説明

流路開閉装置

【課題】サイフォン方式の大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、洗浄水を大便器に供給する場合には給水圧によらずに水量を一定に保てる一方で、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの間に大便器側に供給するリフィル水の水量も一定の範囲内の必要水量に保つことが可能な流路開閉装置を提供すること。
【解決手段】この流路開閉装置は、リフィル水供給段階において、一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を大便器に供給するリフィル水量調整手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に洗浄水を供給する流路開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器に洗浄水を供給する手段として、給水路にフラッシュバルブといった流路開閉装置を設けることが広く行われている。フラッシュバルブは、給水元である一次側流路から水を受け入れて一次側内部流路に送り出す流入口と、二次側内部流路から給水先である二次側流路へ水を送り出す流出口とが形成された本体部と、一次側内部流路と二次側内部流路との間の流路開閉を行う主バルブと、この主バルブを介さずに一次側内部流路と二次側内部流路とを連通するバイパス流路と、バイパス流路の流路開閉を行う副バルブと、を備えるものである。
【0003】
このように構成されたフラッシュバルブは、操作レバーを押し下げるといった副バルブを開く動作を行うと、バイパス流路が開かれて主バルブを構成する主弁体の背圧が低下し、一次側内部流路内の一次圧によって主弁体が主弁座から引き離されるように押し上げられて主バルブが開放され、流出口から水が二次側流路へと流出される。その後、操作レバーを戻すといった副バルブを閉じる動作を行うか、若しくは自動的に操作レバーが戻って副バルブが閉じられると、バイパス流路が閉じられて主弁体の背圧が上昇する。この主弁体の背圧の上昇に伴って主弁体が主弁座に近づくように降下し、やがて主弁体が主弁座に当接することで主バルブが閉じられる。従って、フラッシュバルブは、給水を開始する指示を受けることで、一定の開度となるように主弁体が主弁座から引き離され、便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置として機能するものである。
【0004】
フラッシュバルブが設置される場所は、給水圧が高いところもあれば、給水圧が低いところもある。従来のフラッシュバルブはその構造上、給水圧の高低によらずに、副バルブを開いた際の主弁体の位置を調整するものであるため、給水圧によってその吐水量が大きくばらつき、無駄水が生じてしまうという問題があった。このため、主弁体の上昇位置を調整するネジが設けられる場合がある。フラッシュバルブを設置するにあたっては、現場でこのネジを調整し、主弁体の上昇量を調整している。
【0005】
しかしながら、現場で施工者がネジを回して主弁体の上昇量を調整すると、個々の現場によって調整量が異なることが多く、便器に対する給水量が必ずしも適切なものとならない可能性もある。そこで、下記特許文献1に記載のフラッシュバルブでは、主弁体の上昇位置を規制する上昇位置規制手段と、給水圧を検知する圧力センサーと、圧力センサーの水圧測定値に応じて上昇位置規制手段を制御し、主弁体の上昇規制量を調整する制御手段と、を備えている。
【0006】
一方で、無駄水を防止するという観点からは、下記特許文献2に記載のフラッシュバルブも提案されている。下記特許文献2に記載のフラッシュバルブは、主弁体に背圧を与える圧力室を設け、その圧力室に導入する水の導入量を減少させることで、主弁体の閉弁動作を最初は急速に、以降は緩やかに行うものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−336753号公報
【特許文献2】特開昭54−7624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載のフラッシュバルブでは、制御手段が、圧力センサーの検知圧力に応じてモーターを駆動し、上昇位置規制手段を給水圧に応じた位置に調整する。従って、給水圧が変動しても、便器側へ流す水量を一定に制御することが出来る。このように、給水圧が高い場合も低い場合も、便器側に流す水量を一定にすることで、無駄水を低減することが可能なものとなっている。
【0009】
ところで、フラッシュバルブは、小便器にも大便器にも取り付けられるものである。小便器は、小便を受け止めるボウル部の下方に封水部が形成されているものである。小便器を洗浄するにあたって、ボウル部に洗浄水を流すと、その洗浄水はボウル部を洗い流した後封水部に流れ込み、封水部の溜水を置換して洗浄が完了する。従って、小便器に給水するためにフラッシュバルブを取り付けた場合には、便器側に流す水量を一定にすることで、無駄水を低減する効果を享受することができる。
【0010】
一方、大便器には様々な洗浄方式があり、それぞれの洗浄方式によって洗浄水がボウル部をどのように洗浄し、封水を形成している溜水をどのように置換するかが異なっている。例えば、洗い落とし方式は、大便や小便を受け止めるボウル部の下方に封水部が形成されており、吐出された水勢のみで汚物を排出するものである。この洗い落とし方式の大便器を洗浄するにあたって、ボウル部に洗浄水を流すと、その洗浄水は流された勢いのまま封水部に直線的に流れ込み、汚物を流し出し、封水部の溜水を置換して洗浄が完了する。従って、このような洗い落とし方式の大便器に給水するためにフラッシュバルブを取り付けた場合には、小便器の場合と同様に、便器側に流す水量を一定にすることで、無駄水を低減する効果を享受することができる。
【0011】
一方、サイフォン方式(サイフォンゼット方式といった他のサイフォン現象を利用する方式を含む)は、大便や小便を受け止めるボウル部の下方に封水部が形成されており、封水部から下流の管路を屈曲させ、洗浄時にサイフォン現象を起こさせることによって汚物を吸引して排出する方式である。サイフォン方式の大便器を洗浄するにあたって、ボウル部に洗浄水を流すと、その洗浄水によって封水部及びその前後の管路を満水状態とし、その後にサイフォン現象による吸引効果で汚物を確実に流している。この吸引効果が発生すると、封水部及びその前後の管路の水が吸引されて流されるので、封水部の溜水がなくなってしまう。そこで、洗浄後に封水部に溜水を補給することが行われており、この溜水として補給する水をリフィル水とも呼んでいる。本発明者らは、洗い落とし方式の大便器とは異なり、サイフォン現象を利用するサイフォン方式では、このリフィル水の特性に起因して、従来のフラッシュバルブでは無駄水の低減効果のみを享受することはできないことを発見したものである。
