説明

浴槽水殺菌装置

【課題】自動的に浴槽水を殺菌することができる浴槽水殺菌装置の提供
【解決手段】浴槽水殺菌装置1は、フロート11、紫外線ランプユニット13、前方距離計測センサユニット15、第1の側方距離計測センサユニット17、第2の距離計測センサユニット19、前方推進力発生ポンプユニット21、推進方向調整ポンプユニット23、保護枠25、電源装置27(図示せず)、制御回路29(図示せず)及び紫外線ランプ点灯器31(図示せず)を有している。これにより、浴槽に貯留された浴槽水を自動的に殺菌することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に貯められた水を殺菌する浴槽水殺菌装置に関し、特に、自動的に浴槽水若しくは浴槽の少なくとも一方を殺菌するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴槽水殺菌装置100を図10を用いて説明する。浴槽水殺菌装置100は、浴槽に貯留された浴槽水を殺菌するものである。浴槽水殺菌装置100では、ランプユニット103と、このランプユニット103の紫外線ランプ109に供給する電力を発生させる電力供給装置104と、電力供給装置104で発生した電力を紫外線ランプ109に供給する防水構造のケーブル105と、ケーブル105を繰り出し可能に巻き取るケーブル巻き取り機106とが、手押し車107に組み込まれている。
【0003】
ランプユニット103は、枠体108に1本の紫外線ランプ109と、浮力を有する3つのフロート部110とを備え、フロート部110の浮力により枠体108ごと浴槽水の水面に浮くことができるように構成されている。そして、この浮いた状態で、紫外線ランプ109からの紫外線を浴槽水に照射することにより浴槽水を殺菌する。
【0004】
浴槽水殺菌装置100は、フロート部110を備えたランプユニット103が浴槽水の水面に浮いた状態で、紫外線ランプ109で発生する紫外線を直接浴槽水に照射して浴槽水を殺菌するので、循環式の殺菌装置のように新たに循環路を浴槽に設ける必要がない。
【0005】
また、紫外線を直接浴槽水に照射して浴槽水を殺菌するので、浴槽水の非循環部分や、浴槽の内壁、浴槽の底部など、浴槽内面の隅々まで殺菌することができる。特に、従来の循環式の殺菌装置では殺菌できなかった浴槽の内面のスライムの裏側に隠れているレジオネラ菌などの有害な菌を殺菌することができるので浴槽の衛生状態を著しく改善することができるようになる。
【0006】
さらに、このように浴槽の内面の隅々まで殺菌して常に浴槽を衛生的に維持することができるので、浴槽から全湯を抜いて清掃する定期的な清掃作業と次の清掃作業との間の期間を長くすることができる結果、浴槽の清掃作業に係る省力化に大きく貢献する。
【0007】
【特許文献1】特開2007−89850
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の浴槽水殺菌装置100には、以下に示す改善すべき点があった。浴槽水殺菌装置100は、浴槽内で人が引っ張りながら浴槽水を殺菌する必要があり、殺菌作業が非常に手間がかかる、という改善すべき点がある。
【0009】
そこで、本発明は、自動的に浴槽水若しくは浴槽の少なくとも一方を殺菌することができる浴槽水殺菌装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
以下に、課題を解決するための手段及び本発明の効果を示す。
【0011】
本発明に係る浴槽水殺菌装置は、浴槽に貯留された浴槽水若しくは前記浴槽の少なくとも一方を殺菌する浴槽水殺菌装置であって浮力を発生する浮力発生手段、前記浮力発生手段の底面側に設けられる紫外線ランプ手段であって、防水構造の紫外線ランプを有する紫外線ランプ手段、進行方向への推進力を発生する推進力発生手段、進行方向を調整する進行方向調整力を発生する進行方向調整力発生手段、進行方向に存在する障害物までの距離である進行方向距離を計測する進行方向距離計測手段、進行方向に対する交差方向に存在する障害物までの距離である交差方向距離を計測する交差方向距離計測手段、前記進行方向距離及び前記交差方向距離を用いて、前記推進力及び前記進行方向調整力を調整する進行方向調整手段、を有する。
