説明

流量センサ

【課題】羽根車2の羽根部23を軸方向に平行とし、入口側軸受部材3に斜状案内羽根32を設けると共に、回転抑止部材5を付設した流量センサにおいて、流体が順方向に流れるときは、回転抑止部材による羽根車の回転抑止を確実に解除でき、且つ、流体の逆流時は羽根車の正逆何れの方向の回転も防止できるようにする。
【解決手段】回転抑止部材5に第1突起52と第2突起53とが設けられる。順方向に流体が流れるときに羽根車2に付与される回転力の方向を正転方向として、第1突起52は、その先端から逆転方向に向けて順方向に傾斜してのびるカム部52aを有する。第1突起52と第2突起53との周方向間隔は、羽根車2の正転で何れかの羽根部23がカム部52aに当接している間に他の羽根部23が第2突起53の逆転方向側の側縁に当接するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として給湯器に用いられる、流体の流れで回転する羽根車を備える流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に給湯器では、熱交換器に連なる給水路に流量センサを介設し、流量センサで検出される通水流量が所定の最小流量以上になったときに、熱交換器を加熱するバーナに着火させるようにしている。
【0003】
このような給湯器に用いられる流量センサでは、一般的に、羽根車として羽根部が軸方向に対し傾斜したものを用い、センサケースの入口側及び出口側に設けられた一対の軸受部材によりセンサケース内に羽根車を回転自在に保持している。このものでは、センサケース内に入口側から出口側に向けて水(流体)が流れるときに羽根車が正転方向に回転するが、水抜き等でセンサケース内に出口側から入口側に向けて水が逆流するときにも、羽根車が逆転方向に回転してしまい、バーナに着火されてしまう。
【0004】
そこで、従来、水の逆流時の羽根車の回転を防止する回転抑止部材を付設した流量センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。この回転抑止部材は、筒状であって、出口側の軸受部材に設けられた放射状のスポーク部に軸方向に移動自在に係合するスリットを形成すると共に、羽根車に対向する端面に、羽根車の羽根部に係合して羽根車の回転を抑止する突起を突設して成るものである。このものでは、センサケースの入口側から出口側に向う軸方向を順方向として、センサケース内に順方向に水(流体)が流れるときに、回転抑止部材が順方向に押し動かされて、羽根車の回転抑止が解除され、羽根車が回転する。一方、水抜き等でセンサケース内に出口側から入口側に向けて水が逆流するときは、回転抑止部材が順方向とは反対方向、即ち、羽根車に接近する方向に押し動かされて、羽根車の回転が抑止される。これにより、水の逆流時にバーナに着火することを防止できる。
【0005】
また、従来、羽根車の羽根部を軸方向に平行とし、入口側軸受部材に、軸方向に対し傾斜した斜状案内羽根を設けて、センサケース内に流体が順方向に流れるときに、斜状案内羽根により流体の流れが旋回流となって羽根車に回転力が付与されるようにした流量センサも知られている(例えば、特許文献2参照)。このものでは、逆流時には出口側から流入する流体に旋回運動が与えられないため、羽根車は回転しないとしている。然し、実際には、斜状案内羽根における流体の旋回の影響が羽根車の配置部にまで及び、羽根車が正転方向や逆転方向に回転してしまうことがある。従って、このものでも、上記従来例のような回転抑止部材を付設して、逆流時の羽根車の回転を防止することが必要になる。
【0006】
ところで、出口側軸受部材のスポーク部と回転抑止部材のスリット側縁とのこじり等で回転抑止部材が羽根車に係合する位置に固着し、順方向に流体が流れても、流体圧だけでは回転抑止部材が順方向に動かず、突起による羽根車の回転抑止が解除されないことがある。そこで、上記従来例の回転抑止部材では、突起をその先端から逆転方向に向けて順方向に傾斜してのびるカム部を有するものに形成している。これによれば、順方向に流体が流れて羽根車に正転方向の回転力が付与されると、羽根車の羽根部がカム部に当接したところで、正転方向への回転力によりカム部を介して回転抑止部材に順方向への推力が作用する。そして、この推力により回転抑止部材の固着が解除されて、回転抑止部材が順方向に動き、羽根車が回転するようになる。
【0007】
ここで、入口側軸受部材に斜状案内羽根を設けて、羽根車の羽根部を軸方向に平行とする場合、流体の逆流時には、羽根車が正逆何れの方向に回転するか分からない。そして、このものに上記従来例の回転抑止部材を付設すると、流体の逆流時に羽根車が正転方向に回転しようとしたとき、カム部によって回転抑止部材が流体圧に抗して順方向に動いてしまい、羽根車の回転を防止できなくなる。