【0012】
上記特許文献1に記載されているフラッシュバルブは、給水圧が高い場合も低い場合も、便器側に流す瞬間流量を一定にするものであるから、弁座に対する弁体のリフト量を給水圧に応じて変動させる。具体的には、高水圧時にはリフト量を調整しない状態よりもリフト量の抑制度合いを高め、水圧に比してリフト量が少なくなるように調整している。一方、低水圧時にはそのようなリフト量の抑制を低減させることで、水圧に応じたリフト量が生じるように調整している。このように給水圧に応じたリフト量調整をすることで、高水圧時に洗浄水の瞬間流量が上がることを抑制し、低水圧時に洗浄水の瞬間流量を維持確保することで、洗浄水の瞬間流量が一定に保たれるように工夫している。
【0013】
このように、瞬間流量を一定に保つため、高水圧時にはリフト量の抑制度合いを高め、低水圧時にはリフト量の抑制度合いを少なくしているため、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの弁座に弁体が密接するまでの時間は、給水圧が高ければ相対的に短い時間となり、給水圧が低ければ相対的に長い時間となる。従って、従来のフラッシュバルブは、洗浄水を流すべく弁座から弁体を離隔させている間は便器側に流す水量を給水圧によらずに一定に保てるものの、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでに流れる水量が給水圧によってばらついてしまう。
【0014】
サイフォン方式の大便器におけるリフィル水は、洗浄後に封水部に溜水を補給するものであるから、フラッシュバルブが閉弁を開始してから閉弁が完了するまでに流れる水がリフィル水となる。従って、従来のフラッシュバルブのように、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでに流れる水が給水圧によってばらついてしまえば、リフィル水の供給量がばらつくことになり、封水形成上は何らかの対策が求められる。給水圧が高い場合は閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの時間が相対的に短くなるものであるから、給水圧が高い場合を基準にすれば、給水圧が低い場合にリフィル水として必要となる水量以上の水が供給されることになり、無駄水が発生する。一方、給水圧が低い場合は閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの時間が相対的に長くなるものであるから、給水圧が低い場合を基準にすれば、給水圧が低い場合にリフィル水として必要となる水量以下の水が供給されることになり、封水切れが起きるおそれもある。
【0015】
上述したように、フラッシュバルブが閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの時間をコントロールする技術が特許文献2に開示されている。しかしながら、上記特許文献2に記載の技術は、主弁体の閉弁速度を一時的に高めることにより、洗浄に必要とする水量を減らすことを目的とするものである。具体的には、主弁体に背圧を与える圧力室に水を導入する流路を、大径の流路と小径の流路と二系統設けている。閉弁動作の初期段階においては、大径の流路と小径の流路との双方から圧力室に水を導入しているので、小径の流路のみの場合に比較して大流量で圧力室に水を供給することができ、主弁体は急激に主弁座に向かって移動する。そして、主弁体がある程度主弁座に近づいたところで、大径の流路からの水の供給を停止し、小径の流路からのみ圧力室に水を供給し、ウォーターハンマーが発生することを防止している。
【0016】
従って、上記特許文献2に記載の技術は、リフィル水に着目したものではなく、あくまでも洗浄動作に必要とされる水量を全体として減少させることを目的としている。従って、上記特許文献2に記載の技術思想を用いても、給水圧に応じて洗浄水量を一定にするため、給水圧に応じて主弁体のリフト量を変動させた際に生じる課題を解決することができないものである。具体的には、主弁体の閉弁速度を一時的に高めたとしても、給水圧に応じて主弁体のリフト量を変動させた際の、リフィル水の供給量のばらつきは抑制することができない。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、サイフォン方式の大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、洗浄水を大便器に供給する場合には給水圧によらずに水量を略一定に保てる一方で、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの間に大便器側に供給するリフィル水の水量も一定の範囲内の必要水量に保つことが可能な流路開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために本発明に係る流路開閉装置は、給水を開始する指示を受けることでサイフォン方式の大便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置であって、給水元に繋がる一次側流路と給水先である大便器へ繋がる二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体及び主弁座を有する主バルブと、前記一次側流路から前記二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つように相互の距離を調整する定流量弁体及び定流量弁座を有する定流量バルブと、を備える。前記主弁体及び前記定流量弁体は、一体化された弁体部材として形成されている。前記大便器を洗浄するための洗浄水を前記大便器に供給する洗浄水供給段階では、前記弁体部材を後退方向に駆動し、前記主弁体を前記主弁座から離隔させることで前記二次側流路に洗浄水を供給すると共に、前記定流量弁体と前記定流量弁座との距離を調整することで洗浄水の瞬間流量を一定に保つように構成されている。一方で、前記大便器の封水を形成するためのリフィル水を前記大便器に供給するリフィル水供給段階では、前記弁体部材を前進方向に駆動することで、前記主弁体を前記弁座に当接させるように構成されている。前記リフィル水供給段階において、前記一次側流路からの給水圧に応じて前記弁体部材の前進動作を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給するリフィル水量調整手段を備える。
