説明

流路開閉装置

【課題】シールド性能を向上させた流路開閉装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る流路開閉装置90は、円柱状のボディに径方向に貫通するコック流路47が形成された開閉コック40と、内部に流入路20が設けられるとともに、流入路と交差する円柱状の開閉コック開口30が開口して形成された上部ケース半体10とから構成されている。そして、開閉コックを開閉コック開口に挿入して開閉コックを開閉コック開口内において回転させることにより、流入路をコック流路に整合させたり、ボディの外周部により塞いだりして流入路の開閉を行うように構成されている。ここで、開閉コックは、ボディの外周部において径方向に盛り上がった膨出部を有しており、開閉バルブ部材を挿入部内において回転させて流体流路をボディの外周部により閉じるときに、膨出部が流体流路に当接して流体流路を閉じる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流路の開閉を行う流路開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体もしくは気体(以下において、単に流体と称する)が通過する流体流路を有した流路部材に、流体流路と交差するように開閉コックが取り付けられて、開閉コックを回転させることで流体流路の開閉を行う流路開閉装置が知られている(例えば、特許文献1における図2を参照)。ここで、上記流路開閉装置の一例として、図15に示すようなものがある。ここで、流体輸送ライン300の一部分において、内部に流体流路302を有したパイプ301と交差するように流路開閉装置320が取り付けられている。流路開閉装置320は、流路部材303および開閉コック310から構成されており、流路部材303には、開閉コック310のコック円柱部311と同一形状で、有底円柱状に開口した挿入部304が形成されている。そして、挿入部304にコック円柱部311が挿入されて、互いに近接して回転自在となっている。
【0003】
このとき、図15(b)に示すように、ツマミ313の先端を下方に向けることで、コック円柱部311に形成された貫通穴であるコック流路312が、流体流路302と上下に連通して、流体流路302を流体が通過可能となる。一方、ツマミ313の先端を左方に90度回転させて、二点破線314に示す位置に移動させることで、流体流路302はコック円柱部311の外周面によってシールドされて、流体流路302を閉じた状態とする構成となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−165955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の流路開閉装置310において、挿入部304とコック円柱部311とは回転自在に近接して僅かであるが隙間を有している。そのため、流体流路302をコック円柱部311の外周面によってシールドする場合、挿入部304とコック円柱部311との間に隙間があり、その隙間から流体が漏れ出しやすくシールド性能を確保することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、流体流路を閉じたときのシールド性能を向上させた流路開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る流路開閉装置は、円柱状のボディに径方向に貫通する流路孔が形成された開閉バルブ部材と、内部に流体流路が設けられるとともに前記流体流路と交差する円柱状の挿入部が開口して形成された流路部材とから構成されている。そして、前記開閉バルブ部材を前記挿入部に挿入して前記開閉バルブ部材を前記挿入部内において回転させることにより、前記流体流路を前記流路孔に整合させたり前記ボディの外周部により塞いだりして前記流体流路の開閉を行うように構成されている。ここで、前記開閉バルブ部材は、前記ボディの外周部において径方向に盛り上がった膨出部を有しており、前記開閉バルブ部材を前記挿入部内において回転させて、前記流体流路を前記ボディの外周部により閉じるときに、前記膨出部が前記流体流路に当接して前記流体流路を閉じる構成となっている。
【0008】