【特許文献1】特開2000−283804号公報
【特許文献2】特開昭64−23118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、羽根車の羽根部を軸方向に平行とし、入口側軸受部材に斜状案内羽根を設けると共に、回転抑止部材を付設した流量センサであって、流体が順方向に流れるときは回転抑止部材による羽根車の回転抑止を確実に解除でき、且つ、流体の逆流時は羽根車の正逆何れの方向の回転も防止できるようにしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、流体の流れで回転する羽根車を備える流量センサであって、羽根車を収納するセンサケースと、センサケースの入口側及び出口側に設けられ、センサケース内に羽根車を回転自在に保持する一対の軸受部材と、筒状であって、出口側軸受部材に設けられた放射状のスポーク部に軸方向に移動自在に係合するスリットを形成すると共に、羽根車に対向する端面に、羽根車の羽根部に係合して羽根車の回転を抑止する突起を突設して成る回転抑止部材とを備え、羽根車の羽根部は軸方向に平行であり、入口側軸受部材に、軸方向に対し傾斜した斜状案内羽根が設けられ、センサケースの入口側から出口側に向う軸方向を順方向として、センサケース内に流体が順方向に流れるときに、斜状案内羽根により流体の流れが旋回流となって羽根車に回転力が付与されると共に、流体圧により回転抑止部材が順方向に押し動かされて、羽根車の回転抑止が解除されるようにしたものにおいて、回転抑止部材に前記突起として周方向に離れた第1突起と第2突起とが設けられ、センサケース内に順方向に流体が流れるときに羽根車に付与される回転力の方向を正転方向、これと反対方向を逆転方向として、第1突起は、該第1突起の先端から逆転方向に向けて順方向に傾斜してのびるカム部を有し、第1突起と第2突起との周方向間隔は、羽根車の正転方向への回転で羽根車の何れかの羽根部が第2突起の逆転方向側の側縁に当接して回転抑止される前に羽根車の他の羽根部が第1突起のカム部に当接し、且つ、後者の羽根部がカム部に当接している間に前者の羽根部が第2突起の逆転方向側の側縁に当接するように設定されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、回転抑止部材が羽根車に係合する位置に固着しても、順方向に流体が流れて羽根車に正転方向の回転力が付与されると、羽根車の何れかの羽根部が第1突起のカム部に当接したところで、正転方向への回転力によりカム部を介して回転抑止部材に順方向への推力が作用する。そして、この推力により回転抑止部材の固着が解除され、以後、流体圧により回転抑止部材が順方向に動き、回転抑止部材による羽根車の回転抑止が確実に解除される。一方、流体の逆流時に、羽根車に正転方向の回転力が付与され、羽根車の何れかの羽根部が第1突起のカム部に当接して、回転抑止部材に順方向への推力が作用しても、羽根車の回転抑止が解除される前に、羽根車の他の羽根部が第2突起の逆転方向側の側縁に当接して、羽根車のそれ以上の正転方向への回転が阻止される。また、羽根車の逆転方向への回転は、各羽根部が第1と第2の各突起の正転方向側の側縁に当接して阻止される。従って、流体の逆流時は羽根車の正逆何れの方向への回転も防止できる。
【0011】
ところで、順方向に流体が流れると、斜状案内羽根により旋回流を生じて、羽根車だけでなく回転抑止部材にも正転方向の回転力が作用する。そして、この回転力により回転抑止部材のスリットの逆転方向側の側縁がスポーク部に押し付けられ、回転抑止部材がスポーク部との間の摩擦抵抗によって順方向に動き難くなることがある。そのため、本発明においては、スリットが順方向に向けて正転方向に傾斜していることが望ましい。これによれば、スリットの逆転方向側の側縁が正転方向の回転力でスポーク部に押し付けられたとき、押し付け反力の軸方向成分が回転抑止部材に順方向の推力として作用することになり、回転抑止部材が順方向に動き易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の実施形態の流量センサを示している。この流量センサは、給湯器の熱交換器に連なる給水路に介設されるものであり、流量センサで検出した通水流量が所定の最低流量以上になったときに、熱交換器を加熱するバーナに着火される。
【0013】
