説明

浴室ユニット構造

【課題】ハーフパネルタイプの浴室ユニットであっても、少ない部品点数で多数の漏水危険箇所からの漏水を受け止めることができ、組立工数を抑えるとともに費用コストを抑えることができる浴室ユニット構造を提供する。
【解決手段】浴槽3と洗い場パン4とが設置面上に並設され、浴槽3の洗い場パン4側に張り出したフランジ30と洗い場パン4の浴槽3側に設けられた堤防部40との間がバスエプロン5で閉塞されている浴室ユニット構造において、トレー状の水受けパン1を、浴槽側壁31に貫設された配管器具、及び、浴槽側壁31とバスエプロン5との間に配置された給湯給水管6の接続部の直下を通るように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽と洗い場パンとが設置面上に並設され、浴槽の洗い場パン側に張り出したフランジと洗い場パンの浴槽側に設けられた堤防部との間がバスエプロンで閉塞されている浴室ユニット構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽、洗い場パン、壁パネル及び天井パネルなどの部品が工場において成型され、部品が現場に搬入された後、完成品として組み立てられる浴室ユニットがある。浴室ユニットは、設置面上に支持された床パンに浴槽を載せるフルパネルタイプと、浴槽と床パンとを設置面上に並べて設置するハーフパネルタイプとに大別される。ハーフパネルタイプの浴室ユニットは、フルパネルタイプのものより部品点数を抑えることができるため、ホテル、マンション及び一般住宅などで広く採用されている。
【0003】
浴室ユニットの浴槽には、追い焚きやジェット噴流などの多機能化に伴い、追い焚き用アダプタやジェット噴流装置などの配管器具が取り付けられている。また、浴槽の近傍には、給湯給水管などの配管が配置されている。配管器具や配管の接続部からは、湯水が漏れ出すおそれがあり、例えば、漏れた湯水が設置面に流れ落ちて階下に漏れるおそれがある。
【0004】
かかる事態において、フルパネルタイプの浴室ユニットは、浴槽を載置する防水パンにより湯水を受け止め、設置面への落水を阻止することができる。これに対して、ハーフパネルタイプの浴室ユニットは、浴槽の下方に防水パンが配置されていないため、湯水を受け止めることができず、設置面への落水を阻止することができない。
【0005】
そこで、従来、漏れた湯水を受け止める水受け部材を漏水危険箇所に取り付けたハーフパネルタイプの浴室ユニット構造が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−052561号公報
【特許文献2】特開2010−142392号公報
【特許文献3】特開2009−189452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、先に提案された特許文献1の発明にあっては、水受け部材が、追い焚き用配管や噴流用配管などの漏水危険箇所に個別に取り付けられているため、部品点数が多くなる。
【0008】
また、先に提案された特許文献2の発明にあっては、浴槽側壁の下部に溝形成部を設けておき、この溝形成部により、浴槽側壁上の追い焚き用配管から漏れた湯水を受け止めるようにしてある。そのため、浴槽側壁から離れた位置に配置されている給湯給水管の接続部については別途対処方法が必要となる。
【0009】
また、先に提案された特許文献3の発明にあっては、浴槽側壁から離れた位置に配置されている給湯給水管の接続部の下方にトレー状の水受けパンが設置され、接続部から漏れた湯水を受け止めるようにしてある。そのため、浴槽側壁上の追い焚き用配管などについては別途対処方法が必要となり、仮に対処した場合であっても、浴槽側壁回りの部品点数が多くなり、頻雑な構造となる。
【0010】
更にまた、バスエプロンの一部に設けた点検口とこれを閉塞するエプロン蓋との隙間から湯水が浸水した場合、先に提案された発明では、対処することができない。
【0011】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、トレー状の水受けパンを、浴槽側壁に貫設された配管器具、及び、浴槽側壁とバスエプロンとの間に配置された給湯給水管の接続部の直下を通るように配置することにより、ハーフパネルタイプの浴室ユニットであっても、少ない部品点数で多数の漏水危険箇所からの漏水を受け止めることができ、組立工数を抑えるとともに費用コストを抑えることができる浴室ユニット構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る浴室ユニット構造は、浴槽と洗い場パンとが設置面上に並設され、前記浴槽の洗い場パン側に張り出したフランジと前記洗い場パンの浴槽側に設けられた堤防部との間がバスエプロンで閉塞されている浴室ユニット構造において、該バスエプロンと浴槽側壁との間を前記設置面側から立ち上がる給湯給水管の接続部と、前記浴槽側壁に貫設された配管器具と、水受け面とこれを囲む立上がり片とからなるトレー状の水受けパンとを備え、該水受けパンは、前記水受け面が前記接続部及び配管器具の直下を通るように配置され、前記接続部及び配管器具から漏れた湯水を同時に受け止めることができるようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、トレー状の水受けパンを浴槽側壁に貫設された配管器具と、浴槽側壁とバスエプロンとの間に配置された給湯給水管の接続部との直下を通るように配置することにより、少数の水受けパンが少なくとも配管器具及び給湯給水管の接続部から漏れた湯水を同時に受け止める。