【0012】
これにより、浴槽に貯留された浴槽水若しくは浴槽の少なくとも一方を自動的に殺菌することができる。
【0013】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記進行方向調整手段は、当該浴槽水殺菌装置の進行方向側の位置に配置されていること、を特徴とする。
【0014】
これにより、浴槽水殺菌装置の進行方向を容易に調整することができる。
【0015】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、複数の位置において前記交差方向距離を計測すること、を特徴とする。
これにより、浴槽水殺菌装置を浴槽の壁に対して所定の角度に維持することができる。
【0016】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記交差方向距離計測手段は、前記浴槽水殺菌装置の先端側及び後端側の位置において前記交差方向距離を計測すること、を特徴とする。
【0017】
これにより、浴槽水殺菌装置を浴槽の壁に対してより正確に所定の角度に維持することができる。
【0018】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記交差方向距離計測手段は、進行方向に対して右側若しくは左側の少なくとも一方の前記交差方向距離を計測すること、を特徴とする。
【0019】
これにより、浴槽の壁までの距離を容易に計測することができる。
【0020】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記紫外線ランプ手段は、殺菌する前記浴槽の底部若しくは側部の少なくとも一方に紫外線を照射する前記紫外線ランプを有すること、を特徴とする。
【0021】
これにより、浴槽の底部若しくは側部の少なくとも一方も殺菌することができる。
【0022】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記進行方向調整手段は、殺菌する前記浴槽の側部までの前記交差方向距離が所定の距離となるように、前記推進力及び前記進行方向調整力を調整すること、を特徴とする。
【0023】
これにより、浴槽の側部を殺菌することができる。
【0024】
本発明に係る浴槽水殺菌装置では、前記紫外線ランプ手段は、前記浮力発生手段の下面から所定の距離の位置に配置されること、を特徴とする。
【0025】
これにより、浴槽の底部を殺菌することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明における浴槽水殺菌装置の実施例を以下において説明する。
【実施例1】
【0027】
第一 浴槽水殺菌装置1の構成
本発明に係る浴槽水殺菌装置1の構成を図1〜図5を用いて説明する。浴槽水殺菌装置1の側面図を図1に、上面図を図2に、図1におけるP−P断面を図3に、正面図を図4に、背面図を図5に、それぞれ示す。図1に示すように、浴槽水殺菌装置1は、フロート11、紫外線ランプユニット13、前方距離計測センサユニット15、第1の側方距離計測センサユニット17、第2の距離計測センサユニット19、前方推進力発生ポンプユニット21、推進方向調整ポンプユニット23、保護枠25、電源装置27(図示せず)、及び制御回路29(図示せず)、及び紫外線ランプ点灯器31(図示せず)を有している。
【0028】
フロート11は、浴槽水殺菌装置1を浴槽に浮かべた際に、当該浴槽水殺菌装置1を水面上に浮かべることができる浮力を発生する。フロート11は、図2に示すように、上から見て楕円形状を有している。また、フロート11は、中央部に凹部d11を有している。凹部d11には、電源装置27が配置される。また、フロート11は、凹部d11に対して推進方向に凹部d13を有している。凹部13には、制御回路29が配置される。さらに、フロート11は、凹部d11に対して進行方向とは反対の方向に凹部d15を有している。凹部d15には、紫外線ランプ点灯器31が配置される。なお、フロート11は、塩化ビニール等のプラスチックにより形成された中空形状を有している。
