説明

浄化槽等の害虫駆除装置

【課題】浄化槽内に揮散物質たる殺虫成分を含有する担体を適宜数吊下げて、槽内蓄積たる排水、汚水上に形成される空間に殺虫成分を含むエアーを放散させる場合、蒸発する水分、曝気等により飛散する汚水、汚物、洗剤等より発生する多量の泡等が担体に付着し、害虫駆除能力が低下する。
【解決手段】浄化槽への送風装置にカートリッジを着脱自在にし、殺虫性化合物たる害虫駆除剤を取替え自在とする。収容乃至設置自在とする。カートリッジにブロアーよりエアーを送り、常温において揮散している殺虫性化合物をエアーにより浄化槽へ送り、浄化槽内空間部に行き渡らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽等の害虫駆除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浄化槽内で発生するハエ、蚊等害虫の除去乃至発生予防は、使用者、管理者等において困難な問題である。
浄化槽内の害虫駆除の方法、装置として、常温で揮散し続ける殺虫性化合物を含浸乃至付着させた担体を、浄化槽内の空間部に配置して長期間に亘って駆除するものが提案されている(特許文献1、2)。
【0003】
又、従来の殺虫方法、装置として、容器内に殺虫剤をその殺虫剤の形状、性能、作用等に応じて構成設置し、必要に応じ加熱ヒーターにより蒸発、揮発、蒸散させて、これら殺虫成分をファンにより強制的に拡散させるものが各種提案されている(特許文献3、4、5、6、7、8)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−12405号公報
【特許文献2】特開2006−225408号公報
【特許文献3】特開昭58−4533号公報
【特許文献4】実公昭49−26141号公報
【特許文献5】実開昭52−166107号公報
【特許文献6】実公平1−35671号公報
【特許文献7】実公昭62−6211号公報
【特許文献8】特開平6−153752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、浄化槽内に殺虫性化合物より成る害虫駆除剤を空間部に配置して、殺虫成分の揮散により長期間に亘って駆除することは想定するほどの効果を挙げることは困難であることが解かっている。
【0006】
それは、害虫駆除剤は紙、プラスチック等のプレート状に形成された担体に付着、含浸させて形成させ、該担体を浄化槽内に吊るして設置されるため、浄化槽内は殺虫成分が揮散し有効に作用する当初の間は、殺虫効果により害虫駆除が行われているが、時間の経過により浄化槽内に蓄積される雑排水、汚水等により蒸発する水分、入り込む塵、埃等が担体に付着し、薬効成分の揮散を妨げ駆除能力が落ちてくる。
【0007】
更に、例えば、合併槽においては、洗剤等の泡が多く発生し、槽中の空間部が泡で埋まってしまうことがあり、かかる場合、害虫駆除剤の担体も包み込まれ、空気の流通も抑制され、その後著しく汚れが付着し、害虫駆除能力の低下を早めることになる。
【0008】
又、浄水槽底部に設けられた曝気機構より放出されるエアーにより、飛散する汚水、汚泥等が担体に付着することもある。
そこに、害虫の発生が増えてくると、益々能力が落ち、薬剤そのもに付着するものもあり、例えば予定の3ヶ月間も殺虫効果を挙げることが困難な状況となることが多い。
勿論、殺虫性化合物より成る害虫駆除剤の保守点検を頻繁に行えば問題ないが、一般的に保守点検は回避したい作業であり、業者任せになっており、管理者、使用者が行うことは殆どなく、費用の問題等もあり、常時行うことは困難で、害虫駆除剤の駆除能力が落ちてから、それを交換することが多い。
【0009】
更に問題となるのが、使用する害虫剤の種類により、例えば劇薬使用剤の場合、資格所有者しか扱うことが出来ないことである。かかる場合には、費用もかかり、薬剤交換も大変である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明においては、直接、浄化槽内に害虫駆除剤を設置するような浄化槽への直接作業を避けることにより、誰にでも殺虫剤交換作業を容易に実施できることになり、害虫駆除剤の薬効を常時充分に発揮させ、害虫を確実に駆除させる装置を提案する。
