説明

流量計

【課題】高い計測精度で微少流量の計測が可能で、サイズを小型コンパクト化できるとともに、各種の薬液にも対応が可能で、信頼性が高く、且つ低コストで容易に製造が可能な流量計を提供する。
【解決手段】拡大部を有し鉛直方向に配置されるケーシング11と、ケーシング11の拡大部12内に封入され、ケーシング11の下方から内部に流入し上方に向かう流体により押し上げられる、少なくとも一部に被検出面13aを有するフロート13と、ケーシング11の拡大部の外部に配置され、フロート13の被検出面13aに磁気を及ぼすことでフロート13の軸方向変位を検出する、少なくとも1つの変位センサ15を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の微少流量を計測するのに好適な流量計に係り、特に、例えば微細配線構造を備えた半導体などを製造する半導体製造装置において、微少の流体流量を計測するのに好適な流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
気体、液体などの流体の流量を測定する手段として、ケーシングの内部に発熱体を配置し、ケーシング内を流れる流量によって変化する前記発熱体の温度を測定することによって、前記流体の流量を計測する流量計が知られている。
【0003】
光透過性材料から成るケーシングの両側面に複数個の発光ダイオード(LED)と複数個の受光用フォトダイオードをそれぞれがケーシングを介して対面するように配置し、ケーシング内に配置された遮光性材料から成るフロートによって前記LEDからの光が遮られた状態になった前記受光用フォトダイオードの位置をもって前記フロートの位置を検出する流量計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
光透過性材料から成るケーシング内に遮光性材料から成るフロートを配置し、前記ケーシングに沿って光学レンズとイメージセンサから成る複数組の画像センサユニットを配列し、前記画像センサユニットの撮像範囲を組み合わせて前記ケーシングの有効撮像範囲を認識するようにし、前記画像センサユニットの電気信号出力に基づいて前記フロートの位置を検出する流量計が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
同様に、レンズとCCD式ラインセンサによってフロートの一次元方向の像をラインセンサ上に投影し、その像の位置からフロートの位置を検出する流量計が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
更に、永久磁石を具備したフロートと、ケーシングと、該ケーシングの外部に配置された複数の磁気センサを有し、前記フロートに具備した永久磁石の磁気を前記複数配列された磁気センサのいずれかで感知することによって、フロートの位置を検出する流量計が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平2−38816号公報
【特許文献2】特開2001−221666号公報
【特許文献3】特開平11−190644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マイクロマシン等により製造した発熱体を用いた流量計では、前記発熱体が流体に暴露されるため、腐食流体を扱う場合においては、何らかの保護材で発熱体を覆って保護する必要がある。発熱体を保護材で覆うと、保護材の熱伝導性により微少流量計測での精度が上げられず、さらには応答速度が遅くなってしまうため、微少流量の計測が困難となる。
【0009】
ケーシングの外部にフロートの位置を検出する光学式または磁気式センサを設けた流量計では、計測精度を上げようとすると、部品点数が多くなり、組立が難しくなり、サイズが大型化し、かつコスト高となる。また、光学式センサを設けた流量計では、光透過性のケーシングを用いる必要があるため、材料が限定され、流体の種類によっては対応が困難となる。
【0010】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、高い計測精度で微少流量の計測が可能で、サイズを小型コンパクト化できるとともに、各種の薬液にも対応が可能で、信頼性が高く、且つ低コストで容易に製造が可能な流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の流量計は、拡大部を有し鉛直方向に配置されるケーシングと、前記ケーシングの拡大部内に封入され、前記ケーシングの下方から内部に流入し上方に向かう流体により押し上げられる、少なくとも一部に被検出面を有するフロートと、前記ケーシングの拡大部の外部に配置され、前記フロートの被検出面に磁気を及ぼすことで前記フロートの軸方向変位を検出する、少なくとも1つの変位センサを備えている。
