流量比決定方法、粒径別粒度分布測定装置及び粒径別粒度分布測定方法
【課題】帯電価数に対応させた流量比を設定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得る。
【解決手段】帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定し、xに基づいて、電気移動度Zc(U)と電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、電圧値Uを規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出し、第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない流量比を算出する。
【解決手段】帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定し、xに基づいて、電気移動度Zc(U)と電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、電圧値Uを規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出し、第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない流量比を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のエアロゾル粒子の粒度分布を測定する装置及び方法に係り、特に、試料ガスとシースガスとの流量比を適切に設定して測定を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中には微小な液体又は固体の粒子である「エアロゾル粒子」が浮遊している。ISO15900:2009では、これらエアロゾル粒子として1nmから1μmの粒径を対象としている。また、数nmから1μmの粒径を有するエアロゾル粒子の計数は、エアロゾル粒子測定装置を用いて行われる。エアロゾル粒子測定装置は、例えば、微分型電気移動度分級装置(Differential Mobility Analyzer:DMA)と凝縮式粒子カウンタ(Condensation Particle Counter:CPC)、又はDMAとファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(Faraday Cup Aerosol Electrometer:FCAE)とを含む。そして、DMAで分級したエアロゾル粒子をCPC又はFCAEで測定することにより、その結果を用いてエアロゾル粒子を粒径別に計数することができる。
【0003】
DMAを用いて分級した場合、1価に帯電した粒径の比較的小さなエアロゾル粒子に加えて、多価(2価、3価、・・・)に帯電した粒径の比較的大きなエアロゾル粒子が含まれている。このため、測定にあたっては、DMAにより分級されたエアロゾル粒子は1価に帯電していると仮定すると共に、粒径と数量との関係について、そこに対数正規分布が成り立つものと仮定し、その計数結果に対して、多価帯電したエアロゾル粒子分を補正して粒度分布を算出している。補正には、帯電価数の存在確率としてWiedensohlerの近似式等を適用している。この他にも、DMAにより分級する電気移動度の幅を粒径の幅に変換し、その粒径範囲内の粒子数を、測定における平均帯電率や平均価数等の補正係数に基づいて算出する手法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4710787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、DMAを用いる場合、1つの粒径に対して多価帯電粒子が存在し、同じ電気移動度で分級すると多価帯電した粒径の異なる粒子が存在していた。また、電気移動度による分級のばらつきは、DMA内においてエアロゾル粒子とシースガスの流量に影響することが知られている。これを利用して、エアロゾル粒子を含んだ試料ガスと清浄空気からなるシースガスとの流量比を帯電価数に関わらずに経験的に規定し、それに基づいてDMAを作動していた。
【0006】
そこで本発明は、帯電価数に対応させた流量比を設定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段1:本発明の流量比決定方法は、帯電したエアロゾル粒子を含む試料流体(試料ガス)と清浄な空気からなる清浄流体(シースガス)とを、所定の電界中において電気移動度に基づいて前記帯電したエアロゾル粒子を分級する電気移動度分級工程に流動する際に、前記試料流体の流量から前記清浄流体の流量を除算した流量比を算出する流量比決定方法であって、前記流量比決定方法は、前記帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する最大帯電数決定工程と、前記測定対象とする帯電数が1価の前記エアロゾル粒子の前記電界中での移動のしやすさである電気移動度を、前記電界を形成するために印加される電圧値Uで表しZc(U)と定義する基準電気移動度定義工程と、前記最大帯電数決定行程により決定されたxに基づいて、電気移動度Zc(U)と前記電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、前記電圧値Uをx/(x−1)、x/(x−2)、…、x/2、(x−1)/(x−2)、(x−1)/(x−3)、…、(x−1)/2、(x−2)/(x−3)、(x−2)/(x−4)、…、(x−2)/2、…、3/2の規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出す特別電気移動度群導出工程と、前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度について、前記基準電気移動度定義工程により定義されたZc(U)を用いて各電気移動度を表す変換工程と、前記流量比を調整することで所定の電気移動度が変動し得る領域をその電気移動度に対応する領域と定義した場合、前記変換工程後であって前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度に対応した領域をそれぞれ定義する領域定義工程と、前記領域定義行程により定義された前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と前記第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない前記流量比を算出する最終算出工程とを含むことを特徴とする流量比決定方法である。
【0008】
本発明の流量比決定方法によれば、1価に限らず多価に帯電したエアロゾル粒子を測定する場合では、測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を決定することで、試料ガスとシースガスの流量比が決定されて、測定に適した流量比を微分型電気移動度分級装置(DMA)に設定することで、分級されたエアロゾル粒子の粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段2:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和工程と、解決手段1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和工程により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動工程と、前記流動工程により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級工程と、前記電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定工程と、前記エアロゾル粒子測定工程により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級工程による分級と、前記エアロゾル粒子測定工程による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和工程における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出工程とを含み、前記電気移動度分級工程は、前記確認工程による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定工程と、前記基準電圧設定工程により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定工程と、前記電圧再設定工程により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行工程と、を含み、前記エアロゾル粒子測定工程は、前記基準電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定工程と、前記電気移動度再分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定工程により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定工程と、を含み、前記確認工程は、前記基準エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定工程により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0010】
本発明の粒径別粒度分布測定方法によれば、DMAに試料ガスとシースガスを流動する際に帯電価数xに対応した流量比を設定している。微分型電気移動度分級装置(DMA)において基準電圧値Uで分級したものをM1として測定し、次に、帯電価数xに対応して設定される電圧値(2U、・・、xU)で分級したものをMx(M2、・・、Mx)として測定している。そして、Mx/M1が規定値未満を満たす条件であれば、そのMxに対応する多価に帯電したエアロゾル粒子の粒径の粒度分布が算出されることとなる。その算出結果と平衡帯電状態でのエアロゾル粒子の荷電確率に基づき、他の粒径についても順次に粒度分布が算出されることとなる。したがって、1価に限らず多価に帯電したエアロゾル粒子を測定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0011】
解決手段3:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0012】
解決手段4:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0013】
解決手段5:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0014】
解決手段3乃至5においては、測定対象とする帯電価数に対応した流量比で試料ガスとシースガスを微分型電気移動度分級装置(DMA)に流動するので、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段6:本発明の粒径別粒度分布装置は、前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和手段と、解決手段1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和手段により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動手段と、前記流動手段により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級手段と、前記電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定手段と、前記エアロゾル粒子測定手段により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級手段による分級と、前記エアロゾル粒子測定手段による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和手段における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出手段とを備え、前記電気移動度分級手段は、前記確認手段による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定手段と、前記基準電圧設定手段により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定手段と、前記電圧再設定手段により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行手段と、を備え、前記エアロゾル粒子測定手段は、前記基準電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定手段と、前記電気移動度再分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定手段により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定手段と、を備え、前記確認手段は、前記基準エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定手段により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0016】
本発明の粒径別粒度分布測定装置によるエアロゾル粒子の測定は、上記解決手段2と同様の特徴を有している。
【0017】
解決手段7:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0018】
解決手段8:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0019】
解決手段9:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0020】
解決手段7乃至9においては、測定対象とする帯電価数に対応した流量比で試料ガスとシースガスを微分型電気移動度分級装置(DMA)に流動するので、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエアロゾル粒子を測定する際の試料ガスとシースガスの流量比の算出方法、及び、その算出方法に基づいて作動するエアロゾル粒子の粒径別粒度分布測定装置及び粒径別粒度分布測定方法によれば、帯電価数に対応させた流量比を設定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】粒径別粒度分布測定装置の構成について説明する図である。
【図2】大気中におけるエアロゾル粒子密度分布(Junge分布)を説明する図である。
【図3】荷電中和装置について説明する図である。
【図4】荷電確率分布について説明する図である。
【図5】微分型電気移動度分級装置(DMA)について説明する図である。
【図6】電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
【図7】ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)について説明する図である。
【図8】凝縮式粒子カウンタ(CPC)について説明する図である。
【図9】エアロゾル粒子の粒径及び荷電数(価数)に対応した測定結果M1〜M4をプロットした荷電確率分布について説明する図である。
【図10】大気中のエアロゾル粒子の測定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図11】微分型電気移動度分級装置に関する初期設定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図12】微分型電気移動度分級装置に関する設定変更処理の手順例を示すフローチャートである。
【図13】電気移動度Zにより分級される確率を表すトランスファ関数Ω(Z)を説明する図である。
【図14】電気移動度と分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
【図15】最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
【図16】最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
【図17】分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係を説明する図である。
【図18】流量比決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、粒径別粒度分布測定装置1は、エアロゾル粒子収集装置(又はエアロゾル粒子発生装置)100、荷電中和装置200、微分型電気移動度分級装置(以下、DMAとする)300、エアロゾル粒子測定装置400、測定結果解析装置600、及び計数結果出力装置700から構成されている。
【0025】
エアロゾル粒子収集装置100は、大気中に浮遊している粉塵や液滴(液体粒子)等のエアロゾル粒子を収集する。エアロゾル粒子収集装置100は、具体的には、粒径が1nm〜1μm程度のエアロゾル粒子を収集(捕集)する集塵器を含む。
【0026】
収集装置とは別の形態であるエアロゾル粒子発生装置100は、燃焼プロセスを利用してスス(炭化物質)を発生させるスス発生器、溶媒中から液滴を発生させるエアロゾル粒子発生器等を含む。
【0027】
なお、収集又は発生される大気中に浮遊している粉塵や液滴(液体粒子)に関する粒子密度分布(単位体積あたりの濃度分布)の詳細については、別の図を参照しながら後述する。
エアロゾル粒子収集装置100により収集された(又はエアロゾル粒子発生装置100により発生された)エアロゾル粒子は、次に荷電中和装置200に送られる。
荷電中和装置200は、エアロゾル収集装置100により収集されたエアロゾル粒子を平均帯電量がゼロになる(平衡帯電状態)ように帯電させる装置である。なお、荷電中和装置200により帯電されるエアロゾル粒子についての具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0028】
荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子(帯電されなかったものも含む)は、次に微分型電気移動度分級装置300に送られる。
【0029】
DMA300は、荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子を電気移動度に対応させて分級する。DMA300の作動に関する設定(例えば、印加電圧)を調整することで、分級対象とするエアロゾル粒子に応じた電気移動度を設定することができる。なお、DMA300により分級されるエアロゾル粒子についての具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0030】
DMA300により分級されたエアロゾル粒子は、次にエアロゾル粒子測定装置400に送られる。なお、DMA300により分級されなかったエアロゾル粒子については、粒径測定装置1の外に排気される。
【0031】
エアロゾル粒子測定装置400は、DMA300により分級されたエアロゾル粒子の粒子数を測定する。測定装置400は、ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(以下、FCAEとする)401及び凝縮式粒子カウンタ(以下、CPCとする)501の少なくとも1つを含む。FCAE401は、DMA300により分級された帯電状態にあるエアロゾル粒子を捕集し、捕集した粒子の荷電数に応じた電流値を測定する。また、CPC501は、DMA300により分級されたエアロゾル粒子を凝縮核としてアルコールや水を凝縮させて大きな液滴に成長させ、その大きくなった液滴を光学的に検出して粒子数を測定する。なお、FCAE401やCPC501により測定されるエアロゾル粒子に関する具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0032】
エアロゾル粒子測定装置400による測定結果は、測定結果解析装置600に送信される。
【0033】
測定結果解析装置600は、FCAE401又はCPC501により測定されたデータに基づいてエアロゾル粒子の粒子数を粒径別に計数する。なお、具体的な計数方法については、別の図を参照しながらさらに後述する。測定結果解析装置600により計数されたエアロゾル粒子数の情報は、計数結果出力装置700に送信される。
【0034】
計数結果出力装置700は、測定結果解析装置600により計数されたエアロゾル粒子数について、粒径別にその粒子数を表示する。
【0035】
〔大気中のエアロゾル粒子〕
