説明

浴室の配管取付器具

【課題】特別な工具を用いることなく適切な締め付け作業を行うことができ、過度な締め付けによる部材の破損や、締め付けの緩みによる種々の問題を回避することができる浴室の配管取付器具を提供する。
【解決手段】略筒状のプラグ1の挿入筒部11が浴室内の取付面に穿設された貫通孔に挿入し、挿入筒部11と嵌合するベース4と、プラグ1のフランジ10とが取付面を表裏から挟持し、弾性変形自在の床用水密材2が貫通孔周りを止水し、プラグ1の内部を通る給水管及び給湯管などの配管が貫通孔を貫くように案内され、挿入筒部11及びベース4は、締め付け方向に係合する係合爪13及び係合受け爪44を備え、これらが所定の締め付け量を超える締め付けを規制するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水管及び給湯管などの配管を浴室内に引き込むための貫通孔周りを止水するための浴室の配管取付器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室は、給水管及び給湯管などの配管を外部から引き込むために、床面及び壁面などの取付面に貫通孔が開けられ、この貫通孔から配管が引き込まれるとともに、貫通孔周りから水が浸入しないように水密にされている。
【0003】
そこで、従来、水密性を保ちながら配管を浴室内に引きまわすための配管取付器具及びその器具を用いる構造が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
後述する図7に示すように、特許文献1に記載された配管取付器具は、内部に配管Pを通された本体90の基端部が貫通孔Hに挿入されて取付面Fの裏側から突き出し、突き出した基端部に締付ナット92が取り付けられ、この締付ナット92と、本体90のフランジ94とで取付面Fを表裏から挟み込んでいる。また、フランジ94と取付面Fとの間に挟まれた弾性変形自在な水密材93が貫通孔周りを水密にしている。
【0005】
更にまた、特許文献2に記載された配管取付器具は、本体の先端部が結束バンドで締め付けられることにより、先端開口から突き出る配管に密着して水密になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−275414号公報
【特許文献2】特許第3673726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先に提案された配管取付器具にあっては、締付ナットが適度な荷重で締め付けられることにより、水密材が弾性変形して貫通孔周りを止水する。また、締付ナットが基端部や取付面との間に摩擦力を生じさせることにより、その締め付けの緩みが防がれている。
【0008】
しかしながら、締付ナットの締め付けが過度となる場合、締付ナット、フランジ、水密材及び取付面を含む部材などに負荷が掛かり、これらが破損して浸水を招くおそれがある。一方、締付ナットの締め付けが不足する場合、水密材が弾性変形せず、十分な止水ができない。また、配管を流れる湯水による水撃作用(ウォーターハンマー)が反復発生することにより、器具全体が揺れ動いて締付ナットの締め付けが緩むおそれがある。更にまた、本体が反締め付け方向に回転することによって締付ナットが緩むおそれがある。
【0009】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、本体の基端部と取付部材との締め付けを所定の締め付け量に規制することにより、特別な工具を用いることなく適切な締め付け作業を行うことができ、過度な締め付けによる部材の破損や、締め付けの緩みによる上述の問題を回避することができる浴室の配管取付器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る浴室の配管取付器具は、略筒状の本体の基端部が浴室内の取付面に穿設された貫通孔に挿入し、取付部材と締結し、本体の外周面に周設されるフランジと前記取付部材とが前記貫通孔周りを表裏から挟持し、該挟持により弾性変形自在の水密材が前記貫通孔周りを止水し、前記本体が内部を通る給水管及び給湯管などの配管を前記貫通孔を貫くように水密に案内する浴室の配管取付器具において、前記基端部及び取付部材は、締め付け方向に係合する係合面を備え、該係合面は、所定の締め付け量を超える締め付けを規制するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、取付面を表裏から挟持する本体及び取付部材が備える、それぞれの係合面が、所定の締め付け量を超える締め付けを規制できるように形成されていることにより、取付面との水密性が確保できる程度の適切な締め付けが特別な工具を用いることなく行われる。