上記構成の流路開閉装置において、前記膨出部は、弾性変形可能な材料を用いて形成されていることが好ましい。また、上記構成の流路開閉装置において、前記挿入部は、前記流体流路と前記流路孔とが整合時において前記膨出部と対向する部分が、径方向外側に向けて広がっている構成が好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る流路開閉装置によれば、開閉バルブ部材は、ボディの外周部において径方向に盛り上がった膨出部を有しており、膨出部が流体流路に当接して流体流路を閉じるように構成されている。このように構成することにより、開閉バルブ部材は挿入部に挿入されて回転自在となるとともに、膨出部が流体流路に当接して密着するのでシールド部分には隙間がなくなり、流体流路を閉じたときのシールド性能を向上させることが可能である。
【0010】
また、膨出部が、弾性変形可能な材料を用いて形成されることによって、膨出部が流体流路に当接することで弾性変形して密着し、膨出部がシールド部材(パッキン)の役割を果たす構成が可能となり、よって、シールド性能をより一層向上させることが可能となる。さらに、膨出部が弾性変形可能なので、膨出部と当接する部分の流体流路を損傷させることがなく、シールド性能を安定して長期間にわたって維持することが可能となる。
【0011】
さらに、流体流路と流路孔とが整合時において、挿入部の膨出部と対向する部分が、径方向外側に向けて湾曲している構成となっている。つまり、流体流路と流路孔とを整合させて流体流路を開いているときは、膨出部は挿入部と当接しておらず、膨出部には外力が作用していない。こうすることで、膨出部に損傷が生じたり、膨出部の経年劣化等を低減することができるので、シールド性能を安定して長期間にわたって維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下において、本発明の好ましい実施形態について、図1から図14を参照しながら説明する。ここで説明の便宜上、図1に示す矢印方向を前後、左右および上下と定義しておく。本発明に係る流路開閉装置90は、例えば図1に示すフィルタ1の一部として用いられている。さらに詳細には、流路開閉装置90は、後述する上部ケース半体10と開閉コック40とから構成される。
【0013】
本発明に係る流路開閉装置90が用いられたフィルタ1は、ガソリンおよび軽油等を燃料として使用するエンジンを搭載する車両に取り付けられている。例えば図1に示すように、エンジンから駆動力を得て稼動する供給ポンプ210が稼動することで、発生した負圧により燃料タンク200内の燃料が、フィルタ1を介して供給ポンプ210に搬送されて、そして噴射システム220に供給されるように構成されている。まず、フィルタ1の構成について説明する。
【0014】
フィルタ1は、図2に示すように、フィルタケース2とフィルタエレメント3とを主体に構成され、さらにフィルタケース2は、上部ケース半体10と下部ケース半体80とから構成されている。上部ケース半体10は、例えば金属材料を用いて下方に向けて開口した有底円筒状に形成され、雌ねじ10a、流入路20、開閉コック開口30、開閉コック40、流出路50、バイパス路60およびプライミングポンプ70を有して構成されている。雌ねじ10aは、図2に示すように、上部ケース半体10の下端内周面に形成され、後述する下部ケース半体80の雄ねじ80aと螺合可能に形成されている。流入路20は、図1および図2に示すように、上部ケース半体10に設けられた断面視円形の油路であり、その上端部で開口して下方に延びるとともに下端部において流入空間4aと連通している。
【0015】
開閉コック開口30は、図5に示すように、上部ケース半体10に設けられた有底開口部で、前方から後方へと延びて開口している。その開口部において、後方側から順にそれぞれ開口径の異なった後方真円部31、楕円部32および前方真円部33が形成されており、楕円部32において前述の流入路20が上下方向に連通している。後方真円部31は、図6に示すように断面視円形に開口しており、また前方真円部33は、図8に示すように断面視円形に開口している。一方、楕円部32は、図7に示すように断面視略円形に開口し、左側下方で形成された逃がし部32cにおいて、左側下方に向けてさらに大きく開口しており、ここで、楕円部32の中心線を32a、32bとしておく。
【0016】
