説明

浄水器

【課題】浄化カートリッジを特殊な構造にせずに、十分な量の原水を容易かつ安全に浄化することができるようにした浄水器を提供する。
【解決手段】ペットボトル15の浄水受け口15aをカートリッジ収納部3の弁体収納部4内へ挿入させる。すると、作動部材8と浄水受け口15aの周部とが当接し、作動部材8を上昇させる。このようにペットボトル15により作動部材8を介して弁体7を上昇させると、流水口6が開く。これにより浄化された水が、浄化カートリッジ5を通ってペットボトル15内へ流出し、ボトル内部に貯留される。使用者は、弁体収納部4からペットボトル15を取り外すことにより、浄化された水を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水貯留ケースと浄化カートリッジを具備する浄水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水器として多種のものが市販されており、蛇口直結型,据え置き型(ホース取り付け型),水栓一体型(水栓に浄水器カートリッジが組み込まれたタイプ),アンダーシンク型(キッチンの下に浄水器を取り付けるタイプ)、あるいはポット型またはピッチャー型といわれる家庭用のハンデイタイプのものが知られている。
【0003】
近年、健康志向の高まりなどから一般家庭において多く使用されているポット型またはピッチャー型(以下、ピッチャー型という)の浄水器の構造としては、特許文献1に記載されているように、原水貯留部と浄水貯留部とこれら両貯留部間に設置される浄水用カートリッジを具備し、カートリッジ本体内で原水貯留部と浄水貯留部とが上下方向に配され固定された構造になっている。
【0004】
このため、一般的なサイズのピッチャー型の浄水器であっても、台所において水道の蛇口の下に原水貯留部を位置させて水道水を受けようにすると、蛇口のシンクに対する取り付け位置(高さ)、あるいは浄水器の大きさ(高さ)によっては、浄水器を斜めに置かなければならず、蛇口からの水を十分に受けることができない状況に至ることがある。
【0005】
さらに、この種のピッチャー型の浄水器は、通常、屋内での使用を前提としており、公園あるいはキャンプ地などの野外,屋外における持ち運びに便利のようにはなっておらず、またサイズ的にも大きなものである。
【0006】
ところで、特許文献2,3には、使い終わったペットボトルを利用して、ペットボトルに浄化されていない原水を入れ、該ペットボトルの注ぎ口に浄化カートリッジを装着可能にした浄水構造のものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−230341号公報
【特許文献2】特開平10−211954号公報
【特許文献3】特開2007−99387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2,3に記載の浄水器では、ペットボトルの注ぎ口に対応する独自の構造のカートリッジを用いている。そして、特許文献2に記載の構造のカートリッジでは、原水が収納されているペットボトルの注ぎ口を下にすると水が漏れ出てしまう可能性がある。また、特許文献3に記載の構造のカートリッジでは、浄化フィルタ内部を貫通する開閉弁を設けて、不用意に水が流出しないようになっている。
【0009】
このように、特許文献2,3に記載の発明では、市販されている一般的な浄化カートリッジを用いることを前提にしておらず、浄化カートリッジ自体の製造コストが高くなるという課題がある。
【0010】
本発明は、前記従来技術の課題を解決し、浄化カートリッジを特殊な構造にせずに、十分な量の原水を容易かつ安全に浄化することができるようにした浄水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、上部に原水注ぎ口部が形成され、かつ底部にカートリッジ収納部が形成された原水貯留ケースと、前記原水貯留ケースの前記カートリッジ収納部に装着され、原水浄化を行う吸着材が内蔵された浄化カートリッジとを備え、前記原水貯留室ケース内の原水を、原水の自重により前記浄化カートリッジ内の前記吸着材を通って、前記原水貯留ケースの外部に着脱可能に取り付けられる浄水貯留ケースへ移動させる構成の浄水器であって、前記原水貯留ケースの前記カートリッジ収納部部分に外部へ突出する筒状部を形成すると共に、該筒状部の上壁部に前記原水貯留ケースと連通する流水口を形成し、前記筒状部に前記流水口を上下動することにより開閉する弁体を設け、前記筒状部における前記弁体の下部に該弁体を上昇させて開弁させる作動部材を設け、前記浄水貯留ケースの浄水受け口を前記筒状部に装着することにより、前記浄水受け口の周