【0012】
また、本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記フランジからの押圧を受ける天板と、該天板の外縁から垂下する筒部とを備えた、該筒部から前記水密材の一部がはみ出るように該水密材に覆い被さるキャップ部材を更に備える構成であってもよい。
【0013】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、キャップ部材が水密材に覆い被さり、天板でフランジからの押圧を受けることにより、本体と取付部材とが締め付け結ばれたときに、天板がフランジの押圧を水密材に伝える。また、天板の外縁から垂下する筒部を備えることにより、フランジの押圧によって水密材が弾性変形する場合、水密材が外側に膨らまないようにして水密材の弾性変形力が貫通孔周りに集中するようにする。また、水密材の一部がキャップ部材の筒部からはみ出ていることにより、本体と取付部材とが締め付け結ばれることによってキャップ部材の筒部の下端が取付面に接近していき、水密材が弾性変形していく。そして、キャップ部材の筒部の下端が取付面に到達したとき、この筒部が支えとなって、それ以降の締め付けを規制する。
【0014】
また、本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記取付部材は、前記取付面に固定するための取付手段を備える構成であってもよい。
【0015】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、取付部材を取付面に固定することにより、例えば、作業者は、取付面の裏側に潜り込み、裏側から取付部材を手で押さえつつ、本体を取付面の表側から取り付ける、というような困難な作業を行うことなく、取付面に予め固定された状態の取付部材に取付面の表側から本体を取り付けるだけですむ。
【0016】
また、本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記取付部材は、前記取付面との位置合わせをするための位置決め手段を更に備える構成であってもよい。
【0017】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、取付部材が位置決め手段を備えることにより、作業者は、目視しながら正確な取付位置に取付部材を取り付ける。
【0018】
また、本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記フランジより先端側の外周面から張り出し、前記取付面から立ち上がる起立面に前記取付面が変位する方向に対して運動自在となるように固定される揺れ止め部を更に備える構成であってもよい。
【0019】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、本体の外周面から張り出した、取付面から立ち上がる起立面に固定される揺れ止め部を備えることにより、少なくとも本体の横方向の揺れを抑え、本体の反締め付け方向への回転を防ぐ。また、取付面が変位する方向に対して運動自在となるように揺れ止め部が固定されることにより、取付面の撓み応じて揺れ止め部を含む本体が運動することにより、取付面の撓みに基づく本体への負荷を吸収する。
【0020】
本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記基端部及び取付部材は、締め付けが所定の締め付け量となる状態で前記揺れ止め部が前記起立面に向かって張り出す位置で停止するように制限する回転規制手段を更に備える構成であってもよい。
【0021】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、揺れ止め部が起立面に向かって張り出すように回転規制することにより、揺れ止め部の起立面への固定が確実になるとともに、作業員は、揺れ止め部が起立面を向いたときに適切な締め付けがなされていることを視認する。
【0022】