【0029】
図3に示すように、紫外線ランプユニット13は、紫外線ランプユニット13a及び紫外線ランプユニット13bにより構成されている。紫外線ランプユニット13a及び紫外線ランプユニット13bは、フロート11に対する配置位置が異なるだけで、同様の構成を有している。従って、紫外線ランプユニット13aについてのみ詳細に説明する。
【0030】
紫外線ランプユニット13aは、紫外線ランプ131a、防水保護膜133a、紫外線ランプ固定部材135aを有している。紫外線ランプ131aは、254nmの波長の紫外線を発生する。防水保護膜135aは、紫外線ランプ131aの周囲を取り囲み、水の侵入を防止する。
【0031】
紫外線ランプ固定部材135aは、紫外線ランプ131aをフロート11に固定する。紫外線ランプ固定部材135aは、管状構造を有しており、図4に示すように、フロート11の下部からフロート11を水面に浮かべた際の水面下方向(以下、水面下方向とする。)へ突出している。紫外線ランプ固定部材135aは、内部に紫外線ランプ131aに接続する電気ケーブル等を収納する。なお、図3に示すように、紫外線ランプ固定部材135aは、フロート11の長手方向の中心線から前方(矢印a1方向)に向かって左側にずれた位置で、フロート11に接続される。これは、紫外線ランプ131a及び紫外線ランプ131bをフロート11に固定するため、水面に浮かべたときの浴槽水殺菌装置1のバランスを考慮する必要があるからである。
【0032】
第1の距離計測センサユニット15は、図3に示すように、前方距離計測センサ151、側方距離計測センサ153及び第1の距離計測センサ固定部材155を有している。前方距離計測センサ151は、フロート11の前方で、フロート11に対する水面下方向に配置される。前方距離計測センサ151は、浴槽水殺菌装置1の前方に存在する障害物までの距離を計測する。前方距離計測センサ151は、超音波センサである。
【0033】
第1の側方距離計測センサ153は、フロート11の前方で、フロート11に対する水面下方向に配置される。第1の側方距離計測センサ153は、浴槽水殺菌装置1の前方、かつ、進行方向に向かって右側方に存在する障害物までの距離を計測する。このように、第1の側方距離計測センサ153が進行方向右側における障害物までの距離を計測するとしたのは、浴槽水殺菌装置1が浴槽を反時計回りに回りながら、浴槽水の殺菌を行うからである。第1の側方距離計測センサ153は、超音波センサである。
【0034】
第1の距離計測センサ固定部材155は、前方距離計測センサ固定部材155a、第1の側方距離計測センサ155b、及び第1の距離計測センサ固定パイプ155cを有している。第1の距離計測センサ固定部材155は、図4に示すように、前方推進力発生ポンプ固定部材213(後述)に固定され、ひいては、前方距離計測センサ151及び第1の側方距離計測センサ155をフロート11に固定する。前方距離計測センサ固定部材155a及び第1の側方距離計測センサ155bは、平板形状を有している。前方距離計測センサ固定部材155aは、前方推進力発生ポンプ固定部材213の下部から下方向へ突出して配置されている。第1の側方距離計測センサ155bは、前方推進力発生ポンプ固定部材213の下部から上方向へ突出して配置されている。第1の距離計測センサ固定部材155cは、内部に前方距離計測センサ151及び第1の側方距離計測センサ153に接続する電気ケーブル等を収納する。
【0035】
第2の距離計測センサユニット19は、図5に示すように、第2の側方距離計測センサ191及び第2の距離計測センサ固定部材193を有している。第2の側方距離計測センサ191は、フロート11の後方で、フロート11に対する水面下方向に配置される。第2の側方距離計測センサ191は、浴槽水殺菌装置1の後方、かつ、進行方向に向かって右側方に存在する障害物までの距離を計測する。第2の側方距離計測センサ191は、超音波センサである。
【0036】