部が前記作動部材に当接して該作動部材を上昇させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の浄水器において、作動部材に、該作動部材を弁体と共に下方へ付勢するスプリングを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の浄水器において、弁体が側面視略T状の軸体であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1,2または3に記載の浄水器において、作動部材が弁体の下端部に固定された板状体であることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1,2または4に記載の浄水器において、作動部材に、浄水貯留ケースの浄水受け口との当接部において空気逃げ部となる隙間部を形成したことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1,2,4または5に記載の浄水器において、作動部材に複数の水流出部を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の浄水器において、流水口の周部に、作動部材の上下動を案内する案内部を設けたことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の浄水器において、浄水貯留ケースとしてペットボトルを用いることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の浄水器において、浄水貯留ケースの開口部に載置される板状部と、原水貯留ケースの筒状部に装着される筒状体部とを備えた補助部材における筒状体部により作動部材を上昇させることを可能にしたことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の浄水器において、補助部材の板状部に、多種の浄水貯留ケースの開口部周部と選択的に係合する多数の凸部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る浄水器は、基本的に原水貯留ケースと浄化カートリッジとから成っており、浄水貯留ケースとしてはペットボトルなどの身近にある各種ボトルを用いるため、屋外,野外における使用に際しては、浄化カートリッジを具備する原水貯留ケースを持ち運びすればよく、極めて使い勝手がよい浄水器となる。
【0018】
さらに、弁体を設けて原水貯留ケースを持ち運びに際して閉弁状態になるようにしてあり、不用意に浄水が漏れ出るようなことはない。そして浄水を必要とするときには、ペットボトルなどを取り付ければ、開弁して浄化カートリッジを通った浄水がペットボトルなどへ流れ出るようになる。よって、弁体の開閉に関して使用者に煩雑さを与えることはない。
【0019】
このように、本発明に係る浄水器によれば、浄化カートリッジには弁体などを設置しない特殊な構造にせずに、十分な量の原水を容易かつ安全に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る浄水器の実施形態の一部断面図である。
【図2】図1に示す浄水器の実施形態におけるA部拡大断面図である。
【図3】本実施形態の浄水器における弁体部分の分解斜視図である。
【図4】本実施形態の浄水器における弁体部分の組立状態を示す断面図である。
【図5】本実施形態の浄水器における作動部材の底面側を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る浄水器の浄化カートリッジの断面図である。
【図7】本実施形態の浄水器における浄水時(開弁時)の状態を示す断面図である。
【図8】図7に示す浄水器の実施形態におけるA部拡大断面図である。
【図9】本実施形態の浄水器における補助部材使用時の状態を示す断面図である。
【図10】(a)は図9に示す浄水器の実施形態における補助部材の拡大断面図、(b)は同補助部材の底面図である。
【図11】本実施形態の変形例における要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る浄水器の実施形態の全体構成を示す断面図であり、1は透明樹脂からなる箱型の原水貯留ケースであって、原水貯留ケース1は、上部に原水注ぎ口部2が形成され、かつ底部外側に突出するように大径筒部のカートリッジ収納部3が形成され、さらにカートリッジ収納部3の底部外側に突出するように小径筒状部の弁体収納部4が形成されており、カートリッジ収納部3に原水浄化を行う浄化カートリッジ5が着脱可能に装着されている。