その結果、水受け部材の部品点数を抑えることができるので、組立工数を抑えることができ、費用コストを抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る浴室ユニット構造は、前記バスエプロンは、洗い場パン側から浴槽側に貫通する閉塞自在な点検口を備え、前記水受けパンは、前記立上がり片の一部を切り欠いた部分から突出する突片を更に備え、前記水受けパンは、前記突片が前記点検口の下端縁に掛かるように前記バスエプロンと浴槽側壁との間に掛け渡されて、前記点検口付近で流れ落ちる湯水を受け止めることができるように構成してもよい。
【0015】
本発明にあっては、トレー状の水受けパンの立上がり片の一部を切り欠き、切り欠いた部分から突片を突き出させることにより、水受けパンを支えるための引っ掛け部を設ける。また、この突片をバスエプロンの点検口の下端縁に掛けることにより、水受けパンがバスエプロン側に支持固定される。また、水受けパンをバスエプロンと浴槽側壁との間に掛け渡すことにより、バスエプロンの点検口から浴側側壁に臨む点検口付近で流れ落ちた湯水を水受けパンが受け止める。
【0016】
また、本発明に係る浴室ユニット構造は、前記配管器具より下方の浴槽側壁を囲むように溝を形成する溝形成部を更に備え、前記水受けパンは、前記立上がり片の一部に形成された切欠部の端縁が前記溝形成部の上方に配置され、受け止めた湯水を前記切欠部に導くための排水勾配が前記水受け面に形成されているように構成してもよい。
【0017】
本発明にあっては、水受けパンの立上がり片の一部を切り欠くことにより、受け止めた湯水を排水するための部分を設ける。また、受け止めた湯水を切欠部分に導くための排水勾配を水受け面に設けることにより、湯水が切欠部に導かれる。また、配管器具の下方の浴槽側壁に溝を形成し、この溝の上方に水受けパンの切欠部の端縁を配置することにより、湯水が切欠部から溝に向かって滝のように流れ落ち、湯水が水受けパンから溢れ出ないようにする。
【0018】
また、本発明に係る浴室ユニット構造は、前記水受けパンは、前記水受け面の一部に形成された開口部を更に備え、該開口部は、前記給湯給水管が前記設置面側から上方に貫通し、その隙間が弾性力を有する立上がりブーツにより水密にされているように構成してもよい。
即ち、給湯給水管は、立ち上がり方が浴室ユニットの設置場所毎に異なるので、水受けパンに設けた開口部を貫通するように配置される場合がある。このとき、かかる給湯給水管が開口部をスムーズに貫通するように、開口部にゴム製の立上がりブーツを別部品として構成してもよい。
【0019】
本発明にあっては、水受けパンの一部を開口することにより、設置面から垂直方向に立ち上がる給湯給水管が開口部を貫通するように水受けパンを取り付けることができ、水受けパンを給湯給水管の接続部の直下を通るように配置させることができる。そして、給湯給水管と開口部との隙間を立上がりブーツで水密にする。
【0020】
また、本発明に係る浴室ユニット構造は、前記溝形成部は、最下流部分に排水路が設けてあり、該排水路は、前記洗い場パンの洗い場面又は該洗い場面の下面側に配設された排水トラップまで連通しているように構成してもよい。
【0021】
本発明にあっては、溝に勾配を設けておき、勾配の最下流部分に排水路を設けることにより、溝内を流れて最下流部分に到達した湯水が排水路を通って排水される。また、排水路を洗い場パンの洗い場面又は洗い場面の下面側に配設された排水トラップまで連続させることにより、溝から排水された湯水が洗い場面を介して排水トラップへと流れ込むか、又は、排水トラップに直接に流れ込む。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る浴室ユニット構造にあっては、少数の水受け部材により、浴槽側壁上の配管器具から漏れた湯水と、浴槽側壁から離れた位置に配置されている給湯給水管の接続部から漏れた湯水と、バスエプロンの点検口付近で漏れた湯水とを同時に受け止めることができる。部品点数を抑えることにより、組立工数を抑えることができ、費用コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る浴室ユニット構造が備える水受けパンを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る浴室ユニット構造と水受けパンとの取付状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る浴室ユニット構造と水受けパンとの取付状態を示す図であって、把握しやすいようにバスエプロンを除いた状態の斜視図である。
【図4】本発明に係る浴室ユニット構造と水受けパンとの取付状態を示す部分拡大斜視図である。
【図5】本発明に係る浴室ユニット構造と水受けパンとの取付状態を示す、図2と異なる方向から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る浴室ユニット構造が備える溝形成部の最下流付近を示す図である。
【図7】図1とは異なる形態の水受けパンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態1.