第2の距離計測センサ固定部材193は、平板構造を有しており、前方推進力発生ポンプ211に取り付けられ、ひいては、第2の側方距離計測センサ191をフロート11に固定する。第2の側方距離計測センサ191に接続する電気ケーブル等は、紫外線ランプ固定部材135bの内部に収納されている。
【0037】
前方推進力発生ポンプユニット21は、図3に示すように、前方推進力発生ポンプ211及び前方推進力発生ポンプ固定部材213を有している。前方推進力発生ポンプ211は、浴槽水殺菌装置1を前方へ移動させる推進力を発生する。前方推進力発生ポンプ21は、フロート11の後方、フロート11の長手方向の中心線上に配置される。前方推進力発生ポンプ211は、水流を後方へ排気することによって、浴槽水殺菌装置1を前方へ推進させる。
【0038】
前方推進力発生ポンプ固定部材213は、平板構造を有しており、一部に紫外線ランプ固定部材135bが貫通する孔を有している。前方推進力発生ポンプ固定部材213は、孔を貫通した紫外線ランプ固定部材135bに固定される。また、前方推進力発生ポンプ固定部材213では、平板上に第2の距離計測センサ固定部材193が固定的に載置される。これにより、前方推進力発生ポンプ固定部材213は、前方推進力発生ポンプ211をフロート11に固定する。
【0039】
推進方向調整ポンプユニット23は、図3に示すように、右旋回力調整ポンプ231、左旋回力調整ポンプ233及び左右旋回力調整ポンプ固定部材235を有している。右旋回力調整ポンプ231は、浴槽水殺菌装置1を進行方向に対して右方向へ旋回させる推進力を発生する。左旋回力調整ポンプ233は、浴槽水殺菌装置1を左方向へ旋回させる推進力を発生する。右旋回力調整ポンプ231は、フロート11の前方で、長手方向の中心線から前方に向かって左側にずれた位置に配置される。左旋回力調整ポンプ233は、フロート11の前方で、長手方向の中心線から前方に向かって右側にずれた位置に配置される。
【0040】
図4に示すように、右旋回力調整ポンプ231は、水流を左方向(矢印a41方向)へ排気することによって、浴槽水殺菌装置1を右方向へ旋回させる。左旋回力調整ポンプ233は、水流を右側方(矢印a43方向)へ排気することによって、浴槽水殺菌装置1を左方向へ旋回させる。
【0041】
左右旋回力調整ポンプ固定部材235は、平板により構成されており、第1の距離計測センサ固定部材155が貫通する孔を有している。左右旋回力調整ポンプ固定部材235では、平板上に右旋回力調整ポンプ231、左旋回力調整ポンプ233が固定的に載置される。また、左右旋回力調整ポンプ固定部材235は、孔を貫通した第1の距離計測センサ固定部材155に固定される。これにより、左右旋回力調整ポンプ固定部材235は、右旋回力調整ポンプ231及び左旋回力調整ポンプ233をフロート11に固定する。
【0042】
保護枠25は、フロート11の下部に配置されている紫外線ランプユニット13、第1の距離計測センサユニット15、第2の距離計測センサユニット19等、を障害物から保護する。図3に示すように、保護枠25は、保護パイプ25a、前部保護枠25b、及び後部保護枠25cを有している。
【0043】
保護パイプ25aは、コの字形状を有しており、フロート11の底部から水面下方向に向かって、紫外線ランプ13a、13bを含むように複数配置される。前部保護枠25bは、フロート11の前方向の端部に設けられ、第1の距離計測センサユニット15、推進方向調整ポンプユニット23を保護する。前部保護枠25bは、フロート11の前方に配置されている保護パイプ25aに接続され、固定される。後部保護枠25cは、フロート11の後ろ方向の端部に設けられ、第2の距離計測センサユニット15、推進力発生ポンプユニット21を保護する。後部保護枠25cは、フロート11の後方に配置されている保護パイプ25aに接続され、固定される。前部保護枠25b及び後部保護枠25cは、細めの線状部材によって構成されている。
【0044】
電源装置27は、図2に示すように、フロート11の凹部d11に配置される。電源装置27は、紫外線ランプ131a、紫外線ランプ131bを点灯させるのに必要な電力、及び、前方距離計測センサ151、第1の側方距離計測センサ153、第2の側方距離計測センサ191、前方推進力発生ポンプ211、右旋回力調整ポンプ231、及び左旋回力調整ポンプ233を動作させるのに必要な電力を供給する。
