説明

浮遊性藍藻類収集装置及び浮遊性藍藻類処理システム

【課題】広範囲な水域に浮遊する浮遊性藍藻類を効率良く確実に収集することができる浮遊性藍藻類収集装置、及び収集した浮遊性藍藻類を効果的に連続して解体破壊処理することができる浮遊性藍藻類処理システムを提供することである。
【解決手段】アオコ収集装置と、アオコ収集装置が収集したアオコを含む水を加圧して送り出す加圧ポンプ15と、加圧ポンプ15から送り出されたアオコを含む水を取り込み、ガス胞破壊・群体破砕を行ってアオコを解体破壊処理するアオコ処理機17と、アオコを含む水をアオコ収集装置に取り込んでアオコ処理機17から排出する迄のアオコを含む水の処理過程に配置され、アオコを含む水を通過させてアオコ処理機17の障害となる異物を除去する異物除去装置と、アオコ処理機17によりアオコを解体破壊処理した後の処理排水を減勢して排出する減勢装置18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浮遊性藍藻類収集装置及び浮遊性藍藻類処理システムに関し、特に、広範囲な水域の水面を浮遊する浮遊性藍藻類を収集する浮遊性藍藻類収集装置、及び収集した浮遊性藍藻類を解体破壊処理する浮遊性藍藻類処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湖沼や河川等の静水域及び流水域において、所謂アオコの発生による水質劣化や異臭の発生等への対応が求められている。この「アオコ」については、水域で藻類が大発生し特に水面に集積して水の色が濃い緑色を呈する発現状況を言う場合と、このような原因を作り出している藻類自体を言う場合と、二つの解釈があり、一般に「水の華」と呼ばれる現象は、前者を指していると思われるが、両者を混同して使用されることも多い。ここでは、前者、特に水面に浮遊するアオコを対象とする。
【0003】
このようなアオコへの対応として、富栄養化防止・日光遮断・水温低下・pH調整・曝気等によりアオコを発生させない方法、下水道の整備・葦等の植栽・生態系の管理・流入水の管理等により環境を変化させてアオコを徐々に減少させる方法、或いは直接アオコを採取除去する方法等が考えられている。
【0004】
この中で、現実的な対策として、発生したアオコを直接除去する方法の実施が望まれており、具体的に、1.薬品による沈殿除去、2.超音波による除去、3.電気的な方法による除去、4.物理的な方法による除去、5.オゾンや紫外線による除去等が提案されている。上記各方法には、アオコを採取し処理した後、湖水に戻すものと戻さないものがあり、前者は、設置形態が定置方式(循環型はこれに属する)の場合に多く採用されている。
【0005】
従来のアオコを除去する方法の殆どは、アオコ収集装置、ポンプ装置、処理装置及び排水装置からなるシステムを用いて、アオコ収集装置を用いて水域水面から採取したアオコを含む水を、ポンプにより吸引輸送して処理装置に送り処理した後、排水装置を介して水域に排出するものである。従来のシステムにおいては、処理装置を主体にしたものが多く、システム全体或いは実用化を考慮したシステムや効率的なシステムに関する提案は少なかった。
【0006】
このようなシステムを用いてアオコを収集する場合、収集位置に装置全体を移動する移動方式で環状フェンスと水流発生器を用いるもの(特許文献1参照)、或いは装置を陸上等に設置した定置方式で人為的に収集装置に向けた表面流を作り出すもの(特許文献2参照)等がある。
【特許文献1】特開平07−274661号公報
【特許文献2】特開2004−82015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アオコを除去しなければならない実水面は、一般的に、上述したアオコを収集する方法において対象とされる面積よりかなり広大であり、例えば、提案された水流発生器を用いる場合、水流発生器を相当数設置する必要がある。また、水面を浮遊するアオコを集積しようとした場合、卓越した力である自然の風や水流により大きく影響を受けるのは避けられず、人為的に発生させた水流では部分的、且つ、小規模のものにしか対応できないと思われる。従って、これら人為的に水流を発生される方法では、広範囲の水域を対象としてアオコを収集し除去しようとしても、殆ど対応することができないと考えられる。
【0008】
この発明の目的は、広範囲な水域に浮遊する浮遊性藍藻類を効率良く確実に収集することができる浮遊性藍藻類収集装置、及び収集した浮遊性藍藻類を効果的に連続して解体破壊処理することができる浮遊性藍藻類処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明に係る浮遊性藍藻類収集装置は、浮遊性藍藻類が発生する水域に配置されて水面下に壁部を形成し、水面を浮遊する浮遊性藍藻類が水域における風や水の流れにより移動する際、前記壁部に沿って移動し一箇所に集積するように移動を規制する浮体フェンスと、前記浮遊性藍藻類の集積場所に配置され、前記浮遊性藍藻類を含む水を吸入する吸入装置とを有する。
【0010】
上記構成を有することにより、浮遊性藍藻類が発生する水域に配置されて水面下に壁部を形成する浮体フェンスによって、水面を浮遊する浮遊性藍藻類が水域における風や水の流れにより移動する際、壁部に沿って移動し一箇所に集積するように移動が規制され、浮遊性藍藻類の集積場所に配置された吸入装置によって、浮遊性藍藻類を含む水が吸入される。
【0011】
また、この発明に係る浮遊性藍藻類処理システムは、請求項1から3のいずれかに記載の浮遊性藍藻類収集装置と、前記浮遊性藍藻類収集装置が収集した浮遊性藍藻類を含む水を加圧して送り出す加圧ポンプと、前記加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水を取り込み、ガス胞破壊・群体破砕を行って前記浮遊性藍藻類を解体破壊処理する浮遊性藍藻類処理機と、浮遊性藍藻類を含む水を前記浮遊性藍藻類収集装置に取り込んで前記浮遊性藍藻類処理機から排出する迄の浮遊性藍藻類を含む水の処理過程に配置され、浮遊性藍藻類を含む水を通過させて前記浮遊性藍藻類処理機の障害となる異物を除去する異物除去装置と、前記浮遊性藍藻類処理機により浮遊性藍藻類を解体破壊処理した後の処理排水を減勢して排出する減勢装置とを有する。