【0012】
本発明の流量計によれば、鉛直方向に立設したケーシング内に、下方から上方に向けて流体が流れることで、ケーシングの拡大部に封入したフロートに押上げ力が作用し、この押上げ力とフロートの自重とバランスすることで、フロートは、流量計の内部を流れる流体の流量に対応した一定位置に浮上して静止する。フロートには少なくともその一部に磁気の被検出面を有するので、ケーシングの拡大部の外部に配置したインダクタンス型変位センサまたは渦電流型変位センサなどの変位センサにより、フロートの軸方向浮上位置(変位)を高い分解能で精密に検出することができる。
【0013】
変位センサとして、例えばフェライトコア等の磁芯にコイルを巻回した極めて小さなサイズの部品で、1μm程度の変位が検出可能な極めて高い分解能を有するものを使用することが好ましい。これにより、フロートのストローク(上下方向の可動範囲)を、例えば2mm程度の小さな寸法としても、十分な計測精度が得られる。しかも、この変位センサは、低コストで製造が可能であると共に、耐衝撃性も高く、信頼性も高い。
本発明の流量計用ケーシングは、少なくとも1つの変位センサを外部に備えた拡大部を有し、鉛直方向に配置されて下方から内部に流入させた流体を上方に向けて流す。
本発明のフロートは、少なくとも一部に被検出面を有し、ケーシングの拡大部内に封入され該ケーシングの下方から内部に流入し上方に向かう流体により前記拡大部内を上方に押し上げられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流量計によれば、インダクタンス型変位センサまたは渦電流型変位センサなどの変位センサでフロートの軸方向変位を検出することで、高い計測精度で微少流量の計測が可能で、サイズを小型コンパクト化できるとともに、低コストで製造が可能な流量計を提供することができる。また、この流量計は、ケーシング及びフロートを金属材料で構成できるので、腐食環境下においても流体の微少流量が安定して十分な精度で計測できる。また、マイクロマシン等の微細加工技術による製造工程ではなく、通常技術により製造が可能なことにより、低コストで且つ堅牢な構造の流量計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図1(a)及び1(b)は、本発明の第1の実施形態の流量計10を示し、図1(c)及び1(d)は、流量計10に使用されている変位センサ15を示す。この流量計10は、拡大部12を備え鉛直方向に配置されるケーシング11と、該拡大部12内に封入されるフロート13を有している。ケーシング11の拡大部12の外部には、フロート13の軸方向変位を計測するインダクタンス型の変位センサ15が備えられている。ケーシング11は、例えばステンレス鋼により構成され、フロート13には被検出面である高透磁率の磁性材料(パーマロイ)面13aが備えられている。変位センサ15は、上記フロート13の被検出面(磁性材料面)13aにケーシング11を通して磁気を及ぼすことにより、インダクタンスの変化から被検出面(磁性材料面)13aの軸方向変位を計測する。
【0017】
すなわち、フロート13は、高透磁率の磁性材料であるパーマロイからなる円錐台状部を上下両端部に備え、該円錐台状部の表面を被検出面13aとなし、円錐台状部の間に非磁性材料であるアルミ材からなる円筒状部13bが配置されている。円筒状部13bの直径は、例えば20mm程度であり、高さは、例えば30mm程度である。この実施形態のフロート13は、比重が2程度に設定され、測定対象の静止流体(例えば水)に対して沈降するようになっている。フロート13の比重は、重いパーマロイ材と軽いアルミ材の比率、及びフロート13の内部の中空部の比率を調整することによって、計測対象の流体の種類、流量等に応じて適当な値に設定することができる。
【0018】
変位センサ15は、図1(c)及び1(d)に示すように、例えばフェライトコア15aにコイル15bを巻回したものである。コイル15bの両端は、図示しないセンサアンプに接続され、センサ出力が取り出される。フェライトコア15aのサイズは、例えば直径が数mm以下で、高さも2−3mm以下であり、極めて小さい。このため、ケーシング11の拡大部12のサイズに変位センサ15のサイズを加えることで、流量計10を構成することができ、実質的にケーシング11の拡大部12のサイズに近い大きさの流量計10を構成できる。しかも、インダクタンス型変位センサ15においては、ステンレス鋼のケーシング11を通して、1μm程度の分解能で計測対象の被検出面の変位の計測が非接触で可能である。
【0019】
この実施形態においては、拡大部12の上端側にインダクタンス型変位センサ15を3個、下端側にインダクタンス型変位センサ15を3個、それぞれ円周方向に等間隔で配置している。それぞれ3個の変位センサ15は、直列に接続され、合計出力が取り出されるようになっている。このため、3個の変位センサ15の平均された出力が取り出され、計測精度を向上させることができる。上端側のセンサ群の合計出力と下端側のセンサ群の合計出力とからは、差動的な出力が取り出されるように回路構成されている。このため、フロート13が拡大部12内を上下に(軸方向に)移動すると、この軸方向変位を上下端に配置されたセンサ群の差動出力として取り出すことができる。
【0020】
図2(a)乃至2(c)は、この流量計10における流量計測の原理を示す。ケーシング11の内部に流体の流れがないときは、図2(a)に示すように、フロート13は、その自重によりケーシング11の拡大部12の下側逆円錐台面に接触している。ケーシング11の内部に流体が流入して流体の流れが生じると、図2(b)に示すように、流体の流れによりフロート13は下側から上側に押し上げられ、流体の流れによる押上力とフロート13の自重とがバランスした位置でフロート13は静止する。さらに、ケーシング11の内部を流れる流体の流量が増加すると、図2(c)に示すように、フロート13はより高い位置で静止することになる。
【0021】
このため、フロート13の浮上位置(軸方向変位)は、ケーシング11の内部を流れる流量の変化に対して、略直線的に変化する。従って、変位センサ15により、フロート13の軸方向変位を検出することで、ケーシング11の内部を流れる流体の流量を求めることができる。変位センサ15は、図示の軸心方向距離Lu,Ldを計測し、この軸心方向距離Lu,Ldからフロート13の軸方向変位成分を演算することができる。この実施形態の流量計10では、フロート13の直径が20mmφ、高さが30mmであり、拡大部12内のフロート13のストローク(軸方向移動可能距離)が約2mmに設定されている。フロート13の変位に対して、1μm程度の分解能を有する変位センサ15を使用することで、フロート13の軸方向変位を極めて高精度で計測することができる。
【0022】
この流量計10においては、ケーシング11の拡大部12の内径とフロート13の外径との間のクリアランス(隙間)Cが、0.2mm程度となるように設定されている。これは5mmφ程度のケーシング(流路)断面積に相当しており、後述するように、水換算で10−60cc/分程度の微少流量の高精度の計測が可能となる。
【0023】
ケーシング11の拡大部12の内径とフロート13の外径との間のクリアランスCを変更することで、計測対象の流量範囲を変更することが可能である。例えば、微細配線構造を備えた半導体などを製造する半導体製造装置においては、10cc/分程度の微少流量の例えばレジスト液等の粘性を有する流体の供給を制御することが要求される。このような要求に対しては、例えば2−3mmφ程度のケーシング(流路)断面積に相当するクリアランスを設けることで、微少流量の高精度の流量計測が可能となる。
【0024】
同様に、例えば粗洗浄液の流量制御においては、2000−3000cc/分程度の流量制御が要求される。このような要求に対しては、例えば10mmφ程度のケーシング(流路)断面積に相当するクリアランスを設けることで、高精度の流量計測が可能となる。なお、本発明の流量計は、クリアランスCを小さくすることで微少流量の計測に好適であるが、クリアランスCを大きくすることで、微少流量以外の流量の計測ができることは勿論である。
【0025】
例えば半導体製造装置においては、フッ素系流体、酸、アルカリ、薬液、レジスト液、研磨材スラリなどの各種流体を精密に流量制御して供給する場合がある。例えば、各種洗浄装置に洗浄液を供給する場合、レジスト塗布装置にレジスト液を供給する場合、研磨装置に研磨スラリを供給する場合などである。このような用途の流量計測に、本発明の流量計は以下の理由から好適である。第1に、微少流量の高精度計測が可能であること、第2に、ケーシング11及びフロート13を金属材料で構成できるため、各種薬液に対して安定性を高くできること、第3に、変位センサ15として、寸法も小さく組立精度を要さないものを使用できるため、流量計のサイズを小型・コンパクト化でき、半導体製造装置等への組込が容易であること、第4に、信頼性が高いこと、第5に、流量に対応した電気的信号が取り出されるため、容易に制御系に組み込めることなどである。
【0026】
次に、上記流量計10の流量計測特性の実測データについて説明する。図3は、フロート13の比重を変更したときのケーシング11内を流れる流体の流量とフロートの軸方向変位量との関係を示すものである。横軸は流体(この場合は水)流量であり、縦軸はフロート13の軸方向変位量であり、比重が2のフロートと、比重が3のフロートとを対比したものである。図3に示すように、比重が3のフロートでは、比重が2のフロートに対してフロートの変位量が小さくなり、略直線的な関係で流量を計測できる範囲が10−90cc/分に広がることが分かる。
なお、フロート13の軸方向変位量は、0−0.5mm程度と極めて小さいが、上述した様に、変位センサ15として、分解能が1μm程度のもを使用することで、十分な精度でフロート13の軸方向変位量の計測が可能である。
【0027】
次に、本発明の他の実施形態の流量計について、図4乃至図6を参照して説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態の流量計を示す。この流量計は、上記第1の実施形態の流量計の構成に加え、フロート13の半径方向位置を制御するラジアル磁気軸受を備えている。すなわち、この例の流量計は、フロート13の半径方向位置を検出するラジアル変位センサ17と、該変位センサ17の検出位置に基づいてフロート13の半径方向位置を目標位置に制御する図示しない制御装置と、電磁石18とを備えている。従って、フロート13が目標位置であるケーシング11の中心から偏心した場合には、変位センサ17がフロート13の偏心した変位を検出し、制御装置から電磁石18を介してフロート13に半径方向磁気力を作用させることで、目標位置であるケーシング11の中心位置にフロート13を戻すことができる。
【0028】
ここで、変位センサ17と電磁石18とは、直交する方向に2個ずつ、合計4個がそれぞれ円周方向に等間隔に配置されている。これにより、XY方向の変位検出とフロート13の位置制御とが可能となる。フロート13は、上方に位置する円錐台状の被検出面13aの下部に、電磁石18のターゲットとなる磁性材料製の円筒状部13cを備えている。同様に、下方に位置する被検出面13aの上部に、変位センサ17のターゲットとなる磁性材料製の円筒状部13dを備えている。
【0029】
なお、ラジアル変位センサ17を用いず、電磁石18の巻線を利用して、フロート13の半径方向変位を検出する変位センサ機能を電磁石に持たせた、センサレス方式のラジアル磁気軸受とすることもできる。
【0030】
この例の流量計の構成は、ラジアル磁気軸受を備えた点以外は、上記第1の実施形態の流量計と変わらないので、この例の流量計は、第1の実施形態の流量計と同様に、微少流量に対する高精度検出特性を有する。これに加え、ラジアル磁気軸受を備えることで、フロート13を常にケーシング11の拡大部12の中心に保持することができるので、フロート13がケーシング11の内壁面に接触することを防止して、フロート13とケーシング11との接触に伴うコンタミネーションの発生を防止できる。
【0031】
さらに、ラジアル磁気軸受の電磁石18は、定常的な半径方向電磁力をフロート13に及ぼしている。この半径方向電磁力は、フロート13に軸方向の剪断力を作用させる。すなわち、フロート13が軸方向に移動しようとすると、これを抑止する軸方向力が発生する。このため、電磁石18が定常的な半径方向電磁力をフロート13に及ぼしている場合には、等価的にフロート13の比重が増加したのと同様な効果を生じることになる。従って、電磁石18の定常的な電磁力を調整することで、流量の計測範囲を10−60cc/分から、例えば10−600cc/分に広げることも可能である。
【0032】
また、上記実施形態では、ケーシング11の内部を流れる流量の変化に伴うフロート13の軸方向変位を変位センサ15を用いて検出しているが、ケーシング11の内部を流れる流量の変化を、電磁石18の電流の変化から検出することも、上記電磁石18による磁気剪断力を利用することによって可能である。
【0033】
すなわち、ケーシング11の内部を流れる流量がゼロの状態で、電磁石18に最小の電流を供給し、その磁気剪断力を用いて、変位センサ15を用いて検出した一定の軸方向位置にフロート13を保持する。ケーシング11の内部を流れる流量が増加すると、フロート13は流体から押上力を受けて上方に移動しようとするが、電磁石18に供給する電流を増加し、その磁気剪断力を強化して、フロート13を上記一定の軸方向位置に保持するように制御する。係る制御方式を採用することで、ケーシング11の内部を流れる流量が大きいほど、フロート13を一定の軸方向位置に保持する大きな磁気剪断力、すなわち、電磁石18に供給する電流が必要となる。このため、ケーシング11の内部を流れる流量と電磁石18に供給する電流とは、対応関係が生じ、電磁石18に供給する電流からケーシング11の内部を流れる流量を計測することが可能となる。
【0034】
図5は、本発明の第3の実施形態の流量計を示す。この実施形態の流量計は、上記第2の実施形態の流量計に対して、フロート13の上下両端の円錐台状部を無くして、フロート13の上下両端の被検出面13aを平坦面(円板面)としたものである。そして、これに伴いケーシング11の拡大部12を矩形状となし、この拡大部12の軸方向に垂直な面に変位センサ15を設置している。その他の構成は、上記第1実施形態及び第2実施形態の流量計と変わらない。
【0035】
この流量計によれば、フロート13の上下両端の円錐台状部を無くして、フロート13の上下両端の被検出面13aを平坦面(円板面)とするとともに、ケーシング11の拡大部12の変位センサ15の設置面を軸方向に垂直な面としたので、流量計の構造をより小型・コンパクト化することができる。なお、ラジアル磁気軸受を構成するラジアル変位センサ17及び電磁石18を無くして、ラジアル磁気軸受なしの流量計としても勿論良い。これによっても、第1実施形態の流量計と同様な、腐食環境下においても微少流量を十分な精度で計測可能とする流量検出特性が得られる。
【0036】
しかしながら、第1及び第2実施形態に示された流量計のフロート13の上下両端の円錐台状部及びこの表面の被検出面13aと対面するケーシング11の拡大部12の逆円錐台面は、ケーシング11からその拡大部12に流れる流体の流れをスムーズにし、且つ安定化させる作用を有する。このため、図6の変形例に示すように、フロート13の下端の円錐台状部及びこの表面の被検出面13aと対面するケーシング11の拡大部12の逆円錐台面を残すようにしてもよい。これにより、ケーシング11からその拡大部12に流れる流体の流れをスムーズにし、且つ安定化させることができるとともに、フロート13の上端を平坦な被検出面13aとし、これと対面するケーシング11の拡大部12の面を軸方向に垂直の平坦面とすることで、流量計の構造の小型・コンパクト化に寄与することができる。
【0037】
また、この変形例の流量計においても、ラジアル磁気軸受を構成するラジアル変位センサ17及び電磁石18を無くして、ラジアル磁気軸受なしの流量計としても勿論良い。これによっても、第1実施形態の流量計と同様な、腐食環境下においても微少流量計測に十分な精度を可能とする流量検出特性が得られる。
【0038】
上記第1乃至第3の実施形態に係る流量計においては、変位センサ15としてインダクタンス型変位センサを用い、非磁性鋼材のケーシング11を通して、外部からパーマロイ材のフロート13の被検出面13aの変位を検出する例について述べたが、変位センサ15として渦電流型変位センサを用いるようにしてもよい。この場合には、電気伝導率の高い鋼材のケーシングを介在させると渦電流損失が大きいため、別途の材料を採用することが好ましい。例えば、渦電流型変位センサの前面にセラミックスまたは樹脂製材料を用いることによって渦電流損失を軽減することが好ましい。また、渦電流型変位センサを用いる場合には、計測対象の変位により渦電流損出が変化しインピーダンスが変化することに基づくものであるので、フロート13の被検出面13aには高透磁率の磁性材料を用いる必要はなく、渦電流損失を生じる導電性材料であれば足りる。
【0039】
渦電流型変位センサを用い、金属材料のケーシングを通してフロートの位置を検出する場合には、変位センサ信号のキャンによる渦電流損出の影響等でS/N比が悪くなる。これらの影響を減らし、S/N比を良くする手段として、センサ駆動電流をパワードライブ化し、センサ信号を充分にノイズ除去を行うフィルタ部を設けることが好ましい。また、フィルタ等により、センサ信号の位相ずれを補正する為に、位相補償部をセンサ信号部、基準信号部、同期検波信号部に設け、センサ感度を最適化することが好ましい。
【0040】
上記実施形態では、金属材料製のケーシング11とフロート13を用いる例について説明したが、計測対象の薬液等によっては、金属材料に腐食を生じさせるものもある。この場合には、ケーシング11として、当該薬液に対して耐性を有する樹脂材またはセラミックス材を用いることが好ましい。また、フロート13は耐性を有する樹脂材でコーティングして保護することが好ましい。
【0041】
ここで、これまで本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施形態の流量計の縦断面図で、図1(b)は、図1(a)のB−B線に沿った断面図で、図1(c)は、変位センサの縦断面図で、図1(d)は、変位センサの平面図である。
【図2】図2(a)は、ケーシングの内部に流体の流れがない時の状態を示す断面図で、図2(b)は、ケーシングの内部に流体が流入して流体の流れが生じた時の断面図で、図2(c)は、ケーシングの内部に更に多くの流体が流入して流体の流れが生じた時の断面図である。
【図3】フロートの比重を変更したときの流量とフロートの軸方向変位量との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態の流量計の縦断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の流量計の縦断面図である。
【図6】図5に示す第3の実施形態の流量計の変形例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 流量計
11 ケーシング
12 拡大部
13 フロート
13a 被検出面
13b,13c,13d 円筒状部
15 インダクタンス型変位センサ
17 ラジアル変位センサ
18 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大部を有し鉛直方向に配置されるケーシングと、
前記ケーシングの拡大部内に封入され、前記ケーシングの下方から内部に流入し上方に向かう流体により押し上げられる、少なくとも一部に被検出面を有するフロートと、
前記ケーシングの拡大部の外部に配置され、前記フロートの被検出面に磁気を及ぼすことで前記フロートの軸方向変位を検出する、少なくとも1つの変位センサを備えたことを特徴とする流量計。
【請求項2】
前記変位センサは、インダクタンス型変位センサまたは渦電流型変位センサであることを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項3】
前記ケーシングの拡大部の外部に、前記フロートの半径方向位置を制御するラジアル磁気軸受を備えたことを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項4】
前記フロートは、両端に円錐台状の被検出面を備えると共に、中央に円筒状部を備えたことを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項5】
前記フロートは、両端に円板状の被検出面を備えると共に、中央に円筒状部を備えたことを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項6】
前記フロートの比重を調整可能とすることで、計測可能な流量範囲を調整可能としたことを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項7】
前記ラジアル磁気軸受の電磁石は、前記フロートの位置を一定に保つように動作し、電磁石の電流によって、前記ケーシングの内部を流れる流量を測定することを特徴とする請求項3記載の流量計。
【請求項8】
請求項1または7記載の流量計を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項9】
少なくとも1つの変位センサを外部に備えた拡大部を有し、鉛直方向に配置されて下方から内部に流入させた流体を上方に向けて流すことを特徴とする流量計用ケーシング。
【請求項10】
少なくとも一部に被検出面を有し、ケーシングの拡大部内に封入され該ケーシングの下方から内部に流入し上方に向かう流体により前記拡大部内を上方に押し上げられることを特徴とするフロート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−343323(P2006−343323A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129256(P2006−129256)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】