説明

流量計の駆動電源装置

【課題】 ガスメータ等の駆動電源としてのバッテリーの交換を行う必要のない駆動電源装置を提供すること。
【解決手段】 測定管2の内部に流体物質、例えば被測定物としてのガスを流し、このガスの流量を測定するようにした流量計3と、測定管2の内部に流れるガスの流体エネルギーによって発電される発電手段4とが具備されており、発電手段4によって得られる電気出力を、流量計3を駆動するためのバッテリー5への充電電力として使用するように構成されている。従って、バッテリー5に対しては発電手段4によって常に充電が成され、バッテリー5の放電により交換を行う必要のない流量計が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は測定管内部に流体物質を流し、その流量を測定する例えばガスメータに用いて好適な流量計の駆動電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】測定管内部に流れる流体物質の流量を測定する流量計として、ガスメータを挙げることができ、そのガスメータの1つとして超音波流量計が提案されている。
【0003】この超音波流量計は、一方の電気−音響変換手段から出射された超音波を測定管内の流体物質(ガス)中を透過させて他方の電気−音響変換手段で受波し、これらを双方で切り替えて超音波伝播時間を測定して測定管内部に流れる流体物質の流速を測定し、測定された流速に測定管の断面積を乗ずることにより流量の測定を行うように成されている。
【0004】図5は、その原理図を示したものであり、電気−音響変換手段としての一対の超音波送受波器(トランスデューサ)11,12を断面がほぼ真円状の測定管13の管壁に管軸に対してθの角度(例えばθ=15度)をもって相対して取り付けられ、交互に超音波ビームを伝播させて測定を行うように構成されている。なお前記一対の超音波送受波器11,12はピエゾセラミック素子であり、超音波の周波数は200KHz程度に選定される。
【0005】そしてガスの流れの方向に対して上流側、下流側に設けられたトランスデューサ11,12から測定管13の内部を横切るように発射された超音波ビームを双方で切り替えて、これら順逆方向の伝播時間t1,t2を繰り返し計測される。
【0006】この計測された時間を逆数に演算することにより、音速Cの影響がなくなり以下の式が得られる。
【0007】t1=L/(C+Vcosθ) ……式1
【0008】t2=L/(C−Vcosθ) ……式2
【0009】式1および式2より V=(L/2cosθ)×〔(1/t1)−(1/t1)〕 ……式3
【0010】
ただし、L:超音波の伝播路長(L=D/sinθ)
D:管内径C:気体中の音速θ:超音波伝播路と管軸のなす角V:超音波伝播路上の線平均流速
【0011】なお前記した構成の超音波流速計は音響パスに沿った平均流速を計測する装置である。そして、測定管内の流速分布は、流量により変化する。この流量を得るためには流速分布変化の補正が必要となる。そして体積流量Qは計測された線平均流速Vと、測定部の断面積Aと、流速分布補正計数Knから計算される。
【0012】すなわち次の式4のように表すことができる。
Q=A×V×Kn ……式4
【0013】前記Knは測定された線平均流速と管断面の平均流速の比であり、レイノルズ数の関数である。
【0014】
Kn=1/(1.119−0.011 log Re) ……式5
【0015】層流域におけるKnは、理論的に計算することが可能であり、Kn=0.75(一定)が得られている。ここで、レイノルズ数が2320より小さい場合の流れは層流と呼ばれ、その分布は一定で変わらない。
【0016】図1に示す装置を用い、以上のような理論式により演算することにより、流体物質、すなわちガスの流量を算出することが可能であり、これによりガスメータを構成することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】ところで、以上のように構成されたガスメータにおいては、電気−音響変換手段としての一対の超音波送受波器11,12に対して与える超音波信号発生回路、超音波送受波器11,12で受けた超音波信号を増幅して演算処理を行う演算回路、また場合によっては演算回路によって演算された値を例えば表示機等に表示させるための表示駆動回路等が付帯的に必要であり、これらを駆動するための電源は、商用電源が利用できる場合にはこれを用い、商用電源が利用できないような環境においては、バッテリーによって駆動するようにせざるを得ない。
【0018】バッテリーを用いる場合には、当然ながらバッテリーの交換を余儀なくされるものであり、人手によって装置を分解するなどしてバッテリー交換等のメンテナンスを行う必要が生ずるといった問題点を有している。