開閉コック40は、図9に示すように、例えば金属材料を用いて前後方向に延びる略円柱状に形成されており、後方側から順に後方部41、中間部42、前方部43および切換ツマミ49を主体に構成される。後方部41は、図6に示すように、断面視円形でその径は後方真円部31と略同一となっている。さらに、その外周部に沿ってリング溝が形成されており、そのリング溝に埋め込むようにして弾性変形可能な樹脂製のОリング41cが周着されている。ここで、後方部41の中心線を41a、41bとしておく。
【0017】
中間部42は、図7および図9に示すように、断面視略円形に形成されており、その外周部は、例えば弾性変形可能な樹脂材料を用いて形成された、ガスケット45によって覆われている。また、中間部42には、上下方向に円形に貫通したコック流路47が形成され、ここで、後方部41および中間部42には、コック流路47に連通して後方側に延びて開口した円形の後方流路44が形成されている。さらに、ガスケット45の外周部には膨出部46が形成されており、その膨出部46は上下方向に貫通したコック流路47に対して左方側に形成されている。ここで、膨出部46は、ガスケット45と同材料で形成されており、また、楕円部32の上方で開口した流入路20部分よりも大きな面積を有している。なお、図7に示すように、中間部42の中心線を42a、42bとしておく。
【0018】
前方部43は、図8に示すように、断面視円形でその径は前方真円部33と略同一となっている。前方部43の後方側外周部には、その外周部に沿ってリング溝が形成されて、そのリング溝に埋め込むようにして弾性変形可能な樹脂製のОリング43cが周着されている。また、前方部43の前方側外周部には、例えば90度の角度範囲(左方から上方に至る範囲)において所定深さに形成された押止溝48を有している。なお、前方部43の前端部には、リング状に突出したリング部43dが形成されている。切換ツマミ49は、開閉コック40の前端部において、左方側に板状に延びて形成されている。
【0019】
ここで、開閉コック40の各部位の位置関係をまとめると、図9に示すように、開閉コック40の左方側に膨出部46および切換ツマミ49が形成され、上下方向にコック流路47が貫通している。また、後方部41、中間部42および前方部43の前後方向における中心軸は一致しており、つまり、中心線41a、41bの交点、中心線42a、42bの交点および中心線43a、43bの交点とは、左右上下平面において同一座標となっている。そして、左方から上方の90度の範囲で押止溝48が形成されている。
【0020】
流出路50は、図3に示すように、上部ケース半体10に設けられた断面視円形の油路であり、その上端部で開口して下方に延びるとともに下端部において流出空間4bと連通している。なお、図3に示すように、流出路50の前方側には、流入空間4aと連通して上方に開口した上下エア抜き孔14、さらに、上下エア抜き孔14と連通して前後方向に延びて前方側で開口した左右エア抜き孔15が形成され、上下エア抜き孔14には上方から封止ネジ16が締結されている。
【0021】
バイパス路60は、図2に示すように、左右流路61、中間室62、上下流路63およびチェックバルブ61a、63aを主体に構成される。左右流路61は、開閉コック開口30よりも上方において流入路20と連通して右方に延びるとともに中間室62と連通した油路であり、中間室62との連通部分である左右流路61の右端部には、一方向(左右流路61から中間室62の方向)のみに流れを規制するチェックバルブ61aが設置されている。中間室62は、その前方において後述するプライミングポンプ70のポンプ室71aと連通している。上下流路63は、中間室62から下方に延びて流入空間4aに連通した油路であり、流入空間4aとの連通部分である上下流路63の下端部には、上記のチャックバルブ61aと同一機能を有し、上下流路63から流入空間4aの方向のみに流れを規制するチェックバルブ63aが設置されている。
【0022】
プライミングポンプ70は、図14に示すように往復動ポンプであり、シリンダ71、ポンプ室71a、ハンドル72、プランジャ73、ピストン部74、ロッド部75およびシール部材76を主体に構成されている。シリンダ71には、その後端部において、バイパス路60の中間室62に連通するポンプ室71aが形成され、また、シリンダ71には、前方から後方に向けてプランジャ73が挿入されており、プランジャ73はシリンダ71内において前後方向に往復自在となっている。さらに、プランジャ73は、シリンダ71内を往復するピストン部74と、ピストン部74と手動操作されるハンドル72とを連結するロッド部75と、ピストン部74に設けられシリンダ71との摺動部を液密に保持するシール部材76とから構成されている。
