説明

浴槽用水受け構造

【課題】シリコン処理が不要であり、現場でも容易に取り付けることができ、水漏れ防止効果が大となる漏水受け部材を提供する。
【解決手段】浴槽の側壁面1aの貫通孔1bに取り付けられる取付部材2の下側に設けられる漏水受け部材5において、漏水受け部材5は柔軟材で形成され、貫通孔1bに嵌め込まれて貫通孔1bの周縁を覆うことのできる止水部50が一体形成され、この止水部50は、浴槽側壁面1aの裏に位置する固定片部5bと、浴槽側壁面1aの表に位置する内鍔部5eと、貫通孔1b内周に位置して固定片部5bと内鍔部5eとを連結する短筒状の蛇腹部5dとが形成されて、浴槽の側壁面1aの内および外側から取付部材2の雄ネジ部材6に対し雌ネジ部材7を締め付けて取り付けできる取付孔5cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に形成した貫通孔からの漏水を受け止める浴槽用水受けの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽用水受けとして、例えば特許文献1に開示されているような構造のものがある。
この浴槽用水受け構造は、図5に示すように、浴槽1の側壁面1aの貫通孔に、取付部材である追い焚き用アダプタ2や水中照明器3を取り付ける場合、貫通孔から漏れ出す水を受けるために、水中照明器3や追い焚き用アダプタ2の下方に、それぞれ漏水受け部材4,5を設け、漏水を受けて排水ホースHを介し排水するようにしており、追い焚き用アダプタ2側の漏水受け部材5について説明すると、この漏水受け部材5は、図6に斜視図で示すように、上面が開放された受け皿部5aの背面に固定片部5bが一体状に立ち上げ形成され、この固定片部5bには貫通状に孔5cが形成されている。
このような漏水受け部材5の浴槽側壁面1aへの取付構造の詳細は、図7の一部破断斜視構成図で、また図8の概略側面構成図で示す。
【0003】
追い焚き用アダプタ2は、雄ネジ部材6と雌ネジ部材7で構成されており、雄ネジ部材の本体部6aから突出する雄ネジ筒部6bに螺合される、先端に鍔部7aを有する雌ネジ筒部7bが雌ネジ部材7に設けられており、浴槽側壁面1aの内側から雄ネジ部材6の雄ネジ筒部6bを貫通孔1bに通し、浴槽側壁面1aの外側から雌ネジ部材7の雌ネジ筒部7bを雄ネジ筒部6bに締め付けて取り付けられるものである。
なお、図中8は、雌ネジ部材7に接続された配管8であり、図中11は、浴槽の内側から雄ネジ部材6の本体部6aに蓋されるキャップである。
先ず、漏水受け部材5の固定片部5bを浴槽側壁面1aに接着材で仮固定し、貫通孔1bおよび漏水受け部材5の孔5cの内周にシリコンSを塗布し、その状態で雄ネジ部材6と浴槽の側壁面1a間にはパッキン10を介在させ、また、雌ネジ部材7の鍔部7aにはゴムパッキン9を嵌め込んでおき、雄ネジ部材6に対し外側から雌ネジ部材7を締め付けて取り付けられるものである。
【特許文献1】特開2005−237590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の漏水受け部材の取付構造では、パッキン10やシリコンSによる止水が不充分だった場合に、浴槽の側壁面1aと固定片部5bとの重合面を伝って漏水する可能性があり、また、パッキン9,10を用い、更にシリコンSの塗布が必要であり、シリコンSの塗布はムラのないように慎重に塗布する必要があり、取付作業に手間がかかり、作業性が悪いという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、漏水受け部材の取付作業が容易で、且つ水漏れ防止効果が大となる浴槽用水受け構造を提供するものであり、その請求項1は、浴槽側壁面の貫通孔に取り付けられる取付部材の下側に設けられる漏水受け部材において、該漏水受け部材は柔軟材で形成され、前記貫通孔に嵌め込まれて該貫通孔周縁を覆うことのできる止水部が一体形成され、該止水部は、浴槽側壁面の裏に位置する固定片部と、浴槽側壁面の表に位置する内鍔部と、前記貫通孔の内周に位置して前記固定片部と前記内鍔部とを連結する短筒状の連結部とが形成されて、浴槽側壁面の内外方から前記取付部材を締め付けて取り付けできる取付孔が設けられていることである。
【0006】