本発明に係る浴室ユニット構造を本実施の形態を示す図面に基づいて以下説明する。図面において、1は、水受けパンである。また、2は、立上げブーツである。水受けパン1は、第1水受け面10と、第2水受け面110と、その周囲を囲む立上がり片11と、第2水受け面110の一部を開口する開口部12と、立上がり片11の一部を切り欠いた切欠部13と、第1水受け面10から突き出た突片14とを備えるトレー状の部材である。
【0025】
第1水受け面10は、平面視略Lの字形をしており、Lの字の縦部分に切欠部13が形成されている。第2水受け面110は、第1水受け面10のLの字の横部分に接続して水受けパン1全体を平面視略コの字形にしている。第2水受け面110の一部には、開口部14が形成されている。第1水受け面10及び第2水受け面110は、開口部12及び突片14付近を上流とし、切欠部13付近を下流とする排水勾配が形成されている。排水勾配は、開口部12及び突片14付近で受け止めた湯水を切欠部13に流れるように傾斜の角度及び方向が決められている。具体的には、排水勾配は、図1に示す矢印A乃至Dのように傾斜が形成されている。尚、矢印Bの傾斜と矢印Cの傾斜とで谷を形成している。
【0026】
立上がり片11は、切欠部13と突片14との部分を除き、第1水受け面10及び第2水受け面110の周縁部及び開口部12の開口縁から垂直方向に立ち上がる。立上がり片11は、第1水受け面10及び第2水受け面110で受け止めた湯水がこぼれ落ちることを防ぐ。
【0027】
切欠部13は、第1水受け面10のLの字の縦部分から立ち上がる立上がり片11の一部が切り欠かれることにより形成されている。また、突片14は、第1水受け面10のLの字の横部分から立ち上がる立上がり片11の一部が切り欠かれ、その切欠部分から水平方向に突き出ている。
【0028】
立上がりブーツ2は、開口部12と同形であって僅かに大径の蓋部20と、蓋部20に開けられた配管貫通孔21と、蓋部20の周縁部から垂れ下がるリブ22とを備える。立上がりブーツ2は、リブ22の内周面が開口部12の立上がり片11の外周面にスライド接触して嵌り込み、蓋部20が開口部12を閉塞する。配管貫通孔21は、開口縁から蛇腹部分が伸び出ている。
【0029】
図面において、3は浴槽である。また、4は洗い場パンである。また、5はバスエプロンである。更にまた、6は給湯給水管である。本発明に係る浴室ユニットにあっては、浴槽3と洗い場パン4とが土台となる設置面(図示せず)に並ぶように設けられ、支持脚により設置面の上方に配置されている。バスエプロン5は、浴槽3と洗い場パン4との間に装着される。給湯給水管6は、バスエプロン5と浴槽3との間の空間に配置される。
【0030】
浴槽3は、フランジ30と、浴槽側壁31と、浴槽側面保護材32と、浴槽下部保温材33と、溝形成部34と、仕切り板340と、追い焚き用アダプタ35と、排水用アダプタ36とを備える。浴槽3は、本体がガラス繊維強化プラスチックで形成されている。また、浴槽3は、本体の浴槽底部(図示せず)が平面視略四角形の板状となり、この底部の四辺から浴槽側壁31が立ち上がり、上面が開口している。
【0031】
フランジ30は、浴槽側壁31の上端部から外方に張り出すように形成されている。また、フランジ30は、その下面にバスエプロン5の上端部を固定するための返しが形成されている。
【0032】
浴槽側面保護材32は、平面視略コの字形の発泡スチレン樹脂製の部材であり、洗い場床パン4側を除く三方の浴槽側壁31を囲むように取り付けられている。また、浴槽側面保護材32は、フランジ30と浴槽下部保温材33との間に嵌り込むように取り付けられ、浴槽3を保護している。
【0033】
浴槽下部保温材33は、本体が皿状に形成され、追い焚き用アダプタ35の取付位置より下方の浴槽側壁31から浴槽底部を囲繞するように取り付けられて浴槽3を保温する。また、浴槽下部保温材33は、厚手の発泡スチレン樹脂により形成されている。また、浴槽下部保温材33は、浴槽側面保護材32より厚みを有し、その厚み面が上端面となる。浴槽下部保温材33は、上端面に溝を形成する溝形成部34を備える。
【0034】