【0011】
又、浄化槽内に吊下げるような設置場所を特定することなく、一定の空気の流れで浄化槽内に害虫駆除剤の薬効を充分行き亘らせ、害虫駆除効果を挙げる装置を提案する。
又、劇薬使用剤であっても、有資格者が簡単に薬剤設置、取替えが出来ることを目的とする。
【0012】
本発明は、これら目的を達成するため、排出管或いは浄化槽に、ブロアーと連結した送気管又は散気管を連結させると共に、該送気管又は散気管にカートリッジ係合部を設け、該カートリッジ係合部にカートリッジをその開口部により着脱自在に設置させる一方、該カートリッジには常温気化性殺虫化合物を収容させたことを特徴とする浄化槽等の害虫駆除装置である。
【0013】
又、前記カートリッジ係合部は、送気管又は散気管上流側端と下流側に夫々設置させ、該カートリッジの有する二つの開口を夫々着脱自在に係合固定させることを特徴とする浄化槽等の害虫駆除装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浄化槽には直接触れることなく、且つ浄化槽内を亘ることもなく、殺虫性化合物を収納、収容したカートリッジを送気管に着脱自在に装着する構成で、誰でも容易に簡単に、且つ不潔感を感ずることなく、衛生的に殺虫性化合物の容器の着脱を行うことが出来る。
【0015】
このため、頻繁に殺虫性化合物の新規設置、交換が容易で、常に殺虫効果の大なる殺虫化合物のエアーを浄化槽等に送入することが出来、浄化槽空間に揮散殺虫性化合物を送り、間断なく殺虫効果を挙げられるので、害虫の駆除、予防に万全を期することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に示す本発明一実施例により、本発明を詳細に説明する。
1は、浄化槽で、一般的な分離曝気型浄化槽を示すが、これに限定されることなく各種の浄化槽を使用することが出来ること当然である。
【0017】
更に、浄化槽1だけに限定することなく、一定の閉塞された空間でエアー排出入口があれば使用できる。
例えば、水槽、下水槽、下水道等使用範囲は広い。
図に示す浄化槽1は、隔壁2,2により各室3,3,3に分割され、隔壁2,2に沿って設けられ、底板5より上方に位置する仕切板4,4によって通路6,6が形成されている。
【0018】
又、浄化槽1の出口7の側壁11に対応して仕切板41が設けられ、通路61が形成されている。出口7と反対側の側壁12には入口8が形成され、排出管13に連結してある。
9,9,9は、浄化槽1上部に設けられた開口で、各蓋10,10,10が浄化槽1を密封するように開閉自在に設けられている。
【0019】
排出管13には、夫々トラップ14を経て雑排水排出管15、汚水排出管16が連結されている。
20は、カートリッジで軽耐圧型とするのが良いが、これに限定しない。該カートリッジ20には、口部201,202が設けられ、該口部201,202には、カートリッジ係合部203を介して、送入口23、送出口24に連結自在としてある。送入口23にはフロート25を介してブロアー26に連結してある。送出口24は、送気管240を以って排出管13に連結してある。
このカートリッジ20と、送入口23、送出口24との連結は、各種の形態が適用される。
【0020】
カートリッジ20は、各種の形状が夫々薬剤の性質、量、その他により対応して適宜使用出来る。
図3、図4に示す実施例は、カートリッジ20をケース210に収納した状態を示すものである。扉211を開け、カートリッジ20を、台、コロ、車輪等212を介して、ケース210に押し入れる。この際、カートリッジ20の口部201は、送入口23の下端に設けた係合部203を介して送入口23に、他の口部202は係合部204を介して送出口24に夫々係合固定される。
【0021】