【0023】
図2は図1における弁体収納部4を示すA部拡大断面図であり、6は、カートリッジ収納部3の浄化カートリッジ5に対向して、弁体収納部4の上壁部を貫通するように形成された流水口、7は流水口6に対して上下動することにより該流水口6を開閉する弁体であって、弁体7は、図3,図4に示すように、上部が拡径部7aとなり、かつ下部に軸状部7bが垂下している側面視略T状の軸体である。
【0024】
また、8は、弁体7の下部に固定され、該弁体7を上昇させて開弁させる板状体の作動部材であり、図4に示すように、作動部材8の中央部に軸状部7bの下端部が固定されている。作動部材8には、複数の水流出部8aが設けられ、また図5に示すように底面側に、後述する浄水貯留ケースとの間で空気逃げ部となる隙間部を形成するための突起8bが複数突設されている。
【0025】
図2に示すように、弁体収納部4の上壁部に形成された流水口6の外周部には下方へ突出する環状案内部9が設けられ、また、作動部材8の水流出部8aの外周部には上方へ突出する環状体10が設けられおり、環状体10が環状案内部9に上下摺動可能に嵌合している。これにより作動部材8と弁体7との上下動がガイドされる。
【0026】
図6は本実施形態の浄化カートリッジの内部を示す断面図であり、浄化カートリッジ5は上下ケース5a,5bが一体化された樹脂製のものであって、上ケース5aにリング状の摘み部11が形成され、かつ周部に複数の水取入口12が形成され、下ケース5bの内部に原水の浄化を行う吸着剤からなる浄化用フィルタ13が設けられ、かつ下壁部に水出口部14が形成されている。
【0027】
図1に示す浄水器は閉弁状態であって、弁体収納部4の流水口6を弁体7の拡径部7aが上方から閉鎖している。このため使用者は、例えば、図示しない水道蛇口などの原水供給部から、原水貯留ケース1の原水注ぎ口部2に原水を入れ、この状態で原水貯留ケース1を持ち運び/移動することができ、このとき閉弁状態であって弁体7が流水口6を閉じているため、浄化カートリッジ5を通して浄化された水が外部へ流出/漏れ出るようなことはない。
【0028】
ここで、使用者が、浄化された水が必要な場所において、図7,図8に示すように、浄水貯留ケースであるペットボトル15の浄水受け口15aを、カートリッジ収納部3の小径筒部の弁体収納部4内へ挿入して嵌着あるいは螺入する。これにより、作動部材8と浄水受け口15aの周部とが当接し、作動部材8を上昇させる。
【0029】
このようにして、ペットボトル15により作動部材8を介して弁体7を上昇させることにより流水口6を開くことによって、図8に示すように、浄化カートリッジ5を通って浄化された水が矢印に示すようにペットボトル15内へ流出する。このとき、作動部材8の突起8bが水受け口15aに当接して空気逃げ部となる隙間部Xが形成されるため、ペットボトル15内へ水が多量に流入しても、ペットボトル15内の空気が該隙間部から外部へと流出することになるため、水の流入に支障を与えるようなことはなく、浄水がボトル内部に貯留されることになる。
【0030】
よって、使用者は、原水貯留ケース1(弁体収納部4)からペットボトル15を取り外すことにより、当該ペットボトル15から浄化された水を利用することができる。ペットボトル15を原水貯留ケース1から取り外せば、弁体7を上昇させる力がなくなるため、弁体7は流水口6を閉じる状態に復帰し、弁体7が閉弁状態になる。
【0031】
上記例では、浄水貯留ケースとしてペットボトル15を用いた例を説明したが、図9に示すように、浄水貯留ケースとして、浄水受け口(開口部)20aの広い水受けポット20を使用する場合には、開口部20aをカートリッジ収納部3の弁体収納部4内へ直接挿入することができない。
【0032】
この場合には、図10(a),(b)に示す補助部材21を用いる。この補助部材21には、水受けポット20の開口部20aに載置される板状部21aと、カートリッジ収納部3の小径筒状部の弁体収納部4内へ挿入して装着される筒状体部21bと、外周端部に鍔部21cが設けられている。
【0033】
このため、補助部材21における筒状体部21bにより作動部材8を上昇させることができるようになり、図1〜図8にて説明したと同様に、弁体7の開弁動作を行うことができる。
【0034】
なお、補助部材21の板状部21aに、多種の浄水貯留ケースの開口部周部に対して選択的に係合する多数の凸部21dを設ける。このようにすることにより、使用する水受けポット(浄水貯留ケース)20と原水貯留ケース1との係合が安定し、水受けポット20が補助部材21に対して外れてしまうことを防ぐことができる。
【0035】