次に、エアロゾル粒子収集装置100により収集される大気中のエアロゾル粒子について説明する。
図2は、大気中におけるエアロゾル粒子密度分布(Junge分布(1952))を説明する図である(Reference:H Israel Atmospheric Electrisity, Volume 1, pp.153、1970)。
【0036】
図2に示すように、大気中のエアロゾル粒子については、粒径に対応してその粒子密度分布が異なっており、具体的には、粒径別の密度はJunge分布に従っている。Junge分布によると、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいており、エアロゾル粒子はその粒径が大きくなるほど、大気中に浮遊しなくなることが示されている。例えば、100nmより小さなエアロゾル粒子については1立方cmあたりに数万個浮遊しているのに対し、100nmより大きなエアロゾル粒子は1立方cmあたりに数個しか浮遊していない。すなわち、Junge分布は、粒径が100nm(図2では半径50nm)のエアロゾル粒子数に対して、200nm(図2では半径100nm)のエアロゾル粒子数は約10分の1個であり、300nm(図2では半径150nm)のエアロゾル粒子数は約30分の1であり、それより大きなエアロゾル粒子数についても逆3乗則に基づき非常に少ないことを表している。
【0037】
したがって、エアロゾル粒子収集装置100により収集される大気中のエアロゾル粒子は、図2に示すJunge分布に基づくと、ほとんどが100nm以下のエアロゾル粒子であり、100nm以上のエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいて、数が極少ないことが分かる。さらに、200nm以上のエアロゾル粒子や300nm以上のエアロゾル粒子については、ほとんど大気中に浮遊していないため、エアロゾル粒子収集装置100にもほとんど収集されることがない。これらのことは、エアロゾル粒子発生装置100で発生されたエアロゾル粒子についても該当する。
【0038】
〔荷電中和装置〕
次に、収集又は発生されたエアロゾル粒子が荷電中和装置200により帯電されることについて説明する。
【0039】
図3は、荷電中和装置について説明する図である。
図3に示すように、荷電中和装置200は、容器210に設けられた流入口220からエアロゾル粒子を流入させる。容器210は、例えば、SUS容器から構成される。また、容器210内には、例えば一対をなす多孔板230,250が設けられており、これら多孔板230,250の間の領域に放射線源240が設置されている。放射線源240としては、241AM、85Kr、210Po等が用いられる。放射線源240が設置されることで、多孔板230,250間の領域内には、平衡帯電状態が保たれ、エアロゾル粒子が通過することで、帯電することとなる。次に、その粒径毎に異なるエアロゾル粒子の荷電確率について説明する。
【0040】
〔荷電確率分布〕
図4は、荷電確率分布について説明する図である(ISO15900:2009)。
図4は、エアロゾル粒子が、平衡帯電状態における、ゼロ価から±5価までの荷電確率を表している。エアロゾル粒子は、その粒径が小さいものほど帯電しにくく、逆に粒径が大きいものほど帯電しやすく、さらに多価にも帯電しやすい。
【0041】
例えば、粒径が1nmのエアロゾル粒子は、その約98%が帯電せず、それ以外の約1%ずつが−1価又は+1価に帯電する。他にも、粒径が10nmまでのエアロゾル粒子については、約90%以上が帯電しない。
【0042】
例えば、粒径100nmのエアロゾル粒子は、約40%が帯電せず、約30%が−1価に帯電し、約20%が+1価に帯電し、約6%が−2価に帯電し、約3%が+2価に帯電する。また、粒径200nmのエアロゾル粒子は、約30%が帯電せず、約30%が−1価に帯電し、約20%が+1価に帯電し、約12%が−2価に帯電し、約8%が+2価に帯電し、約3%が−3価に帯電し、約2%が+3価に帯電する。また、粒径300nmのエアロゾル粒子は、約20%が帯電せず、約20%が−1価に帯電し、約15%が+1価に帯電し、約15%が−2価に帯電し、約9%が+2価に帯電し、約7%が−3価に帯電し、約3%が+3価に帯電し、約2%が−4価に帯電する。
【0043】
次に、荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子がDMA300により分級されることについて説明する。
【0044】
〔微分型電気移動度分級装置(DMA)300〕
図5に示すように、DMA300は、内筒と外筒からなる二重円筒状の構造を有する。荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子を含む大気(試料ガスG1)は、清浄空気(シースガスG2)と共に流される。なお、エアロゾル粒子と合流する前の位置にフィルター320が設けられており、シースガスG2の不純物はフィルター320で取り除かれる。
【0045】
DMA300の外筒は外側電極330として用いられ、DMA300の内筒は内側電極340として用いられる。外側電極330はDMA300の中心線から距離r2を置いて設置され、内側電極340はDMA300の中心線から距離r1を置いて設置される。これら外側電極330と内側電極340との間には電圧Vが印加される。したがって、流入口310から流入したエアロゾル粒子を含む試料ガスG1は電圧Vが印加された電界中をシースガスG2と共に流されることとなる。
【0046】
シースガス中を移動するエアロゾル粒子には、静電気力と抵抗力とが働いている。また、静電引力を受けて流体中を移動する粒子については、定常状態で静電気力と抵抗力とがつりあうため、電気移動度をZとすると、その粒子の等速vは電場Eに比例してv=ZEの関係が成り立つ。
ここで、電気移動度Zは以下の数式(1)で表される。
【数1】
この電気移動度Zを表す数式(1)において、pはエアロゾル粒子の帯電価数、eは電荷素量、μgはガス粘性計数(ガス粒度)、dはエアロゾル粒子の粒径、lgは平均自由工程を表している。
【0047】
したがって、DMA300の流入口310から流入した帯電しているエアロゾル粒子は、電気移動度Zに基づいて、図5に示すような軌跡に沿って移動することとなる。具体的には、帯電価数が1価の粒径が小さいエアロゾル粒子と共に、帯電価数が2価・3価の粒径が大きいエアロゾル粒子も分級用排出口350に到達することになる(EG1)。このようにDMA300は、所定の電気移動度毎にエアロゾル粒子を分級することができるが、1価に帯電した粒子に限らず、多価帯電した粒子も分級することになる。なお、分級されなかったエアロゾル粒子は排出口360から排出される(EG2)。
【0048】
また、電気移動度Zは、DMA300の構造(内部電極径r1、外部電極径r2、分級までの距離L)、DMA300の作動に関する設定事項からも導くことができ、試料ガスの流入量q2と分級用排出口350からの排出量q3、及びシースガスの流入量q1と排出口360からの排出量q4が夫々等しい場合(q1=q4、q2=q3)、以下の数式(2)で表される。
【数2】
この電気移動度Zを表す数式(2)において、Uは印加する電圧を表している。
【0049】
したがって、電気移動度Zは、シースガスの流量q1を一定とすると、印加する電圧Uにより調整することができる。なお、試料ガスの流量q2÷シースガスq1の流量を流量比と称する。
【0050】
〔電気移動度に対応するエアロゾル粒子〕
図6は、電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
図6は、DMA300を作動させた際の、それぞれ電気移動度Zを表す数式(1)と数式(2)とから求められた粒径に対する電気移動度の一例を示している。ここでは、帯電価数が4価までを示しているが、粒度分布をみる上では4価程度まで考慮すればほとんど問題ない。
【0051】
例えば、DMA300に電圧Uを印加した際の電気移動度Z(U)により分級されるエアロゾル粒子は、図6中に記された4つの黒い点印(●)で表される。帯電価数が1価で粒径がd1のエアロゾル粒子と共に、帯電価数が2価で粒径がd2のエアロゾル粒子、価数が3価で粒径がd3のエアロゾル粒子、価数が4価で粒径がd4のエアロゾル粒子である。ここでは、粒径d1は約60nmであり、粒径d2は約90nmであり、粒径d3は約115nmであり、粒径d4は約135nmである。
【0052】
次に、電気移動度Z(U)で分級される帯電価数が2価で粒径がd2のエアロゾル粒子を分級するために、上記電気移動度Z(U)の時の2倍の電圧2UをDMA300に印加した際の電気移動度はZ(2U)とする。その際にDMA300により分級されるエアロゾル粒子は、図6中に記された4つの三角印(△)で表わされる。帯電価数が1価で粒径がd2のエアロゾル粒子、帯電価数が2価で粒径がd4のエアロゾル粒子、帯電価数が3価で粒径がd5のエアロゾル粒子、帯電価数が4価で粒径がd6のエアロゾル粒子である。帯電価数が2価のエアロゾル粒子について、電気移動度Z(U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径のものが分級される。なお、他の粒径d5は約180nmであり、粒径d6は約210nmである。
【0053】
以下同様に、上記電気移動度Z(U)の時の3倍の電圧3UをDMA300に印加した際の電気移動度Z(3U)については、図6中に記された4つの四角印(□)となり、電気移動度Z(U)で分級される価数が3価のエアロゾル粒子と同じ粒径d3のものが分級され、電気移動度Z(2U)で分級される価数が3価のエアロゾル粒子と同じ粒径d5のものが分級される。また、上記電気移動度Z(U)の時の4倍の電圧4UをDMA300に印加した際の電気移動度Z(4U)にいては、図6中に記された4つの白色丸印(○)となり、電気移動度Z(U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d4のものが分級され、電気移動度Z(2U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d6のものが分級され、電気移動度Z(3U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d8のものが分級される。なお、粒径d7は約240nm、粒径d8は約290nm、粒径d9は約340nmである。
【0054】
電気移動度Zに基づいてDMA300により分級されたエアロゾル粒子は次にエアロゾル粒子測定装置400に送られエアロゾル粒子の粒子数に関する数値が測定されることとなる。以下では先ず、FCAE401について説明し、次にCPC501について説明する。
【0055】
〔ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)〕
図7は、ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)について説明する図である。
図7に示すように、FCAE401は、容器410に設けられた流入口420からDMA300により分級されたエアロゾル粒子を流入する。容器410内には、導電性部材430が設置されており、その導電性部材430内に絶縁材440が設置されている。また絶縁材440内にはエアロゾル粒子収集部450が設置されており、この収集部450は、帯電したエアロゾル粒子を収集(捕集)する導電性部材からなる。エアロゾル粒子収集部450と導電部材430とは絶縁材440により絶縁されている。また、導電性部材430とアース469とはリード線463により接続されており、そのリード線463上には電流計467が設置されている。また、エアロゾル粒子収集部450にはリード線461の一端が接続され、そのリード線461の他端はスイッチ465を介してアース469に接続されている。
【0056】
上記の構成により、FCAE401に帯電したエアロゾル粒子が流入すると、エアロゾル粒子収集部450に収集され、エアロゾル粒子収集部450には電荷が蓄積されることになる。そしてスイッチ465がONに設定(通電)することによって、エアロゾル粒子収集部450に蓄積された電荷がまとめて移行し、その総電化数に対応するものが電流計467によって測定することができる。なお、エアロゾル粒子の粒子数の算出については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0057】
〔凝縮式粒子カウンタ(CPC)〕
次に、CPC501について説明する。
図8は、凝縮式粒子カウンタ(CPC)について説明する図である。
図8に示すように、CPC501は、エアロゾル粒子を凝縮して大きく成長させるエアロゾル粒子凝縮部503と、その成長したエアロゾル粒子を光学系により検出するエアロゾル粒子光学検出部505とを含む。
【0058】
DMA300により分級されて送られたエアロゾル粒子は、エアロゾル粒子凝縮部510の流入口から流入される。エアロゾル粒子凝縮部503は、飽和部520とコンデンサー部530から構成されている。飽和部520においては、アルコールや蒸留水が加熱され蒸気の状態で拡散している。また、コンデンサー部530においては、通過するガスが冷却されることとなる。したがって、エアロゾル粒子凝縮部503に流入してきたエアロゾル粒子は、飽和部520においてアルコール蒸気や水蒸気と合流し、コンデンサー部530に共に送られる。そして、コンデンサー部530において、エアロゾル粒子が凝縮核となり凝縮が起こり、アルコール蒸気や水蒸気により大きな液滴へと成長することとなる。エアロゾル粒子凝縮部503により大きな液滴となったエアロゾル粒子は、連絡通路540を通ってエアロゾル粒子光学検出部505に送られる。
【0059】
エアロゾル粒子光学検出部505は、フローセル550、遮光容器560、発光装置570、照射光学レンズ系575、集光光学レンズ系580及び受光装置585を含む。フローセル550は遮光容器560を貫通して設置されている。また、発光装置570、照射光学レンズ系575、集光光学レンズ系580及び受光装置585は、遮光容器560内に設置されており、遮光容器560は、その内部に外部からの光が入射しない構造を有している。
【0060】
フローセル550内を流動するエアロゾル粒子からの散乱光(反射光)が受光されると、エアロゾル粒子が検出される。
【0061】
DMA300により分級されたエアロゾル粒子は、FCAE401からは、所定時間あたりに分級されたエアロゾル粒子の荷電数の積算値が電流として出力される。また、CPC501からはエアロゾル粒子の個数に対応して出力される。出力される結果情報は、次に測定結果解析装置600に送信される。
【0062】
〔測定結果解析装置〕
次に、測定結果解析装置600において、FCAE401又はCPC501により測定されたデータに基づいて、粒径別のエアロゾル粒子の粒子数を計数する。測定結果解析装置600は、演算処理機能とメモリ機能を備え、メモリ機能には予め演算処理の処理内容が記録されており、演算処理機能が適宜その演算処理の処理内容を読みだすことで、FCAE401又はCPC501により測定されたデータから粒径別のエアロゾル粒子の粒子数を計数している。
【0063】
〔計数結果出力装置〕
計数結果出力装置700(不図示)は、エアロゾル粒子の粒径別に計数結果を表示する。例えば、表示装置710は、エアロゾル粒子の大きさの基準を示す「Size(nm)」の表示部と、各粒径に対応する計数したエアロゾル粒子の個数(計数値)を示す「Count」の表示部とする。「Size(nm)」の表示部には、基準とした粒径の値を表示する。そして、「Count」の表示部には、荷電確率分布から求めた総粒子数や基準とした粒径の帯電価数1価の数などを表示する。また、それらをグラフで表示してもよい。所望に合わせて表示すればよく、限定するものではない。
【0064】
なお、他にも、計数結果出力装置700は外部出力端子を備えてもよく、端子を通して別の装置にデータを出力してもよい。
【0065】
〔大気中のエアロゾル粒子の測定〕
大気中のエアロゾル粒子の測定にあたり、大気中のエアロゾル粒子の粒子密度を、図2を用いて説明したように、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則(Junge分布)に基づき大気中に浮遊しているものとする。
【0066】
図10は、大気中のエアロゾル粒子の測定手順を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って内容を説明する。
【0067】
ステップS100:先ず、粒径別粒度分布測定装置1は、微分型電気移動度分級装置(DMA)300に関する初期設定処理を実行する。なお、具体的な処理の内容については、別のフローチャートを参照しながらさらに後述する。
【0068】
〔DMAに関する初期設定処理〕
図11は、DMA300に関する初期設定処理の手順例を示すフローチャートである。
ステップS110:粒径別粒度分布測定装置1は、測定対象とする粒径(d1)の設定を行う。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300により分級するエアロゾル粒子の粒径(d1)を1価に帯電したものとして設定を行う。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS120を実行する。
【0069】
ステップS120:粒径別粒度分布測定装置1は、1価の対象粒径(d1)に関する電気移動度Zの計算を実行する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は上記で説明した数式(1)を用いて電気移動度Zの計算を実行する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS130を実行する。
【0070】
ステップS130:粒径別粒度分布測定装置1は、1価の対象粒径(d1)のエアロゾル粒子を分級するために必要なDMA300に印加する電圧Uの設定を行う。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS120で算出された電気移動度Zと上記で説明した数式(2)を用いてDMA300に印加する電圧Uを算出する。
【0071】
以上の手順を終えると、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定処理(図10)に復帰する。
【0072】
ステップS200:次に、粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300の作動処理を実行する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は、先の処理ステップS130で算出した電圧UをDMA300に印加し(印加電圧V=1U)、DMA300を作動させて電気移動度Z1(U)によりエアロゾル粒子を分級する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS300を実行する。
【0073】
ステップS300:粒径別粒度分布測定装置1は、FCAE401又はCPC501による測定(M1)を実行する。ここで、M1は電気移動度Z1(U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果を表している。FCAE401又はCPC501による電気移動度Z1(U)で分級されたエアロゾル粒子の測定が終了すると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS400を実行する。
【0074】
ステップS400:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300に関する設定変更処理を実行する。なお、具体的な処理の内容については、別のフローチャートを参照しながらさらに後述する。
【0075】
〔DMAに関する設定変更処理〕
図12は、DMA300に関する設定変更処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って内容を説明する。
【0076】
ステップS410:粒径別粒度分布測定装置1は、設定変更回数を確認する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧Vを変更した回数を確認する。例えば、先の処理で設定した電圧Vが初期設定のUであった場合、設定変更回数は初回を表す1に対応する。他にも、先の処理で設定した電圧Vが2回目の2U(又は、3回目の3U)であった場合、設定変更回数は2回目(又は、3回目)を表す2(又は、3)となる。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS420を実行する。
【0077】
ステップS420:粒径別粒度分布測定装置1は、初期設定の印加電圧(U)×(変更回数+1)の電圧を印加する設定を行う。例えば、先の処理ステップS410で確認した変更回数が1であった場合、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧を2Uに設定する。他にも、変更回数が2(又は3)であった場合、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧を3U(又は、4U)に設定する。