溝形成部34は、浴槽下部保温材33の上端面の全周に亘って設けられており、浴槽側壁31を囲むように溝を形成している。また、溝形成部34は、外周側溝壁が内周側溝壁より僅かに高くなって外周側に湯水が漏れ落ちないようにされている。また、溝形成部34は、一点を最上流部分とし、他点を最下流部分とする溝傾斜が設けられて、溝形成部34で受け止めた湯水が最下流部分に向かって流水するようにされている。また、溝形成部34は、一部に仕切り板340が取り付けられている。また、溝形成部34は、最下流部分が切り欠かれている。
【0035】
排水用アダプタ36は、図6に示すように、溝形成部34の切欠部分に嵌め込まれ、変性シリコーン樹脂系シーリング剤などを用いて止水状態に接着固定されている。また、排水用アダプタ36は、排水用ホース(図示せず)と接続するためのノズル360が外方に向かって突き出ている。排水用ホースは、ノズル360から、後述する洗い場パン4の排水口410又は洗い場排水口43の下部に設けられている排水トラップ(図示せず)まで引きまわされている。排水用アダプタ36及びこれに接続する排水用ホースは、排水路となり、溝形成部34を流れる湯水を外部に排水する。
【0036】
追い焚き用アダプタ35は、金属製の配管器具であり、洗い場パン4側の浴槽側壁31に取り付けられている。また、追い焚き用アダプタ35は、浴槽側壁31の外周面から内周面に貫通するように取り付けられている。また、追い焚き用アダプタ35は、浴槽側壁31の内周面側に取水口(図示せず)と吐水口(図示せず)とを備えている。また、追い焚き用アダプタ35は、浴槽側壁31の外周面側に取水用接続ノズル350と吐水用接続ノズル351とを備える。取水用接続ノズル350は、取水用ホース(図示せず)と接続し、取水口から取り込んだ浴槽3の湯水を循環式湯沸かし装置(図示せず)へ送水する。また、吐水用接続ノズル351は、吐水用ホース(図示せず)と接続し、循環式湯沸かし装置により温められた湯水を浴槽3内へと送水する。追い焚き用アダプタ35は、浴槽側壁31との取付箇所が変性シリコーン樹脂系シーリング材などを用いて水密状態に接着固定されている。
【0037】
洗い場パン4は、洗い場面40と、堤防部41と、立上がり壁42と、洗い場排水口43とを備える。洗い場パン4は、本体が平面視略四角形の板状の部材である。洗い場面40は、本体の上面に形成され、浴槽3側の辺から立ち上がる堤防部41と、その他の三方の辺から立ち上がる立上がり壁42とにより全周が囲まれている。堤防部41は、浴槽下部保温材33の上端面より高い位置まで立ち上がっている。また、堤防部41は、上端面に僅かな凹みが形成されている。また、堤防部41は、排水用ホースを引き出すための排水口410が厚み方向に貫通している。洗い場排水口43は、堤防部41の近傍に形成され、その下部に排水トラップが設置されている。排水トラップは、下水管に繋がっている。洗い場面40は、立上がり壁42から洗い場排水口43に向かって面傾斜が設けられている。面傾斜は、例えば、排水口410から排水されて洗い場面40に流れた湯水を洗い場排水口43に導水する。
【0038】
バスエプロン5は、点検口50と、上端取付片51と、下端取付片52と、下端リブ53とを備える。バスエプロン5は、洗い場パン4側から見て略四角形の板状の部材であり、浴槽3と同様に、ガラス繊維強化プラスチックで形成されている。点検口50は、バスエプロン5の下端寄りに大きく開口しており、洗い場パン4側から浴槽3側に貫通している。また、点検口50は、保守点検時には、作業者がバスエプロン5の裏側の空間にアクセスすることができるよう、エプロン蓋(図示せず)が外されている。点検口50は、保守点検以外の通常時には、エプロン蓋により水密に閉塞されている。エプロン蓋は、点検口50に嵌り込む形状をした板部材であり、その周縁部に水密材が取り付けられている。
【0039】
上端取付片51は、図4に示すように、バスエプロン5の上端部が洗い場パン4側に向かって屈曲することにより形成されている。また、上端取付片51は、浴槽3のフランジ30の下面部分に接触し、スライドしながら嵌り込み、フランジ30の返しにより洗い場パン4側に倒れないように固定されている。
【0040】
