説明

浮遊型シェルタ

【課題】通気孔を自動的に開閉して浸水を防ぎ、安定した通気が可能な浮遊型シェルタを提供する。
【解決手段】本発明の浮遊型シェルタ10は、換気用に備えた通気孔31Aを除く全体を密閉した状態で水に浮く。その通気孔31Aの外側開口31Kは、下向きとなるように配置され、外側開口31Kの下方には、水より比重が小さい材料で構成された浮動弁体34が上下動可能に支持されている。この構成により、浮遊型シェルタ10が一時的に沈んだときには、浮動弁体34が水から浮力を受けて上昇して通気孔31Aの外側開口31Kを自動的に閉塞し、浮遊型シェルタ10が浮上すると、浮動弁体34が自重により降下して、通気孔31Aの外側開口31Kが自動的に開放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気用に備えた通気孔を除く全体を密閉した状態で人を収容して水に浮くことが可能な浮遊型シェルタに関し、特に、津波や洪水から避難するための浮遊型シェルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浮遊型シェルタとして、回動蓋付きの通気孔を上端部に備え、浮遊型シェルタの内部から通気孔内に通気管を押し込むことで回動蓋を突き上げるようにして押し開く構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−322939号公報(段落[0028],図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の浮遊型シェルタでは、人が逐一操作しなければ、通気孔が開閉されないので、例えば、通気孔が開いたままで、浮遊型シェルタが波に飲まれて一時的に沈んだ場合に、通気孔から大量に浸水するような事態が生じ得た。また、そのような事態を恐れ、通気孔を閉じた状態に維持して酸欠状態にもなり得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、通気孔を自動的に開閉して浸水を防ぎ、安定した通気が可能な浮遊型シェルタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る浮遊型シェルタは、換気用に備えた通気孔を除く全体を密閉した状態で人を収容して水に浮くことが可能な浮遊型シェルタにおいて、通気孔の外側開口を、浮遊型シェルタが静止して水に浮いたときの水面より上側位置で下向きとなるように配置し、外側開口を開閉可能な浮動弁体を、水より比重が小さい材料で構成して、外側開口の下方に上下動可能に支持して備えたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の浮遊型シェルタにおいて、浮動弁体の下方には、浮遊型シェルタの上下が反転したときに、水没した浮動弁体を浮力に抗して外側開口側に押し下げ可能な弁体押さえが設けられたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の浮遊型シェルタにおいて、内側が通気孔となった通気パイプの一端部を浮遊型シェルタの上部壁に接続して浮遊型シェルタの内部に連通し、通気パイプの他端部側の開口が外側開口として下方を向くように通気パイプを屈曲させかつその通気パイプの他端部に支持筒体を接続し、支持筒体の内部に浮動弁体と弁体押さえとを直動可能に収容する共に、支持筒体の内外に空気及び水を通過可能な筒貫通孔を形成したところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の浮遊型シェルタにおいて、弁体押さえを上方に向かって先細りになった形状とすることで、浮遊型シェルタが横に倒れたときに、弁体押さえが自重により浮動弁体側に傾いて浮動弁体を外側開口側へと押圧するように構成したところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の浮遊型シェルタにおいて、浮遊型シェルタの内部領域の平断面が、下方に向かって徐々に小さくなるように構成したところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項5に記載の浮遊型シェルタにおいて、浮遊型シェルタの外面の下端部又は下端寄り位置から突出して地面に当接し、浮遊型シェルタの下端部を地面から浮かせた状態に保持する複数の支持脚を備えたところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の浮遊型シェルタにおいて、浮遊型シェルタの上面に配置されて人が出入り可能なメイン出入口と、メイン出入口の開口縁に回動可能に連結されてメイン出入口を開閉可能な回動扉と、回動扉を閉じた状態に内側から固定可能な閉塞保持機構と、浮遊型シェルタの側面と底面とに配置された脱出口と、脱出口を閉塞し、浮遊型シェルタの内部からボルト又はナットにて固定された閉塞蓋とを備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