【0019】
本発明によれば、一次側流路と二次側流路との間の流路開閉を行うための主弁体と、一次側流路から二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つための定流量弁体とを一体化された弁体部材として構成しているので、給水圧の変動によって大便器側に供給する水の瞬間流量が変動することなく、コンパクトな構成の流路開閉装置を提供することができる。大便器に洗浄水を供給する洗浄水供給段階では、定流量弁体と定流量弁座との距離を調整することで洗浄水の瞬間流量を一定に保つように構成されているので、弁体部材の相対的な位置を調整することで確実に瞬間流量を一定に保った給水を行うことができる。このように、給水圧に応じて弁体部材の相対的な位置を調整した場合において、洗浄水の供給が終了して閉弁動作に入ると、大便器の封水を形成するためのリフィル水の安定供給ができなくなる。具体的には、高水圧時には、主弁体及び定流量弁体が主弁座及び定流量弁座から離隔し難いように調整し、低水圧時には、主弁体及び定流量弁体が主弁座及び定流量弁座から離隔しやすいように調整しているので、高水圧時にリフィル水が不足する可能性や低水圧時にリフィル水が余る可能性がある。
【0020】
そこで本発明では、大便器の封水を形成するためのリフィル水を大便器に供給するリフィル水供給段階において、一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を大便器に供給するリフィル水量調整手段を設けている。一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整することで、主弁体の主弁座に対する近接度合いや、定流量弁体の定流量弁座に対する近接度合いを調整することができ、給水圧の高低によらず所定量のリフィル水を大便器に供給することができる。従って、一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整するという簡単な構成で、サイフォン方式の大便器において洗浄水供給を行った場合に生じる封水部及びその前後の管路の水が吸引されて流されてしまう現象に対して、給水圧の高低に左右されず確実に一定の範囲内の必要水量のリフィル水を供給することができる。
【0021】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水供給段階において、前記主弁座に対する前記主弁体の開度が所定量のリフィル水を供給するために定まる標準開度からシフトした場合に、このシフトに起因したリフィル水供給量の変動が吸収されるように、前記リフィル水量調整手段は、前記弁体部材の前進動作を調整することも好ましい。
【0022】
上述したように本発明では、大便器に洗浄水を供給する洗浄水供給段階では、定流量弁体と定流量弁座との距離を調整することで洗浄水の瞬間流量を一定に保つように構成されているので、弁体部材の相対的な位置を一定の瞬間流量の洗浄水を供給可能な位置に保つことで確実に瞬間流量を一定に保った給水を行うことができる。このように、給水圧によらずに一定の瞬間流量を保つことができるように、弁体部材の相対的な位置を調整した場合において、洗浄水の供給が終了して閉弁動作に入ると、給水圧が高い場合には調整しない場合よりも相対的に速く閉弁が完了し、給水圧が低い場合には調整しない場合よりも相対的に遅く閉弁が完了することになり、大便器の封水を形成するためのリフィル水の安定供給ができなくなる。そこでこの好ましい態様では、このようなリフィル水供給段階における主弁座に対する主弁体の開度が標準開度からシフトすることに起因するリフィル水供給量の変動を吸収するように、リフィル水量調整手段が、弁体部材の前進動作を調整するものとしている。弁体部材の前進動作を調整するという簡便な手法で、給水圧の変動によるリフィル水量の変動を確実に抑制することができる。
【0023】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階においてのみ前記弁体部材の前進量を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給することも好ましい。
【0024】
この好ましい態様では、リフィル水供給段階においてのみ弁体部材の前進量を調整しているので、大便器に洗浄水を供給する洗浄水供給段階における、定流量弁体と定流量弁座との距離調整による洗浄水の瞬間流量の一定保持に影響を与えることなく、給水圧の変動によるリフィル水量の変動を確実に抑制することができる。また、サイフォン方式の大便器において洗浄水供給を行った場合に生じる封水部及びその前後の管路の水が吸引されて流されてしまう現象は洗浄水供給段階に起きるものであるので、その吸引現象が完了した後に確実に封水を形成するためのリフィル水を供給することができる。
【0025】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水量調整手段は、前記洗浄水供給段階において前記大便器に所定量の洗浄水を供給した後、前記弁体部材を前進させることで前記主弁体を前記主弁座に当接させて前記大便器への洗浄水の供給を停止し、その後、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材を再度後退させた後再度前進させることで、所定量のリフィル水を前記大便器に供給することも好ましい。
【0026】
この好ましい態様では、洗浄水供給段階における大便器への洗浄水の供給が終わると、主弁体を主弁座に当接させて洗浄水の供給を確実に停止している。その後、弁体部材を後退させて主弁体を主弁座から離脱させ、大便器にリフィル水を供給している。従って、洗浄水供給段階とリフィル水供給段階とを確実に分離させ、大便器に対して所定量の洗浄水を瞬間流量が一定となる状態で供給することと、大便器に対して所定量のリフィル水を供給することとを、それぞれの特性を生かして確実に実行し、洗浄水の供給による吸引現象が完了した後に確実に封水を形成するためのリフィル水を供給することができる。