図11は上記実施形態の変形例の要部を示す断面図であって、図2に示す断面図と同様の部位の構成図である。図11において、弁体収納部4内におけるカートリッジ収納部3の底部と、作動部材8の外周鍔部8cの上側部との間にスプリング22を圧縮状態で配設している。
【0036】
このようにしたため本例では、水浄化時に弁体7を開弁するとき、図7,図8に示すと同様に、作動部材8を浄水受け口15aに押し当てて上昇させる際、作動部材8の上昇によりスプリング22が圧縮して蓄勢状態になる。このため、ペットボトル15を原水貯留ケース1から取り外すと、スプリング22の蓄勢力を受けて作動部材8が下降し、弁体7が共に流水口6を閉じる位置に復帰することになるため、弁体7を確実に閉弁状態にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ポンプなどの水の移動駆動手段を具備せず、水の自重にて原水貯留ケースから各種プラスチック製の飲料水用ボトルに対して浄化された水を流出させる構成の家庭用の浄水器として有効である。
【符号の説明】
【0038】
1 原水貯留ケース
2 原水注ぎ口部
3 カートリッジ収納部
4 弁体収納部
5 浄化カートリッジ
6 流水口
7 弁体
7a 拡径部
7b 軸状部
8 作動部材
8a 水流出部
8b 突起
8c 外周鍔部
9 環状案内部
10 環状体
13 浄化用フィルタ
15 ペットボトル(浄水貯留ケース)
15a 浄水受け口
20 水受けポット(浄水貯留ケース)
20a 浄水受け口(開口部)
21 補助部材
21a 板状部
21b 筒状体部
21c 鍔部
21d 凸部
22 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に原水注ぎ口部が形成され、かつ底部にカートリッジ収納部が形成された原水貯留ケースと、前記原水貯留ケースの前記カートリッジ収納部に装着され、原水浄化を行う吸着材が内蔵された浄化カートリッジとを備え、前記原水貯留室ケース内の原水を、原水の自重により前記浄化カートリッジ内の前記吸着材を通って、前記原水貯留ケースの外部に着脱可能に取り付けられる浄水貯留ケースへ移動させる構成の浄水器であって、
前記原水貯留ケースの前記カートリッジ収納部部分に外部へ突出する筒状部を形成すると共に、該筒状部の上壁部に前記原水貯留ケースと連通する流水口を形成し、
前記筒状部に前記流水口を上下動することにより開閉する弁体を設け、
前記筒状部における前記弁体の下部に該弁体を上昇させて開弁させる作動部材を設け、
前記浄水貯留ケースの浄水受け口を前記筒状部に装着することにより、前記浄水受け口の周部が前記作動部材に当接して該作動部材を上昇させるようにしたことを特徴とする浄水器。
【請求項2】
前記作動部材に、該作動部材を前記弁体と共に下方へ付勢するスプリングを設けたことを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
前記弁体が側面視略T状の軸体であることを特徴とする請求項1または2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記作動部材が前記弁体の下端部に固定された板状体であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の浄水器。
【請求項5】
前記作動部材に、前記浄水貯留ケースの前記浄水受け口との当接部において空気逃げ部となる隙間部を形成したことを特徴とする請求項1,2または4に記載の浄水器。
【請求項6】
前記作動部材に複数の水流出部を設けたことを特徴とする請求項1,2,4または5に記載の浄水器。
【請求項7】
前記流水口の周部に、前記作動部材の上下動を案内する案内部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項8】
前記浄水貯留ケースとしてペットボトルを用いることを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項9】
前記浄水貯留ケースの開口部に載置される板状部と、前記原水貯留ケースの前記筒状部に装着される筒状体部とを備えた補助部材における前記筒状体部により前記作動部材を上昇させることを可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の浄水器。
【請求項10】
前記補助部材の前記板状部に、多種の浄水貯留ケースの開口部周部と選択的に係合する多数の凸部を形成したことを特徴とする請求項9に記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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