又、このケース210は、別構造としてケース210の上部を開閉自在の蓋として、この蓋に送入口23、送出口24を柔軟ホース等により構成し、蓋の開閉によりカートリッジ20の出し入れを行い、且つ密閉をする構成も採用出来る。
【0022】
図5、図6、図7に他例を示す。図5、図6に示すカートリッジ20においては、口部201は一個に形成し、内蓋205にて害虫駆除剤を封入し、キャップ206を螺入してある。この際、カートリッジ20内に毛細管布又はスポンジ等の吸上材207を収納させておくことも出来る。
【0023】
このカートリッジ20の着脱は、送入口23と送出口24を連結し、その中間に取付口208を設け、カートリッジ20を螺入固定させる構成が出来る。
又、この際、取付口208には、針乃至カッター209を突出させておき、カートリッジ20を取付口208に螺入の際に、口部201の内蓋205を自動的に破り、害虫駆除剤の流出可能にさせる構成は推奨される。
図7の構成は、図5、図6の構成の取付口を二つに構成したもので、内蓋205、カッター209の設置が便利である。
【0024】
害虫駆除剤としては、ジクロルボス、ピレスロイド化合物、フルオロベンジルエステル化合物、ジクロルビニルリン酸ジメチル等の化合物をプラスチック、紙等の殺虫性化合物をプレート、シート状の担体28に含浸、付着させて形成させたものが使用される。
【0025】
害虫駆除剤によるが、一般的に浄化槽1内の空間1m当たり500〜10000cm程度の量が好ましいとされている。
【0026】
カートリッジ20には、送入口23からエアーが送入され、カートリッジ20内に揮散する殺虫性化合物を吹いて、送出口24より送り出す作用を行う。
【0027】
送入口23には、ブロアー26よりエアーがエアー調整弁33、フロート25を介して送り込まれている。ブロアー26には、エアー逃がし弁31を介して、消音ボックス32が連結されている。
【0028】
34は、ブロアーで、散気管35を介して浄化槽1にエアーを送り、好気性菌の活性を図り、排水、汚水の分解を促進させるようにしてある。
尚、当然のことながら、嫌気性菌を使用する場合には、その槽なり、室なりには、エアーは送り込まないほうが良く、エアー送入阻止機構等によりエアーを断つのが良いこと勿論である。
【0029】
次いで、本発明の殺虫方法について説明する。
先ず、運転の停止時には、エアー調整弁33或いは別途設ける弁により、カートリッジ20内の前後を閉じ、害虫駆除剤の流通を遮断しておく。
運転の開始時、ブロアー26を作動させ、同時にカートリッジ20を封入していた弁等を開放し、エアー逃がし弁31を閉じ、エアー調整弁33を開放して、エアーをフロート25を介してカートリッジ20に送入する。
【0030】
然る時、エアーは、カートリッジ20内に拡散する。或いは又、カートリッジ20の取付口208上を通過する。
そして、カートリッジ20内において、蒸発する殺虫性化合物がエアーに包まれ、送出口24より送り出され、送気管240を経由して、排出管13を通り、浄化槽1に送入される。浄化槽1内においては、浄化槽1上部の各室3,3…に溜められる排水、汚水は好気性菌により分解され、浄化され、排出口7より順次排出されて行く。この際、浄化槽1には、ブロアー26又は34より散気管35を経て、常にエアーが送り込まれ、排水、汚水は曝気され続けている。
【0031】
従来の浄化槽において、このエアーは、排水、汚水の表面に亘って接触し、各室3,3…に行き渡るが、そのまま出口7より流されて、浄化槽1上方、殊に蓋10,10…近辺に流れるエアーは少ない。
本願発明の場合には、殺虫性化合物を含んだエアーが排出管13より送り出され、排水、汚水と浄化槽1上方、殊に蓋10近辺との空間101を進行し、一部は各室3,3内の排水、汚水上に降りるが、該排水、汚水上方の空間を殺虫性化合物により充満させて進み、浄化槽1の上方たる蓋10,10…近辺を満たし、排出口7より排出される。
【0032】
このため、害虫の発生し易く、且つ生臭い、排出管13内全て、浄化槽1の空間101が、殺虫状化合物により満たされ、且つその状態が持続され、該害虫の生息状況は消滅している。
【0033】
