説明

浴室排水装置

【課題】浴槽排水を受入室内で旋回させてヘアキャッチャー内を旋回流中に浸漬させるようにした浴室排水装置において、浴槽排水時にはヘアキャッチャーが水に深く漬り、非排水時にはヘアキャッチャーが封水面よりも上位置に位置するように構成する。
【解決手段】浴槽3から排水すべくボタン34aを押すと、栓体31が上昇して開栓すると共にヘアキャッチャー15が下降し、受入室11内に旋回流が形成される。そして、ヘアキャッチャー15が水中に深く漬かっているので、ゴミがヘアキャッチャー15内の底面中央部に効率よく集められる。浴槽3からの排水が終了した後は、ボタン34aをもう1回押す。そうすると、栓体31が下降して閉栓すると共に、ヘアキャッチャー15が上昇し、第6図の通り封水面Wよりも上位に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽排水及び洗い場排水を排水トラップに流入させて排出する浴室排水装置に係り、特に、排水トラップの受入室に浴槽排水を略接線方向に受け入れて旋回流を形成させるよう構成された浴室排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洗い場排水を受け入れる洗い場排水受入口が上部に設けられていると共に、浴槽排水を側周面から受け入れてトラップ内に旋回流を形成させるようにした排水トラップが特許第3886055号、特開2008−14135号に記載されている。このトラップの洗い場排水受入口には、上方が開放したカゴ(篭)状のヘアキャッチャーが着脱自在に装着されている。このヘアキャッチャーは、トラップ内の軸心部付近に垂下している。浴槽排水がトラップ内に流入し、トラップ内の水位が上昇して旋回流が形成されると、このヘアキャッチャーが旋回流に浸漬され、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミがヘアキャッチャーの中心に集められる。これにより、ゴミを摘んで捨てることができるようになる。また、ヘアキャッチャーの内外面が旋回流に浸漬されて浄化され、ヌメリ等が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3886055号
【特許文献2】特開2008−14135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーの上縁外周に周回状に溝が設けられており、この溝に対し受入口上縁内周の突起が係合することにより、ヘアキャッチャーが装着される。
【0005】
このヘアキャッチャーの装着高さは、該溝と突起との係合によって一義的に定まる。そのため、ヘアキャッチャーの装着高さを変更することはできない。
【0006】
この浴室排水装置にあっては、浴槽から排水を行うときには、ヘアキャッチャーを十分に旋回流中に水没させ、ヘアキャッチャー内の毛髪などのゴミを十分に旋回させることにより、ゴミがヘアキャッチャーの中央に集まり易くなる。このためには、ヘアキャッチャーはなるべく低位に設けられることが望ましい。
【0007】
一方、浴槽から排水を行っていないときには、ヘアキャッチャーは水面よりも上位に位置することが好ましく、これによりヘアキャッチャーにヌメリなどが付くことが防止される。そのためには、ヘアキャッチャーはなるべく高位に位置することが好ましい。
【0008】
本発明は、ヘアキャッチャーを上下動可能とすることにより、かかる相反する要望を満すことができる浴室排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明(請求項1)の浴室排水装置は、上部から洗い場排水が流入する排水トラップと、浴槽排水を該排水トラップに導入する浴槽排水流路とを有する浴室排水装置であって、該排水トラップは、洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、該浴槽排水流路が略接線方向に接続されており、該浴槽排水流路からの浴槽排水を略接線方向に受け入れて旋回させる受入室を備えており、該受入口を通って受入室内にヘアキャッチャーが差し込まれて装着されている浴室排水装置において、該ヘアキャッチャーの装着高さが変更可能となっていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の浴室排水装置は、請求項1において、前記ヘアキャッチャーの上下動を案内する案内部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の浴室排水装置は、請求項1又は2において、前記ヘアキャッチャーを押上げ及び引下げて上下動させるための上下動手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の浴室排水装置は、請求項3において、前記上下動手段は、レリースワイヤと、該レリースワイヤの一端側に設けられた操作部材と、他端側に設けられ、ヘアキャッチャーを上下させる被動部材とを有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の浴室排水装置は、請求項4において、前記操作部材の操作によって浴槽排水栓を上下動させる浴槽排水栓駆動装置が設けられており、浴槽排水栓の上昇及び下降とヘアキャッチャーの下降及び上昇とを連動させたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の浴室排水装置は、請求項3において、前記上下動手段は、受入室内の旋回水流の水勢を受けて下降力を生じさせる板状体を有し、該板状体の上下によってヘアキャッチャーを上下動させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の浴室排水装置は、請求項6において、前記板状体の鉛直断面形状が翼形であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8の浴室排水装置は、請求項3において、前記上下動手段は、受入室内の水面に位置するフロートを有し、水面位の変化に伴う該フロートの上昇又は下降によってヘアキャッチャーを引き下げ又は押し上げるように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9の浴室排水装置は、請求項8において、前記上下動手段は、水平支軸によって回動可能に支承されたレバーを備えており、該レバーの一端側に前記フロートが設けられ、該レバーの他端側によって前記ヘアキャッチャーを上下させるよう構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明(請求項1)の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーの装着高さが変更可能となっているので、浴槽から排水を行うときには、ヘアキャッチャーの装着位置を下げ、浴槽から排水を行っていないときには、ヘアキャッチャーの装着位置を上げることができる。
【0019】
これにより、浴槽排水時には、ヘアキャッチャーを旋回流中に深く漬けることができるので、ヘアキャッチャーに付着しているゴミが十分にこすり落とされると共に、このゴミがヘアキャッチャーの底面中央部に極めて効率よく集められる。また、浴槽から排水を行っていないときには、ヘアキャッチャーを受入室内の水面よりも上位に位置させることができるので、ヘアキャッチャーが乾燥し、ヌメリなどが防止される。
【0020】
請求項2の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーが案内部材に案内されてスムーズに上下動する。
【0021】
請求項3の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーを上下動手段により容易に上下動させることができる。
【0022】
請求項4の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーを上下させる被動部材を、レリースワイヤを介して操作部材により遠隔操作することができるので、排水トラップ内に手を入れたりする必要が無く、容易に且つ衛生的にヘアキャッチャーを上下動させることができる。
【0023】
請求項5の浴室排水装置にあっては、この操作部材を操作することにより、浴槽排水栓の上昇及び下降とヘアキャッチャーの下降及び上昇とが連動して行われるため、浴槽排水時にヘアキャッチャーを下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0024】
請求項6の浴室排水装置にあっては、浴槽排水時には、板状体が受入室内の旋回水流の水勢を受けて下降力を生じさせることによりヘアキャッチャーが下降するので、浴槽排水時にヘアキャッチャーを下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0025】
請求項7の浴室排水装置にあっては、この板状体は、鉛直断面形状が翼形のものである。この翼形の板状体は、受入室内に旋回流が生じたときに、下向きの揚力が生じるように設置される。
【0026】
請求項8の浴室排水装置にあっては、浴槽排水時に伴い受入室内の水面位が上昇してフロートが上昇することにより、ヘアキャッチャーが引き下げられるよう構成されているので、浴槽排水時にヘアキャッチャーを下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0027】
請求項9の浴室排水装置にあっては、水平支軸によって回動可能に支承されたレバーの一端側にフロートが設けられ、該レバーの他端側によってヘアキャッチャーを上下させるものであるため、構成が簡易である。
【0028】
上記請求項7〜9の浴室排水装置にあっては、ヘアキャッチャーを上下動させるための別途の動力源も不要である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図2】図1のヘアキャッチャー付近の模式的な拡大図である。
【図3】図1の浴室排水装置において浴槽から排水を行っている状態を示す模式的な縦断面図である。
【図4】図1の浴室排水装置の排水トラップの斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿う断面図斜視図である。
【図6】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図7】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図8】図7の浴室排水装置の排水トラップの浴槽排水時を示す模式的な縦断面図である。
【図9】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図10】図9の排水トラップのヘアキャッチャー付近の断面斜視図である。
【図11】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図12】実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な縦断面図である。
【図13】図12の浴室排水装置の排水トラップの浴槽排水時を示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
<第1の実施の形態(第1図〜第5図)>
第1図〜第3図は、浴室の床部に設置された、実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップの模式的な断面図であり、第1図は浴槽が空の状態を示し、第2図は第1図の一部の拡大図であり、第3図は浴槽から排水を行っている状態を示している。第4図はこの浴室排水装置の具体的な斜視図、第5図は第4図のV−V線断面図である。
【0032】
浴室1の洗い場パン2の浴槽3側に排水枡4が一体形成されている。この排水枡4に対し下側から排水トラップ10が連結されている。排水トラップ10は、軸心線方向を鉛直方向とした略円筒形の受入室11を有している。
【0033】
この受入室11の側面の流入口12と浴槽3の底面の排水口3aとが接続部5を介して接続されている。この流入口12は受入室11に対し接線方向に水を流入させるように設けられている。
【0034】
受入室11の上面部には、洗い場パン2側からの排水が排水枡4を通り流入する洗い場排水受入口13が設けられている。
【0035】
排水枡4は洗い場パン2と一体状に凹み状に形成されている。その上面には排水目皿(図示略)が覆設されている。
【0036】
排水枡4の底部の開口には円筒形のフランジ部材14がパッキン(図示略)を介して内嵌状に取り付けられ、このフランジ部材14にネジ込み方式により、排水トラップ10の上端が取り付けられている。フランジ部材14を通して、受入口13内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー15が差し込まれている。フランジ部材14の上端の外周側は鍔状となっており、この鍔状部が排水枡4の底面開口の縁部に上側から重なっている。
【0037】
第2図に明示の通り、フランジ部材14の下端の内周側に張出部14aが設けられている。この張出部14aに支承されるようにしてスラストロック20が設けられている。
【0038】
このヘアキャッチャー15は、上面が開いたカゴ(篭)状である。この実施の形態では、ヘアキャッチャー15は下方側へ向かって縮径する略逆円錐台形状を有する。ヘアキャッチャー15は、その上端の外周側に鍔部15aが設けられている。ヘアキャッチャー15は、その鍔部15aがフランジ部材14の内周面に沿って上下動するように配置されている。
【0039】
スラストロック20は、シリンダ部20aとロッド20bとを備えている。シリンダ部20a内には、スラストロック機構が設けられており、ロッド部20bが押し込まれるとロッド部20bは押し込まれた位置にロックされ、もう1回ロッド部20bが押されると、ロッド部20bがシリンダ部20a内のバネ(図示略)によって押されて上方へ突出するよう構成されている。このようなスラストロックは、特開平9−203095等に記載の通り周知のものであり、また各種のものが市販されている。
【0040】
このスラストロック20は、ロッド部20bが上方に突出するようにフランジ部材14の内周に沿って等間隔にて複数個設置されている。
【0041】
このロッド部20bの先端がヘアキャッチャー15の鍔部15aの下面側に当接し、ヘアキャッチャー15を支持している。従って、ヘアキャッチャー15を上方から押し込むと、ヘアキャッチャー15は第3図の下降位置をとり、もう1回押すとヘアキャッチャー15は第1,2図の上昇位置をとる。なお、ヘアキャッチャー15の上昇位置と下降位置とのレベル差は5〜50mm特に10〜30mm程度が好適である。
【0042】
第1,3図に明示の通り、受入室11の底面の中央に流出口16が設けられている。この流出口16の口径は、受入室11の内径よりも小さいものとなっている。受入室11の下側から側面にかけて流出室17が設けられている。
【0043】
この実施の形態では、流出室17は流入口12と反対側に設けられているが、これに限定されない。流出室17は、受入室11の外側面に沿って封水面Wよりも上方にまで立ち上がっている。この流出室17の上部に、排水流路としての排水管接続部18が連なっている。この排水管接続部18に排水管19が接続される。この排水管接続部18の底面のレベルが封水面Wとなっている。
【0044】
流出室17内と浴室内とを連通するように通気管24,25が設けられている。この通気管25はヘアキャッチャー15と一体に上下方向に設けられている。通気管25は、その下端が通気管24の上端に着脱自在に嵌合している。通気管24は、受入室11内から、その側周壁を貫いて流出室17内に延在している。この通気管24の下端部は、大径筒状となっており、その底面に複数の小孔24aが設けられている。流出室17内に水が流れると、通気管24,25を通って流水に気泡が混入する。
【0045】
なお、通気管24,25が嵌合することにより、受入室17内の旋回流がヘアキャッチャー15に作用しても、ヘアキャッチャー15は旋回しない。
【0046】
このように構成された排水トラップの作動について次に説明する。
【0047】
水を張った浴槽3から排水を行うときには、ヘアキャッチャー15を押し込んで第3図の下降状態としておいて排水口3aの排水栓を抜く。そうすると、浴槽3内の水が流入口12から排水トラップ10の受入室11内に流入し、この受入室11内に渦状の旋回流を形成する。受入室11内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー15あるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャー15に付着しているゴミがこすり落とされて、髪の毛等のゴミは渦の中心に集められ、ヘアキャッチャー15の底面中央部に良好に集められる。
【0048】
この実施の形態では、ヘアキャッチャー15が水に深く漬っているので、ヘアキャッチャー15に付着しているゴミが十分にこすり落とされると共に、ゴミがヘアキャッチャー15の底面中央部に極めて効率よく集められる。
【0049】
受入室11内で旋回している水の一部は、渦の中心付近から受入室11の底部中央の流出口16、流出室17及び排水管接続部18を経て排水管19へ流出する。
【0050】
流出室17内に水が流れると、通気管25,24及び小孔24aを介して流水に気泡が混入する。これにより、排水管19に生じる負圧が軽減される。この結果、排水トラップ10の流出室17の水が殆どすべて排水管19へ吸い出されて排水トラップが破封することが防止される。
【0051】
この実施の形態では、受入室11内の渦状の旋回流が小口径の流出口16を経て流出室17へ流出する。この流出口16付近では、旋回半径が受入室11内における旋回半径よりも小さいため、旋回流速が大きい。この結果、受入室11内の旋回流も、この流出口16付近の高旋回流速に付随して高速となる。そのため、浴槽3の水位が低く流入口12からの流入流速が小さい場合でも、受入室11内に強力な旋回流が形成され、ヘアキャッチャー15や排水枡4が十分に洗浄される。また、ゴミがヘアキャッチャー15の中心部に効率よく集められる。
【0052】
浴槽3からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ10内には封水面Wのレベルの封水が残る。また、通気管24内にも小孔24aから水が流入し、通気管24内にも封水面Wまで封水が存在する。
【0053】
これにより、排水管19側と洗い場及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管19の臭気が洗い場や浴槽3へ逆流することが防止される。
【0054】
このように浴槽3からの排水が終了した後は、ヘアキャッチャー15を下向きに押圧してから手を離し、スラストロック20のロッド20bを突出させてヘアキャッチャー15を上昇させる。これにより、第1,2図の通り、ヘアキャッチャー15の下端が封水面Wよりも上位となるので、ヘアキャッチャー15が乾燥し、ヌメリなどが防止される。なお、通気管25を摘んでヘアキャッチャー15を取り出し、ゴミを捨てることができる。
【0055】
<第2の実施の形態(第6図)>
第6図は別の実施の形態に係る浴室排水装置の排水トラップ10Aの縦断面図である。
【0056】
この実施の形態では、浴槽3の排水口3aにポップアップ式の排水栓装置30が設けられている。この排水栓装置30は、排水口に上方から接離する栓体31と、この栓体31を上下動させるためのレリースワイヤ32及びその操作部34とを有する。レリースワイヤ32の芯材32aは、案内筒32bから上方に突出し、栓体31の底面の小穴に嵌合している。案内筒32bは、排水口32aに固定されている。なお、このようなポップアップ式排水栓装置30は、前記の特開平9−203095号のほか、特開平6−180020号などに見られる通り周知であり、また広く市販されている。操作部34内にはスラストロック機構が組み込まれており、操作部34のボタン34aを押し込むと、ボタン34aは押込位置にロックされる。また、芯材32aの先端が上方に突出し、栓体31が押し上げられ、開栓する。ボタン34aをもう1回押すと、ボタン34aが上昇し、芯材32aが後退して栓体31が下降し、閉栓する。
【0057】
この実施の形態では、ヘアキャッチャー15の下方に、該ヘアキャッチャー15を昇降させるための昇降装置39が設置されている。操作部34からこの昇降装置39にレリースワイヤ38が接続されている。昇降装置39は、ヘアキャッチャー15を押し上げるためのロッド39aと、このロッド39aを上下に進退させるスラストロック機構とを備えている。昇降装置39は、ロッド39aを上向きにして受入室11内の中央に配置され、支柱36によって支持されている。ロッド39aの上端はヘアキャッチャー15の底面中央に当接している。
【0058】
この昇降装置39は、第6図に示すように、栓体31が閉栓状態にあるときには、ロッド39aが上方に突出した状態でロックされており、これにより、ヘアキャッチャー15は該ロッド39aに支持されて上昇位置をとっている。操作部34のボタン34aを1回押すと、このロッド39aのロックが解除されてロッド39aが下方に後退し、これに伴ってヘアキャッチャー15が自重により下降する。このとき、栓体31が開栓する。ボタン34aをもう1回押すと、ロッド39aが上方へ突出し、これによりヘアキャッチャー15が上昇位置まで押し上げられる。このとき、栓体31が閉栓する。
【0059】
なお、この実施の形態では、フランジ部材14とヘアキャッチャー15との間に第1図〜第5図のスラストロック20は設けられていない。ヘアキャッチャー15は、通気管25,24同士の摺動によってその上下動が案内される。
【0060】
第6図のその他の構成は第1図〜第5図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0061】
このように構成された排水トラップ10Aの動作を次に説明する。
【0062】
第6図は、浴槽3に水を張った状態であり、栓体31は閉栓し、ヘアキャッチャー15は上昇位置にある。このとき、ヘアキャッチャー15は排水トラップ10Aの封水面Wよりも上方に位置している。
【0063】
浴槽3から排水すべくボタン34aを押すと、栓体31が上昇して開栓すると共に、ヘアキャッチャー15が下降し、受入室11内に旋回流が形成される。そして、ヘアキャッチャー15が水中に深く漬かっているので、第1図〜第5図の場合と同様に、ゴミがヘアキャッチャー15内の底面中央部に効率よく集められる。
【0064】
浴槽3からの排水が終了した後は、ボタン34aをもう1回押す。そうすると、栓体31が下降して閉栓すると共に、ヘアキャッチャー15が上昇し、第6図の通り封水面Wよりも上位に位置する。
【0065】
この実施の形態では、操作部34によって排水栓体31の上昇・下降とヘアキャッチャー15の下降・上昇とを併せて行うようにしているので、浴槽3からの排水操作に連動してヘアキャッチャー15が下降し、浴槽排水時には必らずヘアキャッチャー15が下降位置をとるようになる。このため、浴槽排水時にヘアキャッチャー15を下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0066】
<第2の実施の形態の変形例(第7,8図)>
第7,8図は上記第2の実施の形態の変形例に係る浴室排水装置の排水トラップ10A’の縦断面図であり、第7図は浴槽が空の状態を示し、第8図は浴槽から排水を行っている状態を示している。
【0067】
第6図の実施の形態では、排水栓体31の上昇・下降と連動させて、スラストロック機構を有する昇降装置39によりヘアキャッチャー15を下降・上昇させているが、ヘアキャッチャー15の昇降機構はこれに限定されない。
【0068】
例えば、第7,8図の排水トラップ10A’のように、梃子機構60によりヘアキャッチャー15を昇降させるよう構成してもよい。
【0069】
この梃子機構60は、受入室11内に設けられた軸支部62によって支持され、上下方向回動自在に設置されたレバー61を備えている。該レバー61は、その長手方向の途中部が軸支部62によって支持されている。このレバー61の先端側は、受入室11の中心付近まで延在し、そこから上方に立ち上がって立上部61aとなっている。この立上部61aの上端がヘアキャッチャー15の底面中央に当接している。
【0070】
この実施の形態では、操作部34からこのレバー61の後端にレリースワイヤ38が接続されている。このレリースワイヤ38の芯材38aは、案内筒38bから上方に突出し、その先端がレバー61の後端に対しヒンジ(符号略)を介して該レバー61の延在方向に回動自在に接続されている。案内筒38bは、受入室11内において、このレバー61の後端の下方に筒軸心方向を略鉛直方向として固定設置されている。
【0071】
第7,8図のその他の構成は第6図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0072】
このように構成された排水トラップ10A’の操作方向は、第6図の排水トラップ10Aと同様である。
【0073】
即ち、第7図のように浴槽3内に水を張った状態から、この水を排出すべく操作部34のボタン34aを押し込むと、レリースワイヤ32の芯材32aの先端が上方に突出し、栓体31が押し上げられ、開栓する。また、レリースワイヤ38の芯材38aの先端も上方へ突出し、レバー61の後端を押し上げる。これにより、第8図の如くレバー61の先端側の立上部61aが下降し、これに伴ってヘアキャッチャー15が自重により下降する。このとき、ボタン34aが押込位置にロックされ、もう1度ボタン34aを押すまでこの状態が継続する。
【0074】
これにより、浴槽3からの水の排水が行われる。この水は受入室11に流入し、該受入室11内に旋回流が形成される。この旋回流にヘアキャッチャー15が深く漬かるので、ゴミがヘアキャッチャー15内の底面中央部に効率よく集められる。
【0075】
浴槽3からの排水が終了した後は、ボタン34aをもう1回押す。そうすると、ボタン34aが上昇し、レリースワイヤ32の芯材32aが後退して栓体31が下降し、閉栓する。また、レリースワイヤ38の芯材38aも後退し、レバー61の後端を引き下げる。これにより、第7図の如くレバー61の先端側が上昇し、ヘアキャッチャー15が立上部61aによって上昇位置まで押し上げられて封水面Wよりも上方に位置するようになる。
【0076】
この実施の形態にあっても、操作部34によって排水栓体31の上昇・下降とヘアキャッチャー15の下降・上昇とが併せて行われるため、浴槽3からの排水操作に連動してヘアキャッチャー15が下降し、浴槽排水時には必らずヘアキャッチャー15が下降位置をとるようになる。このため、浴槽排水時にヘアキャッチャー15を下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0077】
<第3の実施の形態(第9図、第10図)>
第9図はさらに別の実施の形態に係る排水トラップ10Bの模式的な縦断面図、第10図は、この排水トラップ10Bのヘアキャッチャー付近の断面斜視図である。
【0078】
この実施の形態では、ヘアキャッチャー15の下面側の中央部から下方に支持棒40が突設されている。この支持棒40の下端側は、受入室11内の下部ないし中間部において受入室11の外周に向って略水平方向に延出している。この支持棒40の延出方向先端側に翼体41が取り付けられている。この翼体41は、飛行機の主翼を上下反転させた断面形状であり、且つ飛行機の前後方向が受入室11内の水の旋回方向となるように支持棒40に取り付けられている。従って、受入室11内に旋回流が生じると、翼体41に下向きの揚力が生じ、ヘアキャッチャー15が引き下げられる。
【0079】
支持棒40及び翼体41は、比重が1よりも小さい浮力材を有しており、受入室11内に旋回流が生じていないときには、その浮力とヘアキャッチャー15の重量とがバランスした高さにヘアキャッチャー15が位置している。このとき、ヘアキャッチャー15の下端は封水面Wよりも上位となるように浮力材の比重が選定されている。なお、浮力材としては発泡合成樹脂、発泡アルミなどが例示される。
【0080】
なお、この実施の形態では、第1図〜第5図のスラストロック20は設けられていない。ヘアキャッチャー15は、通気管25,24同士の摺動によってその上下動が案内される。
【0081】
第9,10図のその他の構成は第1図〜第5図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0082】
このように構成された排水トラップ10Bの動作を次に説明する。
【0083】
第9図は、浴槽3が空になった状態であり、ヘアキャッチャー15は排水トラップ10Bの封水面Wよりも上方に位置している。
【0084】
水を張った浴槽3から排水すべく排水栓を抜くと、浴槽排水が受入室11内に流入し、受入室11内に旋回流が形成される。そして、翼体41に下向きの揚力が生じ、ヘアキャッチャー15が下方に移動する。なお、翼体41が受入室11の底面に着底した位置がヘアキャッチャー15の下降限である。このようにヘアキャッチャー15が水中に深く漬かることにより、第1図〜第5図の場合と同様に、ゴミがヘアキャッチャー15内の底面中央部に効率よく集められる。
【0085】
浴槽3からの排水が終了した後は、受入室11内の旋回流が停止し、翼体41に下向き揚力が生じなくなるので、翼体41及び支持棒40の浮力によってヘアキャッチャー15が第9,10図の通り封水面Wよりも上位にまで上昇する。
【0086】
この実施の形態では、浴槽3からの排水の旋回流によって翼体41に下向きの揚力を生じさせてヘアキャッチャー15を下降させるので、浴槽排水時には必らずヘアキャッチャー15が下降位置をとるようになる。このため、浴槽排水時にヘアキャッチャー15を下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0087】
<第4の実施の形態(第11図)>
第11図はさらに別の実施の形態に係る排水トラップ10Cの模式的な縦断面図である。なお、第11図では、レバー51は、説明の便宜上、通気管24を貫いているように図示されているが、実際には通気管24とずれるように位置している。
【0088】
この実施の形態では、受入室11と流出室17とを隔てる受入室周壁に軸支部52が設けられ、レバー51がこの軸支部51によって支持され、上下方向回動自在に設置されている。レバー51の後端は、流出室17の水面付近にまで延在し、このレバー後端にフロート50が取り付けられている。このフロート50は、流出室17の水面に浮んでいる。
【0089】
レバー51の先端側は、受入室11の中心付近まで延在し、そこから上方に立ち上がって立上部51aとなっている。この立上部51aの上端がヘアキャッチャー15の底面中央に当接している。
【0090】
なお、この実施の形態では、第1図〜第5図のスラストロック20は設けられていない。ヘアキャッチャー15は、通気管25,24同士の摺動によってその上下動が案内される。
【0091】
第11図のその他の構成は第1図〜第5図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0092】
このように構成された排水トラップ10Cの動作を次に説明する。
【0093】
第11図は、浴槽3が空になった状態であり、フロート50は封水面Wに浮んでいる。このとき、ヘアキャッチャー15は排水トラップ10Cの封水面Wよりも上方に位置している。
【0094】
水を張った浴槽3から排水すべく排水栓を抜くと、流出室17内の水位が上昇し、フロート50が上昇し、レバー51の立上部51aが下降する。これにより、ヘアキャッチャー15はその自重によって下降し、受入室11内に深く漬るようになる。このようにヘアキャッチャー15が水中に深く漬かることにより、第1図〜第5図の場合と同様に、ゴミがヘアキャッチャー15内の底面中央部に効率よく集められる。
【0095】
浴槽3からの排水が終了した後は、流出室17内の水位が封水面Wにまで低下するので、レバー51の立上部51aが上昇し、ヘアキャッチャー15が第11図の通り封水面Wよりも上位にまで上昇する。
【0096】
この実施の形態では、浴槽3からの排水開始に伴って上昇する流出室17の水位によってフロート50を上昇させ、ヘアキャッチャー15を下降させるので、浴槽排水時には必らずヘアキャッチャー15が下降位置をとるようになる。このため、浴槽排水時にヘアキャッチャー15を下降させるための別途の操作が不要であり、便利である。
【0097】
<第4の実施の形態の変形例(第12,13図)>
第12,13図は上記第4の実施の形態の変形例に係る浴室排水装置の排水トラップ10C’の縦断面図であり、第12図は浴槽が空の状態を示し、第13図は浴槽から排水を行っている状態を示している。
【0098】
第11図の実施の形態では、流出室17内にフロート50が配置されているが、フロート50の配置はこれに限定されない。
【0099】
例えば、第12,13図の排水トラップ10C’のように、フロート50は受入室11内に配置されてもよい。この排水トラップ10C’においては、該受入室11内にレバー51の軸支部52が設けられており、レバー51は、全体が受入室11内に配置され、その長手方向の途中部が該軸支部52によって上下方向回動自在に支持されている。このレバー51の先端側は受入室11の中心付近まで延在しており、そこから立ち上がる立上部51aがヘアキャッチャー15の底面中央部に当接している。受入室11内において、このレバー51の後端にフロート50が接続されている。
【0100】
第12,13図のその他の構成は第11図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0101】
このように構成された排水トラップ10C’の動作は、第13図のように、浴槽3からの排水開始に伴って上昇する受入室11内の水位によってフロート50が上昇すること以外は、第11図の排水トラップ10Cと同様である。
【0102】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様をもとりうる。
【符号の説明】
【0103】
3 浴槽
4 排水枡
10,10A,10A’,10B,10C,10C’ 排水トラップ
11 受入室
12 流入口
16 流出口
17 流出室
18 排水管接続部
19 排水管
20 スラストロック
24,25 通気管
30 排水栓装置
32,38 レリースワイヤ
34 操作部
39 昇降装置
40 支持棒
41 翼体
50 フロート
51 レバー
51a 立上部
52 軸支部
60 梃子機構
61 レバー
62 軸支部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から洗い場排水が流入する排水トラップと、
浴槽排水を該排水トラップに導入する浴槽排水流路と
を有する浴室排水装置であって、
該排水トラップは、洗い場排水の受入口を上部に有すると共に、該浴槽排水流路が略接線方向に接続されており、該浴槽排水流路からの浴槽排水を略接線方向に受け入れて旋回させる受入室を備えており、
該受入口を通って受入室内にヘアキャッチャーが差し込まれて装着されている浴室排水装置において、
該ヘアキャッチャーの装着高さが変更可能となっていることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ヘアキャッチャーの上下動を案内する案内部材が設けられていることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ヘアキャッチャーを押上げ及び引下げて上下動させるための上下動手段が設けられていることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項4】
請求項3において、前記上下動手段は、レリースワイヤと、該レリースワイヤの一端側に設けられた操作部材と、他端側に設けられ、ヘアキャッチャーを上下させる被動部材とを有することを特徴とする浴室排水装置。
【請求項5】
請求項4において、前記操作部材の操作によって浴槽排水栓を上下動させる浴槽排水栓駆動装置が設けられており、浴槽排水栓の上昇及び下降とヘアキャッチャーの下降及び上昇とを連動させたことを特徴とする浴室排水装置。
【請求項6】
請求項3において、前記上下動手段は、受入室内の旋回水流の水勢を受けて下降力を生じさせる板状体を有し、該板状体の上下によってヘアキャッチャーを上下動させるよう構成されていることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項7】
請求項6において、前記板状体の鉛直断面形状が翼形であることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項8】
請求項3において、前記上下動手段は、受入室内の水面に位置するフロートを有し、水面位の変化に伴う該フロートの上昇又は下降によってヘアキャッチャーを引き下げ又は押し上げるように構成されていることを特徴とする浴室排水装置。
【請求項9】
請求項8において、前記上下動手段は、水平支軸によって回動可能に支承されたレバーを備えており、該レバーの一端側に前記フロートが設けられ、該レバーの他端側によって前記ヘアキャッチャーを上下させるよう構成されていることを特徴とする浴室排水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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