【0012】
上記構成を有することにより、請求項1から3のいずれかに記載の浮遊性藍藻類収集装置によって収集された浮遊性藍藻類を含む水が、加圧ポンプによって加圧されて送り出され、浮遊性藍藻類処理機によって、加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水が取り込まれガス胞破壊・群体破砕が行われて浮遊性藍藻類が解体破壊処理され、浮遊性藍藻類を含む水を浮遊性藍藻類収集装置に取り込んで浮遊性藍藻類処理機から排出する迄の浮遊性藍藻類を含む水の処理過程に配置されて浮遊性藍藻類を含む水を通過させる異物除去装置によって、浮遊性藍藻類処理機の障害となる異物が除去され、減勢装置によって、浮遊性藍藻類処理機により浮遊性藍藻類を解体破壊処理した後の処理排水が減勢して排出される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、この発明に係る浮遊性藍藻類収集装置によれば、広範囲な水域に浮遊する浮遊性藍藻類を効率良く確実に収集することができ、また、この発明に係る浮遊性藍藻類処理システムによれば、収集した浮遊性藍藻類を効果的に連続して解体破壊処理することができる。従って、浮遊性藍藻類収集装置及び浮遊性藍藻類処理システムによれば、非常に広い範囲での浮遊性藍藻類の収集が可能となって小規模な収集システムにも対応が可能であり、浮遊性藍藻類収集装置を増やすだけで浮遊性藍藻類の収集量が確実に増加し、全体の収集量と処理量の調整が容易である。更に、ゴミ等の異物流入によるシステム全体の能率低下を確実に防ぐことができ、広範囲な水域に浮遊する浮遊性藍藻類を効率良く確実に収集して解体破壊処理し除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施の形態に係る浮遊性藍藻類処理システムの全体構成を示すブロック図である。浮遊性藍藻類処理システム10は、所謂アオコ等の浮遊性藍藻類を処理対象とするものであるが、処理対象はこれに限るものではなく、その他の淡水性プランクトンや赤潮等の海水性プランクトンについても、同様に収集し解体破壊処理することができる。なお、ここでは、アオコを処理対象として説明する。
【0016】
図1に示すように、浮遊性藍藻類処理システム10は、浮体フェンス11、小型吸入装置12、フロート付き吸引ポンプ13、水槽14、加圧ポンプ15、ストレーナ16、アオコ(浮遊性藍藻類)処理機17、及び減勢装置18を有している。この浮遊性藍藻類処理システム10を用いてアオコを処理する場合、湖沼や河川等の処理対象水域に、アオコ収集のための浮体フェンス11と小型吸入装置12、及びアオコ吸入のためのフロート付き吸引ポンプ13を配置し、処理対象水域の沿岸部に、貯留用の水槽14、加圧のための加圧ポンプ15、異物除去のためのストレーナ16、アオコ処理のためのアオコ処理機17、及びアオコ処理水排出時に用いる減勢装置18を配置する。
【0017】
処理対象水域の水面に浮遊するアオコは、浮体フェンス11と小型吸入装置12により広い範囲から水と共に収集されてフロート付き吸引ポンプ13により吸入採取され、水槽14に貯留された後、加圧ポンプ15により加圧されてストレーナ16を通りアオコ処理機17へと送り込まれ、アオコ処理機17によりガス胞破壊・群体破砕が行われた後に、減勢装置18から再び、採取場所から離れた排出により直接影響を与えない処理対象水域に排出される。
【0018】
上記構成を有する浮遊性藍藻類処理システム10にあっては、実際にアオコ採取処理対象となる水域の面積はかなり広範囲になることから、システムの運用に際して様々な対策が必要となる。これらの対策の主要なものについて説明する。
【0019】
(アオコ収集装置の設置数)
一般的に、水面を浮遊するアオコは、水面下0〜10cm程度の厚さを有していることから、浮遊するアオコを収集するためには、その厚さに合わせた自然流下方法(即ち、堰越流方法)或いは吸引方法を用いる必要がある。また、アオコの水面下の厚さに合わせる必要から、水面に浮かせた浮体方式が適しており、アオコの大量収集を考えた場合、収集装置の大型化より設置数を増やす方が望ましい。なお、従来のアオコ収集用のシステムや装置の場合、アオコの収集量と装置の大きさや数量との関係についての言及は見受けられず、殆どが1システムに対し1収集装置の構成である。
【0020】
このように、アオコの大量収集には収集装置の複数設置が望ましいことから、設置システムは、1つのポンプの吸入側ホ−スを分岐して複数の収集装置に接続することになる。ところで、前述した自然流下方法や吸引方法の収集装置においては、流入量より吸引量が大きいとエアを吸うようになり、負圧吸引の場合に吸引ホース内にエアが入り込むと、吸引力が極端に低下して復帰するまで能率が落ちてしまう。従って、収集装置を複数稼動させる場合、ポンプの吸入側ホースが合流していることから、1つの装置からエアが流入すると全体の吸引力低下を生じさせて全吸入量の低下を招き、システム全体のバランスが崩れてしまう。このため、吸引ホース内へのエア流入を極力防止する工夫が必要である。
【0021】
(処理システムへのゴミ混入)
日本における代表的なアオコであるミクロシスチス(Microcystis)は、藍藻類(シアノバクテリア)のクロオコックス目に分類される属の1つであり、その細胞は、直径が約3.2〜6.6μm程度、即ち生物顕微鏡で確認できる大きさである。このような極小のものを扱う場合、処理過程にそれより大きなもの(ゴミ等)が混入することは、処理自体ばかりでなくシステム運用の成否にも影響を与える重要な問題である。