流量センサは、筒状のセンサケース1と、センサケース1内に収納される羽根車2と、センサケース1の入口側と出口側に設けられ、羽根車2をセンサケース1内で回転自在に保持する一対の軸受部材3,4と、出口側軸受部材4に装着される回転抑止部材5とを主要部材として構成されている。尚、流量センサは、センサケース1の入口側が下、出口側が上を向くような姿勢で設置される。以下の説明では、センサケース1の入口側から出口側に向う軸方向を順方向とする。
【0014】
羽根車2は、軸方向(上下方向)に長手の筒状の胴体部21と、胴体部21に貫通させた回転軸22と、胴体部21の外周面に放射状に配置した、磁気を帯びた複数の羽根部23とを有している。本実施形態では、図2に示す如く、周方向に90°間隔で4つの羽根部23が設けられている。また、各羽根部23は、軸方向に平行である。
【0015】
尚、図示しないが、センサケース1の外面にはホール素子等から成る磁気センサが設置されており、各羽根部23が磁気センサに対向する位置を通過する度に磁気センサからパルスが出力される。そして、単位時間当たりの出力パルス数をカウントして、通水流量を検出する。
【0016】
入口側軸受部材3は、センサケース1に一体成形されるもので、羽根車2の回転軸22の下端部を挿入保持する筒状の軸受部31と、図2に示す如く、軸受部31から外方に放射状にのびる、軸方向に対し傾斜した複数の斜状案内羽根32とを有している。この斜状案内羽根32により、センサケース1内に入口側から流入する水(流体)の流れが旋回流となる。そして、旋回流によって羽根車2に回転力が付与される。以下の説明では、センサケース1内に順方向に水が流れるときに羽根車2に付与される回転力の方向を正転方向、これと反対方向を逆転方向とする。尚、正転方向は、センサケース1の入口側(下方)から見て時計方向である。
【0017】
出口側軸受部材4は、羽根車2の回転軸22の上端部を挿入保持する筒状の軸受部41と、センサケース1の上端部に嵌合固定される環状のリム部42と、軸受部41とリム部42との間に放射状に配置した4つのスポーク部43とを有している。
【0018】
回転抑止部材5は、筒状であって、その上半部には、出口側軸受部材4の4つのスポーク部43に夫々軸方向に移動自在に係合する4つのスリット51が形成されている。各スリット51は、図2に示す如く、順方向(上方)に向けて正転方向(時計方向)に傾斜している。
【0019】
また、回転抑止部材5の羽根車2に対向する下端面には、羽根車2の羽根部23に係合して羽根車2の回転を抑止する突起として、周方向に離れた第1突起52と第2突起53とが突設されている。尚、第1突起52は、周方向に180°間隔で一対に設けられ、第2突起53も周方向に180°間隔で一対に設けられている。
【0020】
図3を参照して、第1突起52は、その先端(下端)から逆転方向に向けて順方向(上方)に傾斜してのびるカム部52aを有する。第1突起52の正転方向側の側縁は軸方向に平行である。また、第2突起53の正転方向側の側縁も軸方向に平行である。第2突起53の逆転方向側の側縁は、その基端に形成した補強用の傾斜部53aを除き軸方向に平行である。
【0021】
第1突起52と第2突起53との周方向間隔は、羽根車2の正転方向への回転で羽根車2の何れかの羽根部23が第2突起53の逆転方向側の側縁に当接して回転抑止される前に、この羽根部23に対し逆転方向に隣接する他の羽根部23が第1突起52のカム部52aに当接し、且つ、図3に仮想線で示す如く、後者の羽根部23がカム部52aに当接している間に前者の羽根部23が第2突起53の逆転方向側の側縁に当接するように設定される。
【0022】
ここで、回転抑止部材5は水よりも比重が大きいため、止水時には、羽根車2に当接する位置まで回転抑止部材5が下降する。センサケース1内に水が順方向に流れるときは、回転抑止部材5が、図1に示す如く、その下端面に作用する水圧により順方向、即ち、上方に押し動かされ、突起52,53による羽根車2の回転抑止が解除される。そして、斜状案内羽根32による旋回流で羽根車2が正転方向に回転する。
【0023】
ところで、回転抑止部材5が下降位置に固着して、順方向に水が流れても、水圧だけでは回転抑止部材5が上方に動かないことがある。この場合は、羽根車2の何れかの羽根部23が第1突起52のカム部52aに当接したところで、羽根車2の正転方向への回転力によりカム部52aを介して回転抑止部材5に上方への推力が作用する。そして、この推力により回転抑止部材5の固着が解除され、以後、水圧により回転抑止部材5が上方に動き、回転抑止部材5による羽根車2の回転抑止が確実に解除される。
【0024】