請求項1の浮遊型シェルタでは、通気孔の外側開口が下向きになっているので、雨や波を上方から被っても、通気孔からの浸水が防がれる。また、通気孔の外側開口の下方には、水より比重が小さい浮動弁体が設けられているので、浮遊型シェルタが仮に一時的に沈んでも、浮動弁体が水から浮力を受けて上昇して通気孔の外側開口を自動的に閉塞する。そして、浮遊型シェルタが浮上したときには、浮動弁体が自重により降下して通気孔の外側開口が自動的に開放される。このように、本発明の浮遊型シェルタによれば、通気孔を自動的に開閉して浸水を防ぐことで、安定した通気が可能になる。
【0014】
[請求項2の発明]
浮遊型シェルタの上下が反転して通気孔の外側開口が水面下に位置した場合、浮動弁体は通気孔の外側開口から離間する側に浮力を受けるが、請求項2の構成によれば、弁体押さえが、浮力に抗して浮動弁体を外側開口側に押し下げ、通気孔の外側開口が閉塞される。即ち、本発明によれば、浮遊型シェルタの上下が反転した場合の浸水も防がれる。
【0015】
[請求項3の発明]
通気孔の外側開口を下向きに配置するためには、浮遊型シェルタの一部を側方に突出させるか或いは、陥没させて下向きの外面を設け、その下向きの外面を有する浮遊型シェルタの壁部に通気孔を貫通形成してもよいし、請求項3の発明のように、内側が通気孔となった通気パイプの一端部を浮遊型シェルタの上部壁に接続して浮遊型シェルタの内部に連通し、通気パイプの他端部側の開口が外側開口として下方を向くように通気パイプを屈曲させてもよい。そして、その通気パイプの他端部に接続した支持筒体の内部に浮動弁体と弁体押さえとを直動可能に収容すると共に、支持筒体の内外に空気及び水を通過可能な筒貫通孔を形成すれば、簡素な構造で、通気孔の外側開口を浮動弁体にて自動的に開閉することができる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の構成によれば、弁体押さえが上方に向かって先細りの形状をなしているので、浮遊型シェルタが横に倒れたときに、弁体押さえが自重により浮動弁体側に傾いて浮動弁体を外側開口側へと押圧し、通気孔の外側開口を閉塞することができる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の浮遊型シェルタは、その内部領域の平断面が、下方に向かって徐々に小さくなるように形成されているので、下方に向かうに従って水から受ける浮力が小さくなる。即ち、水に浮いた浮遊型シェルタの上下が反転し難くなり、浮遊姿勢が安定する。
【0018】
[請求項6の発明]
請求項6の構成によれば、浮遊型シェルタを、地面や建物の屋上等に安定して載置することができる。
【0019】
[請求項7の発明]
請求項7の浮遊型シェルタは、上面のメイン出入口以外に側面と底面とに脱出口を備えているので、水上から陸上に打ち上げられたときに、障害物によってメイン出入口の回動扉を開くことができなくても、内部から脱出口の閉塞蓋を外して、容易に外部に脱出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る浮遊型シェルタの写真
【図2】浮遊型シェルタの平面図
【図3】浮遊型シェルタの側断面図
【図4】浮遊型シェルタの内部上面の写真
【図5】トグルクランパーの写真
【図6】浮遊型シェルタの内部の写真
【図7】浮遊型シェルタの通気弁機構の写真
【図8】浮遊型シェルタの通気弁機構の側断面図
【図9】浮遊型シェルタ全体が沈んだ状態における通気弁機構の側断面図
【図10】浮遊型シェルタが傾いた状態における通気弁機構の側断面図
【図11】浮遊型シェルタが反転した状態における通気弁機構の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。本実施形態の浮遊型シェルタ10は、外観が例えば図1に示すように提灯又は南瓜に似た形状をなし、図3に示すように内部に複数の大人が座ることができる。
【0022】
図2に示すように、浮遊型シェルタ10の平面形状は、例えば正八角形になっていて、浮遊型シェルタ10の側壁10Aは、平面形状である正八角形の各角部で縦に延びた稜線10Rによって8つの縦割側壁11に区画されている。また、それら8つの各縦割側壁11は、1枚の板金を、図1に示すように横方向に延びた複数の折曲線10Sで折り曲げた湾曲形状をなしている。そして、隣り合った縦割側壁11,11の側縁部同士が溶接されている。
