説明

浄化素子及び浄化方法

【課題】浄化材を包む保持体を改良して液体中で自由に動き回れるようにすることにより、浄化効率を高める。
【解決手段】複数個の浄化材を網状保持体に包んだ浄化素子23を製造する。浄化素子23の比重は、水の比重に等しいか、或いはそれ以下にしておく。プール又は浴槽として使用する主水槽21の一部に浄水部22を設け、浄水部22に浄化素子23を浮遊させる。浄水部22以外の部分がプール又は浴槽として利用されているとき、その振動が浄水部22に伝わり、浄化素子23が浄水部22内で動き回る。その結果、水が浄化素子23内に入り込んで浄化材と接触することにより、浄化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水、海水などの液体を浄化する浄化素子及び浄化方法に関する。特に、浄化材を有する保持体を液体中で自由に移動できるようにしておくことにより、浄化効率を高めようとするものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2004−298708号公報
【特許文献2】特許第3328349号公報
【0003】
浄化材は、セラミック等から作られた大きさ数mm程度の粒である。例えばセラッミクから作られた浄化材は、アンモニア等を分解する触媒として作用し、長期間使用できる。しかしプール等の大型受水槽にそのまま入れて使用するのであれば、その回収が容易でない。そこでメタル等の容器に入れ、底に沈めて一晩放置することにより、浄化していた。しかし浄化材をおいた近傍の水が浄化されるだけであり、均一に浄化できないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、浄化材を包む保持体を改良して液体中で自由に動き回れるようにすることにより、浄化効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、浄化材と、通水性のある部分に該浄化材を保持する保持体とを有することを特徴とする浄化素子である。
本発明(2)は、前記保持体が軽量材をも保持し、全体の比重が水の比重に等しいか或いはそれ以下であることを特徴とする本発明(1)の浄化素子である。
本発明(3)は、前記保持体が親水性軽量体をも保持し、乾燥時には全体の比重が被浄化液に等しいか或いはそれ以下であるが、吸湿時には被浄化液に等しいか或いはそれ以上であることを特徴とする本発明(1)の浄化素子である。
【0006】
本発明(4)は、前記保持体は、前記浄化材を包む網状保持体であることを特徴とする本発明(1)の浄化素子である。
本発明(5)は、前記網状保持体がポリエチレン又はポリプロピレンから作られており、全体の比重が水の比重に等しいか或いはそれ以下であることを特徴とする本発明(4)の浄化素子である。
本発明(6)は、前記保持体が親水性材料から作られており、乾燥時には全体の比重が被浄化液に等しいか或いはそれ以下であるが、吸湿時には被浄化液に等しいか或いはそれ以上であることを特徴とする本発明(4)の浄化素子である。
本発明(7)は、前記保持体が薄板型であることを特徴とする本発明(1)乃至(6)のいずれか1つの浄化素子である。
【0007】
本発明(8)は、前記保持体が楕円球であることを特徴とする本発明(1)乃至(6)のいずれか1つの浄化素子である。
本発明(9)は、本発明(1)乃至(8)のいずれか1つの浄化素子を、被浄化液に浮遊させて使用することを特徴とする浄化方法である。
本発明(10)は、前記浄化素子の保持体に殺菌材を付加して使用することを特徴とする本発明(9)の浄化方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明(1)による浄化素子は、被浄化液が溜まっている受水槽に投入するだけで、簡単に浄化することができる。特に、浄化素子の比重が被浄化液の比重に等しいか、或いはそれ以下であるとき、該浄化素子が浮遊状態になる。すなわち、被浄化液が静止している状態、或いは低速で流れている状態であっても、浄化素子が動き回って、浄化効率を高めることができる。浄化素子を複数個投入することにより、浄化素子が被浄化液全体に広がって、均一に浄化することができる。また浄化終了後の浄化素子の回収は、受水槽内のそれらを集めるだけであり、簡単に行なうことができる。