【0022】
特に、処理方法としてノズルを用いる(物理力を利用する)システムを採用している場合は、その影響が大きく、例えば、この浮遊性藍藻類処理システム10にも用いることができる、本願出願人による「浮遊性藍藻類除去装置(特願2003−93781号参照)」においては、ノズルを使用するのみでなく特殊金属繊維を使用して更に細かく裁断するものであり、ゴミの混入を防ぐ必要がある。従って、浮遊性藍藻類処理システム10にあっては、処理過程におけるゴミの混入を極力防止し、譬え混入があっても運用が可能となる対応が必要である。
【0023】
(加圧ポンプ)
アオコを採取処理するためのシステムにおいては、アオコ吸引用或いは吸引加圧併用のポンプを採用しているのが多く、本願出願人による「浮遊性藍藻類除去装置(特願2003−93781号)」は、吸引加圧併用のポンプを採用している。ここで用いられるポンプとしては、1.圧力変動(脈動)が無い、2.騒音が少ない、3.振動が少ない、4.高圧を維持できる、5.所定の容量を保持できる、6.自吸方式である、ことが要求される。しかしながら、確認実験で使用したスクイズポンプは、上記4.5.6の要件について満足するのみであることから、全ての要件を満足するポンプの選定が必要である。
【0024】
(排水装置)
アオコを採取処理する場合、アオコを収集するためにアオコと共に吸引した水を排出する必要があるが、排水には、水面からの落差が大きいか小さいか、また、排出場所が陸上か水上かの違いがある。排出場所が陸上でしかも落差が大きい場合は、排水速度が速くなって排水場所の水底に堆積している泥土等を巻き上げて水質を悪化させることが考えられる。従って、水質を悪化させない工夫が必要である。
【0025】
(浮遊性藍藻類処理システムが備えるべき要件)
上述したように、浮遊性藍藻類処理システム10は、1.広大な面積の浮遊アオコを人為的な水流発生方法以外の方法により集積する、2.複数個設置した収集装置からのエア流入を防止する、3.処理過程へのゴミ流入及び流入ゴミによるシステム障害を防止する、4.要求される加圧ポンプ仕様を備える、5.最終排水による水質悪化を防止する、というこれらの要件を備えることにより、システムの円滑な稼動ができアオコ採取処理のための適切な処理ができる。
【0026】
次に、上記各種要件を備え、浮遊アオコを処理するために対象水域において稼働する実用システムとしての浮遊性藍藻類処理システム10を、システムを構成する各構成要素毎に具体的に説明する。
【0027】
(浮遊アオコの集積装置)
水面に浮遊するアオコは、湖沼等の静水域の場合、水面上を吹く風により移動し、河川等の流水域の場合、水の流れによって移動する。これは、頻繁に見られる自然現象であり、この現象に逆らう人為的な方法では目的を達成することはできない。従って、自然発生エネルギを利用する浮体フェンスを用いて、水面に浮遊するアオコを集積する。
【0028】
一般的に水面下0〜10cm程度の範囲で浮遊するアオコの移動を制御するため、水域のアオコ収集対象範囲をアオコ寄せ用の浮体フェンス11で仕切る。浮体フェンス11は、風或いは水流の向きに対し一定角度を設けて設置されており、風或いは水流により移動して来た浮遊アオコは、浮体フェンス11に動きを止められた後、移動方向と浮体フェンス11の成す鈍角側に浮体フェンス11に沿って移動する。即ち、浮遊アオコは、浮体フェンス11によって、一箇所に集積するようにその移動方向が規制されることになる。この浮体ファンス11を設置する場合、例えば、風或いは水流によって移動する浮遊アオコの移動方向に対する角度が約20〜70度の範囲、望ましくは45度になるようにする。
【0029】
このように設置したアオコ寄せ用の浮体フェンス11は、浮遊アオコの移動が川の流れのように常に一定方向である場合は固定することができるが、谷風・山風等の風向きが常に変化するものに対しては、その都度、設置角度を変更する必要がある。このような自然現象に合わせた頻繁な変更操作は実用的でないので、浮体フェンス11を2個ハの字形に配置する。
【0030】
図2は、図1の浮体フェンスを実際の川に設置した例を示す説明図である。図2に示すように、2個の浮体フェンス11a,11bは、川Rの流れと交差するように川幅ほぼ全域に渡ってハの字形に配置されている。2個の浮体フェンス11a,11bの内、例えば、上流側の浮体フェンス11aは、川Rの流れや同方向の風向きにより移動するアオコの収集を担当し、下流側の浮体フェンス11bは、川Rの流れと逆の風向きにより移動するアオコの収集を担当する。なお、この配置例は、風向きが左から右方向、下から上方向及び右から左方向に変化する場合のものであり、風向きが上から下方向の場合は、逆向きハの字形の配置となる。
【0031】
従って、このハの字形に配置した2個の浮体フェンス11a,11bの端部近接点近傍は、2個の浮体フェンス11a,11bによって浮遊アオコが集積する(図中、矢印参照)アオコ集積場所Aとなる。このアオコ集積場所Aに小型吸入装置12を設置することにより、処理対象水域の広い範囲から浮遊アオコを効率的に吸入することができる。
【0032】
このように、ハの字形に配置した2個の浮体フェンス11a,11bにより、浮遊アオコを、広い範囲から、しかも、自然発生によるエネルギを利用して収集することができるので、簡便で環境負荷の少ない集積方法を実現することができる。また、静水域である湖沼等における、風向や流れが一定しない場所である中央部分では、ハの字形配置を逆向きに組み合わせた2組を設置(即ち、略X字状或いは放射状設置)することにより、同様に対応することができる。なお、浮遊性藍藻類処理システム10の処理対象となる浮遊アオコは、自然に集積する吹溜りを作ることが多くこの吹き溜まりは岸に近いため、2個の浮体フェンス11a,11bをハの字形に配置するのが有効と考えられる。
【0033】