【0078】
以上の手順を終えると、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定処理(図10)に復帰する。
【0079】
ステップS500:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300の作動処理を実行する。具体的には、先の処理ステップS420で設定した電圧2U(又は3U、4U)をDMA300に印加し(印加電圧V=2U(又は3U、4U))、DMA300を作動させて電気移動度Z1(2U)(又は、Z1(3U)、Z1(4U))によりエアロゾル粒子を分級する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS600を実行する。
【0080】
ステップS600:粒径別粒度分布測定装置1は、FCAE401又はCPC501による測定Mxを実行する。ここで、xは2〜4のいずれかを表しており、M2は電気移動度Z1(2U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果、M3は電気移動度Z1(3U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果、M4は電気移動度Z1(4U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果をそれぞれ表している。FCAE401よる測定が終了すると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS700を実行する。
【0081】
ステップS700:粒径別粒度分布測定装置1は、初期設定時の測定結果M1と設定変更時の測定結果Mxから、Mx/M1を算出する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS300において、電気移動度Z1(U)で分級したエアロゾル粒子を測定したFCAE401又はCPC501による測定結果M1を参照する。また、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS600において、電気移動度Z1(2U)(又は、Z1(3U)、Z1(4U))で分級したエアロゾル粒子を測定したFCAE401による測定結果M2(又は、M3、M4)を参照する。そして、粒径別粒度分布測定装置1は、Mx/M1を算出する。
【0082】
ステップS800:粒径別粒度分布測定装置1は、再測定が必要か否かを確認する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS700において算出したMx/M1に基づいて、規定値(例えば、0.01:1%)よりも小さいか否かを確認する。このように、規定値が1%程度であれば、粒度分布をみる上には、無視しても問題ない。なお、規定値は1%に限定されず、0.1%でもよく、適宜調整可能である。結果として、Mx/M1が規定値よりも小さい場合(Yes)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS900を実行する。一方、Mx/M1が規定値よりも小さくない場合(No)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS400を実行する。
【0083】
ステップS900:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300により分級されるエアロゾル粒子(d1)の数を算出する。ここでは、M2/M1やM3/M1が規定値(1%)より小さくなく、M4/M1が規定値(1%)より小さかった場合について説明する。他の場合については以下の数式を用いた算出方法に基づいて適宜算出可能であるため説明を省略する。
【0084】
なお、FCAE401により測定された測定結果のM1、M2、M3、M4は電流相当であり、MFCAE(Z1(U))は数量相当である。一方、CPC501により測定された測定結果のM1、M2、M3、M4は数量相当であり、MCPC(Z1(U))も同様に数量相当である。
【0085】
ここで、実際にDMA300により電気移動度Z1(U)で分級される各粒径に対応する帯電したエアロゾル粒子の分布関数を次のように定義する。粒径d1に対応した1価のエアロゾル粒子の分布関数としてC1(Z1(U))、粒径d2に対応した2価のエアロゾル粒子の分布関数としてC2(Z1(U))、粒径d3に対応した3価のエアロゾル粒子の分布関数としてC3(Z1(U))、粒径d4に対応した4価のエアロゾル粒子の分布関数としてC4(Z1(U))と定義する。なお、この分布関数はその数量を表すことになる。例えばC1(Z1(U))は電気移動度Z1(U)の1価の数量を表す。
【0086】
したがって、FCAE401、又は、CPC501により測定された測定結果は上記エアロゾル粒子の分布関数を用いると以下の数式(3)、数式(4)で表される。
【数3】
【0087】
ここで、MFCAE(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するFCAE401により測定された測定結果から得られる数量を表し、ηFCAE(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するFCAE401の検出効率を表し、pは荷電数(価数)を表している。なお、一般的にηFCAE(Z1(U))は1(具体的には、0.99999)である。また、他のηFCAE(Z1(2U))、ηFCAE(Z1(3U))、…、ηFCAE(Z1(pU))においてもその検出効率は1である。
【数4】
【0088】
ここで、Mcpc(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するCPC501により測定された測定結果から得られる数量を表し、ηcpc(Z1(pU))はZ1(pU)で分級されたエアロゾル粒子に対するCPC501の検出効率を表し、pは荷電数(価数)を表している。したがって、荷電数(価数)を表すpに対応して検出効率ηcpcが異なっていることを表している。なお、CPC501の校正値とはこの検出効率ηcpcを表している。
【0089】
なお、上記で図6を用いて説明したように、DMA300により電気移動度Z(U)〜Z(4U)でそれぞれ分級されたエアロゾル粒子には多価帯電したものも含まれているので、FCAE401又はCPC501の測定結果M1〜M4にも含まれることになる。
【0090】
そして、図9は、DMA300により電気移動度Z(U)〜Z(4U)でそれぞれ分級されたエアロゾル粒子を粒径及び荷電数(価数)に対応させて荷電確率分布図(図4)にプロットした図である。具体的には、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)の荷電確率は約30%であり、電気移動度Z1(3U)で分級される2価に帯電した粒径d5(□印)の荷電確率は約10%である。例えば、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)が無視できる程度に少ないとすると、d4より粒径が大きい電気移動度Z1(3U)で分級される2価に帯電した粒径d5(□印)や帯電価数の多い電気移動度Z1(2U)で分級される2価に帯電した粒径d4(△印)なども無視することができることになる。
【0091】
また、荷電確率を表す関数として、fp(Z1(nU))を定義する。異なる電気移動度Zで分級される荷電数(価数)に対応したエアロゾル粒子の分布関数の関係は、以下の数式(5)で表される。ここで、pは荷電数(価数)を表し、nUは印加する電圧を表している。例えば、平衡帯電状態での粒径d4において、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)の荷電確率関数をf1(Z1(4U))と表わし、4価に帯電した粒径d4の荷電確率関数はf4(Z1(4U))と表わす。ここで、電気移動度Z1(U)で分級される4価に帯電した粒径d4(●印)がこの荷電確率関数f4(Z1(4U))に該当している。また、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4の分布関数C1(Z1(4U))を荷電確率関数f1(Z1(4U))で除算することで、粒径d4の総粒子数を求めることができ、この総粒子数と粒径d4の4価となる荷電確率関数f4(Z1(4U))とを積算すれば、電気移動度Z1(U)で分級される4価に帯電した粒径d4の4価の粒子数C4(Z1(U))を求めることができる。
【数5】
【0092】
ここで、M2/M1やM3/M1が規定値(1%)より小さくなく、M4/M1が規定値より小さかった場合を当てはめてみると、電気移動度Z1(4U)で分級したエアロゾル粒子の測定結果M4は無視してもよい程に小さいので、C1(Z1(4U))=0となる。同様に、C4(Z1(U))=C2(Z1(2U))=0となる。
【0093】
電気移動度Z1(U)〜Z1(4U)で分級されたエアロゾル粒子をFCAE401で測定した結果から得られるMFCAE(Z1(U))〜MFCAE(Z1(4U))は、MFCAE(Z1(4U))=C1(Z1(4U))=0であることを踏まえ、数式(6)〜数式(8)と表すことができる。このように、電気移動度Z1(U)では1価から3価の帯電した粒子が分級され、電気移動度Z1(2U)及びZ1(3U)では1価の帯電した粒子が分級されたことになる。
【数6】
【数7】
【数8】
【0094】
また、上記数式(5)、数式(6)、数式(7)、数式(8)により、以下の数式(9)を導くことができる。
【数9】
【0095】
電気移動度Z1(2U)及びZ1(3U)では1価のみを分級したことになるので、FCAE401の測定からMFCAE(Z1(2U))及びMFCAE(Z1(3U))を求めることができる。そして、数式(7)よりC1(Z1(2U))を求め、上記数式(5)からC2(Z1(U))を求めることができる。また、数式(8)によりC1(Z1(3U))を求め、上記数式(5)からC3(Z1(U))を求めることができる。よって、電気移動度Z1(U)で分級した2価・3価の粒子数が求まるので、測定結果MFCAE(Z1(U))を用いて1価の粒子数ηFCAE(Z1(U))・C1(Z1(U))を求めることができる。
【0096】
また、同様の計算方法により、CPC501に対して以下の数式(10)を導くことができる。
【数10】
【0097】
以上のように、M4/M1が1%より小さかった場合、DMA300により電気移動度Z1(U)で分級したエアロゾル粒子数を測定することができる。FCAE401又はCPC501で所定の電気移動度Zで分級したエアロゾル粒子を測定し、その測定結果MFCAE、MCPCと、荷電確率関数からなる荷電確率比にもとづいてエアロゾル粒子の粒子数を計数することができる。
【0098】
なお、大気中のエアロゾル粒子の粒度分布については、粒径別の密度はJunge分布に従っており、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいて、数が極少ないこと、及び、エアロゾル粒子の荷電確率分布に基づくことで、4価から6価の測定でほとんどよいことが表されている。
【0099】
今回の算出処理ステップS900においてM1、M2、M3、M4の測定結果から、粒径毎のエアロゾル粒子の粒子数が計数されると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS1000を実行する。
【0100】
ステップS1000:粒径別粒度分布測定装置1は、他の粒径のエアロゾル粒子を測定するか否かを確認する。この確認の結果、他の粒径のエアロゾル粒子を測定する場合(Yes)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS100を実行する。一方、他の粒径のエアロゾル粒子を測定しない場合(No)、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定を終了する。
【0101】
次に、DMA300においてエアロゾル粒子の分級に関する電気移動度Zについて説明する。電気移動度Zは、DMA300の構造(内部電極径r1、外部電極径r2、分級までの距離L)、DMA300の作動に関する設定事項からも導くことができ、試料ガスの流入量q2と分級用排出口350からの排出量q3、及びシースガスの流入量q1と排出口360からの排出量q4が夫々等しい場合(q1=q4、q2=q3)、上記の数式(2)で表される。
【0102】
〔トランスファ関数Ω〕
また、実際にエアロゾル粒子がDMA300で分級される確率、すなわち、トランスファ関数Ω(Z)は図13のように表される。
図13に示すように、電気移動度を利用してエアロゾル粒子を分級する場合、実際に分級されるエアロゾル粒子の濃度は以下の数式(11)で表されるZuからZdまでの積分値となる。なお、上記数式(2)のZ1(U)をZc(U)に置き換えて説明する。
【数11】
ここで、数式(2)よりΔφ=L・U/ln(r2/r1)を表している。
【0103】
したがって、分級されるエアロゾル粒子の電気移動度Zはシースガスq1と試料ガスq2との関係に依存することとなる。
【0104】
また、トランスファ関数Ω(Zc)についての半値全幅(FWHM)における関係式は以下の数式(12)で表される。
【数12】
【0105】
ここで、シースガスq1と試料ガスq2との流量比δをδ=q2/q1とすると、電気移動度Zd、Zuの関係式が以下の数式(13)で表される。
【数13】
【0106】
したがって、エアロゾル粒子を電気移動度Zcで分級すると、Zd〜Zuの幅を有した状態でDMA300から分級されることを表している。すなわち、Zd〜Zuの幅が狭ければ狭いほど電気移動度Zcで分級される対象とする粒径のエアロゾル粒子を精度よく識別することができることを表している。
【0107】
次に、エアロゾル粒子の分級についての電気移動度が重なる場合について説明する。例えば、上記で説明したようにZ(U)については、Zd(U)<Zc(U)<Zu(U)の関係を有している。したがって、Z(2U)やZ(3U)についても同様に、Zd(2U)<Zc(2U)<Zu(2U)の関係や、Zd(3U)<Zc(3U)<Zu(3U)の関係を有していることを表している。
【0108】
ここで、DMA300に電圧VとしてU、2U、3Uを印加し、電気移動度Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)でエアロゾル粒子を分級した場合について説明する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合に、電気移動度Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)がそれぞれ干渉しない設定について説明する。
【0109】
図14は、電気移動度の幅(±δ)を有した状態で測定される電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
図14に示すように、上記で説明したように、電気移動度Zc(U),Zc(2U),Zc(3U)に対応して分級されるエアロゾル粒子が図14中にプロットされる。ここで、図14中の2価に対応する曲線上に星印(☆)がプロットされているように、電気移動度の幅(±δ)が広い場合、2価に帯電した粒径d3のエアロゾル粒子が分級されてしまうことがある。このことは、上記数式(1)と数式(2)に基づくと、DMA300に電圧(3/2)Uを印加し、それによってエアロゾル粒子を電気移動度Zc((3/2)U)で分級したときのエアロゾル粒子が混入することを意味する。
【0110】
したがって、電気移動度Zc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないが、Zc(U)又はZc(2U)で測定する際に、電気移動度Zc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子(図14中の☆)が混入されることを防ぐ必要がある。
【0111】
〔最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ω〕
図15は、最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
図15は、電気移動度Zc(U)で帯電価数が3価まで測定する場合に必要となるトランスファ関数Ωを示している。それぞれの電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)は±δの幅を有している。したがって、それぞれの電気移動度の幅が重ならない(干渉しない)ことが、測定対象のエアロゾル粒子を正確に分級することを意味し、粒径毎のエアロゾル粒子の粒径数を精度よく算出することとなる。
【0112】
例えば、電気移動度Zc(U)の幅とZc((3/2)U)の幅とが重ならなくするためには、Zu(U)>Zd((3/2)U)の関係を満たす必要がある。ここで、数式(2)により、Zc((3/2)U)=(2/3)Zc(U)で表され、数式(13)によりZd(U)やZu(U)が流量比δとZc(U)とからなる数式で表されることから、(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要があることがわかる。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0113】
同様に、電気移動度Zc((3/2)U)の幅とZc(2U)の幅とが重ならなくするためには、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)の関係を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0114】
同様に、電気移動度Zc(2U)の幅とZc(3U)の幅とが重ならなくするためには、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)の関係を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0115】
以上のように、電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)の幅がそれぞれ重ならないためには、流量比がδ<1/5、δ<1/7、δ<1/5をそれぞれ満たす必要がある。したがって、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合、流量比δ<1/7を満たす設定を行うことで、全ての電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)の幅がそれぞれ重ならない設定にでき、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。すなわち、分級されたエアロゾル粒子から必要な測定値が独立して得られることになり、粒径毎のエアロゾル粒子の粒子数の算出の精度をさらによくすることが可能になる。
【0116】
上記においては、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合の電気移動度が重ならない設定について説明した。次に、測定対象とする帯電価数を4価までとした場合、すなわち、電気移動度をZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)でエアロゾル粒子を分級する場合について、電気移動度が重ならない設定について説明する。
【0117】
図14中の2価及び3価に対応する曲線上のそれぞれの星印(☆、★)のプロットに示すように、電気移動度の幅が広い場合、2価に帯電した粒径d3のエアロゾル粒子に加えて、3価に帯電した粒径d4のエアロゾル粒子が分級されてしまうことがありうる。すなわち、上記数式(1)と数式(2)に基づくと、DMA300に電圧(3/2)Uや(4/3)Uを印加し、エアロゾル粒子を電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級したしたときのエアロゾル粒子が混入することを意味する。
【0118】
したがって、電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないが、Zc(U)又はZc(2U)で測定する際に、電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級するエアロゾル粒子(図14中の☆、★)が混入されることを防ぐ必要がある。
【0119】
〔最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ω〕
図16は、最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