下端取付片52は、バスエプロン5の下端部が浴槽3側に向かって屈曲することにより形成されている。また、下端取付片52は、堤防部41の上端面の凹みに嵌り込む。また、下端取付片52は、上面に下端リブ53が複数突き出て、下端リブ53に仕切られた仕切空間を有している。下端リブ53は、水受けパン1の全幅とほぼ同じ間隔で突き出し、仕切空間は、水受けパン1がぴたりと嵌り込むような寸法となっている。
【0041】
給湯給水管6は、下管部60と、配管接続部61と、上管部62と、バスエプロン接続部63とを備える。下管部60は、外部から浴槽3と設置面との間の空間に引き込まれ、そこから浴槽3とバスエプロン5との間を通り、堤防部41の上端面より高い位置まで立ち上がっている。また、下管部60は、配管接続部61を介して上管部62と接続している。上管部62は、バスエプロン5側に屈曲し、バスエプロン5に設けられたバスエプロン接続部63に接続されている。また、上管部62は、バスエプロン接続部63から浴室の洗い場水栓(図示せず)まで引きまわされている。
【0042】
このように、浴室ユニット構造は、複数の構成要件を備える。そこで、浴室ユニット構造における、水受けパン1とその他の構成要件との取付状態について以下説明する。まず、水受けパン1が装着される前に、浴槽3と洗い場パン4とが並ぶように設置される。次に、バスエプロン5がフランジ30と堤防部41との間に装着される。
【0043】
次に、水受けパン1が図2、図4及び図5に示すように取り付けられる。水受けパン1は、バスエプロン5の点検口50からバスエプロン5と浴槽側壁31との間の空間に入れられ、給湯給水管6の下管部60の上端部が開口部12から突き出るように取り付けられる。そして、立上がりブーツ2が配管貫通孔21から下管部60が突き出るように開口部12に嵌め込まれ、蓋部20が開口部12を閉塞する。下管部60は、配管貫通孔21の蛇腹部分により水密に取り付けられる。また、下管部60は、上端部に配管接続部61が取り付けられ、配管接続部61を介して上管部62に接続される。
【0044】
また、水受けパン1は、図4に示すように、切欠部13の下面が溝形成部34の外周側溝壁の上端に載せられ、切欠部13の端縁130が溝形成部34の上方にくるように配置される。また、水受けパン1は、バスエプロン5の下端取付片52の仕切空間に嵌め込まれる。更にまた、水受けパン1は、突片14がバスエプロン5の点検口50の下端縁に掛かるように取り付けられる。最後に、エプロン蓋は、点検口50に嵌め込まれ、水密材
により水密に密閉されている。
【0045】
このように水受けパン1が取り付けられることにより、各構成要件は、以下のように作用する。追い焚き用アダプタ35から漏れた湯水は、溝形成部34及び水受けパン1の第1水受け面10により受け止められる。また、給湯給水管6の配管接続部61及びバスエプロン接続部63から漏れた湯水は、水受けパン1の第2水受け面110により受け止められる。また、点検口50とエプロン蓋との隙間から侵水して点検口50付近に流れ落ちる湯水、及び、点検作業により点検口50付近に流れ落ちる湯水は、水受けパン1の第1水受け面10により受け止められる。
【0046】
第1水受け面10及び第2水受け面110で受け止められた湯水は、排水勾配により切欠部13に導水され、切欠部13の端縁130から下方の溝形成部34に流れ落ちる。溝形成部34に流れ落ちた湯水は、仕切り板340により仕切られ、溝形成部34の最下流部分に向けて流水する。溝形成部34の最下流部分に到達した湯水は、排水用アダプタ36を介して排水用ホースを通り、洗い場パン4の排水口410に導かれ、排水口410から洗い場面40を介して洗い場排水口43へ導水される。また、排水用ホースが洗い場排水口43の下部に設けられた排水トラップに引きまわされている場合には、直接、排水トラップへ導水される。
【0047】
水受けパン1は、バスエプロン5の下端取付片52の仕切空間に嵌め込まれることにより、ネジが用いられることなく取り付けられる。また、水受けパン1は、突片14がバスエプロン5の点検口50の下端縁に掛かるように取り付けられることにより、点検口50付近の位置に正確に固定され、点検口50付近に流れ落ちた湯水を確実に受け止める。
【0048】
水受けパン1は、追い焚き用アダプタ35と給湯給水管6との配置位置が近いほど、大きさを抑えることができ、費用コストを下げることができる。
【0049】
実施の形態2.
上述した実施の形態にあっては、配管器具として追い焚き用アダプタ35を一例として説明した。しかし、本願発明は、これに限定されるものでなく、浴槽側壁31にジェット噴流用アダプタのみならずジェット噴流用アダプタが貫通するように取り付けられてもよい。
【0050】
実施の形態2において、追い焚き用アダプタ35から漏れた湯水は、溝形成部34及び水受けパン1の第1水受け面10により受け止められる。また、ジェット噴流用アダプタから漏れた湯水は、溝形成部34により受け止められる。また、給湯給水管6の配管接続部61及びバスエプロン接続部63から漏れた湯水は、水受けパン1の第2水受け面110により受け止められる。また、点検口50とエプロン蓋との隙間から浸水して点検口50付近に流れ落ちる湯水、及び、点検作業により点検口50付近に流れ落ちる湯水は、水受けパン1の第1水受け面10により受け止められる。
【0051】
なお、その他の構成及び作用については、上述の実施の形態1と同様であるから、対応する箇所に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
実施の形態3.
上述した実施の形態にあっては、水受けパン1の第1水受け面10と第2水受け面110とが一体となっている一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されることなく、例えば、第1水受け面10と、第2水受け面110とが独立し、分離して配置されてもよい。
【0053】
図7に示すように、水受けパン1は、第1水受けパン1aと第2水受けパン1bとからなる。第1水受けパン1aは、第1水受け面10と、その周囲を囲む立上がり片11と、立上がり片11の一部を切り欠いた切欠部13と、第1水受け面10から突き出た突片14とを備えるトレー状の部材である。
【0054】
第1水受け面10は、平面視略Lの字形をしており、Lの字の縦部分に切欠部13が形成されている。立上がり片11は、切欠部13と突片14との部分を除き、第1水受け面10の周縁部から垂直方向に立ち上がる。切欠部13は、立上がり片11の一部が切り欠かれることにより形成されている。また、突片14は、第1水受け面10のLの字の横部分から立ち上がる立上がり片11が切り欠かれ、その切欠部分から水平方向に突き出ている。第1水受け面10は、切欠部13付近を下流とし、それとは反対側の端を上流とする排水勾配が形成されている。排水勾配は、第1水受け面10で受け止めた湯水が切欠部13に流れるように傾斜の角度及び方向が決められている。具体的には、排水勾配は、図7に示す矢印B乃至Eのように傾斜が形成されている。
【0055】
また、第2水受けパン1bは、第2水受け面110と、その周囲を囲む立上がり片11と、立上がり片11の一部を切り欠いた落ち口15と、第2水受け面110の一部を開口する開口部12とを備える。
【0056】
第2水受け面110は、一部に開口部14が形成されている。立上がり片11は、第2水受け面110の周縁部及び開口部12の開口縁から垂直方向に立ち上がる。第2水受け面110は、落ち口15が下流となる排水勾配が形成されている。具体的には、排水勾配は、図7に示すAのように傾斜が形成されている。
【0057】
立上がりブーツ2は、開口部12と同形であって僅かに大径の蓋部20と、蓋部20に開けられた配管貫通孔21と、蓋部20の周縁部から垂れ下がるリブ22とを備える。立上がりブーツ2は、リブ22の内周面が開口部12の立上がり片11の外周面にスライド接触して嵌り込み、蓋部20が開口部12を閉塞する。配管貫通孔21は、開口縁から蛇腹部分が伸び出ている。
【0058】