【0019】本発明は、このような従来のものの問題点に着目して成されたものであり、人手によってバッテリー交換等のメンテナンスを行う必要のない流量計の駆動電源装置を提供することを目的とするものである。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明に係る流量計の駆動電源装置は、測定管内部に流体物質を流し、前記流体物質の流量を測定するようにした流量計と、前記測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって発電される発電手段とが具備され、前記発電手段によって得られる電気出力を前記流量計を駆動するためのバッテリーへの充電電力として使用するように構成される。また本発明に係る流量計の駆動電源装置は、測定管内部に流体物質を流し、前記流体物質の流量を測定するようにした流量計と、前記測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって発電される発電手段とが具備され、前記発電手段によって得られる電気出力を直接前記流量計の駆動電力として使用するように構成される。この場合、前記流量計は、一方の電気−音響変換手段から出射された超音波を測定管内の流体物質中を透過させて他方の電気−音響変換手段で受波し、これらを双方で切り替えて超音波伝播時間を測定して測定管内部に流れる流体物質の流量測定を行うようにした超音波流量計が使用される。さらに前記発電手段は、測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって回転駆動されるファンと、前記ファンの回転力によって電気的出力を生成するロータ型発電機より構成されるのが好ましい。以上の構成により、流量計の測定管内部に流れる流体物質、すなわちガスの流体エネルギーにより、発電手段のファンが回転駆動され、このファンの回転力によって発電機のロータが駆動される。これにより発生された電気出力は前記流量計を駆動するためのバッテリーへの充電電力として使用される。又はその電気出力は流量計を直接駆動するため電力として使用される。従って前者においては、バッテリーは常に充電状態となされ、人手によってバッテリー交換等のメンテナンスを行う必要をなくすことができ、また後者においては、バッテリーを備える必要のない流量計を提供することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明に係る流量計の駆動電源装置は、流量計の測定管内部に流れる流体物質、すなわちガスの流体エネルギーにより、発電手段のファンが回転駆動され、このファンの回転力によって発電機のロータが駆動される。これにより発生された電気出力は前記流量計を駆動するためのバッテリーへの充電電力として使用される。又はその電気出力は流量計を直接駆動するため電力として使用される。
【0022】
【実施例】以下、本発明に係る流量計の駆動電源装置について、ガスの流量計を用いた実施例を図を用いて説明する。
【0023】まず図1はその実施例の一部を破断して示した外観構成図を示すものであり、ケース1の内部には、測定管2がケース1を水平方向に貫通した形で取り付けられている。そして測定管2の一部には前記図5において説明したものと同様な超音波流量計3(一対の超音波送受波器11,12および測定管13)が取り付けられており、測定管2の流入口2aから流出口2bに向かって流れるガスの流量を検出できるように構成されている。
【0024】また前記測定管2の超音波流量計3に隣接した測定管2内には、発電手段4が配置されている。この発電手段4は、測定管2内のガスの流れによる流体エネルギーによって電気出力を生成させるものであり、例えば図2に拡大して示したように構成されている。すなわち前記発電手段4は、測定管2の内部に流れるガスの流体エネルギーによって回転駆動されるファン4aを有し、このファン4aの回転数を増速させる増速機4bと、この増速機4bにより増速された回転力により、ロータが駆動される発電機4cより構成されている。
【0025】図1に戻り、前記ケース1内にはバッテリー5が収納されており、このバッテリー5より前記した超音波流量計3等に対して駆動用電源が供給されるように成され、一方前記発電手段4により生成された電気出力は、バッテリー5に対しての充電電力として使用するように構成されている。
【0026】またケース1の前面上側部には、超音波流量計3によって測定されたガスの流量を表示する表示器6が備えられている。
【0027】図3は以上のように構成された流量計の駆動電源装置の電気的な回路構成をブロック図によって示したものである。なお図3において前記図1に示した部分と同一部分は、それぞれ同一符号で示している。
【0028】図3において、発電手段4の正極端子には一方向性素子としてのダイオード7のアノード側が接続されており、そのカソード側はバッテリー5の正極端子に接続されている。そして、バッテリー5の正極端子からは超音波流量計3、演算回路8、表示器6の電源端子に対して駆動電流を供給するように接続されている。
【0029】以上の構成において、測定管2内のガス流により発電手段4のファン4aが回転駆動され、増速機4bによって回転数が増速される。そして増速された回転力により発電機4cのロータが回転され、発電機4cより電気的出力が生成される。そして図3に示す構成により、発電機手段4からの電気的出力はダイオード7を介してバッテリー5に対して充電電力として供給される。
【0030】また前記超音波流量計3に対しては、バッテリー5より駆動電流が供給され、電気−音響変換手段としての一対の超音波送受波器に超音波を与えるように作用する。また演算回路8に対しては、バッテリー5より駆動電流が供給され、演算回路8は超音波流量計3から供給されるガスの流量に関する情報を受けてガスの流量を演算する。さらに、表示器6に対しては、バッテリー5より駆動電流が供給され、演算回路8により演算されたガスの流量に関する数値情報を表示させる。