図16は、電気移動度Zc(U)で帯電価数が4価まで測定する場合に必要となるトランスファ関数Ωを示している。それぞれの電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)は±δの幅を有している。したがって、それぞれの電気移動度の幅が重ならないことが、測定対象のエアロゾル粒子を正確に分級することを意味し、粒径毎のエアロゾル粒子の粒径数を精度よく算出することとなる。
【0120】
例えば、電気移動度Zc(U)の幅とZc((4/3)U)の幅とが重ならないためには、Zu(U)>Zd((4/3)U)の関係を満たす必要があることを表している。ここで、数式(2)により、Zc((4/3)U)=(3/4)Zc(U)で表され、数式(13)によりZd(U)やZu(U)が流量比δとZc(U)とからなる数式で表されることから、(1−δ)Zc(U)>(3/4)(1+δ)Zc(U)を満たす必要があることを表している。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0121】
同様に、電気移動度Zc((4/3)U)の幅とZc((3/2)U)の幅とが重ならないためには、(3/4)(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/17を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0122】
同様に、電気移動度Zc((3/2)U)の幅とZc(2U)の幅とが重ならないためには、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0123】
同様に、電気移動度Zc(2U)の幅とZc(3U)の幅とが重ならないためには、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0124】
同様に、電気移動度Zc(3U)の幅とZc(4U)の幅とが重ならないためには、(1/3)(1−δ)Zc(U)>(1/4)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0125】
以上のように、電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)がそれぞれ重ならないためには、流量比がδ<1/7、δ<1/17、δ<1/7、δ<1/5、δ<1/7をそれぞれ満たす必要がある。ここで、電気移動度Zc((4/3)U)やZc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないため、それらの電気移動度が重なっていてもよい、すなわち、流量比がδ<1/17である必要はない。したがって、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を4価までとした場合、流量比δ<1/7を満たす設定を行うことで、電気移動度Zc((4/3)U)とZc((3/2)U)の重なりを除く全ての電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)を重ならない設定にでき、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。
【0126】
上記においては、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価や4価までとした場合の電気移動度が重ならない設定について説明したが、これらに限定されずさらに多価の5価や6価までとした場合についても同様に流量比δを設定することで、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。
【0127】
〔分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係〕
図17は、分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係を説明する図である(流量比=試料ガスq2/シースガスq1)。
図17に示すように、測定対象とするエアロゾル粒子の帯電価数と、DMA300に流入させるシースガスq1とエアロゾル粒子を含む試料ガスq2との設定流量比δ=q1/q2との関係が表にされている。具体的には、測定対象とする帯電価数を2価とすると、DMA300において流量比δ<1/3を満たす設定をする必要があるということを表している。他にも、測定対象とする帯電価数を5価とすると、DMA300において流量比δ<1/11を満たす設定をする必要があるということを表し、測定対象とする帯電価数を6価とすると、DMA300において流量比δ<1/11を満たす設定をする必要があるということを表している。なお、測定対象とする帯電価数を6価までに限らず、流量比を算出することができる。また、帯電価数が4価までは、電気移動度Zc((4/3)U)やZc((3/2)U)のように、電気移動度Zc(U)とZc(2U)の間となったが、帯電価数が5価以上では、電気移動度Zc((5/2)U)のように電気移動度Zc(2U)とZc(3U)の間となり、電気移動度Zc(U)とZc(2U)間とは限らない。
【0128】
以下、上記流量比を決定する方法を、手順例に沿って内容を説明する。
図18は、流量比決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【0129】
ステップS2000:粒径別粒度分布測定装置1は、帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2010を実行する。
【0130】
ステップS2010:粒径別粒度分布測定装置1は、基準とする電気移動度Zc(U)を定義する。具体的には、数式(11)中のZcが該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2020を実行する。
【0131】
ステップS2020:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)、…、Zc(xU)を導出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)が該当し、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2030を実行する。
【0132】
ステップS2030:粒径別粒度分布測定装置1は、第2特別電気移動度群
Zc(x/(x−1))(U)、Zc(x/(x−2))(U)、…、Zc(x/2)(U)、Zc((x−1)/(x−2))(U)、Zc((x−1)/(x−3))(U)、…、Zc((x−1)/2)(U)、Zc((x−2)/(x−3))(U)、Zc((x−2)/(x−4))(U)、…、Zc((x−2)/2)(U)、…、Zc(3/2)(U)を導出する。具体的には、xが3の場合、第2特別電気移動度群としてZc((3/2)U)が該当し、xが4の場合、第2特別電気移動度群としてZc((4/3)U)、Zc((3/2)U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2040を実行する。
【0133】
ステップS2040:粒径別粒度分布測定装置1は、上記第1特別電気移動度群をZc(U)で表す。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、(1/2)Zc(U)、(1/3)Zc(U)が該当し、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、(1/2)Zc(U)、(1/3)Zc(U)、(1/4)Zc(U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2050を実行する。
【0134】
ステップS2050:粒径別粒度分布測定装置1は、上記第2特別電気移動度群をZc(U)で表す。具体的には、xが3の場合、第2特別電気移動度群として(2/3)Zc(U)、が該当し、xが4の場合、第2特別電気移動度群として(3/4)Zc(U)、(2/3)Zc(U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2060を実行する。
【0135】
ステップS2060:粒径別粒度分布測定装置1は、先のステップS2040とステップS2050において表された各電気移動度の幅±δを定義する。具体的には、各電器移動度について数式(13)で表す。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2070を実行する。
【0136】
ステップS2070:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群の各電気移動度の領域がお互いに干渉しないδを算出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅と、(1/3)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)と、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/3と、δ<1/5が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/5が算出される。
【0137】
また、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅と、(1/3)Zc(U)の幅と、(1/4)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)と、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)と、(1/3)(1−δ)Zc(U)>(1/4)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/3と、δ<1/5と、δ<1/7が導かれ、3つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0138】
粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2080を実行する。
【0139】
ステップS2080:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群の電気移動度の領域と、第2特別電気移動度群の電気移動度の領域とが干渉しないδを算出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(2/3)Zc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)と、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/5と、δ<1/7が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0140】
また、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の領域と(3/4)Zc(U)の幅とが干渉しないδ、及び、(2/3)Zc(U)の幅と(1/2)Zc(U)の幅とが干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(3/4)(1+δ)Zc(U)と、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/7と、δ<1/7が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0141】
なお、粒径別粒度分布測定装置1は、先のステップS2070及びステップS2080で算出されたδに基づいて、隣り合う電気移動度の幅がお互い干渉しないδとして最終的なδを算出することとなる。具体的には、xが3の場合、先のステップS2070における算出結果のδ<1/5と先のステップS2080の算出結果のδ<1/7に基づいて、2つの結果を満たすものとして最終的にδ<1/7を算出する。また、xが4の場合、先のステップS2070における算出結果のδ<1/7と先のステップS2080の算出結果のδ<1/7に基づいて、2つの結果を満たすものとして最終的にδ<1/7を算出する。
【0142】
したがって、測定対象とするエアロゾル粒子の帯電価数に対応して、上記で算出した最終的な流量比の条件を満たすように、DMA300におけるシースガスの流量と試料ガスの流量と調整することで、所定の電気移動度Zで測定対象とするエアロゾル粒子が精度よく分級されるため、粒径別のエアロゾル粒子の粒子数をさらに精度よく計数することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 粒径別粒度分布測定装置
100 エアロゾル粒子収集装置
200 荷電中和装置
300 微分型電気移動度分級装置(DMA)
400 エアロゾル粒子測定装置
401 ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)
501 凝縮式粒子カウンタ(CPC)
600 測定結果解析装置
700 計数結果出力装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のエアロゾル粒子の粒度分布を測定する装置及び方法に係り、特に、試料ガスとシースガスとの流量比を適切に設定して測定を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気中には微小な液体又は固体の粒子である「エアロゾル粒子」が浮遊している。ISO15900:2009では、これらエアロゾル粒子として1nmから1μmの粒径を対象としている。また、数nmから1μmの粒径を有するエアロゾル粒子の計数は、エアロゾル粒子測定装置を用いて行われる。エアロゾル粒子測定装置は、例えば、微分型電気移動度分級装置(Differential Mobility Analyzer:DMA)と凝縮式粒子カウンタ(Condensation Particle Counter:CPC)、又はDMAとファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(Faraday Cup Aerosol Electrometer:FCAE)とを含む。そして、DMAで分級したエアロゾル粒子をCPC又はFCAEで測定することにより、その結果を用いてエアロゾル粒子を粒径別に計数することができる。
【0003】
DMAを用いて分級した場合、1価に帯電した粒径の比較的小さなエアロゾル粒子に加えて、多価(2価、3価、・・・)に帯電した粒径の比較的大きなエアロゾル粒子が含まれている。このため、測定にあたっては、DMAにより分級されたエアロゾル粒子は1価に帯電していると仮定すると共に、粒径と数量との関係について、そこに対数正規分布が成り立つものと仮定し、その計数結果に対して、多価帯電したエアロゾル粒子分を補正して粒度分布を算出している。補正には、帯電価数の存在確率としてWiedensohlerの近似式等を適用している。この他にも、DMAにより分級する電気移動度の幅を粒径の幅に変換し、その粒径範囲内の粒子数を、測定における平均帯電率や平均価数等の補正係数に基づいて算出する手法が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4710787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、DMAを用いる場合、1つの粒径に対して多価帯電粒子が存在し、同じ電気移動度で分級すると多価帯電した粒径の異なる粒子が存在していた。また、電気移動度による分級のばらつきは、DMA内においてエアロゾル粒子とシースガスの流量に影響することが知られている。これを利用して、エアロゾル粒子を含んだ試料ガスと清浄空気からなるシースガスとの流量比を帯電価数に関わらずに経験的に規定し、それに基づいてDMAを作動していた。
【0006】
そこで本発明は、帯電価数に対応させた流量比を設定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段1:本発明の流量比決定方法は、帯電したエアロゾル粒子を含む試料流体(試料ガス)と清浄な空気からなる清浄流体(シースガス)とを、所定の電界中において電気移動度に基づいて前記帯電したエアロゾル粒子を分級する電気移動度分級工程に流動する際に、前記試料流体の流量から前記清浄流体の流量を除算した流量比を算出する流量比決定方法であって、前記流量比決定方法は、前記帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する最大帯電数決定工程と、前記測定対象とする帯電数が1価の前記エアロゾル粒子の前記電界中での移動のしやすさである電気移動度を、前記電界を形成するために印加される電圧値Uで表しZc(U)と定義する基準電気移動度定義工程と、前記最大帯電数決定行程により決定されたxに基づいて、電気移動度Zc(U)と前記電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、前記電圧値Uをx/(x−1)、x/(x−2)、…、x/2、(x−1)/(x−2)、(x−1)/(x−3)、…、(x−1)/2、(x−2)/(x−3)、(x−2)/(x−4)、…、(x−2)/2、…、3/2の規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出す特別電気移動度群導出工程と、前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度について、前記基準電気移動度定義工程により定義されたZc(U)を用いて各電気移動度を表す変換工程と、前記流量比を調整することで所定の電気移動度が変動し得る領域をその電気移動度に対応する領域と定義した場合、前記変換工程後であって前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度に対応した領域をそれぞれ定義する領域定義工程と、前記領域定義行程により定義された前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と前記第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない前記流量比を算出する最終算出工程とを含むことを特徴とする流量比決定方法である。
【0008】
本発明の流量比決定方法によれば、1価に限らず多価に帯電したエアロゾル粒子を測定する場合では、測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を決定することで、試料ガスとシースガスの流量比が決定されて、測定に適した流量比を微分型電気移動度分級装置(DMA)に設定することで、分級されたエアロゾル粒子の粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段2:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和工程と、解決手段1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和工程により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動工程と、前記流動工程により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級工程と、前記電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定工程と、前記エアロゾル粒子測定工程により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級工程による分級と、前記エアロゾル粒子測定工程による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和工程における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出工程とを含み、前記電気移動度分級工程は、前記確認工程による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定工程と、前記基準電圧設定工程により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行工程と、前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定工程と、前記電圧再設定工程により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行工程と、を含み、前記エアロゾル粒子測定工程は、前記基準電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定工程と、前記電気移動度再分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定工程により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定工程と、を含み、前記確認工程は、前記基準エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定工程により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0010】