【0045】
制御回路29は、フロート11の凹部d11(図2等参照)に配置される。前方距離計測センサ151、第1の側方距離計測センサ153、及び第2の側方距離計測センサ191から値を取得し、前方推進力発生ポンプ211、右旋回力調整ポンプ231、及び左旋回力調整ポンプ233の動作を制御する。制御回路29のハードウェア構成及び動作については後述する。

第二 制御回路29
1.ハードウェア構成
【0046】
制御回路29のハードウェア構成を図6を用いて説明する。制御回路29は、CPU291、メモリ293、及び入出力インターフェイス回路295を有している。CPU291は、メモリ293に記録されている浴槽殺菌装置の移動を制御する移動制御プログラム等その他のアプリケーションに基づいた処理を行う。メモリ293は、移動制御プログラムを記憶している。また、CPU291に対する作業領域を提供する。入出力インターフェイス回路295は、前方距離計測センサ151、第1の側方距離計測センサ153、及び第2の側方距離計測センサ191からセンサ値を取得し、推進力発生ポンプ211、右旋回力調整ポンプ231、及び左旋回力調整ポンプ233の出力を制御する制御信号を提供する。
2.制御回路29の動作
【0047】
制御回路29の動作を説明する前に、四角形状の浴槽Bを殺菌する場合の浴槽水殺菌装置1の動作軌道を図7を用いて説明する。図7は、浴槽Bの平面図を示している。浴槽水殺菌装置1は、浴槽Bの左下の位置をスタート位置とし、左回りに旋回しながら、浴槽Bの側部である壁面、底部及び浴槽水を殺菌する。以下においては、浴槽水殺菌装置1の前方距離計測センサ151の値をX1、第1の側方距離計測センサ153の値をX2、第2の側方距離計測センサ191の値をX3とする。また、浴槽水殺菌装置1が維持する浴槽Bとの側方距離の基本単位をXs、同様に、前方の基本単位をXfとする。また、浴槽水殺菌装置1が左旋回する際の回転半径をRとする。従って、Xf=nXs+Rとなる。ここで、nはパラメータである。なお、浴槽水殺菌装置1は、動作前に浴槽の所定の壁に対して紫外線ランプ131a、131bが並行となるように設置されるものとする。
【0048】
このときの制御回路29のCPU291の動作を図8及び図9に示すフローチャートを用いて説明する。CPU291は、浴槽水殺菌装置1の動作スイッチがONとなると、紫外線ランプ131a及び紫外線ランプ131bを点灯させる(S801)。また、CPU291は、前方推進力発生ポンプ211を動作させる(S803)。CPU291は、前方距離計測センサ151、第1の側方距離計測センサ153、及び第2の側方距離計測センサ171から値を、それぞれX1、X2、及びX3として取得する(S805)。
【0049】
CPU291は、X1が予め設定された値Xfと等しいか否か判断する(S807)。ここで、値Xfは、浴槽水殺菌装置1が左旋回を開始する位置を浴槽の壁までの前方距離として表したものである。Xfには、初期値としてXs+Rが設定されている。従って、X1が予め設定された値Xfと等しい場合、浴槽水殺菌装置1が浴槽の壁に対して所定の位置まで到達していることを示す。
【0050】
CPU291は、X1がXfと等しいと判断すると、カウンターnの値に1を加算する(S809)。なお、カウンターnは初期値として0が設定されている。CPU291は、カウンターnを用いて、新たにXfを設定する(S811)。ここでは、n=0、1、2の場合「Xf=Xf+R」、n=3、4、5、6の場合「Xf=2Xf+R」、n=7、8、9、10の場合「Xf=3Xf+R」・・・、と設定する。
【0051】
CPU291は、第1の側方距離計測センサ153の値X2が設定したXfより小さいか否かを判断する(S813)。第1の側方距離計測センサ153の値X2が設定したXfより小さい場合、浴槽水殺菌装置1は、既に所定の殺菌を終了し、ほぼ浴槽の中心付近に到達している(図7、浴槽水殺菌装置1のend位置参照)。
【0052】
