、菱形孔38の各隅部38c,38dから外れた状態になる。この状態で操作部57を摘持して位置決め具50を昇降させることができる。
【0054】
そして、位置決め具50を昇降させて新たな高さ位置が設定された後に、今度は操作部57を軸体51回りに反時計方向に回動させると、菱形膨出突起560の一対の角部561,562が、図8の(イ)に示すように、新たな高さ位置で菱形孔38に嵌り込み、これによって保持部材40、すなわち排水管Pの高さ位置が固定されることになる。
【0055】
以上詳述したように、本発明の固定装置10は、排水管Pを保持する保持部材40と、この保持部材40を所定の高さ位置で支持する支柱30と、設定された保持部材40の高さ位置を固定する位置決め具50とを備えてなるものであり、支柱30には複数の菱形孔38が狭小隙間38aを介して連通するように連設されてなる上下方向に延びた長孔37が設けられ、位置決め具50は、菱形孔38に嵌挿された状態で狭小隙間38aに阻止されて上下動が規制される係止姿勢と狭小隙間38aを通過し得る係止解除姿勢との間で姿勢変更可能な係止体53と、該係止体53の姿勢変更を操作するための操作部57とを備え、係止体53は、操作部57のワンタッチ操作で係止姿勢および係止解除姿勢間で姿勢変更し得るように構成されてなるものである。
【0056】
したがって、係止体53が係止解除姿勢に姿勢設定された状態で操作部57を摘持して上下方向に力を加えることにより、当該係止体53を支柱30に沿って昇降し、これによって位置決め具50に接続された保持部材40の高さ位置を調節することができる。
【0057】
保持部材40の高さ位置が調節された後に、操作部57を所定の方向に操作して係止体53を、その一部(係止突起56または菱形膨出突起560)が長孔37の狭小隙間38aを通過し得ない係止姿勢に姿勢変更することにより、係止体53は昇降し得なくなるため、保持部材40を、設定された高さ位置で支柱30に固定することができる。
【0058】
そして、係止体53は、操作部57のワンタッチ操作で係止姿勢および係止解除姿勢間で姿勢変更し得るように構成されているため、従来のようにボルト締め等の面倒な操作を行うことなく保持部材40の高さ位置調節を容易に行うことができ、排水管P固定装置の現地施工の迅速性を確保することができる。
【0059】
また、支柱30には、上端縁から長孔37に連通した開口38bが設けられ、該開口38bは、少なくとも係止解除姿勢に設定された係止体53を通過し得るように口幅寸法が設定されているため、軸体51を開口38bから嵌め込むことによって係止体53を支柱30に装着することが可能になり、保持部材40の支柱30に対する装着操作が容易になる。特に支柱30が2本の場合は、一対の支柱30間の距離を予め設定した状態で一対の係止体53を支柱30頂部から各長孔37に装着することが可能になり、保持部材40の支柱30に対する装着操作の迅速化に貢献することができる。
【0060】
また、係止体53を、支柱30に昇降可能に取り付けられる異形板体54と、該異形板体54の片面に膨設され、且つ長孔37に嵌挿された状態で狭小隙間38aを通過し得る隙間通過姿勢および同通過し得ない隙間非通過姿勢間で姿勢変更可能な係止突起(係止突起56または菱形膨出突起560)とで構成し、係止突起の嵌挿孔55aに長孔37の狭小隙間38aを通過し得る軸体51が貫通し、該軸体51を係止体53、長孔37および保持部材40に抜け止め状態で嵌挿しているため、係止体53を軸体51回りに正逆回動させることによって係止突起が狭小隙間38aを通過し得る隙間通過姿勢(係止解除姿勢)と、同通過し得ない隙間非通過姿勢(係止姿勢)との間で当該係止体53の姿勢変更を行うことができ、係止体53の姿勢変更構造を簡単なものにすることができる。
【0061】
また、特に第1実施形態においては、異形板体54に支柱30に対する対向面に膨出され且つ係止突起56が膨設されてなる直状膨出突起55を設け、該直状膨出突起55を、係止突起56が隙間通過姿勢に姿勢設定された状態で狭小隙間38aを通過し得るように長孔37に嵌り込む一方、係止突起56を隙間非通過姿勢に姿勢変更させることにより長孔37から抜け出るように形状設定したため、係止体53は、係止突起56が狭小隙間38aを通過し得る隙間通過姿勢に姿勢設定されることにより直状膨出突起55が長孔37に嵌り込み当該長孔37に案内されつつ昇降し得るようになり、この状態で係止体53を昇降させて保持部材40の高さ位置を調節することができる。
【0062】