図3は、図1の浮体フェンスの構成を示し、(a)は部分説明図、(b)は断面図である。図3に示すように、浮体フェンス11は、細長い袋状シート19と、袋状シート19の内側上縁部に通され袋状シート19の浮力を確保するための空気が充填されているホース20と、袋状シート19の内側下縁部に装着され水面下の袋状シート19を直立保持する錘21と、を有している。この浮体フェンス11は、ホース20と錘21により、上端部が僅かに水面上に露出した状態に保持されるように浮力調整されており、この状態の浮体フェンス11により、浮遊アオコの収集対象水域の水面下一定深さd(例えば、150mm)、即ち、浮遊アオコが積層状態になっても逃さずに貯めておくことができる深さに、フェンス状に袋状シート19が配置される。
【0034】
なお、浮体フェンス11は、上記構成に限るものではなく、例えば、市販されているオイルフェンスを利用したり、布製や網製のシートを吊り下げ保持するようにして、対象水域において浮遊アオコの移動を一定方向に規制することができるものであれば良い。
【0035】
(アオコ収集における空気流入防止対策)
一般的に、アオコを処理するためのシステムにおいては、浮遊アオコの収集に吸引(加圧)ポンプが用いられており、システムの大型化を考えた場合、大型の吸引ポンプ1台に複数のアオコ収集装置を配置することが経済的であり、望ましい。浮遊性藍藻類処理システム10には、アオコ収集装置として、本願出願人による「水中浮遊物採取装置(特願2002−166988号)」である小型吸入装置12が使用されている。
【0036】
図4は、図1の小型吸入装置を複数個用いた場合の川における配置例を示す説明図である。図4に示すように、浮遊アオコ処理対象の川Rには、ハの字形に配置された2個の浮体フェンス11a,11bと共に、小型吸入装置12が複数個(この例では、5個)設置されている。川Rの流速や水面上の風速が小さい場合、2個の浮体フェンス11a,11bによるアオコ集積場所Aへのアオコの集積が効率良く行われないことも考えられるため、小型吸入装置12は、2個の浮体フェンス11a,11bに沿って移動できるようにするのが実用的である。
【0037】
このように、小型吸入装置12を複数個設置した場合、小型吸入装置12からアオコを処理する処理装置までの距離が不揃いとなり、それぞれの接続ホースの延長が異なって管内摩擦損失もそれぞれ異なることになる。つまり、複数の小型吸入装置12に1台の吸引ポンプで対応すると、接続ホースの最も短い小型吸入装置12は、管内摩擦損失が最も小さくなりホース内の吸引力が最も大きくなるので、流入量より吸引量が多くなりエアを吸入することとなる。また、各小型吸入装置12においてゴミによる流入阻害等によりエアを吸入することも考えられる。
【0038】
従って、小型吸入装置12を複数配置した場合、エアの吸入は避けられないと思われるが、このエアの吸入はアオコ収集量の低下となってアオコを採取処理するためのシステム全体に重大な影響を及ぼすことになる。
【0039】
そこで、エア吸入対策として、1.アオコ収集装置のエア吸入防止、2.エア吸入の影響排除(エア抜き、個別ポンプ)、3.エア吸入の制御、の各方法が考えられる。これら各方法について説明する。
【0040】
1.アオコ収集装置のエア吸入防止
現在知られているアオコ収集装置は、大きく分類すると自然流下方式と吸引方式があり、自然流下方式はポンプ吸引力増大による影響を受け易く容易にエアを吸入してしまうのに対し、吸引方式は影響を受け難く比較的エアを吸入しない。なお、水面から渦を発生する程にポンプ吸引力が大きくなると、吸引方式でもエアを吸入するようになる。従って、エアの吸入を防止するためには吸引方式が望ましいものの、何らかの理由でポンプ吸引力が想定以上に高くなった場合、エアの吸入を完全に防止することは困難である。
【0041】
2.エア吸入の影響排除
(1)エア抜き
アオコ収集装置が吸入したエアは、他のアオコ収集装置との合流地点に達する迄に抜くことができれば、他のアオコ収集装置に影響を与えることは少なくなるので、市販されている空気弁により対応することが考えられる。しかしながら、この空気弁は、管内を搬送するときのキャビテーション等を防止するために管内のエアを排出するものであり、一般的には正圧時に使用するものなので、今回使用対象となる吸引側の負圧状態にある箇所では使用することができない。
(2)個別ポンプ
1つの吸引ポンプに対し複数のアオコ収集装置を設置する場合、上述したようにエアの混入が避けられないので、各アオコ収集装置毎に吸引ポンプを設置することが考えられる。この場合、複数の吸引ポンプからの排水を貯留する水槽を用意する必要があり費用増加となるが、水槽でのゴミ除去を可能とする。
【0042】
各アオコ収集装置毎に吸引ポンプを設置する個別ポンプ方法の場合、汎用吸引ポンプは、比較的安価でレンタル品も豊富であることから採用し易いが、回転数が一定であり、インバータ制御可能なものは少ない。従って、アオコ収集装置への流入量と吸引ポンプの吸引量をバランスさせるためには、回転数による制御以外の方法で考えることが望ましい(インバータ制御とすると特殊で高価となる)。なお、個別ポンプ方法の場合、バランスが崩れてエアを吸入したとしても他のアオコ収集装置に影響は与えないが、それ自体の能率低下となるので、極力エアを吸入しないようにすることが求められる。
【0043】
一般的な吸引ポンプの能率は、送水負荷が増大すると送水量は減小するという性質があるので、この性質を応用し水槽の吐出口付近にバルブを設置する。このバルブは、断面積を徐々に変化させて管内圧力を調整することが可能なので、この圧力調整により、アオコ収集装置の流入量を制御することができる。
【0044】
3.エア吸入の制御
アオコ収集装置がエアを吸入した場合、吸引ポンプに連結されたホース内に圧力変動が発生するので、その圧力変動を取り出してコンピュータに取り込み、コンピュータ制御によるバルブ調整を行うことで、エア吸入を最小限にするシステムが可能になる。