【0027】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水量調整手段は、前記洗浄水供給段階における洗浄水の瞬間流量よりも前記リフィル水供給段階におけるリフィル水の瞬間流量が小さくなるように前記弁体部材の前進動作を調整することも好ましい。
【0028】
この好ましい態様では、洗浄水供給段階における洗浄水の瞬間流量よりもリフィル水供給段階におけるリフィル水の瞬間流量が小さくなるように弁体部材の前進動作を調整することで、リフィル水供給段階においてリフィル水の瞬間流量が過度に高まって再びサイフォン現象が起きてしまうことを確実に防止することができる。
【0029】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材の前進速度を給水圧に応じて調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給することも好ましい。
【0030】
この好ましい態様では、リフィル水供給段階において弁体部材の前進速度を給水圧に応じて調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を大便器に供給するので、リフィル水供給段階における弁体部材の駆動を前進のみ一度行うことで、確実に所定量のリフィル水を大便器に供給することができる。
【0031】
本発明に係る流路開閉装置では、前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材の前進速度を、給水圧が低い場合に高めるように調整することも好ましい。
【0032】
上述したように本発明では、高水圧時には、主弁体及び定流量弁体が主弁座及び定流量弁座から離隔し難いように調整し、低水圧時には、主弁体及び定流量弁体が主弁座及び定流量弁座から離隔しやすいように調整しているので、リフィル水量調整手段が機能しない場合、高水圧時にリフィル水が不足する可能性や低水圧時にリフィル水が余る可能性がある。そこでこの好ましい態様では、低水圧時に弁体部材の前進速度を高めることで、低水圧時のリフィル水の過剰供給を抑制し、リフィル水供給段階の所要時間も短縮することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、サイフォン方式の大便器に洗浄水を供給する流路開閉装置であって、洗浄水を大便器に供給する場合には給水圧によらずに水量を一定に保てる一方で、閉弁を開始してから閉弁が完了するまでの間に大便器側に供給するリフィル水の水量も一定の範囲内の必要水量に保つことが可能な流路開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。
【図2】本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【図3】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図4】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図5】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図6】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図7】図2に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図8】本発明の第二実施形態であるフラッシュバルブの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【図9】図8に示すフラッシュバルブの吐水動作を示す図である。
【図10】図8に示すフラッシュバルブの吐水動作を説明するための図である。
【図11】図8に示すフラッシュバルブの吐水動作を説明するための図である。
【図12】本発明の第三実施形態であるフラッシュバルブの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【図13】図12に示すフラッシュバルブの吐水動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0036】
本発明の実施形態であるフラッシュバルブ(流路開閉装置)について図1に示す。図1は、本発明の実施形態であるフラッシュバルブを大便器への給水管に取り付けた状態を示す外観図である。図1に示されるように、フラッシュバルブSV(流路開閉装置)は、大便器SBへの給水管TBの途中に取り付けられている。フラッシュバルブSVは、給水を開始する指示を受けることで、給水管TBを経由する流路を開いて大便器SBに給水を開始する。その後、フラッシュバルブSVは、所定の条件を満たすことで自律的に流路を閉じて給水を停止する。
【0037】
大便器SBは、封水部SWが設けられている。封水部SWには常時溜水がなされ、封水が形成されている。大便器SBを使用すると、封水部SWに汚物が投入される。大便器SBの使用後にフラッシュバルブSVを操作すると、フラッシュバルブSVから略一定の瞬間流量で洗浄水が供給される。この洗浄水によって、封水部SWの溜水及び汚物が流される。本実施形態の場合、大便器SBはサイフォン方式の便器であるので、サイフォン現象によって洗浄水は汚物と共に下流側へ吸引される。本実施形態のフラッシュバルブSVは、洗浄後に封水部SWにリフィル水を供給するように構成されている。
【0038】
フラッシュバルブSVは、本体部10と、電磁弁82とを備えている。本体部10内には、給水管TBに繋がる一次側内部流路20と、大便器SBに繋がる二次側内部流路30とが形成されている。本体部10内には弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行うものである。電磁弁82は、バイパス流路80に設けられている。電磁弁82を開くことで、弁体部材40の背圧が下がり開弁される。本実施形態では、給水管TBにおいて、フラッシュバルブSVよりも上流側には止水栓Vが、フラッシュバルブSVよりも下流側であって大便器SBよりも上流側にはバキュームブレーカーVBが、それぞれ配置されている。
【0039】
続いて、本発明の第一実施形態であるフラッシュバルブSVの内部構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、フラッシュバルブSVの内部構造を模式的に示す概略構成図である。
【0040】