本発明の粒径別粒度分布測定方法によれば、DMAに試料ガスとシースガスを流動する際に帯電価数xに対応した流量比を設定している。微分型電気移動度分級装置(DMA)において基準電圧値Uで分級したものをM1として測定し、次に、帯電価数xに対応して設定される電圧値(2U、・・、xU)で分級したものをMx(M2、・・、Mx)として測定している。そして、Mx/M1が規定値未満を満たす条件であれば、そのMxに対応する多価に帯電したエアロゾル粒子の粒径の粒度分布が算出されることとなる。その算出結果と平衡帯電状態でのエアロゾル粒子の荷電確率に基づき、他の粒径についても順次に粒度分布が算出されることとなる。したがって、1価に限らず多価に帯電したエアロゾル粒子を測定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0011】
解決手段3:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0012】
解決手段4:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0013】
解決手段5:本発明の粒径別粒度分布測定方法は、解決手段2において、前記流動工程は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法である。
【0014】
解決手段3乃至5においては、測定対象とする帯電価数に対応した流量比で試料ガスとシースガスを微分型電気移動度分級装置(DMA)に流動するので、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
解決手段6:本発明の粒径別粒度分布装置は、前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和手段と、解決手段1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和手段により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動手段と、前記流動手段により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級手段と、前記電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定手段と、前記エアロゾル粒子測定手段により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級手段による分級と、前記エアロゾル粒子測定手段による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和手段における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出手段とを備え、前記電気移動度分級手段は、前記確認手段による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定手段と、前記基準電圧設定手段により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行手段と、前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定手段と、前記電圧再設定手段により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行手段と、を備え、前記エアロゾル粒子測定手段は、前記基準電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定手段と、前記電気移動度再分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定手段により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定手段と、を備え、前記確認手段は、前記基準エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定手段により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0016】
本発明の粒径別粒度分布測定装置によるエアロゾル粒子の測定は、上記解決手段2と同様の特徴を有している。
【0017】
解決手段7:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0018】
解決手段8:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0019】
解決手段9:本発明の粒径別粒度分布測定装置は、解決手段6において、前記流動手段は、解決手段1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置である。
【0020】
解決手段7乃至9においては、測定対象とする帯電価数に対応した流量比で試料ガスとシースガスを微分型電気移動度分級装置(DMA)に流動するので、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のエアロゾル粒子を測定する際の試料ガスとシースガスの流量比の算出方法、及び、その算出方法に基づいて作動するエアロゾル粒子の粒径別粒度分布測定装置及び粒径別粒度分布測定方法によれば、帯電価数に対応させた流量比を設定することで、粒径に対する粒度分布を精度よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】粒径別粒度分布測定装置の構成について説明する図である。
【図2】大気中におけるエアロゾル粒子密度分布(Junge分布)を説明する図である。
【図3】荷電中和装置について説明する図である。
【図4】荷電確率分布について説明する図である。
【図5】微分型電気移動度分級装置(DMA)について説明する図である。
【図6】電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
【図7】ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)について説明する図である。
【図8】凝縮式粒子カウンタ(CPC)について説明する図である。
【図9】エアロゾル粒子の粒径及び荷電数(価数)に対応した測定結果M1〜M4をプロットした荷電確率分布について説明する図である。
【図10】大気中のエアロゾル粒子の測定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図11】微分型電気移動度分級装置に関する初期設定処理の手順例を示すフローチャートである。
【図12】微分型電気移動度分級装置に関する設定変更処理の手順例を示すフローチャートである。
【図13】電気移動度Zにより分級される確率を表すトランスファ関数Ω(Z)を説明する図である。
【図14】電気移動度と分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
【図15】最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
【図16】最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
【図17】分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係を説明する図である。
【図18】流量比決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1に示すように、粒径別粒度分布測定装置1は、エアロゾル粒子収集装置(又はエアロゾル粒子発生装置)100、荷電中和装置200、微分型電気移動度分級装置(以下、DMAとする)300、エアロゾル粒子測定装置400、測定結果解析装置600、及び計数結果出力装置700から構成されている。
【0025】
エアロゾル粒子収集装置100は、大気中に浮遊している粉塵や液滴(液体粒子)等のエアロゾル粒子を収集する。エアロゾル粒子収集装置100は、具体的には、粒径が1nm〜1μm程度のエアロゾル粒子を収集(捕集)する集塵器を含む。
【0026】
収集装置とは別の形態であるエアロゾル粒子発生装置100は、燃焼プロセスを利用してスス(炭化物質)を発生させるスス発生器、溶媒中から液滴を発生させるエアロゾル粒子発生器等を含む。
【0027】
なお、収集又は発生される大気中に浮遊している粉塵や液滴(液体粒子)に関する粒子密度分布(単位体積あたりの濃度分布)の詳細については、別の図を参照しながら後述する。
エアロゾル粒子収集装置100により収集された(又はエアロゾル粒子発生装置100により発生された)エアロゾル粒子は、次に荷電中和装置200に送られる。
荷電中和装置200は、エアロゾル収集装置100により収集されたエアロゾル粒子を平均帯電量がゼロになる(平衡帯電状態)ように帯電させる装置である。なお、荷電中和装置200により帯電されるエアロゾル粒子についての具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0028】
荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子(帯電されなかったものも含む)は、次に微分型電気移動度分級装置300に送られる。
【0029】
DMA300は、荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子を電気移動度に対応させて分級する。DMA300の作動に関する設定(例えば、印加電圧)を調整することで、分級対象とするエアロゾル粒子に応じた電気移動度を設定することができる。なお、DMA300により分級されるエアロゾル粒子についての具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0030】
DMA300により分級されたエアロゾル粒子は、次にエアロゾル粒子測定装置400に送られる。なお、DMA300により分級されなかったエアロゾル粒子については、粒径測定装置1の外に排気される。
【0031】
エアロゾル粒子測定装置400は、DMA300により分級されたエアロゾル粒子の粒子数を測定する。測定装置400は、ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(以下、FCAEとする)401及び凝縮式粒子カウンタ(以下、CPCとする)501の少なくとも1つを含む。FCAE401は、DMA300により分級された帯電状態にあるエアロゾル粒子を捕集し、捕集した粒子の荷電数に応じた電流値を測定する。また、CPC501は、DMA300により分級されたエアロゾル粒子を凝縮核としてアルコールや水を凝縮させて大きな液滴に成長させ、その大きくなった液滴を光学的に検出して粒子数を測定する。なお、FCAE401やCPC501により測定されるエアロゾル粒子に関する具体的な内容については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0032】
エアロゾル粒子測定装置400による測定結果は、測定結果解析装置600に送信される。
【0033】
測定結果解析装置600は、FCAE401又はCPC501により測定されたデータに基づいてエアロゾル粒子の粒子数を粒径別に計数する。なお、具体的な計数方法については、別の図を参照しながらさらに後述する。測定結果解析装置600により計数されたエアロゾル粒子数の情報は、計数結果出力装置700に送信される。
【0034】
計数結果出力装置700は、測定結果解析装置600により計数されたエアロゾル粒子数について、粒径別にその粒子数を表示する。
【0035】
〔大気中のエアロゾル粒子〕
次に、エアロゾル粒子収集装置100により収集される大気中のエアロゾル粒子について説明する。
図2は、大気中におけるエアロゾル粒子密度分布(Junge分布(1952))を説明する図である(Reference:H Israel Atmospheric Electrisity, Volume 1, pp.153、1970)。
【0036】
図2に示すように、大気中のエアロゾル粒子については、粒径に対応してその粒子密度分布が異なっており、具体的には、粒径別の密度はJunge分布に従っている。Junge分布によると、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいており、エアロゾル粒子はその粒径が大きくなるほど、大気中に浮遊しなくなることが示されている。例えば、100nmより小さなエアロゾル粒子については1立方cmあたりに数万個浮遊しているのに対し、100nmより大きなエアロゾル粒子は1立方cmあたりに数個しか浮遊していない。すなわち、Junge分布は、粒径が100nm(図2では半径50nm)のエアロゾル粒子数に対して、200nm(図2では半径100nm)のエアロゾル粒子数は約10分の1個であり、300nm(図2では半径150nm)のエアロゾル粒子数は約30分の1であり、それより大きなエアロゾル粒子数についても逆3乗則に基づき非常に少ないことを表している。
【0037】
したがって、エアロゾル粒子収集装置100により収集される大気中のエアロゾル粒子は、図2に示すJunge分布に基づくと、ほとんどが100nm以下のエアロゾル粒子であり、100nm以上のエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいて、数が極少ないことが分かる。さらに、200nm以上のエアロゾル粒子や300nm以上のエアロゾル粒子については、ほとんど大気中に浮遊していないため、エアロゾル粒子収集装置100にもほとんど収集されることがない。これらのことは、エアロゾル粒子発生装置100で発生されたエアロゾル粒子についても該当する。
【0038】
〔荷電中和装置〕
次に、収集又は発生されたエアロゾル粒子が荷電中和装置200により帯電されることについて説明する。
【0039】
図3は、荷電中和装置について説明する図である。
図3に示すように、荷電中和装置200は、容器210に設けられた流入口220からエアロゾル粒子を流入させる。容器210は、例えば、SUS容器から構成される。また、容器210内には、例えば一対をなす多孔板230,250が設けられており、これら多孔板230,250の間の領域に放射線源240が設置されている。放射線源240としては、241AM、85Kr、210Po等が用いられる。放射線源240が設置されることで、多孔板230,250間の領域内には、平衡帯電状態が保たれ、エアロゾル粒子が通過することで、帯電することとなる。次に、その粒径毎に異なるエアロゾル粒子の荷電確率について説明する。
【0040】
〔荷電確率分布〕
図4は、荷電確率分布について説明する図である(ISO15900:2009)。
図4は、エアロゾル粒子が、平衡帯電状態における、ゼロ価から±5価までの荷電確率を表している。エアロゾル粒子は、その粒径が小さいものほど帯電しにくく、逆に粒径が大きいものほど帯電しやすく、さらに多価にも帯電しやすい。
【0041】
例えば、粒径が1nmのエアロゾル粒子は、その約98%が帯電せず、それ以外の約1%ずつが−1価又は+1価に帯電する。他にも、粒径が10nmまでのエアロゾル粒子については、約90%以上が帯電しない。
【0042】
例えば、粒径100nmのエアロゾル粒子は、約40%が帯電せず、約30%が−1価に帯電し、約20%が+1価に帯電し、約6%が−2価に帯電し、約3%が+2価に帯電する。また、粒径200nmのエアロゾル粒子は、約30%が帯電せず、約30%が−1価に帯電し、約20%が+1価に帯電し、約12%が−2価に帯電し、約8%が+2価に帯電し、約3%が−3価に帯電し、約2%が+3価に帯電する。また、粒径300nmのエアロゾル粒子は、約20%が帯電せず、約20%が−1価に帯電し、約15%が+1価に帯電し、約15%が−2価に帯電し、約9%が+2価に帯電し、約7%が−3価に帯電し、約3%が+3価に帯電し、約2%が−4価に帯電する。
【0043】
次に、荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子がDMA300により分級されることについて説明する。
【0044】
〔微分型電気移動度分級装置(DMA)300〕
図5に示すように、DMA300は、内筒と外筒からなる二重円筒状の構造を有する。荷電中和装置200により帯電されたエアロゾル粒子を含む大気(試料ガスG1)は、清浄空気(シースガスG2)と共に流される。なお、エアロゾル粒子と合流する前の位置にフィルター320が設けられており、シースガスG2の不純物はフィルター320で取り除かれる。
【0045】
DMA300の外筒は外側電極330として用いられ、DMA300の内筒は内側電極340として用いられる。外側電極330はDMA300の中心線から距離r2を置いて設置され、内側電極340はDMA300の中心線から距離r1を置いて設置される。これら外側電極330と内側電極340との間には電圧Vが印加される。したがって、流入口310から流入したエアロゾル粒子を含む試料ガスG1は電圧Vが印加された電界中をシースガスG2と共に流されることとなる。
【0046】
シースガス中を移動するエアロゾル粒子には、静電気力と抵抗力とが働いている。また、静電引力を受けて流体中を移動する粒子については、定常状態で静電気力と抵抗力とがつりあうため、電気移動度をZとすると、その粒子の等速vは電場Eに比例してv=ZEの関係が成り立つ。
ここで、電気移動度Zは以下の数式(1)で表される。
【数1】
この電気移動度Zを表す数式(1)において、pはエアロゾル粒子の帯電価数、eは電荷素量、μgはガス粘性計数(ガス粒度)、dはエアロゾル粒子の粒径、lgは平均自由工程を表している。
【0047】
したがって、DMA300の流入口310から流入した帯電しているエアロゾル粒子は、電気移動度Zに基づいて、図5に示すような軌跡に沿って移動することとなる。具体的には、帯電価数が1価の粒径が小さいエアロゾル粒子と共に、帯電価数が2価・3価の粒径が大きいエアロゾル粒子も分級用排出口350に到達することになる(EG1)。このようにDMA300は、所定の電気移動度毎にエアロゾル粒子を分級することができるが、1価に帯電した粒子に限らず、多価帯電した粒子も分級することになる。なお、分級されなかったエアロゾル粒子は排出口360から排出される(EG2)。
【0048】
また、電気移動度Zは、DMA300の構造(内部電極径r1、外部電極径r2、分級までの距離L)、DMA300の作動に関する設定事項からも導くことができ、試料ガスの流入量q2と分級用排出口350からの排出量q3、及びシースガスの流入量q1と排出口360からの排出量q4が夫々等しい場合(q1=q4、q2=q3)、以下の数式(2)で表される。
【数2】
この電気移動度Zを表す数式(2)において、Uは印加する電圧を表している。
【0049】
したがって、電気移動度Zは、シースガスの流量q1を一定とすると、印加する電圧Uにより調整することができる。なお、試料ガスの流量q2÷シースガスq1の流量を流量比と称する。
【0050】
〔電気移動度に対応するエアロゾル粒子〕
図6は、電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
図6は、DMA300を作動させた際の、それぞれ電気移動度Zを表す数式(1)と数式(2)とから求められた粒径に対する電気移動度の一例を示している。ここでは、帯電価数が4価までを示しているが、粒度分布をみる上では4価程度まで考慮すればほとんど問題ない。
【0051】
例えば、DMA300に電圧Uを印加した際の電気移動度Z(U)により分級されるエアロゾル粒子は、図6中に記された4つの黒い点印(●)で表される。帯電価数が1価で粒径がd1のエアロゾル粒子と共に、帯電価数が2価で粒径がd2のエアロゾル粒子、価数が3価で粒径がd3のエアロゾル粒子、価数が4価で粒径がd4のエアロゾル粒子である。ここでは、粒径d1は約60nmであり、粒径d2は約90nmであり、粒径d3は約115nmであり、粒径d4は約135nmである。
【0052】
次に、電気移動度Z(U)で分級される帯電価数が2価で粒径がd2のエアロゾル粒子を分級するために、上記電気移動度Z(U)の時の2倍の電圧2UをDMA300に印加した際の電気移動度はZ(2U)とする。その際にDMA300により分級されるエアロゾル粒子は、図6中に記された4つの三角印(△)で表わされる。帯電価数が1価で粒径がd2のエアロゾル粒子、帯電価数が2価で粒径がd4のエアロゾル粒子、帯電価数が3価で粒径がd5のエアロゾル粒子、帯電価数が4価で粒径がd6のエアロゾル粒子である。帯電価数が2価のエアロゾル粒子について、電気移動度Z(U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径のものが分級される。なお、他の粒径d5は約180nmであり、粒径d6は約210nmである。