本発明に係る浴室の配管取付器具は、前記本体の先端部に外嵌する略筒状の他部材と、締め付け方向への回転によって前記他部材を前記本体の先端部に締結する締め付け部材とを備え、該締め付け部材は、前記揺れ止め部とともに前起立面に固定される戻り止め部を備える構成であってもよい。
【0023】
本発明に係る浴室の配管取付器具にあっては、揺れ止め部による器具本体の揺れ止めを図るとともに、本体の先端部に外嵌する略筒状の他部材を締め付ける部材の回転の戻りを止める。
【発明の効果】
【0024】
本発明にあっては、特別な工具を用いることなく適切な締め付け作業を行うことができ、過度な締め付けによる部材の破損や、締め付けの緩みによる種々の問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る浴室の配管取付器具を正面視右斜めから見た分解斜視図である。
【図2】本発明に係る浴室の配管取付器具を正面視前後方向に切断した側面視断面図である。
【図3】本発明に係る浴室の配管取付器具が備える本体と取付部材との締め付け構造を示す説明図であり、(a)は本体の構造を正面視左斜めから見た斜視図、(b)は取付部材を正面視前後方向に切断した側面視断面図である。
【図4】本発明に係る浴室の配管取付器具が備える位置決め手段を正面視左右方向に切断した正面視断面図である。
【図5】本発明に係る浴室の配管取付器具の取付例を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る浴室の配管取付器具の取付例を水平方向に切断する断面斜視図である。
【図7】従来の浴室の配管取付器具を正面視前後方向に切断した側面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る浴室の配管取付器具について、実施の形態を示す図に基づいて以下説明する。本発明に係る配管取付器具は、図1及び図2に示すように、円筒状のプラグ1と、プラグ1と取付面Fとを水密にする床用水密材2と、床用水密材2を覆うパッキンガイド3と、プラグ1を取付面Fに取り付けるためのベース4と、ベース4と取付面Fとを水密にするベース用水密材40と、プラグ1の先端側に嵌り込むブーツ5と、プラグ1の先端部とブーツ5とを水密にするプラグキャップ50と、プラグ1を起立面Wに固定するための固定ピース6と、固定ピース6と起立面Wとを水密する固定ピース用水密材60とを備える。なお、本実施の形態において、取付面Fとは、配管取付器具が取り付けられる床面(及び壁面)であり、起立面Wとは、取付面Fから立ち上がる壁面(及び床面)である。また、プラグ1の基端側は、取付面Fの貫通孔Hへ挿し込む側とし、先端側は、取付面Fから突き出る側とする。
【0027】
詳述すると、プラグ1は、配管取付器具の本体であり、ポリアセタール(POM)からなる略円筒形をなし、フランジ10と、挿入筒部11と、Oリング取付溝12と、係合爪13と、張り出し片14と、ブーツ取付ストッパ15とを備える。
【0028】
フランジ10は、プラグ1の中間辺りから平面視円形の鍔状に張り出している。挿入筒部11は、フランジ10より基端側にあるプラグ部であり、フランジ10から基端に向かって順番に、Oリング取付溝12と、係合爪13とが形成されている。
【0029】
係合爪13は、図3(a)に示すように、挿入筒部11の外周面から散点的に突き出し、プラグ1の軸方向に対して二段に分かれている。一段目の係合爪13と二段目の係合爪13とは、平面視で重なり合わないように突き出ている。係合爪13は、係合開始位置から係合規制位置まで上り傾斜(誘い部)をなし、係合規制位置から係合終了位置まで水平(規制部)をなすように形成されている係合面130を備える(図3(a)参照)。
【0030】
張り出し片14は、配管取付器具の揺れ止め部であり、フランジ10より先端側の外周面から一方向に張り出している。また、張り出し片14は、幅方向がプラグ1の軸方向と一致するように張り出し、幅方向に対してプラグ1の先端側の側端が基端側の側端より長くなるように張り出している。また、張り出し片14は、張り出し方向の先端が平面視略T字形となるように左右に分かれ延び、分かれ延びた部分がスライド係合突起140として機能する。
【0031】
ブーツ取付ストッパ15は、プラグ1の先端部から平面視円形の鍔状に張り出し、その外縁から、複数の締め付け爪が適度な間隔を開けて全周に亘って更に突き出ている。
【0032】
床用水密材2は、例えば、硬度30度の発泡シリコーンなどの軟質材からなる厚みのある環状をなし、押圧力によって弾性的に変形し、取付面Fの貫通孔H辺りの隙間を埋めるように止水する。床用水密材2は、表面が滑り性を有しており、プラグ1の回転運動により、床用水密材2とプラグ1の挿入筒部11との接触箇所が滑る。
