説明

浴槽手すり

【課題】 浴槽壁に対する固定部材の固定の緩みを抑えることができる浴槽手すりを提供する。【解決手段】 浴槽手すり10は、浴槽上縁部に取り付け固定される固定部材11と、把手部材12とを有している。固定部材11は、浴槽壁面に当接される当接板20と、該当接板20とともに浴槽壁を挟持する押圧板22と、該押圧板22を該当接板20に対して進退させるボルト杆と、該ボルト杆を操作するハンドル26とを備えている。そして、ハンドル26には、該ハンドル26の回転を抑制するための緩み止め部材31が付装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽壁に取り付けられるものであり、高齢者、障害者等といった使用者が浴槽へ出入りする際に体を支えるための浴槽手すりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜3に記載されたように、浴槽手すりは、断面コ字状をなす固定部材(各特許文献には「コの字枠」、「跨設部材」、「浴槽取付部」と記載)と、該固定部材に支持された把手部材(各特許文献には「把手」、「大グリップ及び小グリップ」、「手すり」と記載)とを有している。該固定部材を浴槽壁に固定する構成について、例えば特許文献1では、ハンドル、ボルト杵及び挟持板が設けられている。該ハンドルは、ボルト杵に螺着されており、また該ボルト杵は該挟持板に取り付けられている。そして、ハンドルを締め付けて挟持板を浴槽壁に圧接させることにより、固定部材が浴槽壁に固定されるように構成されている。また、特許文献2及び特許文献3についても、該固定部材を浴槽壁に固定する構成は、略同様となっている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−125964号公報
【特許文献2】特開2004−261327号公報
【特許文献3】特開2002−209781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の浴槽手すりにおいては、浴槽壁に対する固定部材の固定が緩むおそれがあり、把手部材を握るとき等に浴槽手すりがぐらつく可能性があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、固定部材の固定の緩みを抑えることができる浴槽手すりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の浴槽手すりの発明は、浴槽上縁部に取り付け固定される固定部材と、該固定部材に支持された把手部材とを備えている浴槽手すりであって、該固定部材は、浴槽壁面に当接される当接板と、該当接板と並設された押圧板と、該押圧板に取り付けたボルト杆と、該ボルト杆を支持する支持部と、該ボルト杆と螺着された操作部材とを有しており、該操作部材の回転による該ボルト杆の移動に伴って該押圧板を該当接板に対して前進させることにより、該当接板と該押圧板とで浴槽壁を挟持するように構成されたものであるとともに、該操作部材又は該ボルト杆には、該当接板と該押圧板とで該浴槽壁を挟持した状態で、該操作部材の回転又は該ボルト杆の移動を抑制する緩み止め部材が付装されていることを要旨とする。この構成によれば、緩み止め部材によって操作部材の回転又は該ボルト杆の移動が抑制されることにより、当接板に対して押圧板が後退しづらくなる。その結果、浴槽壁に対する固定部材の固定の緩みを抑えることができる。
【0006】
請求項2に記載の浴槽手すりの発明は、請求項1に記載の発明において、該緩み止め部材は、該操作部材又は該ボルト杆に螺嵌されていることを要旨とする。この構成によれば、操作部材又はボルト杆に対して緩み止め部材を回転させて支持部に接近させることにより、該支持部に緩み止め部材を圧接させることができる。その結果、支持部と緩み止め部材との間に生じる摩擦力により、該操作部材の回転又は該ボルト杆の移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、浴槽壁に対する固定部材の固定の緩みを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の浴槽手すりを具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の浴槽手すりを示す斜視図である。図2は、該浴槽手すりを浴槽の内側から見た状態を示す正面図である。図3は、該浴槽手すりを示す一部を破断した側面図である。該浴槽手すり10は,浴槽(図示略)の上縁部に取り付け固定される固定部材11と、該固定部材11に支持された把手部材12とを有している。さらに、固定部材11には、半円弧形状をなす補助把手13が取り付けられている。この補助把手13は、浴槽内から立ち上がる等のような浴槽内における使用者の行動を補助するためのものである。
【0009】