【0045】
4.対策システム
上述した検討結果から、アオコ収集における空気流入防止対策として、アオコ収集を吸引方式の小型吸入装置12により行うと共に、各小型吸入装置12毎に個別に吸引ポンプであるフロート付き吸引ポンプ13を設けた。従って、浮遊アオコ処理対象の川Rから、小型吸入装置12→サクションホース→フロート付き吸引ポンプ13→排水ホース→エア流入防止用の流量制御バルブ→水槽14に繋がるアオコ搬送流路(図1参照)により、浮遊アオコを収集し水槽14に貯留することができる。
【0046】
なお、フロート付き吸引ポンプ13は、一般的な吸引ポンプをフロートにより所定の位置に浮かせると共に、吸い込み口にサクションホースが装着できるように加工したものである。
【0047】
(異物混入対策)
アオコの代表的な種類であるミクロシスチスの細胞は、直径約3.2〜6.6μm程度であり、物理力を応用してアオコを処理するためのシステムの場合、その群体を個々の細胞に分離破砕する目的をもったものが多い。従って、そのシステムに、システム稼働の障害となるゴミ等の異物が混入すると、システム全体が影響を受けてしまう。処理方法としてノズルを用いる(物理力を利用する)システムである浮遊性藍藻類処理システム10において、このような異物となるのは、直径約0.8mm以上のものであると考えられる。
【0048】
直径約0.8mm以上の異物を、直接、直径約0.8mm以上の物体の通過を阻止するスクリーンで除去しようとすると、目詰まりが発生し易くアオコの収集が困難となることから、アオコの収集と異物除去を同時に達成するためには、段階的にスクリーンを設置することが必要である。また、段階的にスクリーンを設置するとしても、最終段階のスクリーンでは目詰まりを解消する必要があり、その対策に、逆洗による詰まり解消機能を備える。
【0049】
ところで、通過阻止対象が小さいスクリーンの場合、詰まりが頻繁に発生して逆洗回数が多くなり能率を低下させる可能性が大きいので、逆洗回数を極力少なくするために、最終段階のスクリーンの前に、スクリーンにより通過を阻止されて溜まった異物を剪断する機構を備えるようにする。
【0050】
上述した段階的異物除去を実現するために、浮遊性藍藻類処理システム10は、1.アオコ収集装置である小型吸入装置12のアオコを含む水の取り入れ口に設けた第1段異物除去装置、2.小型吸入装置12と加圧ポンプ15の間、即ち、水槽14への流入部に設置した第2段異物除去装置、3.加圧ポンプ15とアオコ処理機17の間に設置した第3段異物除去装置を備えている。第1段異物除去装置は、例えば、10mmメッシュのスクリーンであり、第2段異物除去装置は、例えば、3mmメッシュのスクリーンであり、第3段異物除去装置は、例えば、逆洗・剪断機能付の0.8mmメッシュのストレーナである。この3段階による異物除去により、小型吸入装置12によるアオコ収集にも十分対応することができる。
【0051】
図5は、図1の小型吸入装置を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。図5に示すように、小型吸入装置12には、アオコを吸い込む吸い込み口に10mmメッシュのスクリーンである金属や樹脂等からなる網22(第1段異物除去装置)が取り付けられている。この装置は、吸引力による装置の回転により、網22の目詰まりを防ぐ機能を有している。
【0052】
図6は、図1の水槽の斜視図である。図6に示すように、貯留用の水槽14には、フロート付き吸引ポンプ13に接続された排水ホースの排出口(図示しない)が臨む上面開口に、3mmメッシュのスクリーンである異物流入防止網23(第2段異物除去装置)が設置されている。また、網22の代わりに、水槽内に、例えば有底筒形のストレーナを設置しても良い。
【0053】
図7は、図1のストレーナの一部破断した説明図である。図7に示すように、ストレーナ16は、0.8mmメッシュの濾過機能部24、異物剪断機能部25(第3段異物除去装置)及び図示しない逆洗機能部を備えており、浮遊性藍藻類処理システム10における最終段階のスクリーンとして機能する。アオコを含む水がストレーナ16を通ることにより、アオコを含む水から直径約0.8mmを越える異物が除去されると共に、除去した異物によるストレーナ16の目詰まりが防止され、アオコ処理機19に、直径約0.8mmを越える異物が送り込まれることはない。このようなストレーナ16として、自動逆洗方式のキニー・ストレーナー(KINNEY STRAINER:清本キニー株式会社製)を用いることができる。
【0054】
このように、3段階による異物除去を行っているが、少なくとも最終段階である第3段異物除去装置においては、自動或いは手動により作動する異物を剪断する機能及び逆洗する機能を必ず設置する必要がある。また、これらの方法により、確実にノズル部での目詰まりを防止することができる。しかし、アオコの解体破壊処理を行う特殊金属繊維からなる裁断部では、0.8mmのゴミ流入を許容してしまうことから、目詰まり発生が考えられるので、ここでは、この裁断部を、随時交換可能に離脱自在に装着されたカートリッジ方式にして簡易に交換することができるようにしている。なお、ノズルも取り替え可能にしている。
【0055】
(貯留用の水槽)
水槽14(図6参照)には、複数のフロート付き吸引ポンプ13からそれぞれ個別の排水ホースを介して送り込まれたアオコを含む水が、貯められている。この吸引ポンプ13からの送水量が加圧ポンプ15の吸引量より多いと、水槽14からのオーバフローが生じてしまうので、オーバフロー流出堰を設ける。また、水槽14への流入量より加圧ポンプ15の吸引量が多い場合、オーバフローの逆の状況となり加圧ポンプ15の空運転が発生し、加圧ポンプ15によっては、エア吸入によるキャビテーションの発生等によりシステムに影響を与えることになる。なお、自吸方式のポンプには、エアを吸引しても運転が可能なものもあるが、その場合でも、アオコの処理が不完全となりシステムの確実性が無くなる。そのため、フロートスイッチ等の空運転危険センサを設置して、危険警笛ベルや緊急停止装置を作動させる。
【0056】
(加圧ポンプ)
アオコを採取処理するためのシステムには、加圧ポンプを使用しないものもあるが、ノズルを用いる物理力による処理システムでの加圧ポンプ15は、浮遊性藍藻類処理システム10において重要な機器であり、1.圧力変動(脈動)が無い、2.騒音が少ない、3.振動が少ない、4.高圧を維持できる、5.所定の容量を保持できる、6.自吸方式である、という多くの仕様が要求される。
【0057】
これらの仕様を全て満足するポンプは、非常に少なく、汎用機械でこれらの仕様に最も近いものとしてスクイズポンプがあるが、スクイズポンプの最大の欠点は脈動があることであり、その脈動を少なくするためエアチャンバを設置することが多い。しかしながら、エアチャンバを設置しても脈動が無くなることはなく、脈動により配管類や機器の振動が発生し長時間運転或いは各種センサの動作等に悪影響を及ぼすことが避けられない。
【0058】
最近、これらの仕様を全て満足するポンプとして、高粘性対応のロータリーポンプが開発され市販されており、加圧ポンプ15として用いることができる。このようなロータリーポンプとして、例えば、フォーゲルザング(VOGELSANG)社のロータリーポンプがある。
【0059】
図8は、図1の加圧ポンプの説明図である。図8に示すように、加圧ポンプ15(フォーゲルザング社ロータリーポンプ)は、縦列配置された2個のローターを備えており、粘性の高い液体も送り出すことができる。このロータリーポンプは、押出し型・容積型のポンプで、最大圧力1.2Mpa、最大自吸力8mNPSHの能力を有している。図8に示すのは、この浮遊性藍藻類処理システム10において使用する脈動が少ないハイフロー型である。
【0060】
加圧ポンプ15の運転に際しては、圧力計と流量計を設置して得られたデータをコンピュータに取り込み、即時管理とデータ管理を行う。このため、インバータ制御によりモータの回転数を管理して、流量及び圧力を管理する。
【0061】
(アオコ処理機)
浮遊アオコ処理対象の川Rから採取されたアオコを含む水は、加圧ポンプ15からストレーナ16を経てアオコ処理機17に送り込まれる。このアオコ処理機17は、例えば、本願出願人による「浮遊性藍藻類除去装置(特願2003−93781号)」が使用される。
【0062】
図9は、図1のアオコ処理機の構成を示す断面説明図である。図9に示すように、アオコ処理機17は、加圧加速による渦流を形成して水と共に送り込まれたアオコに衝突による衝撃を加え、ガス胞破壊・群体破砕を行ってアオコの解体破壊処理を行う。
【0063】
図10は、浮遊性藍藻類処理システムにおけるアオコ処理機の設置状況を示す平面説明図である。図10に示すように、浮遊性藍藻類処理システム10において、アオコ処理機17は8個用いられており、ストレーナ16からのアオコを含む水の流路は、分岐管26を介して2つに分岐された後、更に4つに分岐されて、各アオコ処理機17に接続されている。
【0064】
なお、アオコ処理機17は、本願出願人による「浮遊性藍藻類除去装置(特願2003−93781号)」に限るものではなく、同様に浮遊性藍藻類の解体破壊処理ができるものであれば良く、目的、用途、使用条件、使用環境等に応じて、各種のものを用いることができる。
【0065】
(最終排水)
一般的に、ダム湖や水位調整池等においては水位変動が大きいことから、アオコを採取処理するためのシステムが定置方式の場合、アオコ処理機17を計画最高水位以上の標高に設置する必要がある。このため、アオコ処理対象水面とアオコ処理機17との標高差が10m以上になることもあるが、このような場合、処理後の排水は、落差が大きいために加速しながら水面上に流れることになる。この流れは、水面を波立たせるばかりでなく、水深が浅いところでは水底に堆積したへドロ等を巻き上げて水質悪化を招くことも考えられる。
【0066】
そこで、処理排水の流れる速度を遅くするために、減勢装置18を設置した。この減勢装置18は、アオコ処理機17から排出されるアオコ処理後の排水路に設置した、排水を受け止める幅の広い堰、或いは排水を通過させる障害物等により形成されている。堰は、排水路面に敷設したシート(例えば、養生シート)と、シート最下部の下に配置されて段部を形成する管体等からなり、障害物は、細かい空隙が多数形成された特殊繊維(例えば、ヘチマロン:商品名)からなる。
【0067】
(浮遊性藍藻類処理システムのまとめ)
図11は、浮遊性藍藻類処理システムによるアオコ処理の流れを示すフローチャートである。図11に示すように、アオコ処理対象の川Rに浮遊するアオコは、浮体フロート11により一箇所に集積され(ステップS101)、網22による第1段異物除去(ステップS102)を経て、小型吸入装置12により複数箇所で収集され(ステップS103)、フロート付き吸引ポンプ13により水と共に吸引される(ステップS104)。
【0068】
その後、アオコを含む水は、流量制御バルブ(ステップS105)、合流管(ステップS106)、異物流入防止網23による第2段異物除去(ステップS107)を経て、水槽14に貯留される(ステップS108)。水槽14に貯められたアオコを含む水は、加圧ポンプにより加圧され(ステップS109)、ストレーナ16による第3段異物除去(ステップS110)を経て、アオコ処理機17へと送られ、アオコ処理機17によりアオコのガス胞破壊・群体破砕が行われる(ステップS111)。アオコ処理後、アオコ処理機17からの排水は、配水管(ステップS112)、減勢装置18による減勢処理(ステップS113)を経て、再び、川Rの採取場所から離れた排出により直接影響を与えない場所に戻される。
【0069】
(浮遊性藍藻類処理システムによる浮遊アオコ処理の確認)
