説明

浴室殺菌ユニット及び浴室の殺菌方法

【課題】本発明は、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室であって、排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることが可能で、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することができる。
【解決手段】殺菌水を生成する殺菌水生成装置と、前記殺菌水生成装置により生成された殺菌水を洗い場床に吐水する殺菌水吐水部と、前記殺菌水吐水部からの吐水または止水を切り換える切り換え手段と、前記殺菌水生成装置と、前記切り換え手段とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、浴槽内から排水トラップに浴槽水が排水されている状態と、殺菌水吐水部から殺菌水を吐水している状態とが同時に起こることを禁止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場に殺菌水を吐水して、細菌の発生を抑制する浴室殺菌ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌性物質又はイオンを含有する殺菌水を散布して、浴室の細菌の発生を抑制する浴室防汚装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
斯かる浴室防汚装置においては、殺菌水を霧状、粒状、流水状等の形態で、浴室壁や洗い場床に散布することにより、細菌に起因する浴室壁や洗い場床の表面に生じる汚れを防止することができることが開示されている。
【特許文献1】特開平9−220273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
洗い場床や浴室壁に散布された水は、洗い場床上を排水勾配に沿って流れ、洗い場床に形成された排水ピットに集水される。排水ピットの底部には、排水トラップが取設されており、排水トラップ内の封水部からオーバーフローした水は、排水管に排出される。この排水トラップ内には、洗い場側からの水の他に、浴槽内の浴槽水も浴槽排水栓を開くことによって流入するように構成されている。特許文献1のように、洗い場に殺菌水を散布することで排水内の封水部に殺菌水が溜まるため、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することができる。
【0004】
しかし、排水トラップ内には浴槽内からの浴槽水も流入するため、洗い場床に殺菌水を散布した後に、皮脂汚れなどを含む浴槽水を排水してしまうと、排水トラップ内に溜まった殺菌水がすぐに排出されてしまうため、排水トラップ内に細菌が繁殖してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室であって、排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることが可能で、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することが可能な浴室殺菌ユニットを提供する。
【0006】
また、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室であって、排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることが可能で、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することが可能な殺菌方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室に設けられた浴室殺菌ユニットであって、殺菌水を生成する殺菌水生成装置と、前記殺菌水生成装置により生成された殺菌水を洗い場床に吐水する殺菌水吐水部と、前記殺菌水吐水部からの吐水または止水を切り換える切り換え手段と、前記殺菌水生成装置と、前記切り換え手段とを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、浴槽内から排水トラップに浴槽水が排水されている状態と、殺菌水吐水部から殺菌水を吐水している状態とが同時に起こることを禁止することを特徴とする浴室殺菌ユニットを提供する。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室の殺菌方法であって、殺菌水を吐水する殺菌水吐水部から殺菌水を吐水する前に、浴槽排水栓を開いて浴槽内の水を排水するようにしたことを特徴とする浴室の殺菌方法を提供する。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室の殺菌方法であって、殺菌水を吐水する殺菌水を排水トラップ内に流入させた後、しばらくの間は浴槽側の排水を行わないようにしたことを特徴とする浴室の殺菌方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る浴室殺菌ユニットによれば、浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室であって、排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることが可能で、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することができる。
【0011】
また、本発明に係る浴室の殺菌方法によれば、排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることが可能で、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る浴室殺菌ユニットの一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る浴室殺菌システムの全体的な概要を示すものである。
この浴室殺菌システムは、浴槽2と、浴槽2の長辺側に隣接する洗い場床3と、浴槽2側から洗い場床3を隔てて浴槽2に対向する第1の壁面4へ横設された浴室カウンタ5と、浴室殺菌装置1とから構成される。洗い場床3は、排水ピット7内に向かって排水用の下り勾配が取られている。ここで、浴室カウンタ5は、第2の壁面42に取り付けられており、浴槽2のリム2aより低い位置に配置されている。
【0013】
また、この浴室には、洗い場床3の浴槽2側端辺から、浴槽2の洗い場床3側端辺までを掩蔽するバスエプロン6と、洗い場床3の浴槽2側端辺に、洗い場床3より一段低く形成され、排水トラップ(図示せず)が取設される排水ピット7が設けられ、排水ピット7上面には、洗い場床上の水が排水ピット7内に流入可能な程度の隙間を空けて排水蓋8が載置される。
【0014】
浴槽2のリム面には排水栓(浴槽排水栓)50の開閉を操作する排水栓操作部40が設けられ、排水栓操作伝達部49とともに、排水栓50の開閉を制御する。さらに、排水栓50の開閉状態を検知する排水栓開閉検知手段(図13に記載)が、排水栓操作部40に設けられ、排水栓の開閉に対応する電気信号が、制御ボックス10に伝達される。
【0015】
浴室殺菌装置1は、制御ボックス10と、機能ユニット11と、殺菌水吐水部に該当する散布ノズル12と、リモコン13とを備える。
【0016】
制御ボックス10は、浴室の天井裏に設置され、リモコン13からの指示により、機能ユニット11内の後述する電磁弁(切替え手段)及び電解槽を制御する。機能ユニット11は、殺菌水を生成するユニットであり、浴室カウンタ内に内蔵され、その先端には殺菌水を散布する散布ノズル12が接続される。
【0017】
リモコン13は、浴室前の更衣室等の壁面に設置され、スイッチ13aとLED13bとを備える。スイッチ13aをONにすると、浴室殺菌装置1が作動を開始するとともに、LED13bが点灯し、浴室殺菌装置1が作動中であることを表示する。
浴室カウンタ5内部には、図2に示すように、洗い場水栓(図示せず)に給水/給湯する給水管15及び給湯管16が配管される。このうち給水管15は、分岐されて、機能ユニット11に水を供給する水道水導入管15が接続される。
この水道水導入管15の途中には止水栓18が設けられ、この止水栓18を閉めることにより、機能ユニット11を取り外す際にも、浴室の通常の使用に支障を来さないようになっている。
【0018】
水道水導入管17により導入された水は、機能ユニット11内において殺菌水に変成され、殺菌水導出管19を経由して散布ノズル12へと送られる。
機能ユニット11は、図3(a)に示すように、ケース20内に、水道水導入管17に接続する流入口21を介して順に、電磁弁22、定流量弁23、大気開放弁24、逆止弁25、及び電解槽26が連通され、電解槽26は、流出口27を介して殺菌水導出管に接続される。ここで、流入口および流出口は浴室カウンターの前端部側に配置されるように取設されており、流入口と流出口の軸はそれぞれ対角位置に配置されている。電解槽を介して流入口と流出口を連通するための管路部は、流入口から浴室カウンターの後端部側に直進する往路部と、流出口から浴室カウンターの後端部側に直進する復路部と、往路部および復路部の浴室カウンター後端部側の端部を連通するためにU字状に屈曲すると共に、復路部が往路部に比べて高い位置に配置されるように取り付けられる屈曲部と、を有している。
【0019】
機能ユニット11は、ケース20内にウレタン樹脂28が充填されて、防水構造とされている。これにより、電気部品の端子部の防水と、通水部からの漏水が防止される。
また、図3(b)に示すように、機能ユニット11の大きさを最小とすべく、流入ロ21と流出口27の軸が、ケース20の対角に位置するように配設される。
リモコン13のスイッチ13aが押されると、制御ボックス10からの指示により電磁弁22が開閉する。そして、電磁弁22が開くことにより通水され、定流量弁23により流量が一定に保たれる。これにより、生成される殺菌水の濃度が一定に保たれると同時に、散布ノズル12から散布される殺菌水の水圧も一定に保たれ、所望の範囲に殺菌水を散布することが可能となる。
【0020】
通水状態になると、電解槽26の電極29に通電が開始され、電極29の電気分解が行われて銀イオンが発生する。銀イオンを含有する水は殺菌水として散布ノズル12へ送られる。こうして生成された殺菌水は、逆止弁25により給水管15へと逆流することが防止される。
【0021】
大気開放弁24は、通電時(電磁弁開)においては閉止状態になって、水が外部に漏出することが防止され、待機時(電磁弁閉)には開放状態になって、逆止弁25より下流側は空気と置換される。これにより、電解槽26内に残存水が残ることが防止される。
電解槽26の電極29は、銀、銀合金または銀メッキ金属により形成され、電極29の電気分解が行われると銀イオンが発生する。この電極29は、図4(a)に示すように、電極29同士が水平になるような位置関係で設置されている。これにより、図4(b)に示すように、待機時に残存水の表面張力による電極の導通状態が回避される。このようにすることで、電解槽をコンパクト(厚みを薄く)にしても、待機時に残存水の表面張力によって電極が導通状態になることを回避できる。
【0022】
散布ノズル12は、図5に示すように、大別して、殺菌水導出管19に接続されるボディ30と、その先端に軸支される回転体31とから構成される。回転体31はまた、上側部材32と下側部材33とに分割され、ワッシャ34を介して、固定ビス35により、ボディ31の先端に回転自在に取設される(図7参照。)。回転体31はこのように取り外し可能かつ分解可能に形成されているので、その内部及びボディ30の先端を清掃することができる。
回転体31(の下側部材33)には、図6(a)に示すように、4対8個の液体噴出孔33a,33b,33c,33dが設けられる。これらの液体噴出孔33a,33b,33c,33dは、回転体31の回転中心から同一方向へ同一距離偏心して設けられるので、通水状態になると、水流により回転し、洗い場床3ヘ殺菌水を万遍なく散布することができる。
【0023】
これらのうち、液体噴出孔33aは、図6(b)に示すように、水平に開口するものの、液体噴出孔33bは、図6(c)に示すように、仰角4°に開口する。また、液体噴出孔33cは、図6(d)に示すように、仰角8°に、液体噴出孔33dは、図6(d)に示すように、仰角12°にそれぞれ開口する。
これにより、洗い場床3の散布ノズル近傍から遠方まで、万遍なく散布することができる。なお、各液体噴出孔の仰角は、散布する洗い場床の広さに応じて適宜決定される。
【0024】
ところで、ボディ30の先端は、図7に示すように、直径D1に形成された軸先端30aのさらに先に直径D2の最先端30bが段落ちして形成される。これに対応して、上側部材32には、軸先端30aが挿通可能な直径D1’の挿通孔32aが形成され、下側部材33には、最先端30bが挿通可能なものの軸先端30aは挿通不能な直径D2’’の挿通孔33eが形成される。
【0025】
これにより、回転体31を分解した後、誤って上側部材32と下側部材33とを上下逆に取り付けることが防止されるので、液体噴出孔33b,33c,33dは仰角を確保でき、常に上方を指向して開口する。
【0026】
本実施の形態に係る浴室殺菌システムは上記のように構成されており、以下その殺菌水散布状態について説明する。図8は、殺菌水の散布状態を示す平面図であり、図9は同立面図である。
【0027】
図8に示すGのエリアは、主に仰角0°の液体噴出孔33aからの殺菌水が散布されるエリアであり、同Hのエリアは、主に仰角4°の液体噴出孔33bからの殺菌水が散布されるエリア、同じく、I及びJのエリアは、それぞれ主に仰角8°及び12°の液体噴出孔33c及び33dからの殺菌水が散布されるエリアである。このように、液体噴出口33a,33b,33c,33dの仰角を異ならせることにより広範囲に亘って殺菌水を散布することが可能となる。
【0028】
これに対し、図8に示すFのエリアには、殺菌水は直接散布されない。このエリアには、図9に示すように、散布ノズル12より奥側で浴室カウンタが取設される第1の壁面、第1の壁面近傍側の第2の壁面4、または第1の壁面近傍側のバスエプロン6に当たり跳ね返った水、及び跳ね返った後そこから洗い場床3の勾配に沿って流れ下る殺菌水により洗浄される。このように、散布ノズル12が回転して吐水する形態であるため、散布ノズルから離れたエリアG,H,I,Jエリア用の液体噴出孔を設けておけば、必然的に散布ノズル12近傍の洗い場床上は、大量の殺菌水が流れることになる。これにより、洗い場床上全面に殺菌水を行き渡らせることが可能となる。特に、水道圧力のみで、散布ノズル12遠方側まで殺菌水を散布するためには、液体噴出孔の総孔面積に限界があるが、本実施形態では、散布ノズルから離れたエリアG,H,I,Jエリア用の液体噴出孔のみで足りるため、水道水圧のみで洗い場床の全面に殺菌水を行き渡らせることができる。
【0029】
この点、散布ノズル12は、浴槽2と洗い場床3を隔てて対向する壁面4近傍、すなわち、排水ピット7と対角位置となるに水上に取設されるので、散布ノズル近傍においても殺菌水が廻らないエリアはない。
【0030】
また、散布ノズル12は、浴室カウンタ5下部に取設されるので、浴室カウンタ5下部が陰になって、殺菌水が廻らないということもない。
他方、液体噴出口33dの仰角は一定以下に抑えられるので、無闇に広いエリアに散布することはなく、経済的であるばかりでなく、図9に示すように、殺菌水は最高位置でも浴槽2のリム2aの高さを超えないので、風呂蓋に殺菌水がかかることもない。
【0031】
さらに、殺菌水は、バスエプロン6に向かっても散布されるので、図10に示すように、排水ピット7上の排水蓋8とバスエプロン6との間にできる隙間には、バスエプロン6に当たって流れ落ちる殺菌水によって洗浄される。このように、洗い場床3を流れ落ちる殺菌水だけでは網羅できないエリア(排水ピットにおけるバスエプロン6側の端辺であって、特にその中央付近は洗い場床上を流れた殺菌水が流れにくい。)も洗浄することができる。
【0032】
図11、図12に排水部60の構造を示した。浴槽2側と洗い場3側との排水が合流する、いわゆるワントラップ構造の排水トラップである。本排水トラップ構造は、上部に洗い場排水流入口を有する碗状のトラップ本体と、トラップ本体内に挿入された状態で取り付けられる封水筒と、排水管を接続するためのトラップ本体側面に形成された排水口と、浴槽底面に形成された浴槽排水口に連通する浴槽排水管を接続するためのトラップ本体側面に形成された浴槽水流入口とを備えている。このようなワントラップ構造の合流型排水トラップは、浴室内に1つの排水トラップのみが設置されるため、本発明により確実な殺菌を行うことができる。特に、浴槽水の排水中または排水完了前に、洗い場に殺菌水を吐水する運転を禁止することで、排水トラップ内に殺菌水が長時間、滞留することが可能となり、浴槽排水によって、排水トラップ内の殺菌水が置換されることがない。
【0033】
図13に排水栓に関わる機構を示した。浴槽2の底面に形成された浴槽排水口を開閉するための排水栓50、リム面に排水栓操作部40が設けられ、両者を排水栓操作伝達部49が介する構成となる。排水栓操作部40は、人が排水栓50を開閉する際、指で下方にプッシュする押しボタン40aが外面にあり、押しボタン40aの動きに連動する押しボタン連結捧40bが、排水栓伝達部49に、押しボタン40aの動きを伝える。
【0034】
排水栓伝達部49は、一番外に内径10〜20mm、肉厚1.5mm程度の樹脂製ガイドホース49aがあり、中に外径3mm程度のレリースチューブ49bを通す。レリースチューブ49bも中空構造をもち、中を太さ1mm程度のレリース49cが通る。レリース49cが、押しボタンの動きにあわせて、レリースチューブ49b内を行ったり来たりして、排水栓50をメカニカルに押し上げる。レリースチューブ49bは、摩擦抵抗が少ない材質でレリースを周動させ、耐久性、加工性が良い材質が好ましい。レリース49cは、線径0.3mm程度のステンレス細線を、短いピッチで螺旋状にまいた構造であり、柔らかいため曲げられ、排水栓に押す力をダイレクトに伝達できる。
【0035】
排水栓50は、レリース49cによって押し上げられる排水栓支持捧51に取り付けられる。排水栓支持捧51は、メカニカル機構部52を介して、レリース49cと連動する。
メカニカル機構部52は、支持部53と連結して一体化しており、それを排水口部において、浴槽内面から下に嵌め込む構造となっている。支持部下端には嵌め込み突起部53aが出ており、嵌め込んだ後に、容易に外れない。
【0036】
図13は、開閉検知手段である排水栓開閉検知手段55が、排水栓操作部40に設けられた例を表す。本例は、排水栓が開の時、押しボタン40aは下に下がり、排水栓が閉の時、押しボタン40aは上に上がることを利用する。押しボタン部に磁性部材46と、押しボタンの作動下端面に位置検出手段47とを設け、排水栓50が開となり磁性部材46が位置検出手段47に近づくと、位置検出信号が、制御ボックス10に伝わる。
【0037】
図14は、浴槽水のあり、なしを給湯機を用いて検知する浴槽排水検知手段の別例を表す。図は排水栓が開かれ、浴槽水が排水している状態を表すが、浴槽水の水位が下がるにつれ、浴槽アダプター58、給湯機配管59内にかかる水圧が下がるため、給湯機57内部の水路管に設けられた圧力センサにより、浴槽水が減っていくことを検知できる。圧力センサの△P(圧力)/t(時間)から浴槽水の減少を検知、もしくは△P(圧力)/t(時間)の変化がなくなった所で、浴槽水が排出され終わったことを検知して、殺菌水吐水の制御フローに反映させる。
【0038】
以上の方法以外で、浴槽水の排水有無を検知することも本発明に含まれる。例えば、浴槽水の排水路(浴槽排水口と、トラップ本体の浴槽水流入口の間)に、流量センサを設け、排水の有無を直接検知しても良い。また、浴槽水検知用の電極を設け、電極の水への接触有無で、浴槽水排水を検知しても良い。
【0039】
図15は、排水栓の開閉を自動で行う自動排水栓を示した。浴槽2の底面に排水栓50、リム面に排水栓操作部40が設けられ、両者を排水栓操作伝達部49が介する構成は、手動で行う排水栓の開閉を行う図13と同様である。本例では、浴槽リム面2aの下に、排水栓自動操作部41を取設している。排水栓自動操作部41は、電動機48、出力軸43、被係合部材44、連結軸45からなり、電動機48の作動により、連結軸45を下に押し下げ、排水栓操作伝達部49のレリースに駆動を伝える。被係合部材44は、押しボタン連結捧40bと連結軸45の接合点に設けられる。レリース49cの駆動は、メカニカル機構部52、排水栓支持捧51を介して、排水栓50の開閉へと伝達される。連結軸45と連動して磁性部材46も押し下げられ、磁性部材を位置検出手段47により磁力を良好に検知できる位置に移動できるため排水栓の開閉状態を正確に検出することが可能となる。
【0040】
自動排水栓は、手動または電動操作により、レリース(操作ワイヤー)を介して排水栓を開閉操作できるため、排水栓を取付けたチェーンを手動操作して排水口に嵌め込むといった煩わしい作業をする必要はなく、また、入浴時や清掃時に前記チェーンが手足に引っ掛かって邪魔にならない。
【0041】
図16〜図21は、浴槽内から排水トラップに浴槽水が排水されている状態と、殺菌水吐水部から殺菌水を吐水している状態とが同時に起こることを禁止するフローチャートである。
【0042】
図16は、洗い場殺菌SWがONされると、浴槽排水が行われていないことを検知してから、殺菌水の吐水を開始する。つまり、浴槽排水検知手段により、浴槽排水が行われていると検知した場合は、殺菌水生成装置を運転させず、電磁弁を閉じたままにしておく。そして、浴槽排水検知手段により、浴槽排水が行われていないと検知するまで、殺菌水生成装置を運転させず、電磁弁を閉じたままにしておく。浴槽排水検知手段により、浴槽排水が行われていないと検知した場合は、殺菌水生成装置を運転するとともに、電磁弁を開き、タイマーのカウントを開始して洗い場殺菌を行う。殺菌水の吐水中も、浴槽排水の有無を検知し、浴槽排水が開始された場合、殺菌水の吐水を中止する。つまり、浴槽排水検知手段により、浴槽排水が行われたことを検知した場合は、殺菌水生成装置を停止させ、電磁弁を閉じて運転を終了させる。浴槽排水がない場合は、タイマーで所定時間殺菌水を洗い場に散水し、所定時間後に殺菌水生成と電磁弁を止めて運転を終了する。殺菌水を吐水する所定時間は、洗い場全面を万遍なく洗浄し、排水トラップ内の水をほぼ完全に置換する時間T0に設定する。
【0043】
図17は、洗い場殺菌SWがONされると、浴槽排水が行われていないことを検知してから、殺菌水の吐水を開始する。殺菌水の吐水中も、浴槽排水の有無を検知し、浴槽排水が開始された場合、殺菌水の吐水を中止する。つまり、浴槽排水検知手段により、浴槽排水が行われたことを検知した場合は、殺菌水生成装置を停止させ、電磁弁を閉じる。その時点でタイマをリセットし、浴槽排水検知手段により、浴槽の排水が終わったと検知した後、再度所定時間T0殺菌水を洗い場に散水するために、殺菌水生成装置を運転するとともに、電磁弁を開き、タイマーのカウントを開始して洗い場殺菌を再度やり直す。このように、殺菌水の吐水中止前に、殺菌水を吐水した時間に関わらず、一律所定時間T0、再度殺菌水吐水を行う。
【0044】
図18は、洗い場殺菌SWがONされると、開閉検知手段により、浴槽排水栓が開状態か否かを検知し、排水栓が閉じている場合、すぐに殺菌水の吐水を開始する。排水栓が開いている場合は、所定時間Aが経過後に、殺菌水の吐水を開始する。所定時間Aは、浴槽水が排水されるに十分な時間を設定する。例えば200Lの浴槽なら10分以上などが目安となる。所定時間Aが経てば、浴槽水排出が終了するため、排水トラップ内で殺菌成分の濃度が薄まる懸念がない状態で、殺菌水を洗い場に吐水できる。
【0045】
図19は、洗い場殺菌SWがONされると、自動排水栓を閉じてから、殺菌水の吐水を開始する。所定時間T殺菌水を洗い場に散水し、所定時間後に殺菌水生成と電磁弁を止めて運転を終了する。
【0046】
図20は、洗い場殺菌SWがONされると、自動排水栓を開き、所定時間T1後に自動排水栓を閉じ、それから、殺菌水の吐水を開始する。所定時間T殺菌水を洗い場に散水し、所定時間後に殺菌水生成と電磁弁を止めて運転を終了する。所定時間Tは、浴槽水が排水されるに十分な時間を設定する。このようにすることで、浴槽排水と、洗い場殺菌を1連動して実行することができる。
【0047】
図21は、洗い場殺菌SWがONされると、自動排水栓の作動信号を受け付けない実施例を表す。洗い場殺菌SWがONされ、所定時間Tの殺菌水吐水を終えてから、時間T2後まで自動排水栓の作動を停止する。
【0048】
上述した実施形態の他に、使用者自身が、洗い場殺菌SWをONして、殺菌水吐水部から殺菌水を吐水する前に、手動で浴槽排水栓を開いて浴槽内の水を排水するようにしてもよい。また、殺菌水を排水トラップ内に流入させた後、しばらくの間は浴槽側の排水を行わないようにしても良い。しばらくの間としては、30分以上であり、好ましくは3時間以上である。例えば、これを使用者に認知してもらうために、報知手段を設けても良い。ここで、報知手段としては、例えば、リモコンに設けられた液晶表示装置に表示させたり、リモコンから音声、音、光などを発生させることにより、操作者に警告や告知を行うものが例示される。このような形態であれば、浴槽排水検知手段、開閉検知手段、排水栓自動操作部などを設ける必要がない。
【0049】
本発明における殺菌水としては、殺菌性物質又はイオンを含有する水を例示することができる。具体的には、遊離塩素、抗菌性金属(例えば、銀、銅、亜鉛等)又はそのイオン、オゾン、オゾン含有水、結合塩素、有機塩素系消毒液、有機リン酸系消毒液、ベルオクソ
炭酸イオン又はその塩、アルコール系消毒液などを挙げることができる。
【0050】
上述した本実施形態による浴室殺菌ユニットによれば、以下の効果が得られる。浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップ内に殺菌水を長時間、滞留させることにより、排水トラップ内の細菌の繁殖を抑制する。その結果、著しく使用者の不快となっていた排水トラップのヌメリ、ニオイの発生を抑え、快適な浴室空間を実現し、使用者の掃除の手間を大幅に低減できる。
【0051】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る浴室殺菌システムの一実施形態の全体概要を示す図。
【図2】浴室カウンタ裏面に取設された機能部を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図。
【図3】機能部の詳細を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図図。
【図4】銀電極の配置を模式的に説明する図。
【図5】散布ノズルの構成を示す図。
【図6】散布ノズルの回転体を示す図で、(a)は平面図、(b)はB−B断面図、(c)はC−C断面図、(d)はD−D断面図、(e)はE−E断面図。
【図7】散布ノズルの分解断面図。
【図8】殺菌水の散布状態を示す平面図。
【図9】殺菌水の散布状態を示す立面図。
【図10】排水ピット廻りにおける殺菌水の散布状態を示す斜視図。
【図11】排水部を説明するための模式図。
【図12】排水部の排水トラップを説明するための模式断面図。
【図13】排水栓に関わる機構を示す構成図。
【図14】浴槽水の検知を給湯機を用いて行うことを説明するための模式図。
【図15】本発明に係る自動排水栓を示す構成図。
【図16】浴槽排水中は殺菌水吐水を行わず、殺菌水吐水中に浴槽排水が行われたら殺菌水吐水を中止することを表すフローチャート。
【図17】浴槽排水中は殺菌水吐水を行わず、殺菌水吐水中に浴槽排水が行われたら殺菌水吐水を中止し、浴槽排水終了後に再度殺菌水吐水を行うことを表すフローチャート。
【図18】殺菌水吐水を開始する時、排水栓が開いてる時は、所定時間後に殺菌水吐水を開始することを表すフローチャート。
【図19】殺菌水吐水を開始する時は、自動排水栓を閉じてから行うことを表すフローチャート。
【図20】殺菌水吐水を開始する時は、自動排水栓を所定時間開いてから行うことを表すフローチャート。
【図21】殺菌水吐水を開始する時は、自動排水栓の作動を所定時間受け付けないことを表すフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
1 浴槽殺菌装置
2 浴槽
2a リム
3 洗い場床
4 壁面
5 浴室カウンタ
6 バスエプロン
7 排水ピット
8 排水蓋
10 制御ボックス
11 機能ユニット
12 散布ノズル
13 リモコン
13a スイッチ
13b LED
15 給水管
16 給湯管
17 水道水導入管
18 止水栓
19 殺菌水導出管
20 ケース
21 流入口
22 電磁弁
23 定流量弁
24 大気開放弁
25 逆止弁
26 電解槽
27 流出口
28 ウレタン樹脂
29 電極
30 ボディ
30a 軸先端
30b 最先端
31 回転体
32 上側部材
32a 33e 挿通孔
33a,33b,33c,33d 液体噴出孔33 下側部材
34 ワッシャ
35 固定ビス
40 排水栓操作部
40a 押しボタン
40b 押しボタン連結捧
43 出力軸
44 被係合部材
45 連結軸
46 磁性部材
47 位置検出手段
48 電動機
49 排水栓伝達部
49a ガイドホース
49b レリースチューブ
49c レリース
50 排水栓
51 排水栓支持捧
52 メカニカル機構部
53 支持部
53a 嵌め込み突起部
57 給湯機
58 浴槽アダプター
59 給湯機配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室に設けられた浴室殺菌ユニットであって、
殺菌水を生成する殺菌水生成装置と、
前記殺菌水生成装置により生成された殺菌水を洗い場床に吐水する殺菌水吐水部と、
前記殺菌水吐水部からの吐水または止水を切り換える切り換え手段と、
前記殺菌水生成装置と、前記切り換え手段とを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、浴槽内から排水トラップに浴槽水が排水されている状態と、殺菌水吐水部から殺菌水を吐水している状態とが同時に起こることを禁止するように制御する
ことを特徴とする浴室殺菌ユニット。
【請求項2】
浴槽水が排水されていることを検知する浴槽排水検知手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の浴室殺菌ユニット。
【請求項3】
浴槽排水栓が、開いていることを検知する開閉検知手段を備え、前記開閉検知により前記浴槽排水栓が開いている状態で殺菌水吐水指令があった場合には、所定時間経過後に殺菌水の吐水を開始することを特徴とする請求項1記載の浴室殺菌ユニット。
【請求項4】
浴槽排水栓は電気的に開閉制御可能であり、
前記制御装置は、前記殺菌水吐水部から殺菌水を吐水する前に、前記浴槽排水栓を自動で閉じることを特徴とする請求項1記載の浴室殺菌ユニット。
【請求項5】
浴槽排水栓は電気的に開閉制御可能であり、
前記制御装置は、前記殺菌水吐水部から殺菌水を吐水する前に、前記浴槽排水栓を自動で開けて、所定時間経過後に殺菌水の吐水を開始することを特徴とする請求項1記載の浴室殺菌ユニット。
【請求項6】
浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室の殺菌方法であって、
殺菌水吐水部から殺菌水を吐水させる前に、浴槽排水栓を開いて浴槽内の水を排水するようにしたことを特徴とする浴室の殺菌方法。
【請求項7】
浴槽側の排水と洗い場側の排水とが合流する排水トラップを有する浴室の殺菌方法であって、
殺菌水を排水トラップ内に流入させた後、しばらくの間は浴槽側の排水を行わないようにしたことを特徴とする浴室の殺菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−189453(P2009−189453A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−31289(P2008−31289)
【出願日】平成20年2月13日(2008.2.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】