【0023】
縦割側壁11のうち上下方向の略中央位置に配置された折曲線10Sとその上隣の折曲線10Sとの間は、他の隣り合った折曲線10S,10Sの間の領域に比べて、横幅及び縦幅が共に最も大きなメイン矩形領域11Mになっている。また、メイン矩形領域11Mは、略長方形になっているのに対し、メイン矩形領域11Mより下側で隣り合った折曲線10S,10Sに挟まれた各領域は、下方に向かうに従って横幅が徐々に狭くなった台形状をなしている。一方、メイン矩形領域11Mより上側で隣り合った折曲線10S,10Sに挟まれた各領域は、上方に向かうに横幅が徐々に狭くなった台形状をなしている。さらに、メイン矩形領域11Mより上側の領域では、下側の領域に比べて、隣り合った折曲線10S,10Sの間の台形が急峻に幅狭になっていて、縦割側壁11の下端部より上端部の方が縦割側壁11が内側に大きく倒れている。これらにより、浮遊型シェルタ10は、上部全体より下部全体の内部領域が狭く、浮遊型シェルタの内部領域の平断面が、下方に向かって徐々に小さくなるように構成されている。
【0024】
図3に示すように、各縦割側壁11の上端部と下端部は、共に内側に水平に折り曲げられている。また、浮遊型シェルタ10の下面には、縦割側壁11に囲まれた下面脱出口20Kが備えられている。そして、その下面脱出口20Kが、縦割側壁11群の水平な下端部に固定された底面蓋20(本発明の「閉塞蓋」に相当する)によって閉塞されている。具体的には、底面蓋20は、縦割側壁11より厚い第1底板20Aの上に第2底板20Bを重ねてなる。そして、第1及び第2の底板20A,20Bと縦割側壁11群の下端部とを貫通した複数の貫通孔に下方からボルト21Bが通され、浮遊型シェルタ10内でそれら各ボルト21Bの先端部にナット21Nを締め付けて、底面蓋20が下面脱出口20Kを閉塞した状態に固定されている。また、各ボルト21Bのヘッド部は、第1底板20Aに溶接されている。これにより、ボルト21Bとナット21Nとの連れ回りが防がれ、内部からナット21Nを螺合操作して底面蓋20を外し、下面脱出口20Kから脱出することができる。
【0025】
第2底板20Bの上面中心部からは、センター支柱21Pが起立している。センター支柱21Pは、角筒体の上端面を平板で閉塞した形状をなして、第2底板20Bに溶接さている。また、センター支柱21Pには、側方に開放した図示しない側面開口が備えられ、その側面開口を通して内部に荷物を収容することができるようになっている。
【0026】
縦割側壁11群の水平な上端部には、上方から上部壁12が重ねて溶接され、その上部壁12にメイン出入口13が貫通形成されている。具体的には、図2に示すように、上部壁12は、全体が正八角形になっていて、その正八角形のうち連続して並んだ5辺全体の両端部間を直線で結んでなる六角形の回動扉15が、上部壁12の上に重ねられている。そして、メイン出入口13は、回動扉15より一回り小さい六角形をなし、回動扉15によって閉塞されている。
【0027】
回動扉15は、上部壁12の上に重ねられるアクリル製で透明な樹脂板15Bと、その樹脂板15Bの上面の外縁部に重ねられた板金製のフレーム15Aと、例えば、樹脂板15Bの下面の外縁部に敷設された図示しないパッキンとからなる。そして、回動扉15のうち前記した六角形の最長の辺に相当する縁部が、1対のヒンジ15H,15Hにて上部壁12に回動可能に連結されている。これにより、回動扉15を回動してメイン出入口13を開閉することができる。
【0028】
回動扉15のうちヒンジ15H,15Hから離れた側の端部では、図4に示すように第1持ち手部15Cが外側に突出すると共に、第2持ち手部15Dが内側に突出している。また、図5に示すように、回動扉15の内面のうち第2持ち手部15Dの隣には、トグルクランパー17(本発明の「閉塞保持機構」に相当する)が設けられている。そして、回動扉15を閉じた状態でメイン出入口13の縁部をトグルクランパー17と回動扉15の縁部との間で挟んで回動扉15を閉塞状態に固定することができる。また、メイン出入口13の開口縁と回動扉15の外縁部とには、複数箇所に貫通孔18H(図4参照)が形成され、それら貫通孔18Hの同軸上には、フレーム15Aの上面に図2に示した複数のナット18Nが溶接されている。そして、浮遊型シェルタ10内からハンドル付きボルト18B(図4参照)をナット18Nに締め付けることで、回動扉15を閉塞状態に強固に固定することができる。
【0029】