図2に示されるように、フラッシュバルブSVは、本体部10を備えている。本体部10の内部には、一次側内部流路20と、二次側内部流路30と、背圧室14と、副背圧室12とが形成されている。一次側内部流路20は、給水元である一次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも上流側の流路)から流入水Waを受け入れて、二次側内部流路30に向けて流出させるものである。一次側内部流路20の上流端には流入口21が設けられている。流入口21は、流入水Waを受け入れて一次側内部流路20に送り出す開口部である。
【0041】
二次側内部流路30は、一次側内部流路20から流入する水を給水先である二次側流路(図1に示す給水管TBのフラッシュバルブSVよりも下流側の流路)に流出水Wbとして流出させるものである。二次側内部流路30の下流端には流出口31が設けられている。流出口31は、二次側内部流路30から二次側流路へ流出水Wbを送り出す開口部である。
【0042】
一次側内部流路20と二次側内部流路30との間には、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の流路開閉を行う主弁体42を有する弁体部材40が配置されている。弁体部材40は、下流側の一端が二次側内部流路30に挿入されており、その反対側の他端が背圧室14に臨むように配置されている。弁体部材40は、二次側内部流路30の延びる方向に沿って進退自在に配置されている。
【0043】
主弁体42の下流側の面は、主弁体面421である。弁体部材40が最も下流側に押し込まれると、主弁体面421が一次側内部流路20の二次側内部流路30に対する境界面に当接し、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間の水の流通を遮断するように構成されている。従って、主弁体面421が当接する境界面は、主弁座面201(主弁座)として機能している。
【0044】
弁体部材40の、主弁体42よりも下流側の部分には、定流量弁体44が設けられている。定流量弁体44は、外形面である傾斜面441を有している。
【0045】
定流量弁体44の傾斜面441は、二次側内部流路30の内側壁との間の距離を可変にすることで、二次側内部流路30の内側壁を定流量弁座とする定流量弁を構成している。傾斜面441は、主弁体42から流出口31に向かって、二次側内部流路30の内側壁から離隔するように傾斜させて形成されている。
【0046】
従って、弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向、後退方向、開弁方向)すると、定流量弁体44の傾斜面441と二次側内部流路30の内側壁との間の最短距離が広がり、流量を増やすように作用する。弁体部材40が、一次側内部流路20と二次側内部流路30との間に水を通すように上昇(背圧室14へ入り込む方向)し、その後下降(流出口31へ向かう方向、前進方向、閉弁方向)すると、定流量弁体44の傾斜面441と二次側内部流路30の内側壁との間の最短距離が縮まり、流量を絞るように作用する。
【0047】
弁体部材40の、主弁体42を挟んで定流量弁体44と反対側には収容凹部46が設けられている。収容凹部46は、背圧室14側から後退するように凹状に形成されている。収容凹部46の背圧室14側には、副弁座465が設けられている。収容凹部46は、孔461と、凹部462と、副孔463(背圧流路)と、が形成されている。
【0048】
孔461は、一次側内部流路20と凹部462とを繋ぐ連通孔として形成されている。凹部462は、バネ50と、副弁桿48とを収容している。凹部462内には、副弁桿48の先端の大径部481が配置されている。大径部481は、バネ50と当接しており、バネ50を介して弁体部材40を流出口31に向けて付勢している。
【0049】
副弁桿48は、棒状に延びる小径部483と、小径部483の先端に設けられている大径部481とを有している。小径部483は、副弁座465に設けられた連通路464(背圧流路)を貫通している。連通路464と小径部483との間には、通水可能な隙間が形成される。従って、孔461から凹部462に流入した水は、連通路464を通って背圧室14へと流れる。また、孔461を通った水の一部は、副孔463を通って背圧室14へと流れる。
【0050】
背圧室14と副背圧室12とは、第一位置調整部材60によって仕切られて分離されている。第一位置調整部材60には凹部601が設けられている。凹部601は、背圧室14に向けてその外壁が突出する凹部として形成されている。凹部601には、連通路602が形成されている。凹部601の背圧室14側には、線形特性を有するバネ70が配置されている。バネ70は、一端が凹部601内に収容され、他端は第二位置調整部材65に当接するように配置されている。
【0051】
第二位置調整部材65は、バネ70の巻き線の中心を貫通するように配置されている。第二位置調整部材65の一端は、副弁桿48の小径部483の一端と当接したり離隔したりするように配置され、第二位置調整部材65の他端は本体部10に固定されている。第二位置調整部材65の一端側には、連通路651が形成されている。背圧室14に入った水は、第二位置調整部材65の連通路651を通って凹部601内に流入する。凹部601内に入った水は、連通路602を通ってバイパス流路80側へと流れる。
【0052】
第一位置調整部材60は、副背圧室12と背圧室14との圧力差によって、副背圧室12を広げる(背圧室14を狭める)ように摺動したり、副背圧室12を狭める(背圧室14を広げる)ように摺動したりするように構成されている。
【0053】
副背圧室12には一次側内部流路20にかかる一次圧と同じ圧力がかかるように構成されている。具体的には、一次側内部流路20と副背圧室12とが副一次流路22によってつながれており、一次圧が副背圧室12に伝達されている。
【0054】
背圧室14と二次側内部流路30とは、凹部601を経由してバイパス流路80によって繋がっている。バイパス流路80には電磁弁82が設けられている。電磁弁82が閉じられて、背圧室14まで水で満たされていれば、背圧室14の内部には一次圧がかかっている。一方、電磁弁82が開けられると、背圧室14の水がバイパス流路80から二次側内部流路30に流出し、背圧室14の内部圧力が低下する。
【0055】
続いて、フラッシュバルブSVの動作について、図3〜図7を参照しながら説明する。図3〜図7は、図2に示すフラッシュバルブSVの吐水動作を示す図である。図3〜図7それぞれの(A)は給水圧が低圧の状態を示し、図3〜図7それぞれの(B)は給水圧が高圧の状態を示し、図3〜図7それぞれの(C)は弁体部材40のリフト量と副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)と大便器SB側に流れる流量調整を示している。図3〜図7それぞれの(C)において、実線は給水圧が低い場合を示し、破線は給水圧が高い場合を示している。