CPU291は、左旋回力調整ポンプ233を作動させる(S815)。これにより、浴槽水殺菌装置1は、左に旋回する。CPU291は、所定の時間が経過するまで、左旋回力調整ポンプ233の作動させる(S817)。ここでの所定の時間は、浴槽水殺菌装置1が、前方推進力発生ポンプ211及び左旋回力調整ポンプ233を所定の出力で動作させたときに、進行方向を90度回転させることに必要な時間とし、予め計測し、設定しておく。
【0053】
図9に移って、CPU291は、X2及びX3が、予め設定された値Xsと等しいか否かを判断する(S901)。ここで、値Xsは、浴槽水殺菌装置1と浴槽の壁までの側方距離を表す。従って、X2及びX3が予め設定された値Xsと等しい場合、浴槽水殺菌装置1が浴槽の壁に対して所定の距離で並行に位置していることを示す。
【0054】
CPU291は、X2がXsより大きいと判断すると(S903)、右旋回力調整ポンプ231を作動させる(S905)。一方、CPU291は、X2がXsより小さいと判断すると(S907)、左旋回力調整ポンプ233を作動させる(S911)。
【0055】
なお、CPU291は、ステップS901において、X2及びX3が、予め設定された値Xsと等しいと判断すると、浴槽水殺菌装置1は浴槽の壁面と並行にあると判断し、ステップS805以降の処理(図8参照)を実行する。

[その他の実施形態]
(1)フロート11
【0056】
前述の実施例1においては、フロート11は楕円形状を有するとしたが、浴槽水殺菌装置1を水面に浮遊させる浮力を発生することができるものであれば、例示のものに限定されない。
(2)紫外線ランプユニット13
【0057】
前述の実施例1においては、紫外線ランプユニット13は、紫外線ランプ固定部材135a、135bを介して、水面から所定の距離の位置に紫外線ランプ131a、131bを配置するとしたが、浴槽水を殺菌できる位置であれば例示のものに限定されない。例えば、フロート11の下部直近の位置に紫外線ランプ131a、131bを配置するようにしてもよい。また、浴槽の深さに応じて適宜、紫外線ランプ131a、131bを配置すればよい。
(3)第1の側方距離計測センサ153
【0058】
前述の実施例1においては、第1の側方距離計測センサ153によって、浴槽水殺菌装置1の進行方向に対して右側の障害物までの距離を計測するとしたが、右側の距離とあわせて、左側の距離を計測するようにしてもよい。第2の側方距離計測センサ191についても同様である。
(4)前方推進力発生ポンプ211
【0059】
前述の実施例1においては、前方推進力発生ポンプ211を後方には位置するとしたが、浴槽水殺菌装置1を前方に推進させることができる位置であれば、例示のものに限定されない。
(5)右旋回力調整ポンプ231、左旋回力調整ポンプ233
【0060】
前述の実施例1においては、右旋回力調整ポンプ231、左旋回力調整ポンプ233は、前方に配置するとしたが、浴槽水殺菌装置1の進行方向を調整できる位置であれば、例示ものに限定されない。また、右旋回力調整ポンプ231、左旋回力調整ポンプ233のいずれかのみを配置するようにしてもよい。
(6)制御回路29の動作
【0061】
前述の実施例1においては、制御回路29の動作を、図8及び図9に示すフローチャートにより実現するとしたが、各ポンプを制御できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、浴槽の形状により、制御回路29の動作を変更するようにしてもよい。
(7)各種センサ
【0062】
前述の実施例1においては、前方距離計測センサ151、第1の側方距離計測センサ153、及び第2の側方距離計測センサ191によって、浴槽に対する浴槽水殺菌装置1の位置を計測することとしたが、浴槽水殺菌装置1の位置を特定できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、浴槽が設置されている室内の天井に位置計測装置を設置し、無線により浴槽水殺菌装置1に現在の位置を送信するようにしてもよい。

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る浴槽水殺菌装置1の側面図である。