【0023】
下部ケース半体80は、例えば透明樹脂材料を用いて上方に向けて開口した有底円筒状に形成され、雄ねじ80aおよびリブ80bを有して形成されている。雄ねじ80aは、下部ケース半体80の上端外周面に形成され、上述の上部ケース半体10の雌ねじ10aと螺合可能となっている。リブ80bは、下部ケース半体80の円筒底部において複数形成されており、それらは上下方向を中心に放射状に配設されるとともに、上下に延びて形成されている。また、複数のリブ80bの上端面は、互いに水平となってエレメント載置部80cが形成されている。
【0024】
なお、本実施例において発明に係る流路開閉装置90は、上述の上部ケース半体10と開閉コック40とを構成部材として構成されているが、より詳細には、開閉コック40を囲むようにして形成された上部ケース半体10の一部および開閉コック40から構成されている。ここで、特許請求の範囲における開閉バルブ部材は、本実施例における開閉コック40と対応しており、同様に、流路部材は上部ケース半体10と、流体流路は流入路20と、挿入部は開閉コック開口30とそれぞれ対応している。
【0025】
フィルタエレメント3は、上下に延びた薄肉円筒状に形成され、格子状に形成された内筒3aの周囲に蛇腹状に折り曲げられた濾材3bが巻き付けられている。さらに、フィルタエレメント3の上端部には、円盤状に形成されて中央に開口部を有した上部プレート3cが固着され、フィルタエレメント3の下端部には円盤状の下部プレート3dが固着されている。
【0026】
以上ここまでは、フィルタ1の構成について説明したが、以下において、フィルタ1の組立手順について説明する。
【0027】
まず、フィルタエレメント3の下部プレート3dの下面が、下部ケース半体80のエレメント載置部80cに当接するように、フィルタエレメント3を下部ケース半体80内に載置する。このとき、フィルタエレメント3は、下部ケース半体80に設けられた保持部材81によって保持されている。次に、フィルタエレメント3の上端部に設けられた、上部プレート3cの開口部に上部ケース半体10の流出路50を挿通させつつ、フィルタエレメント3を保持した下部ケース半体80を、上部ケース半体10に向かって下方より押し上げる。
【0028】
次に、下部ケース半体80の雄ねじ80aと、上部ケース半体10の雌ねじ10aとが螺合するように、下部ケース半体80を上部ケース半体10にねじ込む。そして、下部ケース半体80の上部ケース半体10へのねじ込みが完了すると、フィルタエレメント3は、上部及び下部ケース半体10,80により挟持された状態でエレメント配設空間4内に収容保持される。なお、このとき、上部ケース半体10とフィルタエレメント3との間は、リング状のシール部材82によりしっかりとシールされて液密状態となっている。
【0029】
次に、上部ケース半体10の開閉コック開口30に、開閉コック40を取り付ける。ここで、開閉コック開口30に対して、開閉コック40を前方から後方へと挿入していくことにより、リング部43dが上部ケース半体10の対向面13と当接する位置まで挿入する。また、切換ツマミ49が左方側に位置するように挿入することで、流入路20とコック流路47とが上下方向に連通するようになっている(図5を参照)。このとき、開閉コック40の後方部41と、開閉コック開口30の後方真円部31とは近接して回転自在となっており、同様に、前方部43も前方真円部33と近接して回転自在となっている。
【0030】
さらにこのとき、図7に示すように、楕円部32の逃がし部32cと中間部42の膨出部46とは所定間隔を有して離れており、一方、逃がし部32c以外の部分で、楕円部32と中間部42とが近接して回転自在となっている。また、この挿入状態において、Оリング41cが後方真円部31に当接して変形することでシールされて液密状態となり、同様に、Оリング43cが前方真円部33に当接して変形することでシールされて液密状態となっている。よって、開閉コック開口30は、Оリング41cとОリング43cとによって挟まれた領域において、前後方向にシールされて液密状態となっている。