浮遊性藍藻類処理システム10は、アオコ処理対象水域からアオコを含む水を採取し、ガス胞破壊・群体破砕処理を行った後に、再びアオコ処理対象水域に戻す、循環処理を行うものであり、広範囲の水域から如何に高い濃度で浮遊アオコを採取するかが課題となる。この課題の解決策として、アオコの強制的集積、収集装置の複数設置、ゴミ流入対策等について具体的な提案を行った。これらの提案による効果を確認する。
(1)広大な対象範囲
自然界では、必ず風や水の流れが発生し、浮遊するアオコもそれに影響される。この原理に着目したのが、ハの字形(略X字形)の浮体フェンス11である。この浮体
フェンス11は、風と水の双方の作用に対して効果を発揮することができるので、非常に広い範囲でのアオコ収集が可能となり、小規模な収集システムにも対応が可能である。なお、浮体フェンス11は、1本或いは2本に限らず、3本以上設けても良い。
(2)アオコの収集量
浮体フェンス11で集積されたアオコの厚さは、集積される前の浮遊するアオコより厚いものと想像されるが、浮遊性藍藻類処理システム10が順調に稼動する場合、その厚さの増加は顧著ではなく最大2〜3cm程度と想像されるので、アオコの収集量を増量させるためには、収集厚さを増やすのではなく、収集距離を長くする方が効果的である。収集距離を長くするために収集装置を複数個使用し、各収集装置毎に吸引ポンプを設置することにより、他の収集装置に影響を与えることがない。また、設置した吸引ポンプに空気が流入し収集能率が低下するのを防止するため、流量制御バルブを設置した。このように、浮遊性藍藻類処理システム10は、アオコ収集装置を増やすだけでアオコの収集量が確実に増加し、全体の収集量と処理量の調整が容易であり、とりわけ実用的なシステムである。
(3)ゴミ流入防止対策
自然界の内陸水面では、各種の物体(ゴミ等)が浮遊しているのが一般的であり、これらの浮遊物と共にアオコが浮遊している。このような状態で、数ミクロンのアオコのみを収集するためには、かなり緻密なゴミ流入防止対策を必要とする。そこで、浮遊性藍藻類処理システム10は、網22、異物流入防止網23及びストレーナ16による3段階の異物除去システムを採用した。
【0070】
即ち、アオコを含む水の流路を形成する管路が一旦途切れた後、再度連続して処理が行われるアオコの処理システムにおいて、先ず、アオコを含む水が管路に入る前に異物(ゴミ等)流入防止装置を設け、次に、その管路の出口或いは次の管路に入る前に異物流入防止装置を設け、次に、管路内に異物流入防止装置及び異物剪断装置を設け、更に、アオコ処理機内部に異物が蓄積した場合への対策として、蓄積した異物を容易に除去することができるように、管路を分岐して設置した複数のアオコ処理機のそれぞれで異物蓄積部分を随時交換可能にした。
【0071】
これにより、浮遊性藍藻類処理システム10へゴミ等の異物が入り込むのを確実に防止することができる。また、センサとコンピュータを用いた管理により、異物混入による異常な圧力や流量の変化を把握することができる。これら一連の対策により、ゴミ等の異物流入によるシステムの能率低下を確実に防ぐことができる。
【0072】
上述したように、この発明に係る浮遊性藍藻類収集装置は、浮遊性藍藻類が発生する水域に配置されて水面下に壁部を形成し、水面を浮遊する浮遊性藍藻類が水域における風や水の流れにより移動する際、前記壁部に沿って移動し一箇所に集積するように移動を規制する浮体フェンスと、前記浮遊性藍藻類の集積場所に配置され、前記浮遊性藍藻類を含む水を吸入する吸入装置とを有する。また、前記浮体フェンスを2個ハの字形に配置している。また、前記吸入装置を、2個の浮体フェンスの端部近接点を含む各浮体フェンスに沿う浮体フェンス近傍位置に複数個配置している。
【0073】
この発明に係る浮遊性藍藻類処理システム装置は、上記浮遊性藍藻類収集装置と、前記浮遊性藍藻類収集装置が収集した浮遊性藍藻類を含む水を加圧して送り出す加圧ポンプと、前記加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水を取り込み、ガス胞破壊・群体破砕を行って前記浮遊性藍藻類を解体破壊処理する浮遊性藍藻類処理機と、浮遊性藍藻類を含む水を前記浮遊性藍藻類収集装置に取り込んで前記浮遊性藍藻類処理機から排出する迄の浮遊性藍藻類を含む水の処理過程に配置され、浮遊性藍藻類を含む水を通過させて前記浮遊性藍藻類処理機の障害となる異物を除去する異物除去装置と、前記浮遊性藍藻類処理機により浮遊性藍藻類を解体破壊処理した後の処理排水を減勢して排出する減勢装置とを有している。また、前記吸入装置に接続された吸引ポンプと、前記吸引ポンプから送られた浮遊性藍藻類を含む水を貯留する水槽とを有している。また、前記浮遊性藍藻類処理機は、ノズルを使用し物理力により前記浮遊性藍藻類を解体破壊処理する。また、前記浮遊性藍藻類処理機は、前記加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水を複数に分岐する分岐路を介して個別に取り込む複数個が設置されている。また、前記異物除去装置は、前記浮遊性藍藻類収集装置に取り込まれる前の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ前記異物を除去する第1段異物除去装置と、前記浮遊性藍藻類収集装置を経た後の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ前記異物を除去する第2段異物除去装置と、前記浮遊性藍藻類処理機に送り込まれる前の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ、通過途中で前記異物の流入を防止すると共に前記異物を剪断する第3段異物除去装置と、前記浮遊性藍藻類処理機による前記浮遊性藍藻類の解体破壊処理を行う際に蓄積した前記異物を除去するため、随時交換可能に離脱自在に装着された前記解体破壊処理を行うカートリッジ方式処理部の内の少なくとも一つからなる。