【0053】
以下同様に、上記電気移動度Z(U)の時の3倍の電圧3UをDMA300に印加した際の電気移動度Z(3U)については、図6中に記された4つの四角印(□)となり、電気移動度Z(U)で分級される価数が3価のエアロゾル粒子と同じ粒径d3のものが分級され、電気移動度Z(2U)で分級される価数が3価のエアロゾル粒子と同じ粒径d5のものが分級される。また、上記電気移動度Z(U)の時の4倍の電圧4UをDMA300に印加した際の電気移動度Z(4U)にいては、図6中に記された4つの白色丸印(○)となり、電気移動度Z(U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d4のものが分級され、電気移動度Z(2U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d6のものが分級され、電気移動度Z(3U)で分級される価数が4価のエアロゾル粒子と同じ粒径d8のものが分級される。なお、粒径d7は約240nm、粒径d8は約290nm、粒径d9は約340nmである。
【0054】
電気移動度Zに基づいてDMA300により分級されたエアロゾル粒子は次にエアロゾル粒子測定装置400に送られエアロゾル粒子の粒子数に関する数値が測定されることとなる。以下では先ず、FCAE401について説明し、次にCPC501について説明する。
【0055】
〔ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)〕
図7は、ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)について説明する図である。
図7に示すように、FCAE401は、容器410に設けられた流入口420からDMA300により分級されたエアロゾル粒子を流入する。容器410内には、導電性部材430が設置されており、その導電性部材430内に絶縁材440が設置されている。また絶縁材440内にはエアロゾル粒子収集部450が設置されており、この収集部450は、帯電したエアロゾル粒子を収集(捕集)する導電性部材からなる。エアロゾル粒子収集部450と導電部材430とは絶縁材440により絶縁されている。また、導電性部材430とアース469とはリード線463により接続されており、そのリード線463上には電流計467が設置されている。また、エアロゾル粒子収集部450にはリード線461の一端が接続され、そのリード線461の他端はスイッチ465を介してアース469に接続されている。
【0056】
上記の構成により、FCAE401に帯電したエアロゾル粒子が流入すると、エアロゾル粒子収集部450に収集され、エアロゾル粒子収集部450には電荷が蓄積されることになる。そしてスイッチ465がONに設定(通電)することによって、エアロゾル粒子収集部450に蓄積された電荷がまとめて移行し、その総電化数に対応するものが電流計467によって測定することができる。なお、エアロゾル粒子の粒子数の算出については、別の図を参照しながらさらに後述する。
【0057】
〔凝縮式粒子カウンタ(CPC)〕
次に、CPC501について説明する。
図8は、凝縮式粒子カウンタ(CPC)について説明する図である。
図8に示すように、CPC501は、エアロゾル粒子を凝縮して大きく成長させるエアロゾル粒子凝縮部503と、その成長したエアロゾル粒子を光学系により検出するエアロゾル粒子光学検出部505とを含む。
【0058】
DMA300により分級されて送られたエアロゾル粒子は、エアロゾル粒子凝縮部510の流入口から流入される。エアロゾル粒子凝縮部503は、飽和部520とコンデンサー部530から構成されている。飽和部520においては、アルコールや蒸留水が加熱され蒸気の状態で拡散している。また、コンデンサー部530においては、通過するガスが冷却されることとなる。したがって、エアロゾル粒子凝縮部503に流入してきたエアロゾル粒子は、飽和部520においてアルコール蒸気や水蒸気と合流し、コンデンサー部530に共に送られる。そして、コンデンサー部530において、エアロゾル粒子が凝縮核となり凝縮が起こり、アルコール蒸気や水蒸気により大きな液滴へと成長することとなる。エアロゾル粒子凝縮部503により大きな液滴となったエアロゾル粒子は、連絡通路540を通ってエアロゾル粒子光学検出部505に送られる。
【0059】
エアロゾル粒子光学検出部505は、フローセル550、遮光容器560、発光装置570、照射光学レンズ系575、集光光学レンズ系580及び受光装置585を含む。フローセル550は遮光容器560を貫通して設置されている。また、発光装置570、照射光学レンズ系575、集光光学レンズ系580及び受光装置585は、遮光容器560内に設置されており、遮光容器560は、その内部に外部からの光が入射しない構造を有している。
【0060】
フローセル550内を流動するエアロゾル粒子からの散乱光(反射光)が受光されると、エアロゾル粒子が検出される。
【0061】
DMA300により分級されたエアロゾル粒子は、FCAE401からは、所定時間あたりに分級されたエアロゾル粒子の荷電数の積算値が電流として出力される。また、CPC501からはエアロゾル粒子の個数に対応して出力される。出力される結果情報は、次に測定結果解析装置600に送信される。
【0062】
〔測定結果解析装置〕
次に、測定結果解析装置600において、FCAE401又はCPC501により測定されたデータに基づいて、粒径別のエアロゾル粒子の粒子数を計数する。測定結果解析装置600は、演算処理機能とメモリ機能を備え、メモリ機能には予め演算処理の処理内容が記録されており、演算処理機能が適宜その演算処理の処理内容を読みだすことで、FCAE401又はCPC501により測定されたデータから粒径別のエアロゾル粒子の粒子数を計数している。
【0063】
〔計数結果出力装置〕
計数結果出力装置700(不図示)は、エアロゾル粒子の粒径別に計数結果を表示する。例えば、表示装置710は、エアロゾル粒子の大きさの基準を示す「Size(nm)」の表示部と、各粒径に対応する計数したエアロゾル粒子の個数(計数値)を示す「Count」の表示部とする。「Size(nm)」の表示部には、基準とした粒径の値を表示する。そして、「Count」の表示部には、荷電確率分布から求めた総粒子数や基準とした粒径の帯電価数1価の数などを表示する。また、それらをグラフで表示してもよい。所望に合わせて表示すればよく、限定するものではない。
【0064】
なお、他にも、計数結果出力装置700は外部出力端子を備えてもよく、端子を通して別の装置にデータを出力してもよい。
【0065】
〔大気中のエアロゾル粒子の測定〕
大気中のエアロゾル粒子の測定にあたり、大気中のエアロゾル粒子の粒子密度を、図2を用いて説明したように、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則(Junge分布)に基づき大気中に浮遊しているものとする。
【0066】
図10は、大気中のエアロゾル粒子の測定手順を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って内容を説明する。
【0067】
ステップS100:先ず、粒径別粒度分布測定装置1は、微分型電気移動度分級装置(DMA)300に関する初期設定処理を実行する。なお、具体的な処理の内容については、別のフローチャートを参照しながらさらに後述する。
【0068】
〔DMAに関する初期設定処理〕
図11は、DMA300に関する初期設定処理の手順例を示すフローチャートである。
ステップS110:粒径別粒度分布測定装置1は、測定対象とする粒径(d1)の設定を行う。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300により分級するエアロゾル粒子の粒径(d1)を1価に帯電したものとして設定を行う。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS120を実行する。
【0069】
ステップS120:粒径別粒度分布測定装置1は、1価の対象粒径(d1)に関する電気移動度Zの計算を実行する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は上記で説明した数式(1)を用いて電気移動度Zの計算を実行する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS130を実行する。
【0070】
ステップS130:粒径別粒度分布測定装置1は、1価の対象粒径(d1)のエアロゾル粒子を分級するために必要なDMA300に印加する電圧Uの設定を行う。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS120で算出された電気移動度Zと上記で説明した数式(2)を用いてDMA300に印加する電圧Uを算出する。
【0071】
以上の手順を終えると、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定処理(図10)に復帰する。
【0072】
ステップS200:次に、粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300の作動処理を実行する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は、先の処理ステップS130で算出した電圧UをDMA300に印加し(印加電圧V=1U)、DMA300を作動させて電気移動度Z1(U)によりエアロゾル粒子を分級する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS300を実行する。
【0073】
ステップS300:粒径別粒度分布測定装置1は、FCAE401又はCPC501による測定(M1)を実行する。ここで、M1は電気移動度Z1(U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果を表している。FCAE401又はCPC501による電気移動度Z1(U)で分級されたエアロゾル粒子の測定が終了すると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS400を実行する。
【0074】
ステップS400:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300に関する設定変更処理を実行する。なお、具体的な処理の内容については、別のフローチャートを参照しながらさらに後述する。
【0075】
〔DMAに関する設定変更処理〕
図12は、DMA300に関する設定変更処理の手順例を示すフローチャートである。以下、手順例に沿って内容を説明する。
【0076】
ステップS410:粒径別粒度分布測定装置1は、設定変更回数を確認する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧Vを変更した回数を確認する。例えば、先の処理で設定した電圧Vが初期設定のUであった場合、設定変更回数は初回を表す1に対応する。他にも、先の処理で設定した電圧Vが2回目の2U(又は、3回目の3U)であった場合、設定変更回数は2回目(又は、3回目)を表す2(又は、3)となる。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS420を実行する。
【0077】
ステップS420:粒径別粒度分布測定装置1は、初期設定の印加電圧(U)×(変更回数+1)の電圧を印加する設定を行う。例えば、先の処理ステップS410で確認した変更回数が1であった場合、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧を2Uに設定する。他にも、変更回数が2(又は3)であった場合、粒径別粒度分布測定装置1はDMA300に印加する電圧を3U(又は、4U)に設定する。
【0078】
以上の手順を終えると、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定処理(図10)に復帰する。
【0079】
ステップS500:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300の作動処理を実行する。具体的には、先の処理ステップS420で設定した電圧2U(又は3U、4U)をDMA300に印加し(印加電圧V=2U(又は3U、4U))、DMA300を作動させて電気移動度Z1(2U)(又は、Z1(3U)、Z1(4U))によりエアロゾル粒子を分級する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS600を実行する。
【0080】
ステップS600:粒径別粒度分布測定装置1は、FCAE401又はCPC501による測定Mxを実行する。ここで、xは2〜4のいずれかを表しており、M2は電気移動度Z1(2U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果、M3は電気移動度Z1(3U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果、M4は電気移動度Z1(4U)により分級されたエアロゾル粒子の測定結果をそれぞれ表している。FCAE401よる測定が終了すると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS700を実行する。
【0081】
ステップS700:粒径別粒度分布測定装置1は、初期設定時の測定結果M1と設定変更時の測定結果Mxから、Mx/M1を算出する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS300において、電気移動度Z1(U)で分級したエアロゾル粒子を測定したFCAE401又はCPC501による測定結果M1を参照する。また、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS600において、電気移動度Z1(2U)(又は、Z1(3U)、Z1(4U))で分級したエアロゾル粒子を測定したFCAE401による測定結果M2(又は、M3、M4)を参照する。そして、粒径別粒度分布測定装置1は、Mx/M1を算出する。
【0082】
ステップS800:粒径別粒度分布測定装置1は、再測定が必要か否かを確認する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1は先の処理ステップS700において算出したMx/M1に基づいて、規定値(例えば、0.01:1%)よりも小さいか否かを確認する。このように、規定値が1%程度であれば、粒度分布をみる上には、無視しても問題ない。なお、規定値は1%に限定されず、0.1%でもよく、適宜調整可能である。結果として、Mx/M1が規定値よりも小さい場合(Yes)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS900を実行する。一方、Mx/M1が規定値よりも小さくない場合(No)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS400を実行する。
【0083】
ステップS900:粒径別粒度分布測定装置1は、DMA300により分級されるエアロゾル粒子(d1)の数を算出する。ここでは、M2/M1やM3/M1が規定値(1%)より小さくなく、M4/M1が規定値(1%)より小さかった場合について説明する。他の場合については以下の数式を用いた算出方法に基づいて適宜算出可能であるため説明を省略する。
【0084】
なお、FCAE401により測定された測定結果のM1、M2、M3、M4は電流相当であり、MFCAE(Z1(U))は数量相当である。一方、CPC501により測定された測定結果のM1、M2、M3、M4は数量相当であり、MCPC(Z1(U))も同様に数量相当である。
【0085】
ここで、実際にDMA300により電気移動度Z1(U)で分級される各粒径に対応する帯電したエアロゾル粒子の分布関数を次のように定義する。粒径d1に対応した1価のエアロゾル粒子の分布関数としてC1(Z1(U))、粒径d2に対応した2価のエアロゾル粒子の分布関数としてC2(Z1(U))、粒径d3に対応した3価のエアロゾル粒子の分布関数としてC3(Z1(U))、粒径d4に対応した4価のエアロゾル粒子の分布関数としてC4(Z1(U))と定義する。なお、この分布関数はその数量を表すことになる。例えばC1(Z1(U))は電気移動度Z1(U)の1価の数量を表す。
【0086】
したがって、FCAE401、又は、CPC501により測定された測定結果は上記エアロゾル粒子の分布関数を用いると以下の数式(3)、数式(4)で表される。
【数3】
【0087】
ここで、MFCAE(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するFCAE401により測定された測定結果から得られる数量を表し、ηFCAE(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するFCAE401の検出効率を表し、pは荷電数(価数)を表している。なお、一般的にηFCAE(Z1(U))は1(具体的には、0.99999)である。また、他のηFCAE(Z1(2U))、ηFCAE(Z1(3U))、…、ηFCAE(Z1(pU))においてもその検出効率は1である。
【数4】
【0088】
ここで、Mcpc(Z1(U))はZ1(U)で分級されたエアロゾル粒子に対するCPC501により測定された測定結果から得られる数量を表し、ηcpc(Z1(pU))はZ1(pU)で分級されたエアロゾル粒子に対するCPC501の検出効率を表し、pは荷電数(価数)を表している。したがって、荷電数(価数)を表すpに対応して検出効率ηcpcが異なっていることを表している。なお、CPC501の校正値とはこの検出効率ηcpcを表している。
【0089】
なお、上記で図6を用いて説明したように、DMA300により電気移動度Z(U)〜Z(4U)でそれぞれ分級されたエアロゾル粒子には多価帯電したものも含まれているので、FCAE401又はCPC501の測定結果M1〜M4にも含まれることになる。
【0090】
そして、図9は、DMA300により電気移動度Z(U)〜Z(4U)でそれぞれ分級されたエアロゾル粒子を粒径及び荷電数(価数)に対応させて荷電確率分布図(図4)にプロットした図である。具体的には、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)の荷電確率は約30%であり、電気移動度Z1(3U)で分級される2価に帯電した粒径d5(□印)の荷電確率は約10%である。例えば、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)が無視できる程度に少ないとすると、d4より粒径が大きい電気移動度Z1(3U)で分級される2価に帯電した粒径d5(□印)や帯電価数の多い電気移動度Z1(2U)で分級される2価に帯電した粒径d4(△印)なども無視することができることになる。
【0091】
また、荷電確率を表す関数として、fp(Z1(nU))を定義する。異なる電気移動度Zで分級される荷電数(価数)に対応したエアロゾル粒子の分布関数の関係は、以下の数式(5)で表される。ここで、pは荷電数(価数)を表し、nUは印加する電圧を表している。例えば、平衡帯電状態での粒径d4において、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4(○印)の荷電確率関数をf1(Z1(4U))と表わし、4価に帯電した粒径d4の荷電確率関数はf4(Z1(4U))と表わす。ここで、電気移動度Z1(U)で分級される4価に帯電した粒径d4(●印)がこの荷電確率関数f4(Z1(4U))に該当している。また、電気移動度Z1(4U)で分級される1価に帯電した粒径d4の分布関数C1(Z1(4U))を荷電確率関数f1(Z1(4U))で除算することで、粒径d4の総粒子数を求めることができ、この総粒子数と粒径d4の4価となる荷電確率関数f4(Z1(4U))とを積算すれば、電気移動度Z1(U)で分級される4価に帯電した粒径d4の4価の粒子数C4(Z1(U))を求めることができる。
【数5】
【0092】
ここで、M2/M1やM3/M1が規定値(1%)より小さくなく、M4/M1が規定値より小さかった場合を当てはめてみると、電気移動度Z1(4U)で分級したエアロゾル粒子の測定結果M4は無視してもよい程に小さいので、C1(Z1(4U))=0となる。同様に、C4(Z1(U))=C2(Z1(2U))=0となる。
【0093】
電気移動度Z1(U)〜Z1(4U)で分級されたエアロゾル粒子をFCAE401で測定した結果から得られるMFCAE(Z1(U))〜MFCAE(Z1(4U))は、MFCAE(Z1(4U))=C1(Z1(4U))=0であることを踏まえ、数式(6)〜数式(8)と表すことができる。このように、電気移動度Z1(U)では1価から3価の帯電した粒子が分級され、電気移動度Z1(2U)及びZ1(3U)では1価の帯電した粒子が分級されたことになる。