【0033】
パッキンガイド3は、床用水密材2に覆い被さるキャップ部材であり、POM(ポリアセタール)、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)又は金属などの硬質材で形成され、環状の天板30と、天板30から垂れ下がる筒部31とを備える。筒部31は、高さ寸法が床用水密材2の厚み寸法の3/4程度となるように形成されている。パッキンガイド3は、天板30及び筒部31の表面が平坦になって滑り性を有しており、プラグ1の回転運動により、プラグ1のフランジ10と天板30との接触箇所、並びに、天板30及び筒部31と床用水密材2との接触箇所が滑り、スリップワッシャ部材として機能する。
【0034】
ベース4は、プラグ1を取付面Fに取り付けるための取付部材であり、POM(ポリアセタール)で形成され、プラグ受け41と、挟持板42と、リブ取付片43とを備える。
【0035】
プラグ受け41は、プラグ1の挿入筒部11の外径より僅かに大径の略円筒形をなし、図3(b)に示すように、内周面から複数の係合受け爪44が散点的に突き出ている。係合受け爪44は、プラグ受け41の軸方向に対して二段に分かれ、一段目の係合受け爪44が二段目の係合受け爪44と平面視で重なり合わないように突き出ている。係合受け爪44は、係合開始位置から係合終了位置まで水平をなすように形成されている係合受け面440を備える。また、いずれかの係合受け面440は、係合終了位置から小さな回動規制片441が突き出ている。
【0036】
挟持板42は、プラグ受け41の中間辺りから平面視四角形の鍔状に張り出している。リブ取付片43は、ベース4を取付面Fの裏面に固定するための取付手段であり、挟持板42の張り出し縁から略舌状に垂れ下がり、図4に示すように、縁から幅方向に突き出た位置決め突起430と、面上に刻まれた切り取り溝431と、ねじ孔432とを備える。
【0037】
切り取り溝431は、上方に折れ曲がるコの字形の窓が一部分に開けられ、その窓の内側に形成されたコーナ部の先端が、位置決め突起430を結ぶ仮想線上にある。ねじ孔432は、切り取り溝431を挟んだ上下の位置に開けられている。
【0038】
ベース用水密材40は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)発泡などの軟質材からなる厚みのある環状をなし、押圧力によって弾性的に変形し、取付面Fの貫通孔H周りの隙間を埋めるように止水を行う。
【0039】
ブーツ5は、プラグ1の先端部に嵌り込む他部材であり、例えば、非発泡のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などの弾性材からなる略円筒形をなし、外周面が蛇腹状であるとともに、基端部(取付側)から平面視円形の鍔状のストッパが張り出している。
【0040】
プラグキャップ50は、ブーツ5をプラグ1の先端部に締め付けるための締め付け部材であり、POM(ポリアセタール)で形成され、環状の天板500と、天板500から垂れ下がる筒部501とを備える。筒部501は、内周面から複数の締め付け受け爪502が突き出し、外周面から一方向に戻り止め片503が張り出している。締め付け受け片502は、係合終了位置に回動規制片が突き出ている。
【0041】
固定ピース6は、張り出し片14を起立面Wに固定するための部材であり、POM(ポリアセタール)からなる矩形のプレートである。固定ピース6は、幅方向と直交する長さ方向に沿って形成されたスライド係合溝61と、スライド係合溝61を挟んで幅方向に離れた位置に開けられたねじ孔62とを備える。スライド係合溝61は、一端が開放し、他端が閉鎖されている。
【0042】
固定ピース用水密材60は、例えば、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)発泡などの軟質材からなり、押圧力によって固定ピース6の取付箇所の隙間を埋めるように弾性的に変形し、止水を行う。
【0043】
このように、配管取付器具は、複数の部材により構成されている。そこで、これらの部材を用いた配管取付器具の組み立て及び取り付けの方法について以下説明する。なお、本発明に係る配管取付器具は、浴室内の床面及び壁面に取り付けることができるが、ここでは、裏面に補強用リブRが形成された床パンに対する取り付けを一例として説明する。