保持部材40の高さ位置が設定された状態で操作部57を軸体51回りに所定の方向に向けて回動操作すれば、直状膨出突起55がスプリングワッシャ59の付勢力に抗して長孔37から抜け出すとともに、直状膨出突起55に設けられた係止突起56が隙間非通過姿勢に姿勢設定された状態で菱形孔38に嵌り込み、これによって係止体53は昇降が阻止され、保持部材40を高さ位置が固定された状態にすることができる。
【0063】
そして、保持部材40の高さ位置が固定された状態においては、直状膨出突起55の長孔37からの抜け出しにより付勢力が増加したスプリングワッシャ59によって異形板体54の支柱30に対する押圧力が増大し、これによって係止体53の係止姿勢が安定した状態になるため、保持部材40の設定された高さ位置が変化するような不都合を有効に防止することができる。
【0064】
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0065】
(1)上記の実施形態においては、支持部材としての支柱30は一対が採用され、当該一対の支柱30で保持部材40を挟持するようになされているが、本発明は、支柱30が一対で設けられることに限定されるものではなく、1本のみの支柱30であっても保持部材40を支持することができる。そして、一対の支柱30の場合には排水管Pの径寸法に合わせて一対の支柱30間の距離を調節しなければならないが、支柱30が1本の場合にはかかる面倒な操作を行う必要がなくなり、その分保持部材40の支柱30に対する装着操作の作業性が良好になるとともに汎用性が向上する。
【0066】
(2)上記の実施形態においては、一対の支柱30の内の一方のものだけがベース部材20に案内されながら水平方向に移動し得るようになっているが、本発明は、一方の支柱30のみが移動し得るように構成されていることに限定されるものではなく、両方の支柱30が移動し得るように構成してもよい。
【0067】
(3)上記の実施形態においては、保持部材40が支柱30に装着された状態で、配管抜止め部42間を覆うカバー体を設けるようにしてもよい。これによって排水管Pの上方へ向かう抜け出しをより確実に防止することができる。
【0068】
(4)上記の実施形態においては、保持部材40に配管抜止め部42が設けられているが、本発明は、保持部材40に配管抜止め部42を設けることに限定されるものではなく、排水管Pの敷設状況によっては特に設けなくても配管受け部41のみで排水管Pを支持することができる。
【0069】
(5)上記の実施形態においては、支柱本体31の垂直板34に穿設される長孔37は、菱形孔38の複数個が一部を重ね合せながら上下方向に連設されることによって形成されているが、こうする代わりに菱形孔38の複数個を、一部を重ね合せることなく他とは独立した状態で穿設し、隣接する菱形孔38間に狭小隙間38aに相当する連絡隙間を設けるようにしてもよい。
【0070】
(6)上記の実施形態においては、装着孔として菱形形状を呈した菱形孔38が採用されているが、本発明は、装着孔が菱形孔38であることに限定されるものではなく、円孔や楕円孔であってもよいし、正方形状または長方形状を呈した横辺が水平方向へ延びる四角孔であってもよい。
【0071】
(7)上記の実施形態においては、一対ある各係止突起56または菱形膨出突起560の左右の角部(左角部561および右角部562)は、上下で1段ずれた菱形孔38にそれぞれ嵌り込むように位置設定または形状設定されているが、本発明は、各係止突起56または菱形膨出突起560の左右の角部が上下で1段ずれた菱形孔38にそれぞれ嵌り込むことに限定されるものではなく、1つの菱形孔38の左隅部38cおよび右隅部38dにそれぞれ嵌り込むようにしてもよい。
【0072】
(8)上記の第2実施形態の位置決め具50aにおいては、軸体本体51aにスプリングワッシャ59が外嵌されていないが、第2実施形態においても軸体本体51aにスプリングワッシャ59を外嵌した上でかしめ止めを行うようにしてもよい。
【0073】
(9)上記の実施形態においては、係止金具52は常時露出しているが、カバー部材を被せるようにしてもよい。図9は、固定装置10にカバー部材60を装着する状態の組立て斜視図である。カバー部材60は、断面視でコ字形状を呈した鋼材等の金属材料によって形成されており、対向する一対の側部61,61と、この側部61,61を連結する連結部62とからなり、一枚の平板を折り曲げることにより形成される。
【0074】