【数6】
【数7】
【数8】
【0094】
また、上記数式(5)、数式(6)、数式(7)、数式(8)により、以下の数式(9)を導くことができる。
【数9】
【0095】
電気移動度Z1(2U)及びZ1(3U)では1価のみを分級したことになるので、FCAE401の測定からMFCAE(Z1(2U))及びMFCAE(Z1(3U))を求めることができる。そして、数式(7)よりC1(Z1(2U))を求め、上記数式(5)からC2(Z1(U))を求めることができる。また、数式(8)によりC1(Z1(3U))を求め、上記数式(5)からC3(Z1(U))を求めることができる。よって、電気移動度Z1(U)で分級した2価・3価の粒子数が求まるので、測定結果MFCAE(Z1(U))を用いて1価の粒子数ηFCAE(Z1(U))・C1(Z1(U))を求めることができる。
【0096】
また、同様の計算方法により、CPC501に対して以下の数式(10)を導くことができる。
【数10】
【0097】
以上のように、M4/M1が1%より小さかった場合、DMA300により電気移動度Z1(U)で分級したエアロゾル粒子数を測定することができる。FCAE401又はCPC501で所定の電気移動度Zで分級したエアロゾル粒子を測定し、その測定結果MFCAE、MCPCと、荷電確率関数からなる荷電確率比にもとづいてエアロゾル粒子の粒子数を計数することができる。
【0098】
なお、大気中のエアロゾル粒子の粒度分布については、粒径別の密度はJunge分布に従っており、粒径が100nmより大きなエアロゾル粒子については逆3乗則に基づいて、数が極少ないこと、及び、エアロゾル粒子の荷電確率分布に基づくことで、4価から6価の測定でほとんどよいことが表されている。
【0099】
今回の算出処理ステップS900においてM1、M2、M3、M4の測定結果から、粒径毎のエアロゾル粒子の粒子数が計数されると、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS1000を実行する。
【0100】
ステップS1000:粒径別粒度分布測定装置1は、他の粒径のエアロゾル粒子を測定するか否かを確認する。この確認の結果、他の粒径のエアロゾル粒子を測定する場合(Yes)、粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS100を実行する。一方、他の粒径のエアロゾル粒子を測定しない場合(No)、粒径別粒度分布測定装置1は大気中のエアロゾル粒子の測定を終了する。
【0101】
次に、DMA300においてエアロゾル粒子の分級に関する電気移動度Zについて説明する。電気移動度Zは、DMA300の構造(内部電極径r1、外部電極径r2、分級までの距離L)、DMA300の作動に関する設定事項からも導くことができ、試料ガスの流入量q2と分級用排出口350からの排出量q3、及びシースガスの流入量q1と排出口360からの排出量q4が夫々等しい場合(q1=q4、q2=q3)、上記の数式(2)で表される。
【0102】
〔トランスファ関数Ω〕
また、実際にエアロゾル粒子がDMA300で分級される確率、すなわち、トランスファ関数Ω(Z)は図13のように表される。
図13に示すように、電気移動度を利用してエアロゾル粒子を分級する場合、実際に分級されるエアロゾル粒子の濃度は以下の数式(11)で表されるZuからZdまでの積分値となる。なお、上記数式(2)のZ1(U)をZc(U)に置き換えて説明する。
【数11】
ここで、数式(2)よりΔφ=L・U/ln(r2/r1)を表している。
【0103】
したがって、分級されるエアロゾル粒子の電気移動度Zはシースガスq1と試料ガスq2との関係に依存することとなる。
【0104】
また、トランスファ関数Ω(Zc)についての半値全幅(FWHM)における関係式は以下の数式(12)で表される。
【数12】
【0105】
ここで、シースガスq1と試料ガスq2との流量比δをδ=q2/q1とすると、電気移動度Zd、Zuの関係式が以下の数式(13)で表される。
【数13】
【0106】
したがって、エアロゾル粒子を電気移動度Zcで分級すると、Zd〜Zuの幅を有した状態でDMA300から分級されることを表している。すなわち、Zd〜Zuの幅が狭ければ狭いほど電気移動度Zcで分級される対象とする粒径のエアロゾル粒子を精度よく識別することができることを表している。
【0107】
次に、エアロゾル粒子の分級についての電気移動度が重なる場合について説明する。例えば、上記で説明したようにZ(U)については、Zd(U)<Zc(U)<Zu(U)の関係を有している。したがって、Z(2U)やZ(3U)についても同様に、Zd(2U)<Zc(2U)<Zu(2U)の関係や、Zd(3U)<Zc(3U)<Zu(3U)の関係を有していることを表している。
【0108】
ここで、DMA300に電圧VとしてU、2U、3Uを印加し、電気移動度Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)でエアロゾル粒子を分級した場合について説明する。具体的には、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合に、電気移動度Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)がそれぞれ干渉しない設定について説明する。
【0109】
図14は、電気移動度の幅(±δ)を有した状態で測定される電気移動度に対応して分級されるエアロゾル粒子の粒径及び価数を説明する図である。
図14に示すように、上記で説明したように、電気移動度Zc(U),Zc(2U),Zc(3U)に対応して分級されるエアロゾル粒子が図14中にプロットされる。ここで、図14中の2価に対応する曲線上に星印(☆)がプロットされているように、電気移動度の幅(±δ)が広い場合、2価に帯電した粒径d3のエアロゾル粒子が分級されてしまうことがある。このことは、上記数式(1)と数式(2)に基づくと、DMA300に電圧(3/2)Uを印加し、それによってエアロゾル粒子を電気移動度Zc((3/2)U)で分級したときのエアロゾル粒子が混入することを意味する。
【0110】
したがって、電気移動度Zc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないが、Zc(U)又はZc(2U)で測定する際に、電気移動度Zc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子(図14中の☆)が混入されることを防ぐ必要がある。
【0111】
〔最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ω〕
図15は、最大帯電数が3の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
図15は、電気移動度Zc(U)で帯電価数が3価まで測定する場合に必要となるトランスファ関数Ωを示している。それぞれの電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)は±δの幅を有している。したがって、それぞれの電気移動度の幅が重ならない(干渉しない)ことが、測定対象のエアロゾル粒子を正確に分級することを意味し、粒径毎のエアロゾル粒子の粒径数を精度よく算出することとなる。
【0112】
例えば、電気移動度Zc(U)の幅とZc((3/2)U)の幅とが重ならなくするためには、Zu(U)>Zd((3/2)U)の関係を満たす必要がある。ここで、数式(2)により、Zc((3/2)U)=(2/3)Zc(U)で表され、数式(13)によりZd(U)やZu(U)が流量比δとZc(U)とからなる数式で表されることから、(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要があることがわかる。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0113】
同様に、電気移動度Zc((3/2)U)の幅とZc(2U)の幅とが重ならなくするためには、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)の関係を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0114】
同様に、電気移動度Zc(2U)の幅とZc(3U)の幅とが重ならなくするためには、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)の関係を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0115】
以上のように、電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)の幅がそれぞれ重ならないためには、流量比がδ<1/5、δ<1/7、δ<1/5をそれぞれ満たす必要がある。したがって、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合、流量比δ<1/7を満たす設定を行うことで、全ての電気移動度Zc(U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)の幅がそれぞれ重ならない設定にでき、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。すなわち、分級されたエアロゾル粒子から必要な測定値が独立して得られることになり、粒径毎のエアロゾル粒子の粒子数の算出の精度をさらによくすることが可能になる。
【0116】
上記においては、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価までとした場合の電気移動度が重ならない設定について説明した。次に、測定対象とする帯電価数を4価までとした場合、すなわち、電気移動度をZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)でエアロゾル粒子を分級する場合について、電気移動度が重ならない設定について説明する。
【0117】
図14中の2価及び3価に対応する曲線上のそれぞれの星印(☆、★)のプロットに示すように、電気移動度の幅が広い場合、2価に帯電した粒径d3のエアロゾル粒子に加えて、3価に帯電した粒径d4のエアロゾル粒子が分級されてしまうことがありうる。すなわち、上記数式(1)と数式(2)に基づくと、DMA300に電圧(3/2)Uや(4/3)Uを印加し、エアロゾル粒子を電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級したしたときのエアロゾル粒子が混入することを意味する。
【0118】
したがって、電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないが、Zc(U)又はZc(2U)で測定する際に、電気移動度Zc((3/2)U)やZc((4/3)U)で分級するエアロゾル粒子(図14中の☆、★)が混入されることを防ぐ必要がある。
【0119】
〔最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ω〕
図16は、最大帯電数が4の場合の電気移動度によるトランスファ関数Ωを説明する図である。
図16は、電気移動度Zc(U)で帯電価数が4価まで測定する場合に必要となるトランスファ関数Ωを示している。それぞれの電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)は±δの幅を有している。したがって、それぞれの電気移動度の幅が重ならないことが、測定対象のエアロゾル粒子を正確に分級することを意味し、粒径毎のエアロゾル粒子の粒径数を精度よく算出することとなる。
【0120】
例えば、電気移動度Zc(U)の幅とZc((4/3)U)の幅とが重ならないためには、Zu(U)>Zd((4/3)U)の関係を満たす必要があることを表している。ここで、数式(2)により、Zc((4/3)U)=(3/4)Zc(U)で表され、数式(13)によりZd(U)やZu(U)が流量比δとZc(U)とからなる数式で表されることから、(1−δ)Zc(U)>(3/4)(1+δ)Zc(U)を満たす必要があることを表している。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0121】
同様に、電気移動度Zc((4/3)U)の幅とZc((3/2)U)の幅とが重ならないためには、(3/4)(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/17を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0122】
同様に、電気移動度Zc((3/2)U)の幅とZc(2U)の幅とが重ならないためには、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0123】
同様に、電気移動度Zc(2U)の幅とZc(3U)の幅とが重ならないためには、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/5を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0124】
同様に、電気移動度Zc(3U)の幅とZc(4U)の幅とが重ならないためには、(1/3)(1−δ)Zc(U)>(1/4)(1+δ)Zc(U)を満たす必要がある。この数式を解くことにより、流量比δ<1/7を満たす必要があることを導き出すことができる。
【0125】
以上のように、電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)がそれぞれ重ならないためには、流量比がδ<1/7、δ<1/17、δ<1/7、δ<1/5、δ<1/7をそれぞれ満たす必要がある。ここで、電気移動度Zc((4/3)U)やZc((3/2)U)で分級するエアロゾル粒子については測定しないため、それらの電気移動度が重なっていてもよい、すなわち、流量比がδ<1/17である必要はない。したがって、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を4価までとした場合、流量比δ<1/7を満たす設定を行うことで、電気移動度Zc((4/3)U)とZc((3/2)U)の重なりを除く全ての電気移動度Zc(U)、Zc((4/3)U)、Zc((3/2)U)、Zc(2U)、Zc(3U)を重ならない設定にでき、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。
【0126】
上記においては、粒径別粒度分布測定装置1において測定対象とする帯電価数を3価や4価までとした場合の電気移動度が重ならない設定について説明したが、これらに限定されずさらに多価の5価や6価までとした場合についても同様に流量比δを設定することで、DMA300において測定対象とするエアロゾル粒子の分級が独立して実行できる。
【0127】
〔分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係〕
図17は、分級されるエアロゾル粒子の帯電価数と流量比との関係を説明する図である(流量比=試料ガスq2/シースガスq1)。
図17に示すように、測定対象とするエアロゾル粒子の帯電価数と、DMA300に流入させるシースガスq1とエアロゾル粒子を含む試料ガスq2との設定流量比δ=q1/q2との関係が表にされている。具体的には、測定対象とする帯電価数を2価とすると、DMA300において流量比δ<1/3を満たす設定をする必要があるということを表している。他にも、測定対象とする帯電価数を5価とすると、DMA300において流量比δ<1/11を満たす設定をする必要があるということを表し、測定対象とする帯電価数を6価とすると、DMA300において流量比δ<1/11を満たす設定をする必要があるということを表している。なお、測定対象とする帯電価数を6価までに限らず、流量比を算出することができる。また、帯電価数が4価までは、電気移動度Zc((4/3)U)やZc((3/2)U)のように、電気移動度Zc(U)とZc(2U)の間となったが、帯電価数が5価以上では、電気移動度Zc((5/2)U)のように電気移動度Zc(2U)とZc(3U)の間となり、電気移動度Zc(U)とZc(2U)間とは限らない。
【0128】
以下、上記流量比を決定する方法を、手順例に沿って内容を説明する。
図18は、流量比決定処理の手順例を示すフローチャートである。
【0129】
ステップS2000:粒径別粒度分布測定装置1は、帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2010を実行する。
【0130】
ステップS2010:粒径別粒度分布測定装置1は、基準とする電気移動度Zc(U)を定義する。具体的には、数式(11)中のZcが該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2020を実行する。
【0131】
ステップS2020:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群Zc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)、…、Zc(xU)を導出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)が該当し、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、Zc(2U)、Zc(3U)、Zc(4U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2030を実行する。
【0132】
ステップS2030:粒径別粒度分布測定装置1は、第2特別電気移動度群
Zc(x/(x−1))(U)、Zc(x/(x−2))(U)、…、Zc(x/2)(U)、Zc((x−1)/(x−2))(U)、Zc((x−1)/(x−3))(U)、…、Zc((x−1)/2)(U)、Zc((x−2)/(x−3))(U)、Zc((x−2)/(x−4))(U)、…、Zc((x−2)/2)(U)、…、Zc(3/2)(U)を導出する。具体的には、xが3の場合、第2特別電気移動度群としてZc((3/2)U)が該当し、xが4の場合、第2特別電気移動度群としてZc((4/3)U)、Zc((3/2)U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2040を実行する。
【0133】
ステップS2040:粒径別粒度分布測定装置1は、上記第1特別電気移動度群をZc(U)で表す。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、(1/2)Zc(U)、(1/3)Zc(U)が該当し、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)、(1/2)Zc(U)、(1/3)Zc(U)、(1/4)Zc(U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2050を実行する。
【0134】
ステップS2050:粒径別粒度分布測定装置1は、上記第2特別電気移動度群をZc(U)で表す。具体的には、xが3の場合、第2特別電気移動度群として(2/3)Zc(U)、が該当し、xが4の場合、第2特別電気移動度群として(3/4)Zc(U)、(2/3)Zc(U)が該当する。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2060を実行する。
【0135】
ステップS2060:粒径別粒度分布測定装置1は、先のステップS2040とステップS2050において表された各電気移動度の幅±δを定義する。具体的には、各電器移動度について数式(13)で表す。粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2070を実行する。
【0136】
ステップS2070:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群の各電気移動度の領域がお互いに干渉しないδを算出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅と、(1/3)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)と、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/3と、δ<1/5が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/5が算出される。
【0137】