また、請求項2は、前記漏水受け部材の止水部には、前記貫通孔に嵌め込む時に、浴槽側壁面の厚さに応じて伸縮し得る蛇腹部が形成されていることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、浴槽側壁面の貫通孔に取り付けられる取付部材の下側に設けられる漏水受け部材において、該漏水受け部材は柔軟材で形成され、前記貫通孔に嵌め込まれて該貫通孔周縁を覆うことのできる止水部が一体形成され、該止水部は、浴槽側壁面の裏に位置する固定片部と、浴槽側壁面の表に位置する内鍔部と、前記貫通孔の内周に位置して前記固定片部と前記内鍔部とを連結する短筒状の連結部とが形成されて、浴槽側壁面の内外方から前記取付部材を締め付けて取り付けできる取付孔が設けられていることにより、漏水受け部材に一体形成されている止水部を浴槽側壁面の貫通孔に嵌め込んで貫通孔の周縁を覆うことができ、水漏れ防止効果が大となり、シリコンを塗布する必要もなく、シリコン処理が不要となって漏水受け部材の取付作業が容易なものとなり、現場においても漏水受け部材の取り付けが可能となる。
【0008】
また、前記漏水受け部材の止水部には、前記貫通孔に嵌め込む時に、浴槽側壁面の厚さに応じて伸縮し得る蛇腹部が形成されていることにより、浴槽の側壁面の厚みのばらつきに良好に対応することができ、異なる厚さの浴槽にも良好に対応させて、蛇腹部の伸縮により止水部を浴槽の貫通孔周縁に良好に密着させて、水漏れ防止効果を高めることができるものとなる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、漏水受け部材5の斜視構成図であり、漏水受け部材5は全体が柔軟性のあるゴム材で形成されており、上面が開口された受け皿状の受け皿部5aの背側には一体状に立ち上げて板状の固定片部5bが形成され、この固定片部5bの受け皿部5aよりも上部には、固定片部5bから一体状に後方側へ突出して連結部たる蛇腹部5dがリング状に形成され、蛇腹部5dの他端側には固定片部5bと平行状に内鍔部5eが一体形成されて、蛇腹部5dの内周には、貫通状に取付孔5cが形成され、固定片部5bと蛇腹部5dと内鍔部5eで止水部50が構成されている。なお、図中5fは、ホース接続部である。
【0010】
このような漏水受け部材5は、図2の縦断面拡大構成図で示すように、浴槽の側壁面1aに貫通形成されている貫通孔1bに対し、外側から止水部50を貫通孔1bの内周に嵌め込むことができ、嵌め込んだ状態では、固定片部5bが浴槽の側壁面1aの外側に密着状態となり、内鍔部5eが側壁面1aの内面に密着状態となるように構成されており、貫通孔1bの周縁の外側および内側を密着状態で覆うことができるものである。
なお、止水部50を浴槽の貫通孔1b内に嵌め込んで取り付ける際に、予め貫通孔1bの内周にシール剤Sを塗布等しておけば、より確実なシール性が確保されるものである。
【0011】
なお、図3には要部を拡大した縦断面図を示しており、蛇腹部5dは、水平方向に伸縮できるように蛇腹状に薄いゴム片で形成されて、固定片部5bと内鍔部5eを連結しており、浴槽の貫通孔1bに止水部50を嵌め込む時に、この蛇腹部5dが、浴槽側壁面1aの厚み或いは厚みのばらつきに対応して伸縮し、嵌め込み状態で固定片部5bと内鍔部5eが側壁面1aの外側および内側に密着されるものである。
【0012】
なお、図3に示すように、固定片部5bおよび内鍔部5eの対向面に、対向状に突出してリング状のリング突起5ea,5eb,5ba,5bbを一体形成させておいても良く、このようなリング突起が形成されている場合には、浴槽の側壁面1aの外面にリング突起5ba,5bbが線接触され、また、側壁面1aの内側にはリング突起5ea,5ebが線接触されることとなり、このリング突起を複数形成させておけば、複数の線接触により貫通孔1bからの水漏れ防止効果を高めることができるものである。
このように漏水受け部材5を浴槽の貫通孔1bに止水部50を介して嵌め込み状に取り付けた後に、浴槽の側壁面1aの内側から、雄ネジ部材6の雄ネジ筒部6bを取付孔5c内に挿入させて、雄ネジ筒部6bを側壁面1aの外側に突出させ、この状態で側壁面1aの外側から雌ネジ部材7の雌ネジ筒部7bを雄ネジ筒部6bに締め付けることで、取付部材である追い焚き用アダプタ2を浴槽の側壁面1aに取り付けることができる。
【0013】
なお、雌ネジ部材7を締め付けることで、雌ネジ部材7の鍔部7aが漏水受け部材5の固定片部5bを強固に側壁面1aに押し付け、強固に固定片部5bが側壁面1aに密着されるものである。