図4に示すように、浮遊型シェルタ10の内側上部には、手摺り19が設けられている。手摺り19は、正八角形の環状構造をなし、メイン出入口13の開口縁に接続された複数の支柱19A(図4には、1つの支柱19Aのみが示されている)の下端部に固定されている。
【0030】
図3に示すように、浮遊型シェルタ10の内側面のうち下端寄り位置からは、内側に座板部25が張り出している。そして、座板部25の先端とセンター支柱21Pとの間に足を配置して、座板部25上に着座することができ、その着座状態で手摺り19に手を掛けることで、体を浮遊型シェルタ10に対して安定させることができる。
【0031】
前記した縦割側壁11群のうち1つおきに配置された4つの縦割側壁11のメイン矩形領域11Mには、それぞれ矩形の側面脱出口16K(図3参照)が貫通形成され、その側面脱出口16Kが側面蓋16(本発明の「閉塞蓋」に相当する)によって閉塞されている。側面蓋16は、アクリル板16Bの外面外縁部に金属製のフレーム16Aを重ねて固定した構造になっていて、底面蓋20と同様にボルト・ナットによって縦割側壁11に固定されている。
【0032】
即ち、側面蓋16の外縁部には、フレーム16Aとアクリル板16Bとを貫通する複数の貫通孔が形成され、それら貫通孔に通したボルトのヘッド部がフレーム16Aに溶接されている。そして、ボルトの螺子部がアクリル板16Bの内面から突出し、側面脱出口16Kの開口縁に形成された複数の貫通孔に通されて、ナット16Nと螺合している。これにより、底面蓋20と同様に、浮遊型シェルタ10内でナット16Nを操作して側面蓋16を離脱させ、側面脱出口16Kから脱出することができる。
【0033】
浮遊型シェルタ10の内面のうち、メイン矩形領域11Mの下端部からメイン矩形領域11Mより1つ上側の折曲線10Sに亘る範囲には、側面脱出口16Kを除く全体にシート状のクッション24が貼り付けられている。また、図6に示すように、浮遊型シェルタ10の内面のうち、クッション24と座板部25との間には、シートベルト26が備えられている。シートベルト26は、浮遊型シェルタ10の内面の周方向に延びた環状になっていて、そのシートベルト26の複数箇所が浮遊型シェルタ10の内面におけるクッション24寄り位置に固定され、隣り合った2つの固定箇所の間にバックル26Bを備えている。そして、座板部25に着座した人の胴体の前側にシートベルト26を配置して、バックル26Bでシートベルト26を締めて、胴体を浮遊型シェルタ10内に固定することができる。
【0034】
図1に示すように、浮遊型シェルタ10の外面のうち側面脱出口16Kを備えた4つの縦割側壁11の下端寄り位置からは、斜め外側下方に向かって支持脚22が突出している。また、浮遊型シェルタ10のうち回動扉15が閉められた状態で、その回動扉15の第1持ち手部15Cが隣接配置される縦割側壁11の外面には、複数の梯子構成突部23が設けられている。各梯子構成突部23は、門形構造をなして縦割側壁11の外面に溶接されている。そして、梯子構成突部23を利用することで浮遊型シェルタ10の上面にまで容易に昇ることができるようになっている。
【0035】
さて、図1に示すように、浮遊型シェルタ10の上面には、通気弁機構30が設けられている。図7に示すように、通気弁機構30には、通気パイプ31と支持筒体32とが備えられ、その通気パイプ31の一端部は、図8に示すように、上部壁12に形成された貫通孔12Aに一端部が挿通された状態に溶接されている。そして、通気パイプ31は、上部壁12から真っ直ぐ上方に延び、途中で折り返されるように湾曲して、他端部が上部壁12より上方で下方を向いて開放している。本実施形態では、この通気パイプ31の内部が、本発明に係る通気孔31Aになっている。
【0036】
支持筒体32は、通気パイプ31より内径及び外径が共に大きい円筒形状をなし、その支持筒体32の上端部を閉塞する上面壁32Aの中心を通気パイプ31の他端部が貫通した状態に溶接されている。支持筒体32の下端面には底板33(本発明の「底壁」に相当する)が溶接され、その底板33が支持筒体32から側方に張り出している。そして、底板33が上部壁12の上面にボルトにて固定されると共に、底板33の外周面が上部壁12に溶接されている。なお、図8〜図11では、底板33を上部壁12に固定したボルトは省略されている。
【0037】
支持筒体32の側面には、複数の筒貫通孔32Bが貫通形成され、筒貫通孔32Bの内外に連通している。また、支持筒体32の内部に位置した通気パイプ31の開口は、本発明に係る通気孔31Aの外側開口31Kに相当する。
【0038】
