説明

流量センサ

【課題】羽根車を大きく形成すると、小さな力では羽根車が回転しなくなるため低流量での感度が鈍り、低流量では羽根車が流速に比例して回転しない。羽根車を小さく形成すると羽根車の自重が軽くなり、低流量でも安定して羽根車を回転させることは可能であるが、逆に大流量では高速で回転するため、羽根車の軸受部が摩擦しやすいという不具合が生じる。
【解決手段】羽根車を流れ方向に対して移動自在に設けると共に、流体の流れを受け、羽根車を下流側に移動させる流体受け部を羽根車に設け、羽根車の下流側に、流体の流れによって流れ方向に移動することなく回転する制動羽根車を設け、かつ、羽根車と制動羽根車との間を離間させる方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段による付勢力に抗して羽根車が制動羽根車に所定距離まで近づいた場合に、羽根車と制動羽根車とを連結させて両羽根車を等速で回転させる連結機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が流れる管路内に設けた羽根車と、この羽根車の外周に設けた磁極の磁界を管路の外部から検知する磁気センサとからなる流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流量センサとして、例えば、管路内に羽根車を設け、管路内に流体が流れるとその流れによって羽根車を回転させるようにしたものが知られている。この羽根車の羽根の先端は帯磁され磁極が設けられている。羽根車の回転数は流速にほぼ比例して増減する。一方、管路の外部には磁気センサが取り付けられており、羽根車の回転により変化する磁界をこの磁気センサで検知している。
【0003】
磁気センサからの出力信号により羽根車の回転数が検出できる。この回転数は上述のように管路内の流速に比例しているので、管路内の断面積と流速から管路内の流体の流量を求めることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−009503号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような流量センサでは流体の流れによって羽根車を回転させるが、羽根車を比較的大きく形成すると、小さな力では羽根車が回転しなくなるため低流量での感度が鈍り、低流量では羽根車が流速に比例して回転しないという問題が生じる。一方、羽根車を比較的小さく形成すると羽根車の自重が軽くなり、低流量でも安定して羽根車を回転させることは可能であるが、逆に大流量では高速で回転するため、羽根車の軸受部が摩耗しやすいという不具合が生じる。
【0005】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、低流量での感度を向上させると共に大流量時での摩耗等の不具合を解消することのできる流量センサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明による流量センサは、流体が流れる管路の途中に、羽根の先端に磁極を有し流体の流れによって回転する羽根車を設けると共に、羽根車の回転数を検出するため、管路の外部から羽根車の先端の磁極による磁界を検知する磁気センサを備えた流量センサにおいて、上記羽根車を流れ方向に対して移動自在に設けると共に、流体の流れを受け、羽根車を下流側に移動させる流体受け部を羽根車に設け、羽根車の下流側に、流体の流れによって流れ方向に移動することなく回転する制動羽根車を設け、かつ、羽根車と制動羽根車との間を離間させる方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段による付勢力に抗して羽根車が制動羽根車に所定距離まで近づいた場合に、羽根車と制動羽根車とを連結させて両羽根車を等速で回転させる連結機構を設けたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、低流量時では流体受け部が流れを受けることにより生じる羽根車を下流側に移動させようとする力は小さいので、弾性手段による弾性力に抗して羽根車が下流に移動することはない。そのため羽根車は制動羽根車から独立して単独で回転する。
【0008】