また、雄ネジ部材6の雄ネジ筒部6bの外周にスリップワッシャー12を嵌め込んでおけば、締め付けることでスリップワッシャー12が内鍔部5eを強固に側壁面1aに押し付け、内鍔部5eが強固に側壁面1aに密着されるものである。
そのため、シール材Sが塗布されていない場合でも、貫通孔1bからの水漏れ防止効果は大となる。即ち、スリップワッシャー12と内鍔部5eとの重合面に水が侵入したとしても、その水は蛇腹部5dの内側に排水され受け皿部5aに至る。
【0014】
なお、図2のように浴槽の側壁面に曲面1cが存在する場合においても、良好な水漏れ防止効果が得られるものであり、従来のように固定片部5bを側壁面1aに接着材で接着させる必要がなく、また、従来のようなシリコンの塗布によるシリコン処理も不要であり、漏水受け部材5の取付作業を極めて容易に行うことができ、作業性が向上するものとなり、従来は浴槽1を出荷する前に工場で漏水受け部材5を取り付ける必要があったが、本例では取付作業が容易であるため、現場において浴槽1に漏水受け部材5を取り付けることができるものとなる。
【0015】
なお、図4は変更例を示すものであり、図4に示す漏水受け部材5においては、更に水漏れ防止効果を高めるために、固定片部5bに、受け皿部5a側へ膨出するシリコンポケット部5gをリング状に一体形成したものである。
このリング状のシリコンポケット部5gにはシリコンCを充填させておき、固定片部5bを浴槽の側壁面1aに密着させると、シリコンポケット部5gに充填されているシリコンCにより、貫通孔1bを通り外側へ漏れ出す水の漏れを確実に防ぐことができるものとなる。
【0016】
なお、本例では、追い焚き用アダプタ2における漏水受け部材5を例示しているが、水中照明器3の漏水受け部材4、或いは図示しない気泡浴槽噴射口の漏水受け部材についても、同様な構造を採用することにより、止水部を介して取り付けが容易となり、しかも水漏れ防止効果が大となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】漏水受け部材の斜視構成図である。
【図2】漏水受け部材を浴槽の側壁面の貫通孔に嵌め込んだ状態の縦断面構成図である。
【図3】漏水受け部材の蛇腹部の拡大縦断面構成図である。
【図4】変更例を示し、シリコンを充填可能なシリコンポケット部を設けた漏水受け部材の取付状態の縦断面構成図である。
【図5】浴槽の側壁面に取り付けられる追い焚き用アダプタ,水中照明器に、それぞれ漏水受け部材を取り付けた状態の浴槽の斜視構成図である。
【図6】従来の漏水受け部材の斜視構成図である。
【図7】従来の漏水受け部材を挟み込んだ追い焚き用アダプタの取付状態の詳細破断斜視構成図である。
【図8】図7の取付状態の概略側面構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 浴槽
1a 側壁面
1b 貫通孔
2 追い焚き用アダプタ(取付部材)
3 水中照明器
4,5 漏水受け部材
5a 受け皿部
5b 固定片部
5c 取付孔
5d 蛇腹部
5e 内鍔部
5f ホース接続部
5g シリコンポケット部
5ea,5eb,5ba,5bb リング突起
6 雄ネジ部材
6b 雄ネジ筒部
7 雌ネジ部材
7b 雌ネジ筒部
50 止水部
C シリコン
S シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽側壁面の貫通孔に取り付けられる取付部材の下側に設けられる漏水受け部材において、
該漏水受け部材は柔軟材で形成され、前記貫通孔に嵌め込まれて該貫通孔周縁を覆うことのできる止水部が一体形成され、
該止水部は、浴槽側壁面の裏に位置する固定片部と、浴槽側壁面の表に位置する内鍔部と、前記貫通孔の内周に位置して前記固定片部と前記内鍔部とを連結する短筒状の連結部とが形成されて、浴槽側壁面の内外方から前記取付部材を締め付けて取り付けできる取付孔が設けられている
ことを特徴とする浴槽用水受け構造。
【請求項2】
前記漏水受け部材の止水部には、前記貫通孔に嵌め込む時に、浴槽側壁面の厚さに応じて伸縮し得る蛇腹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用水受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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