【0074】
このように、この発明によれば、非常に広い範囲での浮遊性藍藻類の収集が可能となって小規模な収集システムにも対応が可能であり、浮遊性藍藻類収集装置を増やすだけで浮遊性藍藻類の収集量が確実に増加し、全体の収集量と処理量の調整が容易である。更に、ゴミ等の異物流入によるシステム全体の能率低下を確実に防ぐことができ、広範囲な水域に浮遊する浮遊性藍藻類を効率良く確実に収集して解体破壊処理し除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の一実施の形態に係る浮遊性藍藻類処理システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1の浮体フェンスを実際の川に設置した例を示す説明図である。
【図3】図1の浮体フェンスの構成を示し、(a)は部分説明図、(b)は断面図である。
【図4】図1の小型吸入装置を複数個用いた場合の川における配置例を示す説明図である。
【図5】図1の小型吸入装置を示し、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図6】図1の水槽の斜視図である。
【図7】図1のストレーナの一部破断した説明図である。
【図8】図1の加圧ポンプの説明図である。
【図9】図1のアオコ処理機の構成を示す断面説明図である。
【図10】浮遊性藍藻類処理システムにおけるアオコ処理機の設置状況を示す平面説明図である。
【図11】浮遊性藍藻類処理システムによるアオコ処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
10 浮遊性藍藻類処理システム
11,11a,11b 浮体フェンス
12 小型吸入装置
13 フロート付き吸引ポンプ
14 水槽
15 加圧ポンプ
16 ストレーナ
17 アオコ処理機
18 減勢装置
19 袋状シート
20 ホース
21 錘
22 網
23 異物流入防止網
24 濾過機能部
25 異物剪断機能部
26 分岐管
A アオコ集積場所
R 川

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊性藍藻類が発生する水域に配置されて水面下に壁部を形成し、水面を浮遊する浮遊性藍藻類が水域における風や水の流れにより移動する際、前記壁部に沿って移動し一箇所に集積するように移動を規制する浮体フェンスと、
前記浮遊性藍藻類の集積場所に配置され、前記浮遊性藍藻類を含む水を吸入する吸入装置と
を有する浮遊性藍藻類収集装置。
【請求項2】
前記浮体フェンスを2個ハの字形に配置した請求項1に記載の浮遊性藍藻類収集装置。
【請求項3】
前記吸入装置を、2個の浮体フェンスの端部近接点を含む各浮体フェンスに沿う浮体フェンス近傍位置に複数個配置した請求項2に記載の浮遊性藍藻類収集装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の浮遊性藍藻類収集装置と、
前記浮遊性藍藻類収集装置が収集した浮遊性藍藻類を含む水を加圧して送り出す加圧ポンプと、
前記加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水を取り込み、ガス胞破壊・群体破砕を行って前記浮遊性藍藻類を解体破壊処理する浮遊性藍藻類処理機と、
浮遊性藍藻類を含む水を前記浮遊性藍藻類収集装置に取り込んで前記浮遊性藍藻類処理機から排出する迄の浮遊性藍藻類を含む水の処理過程に配置され、浮遊性藍藻類を含む水を通過させて前記浮遊性藍藻類処理機の障害となる異物を除去する異物除去装置と、
前記浮遊性藍藻類処理機により浮遊性藍藻類を解体破壊処理した後の処理排水を減勢して排出する減勢装置と
を有する浮遊性藍藻類処理システム。
【請求項5】
前記吸入装置に接続された吸引ポンプと、
前記吸引ポンプから送られた浮遊性藍藻類を含む水を貯留する水槽と
を有する請求項4に記載の浮遊性藍藻類処理システム。
【請求項6】
前記浮遊性藍藻類処理機は、
ノズルを使用し物理力により前記浮遊性藍藻類を解体破壊処理する請求項4または5に記載の浮遊性藍藻類処理システム。
【請求項7】
前記浮遊性藍藻類処理機は、
前記加圧ポンプから送り出された浮遊性藍藻類を含む水を複数に分岐する分岐路を介して個別に取り込む複数個が設置されている請求項4から6のいずれかに記載の浮遊性藍藻類処理システム。
【請求項8】
前記異物除去装置は、
前記浮遊性藍藻類収集装置に取り込まれる前の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ前記異物を除去する第1段異物除去装置と、
前記浮遊性藍藻類収集装置を経た後の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ前記異物を除去する第2段異物除去装置と、
前記浮遊性藍藻類処理機に送り込まれる前の浮遊性藍藻類を含む水を通過させ、通過途中で前記異物の流入を防止すると共に前記異物を剪断する第3段異物除去装置と、
前記浮遊性藍藻類処理機による前記浮遊性藍藻類の解体破壊処理を行う際に蓄積した前記異物を除去するため、随時交換可能に離脱自在に装着された前記解体破壊処理を行うカートリッジ方式処理部
の内の少なくとも一つからなる請求項4から7のいずれかに記載の浮遊性藍藻類処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−14625(P2006−14625A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194027(P2004−194027)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000172961)佐伯建設工業株式会社 (21)
【Fターム(参考)】