【0056】
図3の(A)(B)(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、副弁体482と副弁座465は当接しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463のみの流路断面積となる。
【0057】
続いて、図4の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t1で電磁弁82が開かれると、まず背圧室14内の水が流出する。背圧室14内の水が流出すると、背圧室14内の圧力が低下する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。第二位置調整部材65は本体部10に固定されているため移動しない。バネ70は、移動しない第二位置調整部材65と第一位置調整部材60との間に配置されているため、第一位置調整部材60が押し下げられるとバネ70は縮んで反力を発生させる。第一位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、第一位置調整部材60が一次圧によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力とのバランスによって定められる。
【0058】
従って、図4の(A)に示されるように給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられず、図4の(B)に示されるように給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60は大きく押し下げられる。
【0059】
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、定流量弁体44と二次側内部流路30との間の隙間の広さによって調整される。
【0060】
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整するものであるから、図4の(A)のように比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、図4の(B)のように比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。また、副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。
【0061】
図4の(A)のように給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、図4の(B)のように給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
【0062】
図5の(A)(B)(C)に示されるように、時刻t2で電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に水が溜まる。副弁体482と副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。従って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
【0063】
図6の(A)(B)(C)に示されるように、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に一気に多くの水が流入すると、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。弁体部材40が閉弁方向に押し下げられると、副弁体482と副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。副弁体482が形成されている副弁桿48の小径部483は、固定されている第二位置調整部材65に当接しているので、副弁体482の位置は給水圧の高低によらずに略一定なものとなる。従って、弁体部材40は、給水圧の高低によらずに所定の下降基準(基準位置)まで強制的に移動させられる。副弁体482と副弁座465が当接した後は、背圧室14内への流入は副孔463からのみになる。弁体部材40は、所定の下降基準まで強制的に移動するときよりも遅い速度で更に押し下げられる。その弁体部材40の動きに伴い、バネ50を介して副弁桿48も一体的に押し下げられる。
【0064】
図7の(A)(B)(C)に示されるように、主弁体42が主弁座面201に当接するまで弁体部材40が押し下げられると、大便器SBに対する水の供給が停止される。従って、図6の(C)から図7の(C)に至るまでに大便器SBに供給される水が、大便器SBの封水部SWに供給されるリフィル水となる。図7の(C)の瞬間流量のグラフの、時刻t2以降の時間軸と各線との間の略三角形の面積が、そのリフィル水の水量となる。図7の(C)に示されるように、給水圧が低い場合も高い場合も、所定の許容範囲内で所定量(大便器SBのタイプによって異なる)のリフィル水を供給することができる。
【0065】
上述したように、本実施形態の副弁桿48の副弁体482、副弁座465は、本願発明のリフィル水量調整手段として機能している。本実施形態では、このリフィル水量調整手段によって、大便器SBの封水を形成するためのリフィル水を大便器SBに供給するリフィル水供給段階(図6,7それぞれの(C)の時刻t2以降)において、一次側内部流路20からの給水圧に応じて弁体部材40の前進動作(主弁体42を主弁座面201に近づける動作)を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を大便器SBに供給することが可能なものとなっている。一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整することで、主弁体の主弁座に対する近接度合いや、定流量弁体の定流量弁座に対する近接度合いを調整することができ、給水圧の高低によらず所定量のリフィル水を大便器に供給することができる。従って、一次側流路からの給水圧に応じて弁体部材の前進動作を調整するという簡単な構成で、サイフォン方式の大便器において洗浄水供給を行った場合に生じる封水部及びその前後の管路の水が吸引されて流されてしまう現象に対して、給水圧の高低に左右されず確実に一定の範囲内の必要水量のリフィル水を供給することができる。