第1水受けパン1a及び第2水受けパン1bは、バスエプロン5の点検口50からバスエプロン5と浴槽側壁31との間の空間に入れられる。第2水受けパン1bは、給湯給水管6の下管部60の上端部が開口部12から突き出るように取り付けられる。そして、立上がりブーツ2が配管貫通孔21から下管部60が突き出るように開口部12に嵌め込まれ、蓋部20が開口部12を閉塞する。下管部60は、上端部に配管接続部61が取り付けられ、配管接続部61を介して上管部61に接続される。一方、第1水受けパン1aは、切欠部13の下面が溝形成部34の外周側溝壁の上端に載せられ、切欠部13の端縁130が溝形成部34の上方にくるように配置される。また、第1水受けパン1は、バスエプロン5の下取付片52上の凹み空間に嵌め込まれる。更にまた、第1水受けパン1aは、突片14がバスエプロン5の点検口50の下端縁に掛かるように取り付けられている。このとき、第2水受けパン1bは、第1水受けパン1aより高い位置に配置され、且つ、落ち口15が第1水受けパン1aの第1水受け面10の上方にくるように配置される。また、第2水受けパン1bは、立上がりブーツ2の配管貫通孔21が下管部60の管周面を水密状態となるように押さえ付けている作用により、その配置位置に固定されている。
【0059】
第1水受けパン1aは、追い焚き用アダプタ35から漏れた湯水及び点検作業により点検口50付近に流れ落ちる湯水を受け止める。第2水受けパン1bは、給湯給水管6の配管接続部61及びバスエプロン接続部63から漏れた湯水を受け止める。
【0060】
第2水受けパン1bで受け止められた湯水は、第2水受け面110の排水勾配により落ち口15に導水され、落ち口15から下方の第1水受けパン1aに流れ落ちる。第1水受けパン1aで受け止められた湯水は、第1水受け面10の排水勾配により切欠部13に導水され、切欠部13の溝端130から下方の溝形成部34に流れ落ちる。溝形成部34に流れて落ちた湯水は、仕切り板340により仕切られ、溝形成部34の最下流部分に向けて流水する。溝形成部34の最下流部分に到達した湯水は、排水用アダプタ36を介して排水用ホースを通り、洗い場パン4の排水口410に導かれ、排水口410から洗い場面40を介して洗い場排水口43へと導水される。また、排水用ホースが洗い場排水口43の下部に設けられた排水トラップに引きまわされている場合には、直接、排水トラップへと導水される。
【0061】
その結果、第2水受け面110は、浴室ユニットの設置場所毎に異なる給湯給水管6の立ち上がり方に応じて、配管接続部61及びバスエプロン接続部63の直下を通るように最適な位置に配置され、確実に漏水を受け止めることができる。この場合、部品点数が増えるが、少なくとも組立工数を抑えることができる。
【0062】
なお、その他の構成については、上述の実施の形態1と同様であるから、対応する箇所に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0063】
以下に、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、全て実施例において、浴室ユニット構造は、ハーフパネルタイプの浴室ユニットであり、浴槽側壁31に追い焚き用アダプタ35とジェット噴流用アダプタとを備え、浴槽3から少し離れた位置に給湯給水管6が配置され、バスエプロン5に点検口50を備える。
【0064】
(実施例)
上述した実施の形態と同じ構成である。即ち、水受けパン1が、追い焚き用アダプタ35と給湯給水管6との直下を通るように配置されると同時に、点検口50の下端部に掛かるように取り付けられている。また、浴槽側壁31の回りに溝形成部34を備える。そして、追い焚き用アダプタ35、給湯給水管6の配管接続部61及びバスエプロン接続部63から漏れた湯水は、水受けパン1で受け止められ、切欠部13を介して溝形成部34へと流れる。また、点検口50付近に流れ落ちる湯水は、水受けパン1で受け止められ、切欠部13を介して溝形成部34へと流れる。また、ジェット噴流用アダプタから漏れた湯水は、溝形成部34で受け止められる。
【0065】
(比較例1)
上述する特許文献1に記載された浴室システム構造である。追い焚き用アダプタ35の直下のみに、漏れた湯水を受け止める水受け部材が設けられている。その他の漏水危険箇所には、水受け部材が設けられていない。
【0066】
(比較例2)
上述する特許文献2に記載された浴室システム構造である。浴槽側壁31の回りに溝形成部34を備える。溝形成部34は、追い焚き用アダプタ35とジェット噴流用アダプタから漏れた湯水を受け止める。その他の漏水危険箇所には、水受け部材が設けられていない。
【0067】
(比較例3)