流速が大きくなると羽根車を下流側へ移動させる力が大きくなり、付勢力に抗して徐々に羽根車は制動羽根車に接近する。両羽根車の距離が所定距離まで近づくと連結機構により羽根車と制動羽根車とが連結するので、羽根車の質量が両羽根車の合計質量に増加したことになり、羽根車の回転数が減速される。なお、流速が小さくなると付勢手段によって羽根車と制動羽根車との距離が再び離されるので、連結機構による連結が解除される。
【0009】
なお、上記羽根車は、上記制動羽根車の回転軸線に沿って上流側に延設された回転軸に回転自在に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明は、流速が遅い状態では羽根車が単独で回転できるので感度が高く、また流速が増加すると羽根車は制動羽根車と連結して回転するので高速になりにくく、摩耗等の不具合が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1を参照して、Pは流体である水が流れる管路である。この管路P内に樹脂製のスリーブ1を挿入し、そのスリーブ1に制動羽根車2を回転自在に保持させた。スリーブ1の上流側端部には水流を回転させるための整流フィン11が設けられている。また、制動羽根車2から上流側に延設されている回転軸21に羽根車3が取り付けられている。この羽根車3は回転軸21に対して回転自在であり、かつ回転軸21の軸線すなわち水流方向に対して移動自在である。また、羽根車3と制動羽根車2との間には付勢手段であるバネ部材4が挿入されており、羽根車3と制動羽根車2との間隔を広げる方向に付勢力が作用するように形成されている。管路Pの外周には磁気センサ5が取り付けられており、この磁気センサ5の出力信号は演算部6に入力される。
【0012】
図2を参照して、制動羽根車2には4枚の羽根2a,2b,2c,2dが形成されており、上部には回転軸21が設けられている。各羽根のうち、羽根2aの先端はN極に帯磁されており、羽根2bの先端はS極に帯磁されている。残りの羽根2c,2dは共に帯磁されておらず、したがって先端には磁極が設けられていない。
【0013】
また、羽根2aの上縁には連結機構となる凹部状の係合凹部23が形成されており、残りの羽根2b,2c,2dの上縁には切欠き状の逃げ部22が形成されている。
【0014】
羽根車3には4枚の羽根3a,3b,3c,3dが形成されており、各羽根3a,3b,3c,3dの上面には十文字状の水平面からなる流体受け部31が形成されている。また、羽根3aの下部には上記係合凹部23に係合して共に連結機構を構成する係合凸部32が形成されている。なお、羽根3a,3cは共にN極に帯磁され、羽根3b,3dはS極に帯磁されている。
【0015】
バネ部材4は上下2枚のワッシャ部41と両ワッシャ部41を連結する帯状の弾性変形部42とから構成されている。上下方向から圧縮方向の外力が作用すると弾性変形部42が変形して両ワッシャ41の間隔が狭くなるが、外力が無くなると弾性変形部42が復元して両ワッシャ部41の間隔が拡がる、スプリングとして機能する。
【0016】
上記構成によれば、水流が整流フィン11を通過して回転流になると、その回転流が羽根車3および制動羽根車2の各羽根に作用して両羽根車2,3を回転させる。ただし、羽根車3は制動羽根車2より上流に位置し、かつ回転を阻害する摩擦力や質量が小さいので低流速時から回転を開始し、流速の上昇に対応して回転数が急速に上昇する。これに対して制動羽根車2は低流速での感度が低く、かつ、流速の上昇に対して回転数の増加速度も遅い。
【0017】
図3を参照して、流速が低速であり、羽根車3と制動羽根車2との距離がバネ部材4によって広げられている状態では、係合凸部32は係合凹部23に係合することがないので、図3(a)に示すように、羽根3aと羽根2aとは相互に同期することなく個別に回転している。なお、上述のように羽根3aの回転速度は羽根2aの回転速度より速い。
【0018】
流速が増加し、流体受け部31で受ける水流により羽根車3が下流側、すなわち制動羽根車2側に移動すると、図3(b)に示すように係合凸部32が係合凹部23に係合する。羽根車3は常に制動羽根車2よりも高速で回転しようとするので、係合凸部32は係合凹部23に押し付けられた状態を保持することになり、したがって、羽根車3と制動羽根車2とは同期して同じ速度で回転する。なお、流速が減少して羽根車3が上流側に戻ると、図3(a)に示す状態に戻り、再び羽根車3と制動羽根車2とは互いに独立して回転することになる。
【0019】