【0031】以上は、発電手段4により得られた電気的出力をバッテリー5に対して充電電力として供給させるようにした実施例に基づいて説明したが、例えば発電手段4により得られた電気的出力を、超音波流量計3、演算回路8、および表示器6の駆動電源としてそのまま用いるようにしてもよい。この場合には、図3におけるダイオード7およびバッテリー5が削除され、発電手段4より直接に超音波流量計3、演算回路8、および表示器6に対して駆動電流が供給されるように構成される。
【0032】また、前記した実施例においては発電手段4としてファン4a、増速機4b、発電機4cを具備したロータ型のものを例にして説明したが、発電手段4としてはガス流によって振動し、その振動作用によって電気的出力を発生するような機械的振動型の発電手段を採用することもできる。さらに図に示したロータ型の発電手段と機械的振動型の発電手段とを併用することもできる。
【0033】図4は以上説明した本発明の装置の幾つかの実施態様を機能的にまとめて表現したものである。すなわち、流体物質の流れAは、ロータ型のすなわちタービン機構Bおよび/又は機械的振動Cによって発電Dが成され、この様な態様によって発電された電力は、流量計等に対して直接駆動電流として消費するようにしたダイレクト消費電流E、又は流量計等に対しての駆動電流を供給するバッテリーへの充電電流Fとして使用される。
【0034】なお、以上の実施例においては、ガスの流量を測定するガスメータについて説明したが、本発明はガス以外の気体、さらには液体の流量を測定する流量計にも応用できる。
【0035】
【発明の効果】以上の説明で明らかなとおり、本発明に係る流量計の駆動電源装置によれば、流量計の測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって発電される発電手段が具備され、この発電手段によって得られる電気出力を流量計等を駆動するためのバッテリーへの充電電力として使用するように構成したので、バッテリーは常に充電状態となされ、人手によってバッテリー交換等のメンテナンスを行う必要をなくすことができる。また本発明に係る流量計の駆動電源装置の他の実施態様によれば、前記発電手段によって得られる電気出力を直接流量計等を駆動するために使用するように構成されるので、バッテリーを備える必要のない流量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る流量計の駆動電源装置の実施例を一部破断して示した外観斜視図である。
【図2】図2は、図1における発電手段を拡大して示した斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す実施例の電気的な構成を示したブロック図である。
【図4】図4は、本発明の装置の実施態様を機能的にまとめて表現した図である。
【図5】図5は、本発明において用いられる超音波流量計の原理を示した図である。
【符号の説明】
1 ケース
2 測定管
3 超音波流量計
4 発電手段
4a ファン
4b 増速機
4c 発電機
5 バッテリー
6 表示器
7 ダイオード
8 演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 測定管内部に流体物質を流し、前記流体物質の流量を測定するようにした流量計と、前記測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって発電される発電手段とが具備され、前記発電手段によって得られる電気出力を前記流量計を駆動するためのバッテリーへの充電電力として使用するようにしたことを特徴とする流量計の駆動電源装置。
【請求項2】 測定管内部に流体物質を流し、前記流体物質の流量を測定するようにした流量計と、前記測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって発電される発電手段とが具備され、前記発電手段によって得られる電気出力を前記流量計の駆動電力として使用するようにしたことを特徴とする流量計の駆動電源装置。
【請求項3】 前記流量計は、一方の電気−音響変換手段から出射された超音波を測定管内の流体物質中を透過させて他方の電気−音響変換手段で受波し、これらを双方で切り替えて超音波伝播時間を測定して測定管内部に流れる流体物質の流量測定を行うようにした超音波流量計であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流量計の駆動電源装置。
【請求項4】 前記発電手段は、測定管内部に流れる流体物質の流体エネルギーによって回転駆動されるファンと、前記ファンの回転力によって電気的出力を生成するロータ型発電機より構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流量計の駆動電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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