【0009】
本発明(2)、(5)によれば、被浄化液を効率的に浄化することができる。また被浄化液が水、湯であり、保持体としてやわらかい材料を用いたとき、遊戯具として利用できる。すなわち、子供達がこの遊戯具で遊んでいるときに、水が遊戯具内部に保持されている浄化材に接触する機会が多くなり、プール、浴槽等の水を浄化することができる。
【0010】
本発明(3)、(6)による浄化素子を、被浄化液に投入することにより、ゆっくり沈殿しながら、被浄化液の上部から下部までを均一に浄化することができる。親水性材料として、吸水速度の遅いものを用いることが好ましい。
【0011】
本発明(4)によれば、網状保持体に四方八方から入出して、その内部に保持されている浄化素子に衝突するので、浄化効率を高めることができる。
【0012】
本発明(7)によれば、浄化素子と被浄化液との接触面積が大きくなる。被浄化液と大きく接触する面に浄化材を一様に分布させておくことにより、浄化効率を向上させることができる。また本発明(3)、(6)のように保持体又は軽量体を親水性材料から作って、ゆっくり沈殿させながら使う場合にも、被浄化液との接触面積が大きいためにその沈殿速度を遅くすることができる。従って、被浄化液の上部から下部までを均一に浄化する際も、浄化効率を向上させることができる。
【0013】
本発明(8)によれば、浄化素子の比重が大きく沈む場合でも、底面を転がりながら動き回る。従って、被浄化液が静止している状態、或いは低速で流れている状態であっても、効率的に浄化することができる。浄化素子を複数個投入することにより、浄化素子が底面全体に広がって、均一に浄化することができる。
【0014】
本発明(9)によれば、被浄化液を効率的に浄化することができる。
【0015】
本発明(10)によれば、殺菌効果も有しており、観賞用水槽や養殖場で利用するのに効果がある。特に浄化材としてアンモニアをアンモニウムや窒素酸化物に分解する機能も有するものを用いることにより、魚を成育できる環境が長期間保たれる。従って、水や海水を交換する間隔を延ばすことができる。殺菌材として、カキ殻や貝殻等の粉末をもちいればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良形態について説明する。
【0017】
(浄化素子)
図1に、本発明の実施例である浄化素子の断面図を示す。
(a)は、複数個の浄化材11を網状保持体12で包んだ浄化素子である。浄化材11として、特許文献1、特許文献2に記載されているように表面積を大きくしたものを用いる。これを網状保持体12で包んで、被浄化液に入れたときに、被浄化液が網状保持体12の隙間から入出して、浄化材11に接触するようにする。
【0018】
浄化素子全体の比重は、被浄化液の比重に等しくするか、或いはそれ以下にすることが好ましい。この浄化素子を被浄化液に入れたときに、浄化素子が浮遊状態になる。すなわち、被浄化液が静止している状態、或いは低速で流れている状態であっても、浄化素子が動き回る。そのために被浄化液が網状保持体12の隙間から入出して浄化材11に接触する機会が多くなり、浄化効率を高めることができる。また浄化素子を複数個投入することにより、浄化素子が被浄化液全体に広がって、均一に浄化することができる。
【0019】
水を浄化する場合は、浄化素子の比重を1.0以下にすることが好ましい。浄化材11の比重は一般に1.0より大きい。そのために、網状保持体12として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の比重の小さいプラスチックを用いることにより、全体の比重を1.0以下にする。
【0020】
(b)は、保持体13の一部を網状にして、その部分に浄化材11を包んだものである。保持体13の他の部分には軽量体14を入れて、浄化素子全体の比重が、被浄化液に等しいか或いはそれ以下になるようにしている。
【0021】
(c)は、網状保持体12の内部に、浄化材11と一緒に粒状の軽量体15を入れたものである。
【0022】
(a)〜(c)において、保持体12、13、又は軽量体14、15を親水性材料から作るようにしてもよい。その際、乾燥時には全体の比重が被浄化液に等しいが或いはそれ以下になるようにし、吸湿時には被浄化液に等しいが或いはそれ以上になるようにする。この浄化素子を被浄化液に投入することにより、ゆっくり沈殿しながら、被浄化液の上部から下部までを均一に浄化することができる。親水性材料として、吸水速度の遅いものを用いることが好ましい。