固定部材11は、断面横L字状をなす第1挟持体15及び第2挟持体16の上部を連結板17によって相互に連結することにより、側面視でコの字状に形成されている(図1及び図3を参照)。なお、該固定部材11において、第1挟持体15は浴槽の外側に配置されており、第2挟持体16は浴槽の内側に配置されている。これら第1挟持体15及び第2挟持体16は、連結板17に対する連結位置を変更することにより、浴槽壁の厚みに合わせて互いの間隔を変更することができるようになっている。また、連結板17は、カバー部材17aによって外部から覆われており、該連結板17の側縁、角部、あるいは第1挟持体15及び第2挟持体16を連結するボルト等のような凹凸(いうなれば、使用者に取っての障害)を外部に露出させないように構成されている。
【0010】
第1挟持体15において、その側部は、浴槽手すり10を浴槽に取り付けた状態で浴槽壁の外面に当接される当接板20となっている。図3に示すように、該当接板20の内面には、浴槽壁の表面を傷つけないようにするべく、ゴム、エラストマー等の弾性材料から形成されたクッション材21が貼着されている。固定部材11の内側には、押圧板22が該当接板20に対して並設されている。そして、該押圧板22には、締付部材を構成するボルト杆23が取付けられている。
【0011】
第2挟持体16において、その側部には、支持孔24が透設されている。この支持孔24には、ボルト座25が挿着されている。該ボルト座25は、円筒状に形成されており、その一端部側が固定部材11の内側から外側に向かうように、支持孔24に挿通されるとともに、他端部側には鍔部25aが設けられているため、該鍔部25aによって支持孔24からの抜け出しを防止されている。さらに、該ボルト座25の内周面には雌ねじが螺刻されている。これら支持孔24及びボルト座25は、ボルト杆23を支持するための支持部を構成しており、該ボルト杆23は、その一端部が該ボルト座25に螺合されることによって、第2挟持体16に支持されている。
【0012】
該ボルト座25の一端部において、外周面上には操作部材としてのハンドル26が固定装着されており、該ボルト座25は、該ハンドル26とともに連れ回りするように構成されている。該ハンドル26を回転させた場合、その回転方向に応じ、ボルト杆23は、ボルト座25に対して螺入又は螺退されて移動するようになっている。そして、該ハンドル26の回転に伴い、ボルト杆23がハンドル26の内部から押し出されるように移動した場合、押圧板22が当接板20に対して前進することにより、該当接板20と該押圧板21との間に浴槽壁が挟持され、固定部材11が浴槽上縁部に取り付け固定される。なお、浴槽壁の内面に圧接されることとなる押圧板22の内面には、浴槽壁の表面を傷つけないようにするべく、前記当接板20と同様のクッション材21が貼着されている。一方、該ハンドル26の回転に伴い、ボルト杆23がハンドル26の内部へ引き込まれるように移動した場合、押圧板22が当接板20に対して後退することにより、浴槽上縁部における固定部材11の固定が緩む。
【0013】
把手部材12は、固定部材11に立設された支柱27と、該支柱27の先端部において、浴槽の内側へ向かって延出された浴内用把手28及び浴槽の外側へ向かって延出された浴外用把手29とを備えている。該支柱27は、一対が設けられており、それぞれが当接板20の外面両側部に配置されている。このように支柱27は当接板20の外面に配置されることにより、該支柱27の基端部は、図3中に一点鎖線で指示する浴槽壁の外面Aよりも浴槽の外側に配置されている。その結果、浴槽に蓋をする際、該支柱27が該蓋の邪魔となることが抑制されている。
【0014】
該支柱27には、複数の貫通孔27aが設けられており、該貫通孔27aにピン、ボルト等の挿通部材を挿通し、さらに該挿通部材を当接板20に設けられた孔(図示略)へ挿入することにより、該支柱27は固定部材11に立設されている。そして、挿通部材を挿通する貫通孔27aを適宜変更することにより、固定部材11に対する把手部材12の高さ調整を行うことができ、使用者の使い勝手の向上が図られている。さらに、当接板20の外面はカバー蓋20aによって覆われており、支柱27の基端部は、挿通部材とともにカバー蓋20a内に収容されている。つまり、支柱27の基端部、挿通部材等をカバー蓋20aで覆うことにより、当該浴槽手すり10は、凹凸(いうなれば、使用者に取っての障害)を外部に露出させないように構成されている。
【0015】
浴内用把手28は、U字状に形成されており、一対の支柱27の先端部(各図中で上端部)を繋ぐように設けられている。浴外用把手29もまた、浴内用把手28と同様に、U字状に形成されている。そして、浴内用把手28の支柱側となる端部と、浴外用把手29の支柱側となる端部とは繋がっており、浴内用把手28及び浴外用把手29は、互いの端部を繋げた形状が環状とされている。さらに、補助把手13、浴内用把手28及び浴外用把手29には、使用者が握ったときに滑ることを防止するため、保護カバー30が巻着されている。該保護カバー30の材料は、例えばSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体)やSEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体)等のエラストマーである。また本実施形態では、該保護カバー30の色は、白内障の者でも容易に見分けることが出来るように、例えば赤色等の長波長の色を使用している。