【0031】
そして、開閉コック40の押止溝48と対向する位置において、上部ケース半体10に上下方向に開口した止めネジ用穴11に、止めネジ12を挿入して締結することで、開閉コック40の移動を規制することが可能となる。またこのとき、図7に示すように、楕円部32の中心線32a、32bは、中間部42の中心線42a、42bよりも左側下方に位置しており、さらに、中間部42の左右方向の中心線42aと流入路20の左右方向の中心線とは一致している。
【0032】
以上ここまでは、フィルタ1の組立手順について説明したが、以下において、上記のようにして組立てられたフィルタ1内部での、燃料の流れについて説明する。まず、通常時(プライミングポンプ70を稼動させていないとき)の燃料の流れについて説明する。
【0033】
外部(燃料タンク200)から流入路20に流入した燃料は、図4の実線20aに示す方向に進み、開閉コック40のコック流路47を通過することで、バイパス路60を経由することなく流入空間4aに流入する。そして、流入空間4aに流入した燃料は、フィルタエレメント3を通過して流出空間4bに進み、さらに流出空間4bから流出路50を通り、外部(供給ポンプ210)に搬送されるように構成されている。なおこのとき、流入路20に流入した燃料の一部は、図4の鎖線20bに示す方向に進むことで、左右流路61、中間室62および上下流路63を経由して流入空間4aに流入する。
【0034】
次に、エレメント配設空間4内の空気抜き作業、または初めてエンジンを始動させる場合において、プライミングポンプ70を手動で稼動させたときの燃料の流れについて、図11から図14を参照しながら説明する。
【0035】
まず、プライミングポンプ70を稼動させる前段階として、上記の通常時の状態において、止めネジ12を緩めて開閉コック40を上下左右方向に回転自在とした後、上方向に90度回転させることにより、図13に示すように、コック流路47が左右方向に向ける。このとき、開閉コック40は、円柱状の後方部41および前方部43の中心軸を回転中心として回転する。そして、楕円部32の上方側おける流入路20と連通する部分に、膨出部46が当接して変形することによって、膨出部46が流入路20を完全に封止することが可能となっている。ここで、膨出部46は、ガスケット45の外周面からの高さ分(径方向長さ)だけ当接して変形している。
【0036】
そして、この状態において、図14に示すプライミングポンプ70のハンドル72を前後方向に往復動させる。まず、ハンドル72を前方に引くことで燃料が左右流路61からチェックバルブ61aを通過して中間室62に流入し、このとき、チェックバルブ63aは閉じている。次に、ハンドル72を後方に押すことで、中間室62内の燃料が上下流路63およびチェックバルブ63aを通過して流入空間4aに流入し、このとき、チェックバルブ61aは閉じている。よって、手動操作により燃料をバイパス路60内において逆流させることなく、流入空間4aに流入させることが可能である。
【0037】
このようにして、ハンドル72を往復させることにより、図11の実線20cに示す方向に、外部から流入路20に流入した燃料は、全てバイパス路60を経由して流入空間4a内に流入する。このとき、封止ネジ16を緩めて、上下エア抜き孔14と左右エア抜き孔15とを連通させておくことで、エレメント配設空間4内にある空気を、左右エア抜き孔15から外部に排出可能となっている。そして、流入空間4a内の燃料は、フィルタエレメント3を通過して流出空間4bに進み、さらに流出空間4bから流出路50を通り、供給ポンプ210に搬送されるように構成されている。
【0038】
ここで、本発明に係る流路開閉装置90の効果について簡単にまとめると、第1に、流入路20を閉じた状態において、膨出部46は楕円部32の上方側と当接して変形することで、流入路20を液密状態にシールドするので、よって、シールド部分から燃料が漏れ出すことがない。さらにこのとき、膨出部46は、弾性変形可能な樹脂材料を用いて形成されているので楕円部32の上方側を損傷させることがなく、よって、シールド性能を長期間にわたって安定して維持することが可能となる。
【0039】