【0023】
浄化素子が被浄化液内に浮遊して長く留まる場合は、浄化素子の外形(保持体)を薄板型にすることが好ましい。このとき、浄化素子と被浄化液との接触面積が大きくなる。被浄化液と大きく接触する面に浄化材11を一様に分布させておくことにより、浄化効率を向上させることができる。また保持体12、13、又は軽量体14、15を親水性材料から作って、ゆっくり沈殿させながら使う場合にも、被浄化液との接触面積が大きいためにその沈殿速度を遅くすることができる。従って、被浄化液の上部から下部までを均一に浄化する際も、浄化効率を向上させることができる。
【0024】
浄化素子の比重が大きく被浄化液に沈む場合は、浄化素子の外形(保持体)を楕円形にすることが好ましい。この場合、浄化素子は底面を転がりながら動き回る。すなわち、被浄化液が静止している状態、或いは低速で流れている状態であっても、浄化素子が動き回って効率的に浄化することができる。また浄化素子を複数個投入することにより、浄化素子が底面全体に広がって、均一に浄化することができる。
【0025】
(プール、浴槽の浄化方法1)
図2は、プール、浴槽の浄化方法の一実施例を示す概略図である。
本実施例では、プール又は浴槽として利用する主水槽21の一部に、浄水部22を設ける。浄水部22には浄化素子23を入れ、浄水部22から浄化素子23が流出しないように、例えば金網24で区切っておく。
【0026】
浄化素子23として、比重が水に等しいか、或いはそれ以下のものを用いることが好ましい。このとき浄化素子23は、浄水部22内を浮遊する。浄水部22以外の部分がプール又は浴槽として利用されているとき、その振動が浄水部22に伝わり、浄化素子23が浄水部22内で動き回る。その結果、水が浄化素子23内に入り込んで浄化材と接触することにより、浄化される。
浄化素子23の大きさは、特に限定されない。取扱い易い大きさにしておくことにより、その投入や回収を簡単に行なうことができる。
【0027】
プール又は浴槽として利用されていないときに、浄化素子23を主水槽21全体に投入するようにしてもよい。浄化素子23として、保持体又は軽量体が親水性材料から作られ、乾燥時には全体の比重が水の比重に等しいか或いはそれ以下で、吸湿時には水の比重に等しいか或いはそれ以上になるものを用いることが好ましい。また親水性材料として、吸水速度の遅いものを用いることが好ましい。この浄化素子23を主水槽21に投入したときに、ゆっくり沈殿しながら、主水槽21内の水全体を均一に浄化することができる。
【0028】
(プール、浴槽の浄化方法2)
図3はプール、浴槽の浄化方法の他の実施例を示す概略図である。図中、図2と同じものは同一符号で示す。
本実施例では、プール又は浴槽として利用する主水槽21とは別に、浄化用水槽31を設ける。浄化用水槽31に浄化素子23を入れて、ポンプ32で送水することにより浄化する。浄化素子23として、比重を水の比重に等しくするか、或いはそれ以下にすることが好ましい。このとき、ポンプ32による送水により、浄化用水槽31内で浮遊状態になっている浄化素子23が動き回る。すなわち、ポンプ32による送水速度が速くなくても、例えば人体に感じない程度の流れであっても、十分に浄化することができる。またポンプ32で消費する電力を少なくすることができる。
【0029】
(プール、浴槽の浄化方法3)
様々な形状、模様付けされた浄化素子を作り、それらを遊戯具として利用するようにしてもよい。プール或いは浴槽内で、子供達がこれらの遊戯具で遊んでいるときに、水が遊戯具内部に保持されている浄化材に接触することが多くなり、水を浄化することができる。
【0030】
(観賞用、養殖用水槽の浄化方法1)
本発明による浄化素子を、水族館等の観賞用水槽や、養殖用水槽に入れて浄化するようにしてもよい。図4にその概略図を示す。図中、図2、図3と同じものは同一符号で示す。
【0031】
水槽41内で魚42が泳いだり、気泡発生装置で泡を発生させたりすることによって、水が振動している。その水槽に浄化素子23を入れることにより、振動している水が浄化素子23内に入り込み、浄化材に接触して、効率的に浄化される。
【0032】