また、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅と、(1/3)Zc(U)の幅と、(1/4)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)と、(1/2)(1−δ)Zc(U)>(1/3)(1+δ)Zc(U)と、(1/3)(1−δ)Zc(U)>(1/4)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/3と、δ<1/5と、δ<1/7が導かれ、3つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0138】
粒径別粒度分布測定装置1は次にステップS2080を実行する。
【0139】
ステップS2080:粒径別粒度分布測定装置1は、第1特別電気移動度群の電気移動度の領域と、第2特別電気移動度群の電気移動度の領域とが干渉しないδを算出する。具体的には、xが3の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の幅と、(2/3)Zc(U)の幅と、(1/2)Zc(U)の幅とがそれぞれお互いに干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(2/3)(1+δ)Zc(U)と、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/5と、δ<1/7が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0140】
また、xが4の場合、第1特別電気移動度群としてZc(U)の領域と(3/4)Zc(U)の幅とが干渉しないδ、及び、(2/3)Zc(U)の幅と(1/2)Zc(U)の幅とが干渉しないδを算出する。それぞれ(1−δ)Zc(U)>(3/4)(1+δ)Zc(U)と、(2/3)(1−δ)Zc(U)>(1/2)(1+δ)Zc(U)を満たすδとして、それぞれδ<1/7と、δ<1/7が導かれ、2つを満たすものとしてδ<1/7が算出される。
【0141】
なお、粒径別粒度分布測定装置1は、先のステップS2070及びステップS2080で算出されたδに基づいて、隣り合う電気移動度の幅がお互い干渉しないδとして最終的なδを算出することとなる。具体的には、xが3の場合、先のステップS2070における算出結果のδ<1/5と先のステップS2080の算出結果のδ<1/7に基づいて、2つの結果を満たすものとして最終的にδ<1/7を算出する。また、xが4の場合、先のステップS2070における算出結果のδ<1/7と先のステップS2080の算出結果のδ<1/7に基づいて、2つの結果を満たすものとして最終的にδ<1/7を算出する。
【0142】
したがって、測定対象とするエアロゾル粒子の帯電価数に対応して、上記で算出した最終的な流量比の条件を満たすように、DMA300におけるシースガスの流量と試料ガスの流量と調整することで、所定の電気移動度Zで測定対象とするエアロゾル粒子が精度よく分級されるため、粒径別のエアロゾル粒子の粒子数をさらに精度よく計数することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 粒径別粒度分布測定装置
100 エアロゾル粒子収集装置
200 荷電中和装置
300 微分型電気移動度分級装置(DMA)
400 エアロゾル粒子測定装置
401 ファラデーカップ式エアロゾルエレクトロメータ(FCAE)
501 凝縮式粒子カウンタ(CPC)
600 測定結果解析装置
700 計数結果出力装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電したエアロゾル粒子を含む試料流体と清浄な空気からなる清浄流体とを、所定の電界中において電気移動度に基づいて前記帯電したエアロゾル粒子を分級する電気移動度分級工程に流動する際に、前記試料流体の流量から前記清浄流体の流量を除算した流量比を算出する流量比決定方法であって、
前記流量比決定方法は、
前記帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する最大帯電数決定工程と、
前記測定対象とする帯電数が1価の前記エアロゾル粒子の前記電界中での移動のしやすさである電気移動度を、前記電界を形成するために印加される電圧値Uで表しZc(U)と定義する基準電気移動度定義工程と、
前記最大帯電数決定行程により決定されたxに基づいて、電気移動度Zc(U)と前記電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、前記電圧値Uをx/(x−1)、x/(x−2)、…、x/2、(x−1)/(x−2)、(x−1)/(x−3)、…、(x−1)/2、(x−2)/(x−3)、(x−2)/(x−4)、…、(x−2)/2、…、3/2の規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出す特別電気移動度群導出工程と、
前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度について、前記基準電気移動度定義工程により定義されたZc(U)を用いて各電気移動度を表す変換工程と、
前記流量比を調整することで所定の電気移動度が変動し得る領域をその電気移動度に対応する領域と定義した場合、前記変換工程後であって前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度に対応した領域をそれぞれ定義する領域定義工程と、
前記領域定義行程により定義された前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と前記第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない前記流量比を算出する最終算出工程と
を含むことを特徴とする流量比決定方法。
【請求項2】
前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和工程と、
請求項1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和工程により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動工程と、
前記流動工程により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級工程と、
前記電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定工程と、
前記エアロゾル粒子測定工程により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級工程による分級と、前記エアロゾル粒子測定工程による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和工程における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出工程と
を含み、
前記電気移動度分級工程は、
前記確認工程による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定工程と、
前記基準電圧設定工程により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定工程と、
前記電圧再設定工程により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行工程と、
を含み、
前記エアロゾル粒子測定工程は、
前記基準電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定工程と、
前記電気移動度再分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定工程により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定工程と、
を含み、
前記確認工程は、
前記基準エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定工程により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項6】
前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和手段と、
請求項1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和手段により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動手段と、
前記流動手段により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級手段と、
前記電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定手段と、
前記エアロゾル粒子測定手段により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級手段による分級と、前記エアロゾル粒子測定手段による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和手段における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出手段と
を備え、
前記電気移動度分級手段は、
前記確認手段による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定手段と、
前記基準電圧設定手段により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定手段と、
前記電圧再設定手段により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行手段と、
を備え、
前記エアロゾル粒子測定手段は、
前記基準電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定手段と、
前記電気移動度再分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定手段により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定手段と、
を備え、
前記確認手段は、
前記基準エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定手段により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項1】
帯電したエアロゾル粒子を含む試料流体と清浄な空気からなる清浄流体とを、所定の電界中において電気移動度に基づいて前記帯電したエアロゾル粒子を分級する電気移動度分級工程に流動する際に、前記試料流体の流量から前記清浄流体の流量を除算した流量比を算出する流量比決定方法であって、
前記流量比決定方法は、
前記帯電したエアロゾル粒子のうち測定対象とするエアロゾル粒子の最大帯電数を2以上の自然数xとして決定する最大帯電数決定工程と、
前記測定対象とする帯電数が1価の前記エアロゾル粒子の前記電界中での移動のしやすさである電気移動度を、前記電界を形成するために印加される電圧値Uで表しZc(U)と定義する基準電気移動度定義工程と、
前記最大帯電数決定行程により決定されたxに基づいて、電気移動度Zc(U)と前記電圧値Uを2からxまでの値でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度とを含む第1特別電気移動度群、及び、前記電圧値Uをx/(x−1)、x/(x−2)、…、x/2、(x−1)/(x−2)、(x−1)/(x−3)、…、(x−1)/2、(x−2)/(x−3)、(x−2)/(x−4)、…、(x−2)/2、…、3/2の規則性を有する値のうちの互いに素である既約分数でそれぞれ乗算した電圧値で表される電気移動度を含む第2特別電気移動度群を導き出す特別電気移動度群導出工程と、
前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度について、前記基準電気移動度定義工程により定義されたZc(U)を用いて各電気移動度を表す変換工程と、
前記流量比を調整することで所定の電気移動度が変動し得る領域をその電気移動度に対応する領域と定義した場合、前記変換工程後であって前記特別電気移動度群導出工程により導き出された前記第1特別電気移動度群及び前記第2特別電気移動度群に含まれる全ての電気移動度に対応した領域をそれぞれ定義する領域定義工程と、
前記領域定義行程により定義された前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域がお互いに干渉せず、かつ、前記第1特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域と前記第2特別電気移動度群に含まれる電気移動度に対応する各領域とが干渉しない前記流量比を算出する最終算出工程と
を含むことを特徴とする流量比決定方法。
【請求項2】
前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和工程と、
請求項1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和工程により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動工程と、
前記流動工程により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級工程と、
前記電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定工程と、
前記エアロゾル粒子測定工程により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級工程による分級と、前記エアロゾル粒子測定工程による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和工程における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出工程と
を含み、
前記電気移動度分級工程は、
前記確認工程による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定工程と、
前記基準電圧設定工程により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行工程と、
前記確認工程による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定工程と、
前記電圧再設定工程により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行工程と、
を含み、
前記エアロゾル粒子測定工程は、
前記基準電気移動度分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定工程と、
前記電気移動度再分級工程により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定工程により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定工程と、
を含み、
前記確認工程は、
前記基準エアロゾル粒子測定工程により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定工程により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項4】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載の粒径別粒度分布測定方法において、
前記流動工程は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定方法。
【請求項6】
前記エアロゾル粒子を平衡帯電状態とする荷電中和手段と、
請求項1に記載の流量比決定方法により算出された前記流量比に基づいて、前記荷電中和手段により帯電された前記エアロゾル粒子を含む前記試料流体と清浄な空気からなる前記清浄流体とを前記所定の電界中に流動させる流動手段と、
前記流動手段により流動された前記エアロゾル粒子を前記所定の電界中で電気移動度に基づき分級する電気移動度分級手段と、
前記電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子を電気的又は光学的な測定方法のうち少なくとも一方の測定方法により測定し、その測定結果を出力するエアロゾル粒子測定手段と、
前記エアロゾル粒子測定手段により出力される測定結果に基づき、所定の条件を満たしているか否かを確認する確認手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前記電気移動度分級手段による分級と、前記エアロゾル粒子測定手段による前記測定結果の出力と、を再度実行させる制御を行う再測定制御手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たした場合、前記荷電中和手段における前記エアロゾル粒子が帯電する際の荷電確率に基づき、前記エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果から粒径に対する粒度分布を算出する粒度分布算出手段と
を備え、
前記電気移動度分級手段は、
前記確認手段による確認をする前に、前記電界を形成するために印加する基準となる電圧を電圧値Uに設定する基準電圧設定手段と、
前記基準電圧設定手段により設定された電圧値Uで印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する基準電気移動度分級実行手段と、
前記確認手段による確認の結果前記条件を満たしていない場合、前回分級された際の印加された電圧の電圧値(前回値)にさらに電圧値Uを加算したものを、前記電界を形成するために印加する電圧として再設定する電圧再設定手段と、
前記電圧再設定手段により設定された電圧値で印加し、前記エアロゾル粒子の分級を実行する電気移動度再分級実行手段と、
を備え、
前記エアロゾル粒子測定手段は、
前記基準電気移動度分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を測定結果M1として出力する基準エアロゾル粒子測定手段と、
前記電気移動度再分級手段により分級された前記エアロゾル粒子に対応する測定結果を、前記再測定手段により繰り返し行われた測定毎に新たな測定結果Mxとして出力するエアロゾル粒子再測定手段と、
を備え、
前記確認手段は、
前記基準エアロゾル粒子測定手段により出力された前記測定結果M1と、前記エアロゾル粒子再測定手段により出力された新たな前記測定結果Mxと、の比率を算出し、その算出結果が規定値未満であれば前記条件を満たしたと確認し、前記算出結果が前記規定値より大きければ前記条件を満たしていないと確認することを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが2である場合に算出された前記流量比が1/3であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の3倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項8】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが3又は4である場合に算出された前記流量比が1/7であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の7倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【請求項9】
請求項6に記載の粒径別粒度分布測定装置において、
前記流動手段は、
請求項1に記載の流量比算出方法により前記最大帯電数であるxが5又は6である場合に算出された前記流量比が1/11であることに基づいて、前記清浄流体の流量を前記試料流体の流量の11倍より多い流量とすることを特徴とする粒径別粒度分布測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−57665(P2013−57665A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196653(P2012−196653)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【出願人】(000115636)リオン株式会社 (128)
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