支持筒体32の内部には、外側開口31Kを開閉するための浮動弁体34と弁体押さえ35とが上下に並べて収容されている。浮動弁体34は、水より比重が小さい材料(例えば、木材、樹脂)で構成されかつ、外側開口31Kより直径が大きな球体になっている。一方、弁体押さえ35は、水より比重が大きい材料(例えば、鉄)で構成され、浮動弁体34側に向かって縮径した円錐台形状をなしている。また、弁体押さえ35は、浮遊型シェルタ10の上下が反転したときに、水没した浮動弁体34を浮力に抗して外側開口31K側に押し下げ可能な重量を有している。そして、通常は、弁体押さえ35の底面全体が底板33上に当接すると共に、弁体押さえ35の上面に浮動弁体34が当接して、浮動弁体34が外側開口31Kの開口縁から離間している。これにより、通常は、支持筒体32の筒貫通孔32Bと通気パイプ31内の通気孔31Aを通して、浮遊型シェルタ10の内部と外部とが連通している。
【0039】
本実施形態の浮遊型シェルタ10の構成に関する説明は以上である。次に、浮遊型シェルタ10の作用効果について説明する。本実施形態の浮遊型シェルタ10は、例えば、津波や河川決壊等による洪水が到達し得るエリアの空き地、或いは、建物の屋上に載置して使用する。ここで、浮遊型シェルタ10の内部には、例えば、非常用の無線機、懐中電灯や、側面蓋16及び底面蓋20を外すための工具等を常備しておくことが好ましい。また、浮遊型シェルタ10内に雨水が入り込まないようにするために、回動扉15を閉めておくことが好ましい。なお、浮遊型シェルタ10は複数の支持脚22を有して、地面等に載置した状態で安定するので、例えば、子供が浮遊型シェルタ10に昇って横転するような事故の心配がない。
【0040】
津波や洪水が発生した場合、回動扉15を開いて、メイン出入口13から浮遊型シェルタ10内に乗り込む。そして、予め定められた定員以下の人が浮遊型シェルタ10に乗り込んだ状態で回動扉15を閉め、内部からトグルクランパー17(図5参照)にて回動扉15を閉塞状態に固定する。そして、図4に示すように、ハンドル付きボルト18Bにて回動扉15を更に強固に固定する。この状態では、浮遊型シェルタ10の内部と外部とは、図8に示した通気孔31Aを通して連通しているので、浮遊型シェルタ10内の酸欠状態になることはない。
【0041】
さて、津波や洪水が浮遊型シェルタ10に到達すると、浮遊型シェルタ10が水に浮く。ここで、本実施形態の浮遊型シェルタ10は、その内部領域の平断面が、下方に向かって徐々に小さくなるように形成されて下端部が受ける浮力が上端部に比べて小さい上に、下端部に支持脚22及び底面蓋20を有して重くなっているので、上下が反転し難く、浮遊姿勢が安定する。
【0042】
さて、浮遊型シェルタ10は、津波や洪水の激流に飲まれ、上方から波を被ることがある。しかしながら、本実施形態の浮遊型シェルタ10が有する通気孔31Aの外側開口31Kは、下方を向いているので、上方から波を被っても通気孔31Aの外側開口31Kに水が入り込むことはない。また、通気孔31Aの外側開口31Kの下方には、浮遊型シェルタ10の上部壁12及び浮動弁体34が配置されているので、下方から迫り上がった波が、通気孔31Aの外側開口31Kに入り込むこともない。
【0043】
ここで、仮に、浮遊型シェルタ10が激流に飲まれて図9に示すように一時的に沈んでも、浮動弁体34が水から浮力を受けて上昇して通気孔31Aの外側開口31Kを自動的に閉塞するので、通気孔31Aからの浸水は防がれる。また、図11に示すように、万が一、浮遊型シェルタ10の上下が反転して通気孔31Aの外側開口31Kが一時的に水面下に位置し、浮動弁体34が外側開口31Kから離間する側に浮力を受けても、弁体押さえ35が、浮力に抗して浮動弁体34を外側開口31K側に押し下げ、通気孔31Aの外側開口31Kを閉塞するので、通気孔31Aからの浸水は防がれる。さらには、その弁体押さえ35が上方に向かって先細りの形状をなしているので、図10に示すように、浮遊型シェルタ10が横に倒れたときに、弁体押さえ35が自重により浮動弁体34側に傾いて浮動弁体34を外側開口31K側へと押圧し、通気孔31Aの外側開口31Kを閉塞する。これにより、浮遊型シェルタ10が横転姿勢になって浮動弁体34が支持筒体32の軸方向に浮力を受けない状況でも、浮動弁体34にて外側開口31Kを閉じることができる。そして、浮遊型シェルタ10が浮上しかつ支持脚22を下方にした正規の姿勢になったときには、弁体押さえ35及び浮動弁体34が自重により降下して、図8に示すように通気孔31Aの外側開口31Kが自動的に開放される。
【0044】