魚の排泄物等から発生するアンモニアNH3をアンモニウムNH4+、窒素酸化物に分解するために、例えばアンモニア低減微生物を浄化材に混入するようにしてもよい。これと並行して、水槽41内に水草、海草等の草類43を植えておくことにより、草類43による光合成反応でアンモニウムNH4+、窒素酸化物を窒素分子N2に分解して、水を浄化する。従って、魚を成育できる環境が長期間保たれ、水を交換する間隔を延ばすことができる。
【0033】
また魚が細菌に侵されるのを防ぐために、浄化素子23の周りに殺菌材、例えばカキ殻、貝殻の粉末を付加するようにしてもよい。例えば、カキ殻、貝殻の粉末を網状保持体の隙間に埋め込んだり、貼り付けたりして使用するようにしてもよい。
【0034】
更に、観賞効果を高めるために、浄化素子23を様々な形にしたり、色付け等を行なったりしてもよい。
浄化素子23の大きさは、特に限定されない。取扱い易い大きさにしておくことにより、その投入や回収を簡単に行なうことができる。
【0035】
(観賞用、養殖用水槽の浄化方法2)
魚が浄化素子23を飲み込んだり、草類43を荒らしたりするのを防ぐために、水槽41内に浄水部を設けるようにしてもよい。すなわち図2と同様に、水槽41内の一部を金網等で区切って、浄水部を設ける。その浄水部に草類43を植えて、浄化素子23を入れる。このとき、浄化素子23が飲み込まれたり、草類43が荒らされたりすることなく、水を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例である浄化素子の断面図である。
【図2】本発明による浄化素子を用いて、プール、浴槽の水を浄化する方法の一実施例を示す概略図である。
【図3】本発明による浄化素子を用いて、プール、浴槽の水を浄化する方法の他の実施例を示す概略図である。
【図4】本発明による浄化素子を用いて、観賞用水槽や、養殖用水槽の水を浄化する方法の一実施例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0037】
11:浄化材
12:網状保持体
13:保持体
14、15:軽量体
21:主水槽
22:浄水部
23:浄化素子
24:金網
31:浄化用水槽
32:ポンプ
41:水槽
42:魚
43:草類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化材と、通水性のある部分に該浄化材を保持する保持体とを有することを特徴とする浄化素子。
【請求項2】
前記保持体は軽量材をも保持し、全体の比重が被浄化液の比重に等しいか或いはそれ以下であることを特徴とする請求項1記載の浄化素子。
【請求項3】
前記保持体は親水性軽量体をも保持し、乾燥時には全体の比重が被浄化液に等しいか或いはそれ以下であるが、吸湿時には被浄化液に等しいか或いはそれ以上であることを特徴とする請求項1記載の浄化素子。
【請求項4】
前記保持体は、前記浄化材を包む網状保持体であることを特徴とする請求項1記載の浄化素子。
【請求項5】
前記網状保持体はポリエチレン又はポリプロピレンから作られており、全体の比重が水の比重に等しいか或いはそれ以下であることを特徴とする請求項4記載の浄化素子。
【請求項6】
前記保持体は親水性材料から作られており、乾燥時には全体の比重が被浄化液に等しいか或いはそれ以下であるが、吸湿時には被浄化液に等しいか或いはそれ以上であることを特徴とする請求項4記載の浄化素子。
【請求項7】
前記保持体は薄板型であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の浄化素子。
【請求項8】
前記保持体は楕円球であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の浄化素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載の浄化素子を、被浄化液に浮遊させて使用することを特徴とする浄化方法。
【請求項10】
前記浄化素子の保持体に殺菌材を付加して使用することを特徴とする請求項9記載の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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