上述する特許文献3に記載された浴室システム構造である。給湯給水管6の直下のみに、漏れた湯水を受け止める水受け部材が設けられている。その他の漏水危険箇所には、水受け部材が設けられていない。
【0068】
これらの浴室システム構造について、漏水危険箇所から漏れた湯水を受け止めるができるか否かについての止水性と、浴室システムを現場で容易に組み立てることができるか否かについての組立性と、浴室システムにかかる費用コストを抑えることができるか否かについてのコスト性とを比較する。以下、その結果を一覧にして示す。なお、一覧において、「給水給湯配管接続部」は、給湯給水管6の配管接続部61及びバスエプロン接続部63に対応する。また、「追焚きアダプター取付部」は、追い焚き用アダプタ35の取付箇所に対応する。また、「追焚きアダプター配管接続部」は、取水用接続ノズル350及び排水用接続ノズル351とに対応する。また、「噴流配管接続部」は、ジェット噴流用アダプタに対応する。また、「エプロン点検口部」は、バスエプロン5の点検口50に対応する。
また、丸記号は、極めて良好を意味し、三角記号は、良好を意味し、ばつ記号は、不良を意味する。
【0069】
【表1】

【符号の説明】
【0070】
1 水受けパン
10 第1水受け面
110 第2水受け面
11 立上がり片
12 開口部
13 切欠部
130 端縁
14 突片
2 立上がりブーツ
20 蓋部
21 配管貫通孔
22 リブ
3 浴槽
30 フランジ
31 浴槽側壁
33 浴槽下部保温材
34 溝形成部
35 追い焚き用アダプタ(配管器具)
36 排水用アダプタ
4 洗い場パン
40 洗い場面
41 堤防部
43 洗い場排水口
5 バスエプロン
50 点検口
51 上端取付片
52 下端取付片
53 下端リブ
6 給湯給水管
61 配管接続部
63 バスエプロン接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と洗い場パンとが設置面上に並設され、前記浴槽の洗い場パン側に張り出したフランジと前記洗い場パンの浴槽側に設けられた堤防部との間がバスエプロンで閉塞されている浴室ユニット構造において、
該バスエプロンと浴槽側壁との間を前記設置面側から立ち上がる給湯給水管の接続部と、
前記浴槽側壁に貫設された配管器具と、
水受け面とこれを囲む立上がり片とからなるトレー状の水受けパンと
を備え、
該水受けパンは、前記水受け面が前記接続部及び配管器具の直下を通るように配置され、前記接続部及び配管器具から漏れた湯水を同時に受け止めることができるようにしてあることを特徴とする浴室ユニット構造。
【請求項2】
前記バスエプロンは、洗い場パン側から浴槽側に貫通する閉塞自在な点検口を備え、
前記水受けパンは、前記立上がり片の一部を切り欠いた部分から突出する突片を更に備え、
前記水受けパンは、前記突片が前記点検口の下端縁に掛かるように前記バスエプロンと浴槽側壁との間に掛け渡されて、前記点検口付近で流れ落ちる湯水を受け止めることができることを特徴とする請求項1に記載の浴室ユニット構造。
【請求項3】
前記水受けパンは、
前記水受け面の一部に形成された開口部を更に備え、
該開口部は、前記給湯給水管が前記設置面側から上方に貫通し、その隙間が弾性力を有する立上がりブーツにより水密にされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴室ユニット構造。
【請求項4】
前記配管器具より下方の浴槽側壁を囲むように溝を形成する溝形成部を更に備え、
前記水受けパンは、前記立上がり片の一部に形成された切欠部の端縁が前記溝形成部の上方に配置され、受け止めた湯水を前記切欠部に導くための排水勾配が前記水受け面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の浴室ユニット構造。
【請求項5】
前記溝形成部は、最下流部分に排水路が設けてあり、
該排水路は、前記洗い場パンの洗い場面又は該洗い場面の下面側に配設された排水トラップまで連通していることを特徴とする請求項4に記載の浴室ユニット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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