【0044】
(ベース4の取り付け)
まず、配管取付器具は、ベース4のプラグ受け41の外周にベース用水密材40が嵌り込む。配管取付器具は、基端部が床パンの裏側から床パンの貫通孔Hに挿入され、リブ取付片43が補強用リブRに接触する。配管取付器具は、ベース4が、位置決め突起430の先端が補強用リブRの表面に描かれたケガキ線Lと一致する位置まで押し込まれ、ベース用水密材40が挟持板42と貫通孔H周りとで挟み押さえ付けられ、弾性変形して貫通孔H周りの隙間を止水する。配管取付器具は、タッピングねじがねじ孔432を介して補強用リブにねじ込まれ、固定される。
【0045】
また、配管取付器具は、リブ取付片43の垂下寸法より短い補強用リブRに取り付けられる場合、リブ取付片43の先端側が切り取り溝431で切り取られ、切り取り箇所に新たに形成されたコーナ角の先端が補強用リブRの下端縁と一致する位置で固定される。
【0046】
(配管及び床パンの取り付け)
給水管及び給湯管などの配管は、水栓のため浴室内に引き込まれる。配管は、ベース4のプラグ受け41の下方から挿入される。床パンは、ベース4及び配管が取り付けられた状態で、浴室内に設置される。
【0047】
(プラグ1の取り付け)
配管取付器具は、パッキンガイド3がプラグ1の挿入筒部11の外周に嵌り込み、床用水密材2がパッキンガイド3の筒部31に覆い被さる状態で挿入筒部11の外周に嵌り込む。このとき、床用水密材2は、下端側1/4の部分がパッキンガイド3の筒部31からはみ出した状態にある。配管取付器具は、例えば、硬度70のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)からなるOリング20がOリング取付溝12に嵌め込まれる。
【0048】
配管取付器具は、床パンから開口をのぞかせているベース4のプラグ受け41にプラグ1の挿入筒部11が挿入され、プラグ1の係合面130とベース4の係合受け面440とが係合開始位置で係わり合う。配管取付器具は、締め付け方向(時計回り)に回転運動することにより、係合受け面440が係合面130の上り傾斜(誘い部)に摺り合わさり、プラグ1がベース4に引き付けられていく。配管取付器具は、更に回転運動を続けて、係合受け面440が係合規制位置に到達し、係合受け面440が係合面130の水平(規制部)に進入した場合、それ以降、プラグ1がベース4に引き付けられることがなくなる。配管取付器具は、更に回転運動を続けると、プラグ1の係合爪13がベース4の係合受け爪44の回動規制片441に接触し、それ以上の回転運動が規制される。このとき、プラグ1は、張り出し片14が起立面Wとなる壁パネルを向く位置で回転を停止する。
【0049】
(ブーツ5の取り付け)
配管取付器具は、ブーツ5がプラグ1の先端部の外周に嵌り込み、ストッパがプラグ1のブーツ取付ストッパ15に接触する位置まで押し込まれる。配管取付器具は、プラグキャップ50がプラグ1の先端部の外周に嵌り込み、締め付け方向(時計回り)に回転運動することにより、締め付け受け爪502がブーツ取付ストッパ15の締め付け爪と係わり合い、ブーツ5の基端部がプラグ1の先端部に固定される。このとき、プラグキャップ50は、締め付け受け爪502の回動規制片がブーツ取付ストッパ15の締め付け爪の係合終了位置に到達することにより、戻り止め片503が壁パネルを向く位置で回転を停止する。即ち、戻り止め片503は、張り出し方向が、プラグ1の張り出し片14の張り出し方向と一致する。また、給水管及び給湯管などの配管は、ブーツ5の先端開口から浴室内に臨む。配管取付器具は、ブーツ5の先端部がポリアミド合成繊維製の結束バンド51に締め付けられ、配管と水密になる。
【0050】
(固定ピース6の取り付け)
配管取付器具は、プラグキャップ50の戻り止め片503及びプラグ1の張り出し片14のスライド係合突起140が、固定ピース6のスライド係合溝61の開放端に嵌め込まれ、スライドしながら閉鎖端に向かって係わり合っていく。このとき、固定ピース6は、スライド係合溝61が床パンに向かう方向に沿うように配置される。配管取付器具は、固定ピース用水密材60が固定ピース6の裏面と壁パネルとの間に挟み込まれ、タッピングねじがねじ孔62を介して壁パネルにねじ込まれ、固定される。
【0051】