また、順方向に水が流れると、斜状案内羽根32により旋回流を生じて、羽根車2だけでなく回転抑止部材5にも正転方向の回転力が作用する。そして、この回転力により回転抑止部材5のスリット51の逆転方向側の側縁がスポーク部43に押し付けられ、回転抑止部材5がスポーク部43との間の摩擦抵抗によって上方に動き難くなることがある。然し、本実施形態では、スリット51が上方に向けて正転方向に傾斜しているため、スリット51の逆転方向側の側縁が正転方向の回転力でスポーク部43に押し付けられたとき、図4に示す如く、押し付け反力Fの軸方向成分Faが回転抑止部材5に上方への推力として作用する。従って、回転抑止部材5が上方に動き易くなる。
【0025】
また、そして、水抜き等でセンサケース1内に出口側から入口側に向けて水が逆流するときは、回転抑止部材5がその上端面に作用する水圧で下方に押される。ここで、水の逆流時に、羽根車2に逆転方向の回転力が付与されると、各羽根部23が第1と第2の各突起52,53の正転方向側の側縁に当接して、羽根車2の逆転方向の回転が阻止される。
【0026】
また、水の逆流時に、羽根車2に正転方向の回転力が付与されると、羽根車2の何れかの羽根部23が第1突起52のカム部52aに当接して、回転抑止部材5に上方への推力が作用してしまう。然し、水の逆流時は、回転抑止部材5が水力によって下方に押されており、しかも、上記羽根部23がカム部52aに当接している間に他の羽根部23が第2突起53の逆転方向側の側縁に当接するため、羽根車2のそれ以上の正転方向への回転が阻止される。従って、水の逆流時は羽根車2の正逆何れの方向への回転も防止できる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、第1突起52と第2突起53とを2個ずつ設けたが、第1突起52と第2突起53の数を各1個とすることも可能である。この場合、羽根車2の何れかの羽根部23が第1突起52のカム部52aに当接している間にこの羽根部23から180°離れた他の羽根部23が第2突起53の逆転方向側の側縁に当接するように、第1突起52と第2突起53との周方向間隔を設定してもよい。
【0028】
また、上記実施形態は、流体として水を流す給湯器用の流量センサに本発明を適用したものであるが、給湯器以外の装置で使用する流量センサにも同様に本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態の流量センサの切断側面図。
【図2】実施形態の流量センサの分解斜視図。
【図3】実施形態の流量センサの回転抑止部材の下端部の展開図。
【図4】実施形態の流量センサの回転抑止部材のスリットを形成した部分の展開図。
【符号の説明】
【0030】
1…センサケース、2…羽根車、23…羽根部、3…入口側軸受部材、32…斜状案内羽根、4…出口側軸受部材、43…スポーク部、5…回転抑止部材、51…スリット、52…第1突起、52a…カム部、53…第2突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れで回転する羽根車を備える流量センサであって、
羽根車を収納するセンサケースと、センサケースの入口側及び出口側に設けられ、センサケース内に羽根車を回転自在に保持する一対の軸受部材と、筒状であって、出口側軸受部材に設けられた放射状のスポーク部に軸方向に移動自在に係合するスリットを形成すると共に、羽根車に対向する端面に、羽根車の羽根部に係合して羽根車の回転を抑止する突起を突設して成る回転抑止部材とを備え、
羽根車の羽根部は軸方向に平行であり、入口側軸受部材に、軸方向に対し傾斜した斜状案内羽根が設けられ、センサケースの入口側から出口側に向う軸方向を順方向として、センサケース内に流体が順方向に流れるときに、斜状案内羽根により流体の流れが旋回流となって羽根車に回転力が付与されると共に、流体圧により回転抑止部材が順方向に押し動かされて、羽根車の回転抑止が解除されるようにしたものにおいて、
回転抑止部材に前記突起として周方向に離れた第1突起と第2突起とが設けられ、センサケース内に順方向に流体が流れるときに羽根車に付与される回転力の方向を正転方向、これと反対方向を逆転方向として、第1突起は、該第1突起の先端から逆転方向に向けて順方向に傾斜してのびるカム部を有し、
第1突起と第2突起との周方向間隔は、羽根車の正転方向への回転で羽根車の何れかの羽根部が第2突起の逆転方向側の側縁に当接して回転抑止される前に羽根車の他の羽根部が第1突起のカム部に当接し、且つ、後者の羽根部がカム部に当接している間に前者の羽根部が第2突起の逆転方向側の側縁に当接するように設定されることを特徴とする流量センサ。
【請求項2】
前記スリットは、前記順方向に向けて前記正転方向に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の流量センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate