説明

浄化フィルタユニットおよび該浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置

【課題】清浄効果を向上させるとともに、消費電力を低減させることができる浄化フィルタユニットを提供する。
【解決手段】光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする浄化フィルタユニットであって、前記フィルタが筒状を呈するフィルタ本体と閉止部とからなり、かつ該フィルタ本体の一端が開放されるとともに、該フィルタ本体の他端が前記閉止部により通気が封止されており、前記光源が該フィルタ本体の内部の長手方向に挿通されるとともに、該光源の一端が前記閉止部に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浄化フィルタユニットおよび該浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置に関する。さらに詳しくは、空気の清浄効果を向上させるとともに、消費電力を低減させることができる浄化フィルタユニットおよび該浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家屋内や車室内などの空気中の脱臭や抗殺菌を目的として、光触媒を担持したフィルタと該フィルタに紫外線を照射する光源(以下、紫外線光源という)とからなる浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置がある。かかる浄化フィルタユニットでは、一般に、フィルタとして通気性を有する紙製またはセラミック製の平板フィルタに光触媒を担持させたものが使用されており、かつ紫外線光源が該フィルタの近傍において、気流方向の前側(上流側)または後側(下流側)に配置されている。
【0003】
たとえば、紫外線光源が1本の場合、図4に示されるように、紫外線光源100からフィルタ101までの距離に反比例した受光強度の分布(紫外線光源100からフィルタ101までの最短距離L2と最長距離L1のあいだの受光強度の変化)が生じるためにフィルタ101が受ける受光強度が不均一になる。なお、図4において、矢印Aは空気の流れを模式的に示している。この図4に示されるフィルタ101と紫外線光源100との配置の場合には、平均距離が2.1L2であることから、最長距離L1の受光強度は最も強い最短距離L2の地点に比べて30%低下する(たとえば非特許文献1参照)。
【0004】
そこで、この受光強度の不均一性を改善するために、紫外線光源の本数を多くする構造が採用される。たとえば、図5に示されるように、紫外線光源100の本数が3本の場合、フィルタ101までの平均距離は1.2L2であることから、最長距離L4の受光強度は最も強い最短距離L2の地点に比べて5%低下にとどまる(たとえば非特許文献1参照)。なお、図5において、矢印Aは空気の流れを模式的に示している。しかし、この場合、紫外線光源の購入費用および消費電力が3倍になる。すなわち同じ受光強度を得るためには、紫外線光源の本数の増加とこれに比例して消費電力が増加することになる。
【0005】
また、紫外線光源が気流(通気)方向と直交しているため、紫外線光源に最も近い(受光強度が最も強い)箇所が紫外線光源の陰になって気流が流れにくくなっている。その結果、光触媒が有効に作用しなくなり、脱臭および抗殺菌の効果が低下する問題がある。
【0006】
これに対して、円筒形の反応器の内部に設けられる光触媒担持フィルタと、該フィルタの内部に配置される光源と、前記フィルタの後流側において空気を前記反応器内に導入するファンとを備える空気清浄器がある(特許文献1参照)。かかる装置では、フィルタが半径L2の円筒形であるとすると、受光強度は図4に示されるフィルタの受光強度に比べて40%増となり、消費電力を増加させずに、脱臭および抗殺菌の効果を維持することができる。
【0007】
【非特許文献1】2000年発行のハイベック社のカタログ(裏表紙)
【特許文献1】特開2003−310724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の空気清浄器では、円筒状に形成されたフィルタの両面が開放になっているため、円筒フィルタの内側から外側へ通過するガス量Q1より円筒の入り口から出口に抜けていくガス量Q2の方が多い。したがって、この円筒フィルタの内側から外側へ通過するガス量Q1はフィルタとの接触効率は高いが、円筒の入り口から出口に抜けていくガス量Q2は、円筒フィルタの内表面を舐めるだけなので、接触効率は低くなる。このため、従来の空気清浄器では、空気清浄効果が低いという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、清浄効果を向上させるとともに、消費電力を低減させることができる浄化フィルタユニットおよび該浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の浄化フィルタユニットは、光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする浄化フィルタユニットであって、前記フィルタが筒状を呈するフィルタ本体と閉止部とからなり、かつ該フィルタ本体の一端が開放されるとともに、該フィルタ本体の他端が前記閉止部により通気が封止されており、前記光源が該フィルタ本体の内部の長手方向に挿通されるとともに、該光源の一端が前記閉止部に支持されてなることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の空気浄化装置は、光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする空気浄化装置であって、筒状を呈しており、かつ一端が開放されるとともに、他端の通気が封止されているフィルタ本体および該フィルタ本体の他端の通気を封止する閉止部からなるフィルタと該フィルタ本体の内部の長手方向に挿通されるとともに、一端が前記閉止部に支持されている光源とからなる浄化フィルタユニットと、空気を前記フィルタの内部に導入する導入手段とを備えてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルタ本体の他端の通気を封止して、フィルタと空気との接触効率を上げているため、空気の清浄効果を向上させることができる。
【0013】
また、光源の本数を増加させなくて済むので、消費電力を低減させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、本発明の浄化フィルタユニットおよび該浄化フィルタユニットを用いる空気浄化装置を説明する。
【0015】
本発明の一実施の形態にかかわる浄化フィルタユニットは、図1〜2に示されるように、光触媒を担持した有底形状のフィルタ1と該フィルタ1の内部の長手方向に挿通されて、支持される紫外線を照射する光源2とから構成されている。
【0016】
前記フィルタ1は、円筒形を呈するフィルタ本体3と閉止部である閉止板4とからなり、該フィルタ本体3の一端は空気が導入できるように開放されており、他端は前記閉止板4により通気が封止されている。なお、図1において、矢印Aは空気の流れを模式的に示している。
【0017】
前記光触媒は、紫外線を含む光の照射を受けることにより光触媒の表面に発生した正孔が、光触媒表面の吸着水と反応して、ラジカルOH(水酸基ラジカル)が生成され、このラジカルOHが有機物の分子結合を切断することにより、臭い成分を無臭化することができるものであれば、本発明において、とくに限定されるものではない。たとえば、アナタース型の結晶構造を有する酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)および酸化タングステン(WO3)、酸化セリウムなどの金属酸化物、硫化カドミウムまたは硫化亜鉛などの硫化物を用いることができる。とくに酸化チタンは、構造安定性や光触媒能力、さらには取扱い上の安全性などから生活空間で使用するのに最適であり、二酸化チタンを用いることにより、弱い紫外線でも充分な脱臭機能を発揮でき、広範囲な物質、たとえばアンモニア、アセトアルデヒド、酢酸または硫化水素などの悪臭を除去することができる。また、前記フィルタ本体3には、必要に応じて、活性炭、ゼオライトまたはシリカゲルなどの粉末からなる吸着剤を担持させることもできる。また、光触媒の担持方法としては、蒸着法、スパッタ法、熱分解法、金属酸化法またはゾルゲル法などを適宜選定することができる。
【0018】
前記フィルタ本体3としては、たとえば紙製フィルタ、セラミック製フィルタ、シリカ繊維フィルタ、ポリエステル系不織布のフィルタなどを用いることができる。また、前記フィルタ本体3の構造は、単体で使用することができるが、空気との接触面積を大きくするために不織布の立体構造またはハニカム構造とするのが好ましい。
【0019】
前記光源2は、前記フィルタ本体3の内部に挿通され、一端が前記閉止板4に支持されている。この閉止板4の支持構造としては、とくに限定されるものではなく適宜選定することができる。また、前記光源2として、本発明においては、管状光源、たとえばブラックライト、蛍光ランプまたはキセノンランプなどを使用することができるが、本実施の形態では、BLB―20Wランプ((株)東芝製)やBLBランプ(型式:TCB30−200)((株)ハイベック製)を使用した。なお、光源2は、管状光源に限定されるものではなく、U字状を呈する光源とすることもできる。また、光源2の本数も適宜選定することができる。
【0020】
本実施の形態では、たとえばブローにより臭い成分を含む空気がフィルタ本体3の内部に導入されると、フィルタ本体3に付着した臭い成分を光触媒と光源が照射する紫外線により化学的に分解して脱臭を行い、空気を清浄にする。
【0021】
また、本実施の形態では、半径L2の円筒形フィルタ本体3を用いることにより、受光強度は前記図4に示される場合より40%増加させることができる。また、フィルタ本体3の一端が閉塞されているため、臭い成分を含む空気を光触媒に確実に通過させることができるので、清浄効果を向上させることができる。また、光源は1本であるため、光源の費用と消費電力を3分の1にすることができる。
【0022】
なお、本発明において、フィルタ本体の形状は、円筒形に限定されるものではなく、断面が正三角形や正六角形などの多角形の筒とすることができる。たとえば、図3に示されるように、光源11から最短距離がL2になるように配置される正三角形の筒のフィルタ本体12を用いることにより、受光強度は前記図5に示される場合と同じになるが、フィルタ本体12の一端が閉止板13により閉塞されているため、臭い成分を含む空気を光触媒に確実に通過させることができるので、清浄効果を向上させるとともに、光源の費用と消費電力を3分の1にすることができる。
【0023】
前記実施の形態では、光源から受ける受光強度を高めるとともに、気流を乱さないようにフィルタ本体が配置されているため、フィルタ本体の全面積を100%活用することができる。その結果、空気の清浄効果が高い浄化フィルタユニットを得ることができるため、空気浄化器や室内冷暖房機などの環境浄化機器である空気清浄装置に適用することができる。
【0024】
かかる空気浄化装置は、本発明において、とくに限定されるものではないが、浄化フィルタユニットと、たとえば空気を前記フィルタ本体3の内部に導入する導入手段であるブローやファン(図示せず)とともに、フィルタ1の上流位置または/および下流位置に配置される空気ろ過手段であるフィルタなどを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる浄化フィルタユニットの縦断面図である。
【図2】図1におけるフィルタの左側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかわるフィルタの横断面図である。
【図4】従来のフィルタと光源の一配置例を示す模式図である。
【図5】従来のフィルタと光源の他の配置例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0026】
1 フィルタ
2、11 光源
3、12 フィルタ本体
4、13 閉止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする浄化フィルタユニットであって、前記フィルタが筒状を呈するフィルタ本体と閉止部とからなり、かつ該フィルタ本体の一端が開放されるとともに、該フィルタ本体の他端が前記閉止部により通気が封止されており、前記光源が該フィルタ本体の内部の長手方向に挿通されるとともに、該光源の一端が前記閉止部に支持されてなることを特徴とする浄化フィルタユニット。
【請求項2】
前記フィルタ本体の形状が円筒形または断面が多角形の筒である請求項1記載の浄化フィルタユニット。
【請求項3】
光触媒を担持したフィルタに光源からの紫外線を照射することによって、空気を清浄にする空気浄化装置であって、筒状を呈しており、かつ一端が開放されるとともに、他端の通気が封止されているフィルタ本体および該フィルタ本体の他端の通気を封止する閉止部からなるフィルタと該フィルタ本体の内部の長手方向に挿通されるとともに、一端が前記閉止部に支持されている光源とからなる浄化フィルタユニットと、空気を前記フィルタの内部に導入する導入手段とを備えてなることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項4】
前記フィルタ本体の形状が円筒形または断面が多角形の筒である請求項3記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320467(P2006−320467A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145197(P2005−145197)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】