【0066】
続いて、本発明の第二実施形態であるフラッシュバルブSVaについて、図8を参照しながら説明する。フラッシュバルブSVaは、フラッシュバルブSVの副弁桿48を副弁桿48aに置換したものである。副弁桿48aは、第二位置調整部材65側の一端が細く、バネ50側の他端が太いテーパー状の小径部483aを有している。小径部483aの太い他端側には、大径部481aが形成されており、大径部481aの一面が副弁体482aを形成している。その他の構成は、フラッシュバルブSVと同じであるので、その説明を省略する。
【0067】
続いて、フラッシュバルブSVaの動作について、図9を参照しながら説明する。図9は、図8に示すフラッシュバルブSVaの吐水動作を示す図である。図9の(A)に示されるように、電磁弁82が閉じられていると、背圧室14及び副背圧室12には、一次側内部流路20と同じ一次圧がかかっている。弁体部材40の主弁体42も一次圧によって流出口31側に押し込まれており、主弁体42が一次側内部流路20と二次側内部流路30の境界面に密着して止水されている。また、副弁体482と副弁座465は当接しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463のみの流路断面積となる。
【0068】
続いて、図9の(B)に示されるように、電磁弁82が開かれると、まず背圧室14内の水が流出する。背圧室14内の水が流出すると、背圧室14内の圧力が低下する。背圧室14と副背圧室12との圧力差が生じるため、第一位置調整部材60が押し下げられる。第二位置調整部材65は本体部10に固定されているため移動しない。バネ70は、移動しない第二位置調整部材65と第一位置調整部材60との間に配置されているため、第一位置調整部材60が押し下げられるとバネ70は縮んで反力を発生させる。第一位置調整部材60が弁体部材40に近づく量は、第一位置調整部材60が一次圧によって押される力とバネ70がそれに対抗しようとする力とのバランスによって定められる。
【0069】
従って、給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられず、給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60は大きく押し下げられる。
【0070】
背圧室14内の水が流出すると、弁体部材40が背圧室14側に押し上げられる。弁体部材40の主弁体42(主弁体面421)が主弁座面201から離脱するので、一次側内部流路20から二次側内部流路30に水が流れる。この一次側内部流路20から二次側内部流路30に流れる水の流量は、定流量弁体44と二次側内部流路30との間の隙間の広さによって調整される。
【0071】
第一位置調整部材60は、弁体部材40のリフト量を調整するものであるから、給水圧が低く比較的少なく押し下げられると弁体部材40のリフト量は大きくなり、給水圧が高く比較的多く押し下げられると弁体部材40のリフト量は小さくなる。
【0072】
副弁体482aと副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。ところで、第二実施形態に係るフラッシュバルブSVaの場合、副弁桿48aの小径部483aがテーパー状になっている。給水圧が低い場合は、第一位置調整部材60はあまり押し下げられないので、弁体部材40が上昇し、副弁座465は小径部483aの径が比較的細い部分に位置する。従って、給水圧が低い場合は、連通路464の流路断面積が広くなる。一方、給水圧が高い場合は、第一位置調整部材60はより押し下げられるので、弁体部材40が下降し、副弁座465は小径部483aの径が比較的太い部分に位置する。従って、給水圧が高い場合は、連通路464の流路断面積が狭くなる。
【0073】
給水圧が低い場合に弁体部材40のリフト量が大きくなり、給水圧が高い場合に弁体部材40のリフト量が小さくなるので、大便器SB側に供給される洗浄水の瞬間流量は略同一なものとなる。尚、大便器SBに供給される洗浄水の瞬間流量を厳密に同一に保つ必要はなく、ある程度の範囲内での同等の瞬間流量を確保できれば足りるものである。
【0074】
図9の(C)に示されるように、電磁弁82が閉じられると、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に水が溜まる。副弁体482aと副弁座465は離隔しているので、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)は、副孔463及び連通路464の流路断面積となる。従って、背圧室14には一気に多くの水が流入する。
【0075】
その後は図9の(D)に示されるように、副孔463及び連通路464を通って、背圧室14内に流入する水量は徐々に減少しながら、弁体部材40は流出口31方向に押し下げられる。
【0076】
上述したように、給水圧が低い場合は、弁体部材40のリフト量が多いものの、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)も広くなるので、弁体部材40はその合算面積を減少させながら下降する(主弁体42が主弁座面201に近づく)。弁体部材40が十分に下降すると、副弁体482aと副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。これとほぼ同じタイミングで、主弁体42と主弁座面201とも当接し、リフィル水の供給が終了する。
【0077】
一方、給水圧が高い場合は、弁体部材40のリフト量が少なく、副孔463及び連通路464の合算面積(小穴面積)も狭くなる。従って、給水圧が低い場合よりも弁体部材40の移動速度は低減されながら、その合算面積を減少させるように下降する(主弁体42が主弁座面201に近づく)。弁体部材40が下降すると、副弁体482aと副弁座465が当接し、連通路464が閉塞される。これとほぼ同じタイミングで、主弁体42と主弁座面201とも当接し、リフィル水の供給が終了する。
【0078】