このように、本実施形態の浮遊型シェルタ10によれば、通気孔31Aを自動的に開閉して浸水を防ぐことで、安定した通気が可能になる。なお、浮遊型シェルタ10は、上面のメイン出入口13以外に側面脱出口16Kと下面脱出口20Kとを備えているので、水上から陸上に打ち上げられたときに、障害物によって回動扉15を開くことができなくても、内部から底面蓋20又は側面蓋16を外して容易に脱出することができる。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)通気孔31Aの外側開口31Kを下方に向けて開放した構成とするために、浮遊型シェルタの一部を側方に突出させるか或いは、陥没させて下向きの外面を設け、その下向きの外面を有する浮遊型シェルタの壁部に通気孔を貫通形成してもよい。
【0047】
(2)前記実施形態の浮遊型シェルタ10は、鉄製であったが、樹脂製又は木製であってもよい。
【0048】
(3)前記実施形態の浮遊型シェルタ10の通気弁機構30から弁体押さえ35を排除して、浮動弁体34のみを備えた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 浮遊型シェルタ
12 上部壁
13 メイン出入口
15 回動扉
16 側面蓋(閉塞蓋)
16K 側面脱出口
17 トグルクランパー(閉塞保持機構)
20 底面蓋(閉塞蓋)
20K 下面脱出口
31 通気パイプ
31A 通気孔
31K 外側開口
32 支持筒体
32B 筒貫通孔
34 浮動弁体
35 弁体押さえ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気用に備えた通気孔を除く全体を密閉した状態で人を収容して水に浮くことが可能な浮遊型シェルタにおいて、
前記通気孔の外側開口を、前記浮遊型シェルタが静止して水に浮いたときの水面より上側位置で下向きとなるように配置し、
前記外側開口を開閉可能な浮動弁体を、水より比重が小さい材料で構成して、前記外側開口の下方に上下動可能に支持して備えたことを特徴とする浮遊型シェルタ。
【請求項2】
前記浮動弁体の下方には、前記浮遊型シェルタの上下が反転したときに、水没した前記浮動弁体を浮力に抗して前記外側開口側に押し下げ可能な弁体押さえが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の浮遊型シェルタ。
【請求項3】
内側が前記通気孔となった通気パイプの一端部を前記浮遊型シェルタの上部壁に接続して前記浮遊型シェルタの内部に連通し、
前記通気パイプの他端部側の開口が前記外側開口として下方を向くように前記通気パイプを屈曲させかつその通気パイプの他端部に支持筒体を接続し、
前記支持筒体の内部に前記浮動弁体と前記弁体押さえとを直動可能に収容する共に、前記支持筒体の内外に空気及び水を通過可能な筒貫通孔を形成したことを特徴とする請求項2に記載の浮遊型シェルタ。
【請求項4】
前記弁体押さえを上方に向かって先細りになった形状とすることで、前記浮遊型シェルタが横に倒れたときに、前記弁体押さえが自重により前記浮動弁体側に傾いて前記浮動弁体を前記外側開口側へと押圧するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の浮遊型シェルタ。
【請求項5】
前記浮遊型シェルタの内部領域の平断面が、下方に向かって徐々に小さくなるように構成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1の請求項に記載の浮遊型シェルタ。
【請求項6】
前記浮遊型シェルタの外面の下端部又は下端寄り位置から突出して地面に当接し、前記浮遊型シェルタの下端部を前記地面から浮かせた状態に保持する複数の支持脚を備えたことを特徴とする請求項5に記載の浮遊型シェルタ。
【請求項7】
前記浮遊型シェルタの上面に配置されて人が出入り可能なメイン出入口と、
前記メイン出入口の開口縁に回動可能に連結されて前記メイン出入口を開閉可能な回動扉と、
前記回動扉を閉じた状態に内側から固定可能な閉塞保持機構と、
前記浮遊型シェルタの側面と底面とに配置された脱出口と、
前記脱出口を閉塞し、前記浮遊型シェルタの内部からボルト又はナットにて固定された閉塞蓋とを備えたことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1の請求項に記載の浮遊型シェルタ。

【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1367(P2013−1367A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138109(P2011−138109)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(511152522)株式会社伊勢産業 (1)