第2に、通常の使用状態である流入路20が開いた状態においては、楕円部32(逃がし部32c)に当接せず離れて位置している。このことにより、流入路20を開いた状態において、開閉コック40の外周部に余計な外力が働くことがなく、膨出部46は樹脂の劣化が低減されてシールド性能の低下が抑えられる。よって、開閉コック40のシールド性能を長期間にわたって安定して維持することが可能である。
【0040】
上述の実施例において、膨出部46は楕円部32の上方側と当接して変形することで、流入路20を閉じる構成となっていることから、膨出部46の材質は、例えば弾性変形可能であって耐油性を有した樹脂で形成されていることが好ましい。
【0041】
また、上述の実施例において、フィルタエレメント3の形状や材質は、上記のように(格子状に形成された内筒の周囲に)蛇腹状に折り曲げられた濾材が巻き付けられているが、例えば、所定の厚さを有したグラスファイバー、不織布等によって円筒状に形成されたものを用いても良い。さらに、これらの素材を組み合わせて形成されたもの、もしくは、円筒状に形成された焼結品でも良く、濾過する液体や除去する固形物等に合わせて、最適な素材及び形状を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る流路開閉装置を用いて構成されたフィルタを示した斜視図である。
【図2】図1中のII−II部分を示す断面図である。
【図3】図1中のIII−III部分を示す断面図である。
【図4】図2の流入路部分を拡大した拡大断面図である。
【図5】図1中のV−V部分を示す断面図である。
【図6】図5中のVI−VI部分を示す断面図である。
【図7】図5中のVII−VII部分を示す断面図である。
【図8】図5中のVIII−VIII部分を示す断面図である。
【図9】開閉コックを示した斜視図である。
【図10】(a)は開閉コックを上方から見た平面図で、(b)は(a)の後方側面図で、(c)は(a)の前方側面図で、(d)は(a)の左方側面図である。
【図11】開閉コックを閉じた時の流入路部分を示す拡大断面図である。
【図12】開閉コックを閉じた時の図1中のV−V部分を示す断面図である。
【図13】図12中のXIII−XIII部分を示す断面図である。
【図14】図1中のXIV−XIV部分を示す断面図である。
【図15】(a)は従来の流路開閉装置を示した平面図で、(b)は(a)のXV(b)−XV(b)部分を示した断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 上部ケース半体(流路部材)
20 流入路(流体流路)
30 開閉コック開口(挿入部)
40 開閉コック(開閉バルブ部材)
46 膨出部
47 コック流路(流路孔)
90 流路開閉装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のボディに径方向に貫通する流路孔が形成された開閉バルブ部材と、
内部に流体流路が設けられるとともに前記流体流路と交差する円柱状の挿入部が開口して形成された流路部材とからなり、
前記開閉バルブ部材を前記挿入部に挿入して前記開閉バルブ部材を前記挿入部内において回転させることにより、前記流体流路を前記流路孔に整合させたり前記ボディの外周部により閉じたりして前記流体流路の開閉を行う流路開閉装置において、
前記開閉バルブ部材は、前記ボディの外周部において径方向に盛り上がった膨出部を有しており、
前記開閉バルブ部材を前記挿入部内において回転させて前記流体流路を前記ボディの外周部により閉じるときに、前記膨出部が前記流体流路に当接して前記流体流路を閉じることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項2】
前記膨出部は、弾性変形可能な材料を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流路開閉装置。
【請求項3】
前記挿入部は、前記流体流路と前記流路孔とが整合時において前記膨出部と対向する部分が、径方向外側に向けて広がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の流路開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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