一対の側部61,61は、それぞれ相手側に向かって膨出した膨出部63を備えており、それぞれ膨出部63が係止金具52の操作部57に形成された装着孔57aに嵌まり込むことで、カバー部材60が係止金具52に装着される。より詳細に言えば、一対の側部61,61の内面の間隔を一対の操作部57,57の外面の間隔よりも広くすることで、カバー部材60を係止金具52に外挿可能とし、且つ一対の膨出部63,63の間隔を一対の操作部57,57の外面の間隔よりも狭くすることで、カバー部材60の弾性復元力をもってカバー部材60を係止金具52に装着可能とする。加えて、膨出部63および装着孔57aをそれぞれ長尺形状とすることで、係止金具52に対してカバー部材60が回動することはなくなり、係止金具52およびカバー部材60の両者が一体化される。
【0075】
また、一対の側部61,61は、各先端が支柱30の側板33と対向するような、装着状態にて支柱30を幅方向で挟み込む形状に設定されている。従って、カバー部材60を係止金具52の回動方向に回動させようとしても、側板61が支柱30に当止されることで、支柱30に対してカバー部材60が回動することはなくなり、支柱30、係止金具52およびカバー部材60の三者が一体化される。
【0076】
なお、支柱30の側板33と対向する各側部61の先端のうち、係止金具52の回動側位置には、側板33に向かって膨出した膨出部64が形成されており、実際にはこの膨出部64が支柱30の側板33に当止されるようになっている。従って、一対の側部61,1の内面の間隔を支柱30の一対の側板33,33の外面の間隔よりもある程度広くすることで、支柱30に対するカバー部材60の先端の円滑な外挿を実現しつつ、一対の膨出部64,64の間隔を支柱30の一対の側板33,33の外面の間隔と略同一にすることで、カバー部材60の回動ガタを無くすことができる。
【0077】
このように、カバー部材60を装着することにより、係止金具52が隠れ、美観上好ましいものになるという効果があり、また、係止金具52が不用意に回動操作されにくくなるという効果もある。
【0078】
また、係止金具52が微小に回動して菱形孔(装着孔)38に嵌り込んでいる係止突起56がその装着孔38から外れる程の大きな外力が排水管Pに加わったとしても、支柱30、係止金具52および規制部材として機能するカバー部材60の三者が一体化されて係止金具52の回動が規制されているため、位置決め具50が昇降方向に動いて保持部材40の高さ位置が狂うのを好適に防止することができる。
【0079】
さらに、菱形孔(装着孔)38に嵌り込んでいる係止突起56がその装着孔38を幅方向に拡開させてその装着孔38から外れる程の大きな外力が排水管Pに加わったとしても、規制部材として機能するカバー部材60によって装着孔38の拡開(支柱30の側板33,33の幅方向の拡開)が規制されているため、位置決め具50が昇降方向に動いて保持部材40の高さ位置が狂うのを好適に防止することができる。
【0080】
(10)図10は、位置決め具50bの第3実施形態を示す説明図であり、(イ)は、操作部570が係止解除姿勢に姿勢設定された状態、(ロ)は、操作部570が係止姿勢に姿勢設定された状態をそれぞれ示している。図10に示すように、この実施形態においては、位置決め具50bは、保持部材40のコ字状部43から外方に向かって縦置きで突設された平板状のブラケット510と、このブラケット510の先端部に支持軸511回りに回動自在に軸支された係止金具520とを備えて構成されている。
【0081】
前記ブラケット510は、支柱本体31の長孔370に貫通されるように保持部材40のコ字状部43からの突出量が設定されている。長孔370は、本実施形態においては、上下方向に直線状に延びるものが採用されており、先の実施形態のような菱形孔38は設けられていない。
【0082】
前記係止金具520は、支柱本体31に隣設された係止体530と、この係止体530の基端部から外方に向かって延設された長尺の操作部570とからなっている。係止体530と操作部570とは略直角に結合され、その結合位置が前記支持軸511回りに回動自在に軸支されている。
【0083】
前記係止体530は、係止金具520が係止姿勢に姿勢設定された状態(すなわち支柱本体31が保持部材40のコ字状部43に密着した状態)で、図10の(ロ)に示すように、支持軸511と支柱本体31との間の水平距離より僅かに長く長さ設定されている。
【0084】