【0016】
前記ハンドル26において、その他端部外周面上には、緩み止め部材31が付装されている。この緩み止め部材31は、円環状に形成されるとともに、その内周面には、雌ねじが螺刻されている。一方、ハンドル26の他端部外周面には、雄ねじが螺刻されており、該緩み止め部材31は、該操作部材であるハンドル26の他端部に螺嵌されている。該緩み止め部材31を該ハンドル26に対して所定方向に回転させた場合、該緩み止め部材31は、ハンドル26に対して移動し、第2挟持体16へ接近するとともに、該第2挟持体16の外面において、支持部を構成する支持孔24の周縁に圧接されるようになっている。
【0017】
さて、当該浴槽手すり10において、固定部材11を浴槽壁に固定する場合、予め当接板20に対して押圧板22を所定間隔だけ離間させた状態としておき、これら当接板20と押圧板22との間に浴槽壁を位置させる。次いで、ハンドル26を回転させ、押圧板22を浴槽壁に圧接させ、当接板20と押圧板22との間で浴槽壁を挟持する。そして、当接板20と押圧板22とで浴槽壁を挟持した状態を保持しつつ、該緩み止め部材31を所定方向に回転させ、該緩み止め部材31を該第2挟持体16の外面に圧接させる。すると、緩み止め部材31と第2挟持体16の外面との間に摩擦力が生じ、緩み止め部材31の回転が規制され、該緩み止め部材31の回転規制に伴い、緩み止め部材31と螺合されたハンドル26の回転が抑制される。このようにハンドル26の回転が抑制された場合、該ハンドル26が固定されたボルト座25の回転もまた抑制され、さらにボルト杆23の移動が抑制される。その結果、振動、外力等がボルト杆23、ボルト座25、ハンドル26に伝達されたとしても、それぞれの回転又は移動が抑制されるため、浴槽壁に対する固定部材11の固定の緩みが抑えられる。
【0018】
なお、上記実施形態において、操作部材は、必ずしも各図に示した形状のハンドル26とする必要はなく、棒状、円板状等としてもよい。さらに、そのような棒状、円板状等の操作部材とする場合、ボルト座25を介することなく、該操作部材をボルト杆23に取り付けてもよい。また、緩み止め部材31は、必ずしもハンドル26と螺合する必要はなく、例えば固定部材11の内側においてボルト杆23に螺合してもよい。また、緩み止め部材31は、ボルト杆23、ボルト座25、ハンドル26のうち少なくとも何れか1つの回転又は移動を抑制可能であれば、必ずしも実施形態のものを構成することに限らず、例えばハンドル26と第2挟持体16の外面との間に圧入する楔(くさび)、ゴム部材等によって構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の浴槽手すりを示す斜視図。
【図2】実施形態の浴槽手すりを示す正面図。
【図3】実施形態の浴槽手すりを示す一部を破断した側面図。
【符号の説明】
【0020】
10…浴槽手すり、11…固定部材、12…把持部材、20…当接板、22…押圧板、23…ボルト杵、24…支持部を構成する支持孔、25…支持部を構成するボルト座、26…操作部材を構成するハンドル、31…緩み止め部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽上縁部に取り付け固定される固定部材と、該固定部材に支持された把手部材とを備えている浴槽手すりであって、
該固定部材は、浴槽壁面に当接される当接板と、該当接板と並設された押圧板と、該押圧板に取り付けたボルト杆と、該ボルト杆を支持する支持部と、該ボルト杆と螺着された操作部材とを有しており、該操作部材の回転による該ボルト杆の移動に伴って該押圧板を該当接板に対して前進させることにより、該当接板と該押圧板とで浴槽壁を挟持するように構成されたものであるとともに、
該操作部材又は該ボルト杆には、該当接板と該押圧板とで該浴槽壁を挟持した状態で、該操作部材の回転又は該ボルト杆の移動を抑制する緩み止め部材が付装されていることを特徴とする浴槽手すり。
【請求項2】
該緩み止め部材は、該操作部材又は該ボルト杆に螺嵌されている請求項1に記載の浴槽手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−97989(P2007−97989A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294667(P2005−294667)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】