又、図2が示す第2実施例について説明する。
基本型は、図1と同じであるが、該実施例においては、小規模浄化槽において実施される形態で、浄化槽散気管35にエアーを送る作動と、カートリッジ20にエアーを送る動作とを共通のブロアー34だけで行う方法及び装置である。この装置の場合、ポンプとしては、ダイヤフラム型を使用するのが通例である。
【0034】
即ち、ブロアー34よりのエアーを、散気管35及び該散気管35より分岐エアー調整弁352を経て、カートリッジ20に至る分岐管351に送る構成としたものである。
これにより、浄化槽1には、散気管35より曝気エアーを送ると同時に、排気管13或いは又、入口8に殺虫性化合物を含むエアーを送り込むことになる。
この場合、送気管240の出口241を排出管13に挿入したり、浄化槽1の入口8或いは浄化槽1の中央上部の何れにも設定することが出来る。
【0035】
次に、図8に示す実施例について説明する。
この実施例においては、カートリッジ20には液体の殺虫性化合物たる害虫駆除液を収容させ、フロート25、管213を介して送られるエアーにより、液中より発泡させ、液の揮散を促進させると共に、浮上した揮発性化合物を含むエアーを送出口24より送り、送気管240を介して浄化槽1に、揮発性化合物を含むエアーを放散させ続けることにより、害虫の生息状況をなくして、害虫駆除効果を挙げることが出来る。
又、この出口241には、任意方向に向けられる噴出口245を有するボール型キャップ246を設けた取付口243、或いは噴出口245を斜状に形成したキャップ244を着脱自在に設置し、放散方向を特定し、或いはその噴出力を制御することも出来る。
この殺虫性化合物たる害虫駆除液は、前記第1実施例、第2実施例何れかにおいても使用出来ること勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明一実施例概略説明図
【図2】本発明他実施例概略説明図
【図3】本発明一実施例一部拡大説明図
【図4】本発明一実施例一部拡大説明図
【図5】本発明一実施例一部拡大説明図
【図6】本発明一実施例一部拡大説明図
【図7】本発明一実施例一部拡大説明図
【図8】本発明他実施例要部説明図
【図9】本発明一実施例一部拡大説明図
【図10】本発明一実施例一部拡大説明図
【符号の説明】
【0037】
1 浄化槽
10 蓋
11 側壁
12 側壁
13 排出管
14 トラップ
15 雑排水排出管
16 汚水排出管
101 空間
2 隔壁
20 カートリッジ
23 送入口
24 送出口
25 フロート
26 ブロアー
27 密閉蓋
28 担体
29 係止部
201 口部
202 口部
203 係合部
204 係合部
205 内蓋
206 キャップ
207 吸上材
208 取付口
209 針乃至カッター
210 ケース
211 扉
212 車輪
240 送気管
3 室
30 拡散板
31 エアー逃がし弁
32 消音ボックス
33 エアー調整弁
34 ブロアー
35 散気管
301 通孔
351 分岐管
352 エアー調整弁
4 仕切板
40 ブロアー
41 仕切板
5 底板
6 通路
61 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出管或いは浄化槽に、ブロアーと連結した送気管又は散気管を連結させると共に、該送気管又は散気管にカートリッジ係合部を設け、該カートリッジ係合部にカートリッジをその開口部により着脱自在に設置させる一方、該カートリッジには常温気化性殺虫化合物を収容させたことを特徴とする浄化槽等の害虫駆除装置。
【請求項2】
前記カートリッジ係合部は、送気管又は散気管上流側端と下流側に夫々設置させ、該カートリッジの有する二つの開口を夫々着脱自在に係合固定させることを特徴とする請求項1に記載の浄化槽等の害虫駆除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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