かかる位置決め具50bによれば、操作部570が支柱本体31から外方に向けて突出することにより係止金具520が係止解除姿勢に姿勢設定された状態では、図10の(イ)に示すように、支柱本体31が保持部材40のコ字状部43から離間し、ブラケット510を長孔370に沿って昇降させることが可能になっており、これによって保持部材40の高さ位置を調節し得るようになっている。
【0085】
そして、図10の(イ)に示す状態において、保持部材40の高さ位置が設定された後に、操作部570を支持軸511回りに反時計方向に操作すれば、ブラケット510は支持軸511回りに反時計方向に回動し、ブラケット510の先端部が支柱本体31を押圧してコ字状部43を支柱本体31側に引き寄せるため、係止金具520は、図10の(ロ)に示すように、支柱本体31をブラケット510の先端部とコ字状部43との間に挟持した係止姿勢に姿勢設定されることになる。
【0086】
そして、係止金具520が係止姿勢に姿勢設定された状態では、ブラケット510の先端部が支持軸511を通る水平線より下方位置に位置しているため、当該ブラケット510の先端部が支柱本体31から受ける反力は支持軸511回りの反時計方向に向かうモーメントとして作用するため、係止金具520は支持軸511回りに時計方向に向けて回動することはなく、係止姿勢が維持されることになる。なお、係止金具520の係止姿勢を解除するに際しては、操作部570を支持軸511回りに時計方向に向けて回動操作すればよい。
【符号の説明】
【0087】
10 固定装置 20 ベース部材
21 平板部 22 側板
23 アンカーボルト 24 遊び孔
25 リベット 30 支柱
31 支柱本体 32 据付座部
33 側板 34 垂直板
35 水平板 37 長孔
38a 狭小隙間 38b 開口
38c 左隅部 38d 右隅部
38 菱形孔 40 保持部材
41 配管受け部 42 配管抜止め部
42a 配管押え部 42b 案内片
43 コ字状部 43a 軸座
43b 挿通孔 50,50a,50b 位置組め具
51 軸体 51a 軸体本体
51b 頭部 52 係止金具
53 係止体 54 異形板体
55 直状膨出突起 55a 嵌挿孔
56 係止突起 560 菱形膨出突起
561 左角部 562 右角部
562 同右角部 57 操作部
57a 装着孔 58 ストッパー
59 スプリングワッシャ 60 カバー部材
61 側部 62 連結部
63 膨出部 64 膨出部
P 排水管 S コンクリート基礎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管等の流水部材を保持する保持部材と、該保持部材を所定の高さ位置で支持する支持部材と、設定された保持部材の高さ位置を位置決めする位置決め具とを備え、
前記支持部材は、前記保持部材を支持し得るように構成された少なくとも1本の支柱を備え、該支柱は、複数の装着孔が連設されてなる上下方向に延びた長孔を備え、
前記位置決め具は、前記装着孔に嵌り込むことにより前記支柱を係止する係止突起と、該係止突起が前記支柱を係止することにより昇降が規制される係止姿勢および当該係止が解除されることにより昇降が許容される係止解除姿勢間で姿勢変更可能な係止体とを備える流水部材の固定装置であって、
前記位置決め具は、前記長孔を通過可能で且つ、前記係止体、前記支持部材および前記保持部材に抜け止め状態で嵌挿される軸体と、該軸体に外嵌され、前記係止体および前記保持部材を前記支柱に密着させる付勢手段とを備え、
前記係止体は、前記支柱に対する対向面を有する板体と、該板体の対向面に膨出されてなる膨出突起を備え、該膨出突起は、前記係止体が係止姿勢に姿勢設定された状態において前記付勢手段により前記支柱に向けて付勢されることで姿勢変更するのを規制すべく、前記係止体が係止解除姿勢から係止姿勢に姿勢変更される際に、前記付勢手段に抗して前記板体を前記支柱から離させるように形状設定されてなることを特徴とする流水部材の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−144929(P2009−144929A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84259(P2009−84259)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2003−79797(P2003−79797)の分割
【原出願日】平成15年3月24日(2003.3.24)
【出願人】(000108638)タカヤマ金属工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】