説明

浮体間係留方法および装置

【課題】悪天候時、フローティングターミナルとそれに横付けしたタンカーの間に生ずる相対垂直変位を小さくする。
【解決手段】フローティングターミナル10にその側部没水部から外側に突出する受台15を設け、該ターミナルに横付けしたタンカー30の船底を該受台の上に載せるようにし、うねりを受けたとき、ターミナルに対しタンカーが下降するような相対変位を阻止する。また、タンカー側から下向きに延びてターミナル側に達するように係船索18aを張り、ターミナルに対しタンカーが上昇する動きを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャトルタンカーが横付けして荷役を行うフローティングターミナルに関し、さらに詳しくはその係留法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LNGの受入施設は需要地の近くの沿岸部(陸上)に設けるのが経済的であるが、都市化などで場所の確保が難しくなっており、沖合いに建設されるケースが増えている。このLNG洋上受入れ施設には、コンクリートパイルで海底に固定されたものもあるが、大部分は浮体式のもの(フローティングターミナル)である。このフローティングターミナルは、横付けしたLNGタンカーから荷揚げされた液化ガスを直ちにガス化装置に通してガス化し、海底パイプラインを通じてガスを陸上施設に送り出す(下記特許文献1参照)。フローティングターミナルには稀にLNG貯蔵タンクを持つものもあり、このものでは、液化ガスをいったん貯蔵タンクに受入れ、これをガス化して海底パイプに送り出す。
【0003】
このようなフローティングターミナルは、陸上または海底固定式のものに比べ建設コストが小さくて済む。しかし、従来のフローティングターミナルにおける係船方法は、ターミナルとタンカーの間に渡した係船索を緊締するだけの旧態然としたものである。これでは、船と船の間が開かないようにするのがせいぜいであり、悪天候でうねりが大きい場合、両船の上下方向の相対変位を抑えることは実際上難しい。相対変位が大きくなると、両船を結ぶローディングホースないしローディングアームに過大な力がかかって危険な状態になり、荷役を中断せざるを得なくなる。このため、フローティングターミナルは通年で見ると稼働率が低いという問題がある。
【特許文献1】米国特許第6,546,739号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、悪天候時、フローティングターミナルとそれに横付けしたタンカーの間に生ずる相対垂直変位を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、この発明では、フローティングターミナルの側部没水部から外側に突出する受台を設け、該ターミナルに横付けしたタンカーの船底を該受台の上に載せるようにする。こうすることで、うねりを受けたとき、ターミナルに対しタンカーが下降するような相対変位を阻止することができる。
【0006】
これとは逆の相対変位、すなわち、ターミナルに対しタンカーが上昇する動きを阻止するため、タンカーから下向きに延びてターミナルに達する係船索を張る。こうして両船の相対上下変位を抑制することにより、悪天候時の揚荷においても、ローディングホースないしローディングアームに無理な力がかからずに安全に荷役を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施例を図面に基づいて説明すると、図1はLNGの揚げ荷作業中の断面図、図2は同じく平面図である。
【0008】
符号10は浮体式のLNG洋上受入装置としてのフローティングターミナルであり、これにLNGタンカー(シャトルタンカー)30が横付けに係留される。図示のフローティングターミナルは修繕ドックを改造したもので、喫水およびトリムヒールの調節できるよう、船底および船側にバラストタンク11を備えている。
【0009】
このターミナルはタレット12(1点係留装置)を前部に備えており、タレットはチェーン12aによって海底に係止されている。タレット12には流体スイベルが組み込まれており、これに、海底パイプラインから延びるライザー管13が接続されている。
【0010】
フローティングターミナル10は、ガス化装置14のほか、発電装置、バラストポンプ、係船ウインチ等を備えている。
【0011】
フローティングターミナル10は、シャトルタンカー30から受け入れた液化ガスをガス化装置14で直ちにガス化し、それをタレット12から海底パイプラインを通じて陸上のガス施設に送り出す。