図4を参照して、L1は羽根車3が単独で回転した場合の流量と回転数との関係を示すグラフであり、L2は羽根車3と制動羽根車2とが連結した状態で回転した場合の流量と回転数との関係を示すグラフである。
【0020】
流れが止まっている状態から流速が徐々に増加すると、羽根車3は直ちに回転を開始し(a点)、L1に沿って回転数が増速する。b点まで増速すると上述のように羽根車3と制動羽根車2とが連結されるため、回転数はc点まで急速に減速する。その後は連結した状態を保ったままL2に沿って回転数が増速する。
【0021】
次にその状態から流速が減少すると、L2に沿って回転数がd点まで減速した時点で羽根車3と制動羽根車2との連結が解除され、回転数はe点まで急激に増速し、その後はL1に沿って羽根車3の回転数が減速する。
【0022】
この羽根車3の回転数の変化は磁気センサ5で検知することができる。そして、検知された信号は演算部6で演算処理され、流量が求められる。
【0023】
ところで、演算部6には磁気センサ5からの検知信号しか入力されないので、羽根車3と制動羽根車2とが連結されているか否かを検知信号から判断する必要がある。
【0024】
この検知信号には羽根車3の回転による信号と制動羽根車2の回転による信号とが互いに重畳されている。演算部6では両信号を最初に分離して、図5に示す2つの信号を得る。図5(a)は羽根車3の回転による信号であり、(b)は制動羽根車2の回転による信号を示している。
【0025】
羽根車3と制動羽根車2とが相互に連結されていない状態では、(b)の波長F2は(a)の波長F1の2倍より長くなる。したがって、F1<0.5F2であれば羽根車3と制動羽根車2とは相互に連結されていないことが分かり、演算部6は図4のL1を用いて流量を求める。
【0026】
羽根車3と制動羽根車2とが相互に連結されると、F1=0.5F2となり、また羽根3aと羽根2aとは共にN極に帯磁され、羽根3bと羽根2bとは共にS極に帯磁されていることから、図5の(b)に示す信号が検知信号から分離できなくなる。このことから演算部6は羽根車3と制動羽根車2とが相互に連結したと判断し、図4のL2を用いて流量を演算する。
【0027】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。例えば、上記実施の形態では羽根車の上面に流体受け部31を設けたが、各羽根3a,3b,3c,3dから水平方向に庇状の突起を設けて、その突起の上面を流体受け部31として機能させることにより、流体受け部31の総面積を増加させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】羽根車と制動羽根車とを示す斜視図
【図3】羽根車と制動羽根車との連結状態を説明する図
【図4】流速と回転数との関係を示す図
【図5】検知信号に重畳される信号を示す図
【符号の説明】
【0029】
1 スリーブ
2 制動羽根車
3 羽根車
4 バネ部材
5 磁気センサ
6 演算部
11 整流フィン
21 回転軸
23 係合凹部
32 係合凸部
P 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路の途中に、羽根の先端に磁極を有し流体の流れによって回転する羽根車を設けると共に、羽根車の回転数を検出するため、管路の外部から羽根車の先端の磁極による磁界を検知する磁気センサを備えた流量センサにおいて、上記羽根車を流れ方向に対して移動自在に設けると共に、流体の流れを受け、羽根車を下流側に移動させる流体受け部を羽根車に設け、羽根車の下流側に、流体の流れによって流れ方向に移動することなく回転する制動羽根車を設け、かつ、羽根車と制動羽根車との間を離間させる方向に付勢する付勢手段と、この付勢手段による付勢力に抗して羽根車が制動羽根車に所定距離まで近づいた場合に、羽根車と制動羽根車とを連結させて両羽根車を等速で回転させる連結機構を設けたことを特徴とする流量センサ。
【請求項2】
上記羽根車は、上記制動羽根車の回転軸線に沿って上流側に延設された回転軸に回転自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の流量センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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