図9の場合における、時間と瞬間流量との関係を図10に示す。図10の二点鎖線でしめすように、給水圧が低い場合に定流量化を測ろうとすると、弁体部材40の上昇量が大きくなって弁開度も大きくなり、結果として閉弁動作に時間がかかる。結果として、給水圧が高い場合と比較して、図10の斜線を付した三角形の領域分の無駄なリフィル水を供給することになる。しかしながら、本実施形態では、給水圧が低い場合に弁体部材40の閉弁速度を高めるように構成しているので、実線で示す給水圧が低い場合も、破線で示す給水圧が高い場合も、時間に対する瞬間流量の低減度合いが近づくので、無駄なリフィル水を供給することがない。
【0079】
また本実施形態では、図11に示すようなリフィル水の供給態様を採用することも好ましいものである。これは、洗浄水を流した後に、弁体部材40を押し下げて主弁体42と主弁座面201とを当接させ、閉弁動作が一旦完了した後に、リフィル水を供給するために再度開弁動作を行うものである。この場合には、リフィル水を供給するための瞬間流量が、洗浄水を供給する瞬間流量よりも低くなるように調整することが好ましいものである。
【0080】
このように閉弁動作が一旦完了した後に、リフィル水を供給するために再度開弁動作を行う場合には、フラッシュバルブの構造をより簡便なものとすることができる。この第三実施形態について図12を参照しながら説明する。図12に示すフラッシュバルブSVbは、フラッシュバルブSVの副弁桿48を省略すると共に、副弁座465を省略した弁体部材40bを用いるものである。フラッシュバルブSVbで通常の閉弁動作を行うと、図13に示すように、閉弁動作に入った時刻t2以降のリフィル水量の供給が、高水圧時(破線)の方が低水圧時(実線)の方よりも不足してしまう(図中斜線を付した三角形の領域)。そこで、再度開弁動作を行い、弁体部材40bの位置を調整し、低流量の水を流す動作を実行する。このようにすることで、リフィル水の供給不足を補うことができる。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0082】
SV:フラッシュバルブ(流路開閉装置)
SB:大便器
SW:封水部
TB:給水管
V:止水栓
10:本体部
12:副背圧室
14:背圧室
20:一次側内部流路
201:主弁座面(主弁座)
21:流入口
22:副一次流路
30:二次側内部流路
31:流出口
40:弁体部材
42:主弁体
421:主弁体面
44:定流量弁体
441:傾斜面
46:収容凹部
461:孔
462:副弁座
463:副孔(背圧流路)
464:連通路(背圧流路)
465:凹部
48:副弁桿
481:大径部
482:副弁体
483:小径部
50:バネ
60:第一位置調整部材
601:凹部
602:連通路
65:第二位置調整部材
651:連通路
70:バネ
80:バイパス流路
82:電磁弁
Wa:流入水
Wb:流出水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を開始する指示を受けることでサイフォン方式の大便器に給水を開始し、所定の条件を満たすことで自律的に給水を停止する流路開閉装置であって、
給水元に繋がる一次側流路と給水先である大便器へ繋がる二次側流路との間の流路開閉を行う主弁体及び主弁座を有する主バルブと、
前記一次側流路から前記二次側流路へ流れる水の瞬間流量を一定に保つように相互の距離を調整する定流量弁体及び定流量弁座を有する定流量バルブと、を備え、
前記主弁体及び前記定流量弁体は一体化された弁体部材として形成され、
前記大便器を洗浄するための洗浄水を前記大便器に供給する洗浄水供給段階では、前記弁体部材を後退方向に駆動し、前記主弁体を前記主弁座から離隔させることで前記二次側流路に洗浄水を供給すると共に、前記定流量弁体と前記定流量弁座との距離を調整することで洗浄水の瞬間流量を一定に保つ一方で、
前記大便器の封水を形成するためのリフィル水を前記大便器に供給するリフィル水供給段階では、前記弁体部材を前進方向に駆動することで、前記主弁体を前記主弁座に当接させるものであり、
前記リフィル水供給段階において、前記一次側流路からの給水圧に応じて前記弁体部材の前進動作を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給するリフィル水量調整手段を備えることを特徴とする流路開閉装置。
【請求項2】
前記リフィル水供給段階において、前記主弁座に対する前記主弁体の開度が所定量のリフィル水を供給するために定まる標準開度からシフトした場合に、このシフトに起因したリフィル水供給量の変動が吸収されるように、前記リフィル水量調整手段は、前記弁体部材の前進動作を調整することを特徴とする請求項1に記載の流路開閉装置。
【請求項3】
前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階においてのみ前記弁体部材の前進動作を調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給することを特徴とする請求項2に記載の流路開閉装置。
【請求項4】
前記リフィル水量調整手段は、前記洗浄水供給段階において前記大便器に所定量の洗浄水を供給した後、前記弁体部材を前進させることで前記主弁体を前記主弁座に当接させて前記大便器への洗浄水の供給を停止し、その後、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材を再度後退させた後再度前進させることで、所定量のリフィル水を前記大便器に供給することを特徴とする請求項3に記載の流路開閉装置。
【請求項5】
前記リフィル水量調整手段は、前記洗浄水供給段階における洗浄水の瞬間流量よりも前記リフィル水供給段階におけるリフィル水の瞬間流量が小さくなるように前記弁体部材の前進動作を調整することを特徴とする請求項4に記載の流路開閉装置。
【請求項6】
前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材の前進速度を給水圧に応じて調整することで、給水圧に依存しない所定量のリフィル水を前記大便器に供給することを特徴とする請求項3に記載の流路開閉装置。
【請求項7】
前記リフィル水量調整手段は、前記リフィル水供給段階において前記弁体部材の前進速度を、給水圧が低い場合に高めるように調整することを特徴とする請求項6に記載の流路開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−202111(P2012−202111A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67750(P2011−67750)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】