配管取付器具は、上述するように組み立て及び取り付けがなされることにより、以下の作用効果を奏する。配管取付器具は、プラグ1の取付作業が容易となる。作業員は、配管を通してベース4を取付面Fに取り付け固定し、この取付面Fを有する部材を浴室に取り付け、その後、取付面Fの貫通孔Hから突き出るベース4のプラグ受け41に、プラグ1の挿入筒部11を挿し込み、固定するだけで止水作業が完了する。従って、取付面Fの裏側に手をまわしてベース4を支えながらプラグ1と嵌め合わせるというような困難な取付方法を強いられることがない。なお、従来の取付方法として、配管、ベース及びプラグを予め取り付けた状態の床パンなどを浴室に取り付ける方法が存在するが、配管に無用な力がかかり破損するおそれがあるため、好ましくない。
【0052】
また、配管取付器具は、費用を抑えることができる。ベース4が取付面Fの裏面の補強用リブRに取り付くようにしてあることにより、ベース4を取り付けるための部材を別途設ける必要がない。
【0053】
また、配管取付器具は、設定された取付位置にベース4を取り付けることができる。作業員は、位置決め突起430と補強用リブRのけがき線Lとを目視しながら、ベース4を設定された取付位置に取り付ける。その結果、プラグ1とベース4とは、予定された距離で係わり合うので、締め付け調整が設定された範囲内で行われる。
【0054】
また、配管取付器具は、設定された締め付け量によってプラグ1をベース4に締め付けることができる。配管取付器具は、プラグ1の回転運動によって床用水密材2のはみ出し部分が弾性変形してベース4に引きつられ、パッキンガイド3の筒部31の下端が取付面Fに到達したとき、この下端が支えとなり、プラグ1の締め付けが規制される。その結果、プラグ1、床用水密材2及び取付面Fを含む部材などの破損を防ぐことができる。
【0055】
また、配管取付器具は、上述するように、プラグ1の係合爪13及びベース4の係合受け爪44の形状及び寸法が工夫されていることにより、プラグ1のベース4への締め付け量が所定の締め付け量となるように制限されている。その結果、配管取付器具は、設定された締め付け量だけ締め付けが行われ、プラグ1、床用水密材2及び床パンなどの破損を防止する。また、配管取付器具は、ベース4の係合受け爪44の回動規制片441によって、プラグ1の張り出し片14が起立面Wを向くように回転運動が規制されていることにより、この状態にあるときに適切な締め付けがなされているということを作業員に視認させることができる。
【0056】
また、配管取付器具は、床用水密材2の水密性を向上させる。配管取付器具は、プラグ1が回転運動することによって床用水密材2がプラグ1のフランジ10と取付面Fとの間で圧して押さえ付けられ、径方向に膨らむように弾性変形する。配管取付器具は、パッキンガイド3の筒部31が床用水密材2の外側への膨らみを抑える。その結果、床用水密材2は、弾性変形力がプラグ1の挿入筒部11、パッキンガイド3及び取付面Fを含む部材の方向に強く働き、これらの隙間を埋めるとともに、パッキンガイド3をフランジ10に密着させる。なお、床用水密材2は、覆い被さるパッキンガイド3がスリップワッシャとして機能するので、プラグ1の回転運動によってねじりきれることがない。
【0057】
また、配管取付器具は、貫通孔H周りの隙間を完全に水密にする。即ち、配管取付器具は、床用水密材2が一次水密手段となり、Oリング20及びベース用水密材40が二次水密手段となり、2つの経路のそれぞれを二重水密する。具体的には、床用水密材2及びOリング20が取付面Fからベース4のプラグ受け41の内周面に向かう湯水の流れを止水し、床用水密材2及びベース用水密材40が取付面Fからベース4のプラグ受け41の外周面に向かう湯水の流れを止水する。
【0058】
また、配管取付器具は、係合爪13及び係合受け爪44を複数段設けることにより、各係合爪にかかる負荷を分散して破損を回避するとともに、プラグ1及びベース4の引き付けを確実なものとする。
【0059】
配管取付器具は、スライド係合突起140がスライド係合溝61の開放端辺りで係わり合う場合、上述するように、スライド係合突起140の張り出し寸法の長い部分が固定ピース6と係わり合い、プラグ1と固定ピース6との距離が長くなる。これに対して、閉鎖端辺りで係わり合う場合、スライド係合突起140の張り出し寸法の短い部分が固定ピース6と係合するから、プラグ1と固定ピース6との距離が短くなる。その結果、プラグ1は、張り出し片14が固定ピース6に徐々に引き寄せられるので、取付時に過度な負担がかかり破損することがない。また、プラグ1と固定ピース6との間が設定された距離よりも僅かに遠くなる場合、スライド係合突起140が係合溝61の閉鎖端に到達しない状態で固定される。