【図2】浴槽水殺菌装置1の上面図である。
【図3】浴槽水殺菌装置1の図11におけるP−P断面を示した図である。
【図4】浴槽水殺菌装置1の正面図である。
【図5】浴槽水殺菌装置1の背面図である。
【図6】制御回路29のハードウェア構成を示す図である。
【図7】浴槽水殺菌装置1の殺菌動作の一例を示す図である。
【図8】制御回路29の動作を示すフローチャートである。
【図9】制御回路29の動作を示すフローチャートである。
【図10】従来の浴槽水殺菌装置を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・・・浴槽水殺菌装置
11・・・・・フロート
13・・・・・紫外線ランプユニット
15・・・・・第1の距離計測センサユニット
19・・・・・第2の距離計測センサユニット
21・・・・・前方推進力発生ポンプユニット
23・・・・・推進方向調整ポンプユニット
25・・・・・保護枠
27・・・・・電源装置
29・・・・・制御回路
31・・・・・紫外線ランプ点灯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽に貯留された浴槽水若しくは前記浴槽の少なくとも一方を殺菌する浴槽水殺菌装置であって
浮力を発生する浮力発生手段、
前記浮力発生手段の底面側に設けられる紫外線ランプ手段であって、防水構造の紫外線ランプを有する紫外線ランプ手段、
進行方向への推進力を発生する推進力発生手段、
進行方向を調整する進行方向調整力を発生する進行方向調整力発生手段、
進行方向に存在する障害物までの距離である進行方向距離を計測する進行方向距離計測手段、
進行方向に対する交差方向に存在する障害物までの距離である交差方向距離を計測する交差方向距離計測手段、
前記進行方向距離及び前記交差方向距離を用いて、前記推進力及び前記進行方向調整力を調整する進行方向調整手段、
を有する浴槽水殺菌装置。
【請求項2】
請求項1に係る浴槽水殺菌装置において、
前記進行方向調整手段は、
当該浴槽水殺菌装置の進行方向側の位置に配置されていること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る浴槽水殺菌装置のいずれかにおいて、
前記交差方向距離計測手段は、
複数の位置において前記交差方向距離を計測すること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項4】
請求項3に係る浴槽水殺菌装置において、
前記交差方向距離計測手段は、
前記浴槽水殺菌装置の先端側及び後端側の位置において前記交差方向距離を計測すること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に係る浴槽水殺菌装置のいずれかにおいて、
前記交差方向距離計測手段は、
進行方向に対して右側若しくは左側の少なくとも一方の前記交差方向距離を計測すること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に係る浴槽水殺菌装置のいずれかにおいて、
前記紫外線ランプ手段は、
殺菌する前記浴槽の底部若しくは側部の少なくとも一方に紫外線を照射する前記紫外線ランプを有すること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に係る浴槽水殺菌装置のいずれかにおいて、
前記進行方向調整手段は、
殺菌する前記浴槽の側部までの前記交差方向距離が所定の距離となるように、前記推進力及び前記進行方向調整力を調整すること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7に係る浴槽水殺菌装置のいずれかにおいて、
前記紫外線ランプ手段は、
前記浮力発生手段の下面から所定の距離の位置に配置されること、
を特徴とする浴槽水殺菌装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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