【0012】
このようなフローティングターミナル10に横付けされるタンカー30の船底を支えるため、受台15を設ける。受台は図では両舷に設けてあるが、タンカーを横付する舷が決まっているのであれば、片側だけに設けてもよい。まは、受台15はフローティングターミナルの全長にわたって設けてもよいし、横付けするタンカーが小さい場合は、一部分だけでもよい。受台15は片持ち構造で、その付け根に大きな曲げモーメントが働くので、幅に対して深さを充分大きくした箱型構造になっており、内部はバラストタンク11にとして利用することができる。
【0013】
受台の上面にはフェンダー16(たとえばゴムまたは木製のもの)を取り付けておき、タンカーの船底を傷めないようにする。符号17は防舷フェンダーである
【0014】
LNGを積んだタンカー30を係留するときは、図3に示すように、フローティングターミナル10に海水バラストを積み込んで喫水を深くし、受台15がタンカーに衝突しないようにしておく。こうして係船索をたぐり寄せてタンカーを横付けし、フローティングターミナルのバラストを排出して喫水を浅くしていって、受台15の上にタンカー30を載せ、タンカーの重量の一部が受台にかかるようにする(図1)。
【0015】
ターミナルとタンカーの間に何本かの係船索18を渡して緊締する(図2)。普通に張られた係船索は、船同士の水平面内の相対運動を止めるのには効き目があるが、上下方向の相対運動を止めるにはほとんど無力である。そこで、これら係船索の内の何本かの係船索18aを、図1に示すように、ほぼ垂直に、すなわちタンカーから下向きに延びてターミナル上の係船ビット20に達するように張る。なお、深さの小さいタンカーからも、このように下向きに係船索を張れるよう、ターミナル10の舷側部に係船ビット20を設けてもよい。
【0016】
こうして、両船のカーゴライン同士をローディングホース19で結び、揚げ荷作業を行う。揚荷中のタンカー30は、荷揚げした分だけ喫水が徐々に浅くなって行くので、フローティングターミナルはバラストを排水して喫水を徐々に小さくし、受台15にタンカー30の船底がいつも載った状態に保つ。
【0017】
ここで、揚げ荷中に天候が悪化して海面のうねりが大きくなった場合を考える。まず図4(a)に示すように、フローティングターミナル10が波に乗り、タンカー30が波の谷に来た場合、フローティングターミナル10には上向きの力が、タンカー30には下向きの力がかかるが、タンカーはフローティングターミナルの受台15の上に載っているので、両船ともほとんど上下動しない。次に図4(b)のように、山と谷の位置関係が反対になると、タンカーに上向き、フローティングターミナルに下向きの力が加わるが、この場合、受台15は効かないが、代わりに、垂直に張った係船索18aが効いて、タンカー30の浮き上がりが小さく押さえられる。このようにうねりがあるときでも、両船の上下相対変位が小さく保たれ、荷役を安全に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】荷役中のフローティングターミナルの断面図である。
【図2】同じく平面図である。
【図3】タンカーを接舷する際のターミナルの断面図である。
【図4】荷役中にうねりを受けたときの断面図である。
【符号の説明】
【0019】
10 フローティングターミナル
11 バラストタンク
15 受台
18a 垂直係船索
30 シャトルタンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローティングターミナルの側部から外側に突出する受台に、該ターミナルに横付けしたタンカーの船底を載せることで、うねりを受けたとき、該ターミナルに対し該タンカーが下降しないよう拘束すると共に、該タンカーから下向きに延びて該ターミナルに達する係船索を張ることで、該ターミナルに対し該タンカーが上昇しないよう拘束することを特徴とする浮体間係留方法。
【請求項2】
フローティングターミナに横付けに係留されるタンカーの船底を下から支えるように、該ターミナルに、舷側から外側に突出する受台を備えた浮体間係留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−30702(P2008−30702A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208484(P2006−208484)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(506261143)