【0060】
配管取付器具は、プラグ1の張り出し片14が固定ピース6を介して起立面Wに固定されることにより、器具全体の揺れ動きを防ぐとともに、プラグ1の反締め付け方向への想定外の回転を防ぐ。また、配管取付器具は、プラグキャップ50の戻り止め片503がプラグ1の張り出し片14と同じ方向を向くように張り出すことにより、プラグ1の張り出し片14とともに固定ピース8を介して起立面に固定され、プラグキャップ50の反締め付け方向への回転を防ぐ。
【0061】
配管取付器具は、取付面Fにかかる荷重が貫通孔H周り及び起立面Wに伝わらないようにしてある。配管取付器具は、取付面Fに荷重がかかって撓む場合であっても、スライド係合突起140と固定ピース6とが取付面Fに向かう方向にスライドすることにより、取付面Fの撓みを吸収する。その結果、取付面Fの撓みにより、プラグ1が取付面Fから引き抜かれたり、固定ピース6が起立面Wから引き剥がされたり、するような負荷がかかることを回避する。言い換えれば、配管取付器具は、スライド係合突起140と固定ピース6とが取付面Fが変位する方向にスライドするようにしてあることにより、取付面Fの撓みを吸収することができる。
【0062】
配管取付器具は、ブーツ5の外周面が蛇腹状になっていることにより、配管の線膨張を吸収して、プラグ1等への負荷を和らげる。
【符号の説明】
【0063】
1 プラグ
10 フランジ
11 挿入筒部
13 係合爪
130 係合面
14 張り出し片
15 ブーツ取付ストッパ
2 床用水密材
3 パッキンガイド
4 ベース
41 プラグ受け
43 リブ取付片
430 位置決め突起
5 ブーツ
50 プラグキャップ
503 戻り止め片
6 固定ピース
61 スライド係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状の本体の基端部が浴室内の取付面に穿設された貫通孔に挿入し、取付部材と締結し、本体の外周面に周設されるフランジと前記取付部材とが前記貫通孔周りを表裏から挟持し、該挟持により弾性変形自在の水密材が前記貫通孔周りを止水し、前記本体が内部を通る給水管及び給湯管などの配管を前記貫通孔を貫くように水密に案内する浴室の配管取付器具において、
前記基端部及び取付部材は、締め付け方向に係合する係合面を備え、
該係合面は、所定の締め付け量を超える締め付けを規制するように形成されていることを特徴とする記載の浴室の配管取付器具。
【請求項2】
前記フランジからの押圧を受ける天板と、該天板の外縁から垂下する筒部とを備えた、該筒部から前記水密材の一部がはみ出るように該水密材に覆い被さるキャップ部材を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の浴室の配管取付器具。
【請求項3】
前記取付部材は、前記取付面に固定するための取付手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室の配管取付器具。
【請求項4】
前記取付部材は、前記取付面との位置合わせをするための位置決め手段を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の浴室の配管取付器具。
【請求項5】
前記フランジより先端側の外周面から張り出した、前記取付面から立ち上がる起立面に前記取付面が変位する方向に対して運動自在となるように固定される揺れ止め部を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の配管取付器具。
【請求項6】
前記基端部及び取付部材は、締め付けが所定の締め付け量となる状態で前記揺れ止め部が前記起立面に向かって張り出す位置で停止するように制限する回転規制手段を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の配管取付器具。
【請求項7】
前記本体の先端部に外嵌する略筒状の他部材と、
締め付け方向への回転によって前記他部材を前記本体の先端部に締結する締め付け部材と
を備え、
該締め付け部材は、前記揺れ止め部とともに前起立面に固定される戻り止め部を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の配管取付器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate